攻略の締めくくり記事
カニコング「例によって、バッドエンドと難易度について語る記事でごわす」
リバT『あとは、入手アイテム総括もしておきたくなりました』
ダイアンナ「入手アイテム?」
リバT『本作は「運命の森」に次ぐ野外冒険中心のゲームブックです。「運命の森」の過去記事でアイテム評価をしたので、本作でも行いたくなりました』
アスト「『運命の森』では、最初にヤズトロモさんからお金を払ってアイテムを買う場面があって、何を買う方が得かを判断する必要があった。でも、『トカゲ王の島』はアイテムを購入するわけじゃないだろう?」
リバT『いえ、お金こそ払いませんが、解錠ワイヤーを入手するための代価として、食料3食を支払ったりしたではないですか? 本作のアイテムは、入手するのにリソース消費をするものが多く、わざわざリソースを支払ってまで入手する必要があるのかを独断と偏見で裁定し、最適ルート選択の判断材料にするという目論見です』
ダイアンナ「結局、本作でクリアに最低必要なアイテムって、サルか【炎の剣】のどちらかだからね。それ以外は、なくても問題ない」
カニコング「しかし、【ソグの兜】と【ヴァルハラの角笛】は今回の攻略雑話の物語フレーバーとして絶対必要だったでごわす」
リバT『その辺の個人的なこだわりについても語っていただければ』
まずはバッドエンド
リバT『難易度を決めるためにも、バッドエンド数を先に確認する必要があります』
ダイアンナ「バッドエンドの数が多いゲームは、単純に難しいと言えるからね。リビングストン作品では、最初の『火吹山の魔法使い』と『運命の森』ではバッドエンド数が1ケタで、死に難かったけど、次の『盗賊都市』ではどうだったかな?」
アスト「『盗賊都市』では12回だな。リビングストン初の2ケタ・バッドエンドだが、そのうち6ヶ所はザンバー・ボーンの塔の中で、街中での死はそれほどでもないかな、と感じた」
ダイアンナ「『死の罠の地下迷宮』は、バッドエンド32回だから、一気に増えたって感じだね」
カニコング「さすがに『死の罠』ほどキツい作品ではなかったでごわす。まあ、技術点が9以上の敵が多くて、それ以下の技術点では攻略困難な作品には違いないが」
アスト「もう、この辺りに来ると、原技術点が11とか12でないと攻略不可能に近いと思えるな。10で何とかギリギリ行けるかも、と言ったところだ」
カニコング「技術点11のスティラコと黒ライオンは必須バトルでごわすからな。最初のバトルで、技術点10のカニや海賊船長とぶつかる辺り、ふるいに掛けられていると言っていい」
リバT『そこから推察するに、マンゴさんの技術点は8か9ってところだったのでしょうね。普通の海賊には勝てるけど、技術点10には勝てなかった』
ダイアンナ「『死の罠』のスロムが技術点10、体力点12だったから、それより少し弱い感じかな。技9、体10とか」
アスト「『サラモニスの秘密』で、冒険者志望の少年の技術点が6と示されたから、それに比べると技術点9は冒険者として、普通に通用する程度だな。さすがに火山島の秘境を生き延びるほどではなかったが」
リバT『では、バッドエンドについて振り返りましょう』
・132:人喰い樹の蔦に首を絞められて死亡。
・157:呪術師を攻撃した結果、呪文で創られた毒蛇に噛まれて死亡。
・188:ゴンチョンに支配されて、トカゲ王の後継者になる傀儡エンド。
・234:ウォーターエレメンタルに飲み込まれて、水中で衰弱死。
・260:ゴンチョンに支配されるエンド2。
・307:大ガニから逃げようとして、流砂に飲み込まれる臆病者の末路エンド。
・313:首狩族から隠れたものの見つかって捕まり、首を狩られるエンド。
・331:多数の首狩族と戦って、抗しきれず、背中を槍に貫かれる。
・346:不死身のトカゲ王に普通の剣では太刀打ちできずに敗北死。
・357:ガラガラ蛇の毒で死ぬ。
リバT『ということで、バッドエンド総数10回ですね』
アスト「『盗賊都市』よりも少ないのか。意外だな」
リバT『本作については、パラグラフ選択肢での死ではなくて、強敵との戦いで体力点を失っての討ち死にが多いと思われます。なお、本作で技術点10以上の敵は以下のとおり』
・22:トカゲ王・怯えモード(技10、体15)
・61:海賊船長(技10、体6)
・82:黒ライオン(技11、体11)
・111:トカゲ王・通常モード(技12、体15)
・116:熊(技10、体9)
・139:スティラコサウルス(技11、体10)
・158:スライム・サッカー(技10、体9)、泥沼で動きづらいため、技術点2のペナルティを受けることで、敵の技術点は実質12相当。
・182:大ガニ(技10、体11)
・190:サーベルタイガー(技11、体8)
・191:スライム・サッカー(技10、体9)、槍を投擲するも失敗。でも、泥沼ペナルティはなし。
・205:サーベルタイガー(技11、体8)
・254:サイクロプス(技10、体10)
・318:シェイプチェンジャー(技10、体10)
リバT『この中で必須バトルなのは、序盤の海賊船長か大ガニの2択と、スティラコ、黒ライオンだけですが、パラグラフ選択ミスやアイテム未入手とかで、技術点10以上の強敵と戦う可能性が多いわけですね。これに変異リザードマンや、ヒドラ、トロールなどの技術点9の準強敵を含めると、火山島の秘境は強敵モンスターがあれこれ遭遇する危険地域ということです』
カニコング「そういう過酷な場所で、技術点5の穴居人の女が単独で生き延びていたのが凄いでごわすな。首狩族みたいな集落を築いていたわけでもなく」
アスト「もしかすると、普段は技術点9ぐらいの穴居人の男がいっしょに暮らしていたのかもしれないな。ゲームブック本編には登場しなかっただけで」
ダイアンナ「たまたま外に狩りに出ていたか、それともトカゲ軍と遭遇して夫が殺されていたのかもしれない。洞窟に妻一人が残されて、夫の帰りを待っていたとか?」
カニコング「トラ少女のトリニーだけでなく、彼女の背景もそうやって想像すると、ますますトカゲ軍が許せなくなったでごわす」
リバT『まあ、たまたまイラストが美しい女性に描かれていたから、気になってるだけでしょうけどね。あれが、穴居人の男だったら、たぶん印象にも残らないってことで』
ダイアンナ「穴居人のイケメン男性ってのも想像つきにくいしね」
リバT『では、難易度評価に移ります』
難易度の話
★トカゲ王の島(難易度3)
・ラスボスが強い(◯):技術点12、体力点15のトカゲ王は、『死の罠』の最強地底怪獣ピット・フィーンド並みの強敵で、弱体化手段がなければ◎をとれるほどの逸材。しかし、【炎の剣】とサルの両方を入手することで、技術点が6に激減するのと、しょせんはゴンチョンの傀儡と思われているせいで、魅力的なラスボスとは言い難い。
ラスボスの攻略方法が用意されている分、ペットの黒ライオンの方が強敵に見え、さらに強敵2連戦のスティラコ&騎手の変異リザードマンタッグの方が(記事中で殺されたこともあって)手強く感じた。まあ、ラスボスよりも強い中ボスの存在も含めて、総じて◯といった評価。
・全体的に罠が多くて死にやすい(◯):バッドエンド数から見ても、罠が多いとは言えない。しかし、道中のリソースを減らされるペナルティの多さを考えると、いきなり殺されるのではなく、じわじわと消耗させられる形なので、それも含めて◯という評価。
・パズル構造が複雑(×):ジャクソンと違って、迷わせる構造はほとんどない一本道ストーリー。アイテム入手も必須アイテムの少なさで、能力値とダイス運の良さがあれば、初手でいきなりクリアも可能(技術点12あれば、スティラコ戦も有利に戦える)。
・ゲームシステムが難しい(×):リビングストンだから、システムはいつもの定番。逆に言えば、定番なゲームで、ここまで趣きの違うストーリーシナリオを紡げる懐の広さがリビングストンの魅力かもしれない。
・フラグ管理がややこしい(◯):入手アイテムはそれなりにあって、食料の消耗も含めて、普通に管理しないと本作は楽しめない。致命的とまではいかないけど、アイテムを入手していないからがっかり、という展開が数々あって、「持ってて良かった、ソグの兜」とか、「まさか、【混乱の指輪】がこういう役に立つとはな」とか、アイテムの効用が思ったより楽しい局面があった。昔、プレイした時には、そういう楽しさは気付いてなかったな(NOVA談)。
リバT『ということで、難易度3ですね』
カニコング「ちょっと低くはないか?」
リバT『やはり、ゲーム的に迷うところがあまりなくて、必須アイテムも少なく、初見攻略が十分可能という点ですね。道中の敵の強さやリソース消耗は、難易度の基準にあまり加えていませんし(一応、罠の一種と扱ったけど)、力押しで迷いなく乗り越えられる類のゲームは難易度が低く扱われるってことで』
・8:火吹山の魔法使いふたたび、モンスター誕生
・7:地獄の館、天空要塞アーロック、サラモニスの秘密
・6:バルサスの要塞、危難の港、サイボーグを倒せ、死の罠の地下迷宮
・5:さまよえる宇宙船、アランシアの暗殺者
・3:火吹山の魔法使い、魂を盗むもの、トカゲ王の島
・2:運命の森、盗賊都市
ダイアンナ「『サラモニスの秘密』は難易度8じゃなかったっけ?」
リバT『攻略直後のグランドマスターNOVAは、そう捉えていましたが、「火吹山ふたたび」や「モンスター誕生」と同列に置くほどではないな、という主観で、難易度7が妥当と訂正しました。評点を下げるとしたら、「ゲームシステムが難しい」の項目を◎から◯に下げたぐらいでしょうか。新鮮味があったのは間違いないですけど、成長ルールが加わった程度ですし、〈綴り魔法〉は便利だけど必須ではないという点ですね。新鮮味と難易度は違うと考えます』
カニコング「で、本作は下から数えた方が早い3でごわすか」
リバT『難易度5以上は、正解ルートを求めて、試行錯誤を繰り返す必要があるんですね。しかし、難易度3の「火吹山」は敵が強くないですし(迷宮はそこそこ複雑だけど)、「魂を盗むもの」は複雑な迷宮と敵の強さはそれなりにあるものの、回復リソースもダンジョン内に多く好バランスの良ゲー。それゆえに初心者向きと言えます。本作「トカゲ王の島」は敵が強いけど、迷うところがないという、火吹山とは対極の位置にありますが、初心者向き(ただし初心者だからこそ能力は最大値推奨)で結構、ワクワク冒険を楽しめる作品ですね』
アスト「だけど、安田社長の評価は低かったんだな」
リバT『あの人は、アイデアの新規性とか、トリック的な手法を評価しがちで、王道よりも変化球好みのところがありますから』
アスト「まあ、自分が商品を売る立場になって、『運命の森』や『トカゲ王の島』の再評価をするようになったわけだけど、新規性を好むとか、トリック性のあるゲームが好きという姿勢は変わってないか」
リバT『お年を召されて、保守的になるかと思えば、そんなこともなくフットワークの軽さが健在なようで、よろしいのではないでしょうか』
アスト「FFC4での安田解説が少なめだったので、FFC5の収録作品発表とか、次号のGMウォーロックでの今後のFF展開の話とか、新規の記事を読みたいものだ」
リバT『グランドマスターNOVAが期待してるのは、こちらの翻訳がいつ出るのか、ですけどね。未訳分も含めたFF歴史総括本って、わくわくするじゃないですか』
ダイアンナ「もちろん、既訳作品のイギリス本国視点での歴史的意義というのも気になるね。日本とはまた違った視点での作品紹介があったりすると興味深いし、日本では作品未紹介のジョナサン・グリーンという御仁がどういう視点を持っているかも気になるところだ」
トカゲ王の島のアイテム話
リバT『では、入手アイテムにスポットを当てて、火山島の旅を振り返って、一連の攻略を締めくくりたいと思います。シーン別に見て行くってことで』
★海岸
カニコング「ここでは、大ガニ戦の後の小屋探索で入手できる〈アニス実の味のする毒消し〉と、海賊戦の後で入手できる〈鉄の延べ棒〉の2択でごわすな」
リバT『毒消しは、スティラコ連戦の後で必ず通過するパラグラフ218番で、トゲ薮から受けるダメージ3点を無効化する効果ですね。一方、鉄の棒はパラグラフ387番で、川から出てきたワニ(技6)と戦うことなく無力化させる働きです』
カニコング「正直言って、ワニはこの島ではザコに等しいので、鉄の延べ棒はあまり有用アイテムではない。アイテム効果としては、確実に受けるダメージ3点を減らせる毒消しの方が絶対にいい」
アスト「問題は、その3点ダメージを減らすのに、強敵の大ガニを倒すメリットがあるかだな。カニ戦で、海賊戦よりも3点以上ダメージを多く受けるなら、損するわけで」
カニコング「記事中のキャサリンは、カニ戦で6点、海賊戦で4点のダメージを受けたので、それぐらいなら毒消しの方が得ということでごわす」
アスト「お前は、ワニ相手でも2点ダメージを受けていたじゃないか。ワニと戦わずに済んだ方が得をしたと言えないか?」
リバT『結果的に、どっちもどっちだと思いますが、一応、毒消しの方が得した気分ですね。〈鉄の延べ棒〉って、所詮は海賊船長が〈金の延べ棒〉を部下から隠すために、ダミーで埋めた宝箱の財宝に過ぎませんから』
ダイアンナ「本物の海賊のお宝も、島のどこか別の場所に埋まっているかもしれないんだね」
★密林
リバT『ここは、首狩族の集落イベントで槍か【幸運のお守り】を、北西の遠回りルートでロープ、手斧、島の簡略マップ、開錠ワイヤーを入手できます』
ダイアンナ「ロープは多くの冒険で役立つ便利アイテムで、入手できたらありがたいと思うけど、本作では使う機会がなかったね」
リバT『珍しいですよね。まあ、密林だとロープは蔦か何かで自作することもできるんですけど』
アスト「サバイバル系のゲームだと、そうするよな。難破船の索具からロープを入手するか、天然の蔓を加工してロープにするかが、ヒドゥン・オブジェクト系の冒険ゲームの定番だと思う」
ダイアンナ「ヒドゥン・オブジェクト?」
アスト「隠れたアイテムを探して、サバイバルや冒険、犯人逮捕などの物語を遊ぶ系のゲームだよ。アプリゲーなんかにもよくある」
カニコング「とにかく、ロープを入手した際は、やったと思ったでごわすが、本作では結局使わないと知って、がっかりし申した」
アスト「手斧は、このルートで遭遇する密林小人を無傷で切り抜けるのに必要だが、後でイカダ作りにも使えるんだよな。密林小人は他にどうやって切り抜けるんだ?」
リバT『食料3食を渡すか、麻酔薬の吹き矢に射抜かれて気絶してしまい、食料含むアイテムを全て奪われるかですね』
ダイアンナ「どっちもイヤだから、手斧を渡すしかないってことか」
リバT『マップも含む盗賊老人の情報は、攻略初見だと物語を味わうのに必須だと思うのですが、やはり、老人に最大3つの食料を渡すのが攻略上、厳しいのですね』
カニコング「情報は一度、聞けば、再プレイ時は必要ないでごわすが、開錠ワイヤーの扱いをどう考えるかが悩みどころと思う」
リバT『鉱山での奴隷解放のために必須ならともかく、終盤のトカゲ王戦直前で、捕虜のドワーフを助けられるか否かですからね』
カニコング「彼を助けるには、双頭の変異リザードマン(技9、体9)と戦ったり、運だめしで背後から奇襲するリスクが発生する。そこまでして、彼を助けるメリットがあるかと言えば、ほぼない。彼を助けようが、助けまいが、直後のパラグラフでトカゲ王と対面することになるでごわすからな」
リバT『損得勘定で言うなら、そのドワーフさんを助けるためだけに、開錠ワイヤーを食料3食で入手するのは明確に損なわけです。ストーリーが何ら変わるわけでもなく、ヒーローとしての自己満足感を覚える程度でしょうか』
カニコング「結果的に、密林の北西回り道ルートを通る必要性は甚だ低いでごわすな」
ダイアンナ「だから2周めはショートカットしたわけだね」
リバT『アイテムの有用度は、首狩族ルートの槍とお守りの方がよほど大きいですの』
カニコング「槍は沼地での強敵撃破に有効だが、強敵を避けるパラグラフを選ぶと、豚のローストで体力3点のボーナスがもらえるでごわす」
リバT『豚ローストは、食べたときの満足感よりも食べ損ねたときの残念感が付きまとうような文章描写になっていますね。まあ、槍を入手時に3点ダメージを受けているので、豚ローストで差し引きゼロに戻っただけですけど』
アスト「それに比べると、【幸運のお守り】は劇的にゲーム性を変えてくれるな」
リバT『運が7点未満に減ることはないので、戦闘時の運だめしを使い放題ということで、よりダイナミックな戦闘が展開できます。まあ、絶対に失敗したくない運だめしに備えて、そういう活用をするには幸運ポーションが必須と思いますが』
ダイアンナ「しょせんは運だめしだからね。確実性には欠けるわけだ」
リバT『結果的に、首狩族ルートはギャンブラー御用達ルートになるわけです。より刺激的なトカゲ王攻略を楽しみたいなら、どうぞ、と』
★峡谷地帯
リバT『沼地はアイテムが手に入らないので飛ばして、峡谷地帯です』
カニコング「ここは何よりも【ソグの兜】でごわそう」
アスト「1ラウンドめの戦いには絶対に勝てるというのはチートだよな。結果的に、相手の体力を2減らした状態で、戦闘できるわけで」
ダイアンナ「先制攻撃で確実に2点ダメージというのは、運だめし成功の倍ダメージと組み合わせて、非常に美味しいと」
リバT『一説によると、本作の敵の強さは【ソグの兜】のチート効果に対応するため、と言われています』
カニコング「つまり、【ソグの兜】を入手しないで戦うのは非常にキツいバランスだと?」
リバT『あと、【ソグの兜】の有用性は、火山のふもとのカミソリ牙や、トカゲ宮殿のゴブリン牢番と戦う際に、敵の奇襲効果を無効化できますね。攻略記事ではそれらの敵と戦わなかったから記述されませんでしたが』
アスト「敵の不意打ちも兜が受け止めてくれるのか。さすがだな、ソグ」
リバT『そのために入手時のリスクもそこそこ大きいですね。原体力点18以下のキャラだと確実に5点ダメージを受けますし、原体力点が最低値の14点だと入手できません(入手した途端、9以下になって死ぬか能力激減するので)』
カニコング「兜の入手イベントの直前に体力点を19点以上にしておくことが、被害を最低限にする秘訣でごわすな。2周めで学び申した」
リバT『その後は、砂地のかぎタバコ入れから入手できる小さな金塊ですが、ホブゴブリンの橋番に渡す賄賂ぐらいしか役に立ちませんね』
ダイアンナ「金塊は持っているだけで幸せになれる宝の一つじゃないか。もちろん、宝石の方がいいけど、本作では宝石が入手できないんだね」
アスト「まあ、金塊も大事だが、かぎタバコ入れの中のメモはこの先のヒントになるから重要なんだ」
リバT『ついでに谷を抜けた平原地帯にも進みます。鉄砲ガエルの池の底に眠っていた木箱の中のアイテムが4点。【不器用のポーション】【無限の小袋】【登攀ブーツ】【混乱の指輪】になりますが……』
カニコング「ポーションは1ラウンドめに6分の1の確率で武器を落として、そのラウンドの戦闘に勝てなくなる。実害だけでなく、戦闘時にわざわざ武器落としチェックを毎回、行わないといけないので面倒でごわす。面倒な作業でも自分が得をするなら一手間かけようって気にもなるが、どうして自分が損をするために手間を要するのか、という理由だけでイヤな効果でごわそう」
アスト「小袋は、鉱山のグラニットを収納することもできるけど、彼らを召喚するようなイベントはなかったな。あとは、ウォーターエレメンタル対策か」
ダイアンナ「エレメンタルを収納したのはいいけど、制御できずに危険だからという理由で、穴に埋めちゃうんだね」
リバT『トカゲ王に続編があるなら、その埋められたウォーターエレメンタルを掘り起こすイベントがあると面白いと思います。登攀ブーツは、鉱山で+2効果の名剣入手時に必須アイテムになりますが、それだけですね』
アスト「機能的には便利なアイテムなんだけど、他に使える機会も欲しかったな。そして、指輪は技術点マイナス2という破格の呪いアイテムなんだが、『着用者がすでに混乱しているので、他の眩惑効果に影響されずに真実を看破できる』という不幸中の幸い効果が2ヶ所もあって面白い」
リバT『技術点が減る効果は避けたがる(見なかったことにする)プレイヤーは結構いると思いますが、あえてマイナス効果を受け入れた者だけが、感じ入れる類のイベントですね。転禍為福というか』
カニコング「分かっていれば、技術点12から混乱効果で10に減らした後で、名剣(+2)でペナルティを打ち消して、〈酔拳の戦士〉みたいなノリをキャラ性として打ち出すロールプレイも一興か、と」
アスト「だったら、次からそうしろよ」
カニコング「強制されると、興が冷めるでごわす」
★奴隷鉱山
リバT『では、いよいよ鉱山ですね。まずは、見張りのリザードマンを倒すと、鉄の鍵3本が手に入るのですが』
カニコング「じっさいに使うのは鉱山ではなくて、トカゲ王の宮殿牢獄の偽装宝物庫でごわしたな」
アスト「そのリザードマンはきっと、宝物庫の番人だったのが、奴隷鉱山の見張りに左遷されたんだよ」
ダイアンナ「辻褄合わせから、設定が追加されるのは創作あるあるだよね」
リバT『鉱山内部では、【ヴァルハラの角笛】と名剣+2が入手できます』
カニコング「どちらもソグに縁のある品と話をこじつけたでごわす」
リバT『関係ない別々のイベントに何らかの関連づけを行うと、そこにドラマが発生するという創作の秘訣があるみたいですね』
ダイアンナ「別々の事件が、実は裏でつながっていて、掘り起こしてみたら背後に巨大な陰謀組織が存在していて……って奴かい?」
リバT『さすがに全ての事件の黒幕がこうだったと言われると、ご都合主義と言われるかもしれませんが、ある程度なら話をつなげる方が面白いと思われます』
アスト「そのための辻褄合わせのセンスって奴か。関連づけや、巧みな辻褄合わせが壮大な物語を生み出すためのテクニックってことだな」
リバT『最初から壮大さを志向していても、辻褄合わせが下手だと、ただの張りぼてですからね。最初は小さなアイデアだと思われていたものが、関連づけで紡ぎ合わせるうちに、思わぬ広がり方を示して感じ入る展開こそが理想ですね。その一方で、主人公には行動するための動機が最初から具体的に明示されているのが望ましい、というのもありますが』
アスト「主人公の行動動機が不明確だと、感情移入しようがないからな」
カニコング「その点、吾輩は簡明でごわす。触手のためであり、キングへの返り咲きこそ我が悲願。そして、行く行くは触手帝国(テンタクル・エンパイア)への夢が……」
ダイアンナ「あんたはここの主人公ではないし、あまりに奇抜な行動動機は感情移入に至らないから」
リバT『話を戻して、北欧神話に基づく【ヴァルハラの角笛】が異世界のタイタンに存在したことで、それに縁ある伝説の戦士ソグもまた我々の世界に関連づけがあるという裏設定が思いついたわけですね』
カニコング「なるほど。ソグ=カニ子が現代(80年代イングランド)から過去のアランシアに転生したというのも、ヴァルハラというキーワードからの発想でごわすか」
リバT『大体、南洋のロストワールド風な秘境の火山島に、北欧神話のアイテムが眠っているというのも変ですからね。こればかりは、若き日のリビングストン氏のごちゃ混ぜ発想に起因するものでしょうが、ここで北欧神話の雪と氷の世界を思いついたからこそ、次のFF9巻のイメージがつながったのかもしれません』
カニコング「『雪の魔女』はいずれクイーンにお任せするとして、【ヴァルハラの角笛】は入手時に5点ダメージを受ける代わりに、技10、体10のサイクロプスと戦わずに済むアイテムでごわす」
アスト「サイクロプスとの戦いで、5点以上のダメージを受けると思えば、【ヴァルハラの角笛】がお得と言えるだろうな」
カニコング「損か得かではない。物語的に盛り上がるかどうかが大事でごわす。【ヴァルハラの角笛】のおかげで、キャサリンが北欧の戦乙女のような風格が醸し出された点が一番美味しい」
ダイアンナ「聖闘乙女が聖なる戦乙女と意訳されて、セインティアがワルキューレと混同されるのは、上手く話がつながったと思ったね」
★呪術師クエスト
リバT『呪術師クエストの最中に入手できるのは、熊を退治した際に得られる【真鍮の笛】と、穴居人の女の洞窟で得られる精神防御の化粧粉ですね』
カニコング「前者は何の役にも立たないでごわす。技術点10の恐ろしい熊を倒して得られるのがただのゴミアイテムとは、スルーするのが正解と言わざるを得ない」
アスト「FFの熊って、そんなに強かったっけ?」
リバT『「運命の森」で初登場したときは、技術点7、体力点8でしたね。「モンスター事典」によれば、成獣が技9、体8で、幼獣が技5、体6とあります。本作登場の熊はロストワールドの過酷な環境に適応した強化体と考えられますね』
ダイアンナ「『運命の森』で技術点10だったのは、ファイア・デーモン、ワイヴァーン、シェイプチェンジャーの3体だけだったもんね。総じて5〜8の範囲に収まる程度の敵だったし、技術点10の敵とは戦わなくても攻略できたから簡単だった」
リバT『最初の能力値がどれだけ低くても比較的容易にクリアできるという言葉が正解だったのは、5作めの「盗賊都市」までだったと思うのです。6作めの「死の罠」以降は技術点が最低でも10以上ないと必須戦闘で勝てないのではないですかね』
アスト「リビングストン作品では特にそれが顕著だな。序盤でいきなり技術点10の敵が出て来て、ふるい落としに掛かって来るし」
カニコング「そんな過酷な環境で、技術点5の穴居人の女は大変だったろうな、と同情するでごわす。精神防御の化粧粉は、呪術師の恐怖の試練を乗り越えるのに必須アイテムだったが、背景を想像するに一番気の毒だったのは、洞窟内部で食べ物が全部腐っていたこと。つまり、まともな食料を調達できる者がいなくなったということでごわすからな」
リバT『精神防御の化粧粉についても、元々は女の物ではなくて、「リザードマンの奴隷にされた魔術師が鉱山に連れさらわれる前に落としたものを、女が見つけて拾った」と裏事情が記載されていますからね』
アスト「その魔術師は解放同盟の中にはいなかったんだな」
カニコング「いたら、魔法が使える人材は貴重なので、目立つように記載されていたはず。きっと鉱山での過酷な労働で力尽きて命を落としていたのでごわそう」
ダイアンナ「なるほど。アイテム一つを掘り下げることでも、背景物語があれこれ想像できるんだね」
★終盤
リバT『では、呪術師さんからトカゲ王を倒す方法を聞いた後ですね。まず、スティラコ戦の後に倒した変異リザードマンから上質の盾+1が入手できます』
アスト「リビングストン作品は、原技術点プラスとか、攻撃力プラスという記述がないから、字義どおりにルールを解釈すると武器や防具が手に入っても(技術点が減ってない限り)美味しくないんだよな」
リバT『その点はジャクソンや他の作家(キース・マーティンなど)の方がマメに記載してくれているんですね。ただ、海外のファンでも、戦闘時に限っては技術点に+する解釈で攻略している人もいるみたいだし、その辺はプレイヤー有利で考えていいのではないでしょうかね』
アスト「敵が強いから最初から技術点11とか12で始めて、その代わり武器での強化は減少した技術点の回復に留めるか、それとも武器による技術点上昇を受け入れる代わりに初期技術点は9以下で頑張って挑戦するか、という別の楽しみ方もあるか」
カニコング「それでも、能力を強化できる武器を入手する前の序盤で、技術点10の強敵がいきなり登場するのがリビングストン流でごわす。やはり、技術点は最初から10以上は必要な作風であろう」
アスト「お前もリビングストンの何たるかが分かったようだな」
カニコング「力には力、王道パワーゲームは吾輩の望むところでごわす。現にジャクソンの『地獄の館』では2回死んで3人めで解けたが、リビングストンはキャサリンが1回死んだだけでクリアに成功した」
アスト「その前に1回解いたって言ってなかったか?」
カニコング「うむ。パラグラフ解析のために、能力値を決めずに、ただ読み進めただけで最後まで到達した。読むだけなら簡単なのがリビングストン。まあ、鉱山のマップだけは構造を読み解くのに閉口したでごわすが」
アスト「やれやれ。ゲームブックを読んだだけで、サイコロも振らずに解いた気になるとは、お前もまだまだ素人だな。それじゃあ、ゲームバランスとか、食料が不足してひもじい思いをするとか、過酷なサバイバル体験が味わえないだろうが」
カニコング「後からでも味わったのだから、良いではごわさんか。楽しみ方は人それぞれでごわす」
ダイアンナ「まあ、そう言うな、アスト。ダディだって、『巨人の影』は試しに能力を決めずに読むだけでストーリーを把握したって言ってたし、物語要素を味わうだけなら、そういうやり方もありではないか?」
アスト「それって、実プレイをせずに、シナリオを読んだだけでゲームを見知ったと考えているのと大差ないと思うんだが? 読んだだけの知識と、実体験で培われた知恵というのの違いは大きいぜ」
リバT『まあまあ。ある程度の体験があれば、読んだだけの想像力で実体験がこうなるだろうと推測できるケースもあるわけで。技術点10という数値を見て、厳しいと思うか、楽勝と思うかは、FFゲームブックを解いた者でないと、想像もできないってことで』
アスト「まあ、いいや。次の入手アイテムは、サルだな」
ダイアンナ「サルをアイテムと言うな。大事な仲間だろう?」
アスト「実質的にアイテムだろう? 対トカゲ王決戦用アイテム。仲間だと言うのなら、それ以外の文章でもっと記述を膨らませてもいいはずだ」
リバT『当攻略雑記では、サルをキャラクター扱いして、クイーンに演じてもらいましたけど、じっさいのゲームブックではサルの描写は入手時とトカゲ王との対決時にしかありませんから、そこから話をどう膨らませるかはプレイヤーの想像力に掛かって来ます』
ダイアンナ「何にせよ、ペットを連れて行けるゲームブックもFFでは初じゃないかな」
リバT『本作では、トカゲ王も黒ライオンを飼ってますし、少女とサーベルタイガーとか、スティラコに騎乗したトカゲ兵とか、獣の相棒が多く見られますね』
アスト「だったら、小ザルも巨大化して、技術点が11になってくれたら頼れる相棒になっていたかもしれないな」
リバT『そういう召喚モンスター、あるいは仲間モンスターのようなゲーム性は、本作の書かれた84年時点では時期尚早だったのかもしれませんね。【無限の小袋】を利用したグラニット召喚とか、水の精霊召喚などができれば先進的だったのでしょうが』
アスト「大魔術師ワードナが召喚モンスターを扱う『ウィザードリィⅣ』で87年、同年に『女神転生』がスタートして、召喚や仲間モンスターという要素がゲーム界で主流な素材として花開くのは90年代ってことを考えると、確かに時期尚早か」
リバT『ただし、83年時点でジャクションが「ソーサリー」の魔法としてGOB(ゴブリン召喚)やYOB(ジャイアント召喚)を導入して、術者の代わりにモンスターを戦わせるゲーム性を早くも導入していたのはさすがと言えましょうか。もちろん、元ネタがD&Dにもあったとは言え、召喚魔法という魅力的な素材アイデアを形にしたのは、いかにも先駆的と言えましょう』
カニコング「一方、リビングストンは奴隷の反乱というテーマで、本作と次の『雪の魔女』をつなげているようでごわすな」
リバT『投獄状態からの解放というテーマで考えると、興味深くもありますね。では、続きですが、終盤で手に入る鞭や、ゴブリン看守から盗む胸甲(+1)はあまり有効的でも劇的でもありませんでした。それより拷問用ナイフに偽装した【炎の剣】ですね』
アスト「拷問室が、トカゲ王のお宝部屋だとはブラックジョークもいいところだ」
ダイアンナ「生体実験とか拷問とかがトカゲ王の趣味で、いかにもサディスティックな性癖を示している感じだね。大体、その人の持っているお宝がその人の性格を表現しているじゃないか。ダディの書庫とかさ」
アスト「関連書籍とかゲームとかがお宝と言えるのは、ゲーマーの証なんだろうな。他にも、模型の積んでる箱をお宝と言えるのはモデラーなんだろうし、お宝アイテムの話はいいものだ」
リバT『お宝は、ただの物ではなくて、それにまつわる思い出話とか伝承エピソードと相まって、人の心を惹きつけるものだと思います。物品的価値だけではなくて、そこに込められた心や想いこそが大切なんだろう、と結論づけて、トカゲ王の物語を締めくくりたいと思います』
(当記事 完)