攻略ヒントとまちがいルートの話
リモートNOVA『さて、無事にお盆休みに入ったので、頑張って話を進めるぞ、と思っているが、前回はカラメールの北へと伝令任務に行こうとしていたら、道中で昔の仲間のソフィアが殺されていたことを発見し、その件をカラメールに報告して、東への偵察任務に切り替わったわけだ』
ダイアンナ「そのまま北へ進み続けても、事件解決にはつながらず、バッドエンドを迎えるだけってことだね」
NOVA『本作の選択肢は割とシビアで、正解ルート以外では行き詰まるのが当然ということが多い。逆に言えば、FFの売り文句の一つ、「正解の道をたどれば、能力値が多少低くても、攻略するのは簡単」な部類に入る。技術点10、体力点20、運点10と期待値やや上程度で普通に解けると思うな。もちろん、技術点判定や運だめしの失敗が結構致命的なイベントも多いので、ダイス目次第ではバッドエンドに陥ることもあるんだが、能力的に「こんなの勝てねえよ」と数字データで絶望することはないと思う。その意味で、数字データのバランスは割と取れているゲームだ』
アスト「むしろ、リビングストンの方が、その辺のバランスが厳しいくらいだもんな」
NOVA『技術点12の最強能力じゃないと必須戦闘に勝てないとか、そういうバランスで作られているっぽいからな。まあ、技術点12であっても、そんなの関係ない乗り物戦闘で不利を強いられる理不尽なゲームバランスのアーロックに比べると……いや、やはりキツいか。リビングストンの難易度最高峰と言われる「甦る妖術使い」なんかは。ラスボスが激強過ぎるからな』
ダイアンナ「そうなのかい?」
NOVA『先の先の話になるが、リサ・パンツァには「恐怖の神殿」のマルボルダスに次いで、「甦る妖術使い」のラザックまでは倒して欲しい。そのためには、多少のチートも許そうかな、と思っている』
アスト「チート技を使わないと、何回死ぬか分からない戦闘バランスってことか」
NOVA『攻略記事の性質上、どのルートが正解で、他に有利不利の考察はするけれど、必須戦闘が運任せの敵に対しては、もうダイス目次第となるからな。「技術点12、体力点20、2回連続で負けたら14へ進んでバッドエンド」という能力のラスボスなんて(弱体化手段もなし)、最強能力で運も伴わないと勝てないでしょう』
アスト「FFのラスボスでは、もっと強いデータの敵もいるけど(ジャクソンの『地獄の館』とか『サイボーグを倒せ』とか)、弱体化手段は用意されているもんな」
NOVA『そんなリビングストン先生の鬼みたいなゲームバランスに比べたら(それに比べると、近年の作品は優しくなったよ)、本作はパラグラフ選択次第だからな。しかも、正しい選択のためのヒントは、きちんと提示されていることに、後から気づいたわ』
ダイアンナ「後から気づいても遅いのでは?」
NOVA『記事を書くうえでは遅くない。一応、パラグラフ総当たりで、何が正解で、何が間違いかはチェックしているわけだが、正解が分かってから改めて最初から読み直すことで、ああ、これヒントだったんだ、と気づいたりもする。最初に東ルートを選択した際に、パラグラフ104の貴族との会食会でこんなことを言われる』
マッドヘリオス『軽はずみな行動を慎んで、必ず生きて帰って、報告するように』
NOVA『何を当たり前のことを、と思ってプレイ中は読み流していたセリフだったが、実は重要な攻略ヒントだったんだ。偵察任務が終了した後、3択の選択肢が出るんだが「1.報告に戻る」「2.敵軍をさらに追跡する」「3.敵軍の弱点を求めての探索行に出る」の趣旨で、正解は1→3→2じゃないと解けない。しかし、つい3を先に選んでしまうのがありがちなんだよな。報告の機会があったら、先に報告に戻って来い、というのが、マッドヘリオス様のありがたいアドバイスだったんだ。ただのハゲデブじゃなかったんだよ、この人』
アスト「マッドという名前と、見た目で損をしている感じだな」
NOVA『基本的に、当たり前のことしか言わない能吏タイプなんだと思う。平和な社会で、段取り的な行動を回すには最適で、戦時に果断な決断力を示す英雄タイプではないけど、役人的な決められた仕事を安定してこなすだけの能力は持っている、と見た。それに考えてみれば、グルメで腹ペコキャラ……ってのはリーサンと気が合いそうじゃないか。この人の後に付いて行って、美味しい食事を振る舞ってもらえるなら、このリーサン・パンザ、忠誠を尽くします……ってロールプレイを、攻略の実プレイを終えた後で、記事書きしながらの今ごろになって思いついたわ』
ダイアンナ「プレイ中には気づかなかったNPCの凄さを、後から思い返して、気付いたってことか」
NOVA『現実でも、たまによくあることなんだよ。リアルタイムで番組を見ているときとか、人と交流しているときには、その番組の本当の面白さや、その人の凄さを意識することがなくてテキトーに流していたことが、後から振り返って考えたり、他の人の意見に触発されることで、再評価のきっかけになることが。つまり、初見の印象やその場の感情では普通に流していたことが、改めて考えた際に実は凄かったって気づくことも多々あって、自分の直感的な判断力が半々程度にしか当てにならないなあ、と思う』
アスト「直感的な判断力が確実なものだったら、ゲームブックのパラグラフ選択も正解ルートをスイスイ進んで行けるもんな」
NOVA『まあ、ゲームブックだと、何が正解で、何が外れかはその場ですぐ分かることもあるし、後々まで読み込まないと断定できないこともあるけど、複数の選択肢を総合的に吟味していけば、結論は出せる。ただ、リアルの場合、その後々までという期間がゲームブック攻略よりも長くかかることがあるから、物事を軽々しく断定はできなかったりするわけだ。その時は正解だと思った判断が、状況の変化で間違いだったことが分かったりもする。
『だから自分のその場の判断は、その時その時の勢いで重要視してもいいけど、絶対視して固執するのは愚かで、後から違う情報が出て、判断基準が変わった際には、臨機に切り替えて行くこともしばしば必要なわけだ』
ダイアンナ「最初はこう考えていたけど、時間が経過して、違うものの考え方ができるようになったというのも大事ってことだね」
NOVA『信念がブレないというのは美徳だけど、考えに修正ができないというのは頑迷ってことだからな。趣味に対しては、好きとか感情で決めていいと思うけど、何が正しいとか間違っているという判断まで感情で先走りし過ぎて、しかも軌道修正ができないのは愚かとしか言いようがない。まあ、年をとると、脳が退化して、なかなか軌道修正できなくなるのはありがちだけど、何かを予想して、それが外れたときにどう適切に軌道修正を図れるかが、人とのコミュニケーションにおいても重要かもしれない』
アスト「その時その場で適切な判断をしようと考えるのと、後から振り返って何が正解だったかを再吟味するのは、違う頭の使い方だもんな」
NOVA『それに再吟味の結果、その後の自分の行動にフィードバックするまでが学習なのかもしれない。臨機応変ってのは、状況の変化に合わせて適切に切り替えるってことだけど、まずは状況が変化していることを意識的にも、あるいは直感的にも認識できていることが重要であって、何となくの思いつきで行き当たりばったりというのは少し違う』
ダイアンナ「試行錯誤とかトライ&エラーというのは、臨機応変とは違うのかな?」
NOVA『試行錯誤は、実はデータを集めるのが目的なんだ。何も手掛かりがないと、判断の材料も欠けているということから、試しにできることを行う。それで正解なら問題ないし、不正解なら選択肢を一つ減らして、他の方法に切り替えることができる。正解か不正解かの判断は、試行錯誤において重要なんだけど、それには一定の検証能力が必要になるな。そして検証データは残した上で、次の判断の精度を高める材料にして、同じ失敗は繰り返さないのが試行錯誤ということになる。ゲームブックの攻略においては、一度通ったパラグラフ番号はしっかり記憶、もしくは記録しておいて、失敗の状況を繰り返さないことが大事だと』
アスト「完全攻略のためには、正解の道を運よく通過する他に、わざわざ失敗するルートもチェックする必要があるけどな」
NOVA『攻略上は失敗だけど、面白いイベントが用意されている可能性もあるからな。運良く一発でゲームブックを攻略できた場合、面白いイベントを見逃すことになって、意外とつまらなかったという感想になったりする。で、他の人が違うルートを選択して、自分とは違う経験をしている話を聞くと、いい勉強になったりもするわけだ』
ダイアンナ「同じ体験をしていても、人ごとに受け止め方が違っていたりするから、その感じ方の違いを楽しめるかどうかも大事だね」
NOVA『他人さまのゲームブック記事では、その人ならではのこだわりが分かると、面白く読めるわけで。その場その場の主義主張に一貫性がなくて、批判のための批判だとつまらないけど、この人はこういう作品が好きで、そこはブレないなってことが分かると、(そのブレない要素が自分好みだと)共感できる』
アスト「ブレない部分が、自分好みじゃなければ?」
NOVA『例えば、可愛い女の子には優しく振る舞うべき(可愛くない攻撃的な女は別)という価値観を持っている人間は、女の子を傷つけるのが趣味ですと言ってる人間の書く物を楽しめるとは思えないわけで。まあ、文章力が高ければ、相手の性癖に引きずられるケースもあるわけだが、それには限度がある。そういう思想の持ち主が世の中にいるというのは受け入れたとしても、そういうのを好んで読むように押しつけられるのは勘弁なって話だ。自分の好きを訴えるのと、自分の好きを受け入れろと強要(あるいは哀願)されるのは話が別。やはり特殊性癖は特殊性癖だと割り切って、適度に抑えることが大事で、それでも抑えきれないリビドーが発散される瞬間、というのが作家の真髄かもしれん』
アスト「まあ、高まり過ぎないように、日頃からソフトに小出しにするぐらいがいいと思うがな」
NOVA『ともあれ、俺個人はマッドヘリオスというキャラをあまり高くは評価していなかったんだけど、腹ペコ・リーサンというフィルターを通してみると、急に理解が進んだって話だ。そういう他者の視点ってのも、想像力で大事なんだな、とか』
ダンヤザードのアドバイス
NOVA『で、出発前の会食会で、もう一人、アドバイスを寄越した貴族が、ダンヤザードさん。この人の裏と表のギャップもなかなか大きいんだが、とりあえず、フォーガ神殿を推奨というのと、街道から外れるなというのがポイント』
ダイアンナ「そのアドバイスに従わないと、攻略失敗するわけだね」
NOVA『結果的にはそうなるんだな。まあ、フォーガ神殿については、従ったためにイヤな目にあったりもするので、途中で疑わしくも感じるんだけど、道から外れるなというのは、より分かりにくいヒントだ。マッドヘリオスと同様、後からパラグラフ解析して、それも重要なヒントだと気づいた類。攻略中には読み流していたや』
アスト「ヒントが書いてあっても、うっかり読み流すとは、名探偵には程遠いな」
NOVA『まあ、俺はどちらかと言えば、ホームズよりもワトソンタイプだよ。こういう本で勉強もしてみたんだが、ホームズの観察力と分析力には到底手が届かないことを理解した』
NOVA『ホームズのような名探偵に必要なのは、「先入観に囚われずに、事実をありのままに見る」という観察力だが、ワトソンみたいな常識人はその先入観による決めつけが推理の邪魔をする一方で、常識にない違和感を無意識にスルーしがちなところがある。見ていても、見えていない盲点というか、後から指摘されて初めて、そう言えば確かに、と気づいたりもするのが常人らしい。
『まあ、常人には見えない盲点に意識を向けられるのが名探偵たる所以だが、重要情報のうっかり見落としは割とよくあることだから、問題解決に当たっては文字化して、アンダーラインを引いて、考える材料が目に入るようにするのが俺の複雑な問題の思考法。これを脳内だけで処理できるようにしたら、俺ももっと頭が良くなるのかもしれないが、いろいろ見落とし癖があるからな。やはり確実を期したければ、考える材料はしっかり明示してビジュアル化する』
アスト「でも、ワトソンはワトソンで優秀なんだろう?」
NOVA『ワトソンの凄いのは、ホームズの言葉を全て理解して、それを丁寧に記述しているという設定なんだ。ホームズは名探偵だけど、作家にはなれない。直感や推理力には秀でているけど、そういう丁寧な作業ができなくて、しかもホームズ曰く、自分にできないことを全てやってのける兄のマイクロフトがいて、この兄こそがホームズとワトソンの長所を合わせ持つ超人らしい』
ダイアンナ「そのマイクロフトさんが名探偵じゃないのはどうして?」
NOVA『性格が活動的じゃなくて、人付き合いが苦手だかららしい。俺的には、このマイクロフトさんの方が格好いいと思っているんだがな。政府の会計検査の下級役人だけど、非常に優秀なので、いろいろな政府の裏情報が彼のところに相談レベルで回されてきて、適切なアドバイスでうまく処理されて、ホームズ曰く「兄を中心に政府が動いているほど」らしい。まあ、常人なら身内のひいき目と思わなくもないが、ホームズの言葉だから妄言という気にもなれない』
アスト「まあ、ゲームブックを解くのに、ホームズ並みの推理力は必要ないだろう」
NOVA『ああ。パラグラフ解析とかは、どちらかと言えばワトソンの方が得意分野だと思うな。それに本作も直感よりは、丁寧に記述を追うことで解ける作品であることが、解いてから分かったわけで、その意味で良質のパズルとも言える』
ダイアンナ「ずいぶんと好意的な評価だね」
NOVA『リビングストンの「危難の港」の中盤ダンジョンがただのランダムの運まかせじゃなくて、背景にきちんと手がかりが書かれているのに気づいたのと、同じような気づきが面白い作品だと思う。ただ、こちらはその気づきが本当に正解かどうかは後まで読んでみないと分からないという意地悪さがあって、解析を悩ませる元だったんだが』
アスト「とりあえず、フォーガ寺院と、道を外れないのが正解なんだな。だったら、その通りに進もうぜ」
NOVA『いや、先にまちがいルートを覗いてみる』
伝記作家のターバーダ
NOVA『ハスラーの街に着いたパラグラフ163番で、フォーガ神殿に泊まらずに先へ進むと、パラグラフ26番に至る。そこで遭遇するのが伝記作家のターバーダという男だ』
アスト「伝記作家? ワトソンみたいなものか?」
NOVA『いや、ただの詐欺師なんだけどな。この男は、自分が真実の探究者であり、悪を撲滅する者だと大ボラを吹いて、邪悪のダーク・ジェスターを退治したところ、恨みを買って〈死の呪い〉に掛けられたそうだ』
ダイアンナ「〈死の呪い〉かあ。それは他人事には思えないねえ」
NOVA『哀れなおじさんに治療費を恵んでくれと言われたので、金貨4枚と食料1食の施しをすると、ターバーダおじさんはよっしゃラッキーとばかりに元気になって、癒し手のいるという最寄りの村ゲバーンの酒場に飛び込んだ。癒し手に払うお金として渡したはずなのに、〈死の呪い〉の話は本当にただの嘘ということが分かり、まあ、何というか陰鬱な雰囲気の多い本作にあたって、数少ないほのぼの日常エピソードだなあ、と思った次第』
アスト「お前は詐欺師に騙されることを日常エピソードと言うのか!?」
NOVA『いや、まあ、この伝記作家と称する詐欺師の語る物語が荒唐無稽ながら、面白いなあと感じたんだよ。リーサン自身、残飯あさりで食いつないだ経験もあるから、面白い物語を聞かせてくれる詐欺師には、その物語代だけでお金を払ってもいい気になったり、まあ、いろいろだが、この詐欺師に出会った時点で、攻略不能状態に陥っているので、カラメールの滅亡が決まったようなものだな』
ダイアンナ「ほのぼの日常エピソードの陰で、世界は確実に崩壊に向かっていた、と」
NOVA『あと、最初はこの詐欺師のターバーダおじさんが、実は謎かけ盗賊の変装かな? と思ったりもしたんだが、どうやらそうではなかったらしい。とにかく、詐欺師と遭遇した後は、パラグラフ7番で無人の村に行き着くことになる。この村に到着する前に、謎かけ盗賊と再会するイベントを経ないと、バッドエンド確定なんだ』
ダイアンナ「え? 謎かけ盗賊さまと出会えるの?」
NOVA『ターバーダおじさんと、謎かけ盗賊のどちらかしか出会えない』
ダイアンナ「もちろん、謎かけ盗賊さまに会うルートを選ぶに決まっている」
NOVA『よし、今回の記事は謎かけ盗賊と再会するところまでだな』
ダイアンナ「そいつはワクワクものだね♪」
フォーガ神殿のイベント
NOVA『では、改めて正解ルートのフォーガ寺院に向かう。パラグラフ4番だ。このフォーガ神殿では入るなり、強圧的に荷物検査を要求される。断って戦うと即バッドエンドだし、神殿から逃げ出しても正解ルートには入れないので、おとなしく荷物を調べさせるといい。すると、前回、黒エルフから奪った拳型の小像が見咎められて、独房に閉じ込められてしまう』
アスト「もしかして、黒エルフが盗んだアイテムの罪を着せられたって話か?」
NOVA『その像の握った拳に、神官らが祈りを唱えると、中からエメラルドの宝石が現れて、その光を浴びた神官らが若さを取り戻すという神秘的な光景が描かれるわけだ。つまり、黒エルフは神官らの若さを宝石に封じ込めて逃げていたらしい、と推測できる』
ダイアンナ「だったら、その宝石を取り戻してやったのだから、感謝こそされ、独房に閉じ込められる言われはないはず」
NOVA『このフォーガ神殿のイベントは、初見ではいろいろ理不尽に思えたものさ。仮に黒エルフを逃がして、拳の像をゲットしなくても、いろいろ疑われて捕まってしまう。なお、ターバーダおじさんに出会うルートでも、拳の像を持っていればアウトで、フォーガの神官どもの奇襲を受けて、よく分からないままに像を奪われてしまう。結局、この像の意味が唯一分かるのは、神殿でおとなしく渡す時だけということだ』
アスト「でも、独房には閉じ込められたままなんだな」
NOVA『一応、自分がダンヤザード様から国の重要な使命を帯びていることや、黒エルフから像を取り返した経緯を語ってみることで、神官長はダンヤザード様に確認をとってくれた。おかげでまもなく釈放してくれたんだが、この誤解についてフォーガ神殿側は謝罪の言葉の一つも述べようとしない。誇りの神と言うが、単に偉そうに上から目線なのを誇りとは言わないはずなんだがな。フォーガの神官は誇りと傲慢の意味を取り違えているとは、しばしば言われている揶揄らしいが、このシーンでそれを実感した』
アスト「確かに、この場面が正解ルートとは思いにくいな」
NOVA『最初はフォーガ神殿に寄らずに、ターバーダおじさんの詐欺には騙されずにスルーするのが正解だと思ったものな。あと、黒エルフは逃がすだけに留めて、拳の像は入手しないのがいいのか、と』
ダイアンナ「でも、結局はフォーガ神殿に監禁されるのが正解なんだね」
NOVA『そこから釈放された場合のみパラグラフ136番へ行ける。そこでの選択肢が、遅れを取り戻すために野原を突っ切るか(287)、道沿いに進む(256)の2択だ』
アスト「野原を突っ切ると、バッドエンド確定か」
NOVA『時間点を2点増やしたうえで、パラグラフ7番に突入だ。謎かけ盗賊に遭い損なう』
暗殺者の影
NOVA『理不尽に思えるフォーガ神殿から釈放されて、道沿いに進むと、森林地帯に入り、側溝に牛車と雄牛の死体が転がっているのが目についた。死体の側では、マントをまとった黒ずくめの人影がピチャピチャと何かを舐めていたが、リーサンに気付くと、人影は素早く飛び跳ねて、人ならざる悲鳴をあげるや、森の中に駆け込んで行った。ここでの選択肢は、人影の後を追うか、それとも牛の死体を調べるかだ』
アスト「逃げる奴がいると、普通は後を追うだろう。死体を調べるのは後でもできる」
NOVA『選択肢的には、後で調べることはできなくなるんだな。リスクを考えると、死体を調べる方が正解だ。牛の死体は、灰色のねばねばに肉を食われている』
ダイアンナ「それってソフィアさんと同じ死に様か」
NOVA『ここでリーサンは、さっきの人影が謎の暗殺者と気づくんだな』
アスト「だったら、追いかける方が正解じゃないか」
NOVA『追いかけても、結局、逃げられるから無駄なんだ。死体の周りを調べる方が、情報はたくさん手に入る。すぐ近くに仮面が転がっていて、その顔がリーサン自身の顔にそっくりだということに気づいて驚くわけだ』
ダイアンナ「それって、謎かけ盗賊さまがリーサンに変装しているってこと?」
NOVA『この時点では、そういう推測も成り立つな。事実は違うんだが、謎の暗殺者がリーサンに変装して、いろいろと悪事を働いていることが推測される。もしかすると、ソフィアもリーサンに変装した敵に油断して殺されたのかもしれない』
アスト「何でリーサンの顔がバレているんだ? って、そこそこ有名人になっているのか」
NOVA『無名の冒険者だったら成立しないストーリー展開だな。とにかく、リーサンに変装した暗殺者が活動していることは分かった。このリーサン仮面がこの一つだけなのか、他にも出回っているのかは分からないが、フォーガ神殿がリーサンを監禁した理由も、もしかすると、この偽リーサンの影響かもしれない。ゲームブック内ではあくまで状況推測でしかないが』
アスト「自分に変装した敵が悪事をやり放題というのは、イヤな状況だな」
NOVA『一方、もしも人影の後を追うと、崖っぷちに誘い込まれて、慌てて追うと運だめしを要求される。失敗すると、崖から落下してバッドエンドだ。成功しても、体力2点を失う。慎重に後を追う選択肢を選んだ場合だけ、無傷でいられるが、人影は飛んで逃げたのか、それとも空気の中に消えたかのように姿をくらませた。結果として、後を追っても何も分からない不思議な敵ということだけを知る』
アスト「確かにミステリーだな。まあ、オレたちはネタバレ情報から、スズメバチ暗殺者という情報を知っているわけだが」
NOVA『ここで時間が経過して、時間点が6点に達した』
謎かけ盗賊との再会
NOVA『謎の敵の気配に不安を募らせながら、旅は続く。念のため、この東の偵察行でもリーサンは騎乗している。北ルートだけじゃなくて、東ルートでも馬に乗っているわけだ。最初の選択肢では、北だけが馬のように書いてあったが、東を選んでも会食会の後の出発時に、厩から馬を連れ出している描写がされている。攻略記事では書き損ねていた(後から書き足した)が、馬はずっと一緒にいるってことで』
アスト「じゃあ、オレは馬の役な。ヒヒーン」
NOVA『いや、馬の役を喜んでプレイしたがる奴は珍しいと思うが。大体、リーサンは馬と会話する能力は持っていない』
アスト「とにかく、馬としてご主人を導くぞ。こっちに謎かけ盗賊の匂いがする」
NOVA『いや、犬じゃないんだから。馬の嗅覚で、人の匂いの判別はしにくいんじゃないか? そもそも嗅覚が発達しているのは、肉食動物の特徴だと聞くぞ。草や水の匂いぐらいは分かるのかもしれないが』
ダイアンナ「大体、謎かけ盗賊さまの匂いをたどるにも、アスト馬はあの人の匂いを嗅いだことなどないはず」
アスト「う〜ん、リーバーの持ち物か。確か、リーサンが今、装備しているファングセイン鋼の剣ってリーバーからもらったものじゃなかったか?」
NOVA『本リプレイではそういう設定だが、もうリーサンがずっと使っているんだし、敵を斬ったりしているんだから、リーバーの匂いなんて残ってないだろう』
アスト「ダメか。とにかく、適当な村の気配を嗅ぎ分けて、そちらに向かってトコトコ並足で進む」
NOVA『別に匂いとは関係なく、道沿いをそのまま進むと村に行き着くんだがな。その村では、リーサンが妙に歓迎されて、美味しい夕食を振る舞ってもらう。体力4点を回復できるんだが、別に傷ついてはいないので、あまり美味しくはないが、普通に食事を振る舞ってもらえるゲームは嬉しいな』
アスト「当然、馬の世話もしてもらえるんだろうな」
NOVA『まあ、ゲームブックには書いていないが、馬の面倒も見てもらえるんだろう。そうしているうちに、村人たちはリーサンを「村を呪いから救ってくれる神の使者」として崇めていることに気がついた』
ダイアンナ「領主の使いではなくて、神の使者か」
NOVA『まあ、リーサンは別に神さまを崇めているわけじゃないけど、救いを求める村人を邪険にするほど薄情ではないので、適当に話を合わせていると、何だか小屋に閉じ込められて、村を襲う呪いと戦うように要請された。まあ、こういう話を強引に進めてくる村人は、ゲームブックの世界ではよくあることなので、今さら慌てても仕方ないと悠々と構えていると、やがて小屋の煙突から一本のロープが降りてきた』
謎かけ盗賊『やあ、リーサン・パンザ。君はこんな辺鄙な村で時間をムダにしている場合じゃない。この村を守るのに命をかけるのもいいが、そんなことをしてもカラメールの滅亡は避けられないし、そんなつまらない結末じゃ、運命神も納得されない。だから、わたしが救いと導きの手を差し伸べよう。良ければロープを伝って上がってきたまえ!』
NOVA『ここでの選択肢は2つ。ロープをつかむか、やめておくかだ』
ダイアンナ「謎かけ盗賊さまのお誘いに乗らない手はない。もちろん、ついて行きます」
NOVA『まあ、付いて行かないなら、村に閉じ込められたまま、バッドエンドになるだけだからな。では、謎かけ盗賊との会話は小説風味で描写しよう』
謎かけ盗賊の話
「やはり、生きていたんだな、リーバー!」
ロープを上った先は、例の気球で、謎かけ盗賊リドリング・リーバーとついに再会した。
「いやあ、前の冒険で君たちは本当によくやったよ。わたしでなければ、死んでたろうね。だけど、わたしはその昔、リーバー・フェニックスと名乗っていたこともあってだね。運命神に選ばれて代理人になる前の話さ。剣の修行を積んで、〈不死鳥のリーバー〉と名乗ったりもしたものだよ」
「そんな話は聞いていない」奴の冗舌に惑わされないよう、冷ややかに厳しい声音で問いかける。
「仲間のソフィアを殺したのはお前か? 俺に化けて、罪をなすり付けたりしたのもお前か?」
「もちろん、そんなことはしていない」リーバーはしれっと答えた。「わたしは君と同様、カラメールの国を守りたいと思っているんだからね。つまり、わたしは君の味方さ」
「先代の領主を殺しておいて、よく言う。世の中の善と悪とを引っくり返して、世界を混乱させようとした悪事を忘れたとは言わさないぞ」
「その件は過ぎたことさ。水に流せとは言わないけど、今は棚に上げてくれると、話がしやすいんだが」
「俺が望むことは3つだ」
「言ってみたまえ」
「1つ、仲間のソフィアを殺した敵を討つ」
「うむ、そいつはわたしの利にもかなう。好きにするといい」
「2つ、カラメールを侵略者の魔の手から救う」
「こちらの望むところだ。協力するよ」
「本当に? 3つめは……愛する女のところに帰ることだ。アズール卿に邪魔されることなくな」
「……そいつは、わたしの一存では決めかねるな」
「どうしてだ? 北から南へ連れて来れたんだから、南から北へ連れて帰るだけだろう。簡単な話だと思うが」
「空間的には簡単なんだけど、時間的な問題があるんだよ。君の愛する女性には娘ができていてね。彼女は運命神に仕える英雄剣士として今も活躍し、将来の物語も期待されているんだよ。彼女はわたしの娘でもあり、君の娘でもある」
「俺には娘などいない。どういうことだ!? もしや、お前、俺の愛する女を……」
「誤解しないでくれたまえ。リサは正真正銘、君の娘だ。ただし、将来の娘と言った方がいいかもしれない。君は将来、時間遡行の力を駆使して、過去に遡り、君の想い人と愛を交わし合うことになる。まさに時空を越えた愛の結晶が君の娘、リサ・パンツァだ」
俺の将来の娘。
最初それを聞いたときは、この口達者な謎かけ盗賊にからかわれているのかと思った。
いや、将来に娘が生まれると予言されただけなら、それも有り得るだろうと受け入れていたかもしれないが、将来の娘が今、活躍していると言われても、そんな話が信じられると思うか?
ああ、お前も娘の、リサ・パンツァのファンだと言っていたか?
本当にいるんだな。これから、どうやって過去に飛んだらいいのか、真剣に考えないといけないようだ。
とにかく、呆然とする俺の気持ちを構うことなく、リーバーは話し続けた。
「運命神は彼女をたいへん愛でておいででね。それにわたしにとっても、リサは娘同様に可愛いと思っている。だから、君には何としても生き延びて、リサの父親になってもらわないといけないんだよ。未来のどこかで、過去に飛び、時空をいじってリサを生み出すこと。それこそが、ロガーンさまが君に求めていることなのさ」
未来のどこかで、過去に飛び……ってそんなことをさらっと言われても、その時の俺には全く理解不能だった。
「ちょっと待て。未来とか、過去とか、何の話か全く付いて行けん」
「聞いたことがないかな。運命神ロガーンが《時》というものを発見し、《死の神》が《時》を世界に解き放ったって神話を」
初耳だった。俺は別に神さまのことに詳しいわけじゃない。
太陽神グランタンカの天上の動きに合わせて、昼と夜が定められ、季節の移り変わりに応じて暦が設けられているぐらいのことは知っているが、天上の神々が不老不死なのに対し、地上を生きる者たちは老いと死の影響から逃れることはできない。
しかし、その死の呪縛から解放されて、時間を自由に操ることができるとしたら、その者は神に匹敵する力を持つと言えるだろう。
「リーバー。お前は俺に神の力を求めよって言いたいのか?」リーバーの謎めいた言葉から、そう推測する。「そこまで大それたことなど、考えたこともない」
「だったら、今回の敵に打ち勝つことは難しいだろうさ」
「どういう意味だ?」
「君の仲間のソフィアを殺し、今、カラメールを侵略しようと目論んでいる黒幕は、神に匹敵する力を持っているんだからね。通称〈奈落の帝王〉という存在が、背後で動いている。カラメールを守るためには、君は神の力に手を伸ばさないといけないだろう。神の力に打ち勝つには、同じ力が必要だ。さあ、これを持って行きたまえ」
そう言って、リーバーは1本の瓶を俺に手渡した。
不恰好な形をした魚型の瓶。
「これは?」
「わたしが昔、彼から盗んだユーモアのセンスみたいなもの。将来、彼と対峙するようなことがあれば、それを返してやるといい。ユーモアの欠片さえなければ、人も神もひたすら陰鬱にシリアスにならざるを得なくなるが、ユーモアを与えることで扱いやすくなる」
「それが〈奈落の帝王〉の弱点になるのか?」
「あくまで、彼に立ち向かうための手段の一つと言ったところさ。残りは、君自身の手で探す必要がある。道は険しいが、君にはトレジャーハンターとして培った洞察力と判断力、暗殺者ハンターとして培った度胸と武芸、そして将来の娘と同様の運命の可能性がついている。運命神も、その代理人のわたしも今回は君の味方さ。つまらない悪党に世界を荒らされたままじゃ、面白くないからね。では、楽しい冒険の旅を祈っているよ」
気づけば、謎かけ盗賊とその気球の姿は消えて、俺は村から少し離れた街道沿いで横になっていた。
朝の冷ややかな光のなかで一人目覚めて、さあ、どうしようかと思っていると、近くの草地で俺の乗って来た馬が餌を食(は)んでいるのが見えた。
馬に駆け寄ると、鞍の前の部分に羊皮紙が結びつけてあるのに気づいた。
私は立つよ、君の前
でも、君はそれに気づかない
負かした王の言葉にゃ弱い
美しき歌を残して消える
さあ、わたしはだれでしょう?
(パラグラフ331番より)
答えは「謎かけ盗賊」かな?
何となく、そんな見当をつけながら、昨夜の問答や忠告が夢でなかったことを確認し、リーバーからもらった謎の瓶が背負い袋に入っていることも見てとると、俺は〈奈落の帝王〉という正体不明の敵の調査の旅を続けるのだった。
(運点が2点回復、時間点6→7。次のパラグラフは7番へ)
★リーサン・パンザ(奈落の帝王ver)
・技術点:12
・体力点:20
・運点:12
・食料:5
・金貨:22
・時間点:5→7
・装備:ファングセイン鋼の剣、革鎧、背負い袋、におい玉、拳型の小像、謎かけ盗賊の瓶
(当記事 完)