ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

コンパニオンDMの道(その3 完結編)

今回は大人バージョンで進めようと思う。

そして早速だが、コンパニオンDMの道は今回で終了しようと考えた。

 

ハイラス「それはまた、どうしてでござるか?」

 

一言で言えば、ネタ切れだ。話をAD&Dや新世紀D&Dまで広げてから、改めてクラシックD&DのDMルールブックに戻って、さあ何を書こうかなと考えてみたとき、内容が薄いことに気づいたんだな。

 

ハイラス「それでも書けることはござろう。確か、ルールブックは全部で60ページあって、そのうち4分の1が領地経営に関するもの。残り4分の3もあれば、まだまだ話のネタはたくさんあるはず」

 

それが、4分の1はモンスターリスト、4分の1はマジックアイテムなどのお宝リスト。そして、そういう話はすでにサプリメントのモンスターマニュアルや、マーベラスマジックで記事書きしているんだよな。

 

これが「今度の新作のコンパニオンルールを買ってね」って商品宣伝記事なら、

「コンパニオンルールには、これまでのドラゴンより強いラージドラゴンやヒュージドラゴンなんて登場して、マジックアイテムも新作がいっぱいだ。また、武器に特殊能力を付与するためのランダムチャートも付いていて、剣以外に自由に特殊な武器を作ることもできる。フライング効果付きの斧をゲットすれば、トマホークブーメランを最初に放って、しかも3ラウンドの間、ファンネルみたいに自動的に攻撃してくれるので、戦士が自分で攻撃しながら自動武器の攻撃でダメージ上昇を図ることもできる。これで脳筋戦士の戦い方に幅が出るよね。マジックアイテムを駆使すれば、戦士だってヴァリエーション豊かなプレイが可能なんだ。さすがはコンパニオン」なんて書くことも可能だが。

 

ハイラス「それでも、十分ではござらんか」

 

いや、モンスター紹介とか、マジックアイテム紹介だけで一冊の本を作ることも可能なんだけど、単なるガイドブックでしかないんだよ。話として発展性がないというか、広がらない。

実際にプレイするなら、こんなモンスターを登場させようとか、こんなマジックアイテムがあるのか、とか考えるのは楽しいんだが、ゲームの歴史とか世界観を考えるのがメインの現状では、枝葉でしかないと考える。

「透明化の鎧」とか「精霊召喚の杖」とか実際にゲットできたらワクワクすると思うんだけど、こういう記事で読んでも、「ふうん」な反応にしかならないだろう。読むだけで、ネタとして面白かったり、想像が膨らむほどのインパクトあるアイテムでない限りはな。

 

そして、コンパニオンルールで最もキャッチーで、ワクワクする話のネタとして、俺は「多元宇宙」に関する記述を選んだんだが……

 

ハイラス「選んだんだが?」

 

ルールブックには、わずか3ページしか書いていないんだな、これが。

 

ハイラス「何と3ページとは!」

 

そして、例によって、「より詳しい内容はマスタールールを参照」と書いてはいるんだが……

 

ハイラス「なかったのでござるか」

 

一応、イモータルの道に関して少々触れてはいるんだが、大した分量ではない。もしかすると、イモータルルールでじっくり書いてあるのかもしれんが、少なくとも「コンパニオンルールのみでは多元宇宙については大して語れない」という結論になったわけだ。

 

ハイラス「そりゃ、わずか3ページではな」

 

そういうことで、我々は「多元宇宙について深く研究するためには、コンパニオンルールを卒業しなければならない」という段階についに至ったのである。

 

ハイラス「おお。すると、次からは新たな段階に飛躍するのでござるな」

 

そう。マスタールール、あるいはAD&D、もしくは他のシステムに順次、焦点を当てながら、多元宇宙の果てなき探求を目指したいな、と。

 

★コンパニオンルールにおける多元宇宙

たった3ページの概要を書くと、以下の通りになる。

・我々の住む物質世界のことをプライムプレーンという。
・プライムプレーンの外には、非実体の霊的な世界であるイサリアルプレーン(エーテル界)がある。
・イサリアルの外側には、地水火風の元素に満ちたエレメンタルプレーン(元素精霊界)がある。
・以上をインナープレーン(内次元)と呼び、その外側にはアストラルの海が広がっていて、さらなるアウタープレーン(外次元)がある。外次元には、神々やイモータル、デーモンなどの風変わりな世界があるのかも知れないが、詳細はマスタールールにて語る予定(結局、大して語られず)

まあ、こんなところだな。

後は、そういう異世界を探索するための魔法やマジックアイテムについて記したり、それらの世界のイメージ、また異世界で魔法を使った際の細かい変化(水の精霊界では、ファイヤーボールがあまり機能しないとか)について書かれているぐらいだな。
一番気の毒なのはドルイドで、「ドルイド呪文はプライムプレーンの自然の知識に基づくものなので、他の世界では役に立たない」とある。

ハイラス「それはドルイドいじめも甚だしいでござる」

本当だよなあ。
コンパニオンルールで、新職業としてドルイドを紹介しておきながら、多元宇宙の冒険ではドルイドは役に立たないなんて書くんだから。クラシックD&Dにおいて、ドルイドの扱いは欠陥ルールと俺が書いた理由が分かったか?

ハイラス「本当に、ドルイドをどう扱いたいのか、デザイナーの方針を疑うでござる」

一方で、AD&Dの方では、「ドルイドは元素精霊の専門家である」という方針に切り替わって、さすがに役立たずということはなくなったんだが。
それと一応、フォローしておくと、クラシックD&Dのドルイドだってクレリック呪文は使えるんだから、異世界で何もできないということはないからな。あくまで追加されたドルイド呪文が使えないだけだから、ターンアンデッドができず金属鎧が着れないクレリックとして振る舞えば問題ないわけで。

ハイラス「それでは結局、劣化クレリックであるのは変わらんでござる。クラシックD&Dのドルイドはまことに茨の道よ。私は新世紀の5版生まれで幸いなり」


★その他のコンパニオンDMルール

後は、特筆するようなルールはあまりないな。
マジックアイテムが破損する可能性とか、ゴーレムなどの魔法生物作成に関するルール以前のアイデア提案とか、毒に対するガイドラインとか、老化に関するガイドラインとか、マジックアイテム売買の手引きとか、そういう雑多な注意書きがいろいろ。
さらに、コンパニオンレベルのキャラクターやモンスターの命中判定表やセービングスロー判定表なんかが3ページに渡っていて、昔のゲームならではの未整理なシステムぶりを感じさせてくれる。

ハイラス「話を一気にまとめに入ったでござるな」

ああ。
最後に4ページほど使って、ミニシナリオが3本載っている。
このうち、最後のシナリオタイトルが「ブラックイーグル男爵領の陥落」というもので、クラシックD&Dの基本シナリオをプレイしてきた者には、なかなか感慨深かったり。
ベーシックレベルのルールブックでは、悪の魔術師バーグルというのが登場して、おなじみの敵として何度かやり合うことになるんだが、そのバーグルの背後にいるのがブラックイーグル男爵。
一方、プレイヤーキャラのスタートタウンがスレショールドの街で、そこから行動範囲を広げているうちにカラメイコス大公国という故国が提示されるのがエキスパートルール。そしてカラメイコスを侵略しようと、たびたび暗躍する敵対相手がブラックイーグル男爵というわけだな。
そういう宿命の敵が、とうとうコンパニオンルールの大規模戦闘ルールの試しプレイ用のシナリオで、撃退されるわけだ。何と言うか、ベーシックルールから始まる一つの物語がこれで終わるのか、という流れなんだな。

ハイラス「宿敵との決着でござるか。それは確かに感慨深いもの」

そして、コンパニオンルールでは、そのカラメイコス大公国を中心とした周辺諸国ですら、広い世界のほんの一部でしかなかったことが白地図で示される。さらにコンパニオンルール最初の市販シナリオ「大いなる試練」では、ブラックイーグル男爵領滅亡後、平和になったカラメイコス大公領から旅立ち、北のノルウォルド地域を新たな冒険の地として開拓と領有の物語が提示されたりする。
背景世界でも、アルファティアとジアティスの二大帝国が、ノルウォルド地域への侵略を虎視眈々と狙っている状況で、プレイヤーキャラクターがそういう乱世が近づきつつある風潮をどう考えて立ち振る舞うかが、クラシックD&D公式ワールドにおけるコンパニオンルールの展開になっているわけで。

ハイラス「新たな冒険、そして新たな敵でござるか。一応、物語としても繋がっている、と」


★80年代D&Dの公式ワールド

ここから、他のD&Dのワールド設定に関する話に移ろう。

基本的にD&Dは背景世界を持たずに自作する方向性を推奨していたのだけど、70年代の後半から風潮が変わってくる。グローランサという緻密な背景世界を持つのが売りの『ルーンクエスト』などのライバルRPGの登場で、D&Dおよび上級版のAD&Dにも背景世界の需要が生まれた。
それまでに、ゲイリーさんのプレイしているグレイホークや、デイヴさんのプレイしているブラックムーアという二大世界がオリジナルD&Dのサプリメントタイトルで知られていたけど、その後、ゲイリーさんとデイヴさんの仲違いで、グレイホークがAD&Dのメインワールドとして固定されることに。
グレイホークは雑誌記事、そして連載小説などで少しずつ紹介がされていき、AD&Dの公式シナリオの背景にも扱われるようになった後、80年に初めて「グレイホークのワールドガイド」(32ページの冊子)が出版。
その後、83年に、より詳細な設定がまとめられたボックス版の「グレイホーク・ワールドガイド」第2弾が出版(2分冊の本のページ総計128ページ)。3年の間に、ページ数が大きく膨れ上がったのは、雑誌記事などで紹介しているうちに世界設定がどんどん拡大していったから、だな。

ハイラス「なるほど。ゲームの展開とともに世界観を広げていくのは、正にリアルタイムで世界が広がっている楽しさが感じられそうだ」

確かにそうなんだが。
ゲイリーさんとしては、さらに自分の世界を広げる計画があったけど、他の仕事で忙しく動いているために上手くはかどらず、やがて女帝のクーデターでグレイホークに関する権利も失ってしまった。
以降は、ゲイリーさんの残した世界設定を元に、2版用のワールドガイドや、3版用のワールドガイドが出版され、3版の時に日本語版も発売されたことは先述の通り。

ハイラス「作者の手を離れた世界でござるか。それでも大事に扱ってくれるのなら構わないのだろうが」

まあ、2版の時期は知らないが、3版の時は確かに大事に扱われたみたいだな。


続いて、84年から小説および小説の元ストーリーであるシナリオ集と共に展開が始まったのが「ドラゴンランス」。日本でD&Dの邦訳が始まったときに旬だったために、当時、翻訳権を手に入れた富士見書房が最も力を入れて紹介した作品がこれ。ついでに、NOVAがファンタジー小説を書きたくなったのも、この作品の影響が大きかったり。

ええと、これは最近、SNEの安田社長のインタビュー記事で読んだんだけど、角川系列でD&Dの紹介をしたいと角川歴彦氏が安田社長に話を持ち込んだ際、「ドラゴンランスの翻訳権も得ましたので」と言ったら、安田社長はあっさり受け入れたそうな。それまでは『トラベラー』の翻訳の仕事で多忙だったので手が回らないから断ろうか、と思っていたらしいです。でも、ドラゴンランスに惹かれた結果、D&Dの紹介を引き受けるようになり、自分一人では手が回らないから、水野良氏に声を掛けて『ロードス島戦記』の誌上リプレイを立ち上げることに。

つまり、ドラゴンランスがロードスを生むきっかけになったことも事実だと。

ハイラス「それほどまでに、ドラゴンランスが日本のRPGに与えた影響は大きい、ということでござるか」

そうなるな。
ロードスについては、話が広がりすぎるので今回は割愛して。


87年から始まったAD&D第3の世界がフォーゴトン・レルム
ドラゴンランスがストーリー主導のワールド設定とするなら、フォーゴトン・レルムは地域別ワールドガイドや複数作家の多彩な物語が同時並行的に描かれ、数多くのコンピューターゲームの舞台にもなっている。こちらの展開の仕方は、ソード・ワールドの参考になったんじゃないかな。
つまり、物語主導のロードスに対し、複数作家がそれぞれの作品を書き散らすシェアード・ワールド的なスタイルは、フォーゴトン・レルムのあり方だし、ソード・ワールドも踏襲している形だ。

まあ、日本では断片的な紹介が続いたから、はっきりしなかったけど、AD&Dのゲームシステムの版上げごとに大きな歴史的事件があって、神々が死んだり、蘇ったりをいろいろ繰り返しているそうだ。
主人公たちがいきなり世界改変の大事件に巻き込まれて、神の後継者になったり、パーティーの仲間を殺害して悪神になったりする展開で、初めて読んだときは驚いた『シャドウデイル・サーガ』は、1版から2版に切り替わる際の大イベントが背景にあったことを後年知って、ああ、だからあんな変わった話だったのか、と納得した次第。
ドラゴンランスの神様は割と不死身な感じがあるのに、フォーゴトン・レルムの神様は本当にころころ死んじゃう印象があったり。

ハイラス「神様も大変な世界でござるな」

それだけ、人と神の距離が近い世界ということだな。
バルダーズ・ゲートというコンピューターゲームでは、主人公が邪神バールの子という設定で、バールが地上に降臨した際にたくさんの子作りをしていたそうだ。そして、邪神の子供同士でバールの力を受け継ぐためのサバイバル闘争が行われ、主人公も巻き込まれることになる。
主人公が正義であるなら、闘争の被害を防ぐために悪の陰謀を防ぐ立場になり、自らの血筋に悩むことになる。主人公が悪であるなら、自ら邪神の力を勝ち得るためにライバルを排除して俺最強を目指すことになる。バール自体が殺戮の神であることから、主人公の周りでは正義だろうと悪だろうと、戦いと死が広がることになるわけだ。これはまあ、戦いがメインのゲームなんだから仕方ないとも言えるわけだが、「チッ、また戦いか。やむを得ん。悪即斬」と言いながら正義の聖戦士をロールプレイし、「また殺してしまった。これも邪神の子ゆえの呪われた宿命か」と思い悩む主人公を、俺が演じたりもした。最後まではプレイできていないが、「邪神の子によるサバイバル」って設定も含めて、いろいろ楽しかったなあ、と記憶する。

ハイラス「NOVA殿が、まさか邪神の血を引き継いでたとは」

もちろん、ゲームの中の話な。そういう恐ろしいものを見る目はやめてくれ。
正義を司る秘密結社ハーパーズからも敵対視されて大変だったんだから。


そして、クラシックD&Dに話を戻すと、ルールブックで紹介されたカラメイコス大公国などを中心とする世界は、後にミスタラと呼ばれるようになる。ミスタラという名称が日本で紹介されるようになったのは、90年代になってからで、主にSNEが翻訳したメディアワークス版(94年~97年)およびカプコン製のアーケードゲームで浸透した形。
この世界の起源は意外と古く、カラメイコス大公国の名は81年のエキスパートルールが初出。その後、83年に再改訂されたルールが赤箱以降の邦訳版の元なんだが、そこでだんだん世界が構築されていき、84年のコンパニオン、85年のマスター、86年のイモータルまで段階的に世界が拡張されていった。
その後、フォーゴトン・レルムと並行するように、ガゼッタと呼ばれる地域別ワールドガイドが出版されていったんだけど、新和の日本語版は、おなじみのカラメイコス、アラブ風のイラルアム、エルフの国のアルフハイムまでが出たところで中断。
ガゼッタ・ワールド、後のミスタラは、D&Dのシステムに技能ルールや独自の神話観、種族ごとの追加ルールなどを持ち込んで、一部の要素は後のAD&D2版以降のルールにも踏襲されていった。これらの要素があってこそ、クラシックD&Dも本当の意味で完成すると言えるほどの奥深さなんだけどな。ガゼッタのアルフハイムの追加ルールがあれば、エルフだって人間並みに成長できて、コンパニオン以降も有能なキャラとして扱われるわけで。


ということで、ミスタラ世界まで軽く触れたところで、緑箱コンパニオンルールの探求は終了。
これからは、黒箱マスタールールに突入しつつ、本命はAD&Dとか、ロードス、ソード・ワールドの日本の展開について、過去と現在の両方を気まぐれに追跡していきたいな、と思っております。
(完)