雪の魔女の後始末
死の呪いからは解放されたけれど、あたしの冒険はそれで終わりではなかった。
運命神は次から次へと新たな問題を用意して来る。
赤いアマツバメ(たぶん。鳥の細かい種類は、あたしもシャリーラも専門外だ)っぽい姿に転生した彼氏とのコミュニケーションをどうしようか、と思ったりすると、さらに空からの来訪者が出現した。
改造バードマン、通称ペギラマンが2体、あたしたちを狙おうとした。
そう言えば、〈火吹山〉近くに巣食っているかも、と赤ツバメさんが言ってたのを思い出す。
体調はバッチリ、気分はスッキリ。だけど、こいつは強敵だ。
愛用の魔剣アス・ラルを構えて、この難局をどう切り抜けようかと思案していると、突然、突風が吹き込んで、1体が巻き込まれて、墜落した。
よし、ラッキー。
ロガーン様に感謝しつつ、もう1体が降下して来たのを、ニヤリと笑んで切り刻む。多少は傷つけられたけれども、何とか撃退に成功した。
『おお、誰かと思えば、女主人ではないか。こんなところで会おうとは、思いもよらず。縁とは不思議なものよな、ハハハハハ』
空に浮かんで、偉そうに腕組みしている太った巨漢には見覚えがあった。
「あんたは確か、プリズムの魔神(ジン)ね。こんなところで何をしているの?」
雪の魔女の洞窟を探索中に、出会った魔神だった。確か、願いごとを一つ聞いてやろうと言っていたのに、結局、洞窟の中では、あたしが強すぎて助けられることが何もない、とか言い訳して、消え去っていたわね。
もしかして、今まで、あたしにこっそり付きまとっていたわけ?
あたしの恥ずかしいところとか、いろいろ観察されていたと思えば、何だか腹立つ。
(その魔神の真の名を利用すれば、封じ込めることができるぞ。結構、役に立つ)
シャリーラがこっそり心にアドバイスしてくれた。
『そう言えば、女主人にはまだ願いを叶えていなかったな。ここで会ったのなら、ちょうどいい。さっきの質問に答えることを願いの一つと受け取ってよろしいか?』
いきなり出て来て、何て図々しい。
だけど、この魔神ジン君の、魔神らしからぬ、どこかあっけらかんとした大らかな態度は嫌いじゃない。
「あんたの専門は幻術であって、情報や謎解きは領分じゃないでしょう。こっちはあんたがここで何をしているかは興味がないし、専門外の下手な仕事で報酬をせしめようだなんて、詐欺師もいいところよ。ここはお互いにフェアに交渉と行きましょう」
『フェアな交渉と来たか。ならば、願いを決めるにしても、お互いの情報を知らせておくのは取り引きの枠外と心得た。我も、知り合いと会うのは久しいゆえ、積もる話を聞いてもらいたいと思っていた。話ぐらいはタダで聞かせてやろう』
「あたしの方は簡単。〈雪の魔女〉を倒して洞窟を脱出した後、死の呪いに苛まれたので、ここで呪いを解除する最終儀式を終わらせた。以上よ」
嘘はついていない。
シャリーラがあたしに憑依して、あたし自身が〈雪の魔女〉の実質的な後継者になっていること、この魔神を何かの器に改めて封じることは(たぶん)可能だということを黙っているだけ。
『よもや、魔女を倒して、死の呪いまで解除しただと? ただ者ではないと目しておったが、それほどの大魔法使いだったとは。もしや、貴女こそ、この山の主だったのでは? ならば、頼みがある』
何か勘違いしているみたいだけど、もしかすると、今のあたしなら、噂に名高い魔法使いを倒して、本当に〈火吹山〉の支配者になることだってできるかもしれない。
ところで、何を頼みたいの? 魔神に願いを聞いてもらうのではなくて、魔神から願われるって何だか新鮮。
『実は、故郷の〈風の精霊界〉に帰りたいのだが、そうするには強大な魔力を宿した転移門が必要でな。我一人の力ではそれを開くことが叶わんのだよ。貴女がもしも〈雪の魔女〉を倒すほどの力を持った大魔法使いであるのならば、我が願いを聞き届けてもらえないだろうか?』
できる?
心の中のシャリーラに尋ねてみると、
(できるだろうが、それをして、あたしたちに何の得がある? 封じて使役する方が明らかに得であろう)
確かにね。
だけど、そうやって魔神を侮って酷使して、相手の怒りを思いきり溜めまくって、結局は身の破滅を招いた愚かな魔法使いの前例をいろいろ聞いたんだよね。
やっぱ、こういう強大っぽい精霊との契約は、舐めてちゃいけないって思うんだ。
もちろん、あたしが自分で召喚して制御できる程度の魔神なら、自由に扱えばいいんだけど、たまたま運よくプリズムから解放しただけで、ろくに扱えもしない力にむやみに手を出すのは怖いと思う。
話し合いで目的が叶うなら、まずはそうする。力で無理強いというのは、どうしても必要な時に限るのが、スマートな盗賊の流儀ってことで。
(その慎重さとお人好しなところが、そなたから学んだあたしの美徳と解しよう。力で無理強いして、敵をいたずらに増やすのが愚かだとは学んだ。駆け引きや交渉ごとは任せよう)
こうして、あたしは魔神のジン君の話を聞いてやった。
洞窟が崩壊して、そこに蓄えられた強大な魔力も飛び散ったとき、ジン君は自らの復讐も為されたと考え(魔女の側近を名乗っていた自称・幻術師の男も、あたしの知らないところでジン君に見つかって惨殺されたらしい)、故郷に帰るための強大な魔力を求めて、この〈火吹山〉に渡って来たそうだ。
しかし、風の噂に聞いたところによると、この〈火吹山〉の魔法使いは、4大精霊を扱う魔術の達人で、〈雪の魔女〉に負けず劣らず邪悪そうなので、うかつに関わると、せっかく解放された身がまたも封じられてしまいやしないかと、危険を感じたとか。
そこで、はてどうしたものかと思いながら、この山の上空をふわふわ漂って下界を眺めていると、北からペギラマンの群れが飛んできた。魔女の不始末を処理するのも一興と思い、強大な風の魔力でプチプチ潰して遊んでいて、最後の2羽を見かけて潰そうと勇んでみたら、あたしと出会ったという。
『魔神の我が言うのも何だが、これぞ天の計らいと感じた。強大な魔女を倒した貴女なら、必ずや我の助けになろう。そのために、我にできることがあれば手伝わせて欲しい』
あたしにとっては、ペギラマンの群れを殲滅させてくれただけで十分なんだけどな。
アランシアの平和に十分貢献してくれたと思うよ。
それでも、確認したいことはあった。
「鳥の言葉は分かる?」
魔神は風の領域に所属する生き物なら、と肯定の返事をして、赤ツバメさんの言葉を通訳してくれた。
そのおかげで、あたしの予感(エルフの魂が自然界の永劫輪廻の奇跡で鳥に転生したこと)が正しかったと判明し、さらに今朝これから、ハンマーを取り戻したドワーフ王ジリブランがトロールとの決戦を開始するという鳥の世界のニュースを知ることになった。
こうしちゃいられない。
スタッブ君との約束を果たさなきゃ。
『あたしたちの問題が解決したら、必ずストーンブリッジに行くから』
『戦いが待っているなら、必ず助ける』
今のあたしにはそうするだけの力がある。
だから、魔神のジン君にこう願いを伝えた。
「風の力で、あたしをストーンブリッジの近く、ドワーフとトロールの決戦の地にまで運んで」
『運ぶだけでいいのだな。戦いそのものには手を貸せんぞ』
正直に言って、貸してくれた方が楽だと思ったけれど、そこまでは求められないだろう。力で無理強いしない限り。
「別にいいよ。これはドワーフとトロールの決戦だ。あたしは友だちとの約束を果たしに行く。そこに他人を巻き込みたくない」
『他人か。面白いことを言うな、女主人。貴女の秘めた魔力なら、その気になれば命令することもできようものを』
買いかぶりすぎ……とは言えなかった。
その気になれば、この魔神を力で支配できる。少なくとも、シャリーラはそうした。
今のあたしがそうしないのは、力の使い方に気持ちが付いて行ってないからだと思う。
過ぎたる力の行使には、戸惑いも覚えるので、心の慣れが必要だ。不慣れな力の扱いには慎重でなければ。
『まあいい。女主人の願いは、貴女を望みの戦場に送り届けること。その後は……我も好きにさせてもらう。ちょうど貴女の戦いに感化されて、自分でも暴れたいと思うやもしれんからな。では、これより参るとしよう。ハハハハハ』
こうして、あたし、リサ・パンツァは空からの救世主として、ストーンブリッジの戦いの歴史に名を連ねることになった。
いつものバッドエンド確認
リバT『では、FFゲームブックのEX記事恒例のバッドエンド確認を始めます』
アスト「これをしないと、難易度も決めにくいしな」
・2:魔神(ジン)を解放していない場合、クリスタル・ウォリアーを剣で倒せずに敗退。
・10:ルーンの棒を持たないため、〈雪の魔女〉を倒せずに、血を吸われて吸血鬼化。
・35:呪いの短剣で自らの胸を刺す。
・44:魔女の水晶球の発するエネルギーの矢が直撃する。
・64:雪崩に押し流されて渓谷に落下死。
・78:解呪の儀式の最中に、丸太から下の奈落に転落死。
・116:〈雪の魔女〉の命令を拒めずに、血を吸われて吸血鬼化。
・121:ルーンの棒を持たないため、〈雪の魔女〉を倒せずに、血を吸われて吸血鬼化。
・129:夜歩きの洞穴で、滑って転んで頭を打って気絶したまま死亡。
・134:〈雪の魔女〉の命令を拒めずに、ニンニクを捨てて、血を吸われて吸血鬼化。
・138:〈雪の魔女〉との札対決で、2度めに星を出して、引き分け死亡。
・153:カギを持たない通路に閉じ込められて、洞窟脱出に失敗。一生、奴隷化エンド。
・172:〈火吹山〉登攀中に運だめし失敗で、斜面から転落死。
・191:ウジ虫の巣穴に落ちて、貪られながら死ぬ。
・228:解呪の儀式の最終局面で、フェニックスの代わりにグリフォンを選んで目覚められないまま、山頂でハゲワシの餌になる。
・244:魔女の水晶球を剣で攻撃してしまい、魔力を直接、身に浴びて死亡。
・270:〈雪の魔女〉との札対決で、2度めに四角を出して、負けて死亡。
・277:吊り橋から落下。アッシュが手を伸ばすも間に合わず、川に落ちて溺死。
・302:癒し手の洞窟が見つけられずに、延々と山地をさ迷い歩いて力尽きる。
・316:吟遊詩人を攻撃しようとして、呪曲で麻痺される。首輪を付けられ、魔女の奴隷化エンド。
・360:川に落ちて、金貨の重みのために浮上できずに溺死。
・367:レッドスウィフトとともに、死の呪いで衰弱死。
・380:ルーンの棒を突き刺そうとするも、〈雪の魔女〉に抵抗されて果たせず。血を吸われて吸血鬼化エンド。
・392:〈雪の魔女〉との札対決で、1度めに星を出して、負けて死亡。
・393:脱出不能の通路に閉じ込められて、洞窟脱出に失敗。一生、奴隷化エンド。
・397:アッシュの放った矢が心臓を射抜いて死亡。
ダイアンナ「バッドエンド総数は全部で26(6.5%)。30超えの超絶難易度には至らないが、20超えは十分死にやすくて難しい部類。1ケタは簡単。10代は普通、という判断基準だな」
リバT『吸血鬼化エンドが5つもある辺り、本作が吸血鬼ゲームなのは間違いないのですが、全てが前半の雪の魔女との初遭遇シーンに固まってしまっているのが、吸血鬼を愛するファンには残念なところだと察します』
ダイアンナ「だから、リプレイではとにかく吸血鬼化という点にこだわってみせたのだ。前半で血を吸われて吸血鬼化だけでなく、吸血鬼の魔女に憑依されての吸血鬼化や、死の呪いの副作用による吸血鬼化など、原作ゲームブックをさらに膨らませた吸血鬼好き作者の、吸血鬼プレイヤーによる、吸血鬼ファンのための吸血鬼三昧ゲームブック攻略記事になったと自画自賛する」
アスト「FFシリーズでは、1巻、5巻に吸血鬼が1シーンで登場して、9巻と10巻がともに吸血鬼メインの作品となったわけだが、どの吸血鬼が好きかで吸血鬼談義をするのも一興ではないか」
ダイアンナ「そんなもの、あたしの演じるシャリーラが最高に決まっている。それぐらい、あたしの吸血女子力全開にロールプレイしたわけだよ」
リバT『それにしても、シャリーラというキャラは能力値を使った直接対決こそしないものの、絡め手を使って非常に芸達者なのが特徴と言えますね。芸術好きから崇拝されていたり、殺さずに奴隷化することにこだわってみたり、最初の遭遇でも主人公を誘惑するのにこだわって、いかにも自分の世界を広げることが初期のアイデンティティでした。
『だけど、主人公に肉体を滅ぼされて、水晶球シャリーラになってからは、性格が微妙に変わって、快楽サディスト殺人者になったようです。罠にはめて喜ぶとか、優雅な貴婦人が小悪魔ギャルおばさんになった感じで、どっちがシャリーラの本性なのか、解釈に迷います』
ダイアンナ「最後のバンシーが、悪のシャリーラの成れの果てみたいに思えたんだけどね。技12、体12だとラスボスにふさわしい能力だとも思えるし。人によっては、あのバンシーをラスボスと見なすことも可能なのではないか?」
アスト「うちのリプレイでは、バーバリアンがラスボスだったけどな」
リバT『一応、パラグラフ400番の文章からは、死の呪い=シャリーラの亡霊による復讐と解釈することも可能ですね。まあ、うちのリプレイでは、これでもかとシャリーラを掘り下げた結果、クイーンが自らシャリーラになる、と言い出して、嬉々としながらシャリーラのロールプレイを始めたときは、これ本当に収拾つけられるのか!? と作者のNOVA氏が自己ツッコミした程です』
アスト「NOVAの野郎は、イタコ作家と称される部類で、自分でキャラを制御できないことがしばしばらしいからな」
リバT『ですから、ゲームブックの旧作は、どのプレイヤーが担当すれば感情移入的に面白くなりそうか配役を決めて、自由にロールプレイ遊びをさせてみるそうです。リーサン・パンザの物語を受け継いだリサ・パンツァのリプレイシリーズは、作者的にも小説風味で膨らませることができて、興が乗って書けたな、という感想です』
ダイアンナ「吸血鬼化エンドの他に、水晶球シャリーラとの対決で5つ、首輪絡みの奴隷化エンドで3つ、死の呪い絡みで(体が弱っているゆえのドジを含めて)7つもあるから、シャリーラが原因となってるバッドエンドが20もある。つまり、シャリーラは稀に見るバッドエンド誘発クイーンなわけさ。一人のキャラで、ここまで多彩なバッドエンドをもたらす人物をあたしは知らない」
アスト「この場合、サカムビット公みたいに〈死の罠の地下迷宮〉みたいな罠施設を構築したのは含まないわけだな」
ダイアンナ「あくまで、自分が直接、手を下したり、奴隷化の仕組みや呪いを魔法で紡ぎ上げたりしたってことだね。アズール卿の暴走馬車で人が死んだらアズール卿のせいだけど、ブラックサンドの街で卿の知らないところで勝手に酒場で喧嘩したりするのまで卿の責任にはできないだろう。その意味で、サカムビット公は、迷宮探検競技の主催者である以上の罪を犯していない。サカムビット公が命じて、リサとスロムを戦わせたなら恨みにも思うけど、そういう距離での悪意は公には見せていないからね。アズール卿なら暗殺者を派遣したりもして、より悪意的に描かれているけど」
リバT『シャリーラさんも、原作で直接の悪意で関わるシーンが強調されていましたね。当リプレイは、違う演出で悪意は控えめですけど、もっと親密にイヤらしくジワジワと這い寄る混沌レベルで……』
アスト「魂の侵蝕までは、当時のゲームブックのシステムで表現しにくいしな。ただの演出ロールプレイじゃなければ、シャリーラの侵蝕ポイントが一定数貯まるとバッドエンドって形のルールに落とし込むところだが」
ダイアンナ「その走りが『地獄の館』の恐怖点なんだろうけど、より完成度を高めようと思えば、恐怖点は一定数貯まればゲームオーバーではなくて、パラグラフ選択でフラグを立てるのに用いるという手もある。『きみの恐怖点は今いくらだろうか? 4以下なら32へ進め。5以上なら167へ進め』と、進んだ先でイベントが変わって来るならストーリー分岐が楽しめるけど、当時はまだそこまで複雑にはできなかったっぽい」
リバT『そういうシステマチックなフラグ立てシステムとして発展したのが、日本の東京創元社のゲームブックですね。ソーサリーを最初に出したところですが』
アスト「まあ、『雪の魔女の洞窟』の原作で採用されていないシステムを、勝手に妄想しても仕方ないってことで、今回は魔女というボスキャラをリビングストンさんがあの手この手で印象的にシーン演出していったという結論でいいだろう」
リバT『物語半ばで倒されるというボス敵としてはどうよ? という文脈で語られることが多いのがシャリーラというキャラですが、バッドエンドに絡む数の多さから考えると、決して存在感が薄いわけではないってことですね』
アイテムの話
ダイアンナ「さて、次に必須アイテムと重要アイテムの話だが」
アスト「このゲーム、意外と必須アイテムが少ないことが判明したんだな。結局のところ、以下の3つだけということになる」
・ルーン文字の棒:洞窟の台所の戸棚で入手。最初の魔女との遭遇でとどめを刺す際に使用。なければ、魔女を倒せず、バッドエンド。
・四角い金属板:ブレインスレイヤーの部屋の赤い壺から入手。魔女との2戦めにおける決闘ゲームで勝つのに必要。これ1枚で勝てる。
・健康のポーション:コク川を渡る際にダークエルフを倒して入手。これを飲んでいなければ、〈死の呪文〉の話をレッドスウィフトから聞いた直後に、いっしょに死ぬバッドエンド。
リバT『ただ、ないと攻略が厳しくなるアイテムがいろいろあるので、ここではそのアイテムの評価を見定めたいと思います。なお、攻略必須アイテムを取り逃がすルートで入手できるものは、有用度を考えても結果的に意味がありませんので割愛します』
★重要アイテム:あれば非常にお得か、なければ非常に大きなペナルティーを受けるので、是非とも入手しておきたいアイテム群。
・勇気のお守り:技術点+2という激強アイテム。台所の仕掛け本からの入手時に罠で4点ダメージを受けるというデメリットがありますが、これがないと、後のブレインスレイヤー戦で技術点2、体力点6を失うことを考えると、十分お釣りが来ます。原技術点制限を考えるなら、技術点プラスアイテムって、技術点失わないプレイを心掛けてる作者にとってはあまり嬉しくないのですが、後に死の呪いで不可避の技術点減少に際しての保険とも思ったり。
とにかく、これがないと技術点10、体力点10のブレスレを倒すのが困難……と思いきや、能力値減少させただけで、親切に(?)解放してくれるので、自分はブレスレ様を攻撃するぐらいなら能力値を生贄に捧げた方がマシと考える超絶触手好きなブレスレ信者さんの場合は、敢えてお守りを入手しないという選択も……まあ、特殊性癖としておきましょう。
でも、世の中、分からないからなあ。このリプレイを書く前は、自分も「雪の魔女のゲームブックをプレイしたら、なぜか主人公が雪の魔女に憑依されて、雪の魔女をハッピー更生させちゃいました」なんて話を聞いたら、その作者は頭がおかしいだろう、どんなけシャリーラが好きやねん、とマジツッコミ入れていたと思う。まさか自分がそんな作品を書いてしまうとは、一月前には思ってもおらず。これだから創作はやめられない(苦笑)。
・スリングと鉄の玉:ドワーフ(当リプレイのアリマ・セン)を助けると、もらえる飛び道具。巨人退治と、雪の魔女の水晶球と対峙する際に有用。ノーダメージで状況突破ができるので、入手すべし。入手に際するリスクやデメリットが一切ないのもいい。
・ミノタウロスの角の粉末:ゾンビの倉庫で入手。直後の白竜戦で早速有効。これがあれば、技12、体14の本作最強ホワイト・ドラゴンとガチ対決せずに済みます。
・ニンニク:ゾンビの倉庫で入手。この後の魔女との対決で有用。吸血魔女の魅了誘惑を退けやすくなります。
・ドラゴンの卵:ゾンビの倉庫で入手。死の呪いの解呪儀式でバンシーの精神攻撃を防ぐのに有用。改めて読むと、この倉庫(パラグラフ200)って食材置き場なんだよね。ドラゴンの卵を4つも入手したシャリーラって凄い。
問題は、シャリーラって吸血鬼だから普通の食事はしないだろうし、吸血鬼でも食事ができるってことなら、彼女の食材置き場にニンニクがあるのもおかしい。すると、誰のための食材かとなった時に、信徒たちしか考えられない。信徒のためにドラゴンの卵を4つも入手してくれるシャリーラって、実は信徒思いな良き教祖だった?
まあ、食材ではなくて、魔法の実験素材かもしれないけれど。ゾンビの見張りは、外敵ではなくて信徒が好奇心で倉庫に立ち入らないようにするための番人かも。
・〈グル・サン・アビ・ダアル〉:ブレインスレイヤーの部屋の灰色の壺から入手。風の精霊から身を守る呪文で、入手時に運+1にもなるから、見逃す手はない。もしも、ゲームブックを作品を超えてキャラ続投キャンペーンでプレイする場合、これ以降、リサには風の精霊の罠は通用しないというチート設定を導入したくもなるけど、あくまでフレーバー演出の域に留めておかないとフェアじゃないか。
作者が他の作品で登場した呪文なんかを覚えていればの話。まあ、機会があれば唱えてみよう、グル・サン・アビ・ダアル(あくまで雪の魔女の仕掛けたトラップ避けの限定パスワードと解釈するのが無難かもしれないけど)。
・酸除けの盾:短剣の罠を抜けて、左の通路の先で入手(原作では名前が付いていないので、あくまでここだけの仮称)。その際、前述の呪文がないと罠で痛い目に(技術点を含むダメージのほか、ドラゴンの卵が割れたりして入手アイテムまで失う)。
そうした苦労の末に入手した盾は、技術点+1の効果なので、技術点が減って困っているプレイヤーには朗報。しかし、盾のゲームでの最大の恩恵は、直後の酸の罠で受ける4点ダメージを回避できること。「呪文入手→盾入手→酸対策になる」と、仕掛けが連動してる展開は単発ギミックよりも頭を使って書いている感があって、好きです。物語に上手く仕込まれた伏線に気づいたときのアハ体験に通じて、解析するのも楽しい瞬間。
・ロウソクと火口箱:人オークを倒して入手。ダンジョン探検家にとって明かりは必須だと思うけど(夜目の利く異種族でもない限り。FFゲームブックでは稀)、FFの冒険者は意外と明かりの準備が悪い者が多くて、まあ、そういうゲーム性と言えばそれまでですけど、何というか終盤の今さら明かりを入手かよ、と思った。
ただ、最後の解呪の儀式で、明かりがないと判定に2点のペナルティ。2Dにおける2点差は結構大きい。技術点12だと失敗しない判定でも、11以上で失敗ということは、失敗確率0%から10%ほどになる。技術点11だと、失敗率3%が20%弱ぐらいになって、自分の能力値が低いほど、失敗率の上昇が跳ね上がる計算に(総じてペナルティ2点は、失敗率が10〜20%上昇と考えればいい)。失敗すると即死バッドエンドな試練で、失敗の可能性が2割ほども上昇するリスクを考えると、人オークには犠牲になってもらっても、アイテム入手するメリットは大きいです。人オークって、それほど強くないですしね。
★お得アイテム:なくても大きな問題はないけど、入手も簡単だし、ちょっとしたメリットも、塵が積もれば山となるわけで、あえてスルーしなくてもいいか、と。
・白いマント:洞窟に入って最初に遭遇するエルフからもらえる変装用マント。後の氷魔神戦を避けるのに役立つけど、フルートでも代用可だし、最初から戦って、シャリーラさんを氷魔神の契約から解放することを狙っても可。
いや、うちのリプレイでは、狙ったわけじゃなくて、ロガーンの導き(運だめし失敗)で、たまたま偶然、そんな展開になっただけなんですが。
・銀のフルート:洞窟の台所で入手。洞窟内での交渉ネタ(芸術好きの魔女に呼ばれた云々)として使えるけど、それで失うことはないので、そのまま持っていると、ペガサス召喚用の銀製品として活用できる。なくても問題ないけど、あった方がストーリーの幅が広がると思う。まあ、当リプレイではお金と交換したので、途中が何だかドキドキでした。
・金の指輪と銅の指輪:霜の巨人を倒して入手。銀以外は当たりです。どちらも運1点になりますので、運2点回復のために入手すべし。冷気防御や戦士召喚の能力に関しては、白竜戦でしか使えないうえ、白竜に対しては効果があまりに弱かった。実用よりは、運を回復するお守りとして。後は、それぞれ金貨50枚に換える交換アイテムとして入手する意味はあるかも。まあ、金貨を必要以上に増やす意味はあまりないけど。その辺は自己満足か物語のネタか。
・星の金属板:絶対に遭遇するケイブマンから入手。戦闘途中で逃げるという選択をしない限り、必ず入手できるので、ほぼ確実に手に入るはず。だけど、魔女との札対決には全く役に立ちません。出した瞬間、バッドエンドなので、実戦では使わないように。この星はラッキーではありません。まあ、運は下手に使わずに、適度に保持しておくべし、という教訓か。
・銀の矢尻と力の腕輪:バーバリアンから入手。エルフのブーツをゲットしなければ、バーバリアンとは必ず出会って、必ずバトルになって、必ず入手できるアイテムです。
銀のフルートを入手していれば(換金していなければ)、必要ないバトルですが、もしも技術点が減っていれば、この後の儀式の成功率を上げるためにも、力の腕輪(ここでの仮称。技術点+1は他のゲームだと嬉しいけど、原技術点縛りのFFでは微妙に思うことがしばしば)を入手する意味も十分あると思います。
ともあれ、「強さは力」というバーバリアン哲学を如実に言い表した腕輪の彫刻は、クスッと笑えて結構好き。したがって、より強い主人公が弱者から腕輪を奪いとるのも、バーバリアン流の道理にかなった行為ってことで。
★損得微妙なアイテム:手に入れるメリットはあるけど、デメリットもあるので、好みの問題。ただし、他の条件が整っていないと、入手していない=バッドエンドにつながるケースもあって、他の情報とセットで考えたい。
・ハンマーと槍:セットで序盤の山小屋で入手できる。槍は有用で、直後のイエティに投擲を成功させることで、弱体化を図れる。技術点11→10、体力点12→9というのは結構大きい。このイエティ戦、序盤のボスって感じで、技11、体12というのは、最終敵候補のバンシー(技12、体12)に近いレベル。弱体化させられると楽である。
一方、ハンマーの方が曲者で、これを持っていると、魔女の強力な番兵クリスタル・ウォリアー(技11、体13)を魔神(ジン)の透明化能力で回避できない。つまり、イエティよりも強い敵と戦わなければならないわけである。
まあ、最悪なのは、魔神(ジン)を解放しておらず、ハンマーも持っていない場合で、バッドエンド確定である。
単純な損得で考えるなら、槍とハンマーを入手せずに、イエティとはガチでやり合って、クリスタル戦士の方を、魔神パワーで回避する方がいいんだけど、当リプレイではわがまま魔剣のキャラのせいでハンマー大活躍とか、スタッブの演出代用武器として、ロールプレイ的に遊ばせてもらいました。
・丸い金属板:シャリーラ戦後の2択ルートの、右で入手。魔女との2戦めにおける決闘ゲームで勝つのに使える。最初に四角を出せば一発勝利だが、丸であいこ、2回めも丸を続けて勝つって方法もあって、四角か丸を入手していれば勝てます(星だと全く勝てないので役に立たない)。
問題は、丸い金属板を入手するためのルートが、スタッブのくしゃみのせいで、安心して歩けないこと。安全に歩ける確率は3分の1で、リスクがそこそこ。逆ルートだと、回復に使える魔法石があるので、丸い金属板にはこだわらない方が攻略が安定します。
しかし、金属板3種をコンプリートしたい人は、敢えてリスクを承知で入手を狙ってみるのもありか、と。
・エルフのブーツ:ヘビの取っ手の箱から、ランダムに9分の1の確率で入手可能なくじ引き懸賞アイテム。入手すると、終盤のバーバリアンを惨殺せずに済みます。罪のないバーバリアンの命を奪うのは忍びないと考える心優しいプレイヤーさんは、くじ引き前にセーブして、ダイス目が5〜6を2連続で出せるまで、延々と振り続けるか、ズルして6が2連続で出たことにする、とか言って、何としてもエルフのブーツをゲットしましょう。
なあに、バーバリアンの命を守るためと言えば、リビングストン先生もチートを許してくれるさ。何でもバーバリアンキャラが好きみたいですし。
逆に、バーバリアンから銀の矢尻や、「強さは力」という豪快な腕輪を手に入れたい人は、エルフのブーツを入手しないことを勧めます。
それにしても、入手確率がランダムなアイテムは、射幸心を煽るなあ。
リバT『以上が、最後まで攻略可能な(最適解の)ルートで入手できるアイテムです。他には、ゴブリンから入手できる短剣や、雑多な食べ物やガラクタも一応、入手できるのですが、あまり特筆する品でもないですからね。これらは換金アイテムとして、金貨600枚を少しでも多く持ち帰るために用意されているのかな、と』
ダイアンナ「必須アイテムは3つしかないけど、重要アイテムを手に入れていかないと、攻略難易度が跳ね上がるという感じで、リビングストン作品がアイテムゲームであることを改めて確認させてもらえた。あと、リビングストン作品はバトル重視の印象もあるけど、今回はバトルを避けられる展開も多く、バトルの状況もいろいろで、単に遭遇したからやっつけるよりも、アイテムや交渉を駆使してすり抜ける系のイベントが結構、多かった感じで、ジャクソンのとはまた別種のパズル感覚を覚えたな」
リバT『ジャクソンさんのはパラグラフ構造に仕掛けがあって、リビングストンさんのはよりストレートというか、アイテム集めのヒドゥン・オブジェクト系アドベンチャーゲームの要素が濃厚です。あとは、RPG原初のハック&スラッシュが楽しめるのは、リビングストンの方ですね』
アスト「攻略本を読みながら、このモンスターはこんなアイテムを持っているのか。だったら、狩らねば、とか、このアイテムは使えねえ、とか、おお、このアイテムはこんな役に立つのか、だったらこのルートが当たりだな、とか、そんなことを考えて解くのがリビングストン作品だ、と」
リバT『ジャクソン作品は、一通りパラグラフを回ってみたけど、行き詰まった。どこに隠しパラグラフがあるんだよ? う〜ん、おや? 攻略メモのこの情報を使えば、いいんじゃないか? おお、道が新しく開けた。謎解き、凝ってるなあ……って感じの方向性ですね』
ダイアンナ「パラグラフ構造に秘められた謎解きがポイントのジャクソンと、アイテムを集めて有用度や攻略必須か否かを確認しながら、ルートを見極めるリビングストン、と」
リバT『ジャクソンさんほどではありませんが、リビングストンさんで迷わせるのは、外れルートにも美味しく役立つアイテムが配置されていて、一見、こちらが正解かも? と感じさせてくれることですね。今回は、「おお、こんなところに鉄のカギが。よし、ラッキー。これは正解っぽいな」と思ってみたら、正解は台所にあるという』
ダイアンナ「解くためには、台所で親切にケーキをもらって、わ〜いって飛びついちゃダメってことだね。ケーキなんかでごまかせるか。もっと良いものをよこせ。そこの戸棚! と聞き分けのいい良い子じゃなくて、押し込み強盗ムーブが必要、と」
アスト「秩序重視なプレイヤーだと、飯の準備の邪魔をする不作法なやり方は選びにくいからな。それこそ、攻略必須アイテムの匂いという強引な理屈で押し通さないと正解ストーリーが成立しないわけだ。必然的に、アランシアの英雄はしばしば無頼の徒になる(苦笑)」
ダイアンナ「基本は善玉プレイを目指しつつ、たまに盗賊の流儀や、腹ペコ道で暴走する善悪噛み分けたプレイが攻略記事にも必要だしね」
リバT『だからと言って、ラスボスを乗っ取らないでくださいね。こういうのは、これで終わりにしないと、次の物語は成立しないと思います』
アスト「さすがに、マルボルダスを乗っ取って、善に転向させるのは難しいだろう」
ダイアンナ「目指すは、シャリーラVSリーシャというスーパー悪女対決だな。これはこれで、名前だけでなく、キャラ被りしている感じで、宿敵って感じが濃いし」
リバT『FF歴代悪女列伝とか、もっと広く女性キャラを網羅したFFヒロイン図鑑ってのも同人とかでないでしょうかね』
アスト「元祖悪女は、バルサス嫁のルクレチアで確定だな。そして、元祖の善玉女性は、地下の洗濯おばさんの幽霊ってことで」
ダイアンナ「洗濯おばさんかあ。今だと、オリジナル名を付けて、もっとキャラ立てさせているんだろうなあ。誰か書かないかなあ、『バルサスの要塞秘話 洗濯おばさんの大冒険』とかさ」
リバT『どこの層に需要があるかよく分からないので、この話はここまで。続きまして、今作の難易度です』
難易度の話
★雪の魔女の洞窟(難易度4)
・ラスボスが強い(X):そもそも、どのキャラをラスボスとするのか、判断が非常に難しい。タイトルロールの雪の魔女シャリーラは、能力値を使った直接戦闘ではなく、絡め手を駆使して、主人公を責め苛むイヤらしい敵である。誘惑して奴隷化させたり、罠を仕掛けてネチネチ痛ぶって来たり、自分有利なゲームで弄んでみたりしながら、もっとチートな能力を持つ主人公(未来視だったり、リセットだったり)に退治されて、最後は浄化されて、きれいなシャリーラになったり、ならなかったり(注・ゲームブック本編ではなりません。あくまで本リプレイのオリジナル仕様です、きれいなシャリーラは)。
で、雪の魔女をラスボスと見なさなければ、ラスボス候補になるのは、ホブゴブリン、バンシー、バーバリアン、人オーク……とプレイヤーによって異なり、必ず倒さなければいけない敵となると、スタッブが活躍した丘トロール戦まで遡る。
そんなわけで、ラスボスの強さ云々を論じられる作品ではないと判断し、この項目は0点とした。うん、雪の魔女は敵じゃなくて、説得して味方に付けるのがグッドエンドなゲームってことだね(注・違います。あくまで本リプレイの……以下同文)
・全体的に罠が多くて死にやすい(◎):サカムビット公ほどではないが、雪の魔女シャリーラも狡猾なダンジョンマニアで、人を陥れるための研究に日々余念がない。公式にゲーム好きという設定で、とっさにゲームのルールを構築するゲーマーの才に満ちている。AFFのディレクターをすれば、さぞ極悪サディスティックなシナリオを運営してくれるだろう。彼女がロガーン信者でなかったのが残念なほどだ。
ん? 本リプレイでは、きれいなシャリーラがリサの影響で、ロガーンに帰依するという夢の展開が?
閑話休題。バッドエンド数26というのは、立派に死にやすいゲームなのは間違いないので◎。ただし、このゲームが親切なのは、回復ポイントもしっかり用意されていることだな。雪の魔女自身、自分の信徒に対しては親切に気配りしている面もあるようで、自分有利を保ちつつ、鞭だけでなく、飴の使い方も心得ていると伺える。やはり、良きディレクターっぽいな。
・パズル構造が複雑(◯):ジャクソンほどではないにせよ、本作のリビングストンは、アイテムを活用した仕掛けが過去作よりも洗練されていて、ストーリー性と相まって印象的なパズルにも通じる。あるアイテムが別のアイテムを入手するための鍵になっていたり、外れルートのアイテムも活用できる場面があったり、有用か否かの判断がすぐにはできなかったりする。この点が攻略ルート選択にも影響していて、何ともジレンマを感じさせるシーンがある(単純王道なリビングストンには珍しい)。
FFシリーズの過去の地名を登場させる後半の世界観構造も、ちょっとしたパズル(謎のヴェールが解けゆき、明かされる世界)と考えると、最後まで解くと世界の完成絵が見えて来そうなジグソーパズルがお見事、と。
◎じゃないのは、まだ完成品ではないから。これからさらに完成度を高めてゆく端緒の作品ってことで。
・ゲームシステムが難しい(X):全くの基本形です。シャリーラの侵蝕ポイントとか、レッドスウィフトへの好感度とか、そういう特殊ルールは一切ありません。その辺は、プレイヤーの想像、妄想の範疇ですからね。ゲームルールが複雑ですと、そっちの処理に気をとられて、自由な発想が出しにくくなるわけで、良し悪し。
それにしても、リビングストン先生の良いのは、単純なPC設定で自由度が高いのに、強烈なシチュエーションを与えて、いろいろ冒険のサプライズを味わわせるところ。システムによるサプライズがジャクソンなら、ストーリーによるサプライズがリビングストンって感じ。すなわち、入り口が単純ながら、奥が深いってことですね。トカゲ王や雪の魔女の後半の盛り上がり方は、プレイした者にしか味わえないワクワク感でした(ここでのリプレイが、自分の味わい方を伝えられていると幸いですが)。
・フラグ管理がややこしい(◯):アイテムが増えると、どうしてもフラグ管理がややこしくなりますよね。
実は作品中に一つミスを発見しまして、ナイトストーカーの洞穴で「兜をかぶっているか」という選択肢。兜は異教平原のケンタウロスを倒して入手するのですが、そちらに進むと、ダークエルフの健康ポーションが飲めません。つまり、月岩山地に入る前に、主人公は呪いで死んでしまうわけで。
兜をかぶっている状態で、ナイトストーカーの洞穴まで到達できるはずがないので(他にNOVAが見落としている兜入手方法があれば別ですが)、兜装備か否かを尋ねる選択肢に意味がないということになります(当然、かぶってなくて転倒死するのが確定)。
解く方よりも作る方が入念にフラグチェックはしているはずですので、それでもこういうミスが発生するぐらいには、本作のフラグ管理がややこしいという証明にはなっていると考えます。
なお、◎じゃないのは、アイテムに細かい数字が割り振られていなくて、ややこしいパラグラフジャンプなんかを考えなくていいから。単純に、該当アイテムを持っているか否か、イベントをクリアしたかどうかをストレートに聞いてくるだけなので、パラグラフチェックはしやすい部類でした。
ただし、いくつか見落としがあった(銀製品が入手できなかった場合の攻略の可否とか、洞窟内でオーブが爆発した場合のイベントとか)のも事実なので、フラグ確認がややこしいのは間違いないか、と。オーブの爆発云々については(その5)記事に注釈を加えていますので、ご興味の方はそちらも読んでいただければ。
ダイアンナ「難易度4か。意外と低いんだね」
リバT『ゲームの難易度ではなく、攻略記事の難易度は、かなり高かったですけどね。主にクイーンのせいで』
ダイアンナ「〈雪の魔女〉が主人公ヒロインに憑依するというネタを最初に考えたのは、ダディが悪い。あたしはその要望に忠実にロールプレイしたまでだ。最後は〈雪の魔女〉となって、ハッピーエンドを迎えたのだから、後から文句を言われる筋合いはない」
リバT『まあ、うまく物語としても着地できたんだからいいですけどね。ゲームブックを別解釈したアレンジバージョンということで、「スロム生存」と「シャリーラ転生」ついでに「赤ツバメが文字どおり鳥に転生」は、一ファンの夢の俺FFという形です』
・8:火吹山の魔法使いふたたび、モンスター誕生
・7:地獄の館、天空要塞アーロック、サラモニスの秘密
・6:バルサスの要塞、危難の港、サイボーグを倒せ、死の罠の地下迷宮
・5:さまよえる宇宙船、アランシアの暗殺者
・4:雪の魔女の洞窟
・3:火吹山の魔法使い、魂を盗むもの、トカゲ王の島
・2:運命の森、盗賊都市
アスト「難易度4は、アランシアの暗殺者よりも低く、トカゲ王よりは上か。そう考えると妥当かもな」
リバT『初の難易度4が埋まったことを嬉しく思いつつ、簡単すぎず、難しすぎず、手頃な難易度の作品って感じですね。ただ、ボスでもないのに回避できない通りすがりの強敵ザコが出現しますので、技術点は11か12でないと最初のボス、イエティ戦でも死にかねない……ということで、技術点9の平均的なキャラではままならないのが、「死の罠」以降のリビングストン作品のお約束ってところでしょうか。最初は敢えて捨てキャラで様子見してから、ある程度進めてみて、死んだら技術点を1点加えてみて(体力や運でも可)、再挑戦して少しずつダンジョンの奥まで進めていくのが正攻法だと考えます』
アスト「FFシリーズが日本でブームを迎えていた頃は、ソーサリー4部作が一つの金字塔で、一方、社会思想社の本家FFシリーズは、『バルサスの要塞』『死の罠の地下迷宮』『地獄の館』の3作が高難度ゲームとして話題に挙げられていたよな」
リバT『初期10作品では、そうなりますね。リビングストン作品は、「死の罠の地下迷宮」の激ムズ難易度が話題になった以外は、それほど大きな話題になることもなく、派手なジャクソンの相方ぐらいに扱われていた感じです』
ダイアンナ「雪の魔女は当時、どういう評価だったんだ?」
アスト「雪の魔女というキャラが、ボスにしては異質すぎて、作品そのものが異色作という感じだった。ただ、プレイした者は〈赤速〉とスタッブの仲間コンビとの出会いと別れのドラマを熱く語ったり、スロムとともに〈赤速〉が大人気だった。まあ、その人気が後に本邦のドルアーガ3部作の魔術師メスロンに受け継がれていったと思う。クールなエルフの仲間が格好いいNPCとして認知されて(通なおっさんはドワーフの魅力を語るんだが)、とにかくソロプレイのゲームブックに、印象的なNPCが仲間として加わり、主人公(自分)にあれこれ情報くれたり、敵の一部を引き受けてくれたり、不幸な別れを遂げるドラマシーンまで含めてファンの話の的だった」
リバT『当時はインターネットもなかったですし、パラグラフ解析とかゲーム性の進化発展について語れる人も限られたマニアが個人で思う程度で、そういう人はプロとなって自分で作品発表までするから(ジャンルが発展期なので、アマチュアからプロへの参入障壁が今より低かったため)、マニアックな解析をするアマチュアが可視化されたのは、21世紀に入ってから懐古サイトのコンテンツを通してでした』
アスト「昔、ゲームブックというものがブームだったので、久々に懐かし気分でプレイした記録をホームページに挙げてみた系だな。趣味の本棚とか、懐かしアニメやコミックを語るノリでゲームブックも語ってみたり」
ダイアンナ「今みたいに、新作に何が来るのかワクワク楽しみだって空気じゃなかったってことだね」
アスト「新作は何が来るんだろう、ワクワク」
リバT『やはり、定期刊行の雑誌で、リアルタイムの新刊情報が補充されるのは大きいですね。いつ出るか分からぬ本を待つより、鋭意準備中という断片情報でもちらほら提示されると、安定して続きが楽しみだって気分になれるってものです。ゼロ年代には、そういう空気が少なくて、とりあえず懐かし本を復刻してみました程度の扱いで、新しいことを始めたら、こんな感じで何かが違うって反応になる』
ダイアンナ「できれば、こういう系の絵柄で『ケイバーンズ・オブ・ザ・スノウウィッチ』を出して、萌えシャリーラのイラストを付ければ良かったのかもしれん」
アスト「すると、主人公は女性で、イケメンエルフのレッドスウィフトと、ドワーフのスタッブが表紙になって、背後に魔女シャリーラがって表紙を想像したが、それってうちのリプレイじゃないか?」
ダイアンナ「そうか。うちのリプレイは幻の『ケイバーンズ・オブSW』を令和の時代に復刻させたんだな。今からタイトル変えるか。『雪の魔女』を改めて『ケイバーンズ〜〜』って」
リバT『思いつきで、わざわざ多くの読者に通じないマニアックな方向に突き進むのはやめて下さい。それよりも、当リプレイの読者さんに分かる程度のマニアックさで話を締めますよ』
(次回に続く)