ダンジョン突入前の異種族談義
リバT『前回は、テラク神の聖地である廃都カーネクに至って、事前準備と重要人物ラスカルのキャラ紹介も含めた仕込み回。そのついでに、FFのタイタン世界におけるトカゲ人と蛇人の設定解説も行いました』
アスト「ファンタジー世界において、異種族はいろいろいるけれど、爬虫類種族(レプティリアン)は独自のキャラ付けが為されているよな。クラシックD&Dでは、モンスター種族のリザードマンが中立のヒューマノイドで、敵対するとは限らないけど、ドラゴンランスのドラコニアンは邪竜勢力の敵キャラになった一方、現在のD&D(5版から5.5版)では、ドラゴンボーンという竜人種族がプレイヤーキャラクターとして普通に使うことができる」
リバT『D&Dのドラゴンボーンは、3.5版のサプリメントに登場したのが初ですが、版ごとに設定が変わってくるんですね。最初は人間などの別種族が、ドラゴンの友として認められた後に、転生の儀を経て竜族の恩恵を受けた後天的な種族でしたが、4版、および5版で先天的な種族に格上げ。ドラゴンの成り損ない(卵から孵化するときに竜神の祝福を受けられなかった)とか、ドラゴンの従者として創造されたのが独自の文明を持つに至ったとか、様々な追加設定が為されているようですね』
アスト「D&Dでドラコニアンを採用する前には、『ルーンクエスト』でドラゴニュートを採用したのが、ファンタジーRPG初の竜人種族らしいな」
ダイアンナ「21世紀に入ってからは、割と定番種族で、ソード・ワールドでも2版からリルドラケンが採用されたし、ゴブリンスレイヤーでも蜥蜴僧侶という仲間キャラがいる。21世紀の価値観では、トカゲ人や竜人も独自の文化や名誉的な価値観を持つ種族として受け入れられているけど、80年代ではまだ敵対種族の印象が強かったようだね」
リバT『西洋ファンタジーでは、長らくドラゴンは邪悪なモンスターとして扱われて来たので、竜人などの爬虫人類も邪悪属性。日本でも、ドラクエの初期は竜がラスボスだったりしましたが、90年のドラクエ4から、竜の神さまというマスタードラゴンが登場したり、勇者のルーツに竜の血筋が絡んできたり、善竜が登場するファンタジーを提示。一方、海外で竜が善玉として描かれたメジャー作品は何になりますかね?』
アスト「84年の『ネバーエンディングストーリー』では、ドラゴンのファルコンが主人公の駆る善竜として登場するが、デザインが爬虫類ではなくて、モフモフの獣だからな。この時点では、洋物ファンタジーも爬虫類への嫌悪感を克服できていなかったのだろう」
リバT『西洋文化で爬虫類や恐竜が恐ろしいモンスターから味方に転じるのは、もしかするとパワーレンジャーやゴジラの影響かもしれませんね。もちろん、D&Dでは初期から善竜(金属竜の系譜)が設定されていましたが、80年代半ばのドラゴンランスで善竜をメジャーなものとしつつも、そこから一般化するのは90年代になるのでしょうか』
アスト「メジャーRPGのウィザードリィでは、90年に登場した6で、リザードマンや竜人ドラコンがプレイヤーの選べる種族として登場している。同作では他に、犬人間のラウルフや猫人間のフェルプールが登場していて、ケモナー属性も充実している。獣人系列がプレイヤーキャラとしてメジャーデビューしたのは、その辺りからじゃないかな」
ダイアンナ「フワフワモコモコの毛のある哺乳類の獣人種族と、爬虫類系は別物と考えるべきという主張もあるが、それはともかくモンスター娘の系譜では、蛇女というのは重要なモチーフとしてラミアやメデューサという萌え路線がある」
リバT『モンスターの擬人化はまた別の文脈が混ざっているとは思うのですが、総じて80年代は爬虫類が敵というのは一般的で、FFゲームブックの邪悪な種族であるトカゲ人も当時の価値観では常識だったのが、90年代以降の爬虫類種族の受容の流れがあって、21世紀のファンタジー界隈では、トカゲ人や竜人が即座に悪役と断ぜられることはなくなった、と』
アスト「トカゲや竜が擬人化されると、屈強な武人という属性が付与されやすいな。その典型が、ダイ大のクロコダインやバランなどになるんだろうが」
リバT『ともあれ、トカゲ帝国との和解と共存の道を探るというのは、21世紀におけるストーリーイメージであり、80年代ゲームであるFFシリーズ(原本では40巻までが80年代の出版。41巻が90年の登場になる)では、トカゲ帝国は不倶戴天の敵なので、世界観的にも和解はあり得ないという前提で考えていきましょう』
カニコング「爬虫人類と戦ったゲッターロボシリーズは、70年代でも90年代でも恐竜帝国は敵で、主人公の1人が恐竜人とのハーフで和解の道を探ったゲッターロボアークは、21世紀の作品でごわす。この点を見ても、時代ごとの価値観の違いは明確なので、昔の作品を今の視点で道徳的に断罪することは文化史的に危険と考えられよう。その意味では、触手が万人に受け入れられる時代が到来する未来だって普通に考えられるわけで……」
リバT『爬虫類と触手を無理に結びつけないでください。鱗肌嗜好と、触手嗜好はまた別ジャンルってことで』
アスト「爬虫類と触手はつながらないよなあ。かろうじて蛇が群れとなったら、似たイメージになるだけで。どちらかと言えば、触手って無脊椎動物の軟体系か虫系になるか。まあ、カエルやカメレオンの長く伸ばした舌という方向もあるが」
ダイアンナ「どうでもいい話に広がりつつあるので、さっさとダンジョンに入らないか? 異種族談義はこれぐらいにして」
カニコング「それでは、ここからテラク神の天の声として、吾輩がダンジョンマスターという形で王子たちを導くでごわす」
廃都の地下世界
DMカニコング「穴から地下に降りると、外の世界の蒸し蒸しした熱気がたちまち涼しくなって、闇の世界を感じさせるでごわす。ここから先はランタンに明かりを灯さなければ、探索不能ってことで」
アスト→ローレス「カニコングがDMか。新鮮だな」
ダイアンナ→サマルト「ディレクターじゃなくて、今回はDMなんだね。D&D感覚なのか」
DM「うむ。その方がダンジョンって感じが濃厚なのでごわす。それより早くランタンに火を灯せ」
ローレス「ああ。いちいち宣言しないといけないのか。ゲームブックの文章を普通に読み上げてくれてもいいんだぜ。まあ、必要なら宣言するけどな。明かりを灯した。進めてくれ」
DM「うむ、初DMを仰せつかったので、進行に慣れていないのでごわす。さて、闇が薄ぼんやりと照らされ、周囲を慎重に探ると、通路が伸びていて、両側には彫像がズラリと並べられていたようだが、多くは歳月の重みで崩れ去ったり、倒れたりしている。足元の床は元々、石段だったらしいが、完全にすり減って、緩やかな下り坂となっていて、滑らないように要注意と言っておこう」
サマルト「ずいぶんと描写が細かいんだね」
DM「ダンジョンは雰囲気作りが重要でごわすからな。つまらない構造のダンジョンも、DMの語り次第で臨場感を増すことができて、ドキドキハラハラが楽しめるように化けるって趣向でごわすよ」
ローレス「では、転ばないように気をつけながら、先へ進もう。もちろん、突然の奇襲攻撃にも気をつけながら、剣は抜き身にしておく」
サマルト「明かりは、ボクが持つよ。2人いるから役割分担は大事、と」
ローレス「まあ、ソロのゲームブックだと、片手に剣を、片手に明かりを持つから、基本的に盾は持てないのがFFの定番だからな。どうして、主人公が最初から盾を装備していないかに対する答えだ。複数パーティーのTRPGだと戦士は盾を持つことが多いが、1人でダンジョン探索するには、明かりのために盾を装備できないのが普通」
サマルト「ということで、ボクがランタン持ちを担当する、と」
DM「明かりの件で、ダンジョン探索の雰囲気を味わってもらったところで、屋根つき中庭が続くでごわすが、これが地上であれば、美しい植物が生えたりしていて、風情ある雰囲気であったであろう。しかし、地下に陥没した現状では、何もかも枯れ果て、不気味なたたずまい。その中で、やがて道が左右の2本に分かれた。どっちへ進むでごわすか?」
ローレス「テラク神に祈ってみよう。ゴッドネスはどっちを勧める?」
DM「すると、右ではバトルの気配が濃厚で、左は腐臭めいた香りがしたでごわす。お勧めは左でごわすよ。右はバトルの際に、剣が欠けて、攻撃力が1点減らされるペナルティー付き、という天啓を得たでごわす」
ローレス「普通は、好き好んで腐臭を調べたいとは思わないんだが、右がペナルティー付きと聞いたからには、左が正解なんだろうな。親切な神さまに感謝の祈りを捧げて、左へ向かう」
なお、原作のガスコインは、左右のどちらがいいか、という判断材料を与えてはくれない。
左も右も、「どちらも真っ直ぐで薄気味が悪い」というだけで、ろくな判断材料もなく、左右を選ばされるのだ。
リビングストンの『死の罠の地下迷宮』が傑作とされる理由の一つに、ダンジョンの道を選択するに際して、手がかりとなりそうな情報をくれるという点が挙げられる。つまり、プレイヤーに考える余地を与えてくれるのだ。
しかし、そういう判断材料のないゲームブックでは、ただのランダムな当て物でしかなく、行き当たりばったりの攻略になるわけで、選んだ先のサプライズを楽しめ、という作品になる。何が起こるか予測不能のランダム運任せなダンジョンと、ある程度は先の展開を予想しながら推理の余地のあるダンジョンで、どちらが面白いか? と問われたら、後者を推す。
よって、ガスコインのダンジョンを面白く描写するコツは、ゲームブック原作にない事前情報を、ダンジョンマスターが与えてくれるように改変するといい。先の予測をしながら、当たりか外れかの結果を見極めるのは、何も考えずにテキトーに左右を選ぶよりも、知的遊戯としての面白さが違ってくる、と主張してみる。
なお、ガスコインのゲームとしてのつまらなさ(知的遊戯としての未成熟)に対して、長所を挙げてみると、文章による細やかな雰囲気作りの妙が挙げられる。これは、初期のジャクソンやリビングストンの作品が、ゲームとしての面白さを重視して、描写そのものは割とシンプルで分かりやすいのと対比できるが、元々、FFシリーズは低年齢層向きのパフィンブックスで出版されていて、過剰な装飾に満ちた文章描写は、多くの子どもたちにウケが悪い。よって、初期の作品(10巻ぐらいまで)はシンプル・イズ・ベストで、ゲームに必要最低限の文章しか記されていない。
これが年長向きの『ソーサリー』になると、ジャクソンも読者層を意識して、凝った文章、雰囲気作りの文章を描写してくる。これはまた、リビングストンも意識してくるようで、『雪の魔女の洞窟』になると、表現がなかなか凝ってくるし、そこから新人作家が増えてくると、ゲーム性も重要ながら、小説風のキメ細やかな文章描写が増えてくる(10巻代)。
そして、20巻代になると、ジャクソンの『モンスター誕生』に前後する辺りで、個性的な主人公設定にも合わせるように、小説風の描写がますます増えてくる。もはや、児童向きというレーベルを無視するかのように、物語も陰鬱性を増すし、明朗快活な陽性ファンタジー冒険譚ではなくなって来る。
ガスコインの作品も、過酷な戦場のドギツい描写から始まり(ここは作品の個性)、広がる荒野やジャングルのスリルに満ちた冒険譚に展開し(ここが面白い)、そして陰鬱なダンジョンに至るわけだが、ダンジョン部分は雰囲気作りこそ濃厚だけど、ランダム性が強い割に、結果が当たり外れのシンプルな当て物構成になっていて、大人向きなのか子ども向きなのかチグハグな面がある。
映画的な描写だけど、展開そのものはさほど派手ではなく、荒野やジャングルの開放感もないため、こういう閉塞的な場面を面白く描くコツは、当時のガスコインさんは未成熟だったのかな、と思う。これがジャクソンなら、パズル性が濃厚で凝った仕掛けを用意してくるだろうし、リビングストンなら単調なダンジョンを面白くするために、仲間キャラ(NPC)を登場させて、会話とのやり取りでダンジョン突破に変化球を混ぜて来る(その過程で、仲間を殺したり、退場させることで、出会いと別れのドラマを演出)。
ガスコインさんは、NPCを登場させたけど、それはダンジョンの外のみ。せっかくのダンジョン案内役のラスカルも、ダンジョンに入る前と出て来た場面で登場するだけで、掘り下げることはしない。あくまで、独りきりの英雄の試練という形でダンジョン描写をするのみで、FFシリーズも30巻を越えた辺りで、ダンジョン物も飽きたと思われかねない時期(そこを面白いダンジョンに仕立て上げた名手が、FF34巻以降のキース・マーティンなんだが)。
まあ、攻略記事であり、かつ作品批評という形を意識しているのだけど、ガスコイン唯一のゲームブックの長所(タイタン世界のダイナミックさ、歴史の重要エピソードを背景にした重厚さ)と、短所(文章描写力に反して、ダンジョンという素材のゲーム性が小慣れていない)を挙げてみた次第。これがゲームブック作家としての処女作なので、そこから成長していく流れなら面白いんだけど、ガスコインさんはゲームブック作家よりも編集者の方に才覚を示していったからなあ。まあ、ダンジョン作りよりも、小説執筆とか編集作業の方でFFシリーズを下支えしていった方だから、ことさらに欠点をあげつらうのもどうかと思うので、この辺で。
左の通路(パラグラフ267)
DM「下り坂は、急に階段に変わるでごわす。思うに、ここはあまり使われることのなかった通路のようで、慎重にバランスをとりながら、螺旋階段を下っていくこと数分して、そこそこの大きさの部屋に到達したでごわすな」
ローレス「左へ進むと、いきなり下り階段を降りさせられて、階下の部屋か。せめて、階段を降りる前に選択肢が欲しかったな」
サマルト「だけど、部屋には腐臭がするんだよね」
DM「じっさいに鼻に来るのではなく、テラク神が見せたイメージでごわす。この部屋にあるのは、壁に古代の歴史を説明したような絵図が、浮き彫りにされていて、中央には太陽神のシンボルを形どった祭壇が設けられている。歴史学者にとっては貴重かもしれないが、2人の興味を惹くようなものは何もない。出口は2つあって、1つはボロボロのカーテンがかかった通路。腐臭のイメージはそちらから。もう1つは蝶番が半分壊れかけた鋼鉄の扉だが、そちらに進むと、運だめしに失敗したらバッドエンドの気配がした」
ローレス「テラク神、過保護すぎるだろう! ええと、正解は腐臭の方ってことなのか。好き好んで入りたいとは思わないけど、バッドエンドよりはマシだ」
DM「では、ボロボロのカーテンを剣で片寄せて、中に入ると、そこは地下墓所ということが分かったでごわす。両側の壁が削られて、何十もの棚が設けられて、各棚に一つずつ白骨化した死体が納められている」
サマルト「白骨化しているなら、もう腐臭はしないはずだよね。腐臭は、肉などの有機物が腐敗・分解するときに生じるものだから、ゾンビならともかく、スケルトンには腐臭はしないと思うんだけど」
DM「そ、それは……別に腐臭云々はガスコインさんが描写しているのではなくて、吾輩が勝手に地下墓所のイメージででっち上げた描写でごわす。ええい、腐臭はなし。とにかく、テラク神が死者の雰囲気をほのめかすようなイメージを示したってことで」
ローレス「まあいい。死者の眠りを覚ますな、とアンデッドが起き上がって来るような気配は?」
DM「いろいろと凄惨な想像を思い浮かべるけど、ここはテラクの聖地たる街の跡なので、神の加護にかけて亡者が化けて出るようなことにはならないでごわす。テラクの祝福をなめるな」
サマルト「なるほど。きちんと埋葬された死体なので、邪神が弄ったり、どこかのネクロマンサーが実験したりしない限りは、死体が自然にアンデッドになったりはしない、と」
DM「ここでアンデッドが発生すると、もはやテラクの加護が失われたということでごわすからな。あまり気分の良くない場所ではあるが、安心して先へ進むでごわす。まあ、地震か何かで棚が崩れて、ところどころドクロや骨が通路に転がっているでごわすが、何も危険はないことは保証しよう」
ローレス「つまり、雰囲気づくりの描写が長々と続くだけで、ゲーム的なイベントは何もない、と? 確かに、それだとつまらないな」
リバT『ええ。この何も事件が起こらない地下墓所の思わせぶりな描写だけで、パラグラフを4つも使うのがガスコイン流と言いましょうか。「調べてみますか?」「目ぼしいものは何も見つからなかった」「あれこれ危険を脳裏に思い浮かべたけれど、結局、何も起こらなくて無事に部屋を出ることができた」という類のパラグラフが多いダンジョンをどう思いますか?』
サマルト「無駄にパラグラフを浪費していると思うね。ゲームブックで『調べる』『何も見つからない』を連発させるのは、クソゲーだと思うんだ」
リバT『選択肢の重みというのがあって、わざわざ「調べる」という選択肢があるなら、その結果としてアイテムや手がかりが発見できたり、仕掛けられた罠で悪い結果が生じたり、何らかの結果イベントがあって、ストーリー密度を高めるのが良いゲームブックのデザインテクニックだと考えます。一方で、「調べたけど何もないハズレの選択肢」は古いアドベンチャーゲームでありがちだし、面白いゲームブック作家は仮にハズレの結果であっても、面白いネタを文章に仕込んで、ハズレだけど記述は面白いと思わせがちですが、そういう芸の持ち合わせは当時のガスコインさんにはなかったようで、このダンジョンは規模の割にハズレ選択肢がやたらと多い作りになっているのです』
ローレス「だったら、この地下墓所はさっさと通り過ぎて、先へ進むとするか」
DM「パラグラフ323番からの出口は3つ。正面のトンネル(67)と、左右それぞれのアーチ型天井の先の通路(125と41)でごわす」
サマルト「判断材料をくれないかな?」
DM「正面からは落盤と蛇の匂いがする。左は武器や甲冑の匂いがする。右はガレキを掘るけど、何もなくて無駄足だった匂いがするでごわす」
ローレス「無駄足だった匂いって何だよ!?」
DM「まあ、例によって『調べる』『何もない』『行き止まりなので、他の選択肢を選べ』という無駄パラグラフでごわすな。このダンジョンは、そういう展開があまりに多くて、リアルなダンジョン探索って確かにそういうものかもしれぬが、少しイベント密度が低すぎると思う」
リバT『迷路だと、行き止まりが多くて、そういう行き止まりを逐一チェックしながら、正解ルートを探すことも多いのですが、ガスコインさんのダンジョンは、文章描写がやたらと濃密なので、ドキドキ読むのに夢中になると、思わせぶりで何もない、という結果になりがち。そして、そういう部分を読み飛ばすと、非常に中身がスカスカなダンジョンになるという』
ローレス「……気を取り直すために、選ばなかったIFルートを探ってみるか」
ここまでのIFルート
DM「では、IFルート第1、最初に右へ進んだパラグラフ171番でごわす。そちらは大きな両開きの扉があって、いかにも王道ルートのような感じがするでごわすな。そして、扉を抜けた先の大きな部屋の出口の大扉の脇に、壊れた衛兵の彫像が立っていて、2体が襲いかかって来るでごわすよ」
ローレス「バトルって言っていたもんな」
DM「壊れた彫像(頭がなかったり、左腕がなかったり)の能力値は、技6、体4と、技5、体5となっていて、『何人たりとも、この先は通さん!』と襲いかかって来るでごわすが、弱いのであっさり倒されるでごわそう」
サマルト「こいつらに苦戦するようじゃ、ミュータント・ワニに勝てるはずもないもんね」
DM「ザコ衛兵像が厄介なのは、石でできているのを剣で粉砕したために、戦闘後に刃こぼれして、攻撃力マイナス1のペナルティーを負うことでごわす」
ローレス「弱いのに、いやらしい結果になるのか」
DM「その次のイベントは、パラグラフ153番。大ナメクジの間でごわす」
サマルト「ナメクジかあ。嬉しくはない相手だね」
DM「ナメクジのことはさておき、次に左ルートから腐臭じゃない方の扉を開けた場合」
ローレス「確か、運だめしに失敗したらバッドエンドという選択肢だったな」
DM「運だめしに成功したら、それが底深い古井戸だったことに気づいて、ギリギリ踏みとどまるでごわすよ。そこで引き返して地下墓所に進むか、古井戸を飛び越えて(技術点判定)、成功したら大ナメクジの間に行き着けるでごわす」
ローレス「……構造が分かりにくいな。マッピングしてみると?」
リバT『ここまでは、こんな感じですね』
●カーネク地下ダンジョン
?
l ? ?
? l 行き止まり l l
lー地下墓所ーl 古井戸→ナメクジの間
l / ↑
墓所前礼拝室←ーー→衛兵像2体
l
入り口
ローレス「左が地下墓所ルートで、右がナメクジルート。右側に行くには、攻撃力マイナス1か、運だめし失敗によるバッドエンドリスクがある。地下墓所は今のところ、リスクなしで行き着けるから、雰囲気のダークさに反して最適解ということになる、と」
地下墓所の先(パラグラフ323)
DM「それでは、地下墓所からの続きでごわす」
ローレス「道は3択。右が行き止まりで、結局、真ん中か左ってところだが、左が武器と甲冑の匂いと言っていたな。そっちに進むと?」
DM「戦士の石像が多数並んでいる大広間でごわす。1000対の目という表現から考えて、ざっと500体の石像と見受けられる。これが一斉に動き出したなら、確定的にバッドエンドになるでごわそうが、そういうことにはならず、部屋の出口から先に進むと、さらにもう一つの部屋があって、出口の通路が左右に分かれているでごわす(左は385、右は357)」
サマルト「500体の石像の部屋と、もう一つ先の部屋から出口は2つ。少し記述がまどろっこしいね」
リバT『普通、こういうのって1パラグラフで1つの部屋を描写するものですけど、パラグラフ160番って、たった1つで2つの部屋を描写していて、フローチャートと部屋ごとのマップが一致しなくなっているんですね』
DM「なお、当たり外れで言うなら、石像部屋は外れでごわす。そちらに行くと、〈テラクの腕〉たる聖剣は入手できず、敵が先に見つけ出すでごわす。よって、ゴッドネスとしては、引き返して真ん中を選べ、と思念を送るでごわすよ」
ローレス「落盤と蛇が正解なんて、ヒントがあっても分からねえよ。とにかく、神に導かれるように、真ん中のトンネルに入る」
DM「狭いトンネルに這いずるように入ると、突然、床が抜けて、下の部屋に落ちてしまったでごわす」
ローレス「うおっ、神に導かれた結果がこれかよ」
サマルト「ボクもいっしょに落ちるのか?」
DM「そう……(少し考えてから)いや、落ちたのはあくまでローレスだけでごわす。パラグラフ19番の記述によれば、落ちた衝撃でランタンの火が消えて、真っ暗闇になったとあるが、ここではサマルトとはぐれたから、真っ暗闇になったと解釈しよう」
ローレス「ええと、下に落ちたオレは無事なのか?」
DM「怪我はない。ただ、暗闇なので何も見えない。手探りで辺りを探ると、何か鱗のようなものに触れて、シャーッと威嚇するような鳴き声がして慌てた」
ローレス「悪夢を思い出すぜ。こいつは蛇っぽいな。おおい、サマルト〜と声を上げるぞ」
サマルト「無事ですかあ?」
ローレス「無事は無事だが、何も見えない。ランタンを持って、降りて来てくれ」
リバT『ところで、ローレス王子は明かりのガラス玉を持っていたはずですが、ここはそれを活用すべき時では?』
ローレス「おっと、そうだな。こういう時に活用せずに、何のための親父の遺産だよ。よし、明かりよ、灯れ」
DM「ゲームブックの記述だと、慌ててランタンの火をつけ直すと書かれてあるが、ここはガラス玉を使う方が格好いいので、そうするでごわす。部屋が明るくなったので、たちまち状況が分かる。正面の壁に出口の扉が開いていて、一方、部屋の片隅にはボロ布とガラクタが積まれている。ボロ布の中からは、〈黄金の剣〉らしい霊気を感じて、我を手にしろ、と話しかけて来るようでごわすが、その前に立ちはだかるのが〈墓場のクサリヘビ〉という黒い蛇の群れでごわす」
ローレス「どうやら、このヘビの群れを退治しないと、〈黄金の剣〉が手に入らないらしいな。能力はどうなってる?」
DM「選択肢によって、変わって来るでごわす。ボロ布を無視して、出口から逃げ出そうとするなら、ヘビが邪魔してきて、技8、体11になるでごわすが、勇気を出してボロ布を入手しようとすると、神の加護で技7、体6に弱体化する仕様でごわす」
ローレス「いろいろヒントをもらったが、とにかく逃げちゃダメだ、ボロ布の中の〈黄金剣〉を入手するために戦えってことだな。じゃあ、戦ってやる」
サマルトがいないので、技術点11で戦ってみたが、難なくヘビを撃退。そして、目指すテラクの遺産、腕たる〈黄金の剣〉を入手した。運点が2点加算されて、10点まで回復。
ローレス「よし、これでダンジョンの目的の一つを達成だ。サマルトに降りて来いよ、と呼びかける」
サマルト「王子の喜び勇んだ声を聞いて、安心して降りて行きます」
ローレス「勇気を出してヘビを倒したら、目的の剣をゲットしたんだ」
サマルト「本当に? どんな凄い性能を秘めているんですか?」
DM「見た目は精巧な作りで、年月を経ても劣化することなく美しさを保っているが、取り立てて力は感じられない。ただ、柄の先に2つの丸いくぼみがあって、何かの宝石みたいな物を差し込むようになっている……ような気がした」
ローレス「ということで、この剣に差し込む宝石、〈テラクの目〉を後は見つけるだけだ」
DM「それでは、黄金剣入手のパラグラフ106の次は、出口の通路が左と真っ直ぐに分かれているでごわす(左は385、真っ直ぐは357)」
サマルト「ん? その数字はさっき聞いた覚えがあるけど?」
DM「分岐していたルートが収束するでごわすな。また後でマッピングを示すでごわすが、今は左右のどちらかを選ぶがよい」
サマルト「よし、〈テラクの目〉は宝石だったよね。宝石の匂いはどっちからする?」
DM「サマルト公子は、宝石の匂いなんて分からないはず」
サマルト(ダイアンナ)「でも、中の人(プレイヤー)は宝石マニアだからね。魂の奥から宝石を求めるんだよ。カニコングが触手にこだわるように」
DM(カニコング)「ううっ、吾輩の触手愛に匹敵するほどの宝石愛でごわすか。ならば、それに応えるのが愛を知る者の道。やむを得ぬ。宝石の匂いは真っ直ぐな方から感じられる。左からは、またもや腐臭でごわす。今度はガスコイン氏の文章にきちんと書かれたリアル腐臭、正真正銘の腐臭でごわす」
ローレス「とにかく、宝石と腐臭だったら、宝石を選ぶ。誰に聞いても、そう答えるに決まっているだろう。パラグラフ357番に進む」
DM「すると、真ちゅうで縁取られた大扉に行き当たったでごわす」
ローレス「扉を開ける」
DM「引き扉だが、取っ手が破損していて外からは開けにくいでごわす」
サマルト「押し扉なら、蹴り開けるという手もあるのにね」
ローレス「剣で扉を叩き壊すことはできそうか?」
サマルト「扉の縁は金属製だけど、扉そのものは木製だといいかも」
DM「いや、さすがに木の扉だと長い年月で朽ちていそうなので、石扉ということにしておくでごわす」
ローレス「硬くて丈夫な扉だが、ハンマーがあれば叩き割れないかな」
DM「ハンマーなんて持ってないでごわす」
ローレス「う〜む、〈テラクの腕〉の異名を持つ黄金剣なら、何とかならないだろうか?」
DM「試しに鞘から抜いてみると、淡い光を放っているようにも見受けられる」
ローレス「おっ、剣に何やら秘めたる力が? ならば、扉の前で剣を振りかざして、『テラクの名にかけて、扉よ開け』とかテキトーにそれらしいことを言ってみる」
DM「扉は反応しないが、扉の向こうの部屋で何やら金属をこすり合わせるような音が聞こえる。その後、ガシャガシャという音が扉に近づき、向こうからガンガン鈍器で叩きつけるような音が響き渡るでごわす」
サマルト「どうやら、何かの眠りを覚まさせたみたいだね。少し下がって、警戒した方がいいのでは?」
ローレス「向こうから押し破ってくれるなら、助かるってもんだが、何が飛び出して来るかは分からないので、武器を構えるぞ。〈テラクの腕〉の威力を確かめてみるのに、ちょうどいい」
DM「今のところは、特にボーナスのない普通の剣でごわす。とにかく、警戒の目で扉を見ていると、やがて打撃に耐えられなくなった扉に亀裂が走り、一度ひび割れると、たちまち脆く砕け散る。力づくで扉を打ち破ったのは、古代の黄金鎧を身にまとい、エメラルドをはめ込んだ王冠をかぶった巨漢戦士、その名を戦士王。手にした武器は、長大な斧槍(ハルバード)で、その瞳は赤く爛々と輝いている。地獄から甦ったかのような重く低い声を轟かせ、『外からの侵入者よ。守護の誓いに則り、聖都を守るために成敗いたす』と宣言する」
ローレス「話し合いが通用する相手じゃないよな」
DM「戦え。これが戦神の試練なり……とテラク神の思念も伝わって来るでごわす」
リバT『ゲームブックにない演出を、カニコングさんが勝手にいろいろアレンジしておりますが、より劇的な展開を目指しているようですので、それに乗ってくださいませ』
ローレス「ならば……ここはオレ1人で挑むのが筋ってものだろう。サマルトは下がって、見守ってくれ。技術点はオレ本来の11で戦う!」
戦士王の試練
リバT『それでは、カニコングさん演じる戦士王と、アストさん演じる〈最後の戦士〉ローレス王子の決戦です。ラスボス戦ではありませんが、事実上のクライマックスとして演出したいと思います』
なお、戦士王のデータは、技術点10、体力点11。
決して最強ではないが、結構な強敵と言える。本作は、技術点の変動があまりなく、基本的には最初に決めた能力値のまま最後までプレイすることになる。
ここで〈テラクの腕〉でボーナスが付けば、盛り上がるのだと思うが、どうもガスコインさんはこの伝説の武器を、ゲーム上でのデータではなく、ストーリー演出のためにしか使ってくれない。
その辺が、ゲームブックとしては残念なんだけど、本攻略記事では〈テラクの腕〉を原作以上に過剰に演出することで、個人的な不満点を払拭したいと考えるのであった。

●1ラウンドめ:戦士王17VSローレス16。ローレスの負けで、残り体力18(サマルトが加勢していないので、原体力点は20点と見なす)。
戦士王(カニコング)「侵入者よ、汝は弱い。その剣にふさわしくはない」
ローレス「まだまだ。たかがかすり傷を与えたぐらいで、調子に乗ってるんじゃねえよ」
●2ラウンドめ:戦士王14VSローレス13(ピンゾロ)。ローレスの負けで、残り体力16点。
戦士王「どうした? 剣の重さに振り回されているのか? おとなしく剣を捨てて立ち去れい。汝に資格はない」
ローレス「くっ、テラク神よ。オレを〈最後の戦士〉に選んだんじゃないのか? どうして剣が逆らう!?」
リバT『自分のダイス運の悪さを、剣のせいにしないでくださいませ』
サマルト「まあ、剣に認めてもらうための試練ってことだね。頑張れ、王子」
●3ラウンドめ:戦士王19VSローレス13(もう1回ピンゾロ)。ローレスの負けで、残り体力14点。
ローレス「マジで、この剣、呪われているんじゃないのか!?」
●4ラウンドめ:戦士王14VSローレス18。戦士王の負けで、残り体力9点。
ローレス「ふう。ようやく一撃入れられた。よし、だいぶ、剣の重さに馴染んで来たってことだな。今までのはウォーミングアップの練習ってことで、ここからが本番だ!」
●5ラウンドめ:戦士王15VSローレス18。戦士王の負けで、残り体力7点。
●6ラウンドめ:戦士王15VSローレス17。戦士王の負けで、残り体力5点。
●7ラウンドめ:戦士王17VSローレス18。戦士王の負けで、残り体力3点。
●8ラウンドめ:戦士王15VSローレス18。戦士王の負けで、残り体力1点。
ローレス「よし。これで〈テラクの腕〉を自分の手のように使いこなせるようになった」
戦士王「ムッ。この男、もしや本当に……? ならば、我が全身全霊をこめた一撃、受けられるか!」
●9ラウンドめ:戦士王21VSローレス17。ローレスの負けで、残り体力12点。
ローレス「くっ。さすがは戦士王の称号を与えられるだけはある。しかしッ!」
●10ラウンドめ:戦士王16VSローレス22。ローレス王子が必殺の一撃で、勝利を飾る。
戦士王「バカな。我が全身全霊をも上回るだとッ!? ……侵入者よ、名を何と言う?」
ローレス「ヴィモーナ国王アレクサンドル2世が一子、ローレス・アレクサンドル・ヴィモーナだ」
戦士王「ヴィモーナという名は知らぬが、そなたのような戦士を生み出すとは、さぞ武門の誉れ高き国なのだな。テラク神の剣を継ぐに値するほどの。ローレス王子、そなたに〈戦士王〉の称号とともに、我が宝冠を託すとしよう。我が守護者の任務はこれで果たせり」
力を使い果たした戦士王の鎧は、黄金の輝きを失い、その肉体とともに赤く朽ち果てて行った。

後に残されたのは宝冠一つのみ。朽ち果てていく冠の中にあって、その中心に装着されたエメラルドだけが、不滅の光を煌々と放っていた。
DM「宝冠の中心にあった1つのエメラルドは、中央で割れて、半球形の2つに分かれるでごわす。それぞれが〈テラクの腕〉の柄の2つのくぼみに差し込めるようになっているが、今はまだ装着すべきではないと感じる。〈テラクの目〉を付与した黄金の聖剣は絶大な力を発揮するので、ここぞという時まで真の能力を発動してはならない、と神の意思が伝わって来るのでごわすよ」
ローレス「クライマックスまでお預けってことだな。だったら、エメラルドはオレとサマルトで1つずつ大事に持っておこう」
サマルト「聖剣の真の力を発動するには、ボクたち2人の同意が必要ってことだね」
リバT『ともあれ、これで〈テラクの腕〉と〈テラクの目〉という2つの神の遺産を入手しました。このダンジョン探索の目的は、これで果たした形になるので、後は出口を探して脱出するのみですね。もちろん、他の種類の宝石も見つかりますので、それを探すのも一興ですが、速やかな攻略のためには、余計な寄り道をしないことを勧めます』
ローレス「まあ、出口を探す途中で、IFルート的に攻略すればいいかな、と」
DM「では、ダンジョンの残りイベントは次回の記事に回して、攻略最終回を目指すでごわす」
●戦士王を倒して神剣の戦士となったローレスwithサマルト(パラグラフ197)
技術点12
体力点17/21
運点10/11
食料:3食分
所持品:背負い袋、剣、ナイフ、明かりのガラス玉、ランタンと油、火打ち石、ロープ、テラクの腕(黄金剣)、テラクの目(エメラルド)
(当記事 完)