ヴァラエティに富んだ作品群
さて、リビングストンの話は、50巻『火吹山の魔法使いふたたび』から後編に入ります。以降は、コレクション版に収録されたものばかりで、比較的最近プレイしたものとなります。さすがに、学生時代からの思い入れとは年季が違いますので、巻数としては先に出ていた他作家の攻略記事終了分を振り返っておこうか、と。
具体的には『サソリ沼の迷路』『真夜中の盗賊』『奈落の帝王』『天空要塞アーロック』『魂を盗むもの』『王子の対決』の6作ですね。
それぞれが王道とは異なる癖のある作品揃いで、どんな評価になるかは、自分でもドキドキです。
①サソリ沼の迷路
最近プレイし直したばかりの、米ジャクソン作品ですね。
ゲームとしては傑作という評価で、後のゲームブックに与えた影響も大きいという、歴史的評価がほぼ確定した名作なんですが、ストーリー評価はあまり為されていないんですね。
それは、もちろん善中悪の3つあるストーリーで、総合評価もしにくいわけですから、自分でもどう切り口を見出していいのか戸惑いながら、まあ、機械的に一つ一つの観点で解きほぐしてみる。
- クライマックスの盛り上がり:3人のパトロンにミッションの達成報告をするシーンがクライマックスなんでしょうが、悪のグリムズレイド以外は戦って倒せない。ストーリーの大筋的には、『運命の森』のアレンジ版ということになりますね。最初に魔法使いから冒険の役に立つアイテム(魔法石)を購入(提供)してもらい、迷路状の森(沼地)をさ迷い歩きながら、各種イベントをこなして、目的のアイテムを探すか、北の街への道を目指す。目的を達成したら、元の場所に帰って報告という「双方向移動ならではの往復路」という点が違いますが、探索の過程を楽しむのが本題で、ゴール辺りに山場があるわけではない、と。よって、クライマックスの盛り上がりは点数なし、となります。グリムズレイドだけ、バトルで盛り上がるので、1点としましょうか。
- どんでん返し:特になし。与えられたミッションを達成して、そのまま終了なので、シンプルです。お金に意地汚いグリムズレイドがこちらを騙して来るぐらいが、パトロンの裏切りという変化球ですが、これも最初から悪い奴と分かっているからなあ。とりたてて意外な展開とは言えないので、点数なし。
- 段階的な盛り上がり:そんな物は特にありません。目的を達成して、フェンマージに戻って来たら、何やら大きな事件が発生して、街が大混乱。主人公が沼で入手したアイテム(もしくは地図)が事件を解決するための鍵だった……って展開になったら、点数が付くのになあ。
- 楽しいイベントの数々:あるじとのやりとりや、個々のイベントは普通に楽しめる。ここは+1。
- 作者の米ジャクソンは「ゲームの申し子」とも称され、82年にはオリジンの有名人殿堂に表彰されたほどのゲーム界の著名人。そこに敬意を評して+1しても、問題ありますまい。
そんなわけで、『運命の森』と同様に2点評価。グリムズレイドのルートだけ3点評価ですが、どちらにしても◯となりますね。物語的には、当時のゲームブック界ではごく普通ってことですが、1作で3種類のストーリーを楽しめるという点で、システム的に美味しい作品ということになります。
②真夜中の盗賊
8巻から29巻に飛びました。
『盗賊都市』を舞台に、若き盗賊見習いがギルドの正式なメンバーになるべく、試験に挑むという内容。
- クライマックスの盛り上がり:盗賊らしく、クライマックスはバトルではなく、宝石ゲットのための罠解除になります。この主人公の特性に合わせた、緊迫感あるクライマックス描写が秀逸なので+1。
- どんでん返し:なかなか困難なミッションではあるのですが、最後の最後で、これが試験のためのやらせでした、と明かされて、ちょっとビックリ。でも合格しておめでとう的なオチ。終始緊迫したサスペンスフルな物語ではあったので、最後に和ませて終わりという雰囲気はよし。ただ、どんでん返しはエンディングで語られても、ゲーム物語としての面白さには貢献しません。点数なし。
- 段階的な盛り上がり:街中での家宅侵入による情報集めから、宝石の隠されたダンジョンの場所を突き止め、ダンジョン探索に流れるストーリー展開は、定番ながら上手くできていて、ストーリーの変化が面白い。+1。
- 楽しいイベントの数々:街での探索や、ダンジョンの仕掛けが、いかにも盗賊ならではの興趣に満ちていて楽しい。+1。
- 作者のデイヴィスは、ウォーロック誌のFF記事をいろいろ書いていて、雑誌読者にはおなじみ。FFゲームブックはこれ一冊ですが、盗賊らしさが満点の雰囲気で、非常に評価が高いです。都市とダンジョンの盗賊スタイルがはっきり示されて、非常にセンスがいいので+1。盗賊キャラをプレイする際の参考資料とまで持ち上げられたことも。
合計4点で、◎評価。
8巻(84年)と29巻(87年)だと、3年も差があるので、その間にゲームブックの持つ物語表現も相応の進化があったのでしょうな。
1ケタ台と、20巻台だと、ゲームブックに求められるストーリー性も、アップデートされたと見受けられます。
それと、『真夜中の盗賊』の歴史的意義は、創始者2人以外の作家が初めてアランシアを舞台にしたゲームブック作品を挙げたこと。雑誌掲載の短編ゲームではアランシアを舞台にしたものもありましたが、パフィンブックスの単行本作品では、新人作家はもっぱらクールを舞台にした形でした。本作以降は、31巻『最後の戦士』と32巻『奈落の帝王』が南アランシアを開拓。
以降は、キース・マーティンなどがもっぱらアランシアを舞台に書き続けて行ったようです。
③奈落の帝王
FF32巻。
ここから先は、近年、攻略記事を書くに際して、初めてクリアした作品ばかりです。
- クライマックスの盛り上がり:主な舞台となってる南アランシアのカラメール王国を異世界の侵略から守るために、自ら異世界に乗り込んで〈奈落の帝王〉バイソスと戦います。バイソスは異世界パワーで巨人になってるので、対抗するために自らもバイソスの力の元である〈魔法のスープ〉を飲んで、巨人化します。超展開ではありますが、タイタン世界にはBIGという魔法もありますし、ファンタジーだからなあ。とにかく、巨大な神パワーの激突というシチュエーションで十分に盛り上がりました。+1。
- どんでん返し:異世界へ敵を追って、最後は自ら〈奈落の帝王〉の力を得て……というだけで、十分などんでん返しですが、それ以外にも中盤までの虫の群れによるホラーめいた展開とか、王国の危機を調査する仕事から帰って来たら、女領主が暗殺されていたとか、サプライズ展開が多く見られて、良い意味での話の錯綜感がすごい。容疑者貴族の中から犯人を見つけ出す推理劇めいた側面もあって、面白い。+1。
- 段階的な盛り上がり:王国の危機を救うというストーリーですが、外からの敵(辺境の蛮族かと思いきや、異界の虫に操られた一般村人の集団だった)や、内なる敵(悪と手を組んだ貴族)の両方を解決しなければならず、実は長大な一本道ストーリーの構造。選択肢による分岐は、一本道の途中をショートカットして、必須フラグを立たないようにするものが多いので、正しい攻略順番にのっとって、ほぼ全てのルートを通らなければならない仕様。その分、きちんと手順どおりに進めた際の、ストーリーの完成度は非常に高く、山あり谷ありの英雄譚が紡がれていく。ゲームとしての自由度を犠牲にしているが、時間点にも追われて緊迫感のある王国陰謀劇は相当に面白い。+1。
- 楽しいイベントの数々。人が次々と死に、グロい描写がいっぱいで、ダークで苛酷な雰囲気で英雄譚としての華やかさには欠けるが、そういう重苦しいドラマを許容できるなら+1。どうも、この時期(20巻台後半から30巻台)のFFシリーズは全体的にシリアスな作品が多く、初期の大らかなユーモア感覚を見失っていたような印象である。
- 作者のポール・メイスンは『謎かけ盗賊』の生みの親として、ユーモアと陰謀と混沌の名手らしいが、明るいユーモアではなく、皮肉と諧謔精神に満ちているタイプに見える。ただし、多用される人の死に対して、それをおちょくるような話ではなく、主人公はマジメに見えざる敵への不安と怒りを表明する文章もあるので、感情移入を損なわれることはない。変化球気味ではあるが、卑劣な敵の所業に真摯に取り組む歴戦の英雄の勲しは紡いでくれているので、個人的には悪くないと思っている。+1。
5点満点の◎です。
ダークな作風に対する好みの差異はあると思いますが、サスペンスフルな物語は意欲的で、壮大さを見事に演出しているので、高評価です。
ゲームとしては、時間点の縛りが強くて、自由度の低さを覚えますが、『地獄の館』の恐怖点縛りに比べると、はるかにゲームとして成立しています。
序盤で見当違いの探索に時間を割いていると、唐突に「王国が滅びて、廃墟になった後の未来の光景が描写される」という独特なバッドエンド描写が、なかなか凝っていて、初見では何が起こったのか、すぐには理解できませんでしたが、少し考えて演出意図が分かると、高尚な文学的な雰囲気を感じたりもします。
まあ、もはや、児童向きのレーベルから外れた分かりにくさですけどね。学生時代に読んでたら、この面白さを理解するのに手間どったろうな。
ともあれ、話がつながった時の「おお、そういうことだったのか。なるほどな。お見事」感があって、いいストーリーです。
ただし、異世界のアビス(奈落)に突入すると、緻密に構成された物語が、混沌で雑な展開を帯びますが、魔界ってこういうものでしょ? と言われたら、まあ、その通りと言わざるを得ない。そもそも、アビス(奈落)なんて場所に行けるゲームブックが稀なんだから、既存の常識が通じないと思った方がいい。
他の作品と比較しにくい独自の雰囲気を備えた異色作として、新鮮で面白い幻想ストーリー体験だった、と思ってます。
④天空要塞アーロック
FF33巻。
社会思想社最後のFFゲームブックで、いろいろな意味でブッ飛んでます。
FFゲームブックのSF作品は、割とマジメに構築された話が多く、サイエンス・フィクションらしい硬さ、シリアスさを覚えるのですが、
作者のマーティン・アレンはそういう雰囲気を全部ぶっ潰して、荒唐無稽でリアリティの欠如したトンデモ宇宙観を披露。
4本腕の宇宙貴族にして冒険家の主人公が、王命を受けて裏切り者の元科学庁長官ル・バスティンの支配する辺境惑星アーロックへ向けて、宇宙戦闘機を駆り、数々の難関を経て、アーロックの地表に降り立つ。惑星の防空迎撃システムの突破の際に大破した宇宙船を捨てて、荒野からアーロックの首都都市まで野外突破。その後、都市の地下を探索し、ボスの居場所まで次々と関門を突破する一大スペースアドベンチャー……と書くと、実に面白そうなスペースオペラなんですがねえ(苦笑)。
センス・オブ・ワンダーがここまで空回りした怪作も珍しいです。
ゲームバランスの崩壊と、道中イベントのゲーム的なつまらなさ、理不尽な展開と作者の嘲り、登場するNPCの大部分の憎らしさ(パトロンである皇帝ヴァークスすら探索を邪魔してくる)、リソースを削るばかりで回復や報酬のほぼないプレイ中の達成感のなさなど、欠点が数多く挙げられるわけですが、ここではゲーム性を無視して、ストーリー単独で切り取って評価してみることにします。
- クライマックスの盛り上がり:ラストでル・バスティンと対決に至らずに、彼に反旗を翻した人造生命体、プリフェクタスの軍団*1を一掃することが最終目的となります。そして、敵の大群を倒すために、捕虜の身から救出したル・バスティンの助言で培養施設を設定変更(そのための媒介素材として塩が必要)するわけですが、その結果、主人公のクローンが大量に作り出されて、プリフェクタス軍団VS主人公のクローン軍団の激突で、双方がほぼ壊滅。主人公は最後に生き残りのプリフェクタス1体を倒して、お仕事終了、と。ゲームブックじゃなければ、こういうイベント戦闘で全ての決着がつく展開もいいですし、絵面的にも面白いアイデアだとも思うのですが、ゲームの最後の戦いがプレイヤーの活躍ではないイベント処理されたんじゃなあ。これがTRPGだと、プレイヤーキャラに活躍させずにNPCが事件解決を牛耳ってしまう吟遊マスターと称される欠陥です。最終的な決着の仕方が(B級レベルの面白いアイデアではあるとは言え)主人公自身の活躍とは切り離されて、書き手の意図とは別に盛り下がる形だったので、点数なし。
- どんでん返し:非常に盛りだくさんです。主人公の努力を無駄にしたり、ただサプライズを狙っただけの理不尽な展開で。予定調和だけだと話が単調で面白くないから、意外な展開を加えることで話にスパイスを盛り込む。そして、「まさか、そんな展開になるとはな。でも面白いじゃないか。やるなあ、作者。それで次はどうなるんだ?(ワクワク)」とか、「うおー、そんなオチかよ。やられたな〜。さすがにそれは読めなかった。変化球にも程があるだろう、オイ」とかだったら、まだ許せるんですが、「おいおい、そんなのありかよ。とことん、こっちの期待を外して来るよなあ。それでこっちが楽しめると思うのか? 独り善がりな展開もいいところでしょ」とまで思わせたら、作者の負けです。アーロックの予定調和を外して来るサプライズの嵐はそういうレベルなので、点数なし。
- 段階的な盛り上がり:本作の盛り上がりは、アーロックに到着したところがピークです。これまで何度も撃墜されながらもリセットを繰り返して、ここまで頑張ってくれた愛機〈星霧号〉との別れ。ここで、愛機を失った主人公の心情を少しでも描写してくれたら、少なくともドラマ性が高まったことでしょう。そして、仮に日本のSFとかゲームだったら、愛機を失った後は、より高性能な新型2号機が用意されていて、おおっと盛り上がる。つまり、何かを失った分は、それを補償する何かを得ることで、結果的にプラスに転じるのが、面白いエンタメである。エンタメ物語の定石でも、(悲劇やホラーでない限りは)主人公は失うことよりも得ることの方が多いことを推奨されて、最初の欠落を補うことが王道の定石なわけですが、本作ではそういう盛り上がりがなくて、初期装備のリソースがどんどん削られる一方で、冒険中に得られるアイテムがほぼないというか、役に立ってくれない。プレイしていて、快感を感じるお得イベントが用意されていなくて、ひたすら消耗を強いられるゲーム性である。ハイリスク・ノーリターンなゲーム性では、物語も盛り上がりようがないわけで、ストーリーは進んでいるのに気分が高揚しない稀有な作品になっている。よって、ここも点数はなし。
- 楽しいイベントの豊かさ:400パラグラフもあるのだから、イベントは数多い。しかし……達成感が得られないのですね。理由は様々ですが、省略します。気になる方は、ここからの攻略記事を読んでください。いかに苦労したか、ツッコミ入れまくりで、自分のストレスがありあり、と分かるかと(苦笑)。ここで点数を得られないFFゲームブックは稀だと考えますが、一応フォローしておくと、序盤の「科学文明VS異星の魔女の戦いに巻き込まれた主人公の、不時着惑星脱出イベント」だけは、良い物語だと思えたので、そこで+1を差し上げます。全てが悪いわけではないってことで。
- 作者のセンスについては、自分的にフォローすることはありません。せめて、主人公をプレイヤーの意図に反してドジな行動をさせて、勝手に殺した挙句、「きみは愚かにも」と嘲るような文章はなしにして欲しかった。笑えないユーモアは毒でしかない。
ということで、おまけで1点。△評価です。
物語の緊迫感とかそういうのではない、ストレスフルなプレイ感覚で、単に難易度がどうこうってわけではありません。
FFゲームブックとしては、攻略必須アイテムが「塩」だけなので、後は正しい選択肢を選び、死にさえしなければ、そして道中のイベントで体力点や運点などのリソースを削られすぎなければ、また変なミニゲームで(パラグラフ分析なんかも駆使して)最適解を進めば、何とかクリアできるでしょう。
自分的には、乗り物戦闘の前にセーブをさせてもらえれば、自分の書いた攻略記事を読みながら今からでも一発クリアできる自信があります(乗り物戦闘での敗北可能性の高さだけはどうしようもない)。
FFゲームブックで理不尽な死を迎えることは日常茶飯事なので、それはとりたてて欠点とは思わないのですが、割と感情移入型のプレイヤーなので、作者がきみ(主人公)を露骨に嘲っているような文章は、何だかムカつきます。NPCにヘイトが向くのは普通ですが、作者の地の文にヘイトが向くゲームブック体験も、この作品が初なんですな。
それだけに、楽しいはずのゲーム体験で感情を害されたことが、作品評価にネガティブに働いているのは否めないかな、と。
⑤魂を盗むもの
FF34巻。
キース・マーティンのFFデビュー作で、FFコレクション2の初邦訳、目玉作品の一つ。
そして、英ジャクソン以外で、初めて旧世界を背景にした作品になりますな。まあ、88年だから、山本弘さんの『暗黒の三つの顔』第2部(旧世界編)と大体、同じ時期ですか。
ただし、どちらも日本で単行本にまとめられたのは、令和になってからで、故人を悼む形になったのも奇縁なのかな、とは思っています。
作品内容としては、旧世界からアランシアへ向かう途中の孤島で、邪悪な魔術師モルドラネスに捕まった善の魔術師アルサンダーを救出する任務に雇われた豪胆な戦士が、航海を経て上陸、島の短い探索から地下のダンジョンに突入し、最後はアルサンダーの助力で、異世界のモルドラネスの本拠地に向かって決着をつける、壮大な英雄譚となっています。
ただし、壮大なのは背景だけで、ゲームの中心は作者のお得意のダンジョン探索というのが、初プレイ時は興を削がれた感覚でしたが、ゲームバランスとダンジョンの構造が非常に秀逸で、実に手堅く作られた佳作だと判明。
下手に風呂敷を広げすぎて、ゲーム性が無茶苦茶なもの(前作)を出されるよりは、安心してプレイできる作品をプレイしたいですからね。
ともあれ、FFコレクション2のラインナップが、ジャクソンの『地獄の館』『サイボーグを倒せ』、リビングストンの『死の罠の地下迷宮』『危難の港』という初心者向きとは言い難い作品が揃ってますので、その中では一番手堅い一本だったな、と思います。
難易度も他が6以上の中で、『火吹山』と同じ3ですから、結構簡単な作品だったのですが、技術点11のキャラが技術点9の敵に殺されてしまうというダイス運の悪さ事故が発生(苦笑)。
実のところ、この作品では、技術点の割に敵の体力点が高いケースが多く、戦闘時間が長くなりがち、という傾向があります。米ジャクソンの『サソリ沼の迷路』も、弱いのにタフな敵が多くて、1回か2回程度の攻撃を運悪く受けてしまうケースがありましたな。
体力点が1ケタの相手ならサクッと倒せるものの、体力点が10点越えの敵が出て来ると、ダイス振りの作業が面倒に感じるのが今のプレイ感覚ですな。学生時代は、ダイスを振っているだけで楽しかったので、面倒さなんて、ちっとも思わなかったのに。
ともあれ、キース・マーティンのゲーム性は、また『火吹山の魔法使いの伝説』で、いずれ分析を深めたいと思いつつ。
- ラスボスとの戦い:モルドラネスとの戦いは、魔法を駆使することもあって、結構、盛り上がった感覚でした。昔のバルサスみたいな戦いを思い出したりもして、終盤の盛り上げ方も悪くなかったです。+1。
- どんでん返し:ダンジョンの奥で救出した魔術師アルサンダーからの重要情報。アランシアに向かったと言われていたモルドラネスが、実は己の構築した異次元(幻影帝国)に引きこもって、大量虐殺の儀式を準備中という急展開。妨害者の目をアランシアに引きつけるための策謀で、見事に騙された旧世界の魔法使いのパトロンたち。こうなったら、主人公が単身、異次元に乗り込んで、モルドラネスを退治するしかない、という流れで、終盤に突入。これは『盗賊都市』のニカデマスおよびザンバー・ボーンの物語を思い出しましたね。ボスキャラの倒し方を知っている味方魔術師の捜索任務から始まり、そして魔術師からボスキャラ退治を委ねられる。違うのは、最初に「魔術師探し」を請け負って、後から「追加のボス退治」が加わった旧作に対して、本作の主人公は背景で「どうして自分が魔術師探しなんてしないといけないんだ? 俺の剣の腕は邪悪な魔術師を倒すためにある」と思いきりラスボス退治にヤル気を見せている点。だから、アルサンダーから話を聞いたときに、「よっしゃあ、そうでなくちゃな」と喜び勇んで幻影帝国に乗り込む豪胆ぶりにも説得力が出るというもの。プレイヤーとしては、納得できるどんでん返し(まあ、予定調和でもありますが)ににっこり。+1。
- 段階的な盛り上がり:どんでん返しとタイミングがかぶりますが、アルサンダーから「魔法を授かる場面」で、いかにも決戦に臨む前の準備だな、と気が引き締まる点。ゲームとしても、主人公にできることが増えた(成長に通じる)のは、ワクワクするというもの。本作では、冒険中に役立つアイテムも結構入手できるので、ダンジョンに付き物のハック&スラッシュ的な意味でも楽しめるわけで。リソースが削られるのと別に、少しずつ主人公が強化されていくという段取りで、話が前向きに盛り上がるのもプラス評価につながるというもの。+1。
- 楽しいイベントの数々:イベントは数多いですが、あまり奇抜な癖がなくて、その点は地味な作風ですね。ただ、モルドラネスが恐怖の幻影を操って、魂を盗むことを得意としているので、時折イベント挿入されるオカルトじみたイメージが、特徴的って感じですね。敵の不気味さをうまく演出していて、作品全体のトーンに統一感を与えています。そして、そういう恐怖に対して、豪胆に振る舞える主人公という点で、イベントもそれを強調したものが多く(大胆に振る舞うのが当たりで、慎重に臆病な感じの選択肢をとると恐怖に呑まれて不利になる)、主人公のロールプレイに一定の方針を示してくれます。こういう一貫性のある選択肢は、プレイヤーとしてもロールプレイの安心材料になりますな。+1。
- 作者については、手堅いシナリオデザインが定評のあるキース・マーティンということで、ダンジョンを中心にしつつも、背景世界をチラ見せしながら、最初に風呂敷を広げた後に、それを上手くまとめる手腕がいい感じです。FF20巻台の後半から30巻台は異色作が多くなりがちなところを、基本に忠実で王道をしっかり構築した作品ってことで、直球勝負に好印象でした。+1。
ということで、これも5点満点の◎。
破綻なく、上手くまとまったストーリーもそうですが、主人公がしっかり主体性をもって描かれているのがいいですね。
変化球の傑作『奈落の帝王』と、王道直球の『魂を盗むもの』。共通点は、なかなかシリアスでサスペンスフルな雰囲気といったところでしょうか。
だけど、謎かけ盗賊とか、ペットのカニを溺愛する巨人とか、軽いユーモアで味つけしたりもするわけで。
ユーモアのネタを、主人公の奇矯な行動選択肢や登場人物のドジな失敗に寄せて、無理に爆笑嘲笑に持ち込もうとせずに、序盤に登場させて愛すべき一面もある変わり者NPCに託すのがいいのかな、と。
主人公はやはりプレイヤー自身なのだから、無色透明を土台に、下手にイジると、感情移入を妨げる元になるんだな、と思いつつ。
まあ、ブレナンのピップとか、ジャクソンのモンスターみたいな特殊仕様は、ゲームシステムの方から上手く練ったうえでないと、安易にマネできない領域になってるな、と。
⑥王子の対決
2人用ゲームブックという番外編。
FF10巻台で活躍したアンドリュー・チャップマンのFF最終作にして、マーティン・アレンのデビュー作でもある。
戦士クローヴィスと魔術師ロタール。ガンドバッド王国の2人の王子が、王位をかけて伝説の宝石の獲得試練に挑む。2人は兄弟同士、協力したり、競い合ったりしながら、宝石を求めて荒野や森、山岳、砂漠などを旅したり、道中の洞窟や建物なども多彩な冒険舞台を探索しつつ、やがて悪魔の住まう孤島に導かれることになる。脱落せずに、次期ガンドバッドの王になるのはどちらか?
アンドリュー・チャップマンが、『ソーサリー』と『死の罠の地下迷宮』のエッセンスを込めて、自身の集大成的な作品として完成させた名作です。
企画主導がチャップマンで、そのプロットを元に、アレンが『戦士の書』の方を、チャップマンが『魔法使いの書』の方を担当執筆して、テストプレイもしっかり行なったものと見られます。
複雑なシステムながら、破綻なくまとめたのは、お見事。
2人で気楽に楽しむには難易度が高すぎて、途中でどちらかが脱落した際の処理をどうするかが問題。一応、1人でのプレイも可能ですが、その場合、同行ルートがショートカットされて、一人旅ルートだけで短いプレイになりますね。
- クライマックスの盛り上がり:最後は、ガンドバッド王国の宝石に縁ある悪魔が、王位に相応しいかを見極めるパズル的な試練を行います。旅の途中でそれぞれ入手したキーアイテム(クローヴィスは数字の一部が記された羊皮紙の断片、ロタールは数字の刻まれた指輪)から導き出されるパラグラフに行けば、試練に勝利。もちろん、最終試練の前に、島の洞窟にて妨害するモンスターなんかも切り抜けないといけないのですが。島に渡るシーンからの盛り上げが秀逸なので、+1。
- どんでん返し:2人プレイでの、突然の別れと、さらに唐突な再会合流劇がどんでん返しに近いと言えます。それ以外では、イベント内での予想外の展開はあっても、物語全体の筋道に関わるどんでん返しサプライズはないですね。魔法使い王子ロタールの、兄に対する策略イベントが何度かあって、それを選択することでクローヴィスが余計な戦いに巻き込まれるという展開があったりして面白いですが、それに対してクローヴィスもロタールに強力な魔女ハンターを差し向けることが可能なので、プレイヤー2人の関係がギスギスしたりする可能性もあります。ソロプレイでは単調な旅物語が、2人プレイでは途端に相互の物語干渉によって、物語ヴァリエーションが広がるわけで、その辺の仕掛けを込みで+1と判断します。
- 段階的な盛り上がり:ソロだと、2人の王子の旅路は地形の変化で少しずつ過酷さを増す形ですね。当初は平原と森という比較的安全な地形が、やがて山岳や沼地に変わったりしながら、だんだん人里離れした舞台に切り替わっていく流れ。ただし、2人の旅路には、いわゆる目的地点が見えないまま、とにかく北へ北へとやみくもに進んでいるような形で、ストーリー的な段階を踏んだ切り替わりもあまり見られません。物語途中で、謎の修道士が海の向こうの島へ行くように示唆するだけで、割と行き当たりばったりの旅が続く、と。そんなわけで、段取りを追って盛り上がるように構成されたストーリーではないと結論づけて、ここは得点なし、と。
- 豊富で楽しいイベント群:ここは野外冒険ものとして非常に盛りだくさんなうえ、山あり谷あり起伏に富んだ道中のイベントが普通に楽しく紡がれています。+1。
- 作者については、アンドリュー・チャップマンの方がFF10巻台を支えた貢献で+1としておきましょう。ジャクソンの『さまよえる宇宙船』を受けての、宇宙SF作品『宇宙の暗殺者』『宇宙の連邦捜査官』および『海賊船バンシー号』という独自性の高い作品群の攻略記事もいずれは触れたく。+1。
ということで、物語評価としては4点で◎です。
構成としては、2人用ゲームブックとして合流と別行動を大きな矛盾なくつなげる必要から、個々のイベントが散発的で、大きな筋書きを持って物語を動かす作品にはしにくかったのでしょう。
ただ、日本語版では付属していなかったガンドバッド王国周辺のカラーマップが、原本では収録されていたそうで、ネットでも発見。これを見ながら、改めて自分の攻略記事での旅路を振り返るのも一興かな、と思いました。

今回のまとめ
今記事の6作品の点数評価をまとめると、以下の通りになります。
- 5点(◎):奈落の帝王、魂を盗むもの
- 4点(◎):真夜中の盗賊、王子の対決
- 2点(◯):サソリ沼の迷路
- 1点(△):天空要塞アーロック
そして面白さ累計ですね。
- 6点:真夜中の盗賊、奈落の帝王、王子の対決
- 5点:サソリ沼の迷路、魂を盗むもの
- 1点:天空要塞アーロック
『サソリ沼の迷路』『魂を盗むもの』が少し低い理由は、主人公の個性が薄いことかな。前者はストーリーの起伏も弱い点が挙げられて、後者はシステム面の弱さで、魔法が終盤に少し使えるようになった程度では点数が十分に伸ばせなかったことも理由になります。
『アーロック』については、せっかくのシステムやミニゲーム、イベントのアイデアが物語を面白くする方向に評価されなかったので、こんなものでしょう。
では、次にストーリー編の大トリ、リビングストン後編に移ります。
(当記事 完)
*1:このプリフェクタスは究極兵士との触れ込みですが、その能力は技術点6〜8、体力点6〜8程度の割とザコ。じゃあ、何が究極なのかと言えば、「アーロックの培養施設で大量生産できること」「一応、メカの操縦はできる知能は持つので、白兵戦よりもヴィークル戦闘で本領を発揮すること」なのかなあ、と推察します。本作独自のヴィークル戦闘ルールは、技術点が関係なく、機体そのものの性能が全てなので、大量培養したプリフェクタスが量産兵器の使い捨てパイロットとして戦場に大量投入されたら脅威かも、と思います。ファンタジー世界でゴブリンなんかが恐ろしいのは、個々の能力ではなく、その繁殖力による数の多さに起因しますからね。究極の量産兵士、いわゆるスターウォーズにおけるクローン兵士、ストームトルーパーみたいな運用が想定されているんじゃないかなあ。