ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「雪の魔女の洞窟」&「運命の森」コラボEX

運命の森の後始末

 

※前註:本記事を読むに当たって、前回までの「雪の魔女の洞窟」攻略紀行の他に、「運命の森」攻略感想を読むと、より楽しめるかもしれません(あるいは他のFFゲームブック攻略記事なんかも)。たぶん、きっと、ロガーン神の導きがあれば。

 なお、運命神ロガーンは謎の多い方ですので、読んだけど訳が分からないという可能性もございますが、そこはそれ、神意は不可解なものということで。

 

 あたしの名前は、リサ・パンツァ……ではない。

 リサ・パンツァはあたしが戦場で会った英雄の一人で、彼女は突然、天から降ってきた。

 2人掛かりのトロールに苦戦中、正直死ぬかと思っていたあたしだったけど、突然、空から斬撃一閃。

 1体のトロールが脳天から斬殺されて、その直後。

 天から降臨した女剣士は、あたしなんかが及びもつかない華麗な舞いで、もう1体のトロールをたちまち血祭りに上げた。

 ブンブン唸りを上げる鋭い魔剣を軽やかに扱い、熟達の剣士、いや魔剣士といった風情で戦場に降り立った彼女の第一印象は、赤い旋風(レッドゲイル)の如し。

 あたしは圧倒されて、戦場だというのに地べたに腰を落としたまま、すぐには立ち上がれずにいた。

 ただただ天の使いのような彼女の戦いぶりに見惚れて、しばらく自分が戦士であることを忘れた。

 運だけで生き延びてきたあたしなんかとは違う、本当に運命に選ばれた女勇者の姿がそこにあった。

「すごいなあ。奇跡だなあ。ドキドキするなあ」惚けたまま小声でつぶやく。

 

 彼女の瞳は赤い光を帯びていた。

 彼女の肌は白く輝いていた。

 まるで、氷の国からやって来たかのような佇まいでいながら、その戦いぶりはあくまで獰猛な獣のそれ。

 凄絶なおかつ美麗。

 生命に満ちた躍動感と、大人の女性が醸し出す妖艶さが同居しているようだ。

 そして、彼女の側には、神秘的な赤い羽の鳥が付き従っていた。彼女に横から襲いかかるトロールを空中から牽制すると、

「ありがとう、赤ツバメさん」見た目の予想よりは幼い感じの声で、彼女がペット? 相棒? それとも使い魔か何か? の鳥さんに礼の言葉を投げかけ、

 たちどころに牽制されたトロールを切り刻む。

 まるで躊躇がない常人離れした戦いぶりに、あたしは魔物を見たような気になって、少しガタガタ震える自分を感じた。

 戦場の風に誘われた魔界の王女か何か?

 人の姿をしているけれども、本質は人間など及びもつかない邪悪と混沌の使者で、ただ世界に死を振りまくために現れた地獄の住人?

 

 自分を助けてくれた恩人に、そんな失礼な想像をかぶせながら、ふと辺りが静まったのを感じた。

 戦闘は遠くでまだ続いている。

 ドワーフトロールの決戦は、なおも激しい怒号と打撃音が、地面の振動とともに感じられた。

 だけど、あたしの周りの敵は、彼女が一掃してくれて、今や一息つく余裕が生まれた。

 もちろん、彼女が敵でないとして、だけど。

 

 彼女は周囲にトロールがいなくなったのを確認すると、優雅な仕草で刃を一振りし、濡れた血を振り払うと腰の鞘に納めた。

 赤い鳥(ツバメって言ったかな? あたしの知ってるツバメよりは一回り大きいみたいだけど)が彼女の右肩にとまる。実に慣れた姿に、クスッと彼女の笑いが漏れ聞こえた。

 その笑い声に、あたしは思わず安心した。

 戦う姿の凄絶さに魔性っぽさを想像したけど、自然の鳥(かどうかは分からないけど。全身、赤いツバメなんて見たことがないし)と仲良く振る舞う姿は、人の少女っぽい(あたしと同年齢ぐらいの)親しみやすさを感じさせた。

 彼女はあたしに目を向けて、軽やかに駈けて来た。赤い鳥は邪魔にならないよう、再び宙に舞う。

「君、大丈夫? ケガしてない?」彼女が差し伸べた手をおずおずとつかんで、あたしは立ち上がった。

 

 それがあたしと、有名な英雄リサ・パンツァの出会いだった。

 

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「雪の魔女の洞窟」攻略EX

雪の魔女の後始末

 

 死の呪いからは解放されたけれど、あたしの冒険はそれで終わりではなかった。

 運命神は次から次へと新たな問題を用意して来る。

 赤いアマツバメ(たぶん。鳥の細かい種類は、あたしもシャリーラも専門外だ)っぽい姿に転生した彼氏とのコミュニケーションをどうしようか、と思ったりすると、さらに空からの来訪者が出現した。

 

 改造バードマン、通称ペギラマンが2体、あたしたちを狙おうとした。

 そう言えば、〈火吹山〉近くに巣食っているかも、と赤ツバメさんが言ってたのを思い出す。

 体調はバッチリ、気分はスッキリ。だけど、こいつは強敵だ。

 愛用の魔剣アス・ラルを構えて、この難局をどう切り抜けようかと思案していると、突然、突風が吹き込んで、1体が巻き込まれて、墜落した。

 よし、ラッキー。

 ロガーン様に感謝しつつ、もう1体が降下して来たのを、ニヤリと笑んで切り刻む。多少は傷つけられたけれども、何とか撃退に成功した。

 

『おお、誰かと思えば、女主人ではないか。こんなところで会おうとは、思いもよらず。縁とは不思議なものよな、ハハハハハ』

 

 空に浮かんで、偉そうに腕組みしている太った巨漢には見覚えがあった。

 

「あんたは確か、プリズムの魔神(ジン)ね。こんなところで何をしているの?」

 雪の魔女の洞窟を探索中に、出会った魔神だった。確か、願いごとを一つ聞いてやろうと言っていたのに、結局、洞窟の中では、あたしが強すぎて助けられることが何もない、とか言い訳して、消え去っていたわね。

 もしかして、今まで、あたしにこっそり付きまとっていたわけ?

 あたしの恥ずかしいところとか、いろいろ観察されていたと思えば、何だか腹立つ。

(その魔神の真の名を利用すれば、封じ込めることができるぞ。結構、役に立つ)

 シャリーラがこっそり心にアドバイスしてくれた。

 

『そう言えば、女主人にはまだ願いを叶えていなかったな。ここで会ったのなら、ちょうどいい。さっきの質問に答えることを願いの一つと受け取ってよろしいか?』

 

 いきなり出て来て、何て図々しい。

 だけど、この魔神ジン君の、魔神らしからぬ、どこかあっけらかんとした大らかな態度は嫌いじゃない。

 

「あんたの専門は幻術であって、情報や謎解きは領分じゃないでしょう。こっちはあんたがここで何をしているかは興味がないし、専門外の下手な仕事で報酬をせしめようだなんて、詐欺師もいいところよ。ここはお互いにフェアに交渉と行きましょう」

 

『フェアな交渉と来たか。ならば、願いを決めるにしても、お互いの情報を知らせておくのは取り引きの枠外と心得た。我も、知り合いと会うのは久しいゆえ、積もる話を聞いてもらいたいと思っていた。話ぐらいはタダで聞かせてやろう』

 

「あたしの方は簡単。〈雪の魔女〉を倒して洞窟を脱出した後、死の呪いに苛まれたので、ここで呪いを解除する最終儀式を終わらせた。以上よ」

 嘘はついていない。

 シャリーラがあたしに憑依して、あたし自身が〈雪の魔女〉の実質的な後継者になっていること、この魔神を何かの器に改めて封じることは(たぶん)可能だということを黙っているだけ。

 

『よもや、魔女を倒して、死の呪いまで解除しただと? ただ者ではないと目しておったが、それほどの大魔法使いだったとは。もしや、貴女こそ、この山の主だったのでは? ならば、頼みがある』

 

 何か勘違いしているみたいだけど、もしかすると、今のあたしなら、噂に名高い魔法使いを倒して、本当に〈火吹山〉の支配者になることだってできるかもしれない。

 ところで、何を頼みたいの? 魔神に願いを聞いてもらうのではなくて、魔神から願われるって何だか新鮮。

 

『実は、故郷の〈風の精霊界〉に帰りたいのだが、そうするには強大な魔力を宿した転移門が必要でな。我一人の力ではそれを開くことが叶わんのだよ。貴女がもしも〈雪の魔女〉を倒すほどの力を持った大魔法使いであるのならば、我が願いを聞き届けてもらえないだろうか?』

 

 できる?

 心の中のシャリーラに尋ねてみると、

(できるだろうが、それをして、あたしたちに何の得がある? 封じて使役する方が明らかに得であろう)

 確かにね。

 だけど、そうやって魔神を侮って酷使して、相手の怒りを思いきり溜めまくって、結局は身の破滅を招いた愚かな魔法使いの前例をいろいろ聞いたんだよね。

 やっぱ、こういう強大っぽい精霊との契約は、舐めてちゃいけないって思うんだ。

 もちろん、あたしが自分で召喚して制御できる程度の魔神なら、自由に扱えばいいんだけど、たまたま運よくプリズムから解放しただけで、ろくに扱えもしない力にむやみに手を出すのは怖いと思う。

 話し合いで目的が叶うなら、まずはそうする。力で無理強いというのは、どうしても必要な時に限るのが、スマートな盗賊の流儀ってことで。

(その慎重さとお人好しなところが、そなたから学んだあたしの美徳と解しよう。力で無理強いして、敵をいたずらに増やすのが愚かだとは学んだ。駆け引きや交渉ごとは任せよう)

 

 こうして、あたしは魔神のジン君の話を聞いてやった。

 洞窟が崩壊して、そこに蓄えられた強大な魔力も飛び散ったとき、ジン君は自らの復讐も為されたと考え(魔女の側近を名乗っていた自称・幻術師の男も、あたしの知らないところでジン君に見つかって惨殺されたらしい)、故郷に帰るための強大な魔力を求めて、この〈火吹山〉に渡って来たそうだ。

 しかし、風の噂に聞いたところによると、この〈火吹山〉の魔法使いは、4大精霊を扱う魔術の達人で、〈雪の魔女〉に負けず劣らず邪悪そうなので、うかつに関わると、せっかく解放された身がまたも封じられてしまいやしないかと、危険を感じたとか。

 そこで、はてどうしたものかと思いながら、この山の上空をふわふわ漂って下界を眺めていると、北からペギラマンの群れが飛んできた。魔女の不始末を処理するのも一興と思い、強大な風の魔力でプチプチ潰して遊んでいて、最後の2羽を見かけて潰そうと勇んでみたら、あたしと出会ったという。

『魔神の我が言うのも何だが、これぞ天の計らいと感じた。強大な魔女を倒した貴女なら、必ずや我の助けになろう。そのために、我にできることがあれば手伝わせて欲しい』

 

 あたしにとっては、ペギラマンの群れを殲滅させてくれただけで十分なんだけどな。

 アランシアの平和に十分貢献してくれたと思うよ。

 それでも、確認したいことはあった。

「鳥の言葉は分かる?」

 魔神は風の領域に所属する生き物なら、と肯定の返事をして、赤ツバメさんの言葉を通訳してくれた。

 そのおかげで、あたしの予感(エルフの魂が自然界の永劫輪廻の奇跡で鳥に転生したこと)が正しかったと判明し、さらに今朝これから、ハンマーを取り戻したドワーフ王ジリブランがトロールとの決戦を開始するという鳥の世界のニュースを知ることになった。

 こうしちゃいられない。

 スタッブ君との約束を果たさなきゃ。

『あたしたちの問題が解決したら、必ずストーンブリッジに行くから』

『戦いが待っているなら、必ず助ける』

 

 今のあたしにはそうするだけの力がある。

 だから、魔神のジン君にこう願いを伝えた。

「風の力で、あたしをストーンブリッジの近く、ドワーフトロールの決戦の地にまで運んで」

『運ぶだけでいいのだな。戦いそのものには手を貸せんぞ』

 正直に言って、貸してくれた方が楽だと思ったけれど、そこまでは求められないだろう。力で無理強いしない限り。

「別にいいよ。これはドワーフトロールの決戦だ。あたしは友だちとの約束を果たしに行く。そこに他人を巻き込みたくない」

『他人か。面白いことを言うな、女主人。貴女の秘めた魔力なら、その気になれば命令することもできようものを』

 買いかぶりすぎ……とは言えなかった。

 その気になれば、この魔神を力で支配できる。少なくとも、シャリーラはそうした。

 今のあたしがそうしないのは、力の使い方に気持ちが付いて行ってないからだと思う。

 過ぎたる力の行使には、戸惑いも覚えるので、心の慣れが必要だ。不慣れな力の扱いには慎重でなければ。

『まあいい。女主人の願いは、貴女を望みの戦場に送り届けること。その後は……我も好きにさせてもらう。ちょうど貴女の戦いに感化されて、自分でも暴れたいと思うやもしれんからな。では、これより参るとしよう。ハハハハハ』

 

 こうして、あたし、リサ・パンツァは空からの救世主として、ストーンブリッジの戦いの歴史に名を連ねることになった。

 

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「雪の魔女の洞窟」攻略紀行(その13、最終回)

癒し手クエストIF

 

リサ(ダイアンナ)「前回、あたしはエルフのアッシュ兄さんの助けを借りて、ついに癒し手ペン・ティ・コーラのいる洞窟までたどり着いた」

 

アス・ラル(アスト)「とうとう、氷指山脈から始まる長い冒険の旅も終わるんだな、お嬢」

 

リサ「いや、違う。あたしの冒険はまだまだこれからさ。そのためにも、今はこの死の呪いを解かないと」

 

アス・ラル「それでこそ、お嬢だ。吸血鬼なんかを夢見るんじゃなくて、生きて冒険者生活を満喫しないとな」

 

リサ「いや、プレイヤーは吸血女王なんだから、そこまで否定されると悲しくなるんだけど(涙目)」

 

リバT『クイーンがシャリーラに感情移入したくなる理由が分かりました』

 

リサ「背景を知ると、何となく不幸な女にも思えるんだよね。だから彼女にも救済を与えたくなるんだ。ともあれ、今回はまず、癒し手クエストの別ルート。アッシュ兄さんに会わない道をチェックしようと思う」

 

リバT『パラグラフ30から南の385に向かったルートですね。まずは体力1点を失ってから、丘の間の峡谷に目星を付けます。その途中で洞穴を見つけるのですが』

 

リサ「これはいい洞穴だ。吸血鬼としての最初の寝ぐらにちょうどいいかも、とついつい考えてしまう」

 

アス・ラル「シャリーラの吸血鬼思考に引きずられているんだな。早く呪いを解かないと」

 

リバT『洞穴は完全な闇です。ランタンなどの明かりを持たないリサさんは、手探りで探索することになります』

 

リサ「吸血鬼らしく、夜目は利かないのか?」

 

リバT『まだ吸血鬼ではありませんので、夜目など備わってません』

 

リサ「やはり、人間の体は不便だ。少なくとも、夜は吸血鬼の方が過ごしやすい。朝から昼は人間に、夜になると吸血鬼にフォームチェンジするということはできないのか?」

 

リバT『人狼だったら、昼は人間、夜は獣なんてものもありかもしれませんが、変身を自己制御できるようにならないと、やはり生きづらいと思いますよ』

 

リサ「まあ、吸血鬼や人狼のコミュニティでも築けばいいのかもしれないが、今はそんなことを考えても仕方ない。とにかく、闇の中を進む。あたしは盗賊。一応は、都会の闇に生きる女だったんだからね」

 

アス・ラル「オレが明かりや炎を灯す機能でも付いていたら良かったんだがな」

 

リバT『それで運だめしを求められるんですが、失敗して兜をかぶっていなければ、転倒して頭を打って、バッドエンドですね』

 

リサ「すべって転んで失神って奴か。そんな死に方で吸血鬼化なんてするのも何だか情けない。とにかく、運よく転ばなかったということで」

 

リバT『すると、闇の中で、ランタンを持ったナイト・ストーカー(夜歩き)という亡者に遭遇することになります。技術点11、体力点8という能力ですが、リサさんは闇の中で不利な戦闘ということで、攻撃力を2点下げないといけません。実質的に、相手の技術点が13になったと言えましょう』

 

リサ「シチュエーション的に、本作最強の敵とも言えるわけだね」

 

リバT『なお、頑張って倒しても、得られるものは何もありません。ぶっちゃけ外れの場所です』

 

リサ「慌てて洞窟から出て、次へ向かうとしよう。ナイト・ストーカーは危険、と」

 

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「雪の魔女の洞窟」攻略紀行(その12)

月岩山地に入る

 

リサ(ダイアンナ)「親愛なる仲間たちとの哀しい別れを経て、いよいよ、このあたし、リサ・パンツァの一人旅、本ゲームブックの最終クライマックスだ」

 

アス・ラル(アスト)「一人旅とは言え、愛剣のオレがいるから寂しくはないはずだ。どこまでも付いて行くぜ、お嬢」

 

リサ「ところで、一つ提案があるんだ、リバT」

 

リバT『何でしょう?(イヤな予感。また何か変なことを考えてそう)』

 

リサ「リサ・パンツァと、シャリーラが一体化したことを表現するために、シャリーラの一人称が『わたし』→『あたし』に切り替えたんだが、リサもあたし、シャリーラもあたしだと、少しややこしくないか?」

 

リバT『少しどころか、思いきりややこしいですよ。読者さんが読む際に、これはリサの心情なのか、シャリーラの心情なのか、はっきり区別できないのではないか、と思います』

 

リサ「その辺は、シャリーラの色変えで表現したり*1、リサとシャリーラで思考や感情がない混ぜになったのを表現したり、〈雪の魔女〉のように冷酷なリサと、愛に不慣れな情の濃いシャリーラのキャラ性の入れ替わりを描写したつもりなんだが、上手く行っているかは結局、読み手次第だからな。単に錯綜して読みにくいだけとも考えられる」

 

リバT『書き手の意図が伝わるには、受け手の資質も大事ですからね。一応、書き手さんは後書きで意図を解説したり、インタビューや評論記事で補足説明したりする機会もありますが、受け手さんがそこまで追っかけるとも限りませんし、作品内で伝わるのがベストなんでしょうね』

 

アス・ラル「そういう書き手が表現力を駆使した(工夫した)文章でも、受け手が意図に気づかず、創り手が空回りするケースはあるが、この場合、受け手はプロでないから仕方ない。料理の隠し味とか、厳選された食材とか、いかなる調理技法で創られたかは、グルメを自称するマニアには重要な審評眼の表明だが、単にアラ探しして、作品の好き嫌いの感情だけで貶めて立派な評論しているつもりのエセ評論家も、ネット社会ではいろいろ可視化されたからな」

 

リサ「ただの個人の感想と、評論の違いは何だろうか」

 

リバT『簡単です。その作品の歴史的もしくはジャンル的意義をしっかり踏まえながら、作品の影響力や可能性などまで言及して論じているのが評論。個人の主観が剥き出しで、面白いかつまらないか、満足か不満足かのお気持ち表明なのが感想です。まあ、それすら行わずに、アラ探しとネタツッコミ、ただ揚げ足取りで叩くだけなのは、感想の域にも達していないクズ文章ですけどね』

 

リサ「クズ文章とは、ずいぶんな言い方だな」

 

リバT『一見評論家ぶってるだけで、言葉遣いだけは賢しらにマネをしていながら、中身がクズなのがクズ文章です。まあ、クズでもネタが面白くて笑えれば、一過性の娯楽にはなりますが。こんな感じに』

リバT『ネタツッコミは、評論とは別ジャンルなんですけど、浅はかな素人さんはネタツッコミしてるだけなのに、評論をしているつもりになって大上段に構えて、笑えないジョークになって痛いですから。しょせんはネタツッコミと割り切って、場を盛り上げる題材や話題として便利、お笑いコミュニケーションの材料とわきまえれば、タツッコミから叩きの材料に発展して有名作品を駄作認定して悦に入っている愚かしさから脱却できるのですけどね』

 

リサ「評論と、ネタツッコミは意味が違う、と」

 

リバT『ネタツッコミは、おふざけ芸の一種で、肩の力を抜いて、その場で笑えたらそれでいい。一過性のお笑い以上の価値はないわけです。だけど、変にマジメになり過ぎて、それだけで立派に評論している気になって、態度まで強弁する構えに入ってしまえば、場の空気がギスギスしてしまう。笑えてコミュニケーションするのが目的のネタツッコミ芸が、下手に扱うとコミュニケーション破壊に至るという、そういう勘違いした輩の書きがちなのがクズ文章と申しましょうか。まあ、クズの世界も奥が深いものだとは思いますがね』

 

リサ「寄り道脱線で、いつまでも本筋を見失ったままなのも、読者さんの期待はずしのクズ文章だと思うけどね。そんなことにならないよう、あたしたちは読者さんの読みやすさを考えて、こう考えた」

 

リバT『クズな考えでないことを期待してみます』

 

リサ「シャリーラがあたしを真似して、一人称『あたし』になったなら、リサはちがう一人称『ぼく』に切り替えようと思うんだ。ほら、赤ツバメさんの影響ってことでさ。愛した彼氏の影響を受けて、女が変わるってこともあるわけだしさ」

 

アス・ラル「つまり、お嬢が『ぼくの名前はリサ・パンツァ』と言うわけか」

 

リバT『物語の途中で、一人称が変わるのは、かえって読者さんが混乱します。どうしても変えたければ、物語が終わって、エピローグで変えて、次回作(エピソード)で完全にイメチェン仕切り直すぐらいでよろしいか、と』

 

アス・ラル「大体、シャリーラとごっちゃになって紛らわしいってことなら、シャリーラが消えれば問題ないのでは?」

 

リサ「いやあ、今作でシャリーラのことが気に入ってしまってさ。このまま消し去るのがもったいない。いっそのこと、公式ボスキャラを、背後霊みたいに扱えないかって思い立ったんだよ」

 

リバT『カオスの素だとは思いますが、今後の方針について、ディレクターに事前打診したものと受け取っておきます。でも、一人称「ぼく」については、次回作で採用。今作では「あたし」から切り替えない方向でお願いします。コロコロ性格が変わる主人公って、読者さんがついて来れなくなるのがオチですからね』

 

リサ「うん。リサらしさはきちんと残すようにするよ。だけど、主人公の成長と変化も、物語の醍醐味だと思うからさ」

 

アス・ラル「成長なのか、堕落なのか、判断しかねるが、まあ、いい。エンタメは、面白さが正義だ。あまり深刻すぎて、面白さをスポイルすることだけはないようにな」

 

リサ「マジメにシリアスなのもいいけど、軽妙さも忘れずにってことだね。さあ、月岩山地にワクワク突入だ」

 

リバT『死の呪いの深刻さを忘れないで下さいね。ワクワクなんて言える現状ではないはずですから。パラグラフ30番で、レッドスウィフトさんの亡骸を埋葬した直後に、癒し手クエストが開始されます、この辺、急展開で山に向かうのですが、行き先で道が2つに分かれます。川沿いにまっすぐ東へ進む東ルート(46)と、目前の橋を渡って南から山のふもとをしばらく進む南ルート(385)のどちらを選びますか?』

 

リサ「当たりは東だと分かっているので、南はIFルートってことで、東に向かうよ」

 

*1:ブログ創作ならではの手法。通常の紙の本では表現しにくい。

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「雪の魔女の洞窟」攻略紀行(その11)

リサ=シャリーラの失態

 

 どうして、あたしはまだ死なずに、生きているのだろう?

 愛した男の亡骸の傍らで、自分にやがて訪れる死を待ちながら、疑問を覚えた。

 死の呪いに最初に触れたのはあたしで、その後、あたしは男を道連れにした。死の呪いの罠を仕掛けたのは魔女シャリーラで、リサ・パンツァは魔女の陰謀に嵌められた被害者なのだけど、リサ=シャリーラとして一体化を遂げた現状では、どうでもいい話だ。

 あたしは愛の道連れとして、エルフを死の呪いにはめて、女の手管を駆使して、その生命を奪った。彼の死に関して、あたしの罪は重い。

 だから、あたし自身、共に死ぬはずだったのだ。

 それなのに……あたしはまだ死なない。

 どうして?

 人とエルフの体力差が原因?

 それとも、女は男よりも生命力が強いとでも言うの?

 愛する男が先に死んで、自分一人が後に残される。そのように寂しくならないように、彼といっしょに……って思っていたのに、また、あたしだけ取り残された気分だった。

 あたしは、愛剣の鞘から刃を引き出した。

 呪いで死ねないなら、自らの喉を突いて死ねばいいのか?

 それでも不死は得られるのか?

 まるで有名な戯曲にある不幸な恋人同士ね。

 仮死状態のヒロインを見て絶望した男が毒を飲んで先に逝き、それから息を吹き返したヒロインが運命の皮肉に泣き叫びながら、短刀で喉を突いて後追い自殺を図る悲劇の幕引き。

 違うのは、あたしたちが呪われ、不死の存在として暗闇の世界にあり続ける予定だってこと。

 

 だけど、ここに来て、あたしはとんでもない過ちを犯してしまっていたことに気づいた。

 今は夜の河辺。

 衝動的に愛の営みの舞台にしてしまったけれど、遮るものなき屋外なので、夜が明ければ、ここは陽の光にさらされる。

 屋外で、吸血鬼に覚醒する予定の男女が共に横たわったまま、無防備に朝を迎えたら……永遠の命はたちまち灰になって燃え尽きてしまうだろう。

 吸血鬼になりたいのは、陽光で焼かれて消滅したいためじゃない。

 まったく衝動的で考えなしの行動だったとしか言えない。

 盲目的な愛に突き動かされて、のぼせ上がっていたとしても、愚かしかったとしか言いようがない。

 幸い、あたしはまだ生きていた。

 今ならまだ間に合うはず。

 彼の亡骸を運んで、陽の光の当たらない洞窟か、どこか安全な暗がりに身を潜めることはできるはず。

 大体、自分が死んだ後のことを考えなさすぎた。

 愛する彼と吸血鬼になるにしても、準備しないといけないものがいっぱいあるだろう。まずは、どこかの廃城や遺跡、納骨堂など安全に眠られる拠点を用意して、それから寝所代わりの棺桶だって必要だ。

 吸血鬼としての人生(?)設計を考えなさすぎた。

 一体、何年、吸血鬼をやって来たのよ、シャリーラ?

 

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「雪の魔女の洞窟」攻略紀行(その10)

異教平原、南下中

 

リサ(ダイアンナ)「前回、あたしたちはついに〈雪の魔女の洞窟〉を脱出してから、外の世界の旅を開始した」

 

スタッブ(アスト)「それぞれの故郷に戻る旅じゃな。わしはストーンブリッジで……」

 

リバT『エルフの赤ツバメことレッドスウィフトさんは、月岩山地です』

 

リサ「2人が自然に故郷への旅だって言っているので、あたしも何だか自分の故郷に帰りたくなるかもね」

 

スタッブ「リサ殿の故郷はどこじゃったかな」

 

リサ「実はダークウッドの森の南なんだよね。近所にヤズトロモさんの塔があるところに、木の小屋を建てたりして、母さんと二人暮らしをしていた。父さんは死んだと聞かされていたんだけど、大きくなってから、実は冒険者としてフラフラ外の世界を旅してるって知るようにもなって……その辺の細かい経緯はこちらを参照だ」

リバT『お父さんのリーサン・パンザは「危難の港」の事件で、ブラックサンドの領主アズール卿の恨みを買ったので、その目を妻子からそらすつもりで、ブラックサンド付近を派手に冒険していたそうです』

 

リサ「一応、そう言い訳しているけど、単に放蕩癖が抜けないんじゃないかって気もする。あたし自身がそうだからさ。やっぱり冒険生活は楽しいし」

 

スタッブ「でも、今回は故郷に寄って行くってことじゃろう?」

 

リサ「そうだね。〈死の罠の地下迷宮〉とか〈雪の魔女の洞窟〉とか、命の危険を何度も乗り越えたんだから、ホームシックにもなっているのかも。それに、ヤズトロモさんに会いたいしね。スタッブ君には言わないけど、あたしと赤ツバメさんの〈死の呪い〉だって、ヤズトロモさんなら何とかできるんじゃないかって思うんだ」

 

リバT『ゲームブックには、そういうイベントがありませんけどね』

 

リサ「だから追加イベント案を考えた。リバTはこれを読んで、上手く話に取り入れて(メモを渡す)」

 

リバT『……なるほど。こういうことなら、上手くゲームブックと矛盾せずに済みそうですね。だけど、今回はそれだけでなく、スタッブおよびレッドスウィフトさんとのお別れがテーマだと思います。クイーンにはその辺のロールプレイをしっかりお願いします』

 

リサ「うん、脳内シミュレートはしっかりした。後は本番でしっかり演じるだけだ。涙の準備をしないと」

 

スタッブ「今回は泣かせる話になる予定じゃな。ハンカチもしっかり持って、と」

 

リサ「汗拭き用のタオルで十分さ。リアルだと夏なので暑いし」

 

リバT『暑いと言えば、やはり氷指山脈から南下中ですから、冬用装備だと汗をかく頃ですね。東方はるかに見える〈火吹山〉の赤い頂上付近の様子が〈雪の魔女の洞窟〉とは対照的に熱そうなイメージですし』

 

スタッブ「実は『雪の魔女の洞窟』って、タイトルからして『火吹山の魔法使い』と対照的に表現されているようじゃな」

 

リサ「なるほど。雪と火、魔女と魔法使いか」

 

リバT『ボスと対峙する直前にドラゴンが出現して、それぞれ氷の白竜と炎の赤竜ですし』

 

スタッブ「『雪の魔女』の方は、ダンジョンの中に川が設けられておらず、より小規模ではあったが、その分、外の世界に出たときに川を渡るイベントがあったりする。物語途中の川渡りイベントは、リビングストン作品の場合、この時期、恒例化していて、いよいよ冒険が後半に入って、クライマックスが近づいて来ていますよ、と伝える効果があるらしい」

 

リバT『生死の境を切り分けるのも川ですからね』

 

リサ「生死の境のドラマ。今回はそういう話になる予定」

 

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「雪の魔女の洞窟」攻略紀行(その9)

洞窟からの脱出

 

リサ(ダイアンナ)「前回、あたしはシャリーラとのゲーム対決に勝利して、ついに自分の肉体を取り戻した」

 

リバT『ええ。原作ゲームブックと違って、精神世界での派手なバトルと、仲間殺し、そして静かな会話のやり取りという顛末でしたが、シャリーラはリサさんの勝ちを認めて、洞窟からの解放を約束してくれました』

 

スタッブ(アスト)「わしとエルフはどうなった? 夢の世界でリサ殿と戦ったりしてしまったのだが」

 

リサ「みなが意識を失っているかのような広間で、最初に目を開いたのはあたしだ。体内に融合した異物の水晶球を、意志の力で排除し、ムッと念を込めると砕け散る」

 

リバT『って、そんなことができるのですか?』

 

リサ「シャリーラの力の残滓って奴さ。勝者の特権ってことだね。そして、倒れている赤ツバメとスタッブ君の首に手を触れると、【服従の首輪】が塵となって消失する。これで2人は魔女の奴隷から解放された」

 

スタッブ「ならば、その後で目を覚ますとしよう。ん? 何やら長い悪夢を見ていたような気がするが? おお、首輪がない。これはどういうことか? もしかして、夢?」

 

リサ「夢じゃないよ。魔女とは、あたしが決着をつけた。君は自由だよ、スタッブ君。そう言って、うっすらと笑みを浮かべる。無邪気なニッコリした笑みではなくて、どこか寂しさを感じさせるような目を、エルフに向ける」

 

リバT『では、レッドスウィフトも遅れて目を覚ましましょう。そして、リサさんに訝しげな目を向けます。「君は……どっちだ?」

 

リサ「あたしの名前はリサ・パンツァ。魔女に憑依されてはいたけど、もう大丈夫。すべてが元どおりってわけではないけれど……瞳を伏し目がちにしながら、エルフの顔を見るのに若干の勇気を出して、改めて正面から見つめ直す……少なくとも今は魔女から解放されて自由の身だ。ここから脱出しよう」

 

リバT『エルフはしばらくリサさんの顔を見つめ、思念でやり取りできないかと集中してみますが、首輪の魔力がないので、思う言葉を伝えることができないと理解します。ただ一言、「後で2人きりで話ができないか?」と小声でつぶやきます』

 

リサ「彼が何を言いたいかは察しがつくので、『分かった。だけど、今は急いだ方がいい。もう間もなく、ここは崩れてくるから』と予言めかして言う」

 

スタッブ「そんなバカな。この洞窟は頑丈で、崩れる予兆など……」

 

リバT『と、スタッブさんが言い終わる前に、足元の地面が揺れ始め、氷の壁に大きな亀裂が入ります』

 

リサ「今だ。その亀裂が広がったら、すかさず飛び込め、外に抜け出せるから!」

 

リバT『リサさんの宣言どおりに、脱出を敢行することになりますが、運だめしが必要ですね』

 

リサ「9で成功(残り運点10)。崩れてくる天井の下敷きにはならず、あたしたちは無事に洞窟から飛び出すことができた。失敗したら、4点ダメージを受けるところだったけどね」

 

リバT『久々に出て来た外の世界では、清々しい青空が広がっています。雪が降る様子もなく、何もかもが平和に見えます』

 

スタッブ「それは、解放された喜びにヒャッハーと雄叫びを上げるぞ。まるでモヒカン蛮族のように」

 

リサ「プッ、クスクスと夢で見たスタッブの姿を思い出して、抑えられずに吹き出してから、堰(せき)を切ったかのように大笑いします」

 

リバT『リサさんが笑ったのを見て、エルフさんの憂い顔にも微かな笑みが浮かびます』

 

 いろいろギクシャクしたりもしたけれど、こうして、あたしたちは3人そろって、笑顔で〈雪の魔女の洞窟〉を脱出することに成功した。

 

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