ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「奈落の帝王」攻略感想(その3)

ドゴラの日を終えて

 

リモートNOVA『一応、報告しておくと、昨日の8月11日のドゴラ60周年は、こちらで記事を書いた』

ダイアンナ「去年は、こちらの記事でドゴラの日を祝っていたもんね」

アスト「リバTとケイPマーク1はこちらの住人だから、ドゴライベントもこっちでやるかと思ったが、急遽、予定を変更したんだったな」

 

NOVA『ああ。今のゲームブック攻略記事に、別のネタを差し挟むのを控えたわけだ。まあ、お盆休みの間はこっちでリバTを預かるということで、当記事にリバTの出番はない。リバTのファンは、「空想タイム」の方を覗いてくれ、という宣伝も兼ねている』

 

ダイアンナ「リバTという世話係がいないと日常生活が不便なんだけど、まあ、自分のことぐらいは自分で何とかするさ」

 

NOVA『困ったことがあれば、地上のドルイ道おじさん、ハイラスに頼めば、食べ物の手配ぐらいはしてくれるだろう。掃除と洗濯ぐらいは自分で何とかしろ』

 

アスト「急に生活くさいことを言ってるなよ。まあ、そういうのを描くとリアリティが増すというのは分かるが、作品の面白さに直結しない場合は、割愛するのが普通だ」

 

NOVA『FFの冒険者は、食事シーンこそよく描かれるけど、入浴や掃除、洗濯シーンはあまり描かれていないもんな』

 

アスト「たまに公衆浴場があると事件が発生するし、洗濯は『バルサスの要塞』の地下イベントぐらいしか思いつかん。あと、掃除といえば、悪党を掃除して世界をきれいにしてやってると言うことか」

 

ダイアンナ「旅また旅の生活だと、掃除や洗濯は難しいってことだね。小説だと、本編というよりは外伝的な短編で描写される程度の日常かな。冒険がメインの物語で、お付きのメイドとか家事専門の便利NPCが設定されていると、主役の冒険者は日常の細々とした雑用から解放されるわけだけど」

 

NOVA『そういうNPCがいない場合は、そのキャラの日常生活力をどう描くか、あるいは描かずに本筋に専念するかは作者次第だけど、近年のラノベは割と日常生活の描写が丁寧な作品が多いと思う。これはゼロ年代から日常ものが流行したために、そういうのを切り捨てないのがリアリティと考える作家が増えたってことだな』

 

アスト「入浴シーンなんて、昭和だと絶対に覗き見る奴がいてスケベの温床だったし、平成前半もその名残で、風呂と言えばラッキースケベなイベントが付き物だったけど、21世紀に入って、そういうシーンを描くと、古臭いとか、リアリティに欠けるとか、作品評価が下がる傾向があるかな」

 

NOVA『これは俺の偏見かもしれないが、近年の風呂シーンは、ヒロインが独り言をつぶやいて自分の周りの人間関係についての想いを整理したり、事件についての考えをまとめたりするために活用するのが一つ。あとは、大きな浴場で女の子同士の触れ合いタイムだな。まあ、これは浴場以外にファンタジーだと野外の泉での沐浴タイムとか、川で旅の汚れを落とすシーンだったりする。読者や視聴者へのサービスシーンという意味では昔と大差ないんだが、よりドラマ的重要度が高い伏線として扱われている感じだな。今どき風呂を覗きに行くようなスケベ主人公は求められていないというか、裸を覗かれてキャーと悲鳴を上げたり、ビンタをかますようなヒロインもルーティン的過ぎて古臭いと思う』

 

ダイアンナ「そういうのは80年代から90年代のノリかな」

 

NOVA『今風だと、風呂場に何故か仕掛けられているトラップとか、直接絡まない方向で罰を与えたり、事件のネタになったりが印象的。まあ、それも少し古い気もするが、あるいはヒロインが肉食で、何かと主人公を風呂に誘うような作品も定番……かな』

 

アスト「作品にもよるが、ヒロインの方が積極的にスキンシップを求めたり、勝手に妄想を深めたりする作品が増えたと思うな。妄想が暴走するのも、主人公ではなく、ヒロイン側の方がありがちだ」

 

ダイアンナ「要は、ヒロインの内面にスポットが当たる作品が増えたってことだよね。ヒーローは事件の解決法に頭を回す朴念仁として描かれ、ヒロインは日常の人間関係に頭を回す作品が定番で、たまにその構図が逆転するケースもあったり、ヒロイン同士のバディ物が増えて、従来のヒーローの役割をアクティブヒロインが奪ったり、というのが平成後期からの流れか」

 

NOVA『で、話を本題に戻して、本作「奈落の帝王」はFFシリーズの中では珍しく、女性キャラの出番が非常に多い。これは、ジャクソンやリビングストンにはない傾向で、実のところ南アランシアは女権の国が多いように見える。少なくとも、カラメールはそうなってるし、前作の31巻「最後の戦士」でも、ヴィモーナ国を治めるのは夫が戦死したために、女王となっている。つまり、女領主の治める街を守るために冒険する主人公の話が2作続いているんだな。

『「ゲームブックから考えるジェンダー論」というテーマもあって、要するにフィクションが時代を映し出す鏡という立場からサブカルチャーも学術考察の材料に扱うのは健全だと思うが、そういう時代背景の描写を考察することもなく、今の時代には合わないから抹消したがる文化破壊のジェンダー論者(論にもなっていない過激な活動家が多々見られるが)は、しばしばアカデミックな姿勢とは言えない感情論で気にくわないものをヒステリックに攻撃しがち、という節が見られる』

 

アスト「感情的に嫌いなものは研究しようともしないのは、旧日本軍のしばしば批判される面で、それに対して米軍は敵対相手の日本人の考え方を大いに研究したから戦いに勝てた、というのはミリタリー界隈でよく言われているな」

 

NOVA『じっさいには、日本でも欧米の研究をして来た人たちは普通にいるが、いざ戦争になると、そういう知米派や知欧派の発言力がどんどん奪われて行って、中枢部から追放されたりもした結果、和平工作もろくにできないほど破滅に突き進んで行ったのが歴史的事実だ。どうも、日本の国としての気質は、極端から極端に走りがちな傾向があって、敵なら殲滅、味方なら100%の信を置いて疑いもしない。意見が対立すれば、相手の話をろくに聞こうともしないまま、偏りを是正して妥結点を探ろうともしないように思える』

 

ダイアンナ「敵の話には聞く価値もない、という態度では、交渉なんてとてもできないわけだね」

 

NOVA『現状の立場上は敵だが、相手のこの意見は一考の余地があるので、そこに絞って譲歩の鍵を探ってみることは可能かもしれない、と和を尊ぶなら、それぐらいの考察はできて当然だし、仮に味方だとしても、自分と100%同じ考えってことはないのだから、どこまでなら信用できる、だけど、この点は意見が対立するから下手に踏み込まない方がいい、とか、そういう遠慮も必要になる』

 

アスト「味方だと思って、100%信用して遠慮さえしなくなったら、相手の逆鱗に思わず触れて怒らせてしまったのを、勝手に裏切られたと被害妄想の逆恨みをし出すケースもあるか」

 

NOVA『味方だったら、相手の考えを考慮する必要はない。敵だったら、考える価値もない……という姿勢だと結局、人付き合いについて何も考えていないってことだから*1、空気とかその場の感情論だけで勝手に敵味方認定して、そこには戦略が一切ないという話になる。感情的には嫌いだが、相手の話には一理あるので、聞く意味はあるだろう……って判断できるのが交渉家の資質というものだと考えるが、まあ、少なくとも日本のジェンダー論では、そういう発言をしている活動家は少ないかな、と』

 

ダイアンナ「過激な発言ばかりが目立って、落ち着いて物を考える理性的なジェンダー論者は目立たないだけって思うけどね」

 

NOVA『いずれにせよ、女王や女リーダーが治める国というのは、80年代や90年代のイギリス人にとっては普通にリアリティなので、我々日本人にとっては、異世界ファンタジー的な感覚であっても*2、イギリスのゲームブック作家にとっては、ヴィモーナもカラメールも、特に異質な描写ではないのかもしれん』

 

アスト「どうでもいいが、お前が仕切ると、なかなか話が本筋に入らずに、寄り道前置き雑論が長くなる傾向があるな。そんな話に興味のある読者ならいいが、普通のゲームブックファンにはうんざりじゃないか?」

 

NOVA『おっと、自制しないと(苦笑)』

 

謎かけ盗賊の話(補足)

 

NOVA『前回は、小説風に謎かけ盗賊との邂逅シーンを描いたわけだが、当リプレイの物語に合わせて、結構アレンジしている。原作ゲームブックのパラグラフ86番から続く96番では、もう少し曖昧で謎めかした話し口調で、そもそも会話にはなっていない』

 

アスト「そりゃあ、ゲームブックの主人公は基本、喋らないもんな」

 

NOVA『スロムとのやり取りとか、たまに話す時もあるけどな。基本的に主人公が話すときは、当たり障りのない軽いユーモアとか、適切な受け応えで、読者には不快感を与えないように描写されているものだが、それに対してアーロックは……』

 

ダイアンナ「もう、それはいいから、今は謎かけ盗賊さまだ」

 

NOVA『おっと、そうだな。彼はずっと主人公のことを見守っていたらしい。そして、ここまでの旅は順調に進めていると褒めてくれる。まあ、謎かけ盗賊と会えた時点で、正解ルートを辿っているということだからな』

 

ダイアンナ「考えてみれば、リサ・パンツァは本物の謎かけ盗賊さまには会ったことがないんだよね。噂に聞いた話か、精神世界でしか姿を見かけていない」

 

NOVA『そもそも、アランシア南部で活動している彼が、ブラックサンド周辺で話題になっているのかも怪しいが、ブラックサンドは一応、国際都市だからな。遠国の風聞も入ってくるものと判断した。アズール卿も、出身地は別大陸のクールだし、思いの外にスケールの大きいキャラだというのが「タイタン」で語られたし。ある意味、ロードスのカシュー王の悪役バージョンだからな。別大陸から渡ってきた冒険家が、争乱の国を平定して領主の地位に就いたってのは』

 

アスト「アズール卿の強権がなければ、誰もブラックサンドを治めることはできないと言われているぐらいだしな」

 

NOVA『そういうのを西洋民主主義は独裁者だと断罪して、民主化こそが理想と21世紀の初頭までは推し進めたんだけど、文化や地域によっては、民主主義では国がまとまらないで内戦を繰り返すだけという状況で、やはりその地域の文化風習を無視した価値観の押し付けじゃ、理想どおりには進まないということだな』

 

アスト「市民革命の理想が、近現代西洋社会の基盤なんだろうが、市民革命を成功させるには、市民の識字率とか都市の経済発展の基盤とか、いろいろ土台となるものがあって、そういうものを無視して、外圧で独裁政権を革命で打倒しても、お仕着せ民主主義では国がまとまらないという歴史的実験を今世紀には見た気分だ」

 

NOVA『民主政治が衆愚政治に陥る危険は、直接民主政治で有名な古代ギリシャですでに主張されていたからな。あと、市民革命の時期の民主政治の主役は都市の知識人、中産市民階級で、農村生活者のことはあまり考慮されていない。先進的な都市民と保守的な農業生活者の衝突は、19世紀のアメリカの南北戦争で示され、現在のアメリカの社会分断の構図もそれが背景にあるように思える。まあ、アメリカ大統領選挙の結果で、また、いろいろと見えてくる景色も変わるかもしれないが』

 

ダイアンナ「パリ五輪で露呈した西洋(フランス)のエゴイズム的愚かさ(むき出しの差別主義、世界の潮流からズレた品のないブラックユーモア)とかで、市民革命や民主政治の意義づけまで問われているのが現状ってことだね。でも、ゲームブックの攻略には関係ない」

 

NOVA『いや、まあ、謎かけ盗賊曰く、「大局を見ずに、お人好しに、助けを求める村人すべてを助けようとしていては、世界が滅びるよ」って話なんだな。とは言え、別の選択肢があって、「村人を虐殺してでも、自分の使命を果たそうとする」的なイベントが用意されている』

 

アスト「マジかよ」

 

NOVA『その選択肢を選んだ場合、村からは脱出できるけど、謎かけ盗賊とは出会えないので、攻略不能に陥る。謎かけ盗賊は、お人好しのバカを助けるのは好きだけど、誰かれ構わず力で解決する好戦的なバカは助けてくれない。同じバカでも、人好きのするバカの方に手を差し伸べてくれるわけだ』

 

ダイアンナ「謎かけ盗賊さまに助けてもらえる条件ってのが、大きなポイントなんだね」

 

NOVA『ああ。このイベントの最大のポイントは、謎かけ盗賊の瓶を手に入れることだけだからな。それがないと、〈奈落の帝王〉を現世から奈落に追い返すことができない。ただ、原作での謎かけ盗賊は、まだ〈奈落の帝王〉という呼称を明らかにしていなくて、もう少し曖昧にしか教えてくれない。まあ、ゲームブックだと、その場面で「謎かけ盗賊の瓶を持っていれば、◯◯へ進め」という選択肢が出るから話が成立するが、TRPGや謎解きゲームのシナリオだと、あまりに話が抽象的すぎる情報はプレイする側にとっても分かりにくいから、ここではもう少し話を明確にしてみた』

 

アスト「作品形式における適切な量のヒントがあるわけか」

 

NOVA『会話的な自由度の高いゲームほど、ヒントは明確でないと、判断基準が成り立たないからな。ゲームブックの場合は、多少ヒントが分かりにくくても、パラグラフ構造や選択肢も判断材料にできるから、よほど巧妙に隠された手がかりや盲点を突いた選択肢でない限り、話をつなげることは可能。

『いずれにせよ、謎かけ盗賊の瓶を実際に使うのはずいぶんと後の話になるので(記事の数なら、その6か7になるかな)、本作の解析で俺が一番苦労したのは、実は謎かけ盗賊と会うルートを見つけ出すこと。「さまよえる宇宙船」の正解情報が入手できる惑星への侵入ルートと同じで、入り口となるパラグラフを逃すと会えないまま、先へと進んで謎かけ盗賊とはどこで出会えるねんって話になる。うっかり正解ルートを見逃して気付かなかったから、もう本文中のイラスト(86番)から話の前後関係に当たりを付けて、ここだったのか、とようやく正解ルートを発見するに至ったのが俺のリアルタイムでの攻略体験だ』

 

ダイアンナ「ダディも、謎かけ盗賊さまを探すのに苦労した、と」

 

NOVA『ところで、今作はミステリー感覚の強い作品で、主人公はちょっとした名探偵気分を味わえる。戦士というよりは捜査官の立ち位置なんだな。一方で、謎かけ盗賊のセンスは、イギリス人よりもフランス人、具体的にはルパン1世ことアルセーヌ・ルパンみたいな要素を感じる。探偵が宿敵の怪盗紳士に助けられて、世界を滅ぼそうとする悪の帝王の陰謀を暴く話と考えるなら、やはり88年出版のゲームブックでは、結構斬新な作品だったと感心できる』

アスト「シャーロック・ホームズ物の推理ミステリーゲームは今も昔も結構人気だもんな」

 

NOVA『こういう作品は時々解いているが、どうもミステリー関連のストーリーゲームは迂闊なネタバレがマナー違反という意識が先立って、記事書きしにくいんだよな。答えを教えても、過程で楽しめるのがゲームブックの特徴だから記事書きしているが、謎解きミステリーの要素が高まるほど、プレイ体験をどこまで公開していいかの判断に迷う』

 

ダイアンナ「とにかく、『奈落の帝王』が怪盗も出て来るし、殺人事件も発生して、犯人を探し当てるゲームブックということは分かった。謎解きミステリーに挑むベテラン冒険家の話ってことだね」

 

無人の村の怪

 

NOVA『そして、謎かけ盗賊に会っても、会うのに失敗したとしても、パラグラフは7番に一度収束する。そして、この村に入って唯一の生き残りの少女メマを助け出さなければ、ゲームオーバー確定だ』

 

アスト「少女救出か。萌えるぜ」

 

NOVA『うむ。シチュエーション的には大変萌えるんだが、イラストの少女が全然可愛くなくて、不気味なのが残念だな。この「奈落の帝王」こそ萌えバージョンとして復刻させたら良かったのでは? と思うぞ。わざわざ男性キャラを女体化しなくとも、素で女性キャラがいろいろ登場する作品なんだし。名のある登場キャラの男女比が普通に1:1で、しかも物語的にも結構重要な立ち位置にあるFFゲームブックを俺はあまり知らない。一応、「死神の首飾り」も女性率は高い方だと思うが、あっちは倒すべき敵役が多いからな』

 

ダイアンナ「別に萌え目的でゲームブックを楽しむわけじゃないだろう?」

 

NOVA『しかし、無人の村に一人生き残ってるのが、いたいけな少女か、小汚いおじさんだと、前者を助けたいと思うのが人情ってものだろう?』

 

ダイアンナ「まあ、いたいけな少年と、小汚いおばさんだったら、前者を助けたいな。要は、どちらがより保護意欲を掻き立てるかって話だ」

 

NOVA『小汚いという表記も、しょせんは主観的な印象操作だからな。まあ、男より女、年長者よりも年少者の方に庇護意識が向くのは、社会心理学で統計データが出ているそうだが。その意味で、女子供を守ろうとするのは社会通念で普通にありで、女子供を見捨てて一人だけ逃げ出す男は卑怯者呼ばわりされるし、男の子を見捨てて一人だけ逃げ出す女も冷血で薄情と見なされる。何故か、一部のフェミ界隈では子どもであっても男として生まれたら原罪を負っていると毛嫌いする層がいるらしいが、わざわざ自分の人情の薄さをアピールしなくてもいいのにな、と思う』

 

ダイアンナ「男をバカにする女というのが格好いいと思いたがる層がいるらしい」

 

NOVA『俺に言わせれば、誰かや何かをバカにすることで自己の尊厳を保とうとしているのは見苦しいということになるが、公の場でそういうことを言うのもブーメランなので、とりあえず男であろうと、女であろうと、助けられる範囲においては、助けようという考えだな。相手に助けられる価値があるかどうかは結果論であって、過剰な奉仕精神で人助けをして心を病んだメンヘラさんの考えを基準にして、人を助けないのが常態の社会になってしまえば、息苦しいよなあとは思う。少なくとも、ゲームブックでは人助けの精神で生きようと思う』

 

アスト「で、選択肢は何だ?」

 

NOVA『何だか道に靴とかお皿とか家財道具と思しきものがいろいろ散乱した村で、人の姿が見えないわけだ。リーサンの使命を再度確認すると、「東の方で村人が消失しているという情報が入ってきて、現地で状況を確認偵察して来い」というお仕事なので、この状況はドンピシャだと思うんだが、選択肢の中には「村を出て先へ急ぐ」というのがあるのが違和感』

 

ダイアンナ「とりあえず、誰か一人ぐらい残ってないか、と探すぐらいはするか」

 

NOVA『東の方からは、湿っぽくムッとするイヤな臭いの風が吹いてきて、そちらの様子を確かめるというのも一理あるんだが、とりあえず、右手の建物から何かを叩くような音が聞こえてきたので、右の建物に入るか、それとも逆側の左の建物に入るか、の選択肢だな』

 

アスト「だったら、先に右に入って、後から左に入るのが初見のセオリーだな」

 

NOVA『作者の誘導術だな。もちろん、最適解は左で、右にはリスクしかない。まあ、攻略記事の都合で覗いてはみるがな。右の建物は〈ストレンジカン酒店〉という酒場兼用の店で、こぼれたワインで床がビチョビチョになる程に荒らされていた。音はカウンターの後ろの落し戸から聞こえて来るわけだが、酒樽が乗せられて下から抜け出せないようになっている』

 

ダイアンナ「つまり、地下室に閉じ込められているんだな。助けてやるのが親切ってものだろう?」

 

NOVA『下には、うす汚ない卑劣漢という名の敵が潜んでいて(技6、体8)、問答無用で殴りつけられて1点ダメージを受けることになる。話し合いの余地はゼロなので、やっつけるしかない』

 

アスト「技術点6だと、ザコだろう?」

 

NOVA『数字上はそうなんだが、無傷で倒したはいいものの、こいつ、倒しても死なないんだよ。下手に死体を調べようとすると、甦ってつかみかかって来る。サイコロ2個で体力点以上の目を出すと、床にこぼれたワインに顔を押しつけられて、無理やりアルコールで窒息させられてゲームオーバーだ。まあ、体力点が12以下に下がってないと、この死に方はないだろうから、レアなバッドエンドだろうけどな。とにかく、殺せない死体ということで(ただのゾンビとも違う)、慌てて地下室から脱出して、出て来れないよう、元どおり樽でフタをして閉じ込めることに成功した』

 

ダイアンナ「最低1点のダメージを受けるだけか」

 

NOVA『ゾンビとも違う死なない死体って何だろうって思いながら、もう一つの建物に入ってみる(128)。すると、そちらは魔法使いか薬草医の家だということが内装から分かった。机の上の品物各種を調べるか、奥の壁に吊り下げられた操り人形を先に調べるかの選択肢だが?』

 

ダイアンナ「操り人形は動き出しそうなので怖いから、先に机の上を調べてみたい」

 

NOVA『人形は動かないけど、結果的には、先に机の上を調べる方がリスクが減っていいだろう。とりあえず、机の上には薬ビンや羊皮紙が乗せられていて、ビンの一つから緑色のねばねばがこぼれている。それで汚れが目立つ羊皮紙に、こんな趣旨の手紙のような文章が書かれていた』

 

  • 危険が去ったと分かるまで、家から出ないように。
  • 安全になったら、親御さんの村まで帰りなさい。
  • 変幻の森に入るなら、やぶに咲く手袋をたどって行くこと。さもないと、永久に森から出られなくなる。

 

NOVA『こんなことが書かれた手紙の他に、飲めそうな薬ビンが3つあって、どれでも自由に持って行ったり、この場で飲んだりできる。薬の名は、グルシュ、アラール、ザザズだが、当たり外れが当然ある。正解はグルシュで、いつもの幸運ポーションと同じ働きをする。アラールの方は、飲んだその場では実害がなさそうなんだけど、後々致命的な中和作用が発生して、攻略が失敗になる。ザザズは気を失ってしまい、時間点を2点加算されてしまうので、結構、厳しいペナルティーだと思うな』

 

アスト「初見では、行き当たりばったりで飲んでみるしかないわけだが、唯一の当たり効果はグルシュだと」

 

NOVA『まあ、これもどのタイミングで飲むかが大事であって、運点の回復薬を運点を消費していないときに飲んでも美味しくないから、初見だと適切に活用しにくいわけだな。実プレイだと何度かの挑戦を経た後で、その有用性を活かすか、チートで先に効果だけチラ見して、何食わぬ顔で有意義に使わせてもらうことになる』

 

ダイアンナ「それでは、次に操り人形を調べるか。手紙の文章によれば、この家には他に誰かが隠れているみたいだから」

 

NOVA『操り人形の方に向かうと、緑色のねばねばが足跡となって、続いていることに気づく。そして、足跡が戸棚にまで伸びているんだな。この戸棚に隠れている何者かに警戒して剣を抜き放つか、それともふつうに開けるかの選択肢だが、中に隠れているのが敵ではないと分かっている状況では、剣を向けるのが不正解だと分かるだろう(錯乱した女の子の攻撃で1点ダメージを受けて、その後の技術判定失敗で逃げられる可能性あり)。優しく声をかけながら、戸棚を開けると、そこには吹き矢筒を持った女の子がいた。こんなイラストだ』

アスト「う〜ん、確かに可愛いと言えるかどうかは微妙だなあ。不細工というほどではないけど、不気味さが先立つ絵柄だな」

 

NOVA『まあ、緑色のねばねばに覆われて、イヤな臭いを漂わせているという時点で、嫌悪感を感じさせるように描いているんだけど、液体人間のファンだと、こういうのもあり、と思ったりするわけだ』

 

ダイアンナ「ダディの性癖はこういうのを受け入れちゃうんだ」

 

NOVA『乾いた少女より、瑞々しいチュルンとしたジェリッシュな女の子の方に萌えを感じるが、ただしベトベトまとわり付かれるのは勘弁って距離感だ。とにかく、少女の名前はメマ。魔法使いエンシメシスの弟子で、友好的に接すると護身用の吹き矢筒をゲットできる。そして、この村の異変について、いろいろと知っていることを教えてくれるわけだ』

 

  • 師匠のエンシメシスは、何かの予言で危険を察知し、北の山脈の変幻の森に住む、賢人アレセアの指示を仰ぐために旅立った。
  • 旅立つ直前に、身を守るためと言って、メマの全身に緑色のねばねばを塗って、戸棚に隠れているように指示した。だから、この2日間、ずっと戸棚に身を潜めていた。
  • 案の定、恐ろしい音が村に近づいてきて、村人たちの悲鳴が聞こえてきた。
  • そのうち音が聞こえなくなって、どうしようかと迷っていると、リーサンが現れた。

 

アスト「なるほど。手掛かりは魔法使いエンシメシスの向かったという変幻の森、そこで賢人アレセアを探せということだな」

 

NOVA『その前に、メマを安全なところ(彼女の親御さんの村)に返してあげることになる。村を出る前の選択肢として、彼女の緑色のねばねばを洗い流すべきか、そのままにしておくかなんだが、洗い流すとバッドエンドの危険があるので、ねばねばフォームのまま馬に乗せることにする』

 

アスト「ゲッ。馬までねばねばになってしまう」

 

NOVA『大丈夫だ。ドゴランアーマーだと思えば、問題ない。リーサンだって、ねばねばのジェリッシュ・フォームを受け入れたんだから、馬もジェリッシュ・ホースとして、ベチョベチョライフを楽しもう』

 

謎の軍隊の脅威

 

NOVA『メマを抱え上げて、馬の前に乗せると、リーサンは丘陵の斜面を上って行った。そこから、周囲を見渡すと、メマの示した村のある方向に煙がたち上っているのが見えたので、そこはまだ健在なことが分かった。これで時間点が1点進んで8点になる』

 

アスト「戦場で煙が上がっているってことはないだろうな」

 

NOVA『その可能性も否めないが、メマの村と別方向の谷間の方に、もっとはっきりした脅威が目についた。無数の人の群れが遠くの斜面を覆い、その周辺をこの世のものならざる瘴気が覆っているのが遠目からも感じ取られる。体が無意識のうちに震え、うなじの毛が逆立つ。馬が後ずさり、恐怖にいななく』

 

アスト「ヒ、ヒヒーン、ヒエーン」

 

NOVA『ここで選択肢は、謎の軍隊に近づいて様子を見に行くか、それとも、まだ安全そうなメマの村へ行くか、だ』

 

アスト「ご主人、悪いことは言わねえ。こんな不気味な群れに近づくのは自殺行為だ」

 

NOVA『確かにな。少なくとも、今はメマもいっしょなんだし、彼女を安全なところに連れ帰ることが優先だろう。なお、メマがいっしょじゃなければ、村人たちはリーサンを信用してくれず、黒い軍隊が迫っているので、脱出しなさいと要請しても聞き入れてくれない。メマを連れているときは、メマが両親のところに駆け寄って、彼女の説明で村人たちも恐ろしい脅威が迫っていることを理解して、避難要請に応じてくれる。物語的には、これが最適解だろう。メマがいないと村人を見捨てて逃げることになるから、後味が悪い』

 

ダイアンナ「念のため、黒い軍隊に近づくとどうなるんだ?」

 

NOVA『IFルートということになるが、軍勢の正体は、魂を抜かれた村人たちなんだな。クラック島の蛮人や傭兵、あるいはオークなどの邪悪ではなくて、虚ろな表情の女子供も含んだ村人たちが、黒い瘴気に操られた暴徒として蠢いている。酒場で遭遇した不死身のゾンビならざる魂の抜け殻たちが黒い軍隊の正体で、それに黒い瘴気は魔性のスズメバチの群れだということが近づくと分かる。メマがいっしょで、緑のねばねばを洗い流していないなら、近づいても気付かれずに上手く脱出できるが、そうでないなら黒い軍隊に近づいた時点で、主人公もスズメバチに刺されて魂を抜かれて、バッドエンドに陥る』

 

アスト「馬もか?」

 

NOVA『馬の魂がどうなるかなんてゲームブックには書いていないが、たぶん奈落馬(アビス・スティード)と化してしまうんじゃないだろうか?』

 

アスト「アビス・スティード、略してアストか。それはそれで悪くないかもな」

 

NOVA『あ、訂正。馬は主人を振り落として、一目散に逃げるってことがパラグラフ113番に書いてあったわ。おのれ、馬。俺を置いて逃げるなんて』

 

アスト「ヒン。オレは自殺行為だって警告したぜ。それを無理して近づいたのは主人が悪い。アビス・スティードなんかになってたまるかってんだ。あばよ」

 

NOVA『そんなわけで、バッドエンド・ルートだと、主人公も奈落のスズメバチの傀儡になってしまう。そして、パラグラフ336番だ。奈落に囚われた魂として、主人公は他の多くのカラメールの民たちとともに永遠の絶望を味わい続けることになる。少なくとも、今の〈奈落の帝王〉の支配下では、魂が安らげる見込みはなさそうだ。そこでの挿し絵は、絵師こそ違えど、表紙絵とほぼ同じで、虚空の檻に捕らえられた「奈落の奴隷」を描写してある』

 

ダイアンナ「メマを連れて脱出できた場合だけ、物語がさらに進展するんだね」

 

NOVA『パラグラフ35番で彼女を両親の元に返して、その後で自分の今後を考える。パラグラフ53番で、さらに時間が進んで9点め。この後の選択肢は、「1.黒い軍隊の脅威をカラメールに警告しに戻る」「2.敵について、もっと調べる」「3.(メマから話を聞いていれば)魔法使いのエンシメシスを探しに行く」の3択で、1→3→2の順番じゃないと攻略失敗するとは、以前にも言ったな』

 

アスト「報告優先。別の任務に赴くのは、しっかり報告を済ませた後の話だってことだな」

 

NOVA『そんなわけで、今回はこれで終了。次回はカラメールに戻って、宮廷陰謀劇の解決だ。こちらを解決できないと、〈奈落の帝王〉を倒しても、国は裏切り者に簒奪されてしまい、やはりバッドエンドだからな』

★リーサン・パンザ(奈落の帝王ver)

 

・技術点:12

・体力点:19/20

・運点:12

 

・食料:5

・金貨:22

・時間点:7→9

 

・装備:ファングセイン鋼の剣、革鎧、背負い袋、におい玉、謎かけ盗賊の瓶、幸運のポーション(グルシュ)、吹き矢筒

 

・情報:魔法使いエンシメシスは、賢人アレセアに会うために変幻の森に向かった。

    変幻の森では、「やぶに咲く手袋」が迷路攻略の手がかり。

(当記事 完)

*1:本人は、自分の感情や感覚に基づく意見を称して、考えているつもりと思い込んでいる。深く考えずにただ思うことと、じっくり吟味して考えることの違いを意識していない=言葉の使い分けすらしない人間は数多い。「私は〜〜と思う(根拠なしの主観)」と「〜〜と考える(一応の根拠を示した上での客観性を帯びた意見)」のニュアンスの違いを使い分けて文章書きすることは、アカデミックの世界では割と基本だと自分は学んだが、そこまで意識して記述してない=主観と客観の区別のできていない書き手がネット上では蔓延していると思われ。

*2:女王に仕える忠義の騎士なんて、中世ロマンでしょ。でも、女王とか騎士への叙勲ってキーワードは、イギリスでは近現代でも普通の社会だったわけで。