ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

『主人公はキミだ』の感想(その1)

遅ればせながらの購入報告

 

 

NOVA『先日、入手したファイティング・ファンタジーの歴史本なんだが……』

 

アスト「おお、どんな本だ?」

 

NOVA『ページ数が300ページ越えで、とにかく凄い本だ。同梱の日本史版が50ページ越えだから、単純計算であの4回に渡って連載された記事の6倍ほどのボリュームがある。とりあえず、今、読んでるのが150ページほどで、パフィンブックスのFF展開が終了して、ウィザードブックスによる展開が始まった辺り。年号的には2002年だな』

 

ダイアンナ「それはFF20周年だね」

 

NOVA『パラグラフ190番のタイトルが「目立たなかった20周年」となっているな。ウィザードブックスの方針で、新世代の児童層に対しては「古い本ではなく、今の時代の新しい本として読んでもらいたい」との意図らしい』

 

リバT『ああ、FFといえば懐かしいと感じる大人世代ではなく、新たな客層へのアピールを目指していたわけですね』

 

NOVA『そもそも、ウィザードブックスというのがFFを復活させるために立ち上げたブランド名だったらしい。いずれにせよ、1995年の「ミイラの呪い」で途絶えたFFゲームブックが復活するに当たって、シリーズ公式サイトが立ち上がったり(パフィン時代と違って、インターネットの時代に突入していたからね)、新世紀のFFはファンの活動がいっぱい後押ししていたのも間違いないな』

NOVA『ここまで読んできて、自分が知らない情報がいっぱいで非常に面白く読めているわけだが、ウルトロピカルでの最近の話題からして、マーク・ガスコインの「最後の戦士」に関するネタを一つ。本当は、彼も他のゲームブックを書きたかったんだけど、他の作家のFFゲームブックの編集作業がメインの仕事になってしまって、そちらに忙殺されたから書けなかったらしい。

『彼が書こうとした2冊めのタイトルは「怪物の夜(Night of the Creature)」というもので、魔法使いの薬で体が小さくなった主人公が、小人状態で敵の塔の探索を頑張る内容らしい。これをパフィンブックスのFF61巻として書こうとしたら、59巻で打ち切りになって、幻の作品の一つになったとか』

 

アスト「もしかして、未訳FFだけでなく、未発売のFFの話まで載っているのか?」

 

NOVA『ああ。パラグラフ158番から181番までの24項目にかけて、ボツとなったFFのアイデアがいっぱいだ。ボツになった理由はいろいろだが、本書の著者のジョナサン・グリーンのボツ作品「ストームチェイサー号の伝説」も面白そうだなあ、と』

 

ダイアンナ「どんな内容なんだい?」

 

NOVA『お馴染みのロガーン様から、世界を危機に陥れようとしている悪の魔法使いマンブレスを止めるようにと使命を与えられたヴィンハイム王の主人公が、〈ストームチェイサー号〉という船に乗り込み、仲間の船員と共に冒険する話。仲間たち(バーバリアンの用心棒、女戦士ワルキューレ、ドワーフ、射手、吟遊詩人など)はそれぞれ固有のスキルをもって、主人公を助けてくれるシステムらしいが、あらすじと最初の100パラグラフまで書いて、編集者のガスコインに見せたら、ボツをくらったらしい』

 

アスト「ボツかよ」

 

NOVA『ガスコインさんは、グリーンのもう一つのアイデア「ブラック・スカル号の海賊たち」の方が気に入ったようで、それが「ブラッドボーンズ」と題名を変えて、60巻になる予定だったのが、パフィンブックスでは出版できなくなって、後にウィザードブックスから61巻めとして陽の目を見ることができたという』

 

ボツ企画の話

 

NOVA『ここまで読んだ中で、面白い記事はいろいろだが、中でもツボだったのが、ボツ作品のエピソード群だな。例えば、「最後の戦士」の後のヴィモーナの物語を、デイブ・モリスとジェイミー・トムソンのコンビが「死のダイナソア」という題名で書こうとしたらしい』

 

アスト「続編の企画があったのか」

 

NOVA『それによると、ヴィモーナが解放された後、ペリエル女王から宮廷騎士の主人公が使命を授かる。トカゲ兵士の部隊が新たな恐竜騎士団を編成して、ヴィモーナに再び襲撃を目論んでいるので、それを阻止するために、白骨平原の向こうのマグマ亀裂に誘い込んで、始末するように作戦が立てられたわけだな』

 

ダイアンナ「でも、ボツになったんだね」

 

NOVA『結局、いくつもの企画案がボツになって、選ばれたのがFF43巻の「死霊王の砦」だったという。モリスとトムソンのコンビのボツアイデアが6作品もあって、あらすじを読む限りでは、いろいろ面白そうだけど、パフィンブックスにボツをくらった後、別の出版社から(FF以外のゲームブックとして)出たものもあったそうで、こういうのを読むと、「アイデアの引き出しをたくさん提示できる作家」というのが、実らずとも敬意に値するなあ、とか。

『ジョナサン・グリーンも、ここぞとばかりに自分のボツ企画をいっぱいお披露目していて、その一つが「ダークストームの復活」。ザゴール、バルサス、ザラダンの悪魔の3人の師匠であるヴォルゲラ・ダークストームの復活を描いた物語なんだが』

 

アスト「ボツにするには勿体無い話だな」

 

NOVA『他には、「火吹山の君主」といって、ザゴールが主役で火吹山の魔法使いの座をつかみ取るまでの戦いを描いた物語とか、「魔法大戦」を描いた3部作構想とか、とにかくいろいろと野心的な企画案をいっぱい提出した結果、ジャクソンの40周年記念作「サラモニスの秘密」で執筆を手伝いながらのアイデア出しがまた面白い』

 

ダイアンナ「『サラモニスの秘密』とは、また話が飛んだねえ」

 

NOVA『パラグラフ181から、393番へリンクが張られているからな。『サラモニスの秘密』には、ハマカイのノレス・ジャナゲン(Noreth Janagen)というキャラが登場するんだけど、これがジョナサン・グリーンのアナグラムだって今さっき知って、へえって感心している。

『で、完成品に至る前のジャクソンとグリーンのアイデア出しがあって、グリーンは昔、ボツになった「ダークストームの復活」はどうか、と提案したら、ジャクソンの方は「バルサスの要塞」の続編で、その時の主人公がバルサスを倒した後、苦難の末に要塞から帰還して、師匠のヴァーミスラックス・ムーンチェイサーの魔法学校に引き返した後の物語を提案したりもしながら、紆余曲折の末にああいう話にまとまったらしい』

 

アスト「裏話がいろいろだなあ」

 

スティーブとイアンのその後

 

NOVA『他に自分がツボった話は、パラグラフ102から114番までの、ジャクソンとリビングストンがFFゲームブックから離れていた時期の活動エピソードだ。ジャクソンが小説「トロール牙峠戦争」を書いてから、90年代の活動。およびリビングストンのFFゲームブック以外の活動(90年代からゼロ年代)について記されている。ネット上の断片的な記載から彼らが関わった作品や企業名は分かっていたけど、より詳細な記述や、その成果、後々の影響などが語られていて、ゲーム業界のビジネス面での経営アドバイザーぶりとか、後進の育成とか、ゲーム作りが情報通信教育に与える影響を国の教育大臣に提案した話とかが発展して、最近のリビングストン・アカデミーの開校(2021年9月)につながっている』

 

アスト「マジかよ。単にゲームの話を飛び越えて、すごいことになってないか?」

 

NOVA『サーの称号は伊達じゃないってことだな。リビングストンはイギリスを代表する文化人であり、経済人ということになっているみたいだ。ゲームというのがただの趣味娯楽ではなくて、文化であり、子どもたちの情操教育にも影響し、情報通信面で社会の発展にも寄与することを訴えかけているわけだな。後半部分はまだこれからじっくり読む段階だが、ファイティング・ファンタジーというゲーム本の歴史を読んでいるつもりが、そこからデジタル方面への広がりとか、21世紀に入ってからのファン活動の広がりとか、40周年という歴史の中での世代を越えた冒険文化の継承とか(トールキンやハリー・ポッターがベストセラーになる国の伝統があるわけだし)、オタク的な閉鎖性とは異なる受容のされ方が読んでいて心地良くもある』

 

ダイアンナ「日本じゃ考えにくい現象だね」

 

NOVA『ドイツもそうだけど、ボードゲームやファンタジー文学を国の重要文化と見なしてきた伝統があって、子どもの遊びとバカにしない風潮があるのかな、と思う。もちろん、ジャクソン上げ、リビングストン上げのために、グリーンが話を大げさに盛っている可能性もあるけど、それでも事実に基づいた部分はあるわけだから、ゲームとファンタジー文化というものが日本よりも根付いているんだろうなあ』

 

目次的なもの

 

NOVA『本書は、ゲームブックみたいなパラグラフ形式で、多くのFFゲームブックのように400番がゴールになっている。それとは別に、第1章から40章までの章構成にもなっているんだけど、各章の目次がないのが残念なので、自分で作ってみることにする』

 

  1. 火吹山の始まり(パラグラフ1〜7):ジャクソンとリビングストンの生い立ちから、ゲームズワークショップの設立、『火吹山の魔法使い』の執筆開始までの経緯を紹介。
  2. 火吹山の魔法使い(8〜15):『火吹山の魔法使い』の完成までの流れ。
  3. 火吹山の大流行(16〜19):『火吹山の魔法使い』が大ヒットしたので、すぐにシリーズ化が求められて、ファイティング・ファンタジーというシリーズ名も決定(リビングストン案)。続いて、『バルサスの要塞』『運命の森』の執筆背景とか裏話とか。
  4. 火吹山の絵画(20〜30):ラス・ニコルソンやイアン・マッケイグ他のイラストレーターの紹介をしつつ、『盗賊都市』『死の罠の地下迷宮』『トカゲ王の島』までを紹介。
  5. 火吹山の大魔王(31〜36):『ソーサリー』シリーズの話。
  6. 火吹山の拡大(37〜46):FFシリーズを毎月刊行するために、パフィンブックスがジャクソンとリビングストン以外の作家を参入させ、2人の監修という形で広げることを決定。米ジャクソンの『サソリ沼の迷路』から『雪の魔女の洞窟』『地獄の館』を経て、『死神の首飾り』に至る。またゲームブックからTRPGに展開して、『SJのファイティングファンタジーRPG』『モンスター事典』『タイタン』『謎かけ盗賊』までの紹介。
  7. 火吹山の地図制作者たち(47〜54):アランシアから広がる世界の地図作家の話と、『恐怖の神殿』『海賊船バンシー号』『深海の悪魔』の作品紹介。何よりも、アランシアの発展や、日本では見られなかったタイタン世界のカラーマップなどがあれこれ紹介されていて、とりわけビジュアル的に感慨深い章でした。
  8. 火吹山、宇宙へ!(55〜65):SF作品をまとめた章。『さまよえる宇宙船』『宇宙の暗殺者』『フリーウェイの戦士』『宇宙の連邦捜査官』『サイボーグを倒せ』『電脳破壊作戦』『ロボットコマンドゥ』『スターストライダー』『天空要塞アーロック』までの紹介。
  9. 火吹山の雑誌(66〜70):イギリス版『ウォーロック』誌の紹介。83年半ばから86年12月まで続いて、13号で終わったけど、日本版『ウォーロック』が63号まで続いたことも紹介している(86年12月〜92年3月まで)。
  10. 火吹山の向こうへ(71〜74):パズルブック『魔術師タンタロンの12の難題』『魂の宝箱と12の呪文』、および2人用ゲームブック『王子の対決』の紹介。
  11. 火吹山の物語(その1)(75〜93):FF20巻『サムライの剣』から39巻『怒りの牙』まで次々と紹介。35巻の『闇の短剣』以降の未訳分の解説がなかなか興味深く読めた(時期的には86〜89年の話)。
  12. 火吹山の年代記(94〜101):FF小説『トロール牙峠戦争』から『ザゴール年代記』までの小説紹介。
  13. 火吹山を離れて(102〜114):ゲームズワークショップ社の経営とFFシリーズの執筆で忙しかったジャクソンとリビングストンが、GW社をシタデル・ミニチュアの盟友ブライアン・アンセルに託して、経営から降りた後、90年代からゼロ年代の様々な活動について紹介。ボードゲームやカードゲーム、コンピューターゲームなど、いろいろなゲーム業界で活動の手を広げていた話が語られる。
  14. 火吹山の物語(その2)(115〜128):FF40巻『真夜中の恐怖』から49巻『サルダスの包囲』までの紹介(1989〜92年)。
  15. 火吹山の地下探検家(129〜134):アドバンストFFとサプリメント『ブラックサンド!』『アランシア』、さらに2011年以降のAFF2版の話まで紹介。
  16. 火吹山の10年間(135〜140):FF10周年を記念しての50作め『火吹山の魔法使いふたたび』と10周年イベントの話。
  17. 火吹山の物語(その3)(141〜149):FF51巻『アンデッドの島』から58巻『吸血鬼の復讐』までの紹介(1992〜95年)。
  18. 火吹山の若き王位挑戦者(150〜152):FFゲームブックが児童向きであることを忘れる発展を遂げたので、パフィンブックスは改めて児童向きゲームブックのシリーズを立ち上げる。それが『ゴールドホークの冒険』シリーズで、リビングストンが全4冊を執筆。だけど、ゲームブックの新たな盛り上がりを牽引できずに、パフィンはゲームブックの展開を終了することを決断する。
  19. 火吹山の崩壊(153〜157):FF59巻『ミイラの呪い』の話。その後、60巻以降を編集のガスコインと、新人FFゲームブック作家のジョナサン・グリーンが企画を立てていたのだけど、96年から97年の間、新作『ブラッドボーンズ』の刊行をパフィンブックスが延期した挙句、中止が確定。その後、1999年になって、パフィンはFF復刊の要望についても断念して、シリーズ著作権をジャクソンとリビングストンに返却し、FFは一度、終了することとなった。
  20. 火吹山の失われた物語(158〜181):FFシリーズの陽の目を見なかったボツ企画について紹介。
  21. 火吹山のゲームマスター(182〜185):ジャクソンのボードゲーム『火吹山の魔法使い』とリビングストンのボードゲーム『ザゴールの伝説』の紹介。
  22. 火吹山への帰還(186〜191):21世紀になって、FF20周年を迎える頃に、新たに立ち上げられたウィザードブックスがFFシリーズを復活させようとする話。同時にミリアドール社がD&D3版に基づくD20システムで、FFシリーズをRPGシナリオとして復活させようと動いた。2002年から03年に、FFが息を吹き返して新たな展開につづく。

(当記事 完)