ストーリー振り返りの締めくくり
ということで、大トリを飾るのはリビングストンさんの後期シリーズですが、ここまで書いてきて、自己ツッコミ。
この記事を書いている間に、ゲームブックの1つか2つは攻略記事が書けたのではないか? という事実。
いや、まあ、定期的に自分の来し方を振り返りたくなる性分で、何かと懐古したうえでないと、次に進めないという面倒くさい書き手ですな。
何も考えずに未来へ一目散に駆け出す、という若さには憧れますが、リビングストンさんの積み重ねてきた歴史の方にも敬意を抱く今日この頃。
そう、継続は力なりよ。
⑥火吹山の魔法使いふたたび
そんなわけで、『火吹山の魔法使いふたたび』のFFコレクションから再始動した、自分のFFゲームブック追っかけですが、この作品があっさり簡単にクリアできたなら、攻略記事を頑張って書こうとは思わなかったでしょうね。
頑張って苦労したからこそ、その労苦のドラマを後に残したい。
その後は、労苦の後に来る楽しさを実感したおかげで、記事書きもハマり込んだ、と。
よって、『火吹山ふたたび』と『危難の港』のコンボが、自分にとって非常に効果的な順番だった、と考えます。
さて、『火吹山ふたたび』のストーリーですが、大筋は簡単。いっそうの強敵となって復活したザゴールを倒すために、迷宮の奥まで踏破して戦え、ですね。問題は、迷宮にいきなり入る前に、わざわざ遠回りして、西のカアドの街でヤズトロモさんとズート・ジンマーと話をして、適切な買い物をしないと、クリアできないってこと。
野外冒険→都市散策→空の旅→デッドリーな迷宮へ、というそれまでのリビングストンさんの集大成的な展開になっています。
しかも、ヤズトロモさんに会う前に、偽ヤズトロモさんに殺されてしまったことで、この作品の印象が深まりました。偽者は微妙にカラーリングが違うってことで、瞳の色が緑色なんですね(本物は青)。
で、例によって、分析してみますと、
- クライマックス:4つの〈竜の牙〉から召喚される地水火風のエレメンタルを駆使して、非常に難解な(必須アイテムや必須情報が盛りだくさんな)イベントを経て、「技術点11、体力点18」のザゴールとガチバトル。あれ、ザゴールってこんなに強かったっけ? と思って、原典のFF1巻をチェックすると能力は同じだった。ただ、昔は弱体化手段を利用して、あっさり倒していたものだから、ザゴール=弱い、と頭に刻み込まれていた、と。しかし、弱体化させられなかったら、ここまで強かったのか〜と恐れ入りました。強く感じ入ったラスボス戦ってことで、+1は確定です。
- どんでん返し:偽ヤズトロモさんってネタだけでもビックリですが、あの初心者向きの観光スポットと化した火吹山のダンジョンが、ここまでデッドリーな代物になったとは、もしかして、サカムビット公に影響された? 作品単体としては、迷宮に入ってからの大きなストーリー的な変化はなくて、単純な迷宮攻略ものでしかないのですが、火吹山まで空から送ってもらって、別れたと思ったら、いつの間にか捕まっていて、拷問で失明して、助けたと思ったら罠にハマって非業の死を遂げたズート・ジンマーさんが気の毒すぎて、この衝撃だけでも+1です。90年代のリビングストンさんはまだ殺意に満ちあふれていた、と。
- 段階的な盛り上がり:迷宮内で獲得しないといけないアイテムが多くあって、ゲーム的な難易度が高い一方で、ストーリープロットは単純なんですね。ズート・ジンマーのイベント以降は、アイテム入手しか頭になくて、ドラマ的な変化に乏しく、散発的なイベントクリアだけのゲームになったかな。ゲーム的にも、必須アイテムの入手以外は、ひたすらリソース削りだけの消耗戦タイプなので、こっちが強くなるという快にも乏しくて、何だかワクワクするとか、逆に緊迫感が増してドキドキして来たとか、そういう面白さには達せず。得点なし。
- 楽しいイベントの数々:デッドリーすぎて、楽しさを感じる場面は少なかったかな。生死に絡む印象的なイベントは覚えているけど、「おお、この仕掛けはお見事。やられたなあ。さすがや」とか「良いストーリー展開だな。感じ入った」という部分がなくて、上手くクリアしてアイテム入手できたか否か、の機械的な攻略だけを要求してくる単調なイベント群。ゲーム性に特化しすぎたチャレンジャブルなシナリオなので、物語としての楽しさはさほどでも。得点なし。
- 作者のセンス:良くも悪くもパフィン版FF後期の難解さを際立たせた作品で、リビングストン特有の「世界観とのリンクが楽しい作品」ではありません。まあ、これはスカラスティック社のリビングストン作品の面白さを知った後の感想だからで、発表当時は「火吹山かあ、懐かしい」という一点だけでも売れて、これが最後のFFとなりかけたのを、もう3年延命させて、おかげでジョナサン・グリーンがデビューできた、と。改めて、ザゴールという敵キャラの再評価と、さらなる続編や小説につなげた重要作品ってことで、「死と新生」に通じた作品の時代を越えるセンスに+1。
まとめると、3点なので、◯評価。
この作品(1992)と、次の作品『危難の港』(2017)の間に25年の歳月があって、その間にリビングストンさんも、多くの作品の著述や復刻を経ているわけで、だからこその近年の懐旧感に満ちた、円熟したFFゲームブックの面白さ(自分にとってもツボ)に至れたのだな、と思います。
⑦危難の港
FFコレクション1に続いて、FFコレクション2に収録された一本。
これが本当に面白くて、今のリビングストンさんの境地を象徴するような作品だと考えます。何と言っても、アランシア横断の旅が、『雪の魔女の洞窟』の後半を思い出させるような観光気分になりましたし、最初の都市散策とか、続くトラップだらけのダンジョンとか、いかにもリビングストンさんの過去作品を反芻するような懐かしさでありながら、主人公キャラの描き方が何だか新しい。
成功できなかった冒険者が何やらやさぐれた感じで、残飯あさりになりながらも、一攫千金のチャンスに飛びつこうとするハングリー精神、サバイバビリティこそが冒険者の本質だと感じさせるような「善人と悪党の間を行くキャラ造形」が秀逸で、そこから英雄として更生し直すようなドラマ展開に感じました。
- クライマックス:〈危難の港〉と称されるポート・ブラックサンドから、捕まったニカデマスさんを救出して、囚人の反乱のどさくさに紛れて脱出。そこからヤズトロモさんの塔に襲撃してくる復活ザンバー・ボーンの悪魔とアンデッドの軍団を迎え撃つ流れが非常に派手で、小説としても面白い。その後、ゲームとしては、これまで入手してきたアイテムが活躍して、まあ、アイテムを取り損ねていれば、敢えなくバッドエンドという難易度の高さなんですけど、『火吹山の魔法使いふたたび』で鍛え直された元歴戦のゲームブック勇士の自分にとっては「リビングストンさんも丸くなったなあ」と言えるぐらいの程よい難易度。とにかく、解かなくても読んでるだけで十分面白い分岐小説だし、解く気になると割と良いバランスになってるなあ、と。ゲームとしても、物語としても秀逸で、最後まで飽きさせずに盛り上げてくれた。+1。
- どんでん返し:前半のお宝探しダンジョン探索から一転、ハカサンと出会い、世界の危機を知って、ヤズトロモさんと会い、物語は一介のトレジャーハントから邪悪に挑む英雄譚に切り替わる。この一気に物語の様相が切り替わって、世界が広がる瞬間が快挙ですね。そう、ここから物語が発展的に展開するという意味での、どんでん返しがいいのです。「そう来たか〜(ワクワク)」と感じられる作品は大好きです。+1。
- 段階的な盛り上がり:中盤のスカルクラッグのダンジョンは、技術点9だと非常に厳しいながらも、ギリギリセーフで生き残った。そこからハカサンという嫁に誘導されて、何だか話を進めるのが楽になって、その後、ヤズトロモさんのおかげで技術点を12にしてもらった。ゲームとしては、大成長ですよ。このクライマックスに向けて、魔法使いの御仁に潜在力を引き出してもらって、ただのトレジャーハンターから英雄に昇格する展開に感じ入りましたね。おかげで、終盤は強敵がいっぱいなのに、最初の技術点が9でも何とか解けた稀有な作品になったわけで、プレイしながら、あるタイミングで弱い自分がご褒美に強くなれるという展開が用意されると、気分も盛り上がるというものです。後はアイテムの物々交換で良い物を手に入れる展開もいいですね。何だか「わらしべ長者」みたいで。お金を払って購入もいいけど、売ったり交換したりで資金調達とか、貧乏時代の小銭稼ぎプレイも楽しかった。+1。
- 楽しいイベントの数々:序盤のチャリスの都市散策がブラックサンドとは別の感覚でよし。ブラックサンドには大商人はいても、アズール卿以外の貴族はいなくて、違う都市なんだと感じさせてくれたり。そこでガーナード・ジャグルの名前を伏線的に聞いたら、後で物語に大きく絡んで来たり、各種イベントが伏線を張ったりしながら、有機的につながって来るのもいいですね。そして、ダークウッドでビッグレッグを探しているドワーフさんと出会って『運命の森』を思い出したり、ブラックサンドで『トカゲ王の島』のマンゴと(プレイヤー視点で)再会したり、いろいろ過去作とのリンクがシリーズファンとして楽しいのです。新鮮さと懐旧の両面から楽しめたイベント群でした。+1。
- 円熟した作者のエンタメ精神に敬意。+1。そして、バッドエンドすら読んでいて楽しいというベテランの芸に感じ入る。たぶん本作がなければ、バッドエンドネタをリストアップして、解析する材料にすることはなかったな、と。バッドエンドすら楽しいゲームは良いゲームです。ブレナンの「14へ進め」芸みたいなものです。
はい、5点満点の◎です。
あのザンバー・ボーンが復活という『盗賊都市』の続編っぽさが素晴らしくて、そこからさらに『運命の森』や『トカゲ王の島』、そして最後のハカサンのセリフによる『死の罠の地下迷宮』へのリンクなど、FFコレクションの展開のうえからも実に秀逸な作り方をされた一作だと思います。
原本でも、スカラスティックのFF復刻を盛り上げるための宣伝活動の一環でもあったのだろうけど。
新作を先にプレイした後で、気に入った新規の読者さんは旧作復刻も楽しんでね、とそういう意図もあるのだろう、と。
⑧アランシアの暗殺者
大傑作『危難の港』の続編だと言われたら、ワクワクして来るじゃないですか。
FFコレクション3に収録されると聞いて、タイトル作の40周年記念作『巨人の影』以上にワクワクして待ち遠しかった一本です。
『巨人の影』については、ジャクソンの『サラモニスの秘密』の方がもっと期待大だったので、あらすじを知っても、あまりピンと来ていなかった。
一方、こちらはアズール卿にザンバー・ボーン撃退の恨みを買って、暗殺者を差し向けられた主人公のサバイバルって形で、いきなりのホットスタートです。前評判ですと、あの正体不明のアズール卿が公の前に姿を現すという触れ込みでしたし、発表された日本語版の表紙絵も実に格好いい。

一連のFFコレクションの表紙イラストで、最もワクワクしましたね。
発売前の期待度が、自分の中では一番大きかったのが、この『アランシアの暗殺者』です。
そして、クリアした時の満足感も、たぶん一番大きかったと思う。いや、その後の『死の罠の地下迷宮』の攻略記事をどういう形にしようか、といろいろ考えたりもしたわけですが、とにかく衝撃的なエンディングでしたね。
- クライマックス:暗殺者たちに襲撃されながら、撃退を重ねて、最後の1人はスロムの支援を受けながら、イベント戦闘的に勝利を収める。その後で、アズール卿やサカムビット公の前で公開裁判みたいな状況に立たされるわけですが……そこで暗殺者を倒した証である〈サソリのペンダント〉をいくつ持っているか、と問われる。ピッタリ13個を持っていなければ、処刑を宣告されてゲームオーバー*1。実は13人の暗殺者を全滅させておかないと、バッドエンドになるという大仕掛けだったんですね。途中で、たまたまパラグラフのチラ見で、このゲーム性を知った途端に、「えっ、マジ? 暗殺者から逃げるゲームじゃなくて、全部倒すことが勝利条件なの? 最高だ」って感じた瞬間。このクライマックスで分かる種明かしと、それから勝利条件を達するとエンディングで「アズール卿の名代として、『死の罠の地下迷宮』に挑め」と言い渡される絶望感(プレイヤーとしては、そう来たか! と喜び)に、他にないラストシーンの盛り上がりを感じた次第。+1。
- どんでん返し:1にあるように、「暗殺者から逃げるサバイバルゲーム」が「暗殺者を全て狩るハンティングゲーム」に切り替わる瞬間は、ゲーム性そのもののどんでん返しと言えますね。それが一番印象的でしたが、他には正体を隠して(偽装して)次々と襲撃を仕掛けてくる暗殺者イベントがことごとく、どんでん返しみたいに思えます。懐かしくも新鮮なのが『危難の港』だとしたら、こちらは新鮮なのに懐かしい。その懐かしさの正体が最初はよく分かっていなかったのですが、途中でソーサリーの『七匹の大蛇』に思い当たる。そうかあ、敵のスパイの大蛇が奇襲して来るのを迎え撃つ中で、全部倒せばボーナスになるというゲーム的な面白さを感じた荒野の旅が、ちょうどこんな感じだった、と。すると、最後はマンパン砦かと思いきや、『死の罠の地下迷宮』に続くというデジャヴ感というか、無理やりこじつけと言うか。最後の最後も、どんでん返しで終わった感じでしたね。+1。
- 段階的な盛り上がり:最初は無人島でのサバイバルゲームだったんですよ。これはこれで、端金の割にリスクの高いギャンブルで、主人公はバカじゃないかと思ったわけですが(苦笑)、暗殺者皆殺しを考えるようになるハンターですからね。そういうロールプレイを考えるには、それぐらいバカじゃないとやってられないな、と開き直りました。すると、感情移入できて、少しずつ暗殺者狩りが楽しくなって……何だか病みつきになったプレイ感覚です。暗殺者が13人いると分かったら、その一人一人のキャラクターをリストアップしながら、その襲撃スタイルをメモしたりして、そういう作業にハマり込んだり、ゲーム以上に攻略記事を書くのが楽しくなったという記憶が。こういうのが自分のツボだったんだな、と今さらながら気づかせてもらった感覚もあります。+1。
- 楽しいイベントの数々:暗殺者狩りというのがメインストーリーですが、それ以外に感じ入ったのは、暗殺者とは関係ない海での航海中に、海賊船に襲撃されたり、クラーケンと遭遇したり、思いがけない海洋アドベンチャーを経験できたことですね。ポート・ブラックサンドに停泊している海賊船を襲撃したことはありましたが(『盗賊都市』)、航海中に難破するような体験は実に久しぶりだ、と。いや、『危難の港』のマンゴとのイベントは、IFルートなのでノーカンってことで。難破イベントって、割とプレイヤーの選択肢とは関係なく勝手に話が進む印象もありますので、本作の『生き残るために、いろいろとアクションができる』のは、少し新鮮だったなあ、と思います。で、こんなことを書いていると、『海賊船バンシー号』とか『深海の悪魔』などの海を舞台にしたFFゲームブックもプレイしたくもなりますな。もうすぐ海の日だし。とにかく、暗殺者とは関係ないイベントも楽しかったなあ、とは思いますね。無人島でのサバイバルとかも。+1。無人島サバイバルを主題としたゲームブックって何かあったかなあ? と不意に考えたくなったり。
- 作者のセンス:前作『危難の港』とはまた違ったプレイ感覚で、島とか、海とか、カアドからファングへの旅とか、いろいろ楽しませてもらいました。そして、最後に登場した「生きてるスロム」というサプライズ。え? 前作では遺産とか言ってたのに? この辺の時間軸のとっ散らかり方に、後から整合性をこじつけるのが大変なんですが(連続ストーリーとして考える場合に)、一応、『盗賊都市』→『アランシアの暗殺者』→『死の罠の地下迷宮』→『危難の港』というのが正解……なのかな。細かい粗を探せば矛盾も出るだろうけど、細かい整合性がどうこうより、その都度その都度、作品を楽しめるようにするストーリーアイデアの数々の方に魅力を覚えます。整合性うんぬんを自分の2次創作で考えるのも一興ですしね。とにかく、自分の2次創作攻略記事のためにも、今後とも面白いゲームブック作品を発表してもらえればいいかな、と開き直ってみます。こうやって、シリーズ継続してくれていることで、感謝を表明しつつの+1。
ということで、この作品も5点満点で◎です。
この時期のFFコレクションの盛り上がりは、自分の中でピークだったと思います。
だったら、今はどうなのか? と言われたら、FFコレクション6の予定が正式に発表されたら、テンションが上がると思う。
ほら、FFコレクション3の時は、すぐ後に4のジャクソン編が来ると分かっていたし、4が出て2ヶ月後には5が出ると告知されたからねえ。今は5が出て、4ヶ月が過ぎてるのに、次の話が出ないので、そわそわしてるってタイミングです。
今月には、FFコレクション6情報が出ることを期待しつつ。
⑨巨人の影
邦訳分のリビングストン最新作です。
ジャクソンの『サラモニスの秘密』と並んで、FF40周年を記念する作品として出版され、物語は『火吹山の魔法使い』のダンジョン探索から始まることに。あのダンジョンに「ザゴールの遺産」を封じた隠し部屋があると知った主人公が、最寄りの街アンヴィルで準備を整えてから探索に乗り出します。
しかし、同行するドワーフが不用意に秘宝の王冠をかぶったために、封印された4体の巨人ゴーレムを覚醒させてしまい、その撃退方法を求めて、折しも祭りで賑わう東のハーメリンの街に向かうことになります。
巨人の危機を知らずに浮かれる街の人々の陽気さに和まされながらも、隠遁した賢人マリクから巨人を倒す方策を聞いた主人公は、同じく巨人の脅威を目撃した弓使いのグースとともに、巨人の弱点を求めて〈ゴルゴンの墓所〉へ、そして巨人との決戦に赴くことになる。
……ということで、非常に陽性で、豪快で、派手な物語になっています。
自分としては、『アランシアの暗殺者』と『サラモニスの秘密』の方に関心が強く向けられていたので、この作品に対するテンションは低めだったのですが、じっさいにプレイして思ったのは、「都市散策と、ダンジョンと、野外の旅路のバランスが非常にとれている」ってことですね。
『危難の港』も都市、ダンジョン、野外の3拍子が揃っていましたが、〈スカルクラッグのダンジョン〉はなかなかシンプルながら酷くて、2択の進路の間違った方向を選ぶと即死する単調な造りのトラップダンジョン。ダンジョン物としては非常につまらない一本道で、もっぱらストーリー主導の作品。
『アランシアの暗殺者』はそもそもダンジョンが登場しない屋外の旅路がメインの作品で、面白くはあるけど、ダンジョン愛好家としては物足りないという意見も。
しかし、40周年記念ということで、まずは「火吹山の隠し宝庫」というネタで、入り口右側の行き止まりの先に、こんな仕掛けがあったとは……と嬉しくなりますね。既に攻略済みのダンジョンに、知られざる隠し通路があって、さらなる冒険に通じているという仕掛けは、それだけでもワクワクします。
で、プレイヤー心理としては、懐かしさの奥に新発見をできて嬉しいと思いつつ、うっかり巨人の封印を解くことになってしまって、「うわあ、やっちまったよ。この俺としたことが、世界の危機を招くことを仕出かすなんて〜」とゲームブックではなかなか珍しい感情を抱くことに*2。
で、巨人を倒すために奔走する主人公なんですが、ハーメリンの街は祭りムードなので空気感が全然違う。この「世界の危機」と「祭りの陽性」とのギャップを上手く感情処理できるかが、この作品にハマれるかどうかのポイントですね。
残念ながら、自分は初読の際に、このギャップに抵抗を覚えたので、ハマりきれませんでした。あと、時代設定が他のファイティング・ファンタジーとも噛み合わず、本当に最初の火吹山から40年以上を経た遠い未来のお話なんですね。近年のFF作品が『危難の港』も『アランシアの暗殺者』も、80年代の復刻作品と同時代、あるいは前日譚的な話で、過去にこんな隠しエピソードがあったんだ〜って作りだったのに対し、いきなり飛んで、未来というか40年経ったリアルタイムの時代進展に合わせた形。
40年後のアランシアってこんな感じって、時計の針を進めた感です。
だったら、『サラモニスの秘密』も同時期の話かと思えば、そんなことはなくて、バルサスやザラダン・マーが健在の過去の話になっている。
どちらかと言うと、過去志向、懐旧思考だったFFゲームブックが、急に未来の話をやってしまったので、自分の中の攻略物語として、話をつなげるのが大変、という「記事書きの都合で困った作品」になってしまった、と。
当初は、『アランシアの暗殺者』の次のリーサン・パンザの冒険譚に組み込もうかと思ったけど、それが不可能ということで、新主人公のフォーティを作って、それから、どう物語をリンクさせようと考えたら、「マリクさんが若い頃に、『トカゲ王の島』にも縁あったキャラ」という形でつなげることができた。
自分の中で、歴史が上手くリンクした瞬間です。
そして、ハーメリンの都市冒険よりも、自分はこの作品の魅力を〈ゴルゴンの墓所〉だと考えています。
短いけれども、仕掛けが十分に楽しめたダンジョン……というか、一冊のゲームブックが丸ごとダンジョンよりも、これぐらいの長さの方が自分的には程よいサイズ感ですな。
「自動的に移動する玉座」というSFチックな仕掛けもあったり、ゾンビの大群を突破するために深淵の落とし穴をジャンプで飛び越えるというアクション的な展開だったり、相棒のグースと2人コンビでダンジョン探索するシーンが割とお気に入り。
マリクさんの呆気ない死がなければ、陽性の雰囲気のままに良い思い出のダンジョン探索だったのにな。
と、最近のプレイ感想はともかく、分析に移りましょう。まあ、5点満点なんでしょうけど。
- クライマックス:巨人との戦いは、敵の強烈な攻撃をかい潜りながら、上手く弱点アイテムを仕込んで、巨人を倒壊させる流れですが、4体もいるので、途中で相棒のグースが失敗するというハプニングもあったりしながら、ストーリー的にも面白いラスボス戦だったと思います。+1。
- どんでん返し:巨人の復活そのものが序盤のどんでん返しと言えなくもないですが、そこまでは既定路線として、最大のどんでん返しサプライズは、グースから聞いた「ストーンブリッジの崩壊」ですね。この先の未来がどうなっているのか、今だに気になりますもん。他には、マリクさんの呆気ない死がどんでん返しで、サプライズの多い作品だと思いますが、良いことがないので、どうも点数を付ける気にはなれず。面白いサプライズを望むのであって、街の崩壊や人の死という不幸なアクシデントは、驚くことではあっても、面白いとは思えませんから。残念。
- 段階的な盛り上がり:構成的には、「街→ダンジョン→野外の旅→街→ダンジョン→野外での決戦」とテンポよくシーンが紡がれて、飽きさせません。個人的には、ハーメリンの街での空気の弛緩具合が、ちょっとノリきれなかった面がありますが、メリハリという意味では悪くないとも思うし、リアルで40周年祭りですからね。そして、〈ゴルゴンの墓所〉と巨人との決戦を相棒と2人で乗り越えるバディ感覚がお気に入りです。たった2人で世界の危機を救うって物語は好みです。いや、孤軍奮闘もいいのですが、そういうのはゲームブックではありふれていますからね。2人でラスボス戦って作品は貴重ですよ。+1。
- 楽しいイベント群:個人的には、あまりノリきれなかったハーメリンの都市散策イベントですが、客観的には非常に楽しい祝祭だと思うんですよね。ノリきれなかった原因が、「巨人の件で大変な状況で、のんびり祭りを楽しんだり、事件と関係ないイベントに首を突っ込んでいいのか?」というロールプレイ感覚によるもの。これは例えば、ドラクエで「世界の危機だというのに、勇者がカジノとかで遊んでいていいのか?」という物語とミニゲームの乖離によるギャップ。まあ、カジノの報酬が冒険で役立つアイテムだから……とか言い訳はいろいろできるものの、キャラクターの物語としての危機感と、プレイヤーの遊び心のズレがあるわけですね。物語に没入するほど、ストーリーに関係ない寄り道散策にハマれなくなる、と。むしろ、しょせんはゲームってメタ視点で考える方が、作者の用意した遊び要素を堪能したいと思うわけで。ここには、さらに攻略上の問題があって、攻略必須アイテムが寄り道先に隠されている場合に、真っ直ぐ目的地に向かうと攻略に失敗するから、ゲーム的に考えて「こっちに攻略必須アイテムの匂いがする(笑)」というネタで、プレイを進めたりもするのですが、それはやむを得ないとして、やはり本作で「パイの早食い」とか「街の中の倉庫の探索」とかに挑む主人公ってのは、違和感がある。そういうのを気にせずに、いつものように探索調査やイベントを楽しめばいいとか、本作の主人公はプレイヤーと違って「細かいことを気にしない豪放磊落な性格なのだ」とか、「目前に楽しそうなことや、気になる探索ポイントがあれば、後先忘れて飛び込むキャラ」と開き直って、楽しく正解ルートを選ぶといいとは思います。いずれにせよ、このゲームのために自分をねじ曲げる的なモヤモヤ感が付きまとった作品なので、楽しいイベントはいっぱいあるのにハマれなかったという点で、主観的に点数なし、とします。
- 作者の盛りだくさんなエンタメ精神には敬意を示して+1。
ということで、意外とこの作品のストーリー的な面白さは、自分にとっては3点。◯評価です。
どんでん返し的なサプライズが、インパクト大なんだけど、「衝撃すぎるストーンブリッジの崩壊(後からのフォローがない)」と「唐突なマリクの死(出会いと別れだけあって、間の交流がない)」と、いろいろ投げっぱなしというか、雑な扱いだな、とか、
楽しい街のイベントが散発的なものが多く、祭りの雰囲気と巨人による世界の危機のギャップ差で、プレイヤー的にノリきれないという理由ですな。
以前にリビングストンの主人公は、英ジャクソンの使命感あふれる主人公と違って、冒険を楽しむ陽性で豪胆な人柄(良い意味での好奇心旺盛な冒険バカ)という話をしましたが、今作では「巨人の封印を解いてしまった」という負い目があるので、いつものように呑気なキャラ像だと違和感を伴うんですね。
衝撃的な巨人の目覚め、そして陽気な祭り。
40周年らしく、派手で豪快なイベントで盛り上げようとした作者の意図は分かりますが、その2つの要素は、自分には噛み合わせがあまり良くなかった。
物語的には、主人公の直面しているシチュエーションが、明るい街の雰囲気とのギャップ差が酷くて、そこを埋めるために理屈を構築しないとスッキリしない作品だったということになります。
結局、「英雄志望の妄想豪胆なキャラのフォーティ」って登場人物なら、こういう状況でも乗り越えて行けるんだろうなあ、と考えた次第。
リビングストンの物語まとめ
前編と後編の点数をまとめると、以下のようになります。
- 5点(◎):トカゲ王の島、雪の魔女の洞窟、危難の港、アランシアの暗殺者
- 4点(◎):死の罠の地下迷宮
- 3点(◯):盗賊都市、火吹山ふたたび、巨人の影
- 2点(◯):運命の森
『巨人の影』が思ったよりも低い結果になったのは、派手な造りの割に、物語の整合性という観点で、いろいろ粗が目立つ作品だったから、と考えます。
マリクさんの場合は、わざわざ登場させておいて、殺し方が実に雑というか、こういう話だったら、ニカデマスさんみたいに「年をとったから、もう冒険は無理だ」という理由で、助言だけして主人公に後を託すだけでも十分だったと思いますね。
グースの扱いは悪くないと思ったのに、どうしてマリクさんをこういう目に? このハーメリンの街を今後も使うつもりであれば、賢人マリクなんて使い勝手のいいパトロン役にもなれたものを。
いずれにせよ、40周年記念のメモリアル作品だから、派手な作りで目を引いているけど、物語の完成度は前2作に比べて荒いと、改めて思いました。いろいろ光るポイントもあるだけに、厳しく付けた形になりましたが、メインが『盗賊都市』みたいに街の散策の比重の大きいゲームだから、こんな物かな、とも。
それで、リビングストン作品だけを、ここまで累計総括すると、以下のようになります。
- 7点:雪の魔女の洞窟、危難の港
- 6点:死の罠の地下迷宮、トカゲ王の島、アランシアの暗殺者
- 5点:巨人の影
- 4点:運命の森、火吹山ふたたび
- 3点:盗賊都市
『盗賊都市』がずいぶんと低いじゃないか、と思うわけですが、あれはブラックサンドという舞台が魅力的な反面、物語としては主人公に特徴があるわけでもなく、ドラマ性が秀でているわけでもなく、ゲームシステム的に面白いわけでもないという。
イベント散発的なゲームは評価が低くて、冒険ドラマとして波瀾万丈な展開のある作品は高評価になるみたいです。
そして、ここまでの全てをまとめると、以下のとおり。
- 7点:雪の魔女の洞窟、サイボーグを倒せ、モンスター誕生、危難の港、サラモニスの秘密、ソーサリー
- 6点:バルサスの要塞、死の罠の地下迷宮、トカゲ王の島、真夜中の盗賊、奈落の帝王、アランシアの暗殺者、王子の対決
- 5点:サソリ沼の迷路、地獄の館、魂を盗むもの、巨人の影
- 4点:火吹山の魔法使い、運命の森、火吹山ふたたび
- 3点:盗賊都市
- 2点:さまよえる宇宙船
- 1点:天空要塞アーロック
これで残る評価基準は「⑤プレイ終了時の満足度」ですが、これで、順位がどのように変動するかは、あまり期待できないですね。
上位陣は◎で2点増えるでしょうし、下位陣は◯か△で大差なく。
強いて言えば、名作として歴史評価の高い作品にボーナスを加えると、『盗賊都市』がもう少しマシになるかと思うのですが。
じっさいのところ、『盗賊都市』って後世に与える影響が非常に大きくて、リビングストンの代表作になっているにも関わらず、自分のリアルタイムでの感想としては、「あまり面白いとは思わなかった」わけですから、その理由は何かと考えると、「イベントの散漫さ」「ガッカリボスのザンバー・ボーン」「女吸血鬼イベント以外が、あまり印象に残ってなかった」ってものですね。
でも、続編の『真夜中の盗賊』や『危難の港』『アランシアの暗殺者』は好きな部類ですし、そう考えると、非常に意義深い作品であることは間違いないわけです。
ということで、『盗賊都市』を救済するための評価基準を考えて、次回の面白さ総評・最終回を仕上げたいと思います。
(当記事 完)
