ウィロウベンド到達
リバT『前回、アートスさんは目的地のウィロウベンドの街に到着しました。山賊5人衆と遭遇した空き地10番を北に進むと、徐々に道は広くなり、沼地の陰鬱さも和らいで来ます。沼地はゆっくりと森に変わっていき、やがて街の看板にも「この先ウィロウベンド」と見えるようになって、フェンマージよりも派手で賑やかな印象ですね』
アートス(アスト)「城壁に囲まれた大都市ではないが、それなりに大きな都会とは聞いている」
リバT『一応、獣避けの石壁ぐらいは設けられているんですけどね。せいぜいが木の柵程度のフェンマージに比べると、村よりも規模が大きいことは分かります。ただ、プームチャッカーがこの街よりもフェンマージを拠点に選んだのは、交通の便の良さと治安の良さにあるようです。のどかで住みやすいのがフェンマージで、一方のウィロウベンドは活気がある分、ギラギラしていて刺激的な場所に感じます』
アートス「盗賊も多くて、都市冒険の舞台にも使えそうだな」
リバT『街の入り口近くでは、人相の悪い森番らしき男たちが数人、警備に当たっています。他所者を誰何するような口調ですが、〈炎のグレン〉の名を出すと肩をすくめて通してくれます』
アートス「あの男、街のいろいろなところに顔が利きそうだな。〈曲がった槍〉亭の場所を聞いてみよう」
リバT『すると、森番見習いの若者が案内してくれます。そしてグレンさんから紹介された宿屋に到着しました。そこは居心地のいい広々とした宿で、グレンさん推奨だけのことはあります。主人にグレンさんの名前を出すと、金貨1枚で美味しい食事と宿泊用の個室を用意してもらえました。夕食をとっていると、やがてグレンさんも宿に帰って来ます』
アートス「何だか、ずいぶんとグレン推しだなあ。ただの山賊じゃないのか?」
リバT『彼らの第一印象はごろつき風の山賊なんですが、一応、ウィロウベンドでの役職(自称)は「街周辺の治安を守る巡視員」だそうです。ただし、公職ではなくて、自発的な活動で給料なんかが出るわけではない。サソリ沼近辺で狩りをしたり、迷い出るモンスター退治をしたりしながら、たまに怪しい他所者から通行料をせしめたりしている、と。それなりに腕が立って義侠心にも篤いので、ロビンフッドや仁侠ヤクザみたいな一団と思っていただければ』
アートス「ゲームブックでは、そこまで設定されていないのに、凝りすぎだろう?」
リバT『それもこれも、ウィロウベンドの設定を語りたいためです。グレンさんは、この地域のことをいろいろ教えてくれますよ』
グレンとの交歓
リバT『サソリ沼の北西にあるこのウィロウベンドの街は、明らかにフェンマージよりも都会なのですが、タイタン所収の地図では〈王の道〉沿いにあるフェンマージと比べて、発展する理由がなさそうなんですね。そこを補完すべく、独自に設定を考えてみました』
アートス「公式設定ではないんだな」
リバT『ええ、本記事オリジナルです。このウィロウベンドの街を切り開いた領主は、古(いにし)えのシェイキスタ王朝の王家との仲が良くなく、そのために主要な街道を通してもらえなかった。そこで、王家に反感を持つ悪党やごろつき冒険者を呼び込むことで、王家への反抗姿勢を明確にした。それがウィロウベンドの成立過程です』
アートス「王家への反逆を明確にして、潰されたりはしなかったのか?」
リバT『その前に魔法大戦が勃発し、各都市とも混沌の勢力に対して生き延びるのに必死になります。ウィロウベンドの民は独立独歩の気風が強く、シェイキスタの都が破壊され、今のジモーランに移った際も、混沌に対して強く抵抗し、サソリ沼そのものが天然の防壁になったおかげで、比較的被害が少ない状態で生き残った形になります』
アートス「反主流派だからこそ、主流派が弱体化しても健在であり続けたわけだな」
リバT『グレンさんは、そんな街の来歴なんかを語りながら、さりげなくアートスさんのこともあれこれ尋ねて来ます。どこから来たのかとか、旅の目的は何かとか』
アートス「だったら別の大陸のアランシアから来た、と語っておくか。本当は別世界のアランツァなんだが、オレの中でもあまり区別できていないし、別世界って話をしても一般人には眉唾物だろうからな。別の大陸だったら、まだ話が通じやすいってものだ」
リバT『遠い異郷の地からはるばる海を渡って来たって話を聞いて、ウィロウベンドしか知らないグレンさんは目を丸くします。「道理で強いはずだ。さぞかし波乱万丈な冒険を切り抜けて来たんだろうな」と素直に感心します』
アートス「ついでに相棒の女ダルタニアの話と、プームチャッカーからの依頼の話もしておくか。こいつが有用な情報を持っているかもしれん」
リバT『ダルタニアさんは、別の異世界に行ったと〈鳥の女あるじ〉さんが教えてくれたんですけどね』
アートス「彼女の言葉を信じないわけじゃないが、情報には裏付けも欲しいからな」
リバT『その夜のうちに、グレンさんは街の3軒の宿屋を全て回って、ダルタニアさんらしき女戦士が最近、宿に泊まったことはないと調べてくれます。どこかで野宿でもしていない限りは、あるいは誰かの家に寝泊まりさせてもらっていない限りは、ダルタニアさんがウィロウベンドに来たとは考えにくい、と翌朝には判明するってことで』
アートス「便利な情報源NPCだな、グレンって」
リバT『そのために登場させましたからね。プームチャッカーさんについては、数ヶ月に一度、街にも顔を見せる交易商人という認識ですね。下っ端盗賊が手を出したが、意外にもそこそこ腕の立つ剣士で、油断ならない相手と評価しています』
アートス「ほう、それは意外……でもないのか。アランシアから渡って来たそうだし、商人になる前は冒険者だった可能性もあるだろうし」
リバT『具体的には、技術点9、体力点14で、主人公と戦うこともできます。ただし、彼と戦った場合は、グリムズレイドと違って倒すことはできず、駆けつけた衛兵に捕まってバッドエンドになるわけですが』
アートス「技術点9ってことは、山賊リーダーのグレンと同じ力量か。超一流ってことではないが、名うての剣士と言う程度の実力はある、と」
リバT『あなたがプームチャッカーの仕事で、サソリ沼を抜けて来たことを知って、グレンさんはますますあなたを尊敬します。彼は沼地の端っこまではうろつき回っていますが、奥に入ると霧が深くなるので、よほど優れた方向感覚の持ち主でなければ、道に迷うのは間違いない、と言います。運が良ければ、沼の番人や〈あるじ〉なる隠者が救いの手を差し伸べてくれるという噂も聞いたが、グレンさんは会ったことがない、とも』
アートス「地図があれば、フェンマージと交易しやすくなるとプームチャッカーは考えているが、本当に実現すると思うかね?」
リバT『道に迷わず、道中の危険を剣と魔法で切り抜けることができれば、不可能ではないかもしれませんが……あまり大規模に物を運ぶことは難しいでしょうね。馬車に荷物を積んで運ぶには、道がぬかるみ過ぎていますから、交易路として使うには、まず迷わないように標識を立てたり、道を整備するなど大規模な開発工事をしたりする必要があるでしょう。それまでは小規模な一団で、高額商品を運ぶことで何とか経営が成り立つかどうかと言ったところでしょうか。
『もちろん、プームチャッカーが事業を本格的に立ち上げるなら協力したいので、グレンさんのことを紹介してくれるように、アートスさんに頼みますよ。グレンさんは機を見て敏なキャラってことで』
アートス「ああ。ウィロウベンドでは、〈曲がった槍〉亭のグレンという男が優秀で、信頼できるから……とプームチャッカーに伝えておくよ。ただの山賊リーダーにしておくのは、もったいないだろうし」
リバT『……とまあ、酒場であれこれ話をした翌朝。この宿だと、よく眠れますので、体力点2点を回復できます』
アートス「体力全快にはならないんだな(残り体力16点)」
リバT『なお、他の2軒の宿屋に泊まると、こんなイベントです』
- 〈黒熊〉亭:酒場で一晩中浮かれ騒ぐ常連客のせいで、よく眠れない。体力1点減少。階下に怒鳴り込むと、酒場の主人が不意打ちで剣を持つ腕を椅子で激しく強打し、技術点2を失う大ダメージ。
- 〈タンクレッドの天馬〉亭:体力は回復するが、盗人にアイテムを2つ盗まれる。その後、運だめしに成功すれば、魔法屋に行くことができる。
リバT『〈曲がった槍〉亭だけがペナルティなく、一晩過ごせて、しかも宿の主人が親切に魔法屋を紹介してくれるというサービス付きです』
アートス「なるほど、さすがはグレンさん推奨だけはあるな」
リバT『それで、翌朝の朝食の席で、グレンさんはダルタニアさんの件を報告して、それから魔法屋の紹介もしてくれます。若い魔法使いのハリカー・ダレーリンが、以下のアイテムと引き換えに、最大3つの中立魔法を売ってくれますよ』
★【スミレ石】【金の鎖】【あるじの護符】【金の磁石の首飾り】【ユニコーンの角】
アートス「【スミレ石】と【蜘蛛の護符】と【ユニコーンの角】を持っているので、魔法を購入だ。ええと、帰り道で役立ちそうな魔法は、《火炎》2個と《氷結》1個といったところか」
●盗賊剣士アートス(プレイヤー:アスト)
・技術点:12
・体力点:16/20
・運点:8/10
・呪文:技術回復、体力増強、開運×2、氷結、目くらまし、友情、火炎×2、氷結
・入手アイテム:スミレ石、蜘蛛の護符、オークの弓矢(持っているだけで効果なし。ただの演出用)、赤い外套、ユニコーンの角
リバT『では、準備も整えたところで、フェンマージへの帰り道をたどりましょう。グレンさんと愉快な山賊一党は、彼らと遭遇した空き地10番まで送ってくれます』
アートス「連中の好意に感謝しながら、別れを告げよう」
帰り道
リバT『スライムと遭遇した空き地28番は、スライムを撃破済みなので素通りできて、ウィスプと遭遇した空き地15番も東へ向かえば、十字路まで難なく到着できます』
アートス「十字路の東は未探索だが、その辺はカニコングに残しておくとして、オレは南へ進む」
リバT『大サソリを倒した空き地32番も、ドワーフの遺骨ぐらいしか残っていませんね』
アートス「たった1日足らずで、遺体がここまでになるのか」
リバT『どうやら、このサソリ沼の魔力は、腐敗を速やかに進行させるようですね。泥の中の微生物が非常に活発で、分解作用が激しいというか』
アートス「食料を持参しても、腐るのが早いってことかもな。保存食さえも腐るから、本作は食料を持って行けないのかもしれん」
リバT『サソリ沼で1日以上過ごすと、肌荒れも大変なことになりそうです。ともあれ、空き地16の大鷲の巣まで戻って来ました。ここで木の上の巣を調べてみることもできますよ』
アートス「調べたらどうなるんだ?」
リバT『運だめしに失敗すれば、登っている途中に落下して体力点2を失いますが、どっちにしても巣の中の【金の鎖】を入手できます』
アートス「ウィロウベンドで魔法を購入できるアイテムだな。ここで入手できるのか。まあ、今さら入手しても仕方なさそうなので、わざわざリスクは冒さない。それより帰路を急ぐぞ。南へGOだ」
リバT『はい、ここで初めての場所です。空き地35番。腐蛆病川を渡る橋が掛かっていますね。橋は古い石製で、打ち捨てられて久しいですが、渡りますか?』
アートス「他に川を渡る道はなさそうだからな。崩れないことを確認しながら慎重に渡る」
リバT『すると、来たことのある空き地13番に到着しました。これで、川向こうとフェンマージ側の地図がつながったことになります』
アートス「ああ。ウィロウベンドまでの地図は完成だ。あとはフェンマージに無事に帰り着けば、ミッション終了、と」
●サソリ沼の地図(未完)
ウィロウ
ベンド (19)ー?
l l
l (15)ー十字路ー?
l l l
(10)ー(28) (32)ー(16)ー?
l
(33)ー(20) (35)
l l l
(14) 瘴気 (9) ー(13)ー(3)ー?
l l l l
(23)ー(29)ー(5)ー(24)ー(26)
l l l
(6)ー(18) l (8)
l (17)
(34) l
l l
(4)ー(1)ー(12)ー(25)
l
沼の入り口
l
フェンマージ
●空き地番号とイベント名および攻略コメント
(1)水たまり
(3)特にイベントなし
(4)狼のあるじ
(5)戦闘跡
(6)鉤爪獣(ダイア・ビースト)
(8)カエルのあるじ
(9)盗賊:倒すと【赤い外套】を入手。
(10)山賊5人組
(12)クマのうろ
(13)サソリの群れ:運だめしとジャンプで乗り越える。
(14)鳥の女あるじ
(15)ウィル・オ・ウィスプ
(16)大ワシの巣
(17)蜘蛛のあるじ
(18)剣の木
(19)沼の番人
(20)腐蛆病川の南の崖:川に飛び込むと死ぬ。
(23)恐怖の花
(24)蟹草
(25)沼怪獣(プール・ビースト):表紙絵モンスターの割に強くない。倒すと【スミレ石】を入手できる。
(26)沼オーク3体:弓矢のダメージが痛い。だけど、倒しても弓矢は入手できず。
(28)スライム
(29)ユニコーン
(32)大サソリ
(33)腐蛆病川の南岸:《氷結》の魔法2回で渡れる。1回だけだと、渡る途中で魔法の効果が切れて、運だめしに失敗するとバッドエンド。渡る際に、氷塊に乗って東に流されて、(35)の橋まで行き着くことになる。
(34)小川
(35)腐蛆病川を渡る橋
フェンマージへの帰還
リバT『さて、川を渡っての空き地13番ですが、まだサソリの群れは健在ですね』
アートス「運だめしの前に、《開運》の魔法で10点に回復したうえで……出目4で成功。そして、体力判定も成功して、ジャンプで乗り越える。次は西の空き地9番を素通りして、南へ向かう」
リバT『空き地9の盗賊は、すでに倒していますから、問題なく通れます』
アートス「それにしても、この盗賊はサソリ沼のこんな奥地で一体、何をしていたんだろうな。こんなところを訪れる旅人もあまりいないだろうから、略奪稼業もあまり実入りが良くないだろうし」
リバT『半ば狂気に冒された冒険者の成れの果てってところでしょうかね。次は空き地5番ですが、戦闘跡も特に何もないので素通りできます』
アートス「西の空き地29も、ユニコーンはもういないので、そのまま南下するぞ」
リバT『あなたは初めて来る空き地18番の、剣の木(ソード・ツリー)イベントです』
アートス「準備はバッチリだ。《火炎》の魔法で燃やす」
リバT『相手に2点のダメージを与えました。トドメは刺せませんので、技術点9、残り体力点10の相手と戦ってください』
アートス「《枯らし》の魔法と違って、一撃必殺というわけにはいかないのか。面倒だが、やるしかないな」
2点のダメージを受けたものの(残り体力14点)、ソード・ツリーを撃退したアートス。【ソード・ツリーの種】を入手して、さらに南下。
空き地34の小川は、《氷結》の魔法で凍らせて渡る。
その南は〈狼のあるじ〉のいる空き地4番である。《友情》の魔法で会話ができるが、彼のくれる情報は「川を渡るには、容易な道を行け。罠を心配する必要はない」というもの。まあ、橋を渡る際に、罠を警戒して回り道をするという選択肢があるわけだが、今さらである。
また、〈狼のあるじ〉は、狼をおとなしくさせる呪文を教えてくれるが、そもそも狼と遭遇するパラグラフは今回、通っていない。それに、本作の狼はさほど強くないので、あまり役立つ感じもない。別のゲームブック『狼男の雄叫び』でも使えるなら、有用な呪文になるのだろうが。
そこから、東の空き地1番に入って、水たまりを難なく飛び越えて、とうとうフェンマージに帰ってきた。
プームチャッカーへの報告
リバT『それでは、フェンマージに戻って来ましたので、プームチャッカーさんの館へ赴くことになります。ゴブリンメイドのゴブーナちゃんに出迎えられ、巨漢の商人の書斎に案内されます』
アートス「ウィロウベンドへの地図はこれだ。ソード・ツリーとサソリの群れが何度も蘇って来るので面倒だが、それ以外の怪物は始末して来たから、当面は安全に通れるだろうな。護衛の戦士を連れて行くなら、技術点10もあれば十分だろう。大体の敵は技術点9以下だ」
プームチャッカー『ならば、私とブリネーの2人で切り抜けられるだろうな。地図作成者の君も同行してくれたら、なおさら心強い』
アートス「悪いが、オレには別の目的がある。相棒のダルタニアは、ウィロウベンドにはいなかった。どうやら遠くへ旅立ったようなんだ。オレは彼女を追う。その代わりと言っては何だが、ウィロウベンドでは〈炎のグレン〉という男を頼るといい。山賊まがいの格好をしているが、腕の立つ剣士だし、性根のいい奴だ。あんたの商売に協力してくれるはずさ。フェンマージとウィロウベンドの交易ルートが上手く軌道に乗ることを願っているぜ」
プームチャッカー『……そうか。君の仕事は完璧だった。それに報いて、今後、1年の交易の稼ぎの半分は、君に提供しようと思っていたのだが。少なくとも、金貨200枚から300枚にはなると見込んでいたんだがな』
アートス「1年先も、ここに滞在するつもりはなかったからな。今、くれるものはないのかい?」
プームチャッカー『今すぐか。だったら、地図の代金として、このエメラルドを持って行ってくれ。売れば金貨100枚にはなるはずだ。そして、ここにまた来る機会があれば、いつでも遠慮なく立ち寄ってくれ。誠実で優秀な冒険者は歓迎するよ』
アートス「ああ、あんたも良い雇い主だったぜ。商売繁盛と、2つの街の発展を期待しよう」
プームチャッカー『君も良い冒険をな。ダルタニアさんとの再会を祈っておく』
そしてグロナール
リバT『……こうして使命を果たしたアートスさんは、プームチャッカーさんとも良い関係のままに、ハッピーエンドを迎えました』
アートス「使命を果たせなかったら、残念なエンディングなんだな」
リバT『プームチャッカーさんは役立たずの冒険者に対して、損失を犯した、と残念そうに言います。それに対して逆ギレして攻撃する選択肢も出るのですが、プームチャッカーさんは強くて抵抗するんですね。そして時間をかけているうちに、衛兵たちが駆けつけて来て、狼藉者を地下牢に放り込んだり、クロスボウで射殺したりします。
『3人のパトロンの中で、おそらく直接の戦闘能力が最も高いのがプームチャッカーさんで、魔界の力でドーピングして強いのがグリムズレイドさん。ただ、絶対に倒せないという意味ではプームチャッカーさんは、〈鳥の女あるじ〉同様に最強と言えるかもしれません』
アートス「セレイターは?」
リバT『温厚な老人なので、そもそも戦いになることがありません。ミッションに失敗しても、主人公を責めることなく、むしろ危険なことはもう止めるべき、と留めてさえくれます。こちらもセレイターを傷つけたり、騙したりすることはいけないと善人オーラに当てられて、悪意を持てなくなりますし』
アートス「なるほど。失敗した者への対処の仕方も三人三様なんだな」
- 善のセレイター:成功したら大いに喜び、失敗しても主人公を気づかってくれる。
- 中立のプームチャッカー:成功したら大いに喜ぶが、失敗したら冷ややかな対応になる。
- 悪のグリムズレイド:成功しても報酬をごまかすセコい対応をして、それに気づいた主人公に対しても未練がましく嫌味を言う。失敗したら、激怒して、呪文で攻撃して来たりすることも。
アートス「成功しても、後味が悪いのがグリムズレイドなんだな(苦笑)。まあ、プームチャッカーは商売人として誠実なことは分かったが、損切りも早くて冷ややかな面も持っている、と。でも、街の経済的発展には貢献してくれる優秀なキャラっぽいな」
リバT『雇い主のNPCとしては、最も奥の深いキャラだと思ってます。さて、ゲームブックとしてはこれで終わりですが、本記事では最後にグロナールことロガーンとの対面が控えています』
アートス「向こうから接触して来るんだろう?」
リバT『ええ。プームチャッカーの屋敷を出ると、すぐに現れて、話しかけて来ます。「どうやら、あなたのおかげでフェンマージの交易が上手く軌道に乗りそうですね」と』
アートス「ああ、あんたか。こっちから出向こうと思っていたんだが、神の化身というのは本当なのか?」
グロナール『誰がそれを? ああ、〈鳥の女あるじ〉さんですか。それを知られたなら、仕方ない。あなたの役目は終了です』
アートス「……もしかして、ここでオレを始末する気か? 用が済めば、切り捨てるってことか? ダルタニアはどうした? 事と次第によっちゃ、いくら神さまだからって、容赦しないぞ」
グロナール『落ち着いてください。わたしは善神を名乗るつもりもないが、邪神でもない。少なくとも、プームチャッカーさん程度には誠実なつもりです。英雄の成し遂げた業績には、きちんと称賛し、報奨を与えることに否やはありません』
アートス「ダルタニアはどこにいる?」
グロナール『あなた方の生まれたアランツァ世界とは異なる世界、ローレンシア王国に飛ばされました。元々、あなた方は次元嵐に巻き込まれて、異世界の冒険を行う運命にあったのです。その運命に少し干渉して、こっちのタイタン世界の冒険に寄り道してもらった。ただ、それだけのこと』
アートス「それだけのことって、何だよ? 神の都合で、異世界にポンポンと飛ばされるなんて、オレたちを何だと思ってるんだ!」
グロナール『神々の仕掛けたゲームのコマ……と言うと、語弊がありますね。そういう考え方もできなくはないですが、神々に見守られた英雄、あるいは英雄になり得る運命の持ち主……と、そのようにわたしは考えております。運命神ロガーンは、このタイタン世界に人間という種族を生み出しましたが、人間は神の望みどおりには動いてくれないのですよ。容易く善にも悪にも染まり、世界の天秤を揺り動かす存在。神々にも制御できない自由と混沌、それでいて大いなる勲しと秩序をももたらす計り知れない存在、それこそが人間というものです。面白いでしょ?』
アートス「……その面白さはオレにはよく分からないが、オレたちの自由意思を縛るつもりはない、と?」
グロナール『縛ったら面白くないですからね。それと、あなた方のアランツァ世界は、このタイタンという世界の子どもみたいなもの。大きな世界が新たな神を生み出して、その新たな神が大きな世界の精髄(エッセンス)を元に、別の新世界を生み出すこともあるのですね。アランツァ世界に、ロガーンのような運命神に相当する存在はいませんから、わたしがそちらに干渉することはできません。しかし、異世界転移の次元嵐に巻き込まれた不安定な境遇の英雄を横から掻っさらうことは可能なんですよ』
アートス「言っていることが、よく分からんが、次元嵐はあんたのせいではない、ということか」
グロナール『そうです。次元嵐はあなた方の英雄としての運命が生み出したもの。多元宇宙を見渡すと、たまによくある現象ですが、最近は特に多いみたいですね。そこにほんのちょっとばかり細工をすれば、英雄予備軍が3人、わたしどもの冒険物語を紡ぐ主人公として引き上げることができた、という話です』
アートス「で、このサソリ沼の冒険を通じて、あんたは何がしたいんだ?」
グロナール『もちろん、フェンマージの冒険譚を紡ぐことで、街が新たに発展して、あわよくば新たな冒険物語が生み出されるかもしれない。それを記録するのが、わたしの仕事です。だって、フェンマージの新聞記者ですからね』
アートス「それは、グロナールの仕事であって、ロガーンという神の仕事ではあるまい。神としては、何がしたいんだ?」
グロナール『そうですね。舞台がフェンマージより広がって、さらに大きな世界の冒険物語が生まれるのを堪能したい。そう、このタイタン世界は冒険のために作られたのですから、冒険のための刺激を与えて、きちんとハッピーエンドに終わるのを見届けたい。その意味で、あなた方は立派な英雄として、よくやってくれました。感謝しておりますよ』
アートス「別にあんたを喜ばせるために、冒険しているんじゃないがな」
グロナール『それでも、良き冒険物語の誕生は嬉しいものです。そして、あなたを指輪から解放して差し上げましょう。あなたの冒険の記憶は指輪の中に収められ、第3の冒険譚に引き継がれる。あなたはダルタニアさんと合流して、ローレンシア王国のドラゴン退治の物語に関わることでしょう。よく知らんけど』
アートス「知らんのかい!?」
グロナール『いくら神でも、異世界の運命までは見通せないのですよ。確定されていない未来で、一応、シナリオは用意されているのですが、あらすじを何となく読んだだけですし、予定は未定という言葉もありますから。さあ、時間が来ました。指輪を返して、次の世界に向かって旅立って下さい』
アートス「う、うわ〜」
こうして、盗賊剣士アートスはフェンマージから姿を消した。
グロナール『ふう。これで2つめの冒険が紡がれました。最後の冒険は、太刀持ちターコイズさんですか。冒険者ではない、ただの従者とのことですが、前任2人の冒険の記憶があれば、無事にミッションを果たすこともできるでしょう』
(当記事 完。善良ルートに続く)