ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

ワンデルヴァー第一部を終えての雑談

★ギザ牙族の隠れ家について

 

NOVA「ふう、何とかパグマイアの妄想リプレイ、第一部が完結したぜ」

ダイアンナ「おめでとう、ダディー。思ったよりも、ハラハラドキドキして楽しかったぞ」

NOVA「そうか。プレイヤーにそう言ってもらえると、ガイドを頑張った甲斐があったと思えるな。さて、今回は『ワンデルヴァー1部』の後書き雑談だ」

 

ダイアンナ「では、ルビー・ブラッドハウンドのプレイヤーとして、一つ不満を述べておくぞ」

 

NOVA「何だ?」

 

ダイアンナ「ダンジョンを探索したのに、お宝が全然出て来なかったぞ。D&Dというのは、ダンジョンでモンスターと戦って宝物をゲットするゲームだと聞いていたのに、話が違うじゃないか」

 

NOVA「ああ、それは省略した」

 

ダイアンナ「そんな大事なことをどうして省略するんだ?」

 

NOVA「理由は二つある。一つは、パグマイアは元ゲームのD&Dと違い、金銭的報酬を求めるゲームじゃないこと。ただし、マスターワークというマジックアイテムを見つけたりはするわけで、今回のダンジョンではマスターワークに相当する物品がなかったんだ」

 

ダイアンナ「つまり、ゴブネズミどもは大した宝物を持っていなかったんだな」

 

NOVA「もう一つの理由は、ネタバレになるんだけど、ワンダリンの街に戻ってから『ゴブネズミの野盗に襲われて、交易品を奪われて困っている商人』から話を聞くんだよ。そういう情報を聞いた上で、改めて今回のダンジョンに潜って探索すると、目的の交易品と宝箱を発見するってイベントもあるわけだ」

 

ダイアンナ「何と。あのダンジョンにはもう一度行くことになるのか」

 

NOVA「そう。一度めは捕まった者を救出するためにゴブネズミたちと戦う話。二度めは敵に奪われていた『隠された宝』を探す話だ」

 

ダイアンナ「そう言えば、連中は野盗だったのだから、他にも略奪品を隠し持っていた可能性があるわけか。そのことを思い付かなかったのは不覚だった」

 

NOVA「まあ、今回はそういうリプレイ本編では書けなかったシナリオ裏話を、特別に語ろうって記事なわけだ」

 

★狼について


ダイアンナ「ところで、あのアイアンが助けた狼たちだが、シナリオには書いてあったのか?」

NOVA「ただの敵モンスターであって、味方になるようなことは一切ないはずだった。そこはパグマイアが犬RPGであるのと、鉄太郎さんの〈動物使い〉判定時のダイス目の異常な良さ、そしてリバTの神への祈りなども加味して、俺なりに改変した部分だ」

ダイアンナ「最初からダディーが意図したことではなかったのか?」

NOVA「完全にアドリブだよ。狼が3頭つながれていて、〈動物使い〉判定に成功すればおとなしくなる。失敗すれば襲い掛かってくることは、元のシナリオに書かれていた。しかし、まさか〈動物使い〉判定でクリティカルを出すとは思わなかったぞ。あのクリティカルから、頭の中の妄想がいろいろつながった感じだな」

ダイアンナ「妄想リプレイだから、ダディーの頭の中では、複数キャラの会話が行われているわけだよな」

NOVA「ああ、作者の頭の中の鉄太郎さん、すなわち『モロボシ・ダンことウルトラセブンだったら、こういうことを言いそうだなあ』という妄想が文章として紡ぎ出されてくるわけだが、カプセル怪獣の飼い主という公式設定から、獣好きとか、狼もちょうど3頭いるのでウインダム、ミクラス、アギラと名付けたりとか、シナリオの記述と、ウルトラセブンというキャラと、パグマイアのルールで作ったストレイのアイアンというキャラ設定がいろいろと俺の脳内で化学変化を起こして、そこにダイス目という要素も加味されて、生まれたストーリーということだ」

ダイアンナ「おまけにラスボス戦でも、セブンガーが爆誕したわけだし」

NOVA「ボスの引き連れた狼は、シナリオではリッパー(食いちぎり屋)という名前が付けられているし、もしも鉄太郎さんのダイス目が悪かったら、主人のクラーグの仇を討つために荒れ狂っていたはずだった。だけど鉄太郎さんは〈動物使い〉判定を確実に成功させるんだもんなあ。シナリオはアドリブ的に改変してる部分もあるけど、ダイス目にはまったく嘘はない。たぶん、ファンデルヴァーをプレイしたゲーマーは数多くいても、この狼がプレイヤーキャラの味方になってくれるような展開をしたケースは稀だと思うぞ」

ダイアンナ「それを言うなら、ウルトラセブンを想定したプレイヤーというのも、まずいないんじゃないか?」

NOVA「パグマイアでファンデルヴァーをプレイするリプレイも珍しいとは思うけどな。少なくとも『他にはないここだけのリプレイ作品』になっている自信は大いにある」


★イーミクの裏切りについて


ダイアンナ「ラスボス戦で、イーミクが背後から襲い掛かってきた時は驚いたぞ」

NOVA「あれも実はアドリブなんだ。ボスのクラーグがあんなにあっさり倒されるとは思ってなくて、ラスボス戦がいまいち盛り上がらないと感じたからな。急遽、イーミクを背後から襲わせた」

ダイアンナ「それってズルくないか? シナリオには書いてなかったんだろう?」

NOVA「いや、シナリオには『イーミクが、クラーグを殺すように冒険者と交渉する』『捕まえたシルダーを人質にとる』ことまでは書いてあったんだ。本来の想定なら、クラーグを倒した後、シルダーを解放するようにプレイヤーキャラが要求すると、イーミクが欲に駆られて、さらなる無理難題を突きつけて、結局は戦いになるという流れだった。それをクラーグ戦直後にショートカットしただけで、ほぼシナリオどおりの展開だ」

ダイアンナ「別々の戦いになるはずだったのを、一つにまとめたわけか。わざわざ背後から襲い掛かって来たりして。後衛が倒されたら、どうするつもりだったんだ?」

NOVA「ここでゲームバランスの読めないマスターだったら、一気に戦闘に突入して、プレイヤーに作戦会議をする時間も与えないまま、怒涛の如く進めるだろうなあ。俺のマスタリングスタイルだと、プレイヤーたちを窮地に追い込んだ後、慌てず急かさず、じっくり対応策を検討してもらうようにしている。シンキングタイムを与えずに切迫感を重視するマスターもいれば、課題を与えてじっくり考えてもらうのが好きなマスターもいるわけで。今回は、ピンチを切り抜ける方法は想定できたから、多少の無茶も押し通す気になった次第。さすがに逆転の手段も用意せずに、一方的にプレイヤーを追いつめるマスタリングはしない」

ダイアンナ「狼たちが助けてくれる展開を想定していたからこそ、平気で背後からの不意討ちをしてみせたわけだな」

NOVA「ただし、その解答はプレイヤー側から出さないといけない。マスターは多少のヒントや誘導を試みてもいいけれど、プレイヤーが出していない答えを一方的に与えてはいけない。あくまで、プレイヤーが主導した答えで事件を解決する展開が望ましい」

ダイアンナ「プレイヤーが答えにたどり着けなかった時は?」

NOVA「当然、不利な状態で戦闘を始めてもらうさ。ヒントもあげて、誘導までしているのに、それに気づかない愚かだったり鈍感だったりするプレイヤーに慈悲を見せる必要はない。ただし、半死半生まで追い込んだところで、援助の手を差し伸べたりする可能性はあるけどな」

ダイアンナ「その辺のさじ加減の読み方にコツが要りそうだな」

NOVA「プレイヤーに戦術眼があるかどうかで、どこまで厳しい裁定をしたらいいかが変わってくるからな。基本は、プレイヤーの意見を重視して甘い裁定をすることが多いが、要所要所で引き締めに掛かるようにはしているつもりだ」


★ゴブ助について


ダイアンナ「ゴブ助というキャラは、シナリオには書いてないよな。ずいぶんとキャラ立ちしたな、と思ったら、あっさり殺されたけど」

NOVA「モブキャラが目立つと死ぬ、という法則だな。というか、殺すと決めたから、ゴブ助って名前を決めて、キャラ立ちさせたんだ」

ダイアンナ「つまり、ダディーはNPCを躊躇なく殺せる冷血漢ということだな」

NOVA「まあ、物語上の役割に沿って退場させることは創作として普通にあるだろう。ただ、殺すからこそ、その死を劇的に演出したいって気持ちはあるぞ。これもキャラへの愛だと思う」

ダイアンナ「で、ゴブ助を登場させた理由は?」

NOVA「俺が登場させたんじゃなくて、モッさんが上手く捕まえたんじゃないか。どうして、スタミナ残り1なんて絶妙なダメージの与え方をできるんだよ?」

ダイアンナ「そんなのあたしが知るか。ダイスを振ったのはダディーだ」

NOVA「俺の中では、キンちゃんが振ったことになってるんだよ。とにかく、ダイス目に関しては実際に振った嘘偽りない結果だからな。俺も妄想リプレイの原型になるショートプレイ記録は昔から何度も書いたことがあるが(主に購入したTRPGシステムのテストプレイのため)、ダイスを使ったシステムは普通に楽しめる。だけど、カードを使ったシステムは楽しめないんだな、これが」

ダイアンナ「カードを使ったシステムって?」

NOVA「トーキョーN◎VAとか、ゴーストハンターとか、TORGとかは、プレイヤーキャラのリソース管理や行動オプションにカードを使うんだ。誰がどういう手札を持っているか、どの場面でどんな手札を出すかなど、そういう要素が複数キャラを扱うのに把握が困難だったりする。ここで断言するぜ。カード使用のTRPGは、俺にはソロプレイできん。これは、ボードゲームなどのTRPG以外のゲームでもそうなんだけど、分かりやすく例えれば一人ババ抜きなんて楽しめないだろう?」

ダイアンナ「確かに、誰がババを持っているか、分かってしまうと興醒めだな」

NOVA「一人双六はまだ楽しめる。一人人生ゲームだって、お金の管理は面倒だが楽しめる。一人7並べもそうだな。一人ポーカーとか、一人神経衰弱は無理」

ダイアンナ「ダディーはどうして、そう一人でゲームをしようとして来たんだ?」

NOVA「いや、昔からゲームは大好きでな。自分の身近にいる妹たちと遊んだり、友だちを誘ってしたり、10年前までは姪っ子や甥っ子とボードゲームを楽しんだり(今では彼らも成人だ)、プレイ仲間はそれなりにいたんだが、それだけでは物足りないような気分に駆られた際は、一人でもプレイして過ごしていたんだ。ただ、対戦型のシミュレーションゲームとか、TRPGなどといった戦術や戦略を考える系のゲームだと、高度な想像力と情報管理能力を要するので一人だと無理、と分かったんだけどな」

ダイアンナ「だったら、どうして今、一人でプレイできているのさ」

NOVA「ゲームブックプレイのノウハウとか、小説書きのノウハウとか、長年リプレイを読んできた経験の結晶だな。あと、コンピューターゲームなら一人でもプレイできて、そこに登場する複数キャラをリプレイ風にセリフを交えて創作アレンジした記事は、ホビー館の初期からのコンテンツだったからな。つまり、今やってるTRPG妄想リプレイは、ホビー館の開設時から何となくやりたかったことを、上手く形にできたものだとも認識している」

ダイアンナ「ダディーのソロプレイ蘊蓄はともかく、ゴブ助の話に戻すことにするよ。モッさんがゴブネズミを捕虜にしたのはいいとして、ずいぶんいろいろな情報を出してくれたよな」

NOVA「便利な奴だったな。実は、情報源となるキャラクターって、プレイヤーだけでなくゲームマスターにとってもありがたい存在なんだ。会話交流できる相手がいなければ、ダンジョンシナリオなんて各部屋ごとの探索をして、出てきた罠を解除したり、出てきた敵をひたすら倒すだけのハック&スラッシュになってしまう。まあ、これがD&D本来の楽しみ方で、ストーリー性を重視するようになったのって、80年代の半ばごろからの風潮だ。
「クラシックD&Dにはストーリーを補強するルールはあまりなくて、基本は『ダンジョン潜って出てきた敵を倒す。倒せなければ逃げるか死ぬか』というゲームで、無事に生き残ればレベルアップして強くなる……をひたすら繰り返す原初のシステムなんだ。『ディケイドには物語なんてありません。全てを破壊するだけです』ってセリフは、『クラシックD&Dには物語なんてありません。全ての敵を倒すだけです』って言い換えても、初期のTRPGマニアは納得すると思うぞ」

ダイアンナ「初期って、いつの話さ?」

NOVA「日本でロードス島戦記のリプレイが発表される前とか、ドラゴンランスの小説が展開されて、RPGはストーリーゲームだ、とかいう風潮をSNEの社長などが提唱する前の話だな。クラシックD&Dが生まれた頃にはTRPG=ストーリーゲームなんて定義付けはされていなかったらしい。まあ、トラベラーとかルーンクエストみたいな当時、第二世代と言われた世界観中心のゲームから原作付きのゲームに移り変わるにつれて、次第にストーリー要素が投入されていき、日本への流入時には『キャラ立て支援システム』『ストーリー生成支援システム』がどんどん生まれていくようになるのが、80年代終わりから90年代の流れ」

ダイアンナ「つまり、クラシックD&Dがシンプルで、デッドリー(死にやすい)なのは?」

NOVA「あくまでキャラは、シミュレーションゲームにおける一ユニットに過ぎず、ストーリー性を加味されず、死んだら別のキャラを作ってやり直す、というのが当然の時代に生まれたからだ。そのシンプルさがいいと言うのは、極論を言えば『自分の人生にはストーリーなんてありません。死んだらやり直しの利くような、ただのゲームのコマのような人生こそがリアルです』と断言するようなものだと思うぞ」

ダイアンナ「正に極論だな。クラシックD&Dを好きな人間が、みんなそのような破滅志向で刹那的ということはないはずだが」

NOVA「だけど、クラシックD&Dで一度でもキャラの死を体験した人間は人生の不条理をシミュレートできるわけだし、『命なんて安いものだ。特に俺のはな』というセリフにも共感できるのではないか。逆に言えば、そういう境地に達していない人間は、真の意味でクラシックD&Dを味わったとは言えない」

ダイアンナ「酷い偏見だな」

NOVA「まあ、一度でもドラゴンブレスを喰らって消し炭になったことがあれば、真の意味でクラシックD&Dを好きだと表明できる、と俺は思うがな。そういう過酷な目に遭っても好きだと言えるなら、本物の愛だろう」

ダイアンナ「ダディーはあるのか?」

NOVA「いやあ、ドラゴンブレスを喰らって、セービングスローでダメージ半減させて生き延びたんだけど、その後、牙で噛み砕かれて絶命した経験ならあるぞ。この記事参照

ダイアンナ「今のD&Dやパグマイアは、そこまでデッドリーではないということだな」

NOVA「ああ、5版はD&Dの中でも初めて、戦闘ルール以外の『日常背景用のルール』『キャラのロールプレイ支援システム』を導入したストーリーゲームなシステムだからな。戦闘して何ぼのシステムに対して、戦闘以外の解決方法を積極的に導入した作品ということになっている。3版と4版がゲームシステムとして先鋭的に進化したのに対し、5版はバトルゲームとしては退化した面を持ちながらも、ストーリー要素を楽しめるようにシンプルさを売りにした作品だ。
「それをさらに簡略化したのがパグマイアだから、ここでもソロで扱えるわけだな。3版や4版もルールブックを読んでいると楽しそうだが、ソロでのプレイはまず不可能だと考える。おまけに戦闘シーンを描くにもマップが必要になるし、メタルフィギュアを使った戦術シミュレーション風に進化しちゃったので、会話主導のリプレイにはしにくい感じだ。
「クラシックと5版のどちらが好きかは、人の好みによるが、分かっている人間にとっては『クラシックは単純なハック&スラッシュを楽しめる』『5版はキャラのロールプレイとストーリーを楽しめる』と言ったところか。まあ、その上で『自分は物語よりもモンスターを虐殺して、お宝集めて回るのが好きです』と宣言するつもりなら、クラシックD&Dが好きと言っていいだろうな。昔のウィザードリィとか、今のモンスターハンターみたいな方向性だ」

ダイアンナ「ダディーはどっちが好きなんだ?」

NOVA「どっちも好きだから、こうやって比較して長々と記事書きできているんだろうが。ただ、『クラシックD&Dに愛着があります』という点では同意できるんだけど、今のシステムが『チラッと見て複雑だと思ったから、昔のシンプルなのが好き』という主張には全くもって同意できん。何の分析もしていないコメントだから、そういう発言をした時点で、『自分はTRPGに関して、とるに足りない、相手をする価値もない、つまらない人間です』と自己紹介したに等しいからな。
「これが就職活動ならば、『御社の最近のパンフレットをチラッと見ましたが、何やら複雑なことが書いてありますね。私は30年以上前の創業当時のシンプルな業務形態の方が好きです。よろしければ雇っていただけませんか』と面接で発言したに等しいお粗末さだ」

ダイアンナ「自己アピールしたいなら、『80年代の御社創業当時の業務形態が好きです。そこから発展して、飛躍している姿には惚れ惚れしますが、今の私では残念ながらまだまだ全貌を掴みきれません。ですが、初心を忘れない御社の姿勢に憧れてもいるので、御社で働き、あれこれ学ばせていただきたいと思います』と言ったところか」

NOVA「さすがは〈はったり〉技能を持っているダイアンナだ」

ダイアンナ「あのう、それはキャラのルビーであって、あたしは純情な乙女の心を持っているんだから」

NOVA「それも〈はったり〉であることは、当ブログの熱心な読者なら理解していると思うがな」

ダイアンナ「ダディーだって人のことを言えないよな」

NOVA「まあな。俺の言葉の半分は妄言だ、というのが口癖の男だし」


★ゴブ助について2(ダンジョンマップ編)


ダイアンナ「で、ゴブ助の話のはずが、途中で寄り道脱線したんだけど」

NOVA「よくあることだ。気にするな」

ダイアンナ「気にするよ。ゴブ助の言動は、全部ダディーの〈はったり〉アドリブなのか?」

NOVA「いや。プレイヤーキャラがゴブリンを尋問したり、魅了の呪文を掛けたりして情報収集を試みた場合に話していい内容は、シナリオに書いてある」

ダイアンナ「すごく細かく書いてあるんだな、D&Dのシナリオって」

NOVA「初心者対応シナリオだから、プレイ中に想定される出来事は大体書いてあるぞ。というか、日本のRPGの初心者対応って『いかに情報量を減らしてシンプルにまとめるか』が大切だと思うんだけど、アメリカの場合は『プレイ中に必要になりそうなことは、あらかじめ、いっぱい書いてあって、ダンジョンマスターの裁定基準を分かりやすく示している』のが前提で、本当の初心者が読むには文章量がそれなりに多かったりするわけだ」

ダイアンナ「『読む量を減らす』のが日本の初心者向き、『読む量を増やして、あらゆる状況に対処できるようにする』のがアメリカの初心者向きということか」

NOVA「『たかがゲーム、お遊びだから素人が見ても分かりやすく』が日本向きで、『ゲームは文化、アートだからプロが見ても納得できるように体裁を整える』のが海外のスタンスなのかな。もしかすると、海外のゲーマーの方がアクティブなので、『こういう時の対応方法がシナリオに書いていないぞ。欠陥品だ』ってクレームが付きやすいのかもしれないが、いざシナリオをプレイすると、日米の文化差が分かった気がする」

ダイアンナ「とにかく、海外のシナリオの方が記述は細かいということだな」

NOVA「その中で、どういう要素を採用して、どういう要素を割愛するかが、DMの腕の見せどころだと思う。ゴブ助のくれる情報は、大体、シナリオに書いてあったとおりだが、一つだけダンジョンのマップだけは、俺の判断で先に公開した」

ダイアンナ「本来は公開すべき情報ではなかったと?」

NOVA「この辺は、リプレイの書き方で悩んだ点でもあるけど、先の見えないダンジョンを一部屋一部屋じっくり探索して、そこで生じるイベントやアクシデントを随時解決しながらマップを埋めていくのが、D&Dの基本スタイルなんだよ。当初は、DMが部屋の大きさや配置を言葉で語り、それを聞いてプレイヤーの一人がマッパー(地図書き)となって、自分で地図を作っていくのもD&Dの基本の遊び方だった。
「やがて、それだと時間が掛かり過ぎるということで、DMがマップを描いてあげるのが常態化するようになり(俗称オートマッピング機能)、そのうち、フロアタイルとか、ボードゲームと融合したりとか、プレイヤー用の白地図にイベントを書き入れていくための用紙とか、ダンジョンを表現するためのいろいろな手法が提案されて行く。このダンジョン探索ゲームとしての表現の仕方は、もうTRPGではなく独立したボードゲームとかフィギュアゲームとしてRPGの成長要素を逆に取り込む形で、一ジャンルを築いているわけで、ぶっちゃけて言うと『単にダンジョン探索を楽しみたいだけなら、TRPGのD&Dをプレイするよりも、それ専用のボードゲームコンピューターゲームをプレイする方がよほど楽しめる』というのが今の時代というわけだ」


ダイアンナ「すると、ダディーはD&Dをプレイするのに、ダンジョンそのものは否定するというのか?」

NOVA「否定はしないさ。ただ、D&Dは元祖RPGとして、ダンジョン(地下迷宮)という概念をゲームの世界に浸透させる役割は果たしたし、そこから数々の子孫が生まれ育ったご先祖様的ゲームとして価値がある。毎週末に集まって広大なダンジョンを少しずつ探索しつつ、キャラのリソースが尽きたら、地上に戻ったり、地下迷宮でキャンプを張って休息をとったり、そういう遊びもD&Dではシナリオで推奨されていたりもする。問題はそういう単調なゲームスタイルをリプレイ形式で書いて、果たして楽しいのだろうか、という点だな」

ダイアンナ「ゲームにハマり込んでいる者にとっては楽しい。だけど、ストーリー的な読み物としては面白くないという感じか?」

NOVA「ダンジョンの楽しみはいろいろあるんだけど、初心者ゲーマーだと、洞窟の右に行くか左に行くか、行った先に何があるか、ダンジョンの構造がどうなっているのか、そういうのを手探りで仲間と相談しながら進むだけでも楽しいのだと思う。だけど、別の楽しみ方もあってな。今回、提示したのはそういう手法だ」

ダイアンナ「最初に、マップを全部さらけ出す方法か。D&Dの楽しみ方としては邪道じゃないか?」

NOVA「これも今風なんだよ。ちょっとしたオリエンテーリング風味というか、探索すべき場所の地図は分かっている。チェックポイントを順に回りながら、そこで見る景色を楽しんだり、どの部屋を回って行くべきか考えたり。デパートのフロアマップを見ながら何階で買い物するか相談したり、スマホで地図検索しながら店舗巡りをしたり、そういうのも日常的な冒険と言えなくもない」

ダイアンナ「そういうのは冒険と言っていいのかどうか」

NOVA「では、現代風の戦場に例えよう。D&Dが生まれた当時、アメリカの若者の戦場イメージはベトナム戦争だった。地図もない密林を、敵の奇襲に怯えながら一歩一歩行軍していくのがD&D的にもリアルな体験だったんだが、90年代以降の戦場は違う。航空写真などで戦場に何があるかは先に分かっている。ただし、実際に何と遭遇するか、予期せぬハプニングは考えられる。地図を見ながら先に何が待っているかをある程度予想しつつも、想定外の事態に出くわして対処したり、戦術目的の達成に向けて着実に前進して行くのが今のリアルな戦場の光景なんだ」

ダイアンナ「行き当たりばったりで先の見えない戦場から、あらかじめ情報を取得した上での計算された戦場ということか」

NOVA「攻略本を見ながらのゲームプレイも、それに近いものがあるな。攻略本を観光ガイドのように眺めながら、発生するストーリーイベントを楽しむプレイスタイルも、ゲーマーとしては賛否ありながらも一つのスタイルとして定着していると思う。先に地図を見せて、どういう順番で攻略するか事前に仲間うちで相談するのも、今のゲームスタイルとしてはありなんだ」


★橋の上のゴブネズミについて


ダイアンナ「マップは前もって公開されたにしても、橋の上からゴブネズミに不意討ち攻撃された時は驚いたぞ。というか、ダディーのシナリオ運用って、突然、奇襲を仕掛けてくるのが多いな」

NOVA「いや、ゴブネズミがそういう奇襲系のキャラなんだって。まあ、俺自身、ゲームはあらかじめ想定できる部分と、想定外のハプニングのバランスで面白くなると考えている。予想できないことばかりだと理不尽に苛立つだけだが(そういうランダム要素の大きいゲームが好きなゲーマーもいる)、全てが予想の範囲に収まってもつまらない。あらかじめ、あれこれ考えるだけの情報は与えておいて、きちんと作戦を立てることの面白さと、それでも生じるハプニングにどう対処するかと、どっちが欠けてもゲームは味気ないと思うぞ」

ダイアンナ「ゴブネズミの奇襲で、ゴブ助が命を落とすのは、ダディーにとっては想定内ということだな」

NOVA「ストーリー展開の上で、与えたい情報は一通り与え終わったからね。これ以上に出張ってしまえば、プレイヤーたちをこちらが誘導しすぎてしまうと判断したわけだ」

ダイアンナ「確かにゴブ助を通じて、ゴブネズミの長と交渉しようと考えていた気がするな」

NOVA「本来、交渉が上手くまとまるかはプレイヤーが関わらないといけない部分だと考えるけど、ゴブ助に任せてしまうと、あまりに都合が良すぎるので速やかな退場を要した次第」

ダイアンナ「あそこでゴブ助が死んだことで、何だかクラーグを倒さないといけないってモチベーションが高まった気がする」

NOVA「ただの捕虜なのに、名前がついた途端、意外と感情移入してもらえて何よりだ」

ダイアンナ「狼を平穏に逃がせたことで、どこかほのぼのとした気分になっていたんだよ。そうしたら、急に矢が飛んできて、緊張感が高まった」

NOVA「あのシーンには実は仕掛けがもう一つあって、もしも橋の上のゴブネズミを、あのラウンドで仕留め損なっていたら、連中はため池のところまで逃走して、仕掛けられたトラップを発動するはずだったんだ」

ダイアンナ「どんなトラップだ?」

NOVA「ため池にせき止められていた大量の水が開放され、みんなを一気に押し流し、大きなダメージを与えていたかもしれない」

ダイアンナ「あのため池にそのような仕掛けがあったとは……」

NOVA「結局、トラップは発動せずに済んだので、起こらなかったイベントということだな。あと、シナリオのマップをもう一度、チェックしていて気づいたんだけど、ため池のそばにあと3体のゴブネズミがいたのに、プレイ中は失念していたみたいだ。もしかすると俺の知らないところに隠れ潜んでいたのかもしれない」

ダイアンナ「ガイドが知らないところって、何だかなあ。次にダンジョンに入ったら、ひょっこり遭遇する可能性は?」

NOVA「う~ん、D&Dだと、モンスターを倒した際にも経験値が入手できるけど、パグマイアはそういうことはないからな。ストーリー上、無意味な戦闘はあまりさせたくないかな」

アスト「ちょっと待った、ガイドよ」

NOVA「おお、アストか。いいところに来たな」

アスト「いいところだと?」

NOVA「この後、クラシックD&Dと第5版とパグマイアについて、比較考察したいと思っていたんだが、お前、クラシックD&Dについては、そこそこ詳しそうじゃないか」

アスト「お前ほどじゃないけどな。少なくとも、お前にストーカーしているコメント主の誰かよりは、いろいろ語れると思うぞ」

NOVA「娘にストーキングしていたお前に、ストーカーどうこうと人を責める資格があると思うのか?」

アスト「いや、さすがに、このオレも男をストーカーするような趣味はない。世の中には変な趣味をもった奴もいるもんだなあ」

NOVA「まあいい。次回は、お前のクラシックD&D愛も見せてもらうぞ」

ダイアンナ「それはそうと、どうしてアストは出てきたんだ?」

アスト「経験値云々の話が気になってな。パグマイアのレベルアップはいつするんだ? 確か経験値そのものがないシステムだと聞いているが」

NOVA「その辺は、ファンデルヴァーのシナリオの方にレベルアップの目安があるから、そちらに合わせればいいと考えている。ともかく、次はアストを交えて、クラシックD&Dを含むシステムの話を少しして、その後でキャラのレベルアップ作業をして、今回の一連のパグマイア話は終了する予定だ。次はマッスル太郎の第5部に専念したいし、その前に留守番している晶華たちのところにも帰りたいしな。何よりもストーカーがこちらに来たので、早く逃げたい」

アスト「お前がストーカー氏を嫌がっているなら、オレとしては彼を応援したいところだ。NOVAが困っている顔が何よりも見たいからな」

NOVA「こいつ、ストーカーに味方するだと?」

アスト「オレに貼られた変態のレッテルを、その男に貼るチャンスだからな。少なくとも、オレは男と抱き合いたいとメールで誘うほどの変態じゃないわけだし」

NOVA「いや、お前がストーカーという属性を帯びたのも、3分の1程度は奴のせいだぞ。お前のモデルの一部は、俺の奴に対する嫌悪感に起因するんだから」

アスト「何だと? つまり、このオレが変態三下呼ばわりされて、格好よく決められないのも、その男のせいだと言うのか?」

NOVA「少なくとも、俺の中ではそうだ。まあ、今ではアストの方が、奴よりはるかにマシだと思っているんだけどな」

ダイアンナ「当然だろう。アストをダディーのストーカー氏と一緒にするな。こいつはこう見えて、やる時にはやる一本筋の通った男なんだ」

NOVA「そうだな。ゴブリンスレイヤーTRPGゲームマスターをしてくれるぐらい有用な奴だからな、アストは。何だかんだ言って、俺はアストをムードメーカーとして優秀な男だと思っているよ。名前からして明日斗だし、基本的に陰鬱さとは無縁のコミカルキャラだからな」

アスト「あまり褒められた気がしないんだが、いいだろう。このオレがただの変態ストーカーとは一味違うことを次回は証明してみせる」

(当記事 完)