8月27日は国際ゲームブックの日
そんなことを2年前に書いていましたが、今年はすっかり忘れておりました。
で、その日、自分が何をしていたかと申しますと、前日夜からこんな記事を書いていたわけで。
ゲームブックの日であろうと、なかろうと、ゲームブックの話をしている自分は確実にゲームブック脳に侵されていますね。
このまま「ゲームブック様」と目を虚にしたまま、洗脳状態でご奉仕させていただくと妄言吐いてもOKな気がしてきました。
ただ、ゲームブックは種族名であって、特定個人の名前ではありませんな。
特定個人の名前だと……「『火吹山の魔法使い』様」ですか?
いや、別にザゴール信者じゃないし。
最近だと、「『暗黒の三つの顔』様」だし、それも記事書き終了したわけで、すっかり暗黒の洗脳が解けて正気になった頭で、自分は誰(どれ)に様づけすればいいんだ? と新しいご主人さま(推し記事のネタ)を探してみると、
おや、これはこれはザゴール様、みたびの復活おめでとう、と言ってみる前置きです。
それにしても、ここまで文章を書いて思ったこと。
『暗黒の三つの顔』の呪縛は、まだ解けてないな(苦笑)。
作品が好きすぎて、勢い余って後日譚小説まで書いてしまうほど、ハマった攻略記事です。まだ未読なら、ぜひ、この機会にどうぞ、と攻略スタート記事から改めて宣伝しておきます。
改めてザゴールの話
前置きを終えて、本文に行きます。
別に自分はザゴール信者ではなくて、むしろ悪魔の3人の中では、バルサス様推しなんですが、ジャクソン先生が『バルサスふたたび』とか『バルサス・ダイアの伝説』とか書いてくれれば、よっしゃキターなんて狂喜乱舞しそうです。
『サラモニスの秘密』では名前だけ出たけど、ご本人は登場せず、過去編なので本人が復活したわけでもない。
今、思い返せば、FFシリーズで主人公を悪堕ちさせた最初のボスキャラも、実はバルサス様だったような気がする。
ザラダン・マー様には、この身をモンスターに改造していただいたけど、どちらかと言えば、ドリーの魔女に洗脳されたり、訓練施設のサグラフ隊長の方が良くしてくれた記憶があります。
ザゴール様には、あまり主人公を悪堕ちさせようという発想はないようですね。ええと、復活のために主人公の体のパーツを欲しがっていましたが、体よりも心を奪って欲しい……と思いつつ、そう言えば、『火吹山の魔法使いふたたび』でも悪堕ちは体験したな。
偽ヤズトロモさんことドッペルゲンガーに生命力を吸収されて、見事に悪霊堕ちしてしまいました。これが自分のFFコレクション初体験。
ここでの記念すべき初ゲームブック攻略記事で、しっかり悪堕ちネタを嬉々として語っている自分がいまして、そこまで悪堕ちが好きなんかい? とツッコミ入れてしまいました。
いや、好きなんですけどね(笑)。
問題は、悪堕ちしちゃうと、普通はそれでゲームが終わってしまって、その後の展開は妄想に頼るしかないってこと。
悪堕ちしてからが本番という稀有なゲームブックを求めてみたり。
まあ、『モンスター誕生』と『サソリ沼の迷路』は、主人公がモンスターだったり、悪の魔法使いの手先になったりできるので、ちょっとした悪感覚も堪能できるんですけど、話がどんどんザゴールから離れていきそうなので、これぐらいにしておきます。
別に悪そのものが好きってわけじゃなくって、本来は正義の味方だった主人公ヒーローや無垢の一般人(しばしばヒロイン)が価値観を変えられて、陣営変更する変化の過程がいいなって話だから、敵側が味方になる話も結構好き。
ともあれ、みたび復活したザゴールさんが、異世界の悪魔と合体して、ラスボスが『ザゴール=デーモン』(技術点16、体力点20)だったりする作品ですな。
ええと、悪魔の力を身につけた正義……ではないな。
正義のヒーローは、こちらです。
今回は4人用意されていて、順に紹介しましょう。
4人のヒーロー紹介
①蛮人アンヴァー
バーバリアンです。
技術点が1D+6で、FFゲームブックの標準戦士並みですが、特筆すべきは体力点。1D+18点で、最大値は他のキャラと同じ24点ですが、最小値でも19になるので、期待値が21.5。つまり、普通に2Dで9か10を出した感じですね。
運は1D+4で、FFゲームブックの標準(+6)だと低いですが、本作は運に加わる修正が3〜5なので、+4は普通です。アマリリアの冒険者は、アランシアの冒険者に比べて、運が悪いのが仕様なのでしょうか。
魔力ポイントは一番低くて、初期状態で1点。本作は魔法の巻き物なんかを冒険中に入手して、戦士でも魔法が使えるようになったりするのですが、呪文を使うにも、一部のマジックアイテムの効果を起動するにも、魔力ポイントを消費しないといけません。
武器は斧。本作は後述のドワーフと並んで、斧使いが2人もいるという仕様。武器によるダメージの変化はありませんが、冒険中に入手できる強力な武器で、剣を入手してもあまり嬉しくないってことですね。使えなくはないんだけど、特別なボーナスは付かない、と。
あと、飛び道具では、機械仕掛けのクロスボウが上手く扱えないので、攻撃力マイナス2ですが、そもそもFFシリーズではクロスボウが登場した試しがあまりないので、短所なの? と思わなくもない。
それより問題は防具。バーバリアンは金属鎧が着れません。チェーンメイルは着れるけど、特別なボーナスが付かないので、着る意味があまりない、と。
体力点以外の長所は、第六感による不意打ち回避。敵の奇襲や罠によるダメージをとっさに回避できて無効化できる。
いつもと違うタイプの戦士をダイナミックに遊びたい人や、蛮人スロムに憧れる人、特撮ヒーローのバトルホークに感じ入って真っ赤なタイツを愛用する人(そんな奴がいるのか?)にお勧めのヒーローです。もちろん、コナンでもいいけど、コナンは斧のイメージがあまりないからなあ(グレートソードのイメージ)。斧といえば、ゲッターロボで、石川賢好きの琴線にも触れるかも。
②戦士ブラクサス
あなたがFF初心者で、面倒なルールを覚えるのが大変という人なら、このキャラを使うべきです。特殊能力が全くなくて、典型的な戦士ですから。
技術点は1D+6、体力点は2D+12で、いつもと同じ仕様。
運点だけは低くて、1D+3です。今回は運だめしの機会があれこれ多くて、運点の回復ペースがどれほどかにもよりますが、バトルよりも運の消費に悩まされそう。
魔力ポイントは3点。実は、専門の魔法使いの次に、魔法の扱いを得意としています。強力なマジックアイテムの起動にも魔力ポイントは消費しますので、どんな装備でも、マジックアイテムでも器用に使いこなせるのが、このキャラの最大の長所です。
武器も防具も全て使え、普通にドラクエ勇者とか、光の騎士って感じのイケメン戦士、もしくは主役といえば剣でしょうの正統派スタイルを好む人向きです。ロボで言えば、グレートマジンガーとか、ボルテスV。ガンダムはヴァリエーションが多すぎるし、飛び道具主体なので異なりますが、1stガンダムなら近距離白兵戦が主目的なので、行けるかも。
キャラ名が、この世界の伝説の王さまと同じで、高貴な血が流れているって設定も面白いですね。ゲームブックではあまり重視されない設定ですが、小説では重要人物らしい。騎士団が守っていたお城の跡(悪魔の侵攻で奪われた)が主舞台なので、かつての騎士が使っていた剣とか鎧とかを装備して、結構な自己強化を図れるのも美味しい。
③ドワーフのスタッブル
この名前を見て、『雪の魔女の洞窟』の彼を思い出したのは、自分だけでしょうか?
おっと、君、生きていたんだね……と思いきや、世界が違うことに気づく。
すると……まさか、異世界転移か、転生か?
何はともあれ、脇役NPCから主役の1人に抜擢されて大出世のスタッブ君でした(妄想)。
能力は、技術点が1D+5で、戦士としては少し弱い。体力は2D+12で、FF冒険者の標準並み。
運が取り柄で、本作最高の1D+5。
魔力ポイントは2点。
能力は、あまりパッとしない印象ですが、金に対する執着が強くて、最初の所持金貨が5枚多い他、「石のモンスターに対して、攻撃力+2」。そんなモンスターがどれだけ登場するのか次第で、評価が変わる。
装備としては、両手剣とロングボウが使えない。クロスボウは使えるようだ。あとは、ドワーフサイズでないプレートメイルが使えない(チェーンメイルはサイズの調整がしやすいので使える)。
運が高いのは、昔のD&Dでいうところのセービングスローの値が、ドワーフは優秀なことの反映かな。宝箱を開ける際に運だめしが必要なので、盗賊みたいな手先の器用さも持ってる技術職っぽくもあるけど。
ともあれ、FFゲームブックでドワーフがプレイできる作品はレアなので、ドワーフ好きは迷わず、彼一択でしょう。ロボに例えるなら、SD系のザクとか、そんな感じか。派手ではないけど、渋い選択肢だとは思います。
④魔術師サラザール
他は戦士系の亜種なのに対し、これだけは明確に方向性が違いますな。
技術点は1D+4。ソーサリーなんかでお馴染みのハンデですな。
体力点は3D+6。すごい、3D振れるなんてタフすぎると思った人は、固定値の重要さを思い出しましょう。最大値は24でも、最小値は9ですから。期待値が16.5で、いつもの決め方だと出目4から5というところ。
運点も1D+3で、戦士ブラクサスと並んで、本作では最小値。
唯一にして最大の取り柄は、魔力ポイント7点で、巻き物がなくても13種の魔法の呪文を自由に使える点。まあ、自由に使えると言っても、魔力ポイントに限りがあるので、使うタイミングは考えないといけないのですが。
特筆すべきは《火球》や《電撃》などの攻撃呪文。従来のFFだと、それらの呪文はコストさえ支払えば、相手にほぼ確実に命中してダメージを与えてくれるのですが、本作の場合は攻撃呪文を使用しても、武器攻撃同様の技術点+2Dの比べ合いをして、相手に勝たないと呪文が避けられてしまう。つまり、技術点で負けてる強敵に対して、魔法で窮地を凌ぐという使い方はできない、と。
攻撃呪文のメリットは、通常攻撃で2点ダメージなのを、5点および7点に増加させるダメージ増強効果という点です。技術点の対決に勝たないと魔法の無駄撃ちになるので、いつもよりも攻撃呪文が使いにくいな、と感じますね。
そんなサラザールさんの本領は、戦闘ではなくて、情報収集で大きく発揮されます。まず、魔法の文字で書かれた書物が普通に読めますので、他のキャラが入手できない攻略ヒントなども普通に入手できる点が便利。
次に、部屋に隠されたものを見つけ出すには、〈発見の技だめし〉と称される技術点判定を求められるのですが、技術点の低いサラザール君の不利を補うために、彼には〈発見の技だめし〉にボーナス+2が加わります。つまり、技術点の不利(戦士より2低い)を相殺してくれて、ハンデなしになる、と。どうせならボーナス+3で、発見だけはサラザールが有利にしてくれてもよいと思うのですが、肉体面での不利を魔法と知識、観察能力で補う通好みのキャラとなっています。
弱点は、武器や防具の制限が大きくて、防具による攻撃力修正も、弓矢系の飛び道具も一切使えないこと。逆に、強力な魔法の杖は彼専用ですし、手強い敵との遭遇を避けて進めば、そうそう不利ってことでもないと思う。
そう思って、お試しプレイで最初にサラザールのつもりで進めてみたら、アージェント城に向かうまでの船旅で、技術点10、体力点16のフォッグ・ワイヴァーンに襲撃されて、ギャーッてなりました。
最高技術点が10のサラザールにとって、技術点10以上、体力点10以上の敵は非常な難敵です。他のキャラなら、自分の技術点11もしくは12というケースで普通に勝てるでしょうが、サラザールがこの戦いで生き残る確率は良くて半々くらいだと思われ。
ともあれ、序盤から、いきなり技術点10という難敵が登場するうえ、ラスボスの能力が技術点16であるという時点で、本作のプレイでは、技術点を6の目を出した最大値で始めようと思ったNOVAでした(今すぐじゃないけど)。
何せ、旧世紀のリビングストン作品のうえ、前作『火吹山の魔法使いふたたび』の続編に当たりますからね。最強能力値で挑むぐらいで、ちょうどいいバランスではないか、と思います。
リビングストン作品?
じっさいには、『魂を盗むもの』のキース・マーティン作品であることが、後から公開されたわけですが、「ストーリー原案リビングストン、著キース・マーティン」というのが正確なところでしょうね。
で、リビングストン作品の中では、『フリーウェイの戦士』並みにルールの多い作品となっていて、まずはそこに違和感が。リビングストン先生のゲームブックって、FFの基本ルールをほぼイジることなく続けられてきたわけで、いくらアマリリアに世界が変わったからといって、ルールがあれこれ加わりすぎでしょう、と。
まあ、『死の軍団』だって、大規模戦闘という変わり種ルールが追加されていて、リビングストン作品でも未訳のものだと、あれこれ変えてきているのかもしれないけど、とにかく、まるで別の人が書いたように、ルールがあれこれ付与されている。
キース・マーティンなら納得だね。
……というほどは、キース・マーティンの作風にも詳しいわけじゃないのですが、彼がダンジョン・シナリオの名手であることは定評があるそうで、今作もアージェント城という巨大ダンジョンをひたすら地道に探索するストーリーになっています。
リビングストン先生もダンジョン物は書きますが、リビングストン作品とキース・マーティン作品は明確な違いがありまして、それは選択肢が「右か左かまっすぐか」のキャラ視点なのがリビングストンで、しかも選択肢の数がそれほど多くない。しかし、本作は東西南北で選択肢が表記され(『サソリ沼の迷路』もそうだけど、マッピングのし易さを目指した仕様)、たとえば「東の扉を開くか、北の壁の無印扉か、北の壁の盾飾りの扉か、南の壁の無印扉か、南の壁の王冠飾りの扉か(パラグラフ36番)」といった感じで、選択肢が結構多い。
しかも、リビングストン作品のダンジョンは、左右のどちらかを選んだ場合は、行き止まりで戻ってくる場合を除いて、引き返すことはできません。選んだルートと別の道は探索できないのが普通ですが、本作はダンジョンを区画分けして、その区画内では自由に各部屋を調べることができます。区画を移動した後は前の区画に引き返せなくもなるけど、同じ区画内では割と双方向移動に近い作風になっていて、一度の攻略でほぼすべての部屋を探索することも可能です(体力点が尽きなければ)。
そして、内容は完全にハック&スラッシュですな。
部屋に入る→モンスターや人物と遭遇する→モンスターなら戦い、人物なら話を聞いて情報収集したり、買い物したりする→モンスターを倒すと、部屋をあさってアイテム入手。時々、タワーチェストという宝箱があって、お定まりの解錠および罠外しをして、重要アイテムの【金の護符】【銀の短剣】【マジックリング】をゲット→次の部屋を調べる……と言ったことを延々と続けます。
D&Dもしくはウィザードリィなどのダンジョンゲームで、お馴染みの機械的処理をくり返す作品です。
え? 今までのFFゲームブックだって、ダンジョン物はそうじゃないかって?
部屋に入って、モンスターを倒すまでは同じですけど、宝箱を開ける際の処理は、あまり重視されていないのがFFゲームブックでした。モンスターと宝箱がセットというケースも少なくて、モンスターを倒せば自動的に戦利品が手に入る。宝箱の部屋は、モンスターとは別に独立して配置されているのが、FFゲームブック風だと思います。
宝箱の開け方が、ルール部分に載っていて、開ける際の運だめしに失敗すると罠で3点ダメージとか、開けた場合にランダム入手できるお宝とか、非常にシステマチックに処理されているのが、本作の特徴。
でも、宝箱を開ける際に、いちいち運だめしをしていたら、運点が枯渇しない? と心配する人には、盗賊の鍵開け道具を入手することで、運だめしの代わりに技だめしで鍵開け可能になるよ、と。
つまり、ダンジョンで入手できる便利アイテムや、交渉できる登場人物などを見つけ出して活用するゲームであり、ダンジョン内の全ての部屋を手当たり次第に開けてみる攻略法もあれば、きちんと情報を聞いて、要所要所だけ効率よく探索を進める方法もある。
これまでのFF(リビングストン作品)はどちらかと言えば、攻略必須アイテムのある場所を探ることで正解のルートを見つけ出す仕様が多かったのですが、今作の場合は、『魂を盗むもの』と同様に、アイテムの縛りは緩い反面、毒とか病気の解除方法と、謎解きのための情報探しが中心。とりわけ、単語を数字に変換するパラグラフ・ジャンプの謎解きが多くて、リビングストンよりはジャクソンのゲームブックに近い雰囲気です。
まあ、それよりは、お城を探索するという点で『ウィザードリィ6』の雰囲気とか濃厚かな。ダンジョン内で買い物もできるし、治療してくれる聖職者もいて、しかも、一度訪れたその手の施設は、同じ区画を探索している限り、いつでも戻って来れる。「今はお金がないので、後でお金を稼いでから、また買い物に来るよ」って感じの出直しができるゲームです。つまり、探索の自由度が結構、高い。
リビングストン作品が割とストーリー主導型で、ルート選択での正解を見つけるゲーム性だとするなら、
本作は巨大なダンジョンを自由に探索して、さすがに全部探索すると、体力点が保たないので探るべき部屋とそうでない部屋をチェックしながら、途中で力尽きて、2回め以降の探索を効率よく進めるようにするのがゲーム性ですな。
作風がずいぶんと違うわけですよ。*1
そして、リビングストン作品の特徴に、だいたい読み進めるだけで解ける、というのがあります。
いや、もちろん、攻略必須アイテムをスルーして、バトルも全部勝ったことにして、チートに(手抜きに)進めた場合ですが、パラグラフ・ジャンプとか、しっかり情報を得てからでないと先に進むことが不可能な仕掛けはほとんどありません(例外は『火吹山の魔法使いふたたび』と『甦る妖術使い』で、それらにはパラグラフ・ジャンプがあることを確認)。
さらに、双方向移動でマッピングしないと生じる、行ったり来たりで道に迷うこともありません。マップ上で現在地を把握してなくても、パラグラフ選択でバッドエンドにさえならなければ、ゴールまでほぼ確実に辿れます。
でも、本作はそうじゃない。
リビングストンが使ったことのなさそうな「アルファベットを数字変換して、単語の綴りから行くべきパラグラフ番号を割り出す仕掛け」があるわけで、ただ、日本語翻訳版だと、たとえば「白(WHITE)」と英語のつづりが文中に書かれていて、それがヒントだということは読み取りやすくなっています。だけど唯一、固有名詞の人名べセルが綴りを書いてくれていなくて、いろいろ調べた結果、BETHELと判明。これが一番苦労した謎解きになりますな。べセルというカナ表記じゃVesselとかBecelとか、いろいろ考えられますし、BETHELも一般的にはベテル、ベーテルと記される聖書絡みの地名で、つながりにくかったわけで。
そういう謎解きを7、8ヶ所ぐらい要求されて、ただ読み進めるだけじゃ解けないゲームですね。
フローチャートを書くにしても、選択肢の数が多すぎて錯綜せずにはいられないし、マッピングはしやすいものの、攻略ノートは11ページに至る、と。その前の『嵐のクリスタル』は4ページで収まったのにな。
個人的には、『FFコレクション5』の中でも最難関作品だと思っています。
ストーリーは?
物語的な面白さという意味では、本作の場合、ゲーム的な仕掛けがいろいろあって面白いのだけど、ストーリー自体は単調で、ずっとダンジョン探索をしているだけのサプライズ性に乏しい話になっています。
デーモンと合体した異世界出自の魔王ザゴールが、アージェントの廃城に巣食って、戦闘ドラゴンや数々の中ボスの護衛も含めて、アマリリア世界への侵略を目論んでいる。異世界の善の魔術師ゲレス・ヤズトロモから急報を聞いたこの世界の王さまは主人公勇者に、ザゴール退治を要請する、と。
その後は、お城という巨大なダンジョン探索で、特に大きなどんでん返しやサプライズもなく、ザゴール退治をして終了ですね。ザゴールがデーモンと合体した影響からか、ただの魔物みたいなキャラとなっており、特に主人公と会話をかわすでもなく、ドラマとしてはつまらないキャラになったかな、と。
ザゴールは前述のとおりの強敵ですが、タワーチェスト(宝箱)に入ってる【金の護符】と【銀の短剣】を集めることで、その能力を減少させることが可能。このゲーム、アイテムゲットによって自己強化を図りつつ、ラスボスを弱体化させるという作業を経ることが攻略の道筋になるわけですが、敵ボスに勝てるための状況づくりというのがRPGにおけるキャラ成長と同義で、経験値による成長こそありませんが、古き良きダンジョン探索RPG(要はウィザードリィ)的な匂いを感じさせます。
逆に、ゲームとしての展開に比重が乗っていて、ストーリー的な面白さはさほどでも、という。少なくとも、このゲームブック単体では、背景世界とのリンクも、キャラクターの面白さも、物語としてのうねり(起承転結の転に当たる要素。そういうことだったのか、という発見やどんでん返しなど)がなくて、薄いストーリーに見えます。
ラスボスを倒せと言われたから、頑張ってダンジョン探索して、自分を鍛えて、相手を弱らせて、ラスボスを倒しました。めでたしめでたしって内容。せめて、冒険の舞台に変化があれば、単調ではなくなるのですが*2、本作のストーリーは『FFコレクション5』の収録作品では最もシンプル。
あえて大仕掛けの部分を述べると、ラスボスは不死身なので、その身を滅ぼすための手段を講じる必要があります。で、ザゴール=デーモンを戦闘で倒した後、その手段を達成するために、敵の死体を担いで、ある場所まで制限時間内に戻らないといけないのですが、もたつくと復活した悪魔に殺されるというタイムアタックイベントが最後に待っている、と。
言わば、目的のお宝を入手したら、ダンジョンが崩れ始めたので、急いで脱出しないと……という、もう一波乱が最後に待っていて、ハラハラさせる、という感じ。
そして時間制限がある中で、何とかザゴールの復活を阻止することに成功して幕。
ゲームとしては、十分に盛り上がる緊迫感に満ちた展開ですが、ストーリー的なサプライズがほぼないというのが、キース・マーティン流というか。
ストーリー構造を、起承転結でまとめて見ると、リビングストン作品には転があって、前半部と後半部が切り替わる。
英語圏では、起承転結の4幕構成を学習せずに、序中結の三幕構成が基本らしく、その比率が1:2:1が理想とされるようです。もう少し、詳細を語ると、序(主役や敵の設定紹介)、中(主役と敵役の数度の対決を経て、ドラマの焦点、解決方法の明示化)、結(最後の対決と目的達成)が英語圏のドラマの定番構成とのこと。
日本だと、起承転結でストーリー構成を学ぶ人が多いので、中盤で味方と敵勢力の大きな変転が発生するパターンが多い。1年放送だと、3クールめに第3勢力が出現して、それまでの敵味方の構図が大きく変更されるパターンとか、敵キャラの一部が味方になったり、味方の一部が悪堕ちしたり、味方の上層部が実は悪の元凶だと分かって主人公が離反したりの流れが3クールめに発生する話をいろいろ知ってます。
海外ドラマでは、起承転結で話を作っていないので、「転」が発生するタイミングも異なるようですが、ゲームブックに話を戻しますと、リビングストン流というのが実は海外では異質みたいですね。中盤に転がある起承転結の構造というのが。
そういう手法を身につけた理由が、最初の『火吹山の魔法使い』で前半がリビングストン、後半が相方のジャクソンに分けて、途中の川で分割する構造で作品を組み立てたから。
以降は、川を渡ることで、前半と後半の雰囲気を変えてくる手法を、リビングストンさんは続けていきます。
後に川は絶対ではなくなるのですが、前半と後半で大きくストーリーを切り替える(日本人好みの)作劇スタイルを、リビングストンさんは手癖で量産しているようですね。相方のジャクソンさんはそれほどでもないのですが。
一方、キース・マーティンのスタイルは、と言うと、『魂を盗むもの』と本作の共通点を考えると、3つあるかな、と思います。
①最初に派手な見せ方をする。
旧世界からアランシアに渡った悪の魔術師を追って冒険を始める。これが『魂を盗むもの』のスタートでした。
2つの大陸を股にかけるとは、何て派手な開幕か。
でも、その前に捕まった善の魔術師を助けるために、小島に立ち寄ってね、と言われて、その通りにしたら、その小島のダンジョンだけで事件が解決してしまう。
え? スケールが大きい話かと思ってみたら、しょぼくない? と初プレイ時は考えたものの、そのダンジョンの仕掛けが面白いことと、ゲームバランスが結構良くて、割と緻密に作られていること。
さらに終盤で、別次元に潜むボス(アランシアに向かったと見せかけて、実は別の策謀を考えていたという、どんでん返し)との対決で、上手く話をまとめたな、と感心。
まあ、大陸を股にかける冒険なんて、なかなか作れないよな、と思ってみたら、おお、日本では『暗黒の三つの顔』があったじゃないか。さすがは山本さん……と後年、思い出すことになったり。
奇しくも、『魂を盗むもの』と『暗黒の三つの顔』は同年初発表の作品。
一方、『ザゴール伝説』もまた、オープニングからして非常に派手な造り。
何せ、異世界(タイタンのアランシア)から来た邪悪な魔術師の亡霊が、この世界(アマリリア)で封印されていた凶悪なデーモンの肉体と融合合体して、巨大な邪悪が復活という、2つの世界にまたがるストーリー。
もう、開幕が一番、派手。
ただし、じっさいのゲームは、ただのダンジョンというスケールの小ささに収束する。
2つの大陸を股にかける話に思わせたり、2つの世界を股にかける話に思わせたりしながら、でも、結局は自分の得意とするダンジョンに持ち込んで、ゲームとしては肩透かし気味ではあるものの、つかみはOKという奴。
見た目は派手でも、中身は堅実なギャップ萌えを味わえる、これがキース・マーティンの作風かな、と分かってきた気がする。
②オカルト色が濃い
キース・マーティンといえば、オカルトに造詣が深いという話を聞きまして、ホラー映画とか幽霊とか悪夢の要素を文体に忍ばせてくる。
これは、リビングストンが全体的にカラッとした要素、ダークなテーマを根幹としながらも陽性にして豪快な文章が底流にあって、オカルトといっても原初の野生のパワー的な呪術をモチーフとしている印象があるのに対して、
キース・マーティンの方は、雰囲気がじめじめしている。
何というか、日本の怪談めいたおどろおどろしさを宿しているのが、キースの作風かな、と。
ホラーと言えば、ジャクソンの『地獄の館』がFFでは真っ先に上がるけど、あちらはギャーとかキャーとか悲鳴を上げる系の幽霊屋敷で、あまりゾクゾクは感じなかった。
でも、キース・マーティンの作品は、悲鳴はあまり上がらない。主人公が一般人ではなくて勇気ある者だから、悪夢にさいなまれながらも果敢に挑む。
リビングストンだってホラーは書けるし、現に彼の未訳作品『ゾンビの血』はホラーに分類される。ただし、リビングストンの書くホラーは血しぶきが飛び散るスプラッター系とか(アズール卿による処刑磔に象徴される)、肉体的に傷つける系が中心で、心理的にジワジワ来る湿っぽさは感じない。
『雪の魔女』の死の呪いは、その手の珍しいタイプだけど、それを受け止める主人公側の描写が淡々としているので、ゲーム的な体力点の消耗で危機感は募らせても、プレイヤーの内面でゾクゾク怖い、という印象はない。
一方で、キースさんは、恐怖を武器とするモルドラネスや、廃城で幽霊だらけのアージェント城(生きた者もいるけど、発狂したり、怯えていたり、大胆不敵に商売していたり、NPCは様々)など、息を吐くようにホラー的な雰囲気を醸し出してくる。それも心に来る方向で。
恐怖点がルールに反映されていたら、ゲームが成り立たないような頻度で、恐ろしい。これはFFというより、ウォーハンマーの世界観だな、と感じさせるぐらい。
ただ、これは個人的な趣味嗜好の問題だけど、キース・マーティンのオカルトホラーには悪堕ち要素が今のところ見られないんですね。
その辺は、ジョナサン・グリーンの『狼男の雄叫び』の方が、内なる獣に苛まれる自己の変貌やら、怪異に魅入られて魔女と化した宿の娘とか、NOVAのツボを突く要素がいろいろあったわけで、うん、ジョナサン・グリーンの作風は気に入ったと推し認定する一方で、
キース・マーティンについては、微妙に物足りなさを覚える現状。
いや、彼の吸血鬼2部作がきちんとツボを突いてくれるのではないか、と期待はしているんですけどね。
③地道なダンジョン探索
これがもう、前評判どおりですわ。
ダンジョン物としては、非常に完成度が高い。
雰囲気の一貫性といい、仕掛けの面白さといい、ゲームとしての完成度は申し分ないと思います。
問題は……どうしようもなく単調だということ。
ゲームとしては、判定したり、データを書き加えたり、処理内容が充実しているので、飽きさせないのだろうなあ、と考えますが、今回はゲームとして未プレイで、フローチャートを書いたり、マップを書いたりしながら、謎解きとイベントチェックしただけなので、あまりサプライズは感じなかった。
これが同じダンジョン物でも、ジャクソンやリビングストン、それに日本の鈴木直人(ドルアーガの人)だったら、どうなのかな? と考えてみました。すると、彼らは多芸なので、ダンジョンの雰囲気がシーンや階層ごとにヴァリエーションがあって、ストーリー性が豊かだったことを思い出します。
キース・マーティンの場合は、雰囲気の一貫性が長所にも、短所にもなっている。
例えば、元祖『火吹山の魔法使い』の場合、コミカルな序盤と、緊迫感に満ちていく川以降に大きく分かれ、転調をはっきり感じさせる。
続く『バルサスの要塞』も、レプラコーンのオシェイマスを初めとする「悪の要塞らしからぬ緩さ」があって、イベントごとの雰囲気のヴァリエーションが豊か。
この緩急の妙があるから、ダンジョンの息苦しさをあまり感じさせず、だからこそクライマックスのラスボス戦も引き立つわけですが、
キース・マーティンの作品は、終始、重苦しいわけですね。作家としては、作品の雰囲気を維持する力量というのも長所なのですが*3、これが小説だと、暗いダンジョンがずっと続いたから、外に出て開放感を描くように切り替えるとかで、シーンを改めることも可能。あるいは、複数の視点キャラを切り替えることで、マジメな主人公と息抜き用のコミカル脇役のそれぞれのシーンで、トーンを切り替えたり、いろいろ緩める手はあるのですが、プレイヤーキャラが固定のゲームブックは、関わるNPCや舞台の変化でそれをするしかない。
だけど、キース・マーティンは、どうもそういう切り替えの幅広さを持っていないので(ゲームとしての仕掛けの引き出しはいろいろあるけど)、本作のように「巨大なお城の探索のみ」のゲームだと、ストーリーとして非常に単調な作業をこなすのみ、となった感じがあります。
そこで、同行する仲間との絡みを用意して、ストーリーの変化を付けたのがリビングストンだったりするわけですが、
キース・マーティンのダンジョンは、ドラマ性が薄く、逆にゲーム性(仕掛けやパズル、謎解きの楽しさ。またはアイテム入手によるキャラ強化)などがそこそこあって、今回は実プレイでない解析メインの読了だったため、まだ作品の長所を味わいきれていないのだとは思います。
それにしても、ドラマ性や変化に乏しいストーリーゲームだったことは否めません。
実は大河ストーリーの一部
さて、FFコレクションでは基本的に、安田均社長による作品解説小冊子が付いているのですが(コレクション4を除く)、コレクション5では30ページほどの小冊子『アランシア大陸を離れて』で、各作品のページ割り振りがこうなっております。
- サソリ沼の迷路:4ページ
- 狼男の雄叫び:7ページ
- 嵐のクリスタル:3ページ
- 火吹山の魔法使いの伝説:10ページ
- さまよえる宇宙船:5ページ
『狼男の雄叫び』は、初登場の作者ジョナサン・グリーンがFFシリーズでも多作なので、彼のこれまでの作品紹介も3ページ弱にかけて行なっている都合上、長くなっているのも当然ですな。
一方、最も文章量の多い『火吹山の魔法使いの伝説』は、ゲームブック単体だけの解説ではなく、その背景にあるパズルブック『魂の宝箱と12の呪文』(1987、邦訳1990)、ボードゲーム版『ザゴール伝説』(1993)、小説『ザゴール・クロニクル』4部作(1993〜94)までも含めた関連作の紹介も込みなので、実は最も情報が過多なんですな。
日本ではFFシリーズの展開が1991年に一度終了していたために、10周年記念作の『火吹山の魔法使いふたたび』と、それに続くパフィンブックス版最後の大イベントと言うべき『ザゴール伝説』プロジェクト(ゲームブックに留まらず、ボードゲームや小説で大々的に展開された)が、ほとんど取り上げられることなく来たわけですな。
パフィン版が終了したのは95年ですが、それまでは大きく盛り上がった企画だったと言えます。そして、ゲームブック『火吹山の魔法使いの伝説』はザゴール小説の2巻『ダークスローン』の内容に通じ、起承転結で言うところの承に相当。すなわち、まだ終わっていない、と。
転に当たる3巻『スカルスラッグ』の内容が、あらすじを読むと非常に面白そうで、ゲームブックでは実現しなかった「アマリリアとアランシアを股にかけたストーリー」になっています。自分は小説版を未読ですが、ネットでの断片的な情報から、その内容を次の記事で確認していきたいと思います。
(当記事 完。『ザゴール・クロニクルの話』につづく)
*1:これは英語での指摘ですが、本作ではサイコロ1個をa diceと表記したミスが見られるそうです。リビングストンさんは正しく単数形でa dieと表記してきたから、この文章は別人だろうとの推測もファンの間では語られていたとか。正式にこの本がキース・マーティンが書いたものだと発表されたのは、2014年になってから。
*2:『魂を盗むもの』では、島に到着→原住民と遭遇して情報を聞く→ダンジョンに突入→依頼されていた魔法使いを救出→呪文を授かり、ラスボスの潜伏している異次元(裏ダンジョン)に突入→ラスボス倒すという流れがあった。
*3:作品カラーが無意味にコミカルとシリアスを行き来するのも厳しい。下手なラノベは、シリアスであるべき場面で無意味なギャグを混ぜて緩めようとするとか、日常シーンを無駄にシリアスに固くするとか、作者がトーンをコントロールできていない。まあ、自分も自覚ありですけど(苦笑)。
