★今回は最初からクライマックスだぜ
ガイド役NOVA「では、君たち開拓団の一同は、ゴブネズミの部屋を無事に通してもらい、ついにボスのクラーグの部屋の前に到着した」
バリー(アスト)「いよいよ、最初のシナリオもクリアできるわけだな」
モッサ(触手キング)「ゴランドはすでに別の城に連れて行かれた後なので、続きのシナリオをプレイしないといけないわけだが」
NOVA「連作キャンペーンシナリオだと、最初の目的を果たすのに、ずいぶん時間が掛かったりするからな。昔、AD&Dのシナリオで、行方不明の女の子を探すキャンペーンをプレイヤーとして始めたんだけど、シナリオ3つを終えても、まだ女の子が見つからなくて、結局、DM都合でその後が続かず、女の子が行方不明のまま消化不良に終わったことがあったんだ。人探しのシナリオが一回で解決しないのは、なかなか気に病むものがあるわけで」
ルビー(ダイアンナ)「あたしとしては、人探しよりも、さっさとお宝探しに邁進したいんだけどね」
NOVA「宝ねえ。まあ、ボスキャラを倒せば宝が手に入るのは定番だからねえ。頑張って下さいな」
アイアン(鉄太郎)「では、部屋の扉を開けて、素早く戦闘態勢を整えるぞ」
フリーダ(リバT)「ちょっと待って下さい。先にブレスの呪文を唱えますから。今から1分間(6ラウンド)、アイアン様とモッサさん、バリーさんは攻撃ロールに+D4できますので」
ルビー「あたしは?」
フリーダ「すみません。この呪文は3匹までしか掛かりませんので」
ルビー「そうかい。まあ、ボス相手なら絶対命中のマジックミサイルを使えばいいか」
NOVA「では、扉を開けて、早速戦闘を開始しようか」
★アナグマのクラーグ退治
NOVA「君たちと敵の配置はこんな感じでいいかな」
敵後衛 ゴブ弓兵A ゴブ弓兵B
(7) (7)
敵前衛 クラーグ 狼
(27) (11)
味方前衛 モッサ アイアン
(12) (15)
味方後衛 ルビー フリーダ バリー
(8) (9) (11)
バリー「オレは弓の方が強力だから、後衛に行かせてもらうぜ」
モッサ「敵ボスのクラーグが、やはり強そうでごわすな」
アイアン「ここにも狼がいるのか。なだめることはできないのかね?」
NOVA「さすがに、ボスのクラーグが生きているうちは無理、と言っておく」
ルビー「つまり、先に集中砲火でクラーグを仕留めてから、後の連中を降伏させるのが有効じゃないかな」
フリーダ「確かに、ボスさえ倒せば、なだめたり脅したりできそうですものね」
モッサ「では、ボスを仕留めて、降伏勧告作戦を実行するでごわす」
NOVA「方針が決まったようなら、イニシアティブから決めよう。こちらの最速は(コロコロ)クラーグの19。なお、アナグマの元ネタはバグベアだ。D&Dではゴブリンの近縁種扱いだけど、パグマイアでは別種族と設定した。巨大なモーニングスターをブンブン振り回して、当たったら大ダメージなのでよろしく」
モッサ「ゴランドアーマーの防御力さえあれば、防ぎ止められるはず」
◉1ラウンド目
NOVA「おや、誰もイニシアティブ 19に届かないなら、こちらからか。それでは、遠慮なく。狙いは防具の薄そうなアイアンで、命中は10」
アイアン「そんな大振りは当たらんよ」
NOVA「では、次に手番を狼に譲って……」
バリー「ちょっと待った。ここはフォーチュンを消費して割り込みを仕掛けるべきだ。ルビーのマジックミサイル。フリーダのセイクリッドフレイム。どんどん仕掛けて、このラウンドのうちにクラーグを落としたい」
ルビー「賛成だ。だったら、フォーチュンを使わせてもらうよ。いいね、リーダー」
モッサ「承認するでごわす」
ルビー「では、フォーチュン残り3点。マジックミサイル発動。女帝カードが輝いて、絶対命中の光の矢が3発、次々とクラーグに突き刺さる。5点、2点、5点で合計12ダメージ」
NOVA「スタミナ残り15点か」
フリーダ「続いて、セイクリッドフレイム行きます。耐久度ST13に抵抗して下さい」
NOVA「くっ、抵抗失敗」
フリーダ「閃光一閃。ダメージは5点」
NOVA「残り10点」
バリー「意外とあっさり倒せるんじゃないか。オレの弓は(コロコロ)ダイス目19で余裕で命中。ダメージは5点」
NOVA「残り5点」
モッサ「とどめは吾輩で構わないか?」
アイアン「ああ。私は目の前の狼をなだめたい」
モッサ「では、推して参る。命中は14」
NOVA「こっちのDCは16だ。装甲に阻まれ、ダメージが通らない」
フリーダ「いいえ、ブレスの効果があります。D4で2以上を出せば、通るはず」
モッサ「うおー、ゴランドアーマーの加護よ。我に力を!(コロコロ)3が出たので命中17」
クラーグ『何? こいつの力に押し負ける?』
モッサ「ゴランド・インパクト! 鎧が輝いて、その光が剣に宿って、相手の装甲を貫いた。勢いで突き入れて11点ダメージ」
クラーグ『グホッ、バカな。こんなザコどもに、オレサマが。無念』
アイアン「では、狼をなだめるとするか。(コロコロ)19。ほうら、いい子だ。大人しくしていなさい」
NOVA「狼はクーンと鳴いた。ゴブネズミ弓兵も、ボスのクラーグがあっさり倒されたのを見て、戦意喪失したようだ。その時、君たちの後ろから『ええい、静まれ静まれ。このお方をどなたと心得る。恐れ多くも、この洞窟の副リーダー、いや、先のリーダー、イーミク様にあらせられるぞ。一堂の者、ご老公の御前である。頭が高い、控えおろう!』という声が聞こえてきた」
★裏切り
ルビー「はい? 今ごろ出てきて、何を言ってるんだ? この爺さん」
イーミク『お前たち、頭が高いと言っておろうが。早く、頭を下げんと、この犬の命がないぞ』
モッサ「何だと? もしや?」
NOVA「イーミクは、君の知ってる先輩シルダーの首筋に刃を突きつけているね。そして、イーミクは高らかに笑う。『チーチッチッチー。お前たち、よくぞクラーグを倒してくれた。これで、この洞窟の支配者の地位は再びわしのもの。お前たちも武器を捨てて、わしにひれ伏せよ。お前たちの誰かは知らんが、どうやら凄い魔力を感じるわい。この力を手土産にギザ牙に捧げれば、わしも幹部の地位を得て、万々歳という寸法よ』」
アイアン「何て卑劣な奴なんだ」
イーミク『頭がいいと言ってもらおうか。絶対に動くなよ。動いたら、犬質がどうなっても知らんぞ』
バリー「ガイドよ。ずいぶんと楽しそうに、卑劣漢の演技をするじゃないか」
NOVA「当たり前だ。16の歳から途中ブランクはそれなりにあれども、33年間のゲームマスター歴を誇る俺をなめんなよ。これぐらいの演技で恥ずかしがっていては、TRPGマニアは名乗れない。なお、君たちと敵の配置は現在こうなっている」
敵前衛 ゴブ刀兵A ゴブ刀兵B
(7) (7)
味方前衛 モッサ アイアン 狼
(12) (15) (11)
味方後衛 ルビー フリーダ バリー
(8) (9) (11)
敵前衛 ゴブ刀兵C ゴブ刀兵D ゴブ刀兵E
(7) (7) (7)
敵後衛 ゴブ弓兵F イーミク ゴブ弓兵G
(7) (12) (7)
バリー「ちょっと待てよ。完全に挟み撃ちにされているじゃないか」
ルビー「おまけに敵が6体も増えて、総勢8体だって?」
フリーダ「後衛キャラが敵にさらされるなんて、大ピンチです」
NOVA「フフフ。プレイヤーの慌てふためくリアクション。そいつが見たかった~♪」
バリー「この卑怯者。お前がそういう奴だとは……前から思っていたけどな」
NOVA「とにかく、おとなしく降伏するんだ。人質、いや、犬質の命が惜しいならな~。あ、シルダーさんはイーミクのそばでスタミナ1のまま無力化されています」
フリーダ「生きてはいるんですね」
NOVA「うめきながら『私の命には構わず、こいつらをやっつけるんだ』と殊勝なことを言っています」
ダイアンナ「そうしたいのはやまやまなんだけど、こっちもこの状況じゃ身動きがとれやしない。せめて、前後の位置を交代できればいいんだけどね」
NOVA「前後を入れ替えるなら、機会攻撃が発動しますな」
アイアン「ところでガイドよ。私の隣にいる狼は、味方だと判断していいのかね?」
NOVA「どちらかと言えば中立なんだけど、少なくともゴブネズミに味方して、君たちを攻撃して来ないのは確実だ」
モッサ「とにかく、シルダー先輩が捕まっている以上は、うかつに手が出せん」
フリーダ「ガイド様、こんな時にヒトの神に祈りを捧げてもよろしいのでしょうか?」
NOVA「ああ、聖印に奇跡を呼ぶような作用があるって言ったよね。それで、どういう奇跡を願う?」
フリーダ「どんな奇跡なら、叶えられるのでしょうか?」
NOVA「これまでのストーリーから考えて、妥当だと思う内容なら」
フリーダ「では、誰かがイーミクさんの後ろから忍び寄って、人質、じゃなくて犬質を助けてくれるとか?」
NOVA「誰かって?」
バリー「実は、生きていたゴブ助とか?」
NOVA「埋葬したんじゃなかったのかよ。死んだ奴が生き返ってきたりはしない」
アイアン「だったら、生きていればいいのか。ウィンダム、ミクラス、アギラとか」
NOVA「(正解だ)すると、フリーダの祈りに呼応するかのように、アイアンの隣にいる狼が吠え声をあげる」
イーミク『何だ? おい、誰か、その犬っころを黙らせろ』
NOVA「その時、イーミクの背後からも別の吠え声が聞こえてきて、不意に獰猛な狼が噛みついてきた。他の2頭も後衛のゴブネズミに襲いかかった結果、戦場はこういう形になる」
敵前衛 ゴブ刀兵A ゴブ刀兵B
(7) (7)
味方前衛 モッサ アイアン
(12) (15)
味方後衛 ルビー フリーダ バリー
(8) (9) (11)
敵前衛 ゴブ刀兵C ゴブ刀兵D ゴブ刀兵E
(7) (7) (7)
ルビー「相手の数が減った。これなら、それぞれが一体ずつゴブネズミを倒せば、片付けられる」
モッサ「各員、自分の目の前の敵を速やかに排除せよ」
◉2ラウンド目
NOVA「それでは、戦闘ラウンド再開だ。フリーダのブレス、祝福効果は消えている。イーミクは狼たちへの対処に手一杯で、戦闘には参加できない。それは、もちろん狼たちも同じなんだけどね。よって、君たちはそれぞれ1体ずつのゴブネズミを倒せば、戦闘終了だ。では、改めてイニシアティブを決めよう。こちらは(コロコロ)7。狼の乱入で、ゴブネズミの動揺は大きいようだね」
バリー「最高はオレみたいだな。弓をグレートソードに持ち替えて、すぐに切りつけることはできるのか?」
NOVA「フリーアクションで弓を足元に落として、グレートソードを抜いて斬ることは可能とする」
バリー「では、それで。抜きざまに叩き斬る。(コロコロ)命中は5」
NOVA「ゴブネズミEは慌てて身をかわした」
バリー「くっ、やはりオレは弓派だな。次、女帝頼む」
ルビー「当然、あたしはマジックミサイルだ。3点、4点、5点の合計12点ダメージ」
NOVA「ルビーに斬りかかろうとしたゴブネズミCは、目前に出現した3本の光の矢をまともに受けて即死した」
ルビー「あたしは無力な女じゃないのさ。次、フリーダ」
フリーダ「はい、セイクリッドフレイム、受けなさい」
NOVA「耐久度セービングスロー13は成功。ゴブネズミDは聖なる光に耐えてみせた。『何だ、その花火は?』」
フリーダ「くっ、神のご加護は狼召喚で終わったの? アイアン様、お願いします」
アイアン「目前の敵をさっさと倒して、後衛を援護しに行かなければ。ダイス目19で命中して、ダメージはぴったり7点。よし、ゴブネズミBは討ち取った。リーダー、格好良く決めてくれ」
モッサ「心得た。命中ダイスは(コロコロ)17。ダメージは最大値が出て13点」
NOVA「結局、残ったのはゴブネズミDとEだけか。では、Dはフリーダに攻撃。19で当てて、ダメージは6点」
フリーダ「キャー、残りスタミナは3点です」
NOVA「バリーに対しては、22で当てる」
バリー「お前、ちょっと当て過ぎだろう。少しは遠慮しろ」
NOVA「ダメージは7点」
バリー「残り4点。大丈夫か、オレ」
◉3ラウンド目
味方前衛 モッサ アイアン
(12) (15)
味方後衛 ルビー フリーダ バリー
(8) (3/9) (4/11)
敵前衛 ゴブ刀兵D ゴブ刀兵E
(7) (7)
NOVA「では、次のラウンドだ。前の終わりはゴブネズミEだったから、ゴブネズミDにもう一度回す」
ルビー「させないよ。フォーチュンで割り込んで、フリーダを支援する。いいね、リーダー」
モッサ「承認したでごわす」
ルビー「フォーチュン残り2点。最後のマジックミサイル撃つよ。3つの光が敵を撃つ。4点、2点、5点で合わせて11点」
NOVA「フリーダを追いつめていたゴブネズミDは、横合いから飛んできた魔法の矢で吹っ飛んだ」
フリーダ「ありがとうございます、ルビーさん」
ルビー「気にするな。お宝探しの仲間じゃないか」
フリーダ「お宝……探しですか?」
ルビー「そのうち、借りは返してもらうさ。さあ、バリー。自分の始末は自分でつけな。最後ぐらい格好良く決めるんだよ」
バリー「そうさせてもらう。命中は13」
NOVA「それじゃ、当たらない。ゴブネズミのDCは15だからな」
バリー「なあ、みんな。ここはフォーチュンを使わせてくれないかな? このオレがヒーローになれるかどうかの瀬戸際なんだ」
モッサ「承認しよう。フォーチュンを使って、相手を倒せばヒーローになれる」
NOVA「だけど、フォーチュンを使っても倒せなかったら、お前はどこまで行っても三下キャラ確定だな」
バリー「くっ、ここが運命の分かれ道。(コロコロ)出目は3かよ、シクシク(涙目)」
ルビー「最後まで決められない男だねえ」
バリー「すまん、リーダー。後は任せた」
モッサ「仕方ないでごわすな。どうれ、最後の始末はこの吾輩が決めてやろう。のっしのっしと歩み寄って、命中16。ダメージは7点」
NOVA「それで、ぴったり戦闘は終わった」
★光と闇の末路
アイアン「狼たちはどうなった? 無事か?」
NOVA「ミクラスとアギラは、それぞれ一体のゴブネズミを仕留め、ウインダムはイーミク相手に少し苦戦したけど、4頭めの狼が加勢に入ってきたおかげで逆転勝利できた」
アイアン「そうか。4頭とも怪我はないか、と毛皮をなでてやろう」
NOVA「すると、4頭めの狼がアイアンに思念を飛ばす。『光の勇者よ。我らを闇の枷から解き放ってくれたこと、大いに感謝する。我が名はセブンガー。天狼一族の勇者ウルフガーの7番めの子孫に当たるものだ』」
アイアン「セブンガー、そうか、お前が……」
NOVA「なお、ウルフガーというのはフォーゴトン・レルムに登場する有名な蛮族戦士の名前だ。ダークエルフのドリッズトや、ドワーフ戦士のブルーノーと共に旅をして、その活躍譚は『アイスウインド・サーガ』という小説シリーズにもなっている。当リプレイは、フォーゴトン・レルムのソード・コースト地方をパグマイア風にアレンジするに当たり、勇者ウルフガーの一族は文字どおり伝説の狼に設定した。そして、その7代後の子孫ということでセブンガーということだ(今、思いついたアドリブなんだけど)」
フリーダ「つまり、公式設定をオリジナル改変したということですね」
NOVA「まあ、元ネタありの二次創作に、それっぽい理屈をこじつけたってことだな。何の接点もなくセブンガーを登場させるなら、ただのウルトラ余興ネタに過ぎないが、『ウルフガーの7代後の子孫』と設定づけてしまえば、いかにもフォーゴトン・レルムの改編世界として箔が付くんじゃないか」
アイアン「では、セブンガーを初めとする狼たちは、これからも同行してくれるのか?」
セブンガー『勇者アイアン・ラビドッグよ。我らが巡り合ったのも何かの縁。しかし、我らは長く闇にさらされ、消耗が酷い。しばしの休息をとらねば、この身は長く保たん。ゆえに、我らは同行できん。だが、そなたが勇者の力を取り戻した暁には、我らもまた力を貸すことができるやもしれん。それまでのお別れだ。再び共に戦う日を楽しみにしておるぞ』
アイアン「分かった。またいつか会おう。セブンガー、ウインダム、ミクラス、そしてアギラよ。今回は助けてくれたこと、感謝する」
ウインダム『礼を言うのは私たちの方です。クラーグのペットにされていた時は、絶望の毎日でした』
ミクラス『アイアンの兄貴が解放してくれなければ、連中の悪事の手伝いをずっとさせられていたろうからな』
アギラ『うちらを救ってくれたのは、アイアン様の善意のおかげや。ほんまにありがとな』
フリーダ「む、アイアン様に従うライバルが一気に増えた気分ですわ。これは油断がなりません」
NOVA「まあ、この狼たちはレギュラーじゃないし。常に登場させると、ゲームバランスも思いきり崩れるだろうし、作者としてはキャラを描き分けるのも大変だ。ということで、セブンガーと3匹の狼は名残惜しげにしながらも、その場を立ち去った。次に登場するのはいつになるか、それは作者すら知らない大宇宙の謎である」
アイアン「とにかく、私は今後の成長で《獣使い》の芸を習得することを目的にすればいいのだな」
モッサ「狼の件は話が済んだとして、シルダー先輩は無事なのか?」
シルダー『ああ、何とか生きている。だけど、誰か回復魔法を掛けてくれると助かるな』
フリーダ「それでしたら今すぐに。(コロコロ)5点だけですけど、よろしいでしょうか」
シルダー『これでスタミナ6点に戻ったから、転んだだけで気絶することはなくなったよ(笑)。助けてくれてありがとう。だが、残念ながらゴランドのおやっさんは敵に連れて行かれてしまった』
モッサ「聞いているでごわす。とりあえず、今はワンダリンの街に戻って養生を。それから情報交換と、おやっさん救出作戦を考えましょう」
シルダー『ああ、そうだな。だが、その前に落とし前をつけなければ』
NOVA「そう言って、シルダーはまだかろうじて生きているイーミクをギラリと睨んだ」
バリー「こいつ、まだ生きていたのか」
イーミク『狼どもが助けに来るなんて、そんなの誰が予想できると言うんだ? お願いです。命だけはお助けを。この通り反省しました。老い先短い年寄りの命を奪うほど、あなた方は極悪非道ではないでしょう?』
バリー「こんなことを言ってるが、どうする?」
ルビー「命惜しさや欲に駆られて犯罪に走る気持ちはよく分かる。だけどね、悪党にも悪党なりの仁義ってものがあるんだ」
アイアン「それは?」
ルビー「裏切り者は許さない。命乞いをするなら、相手の裁きを素直に受け入れろ。自らの拠って立つ誇りは決して見失うな。それがあたしのルールさ。イーミクよ、あんたの誇りは何なんだい?」
イーミク『そ、それは……ゴブネズミ一族の長であること。部族の繁栄のため』
ルビー「だったら、散って行った部族のところにあんたも行ってやるんだね。墓ぐらいなら作ってやるさ。うちの勇者さまがね」
イーミク『墓だと? 言わせておけば……』
シルダー『モッサよ、君の剣を私に貸してくれ』
モッサ「はい、どうぞ」
シルダー『こいつに一番、恨みがあるのはこの私だ。こいつがゴランドを犬質にとらなければ、私は一騎討ちでクラーグを倒せていたはずなんだ。私の名誉のために、そしてゴランドのために、拷問で受けた傷のために、死ね、イーミク』
イーミク『ギャーーー』
アイアン「こんな奴の墓も、私が作らないといけないのか」
こうして、王立開拓団の一行は『ギザ牙族の隠れ家』と呼ばれる最初のダンジョンをクリアした。
しかし、彼らの任務はまだ達成できていない。
ゴランドを救出し、伝説の『ワンデルヴァーの失われた鉱山』を見つけるための彼らの冒険はまだ続く。
だが、次なる冒険の物語を始めるまでは、今ひとたびの安らぎを得るとしよう。
(パグマイアwithD&Dリプレイ
ワンデルヴァー第一部『ゴブネズミの矢』 これにて完)