ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「雪の魔女の洞窟」攻略紀行(その7)

タイトル変更と、よもやま話

 

リバT『前回まで、当リプレイは攻略感想としていましたが、オリジナル展開が過ぎると、もはや感想ではないな、ということで、今回から「攻略紀行」とマイナーチェンジしました。そして、これまでの記事タイトルも新しい方に統一したということで』

 

ダイアンナ「紀行文と言うと、旅の記録だな。しかし、ダンジョン探検を紀行とは言うまい」

 

リバT『ダンジョンは今回でクライマックスになるはずです(たぶん)。しかし、当作品はタイトル通りの洞窟を脱出してからが、作品の特徴というか、ここからのアランシア名所巡りの旅こそが本番という構図になっているのですね』

 

アスト「元々は、雑誌に掲載された200パラグラフの短編だったみたいだ。本リプレイで言うなら、その4で魔女を倒し、次いで宝を入手して終了だったらしい」

 

ダイアンナ「すると、シャリーラが主人公に憑依する展開はなしか」

 

リバT『それは元々ありません。後半を書き足してパラグラフ400まで拡張したFF9巻めでも、水晶球に宿る霊体として〈雪の魔女〉(名前はまだない)が復活して、主人公たちの前に立ちはだかるシーンはありますが、主人公に憑依するというイベントは当リプレイのオリジナルなので、読者の方は勘違いなさらぬよう』

 

ダイアンナ「うむ。もしも『雪の魔女の洞窟』を憑依物だと期待して、ゲームブックを読むとガッカリするからな。ぶっちゃけ、憑依による悪堕ち、闇堕ちはダディの秘密の趣味性癖の一つであって、FFで該当作品は……あるのかな?」

 

リバT『バッドエンドで、そういうシーンはいろいろあるのかもしれませんが、そもそもプレイヤーキャラクターの主人公が悪のボスに乗っ取られたら、それで話が終わってしまうじゃないですか? 私めとしては、「乗っ取られるかもしれないよ」とジワジワ迫り来る恐怖で危機感を演出したかっただけなのに、プレイヤーが嬉々として、いきなり自らボスに乗っ取られるなんて想定外です』

 

ダイアンナ「いや、ボスがプレイヤーキャラを乗っ取ろうとするなら、むしろ機先を制して、プレイヤーがボスを乗っ取った方が勝ちかな、と判断したまでだが。その方がドキドキ楽しいし」

 

リバT『プレイヤーがシャリーラを演じるなら、この後、誰と戦うんです? 元のゲームブックでは、この後、主人公が復活シャリーラの霊を滅ぼすシーンになる予定なんですよ』

 

ダイアンナ「いっそのこと、リサがシャリーラを受け入れて、最強の魔女剣士になるって展開はどうだろう?」

 

リバT『それでは、その後のゲームブックの攻略ができなくなって、別の物語になってしまいますよ。原作があるのに、多少の補完をする程度ならともかく、大筋をひっくり返してしまえば、原作ファンを敵に回します。オリジナルでやれ、とツッコミ入れられますよ。それじゃなくても、原作改編してトラブったドラマがいろいろ叩かれまくっていたご時世なのに』

 

アスト「うむ。原作をお借りして話を作っている立場の者が、原作者の意向に敬意を示さない態度をとってしまえば、原作ファンを怒らせてしまうな。まあ、世の中には改編された作品の方が一般的に有名になるケースも少なからずあるわけだが」

 

リバT『アニメのルパン三世とか、必殺仕掛人から始まる必殺シリーズとか(原作は必殺という言葉がつかない「仕掛人シリーズ」だけど)、ゴッドマーズとかですね』

 

ダイアンナ「例が古くないか?」

 

リバT『新し過ぎる作品は、原作ファンの怒りを呼び込む危険性がありますし、改編作品の歴史的評価が定まっていませんからね。とにかく、クイーンには何とか原作ファンを怒らせない程度の辻褄合わせをしていただかないといけません』

 

ダイアンナ「分かった。シャリーラを上手く演じてみせるよ」

 

リバT『だから、どうして敵ボスを乗っ取るのですか!?』

 

ダイアンナ「その方が、読者にとって新鮮で面白いから? 少なくとも、あたしは楽しい。ゲームでボスを演じるのって、こんな気分が良いものだったんだな」

 

リバT『そう思うのなら、GMをやればいいものを』

 

ダイアンナ「いや、GMでボスを演じると、プレイヤーに負けてしまうじゃないか。GMが勝ってしまうのも話が終わって気まずいし。プレイヤーが一時的にでもボスを演じることで得られる栄養分ってあると思うんだ」

 

リバT『それは、かなりレアな栄養分だと思いますが……とにかく、いろいろ辻褄合わせをして下さいよ。ゲームブックのファンの皆さんを納得させる程度には』

 

アスト「まあ、ここから先は、辻褄合わせをいろいろとしないといけないみたいだな。〈赤速〉(レッドスウィフト)は山エルフじゃなくて森エルフだとか、スタッブはやはり老ドワーフだとか、そういう記述も見つかったし、記事書きした後でそれを覆す記述がポロポロ出て来たわけだから」

 

リバT『そもそも、その2人も後半に入ってから登場したキャラで、同行者とのやり取りが行われると、本来、1人プレイのゲームブックの物語が楽しくなりますね』

 

アスト「それだけに、同行者との別れが寂しくなったりするんだな。さらば〈赤速〉。お前のことは忘れない」

 

リバT『まだ殺さないで下さいね』

 

ダイアンナ「そうだな。赤ツバメを殺すのはあたしなんだ。どんな演出で死なそうかな。フフフ」

 

リバT『そこで邪悪な笑みを浮かべないで下さい、クイーン』

 

ダイアンナ「同じ死ぬなら、少しでもインパクトのあるシーンに仕立てたいじゃないか。エンタメってのは、そういうものだろ? 読者に感じ入らせる死に様が描けたら、物語の書き手冥利に尽きる、とダディの声が聞こえたような気がした」

 

リバT『そんなわざわざハードルを上げるようなことは、グランドマスターNOVAは望んでいないと思いますよ(苦笑)』

 

アスト「まあ、原作ゲームブックに基づきつつ、他にない攻略記事を書きたいというのは、作者の本音だからな。せいぜい、楽しく遊ばせてもらうとするか」

 

迫りくる闇への予感

 

リバT『前回、ブレインスレイヤーの危機から仲間を救ったリサさん。今回はその続きからです』

 

リサ(ダイアンナ)「おかしい。あたしには救った覚えが全くないんだが、と戸惑うリサ・パンツァ。事実、救ったのはシャリーラだからな」

 

スタッブ(アスト)「しかし、わしらはそんなリサ殿の内面には気づかず、命の恩人として感謝を捧げるのみじゃ。それにしても、ブレインスレイヤーとやらに脳の栄養を吸い取られた影響からか、腹が減ったのう。この辺りで食事にせんか?」

 

リバT『それは、次のイベントの後で、そういうシーンがありますので、少し待って下さい』

 

スタッブ「仕方ない。もう少し頑張ってみるか」

 

リサ「あたしは、体力も運もマックス状態なので、無理に食事をしなくてもいいと思っているんだけど、次のパラグラフは176番だね」

 

リバT『次の部屋に入る扉に、短剣が突き立てられていますね。そのままにして扉を開けるか、短剣を引き抜くかの2択です』

 

リサ「この短剣は罠だね。魔法が込められて、持ち手を勝手に傷つけて、場合によっては自ら心臓を貫いて死に至らしめるんだ。うかつに触らない方がいい、と微笑を浮かべる」

 

赤燕『それも、未来視の力か?』

 

リサ「未来視か、運命神のお告げか、それとも過去の自分の記憶か……はっきりしたことは分からない。だけど、今のあたしには分かるんだよ、この洞窟のあれこれが。疑うと言うなら、試しに短剣に触ってみるがいい。死にたいなら止めないよ」

 

スタッブ「まあまあ、赤ツバ。ここでリサ殿を疑っても仕方なかろう。短剣一本のために、わしらが仲違いしても虚しいだけじゃ。リサ殿が短剣を危険だと言うなら、触れずに置く。それぐらいの恩義を、わしらはリサ殿に負っているのではなかったかな?」

 

赤燕『確かに、君の言うとおりだ、スタッブ。少し神経質になり過ぎていたかもしれない。変に勘繰って悪かった、リサ・パンツァ』

 

リサ「謝罪は受け入れるわよ、イケメンエルフさん。知り合って間もないんだし、こういう場所だからピリピリする気持ちも分かる。あたしだって、この洞窟がどこまで続くのかって苛立っているもの。でも、安心して。出口はもうすぐよ。闇が深いほど夜明けも近いっていうのは誰の言葉かしら?」

 

赤燕『誰かは知らないけど、良い言葉に聞こえるよ。夜明けか。しばらく見てないな。君がいなければ、闇に一生囚われていたかもしれないし、感謝しているのは間違いないんだよ』

 

リサ「感謝の言葉は、洞窟を脱出してから聞くわ。3人で無事に笑って、外の空気を吸った頃にね……とフラグを立てておく」

 

リバT『それでは短剣の罠をスルーした次のパラグラフ285番で、食事タイムです。エルフとドワーフの分までリサさんが提供しないといけないので、保存食を3つ減らしてください』

 

リサ「これが理不尽に感じるのよね。残り5食があっという間に2食になった。体力点12点分の恨みの目で、赤ツバメとスタッブを呪いたい気分。もちろん、仲間相手にそんなことはしないけど、食べ物の恨みは恐ろしいって感じ」

 

スタッブ「すまない、リサ殿。この食事の借りも必ず返す。……こう言って、どんどん返せない借りが膨らむドワーフであった。まあ、刀は研いであげたけど」

 

リバT『エルフはたまに役立ってもくれるけど、このドワーフゲームブック内では本当に役立つ場面が微小なんですね。ムードメーカーの3枚めキャラになってしまっているというか』

 

スタッブ「21世紀に入って、格好いい有能ドワーフの登場する作品も見るようになったが、旧世紀のドワーフの扱いは散々じゃった。ロードスのギムさんや、ホビットのトーリンの死に様を除けば、不平たらたら愚痴を言って、何かとエルフと口論ばかりして、後先考えずにオークやトロールに積年の恨みじゃ〜と突撃しては仲間に迷惑をかけ、酒樽呼ばわりされるおっさんキャラしか作れんテンプレ種族という」

 

リバT『格好いいドワーフは死んだドワーフだけ、という格言もありましたが、可愛さではホビットに負け、クールさではエルフに負け、性格ではどんな取り柄がありますか?』

 

スタッブ「義理人情には篤いぞ」

 

リサ「そもそも、ドワーフを主人公にした作品がほぼないのが問題では? 『ホビットの冒険』は有名だし、FFシリーズではエルフを主人公にした『恐怖の幻影』がある。ドラゴンランスの最初の主人公はハーフエルフだ。ドワーフが主人公だと何が思いつく?」

 

リバT『ウィザードリィRPGの一部リプレイとか、アースドーンという海外RPGだと、ドワーフにスポットが当たる話もあったと記憶しますが、今ではメジャーな作品とは言い難いですね。ドワーフ名脇役ではあっても、主役として華々しく活躍する作品は……やはりウォーハンマーのモヒカンでしょうか?』

ホビージャパン ウォーハンマーRPG ルールブック TRPG

スタッブ「色物ネタキャラ枠じゃな。戦隊で言えばキレンジャー枠、ゲッターで言えばゲッター3枠、ガンダムで言えばガンタンクと言ったところか。ともあれ、今だとパラグラフ285番の食事シーンがもっと丁寧に描写されて、3人の仲間の親睦が印象づけられるかもしれないが、『雪の魔女の洞窟』では単に主人公の食料を浪費させるだけのネガティブ・イベントにしかなっていないのが残念だな」

 

リサ「序盤のかまくら(イグルー)で2食、ここで3食消費するので、実質的に5食分しか体力回復に使えないという。今のところ、自由意志で食事をしたのは3回(体力12点分)だけで、残り2食(体力8点分)しか回復できないというのは、結構不安だね」

 

リバT『それでも、時々は体力回復イベントが用意されていますし、当リプレイでは極力、体力を消耗するイベントを避けて通っているので、戦闘で失うのを除けば、何とかなるのではないでしょうか』

 

リサ「まあ、いざとなれば、シャリーラに変身する無敵モードで何とかするしかあるまい」

 

リバT『シャリーラさんは無敵モードではないですから。純粋に敵ですから』

 

リサ「裏ワザで用意されていてもいいじゃないか。ドラクエ4ピサロみたいに、敵ボスを味方にできるモードがあっても」

 

リバT『そりゃあ、「君もバルサス・ダイアになって、ザラダン・マーのアジトに潜入して雌雄を決するゲームブックというのがあれば、プレイしたくなるFFファンは結構いるかもしれませんが』

 

リサ「若き日のニカデマスが主人公の冒険でもいいな。FF名物キャラを使えるゲームとか。そんな願望で、シャリーラをプレイしているわけなんだが。同人ゲームブックでないかな。『美少女魔術師のシャリーラがいかにして氷の魔神と契約して、吸血鬼となって、〈雪の魔女〉として君臨するに至ったか』を再現した過去編『雪の魔女の誕生』とか」

 

リバT『ある意味、シャリーラは凄いですね。FFゲームブック数ある中で、女性の敵ボスって他に誰かいたでしょうか?』

 

スタッブ「『仮面の破壊者』の魔女モルガーナはボスじゃなかったかな?」

 

リバT『あれ? 確か黒幕は40の人じゃなかったですか?』

 

リサ「コレクション5の収録候補作品のネタバレは置いておいて、そろそろ話を進めないか? 今回で洞窟を脱出する予定だったのだろう?」

 

リバT『そうでした。30分ほどの食事休憩はこれで終わって、通路はまた左右に分かれていますが?』

 

リサ「?だらけの流れだが、あたしには分かるぞ。先に右へ行くと、痛い目にあうことが。ここは左の298番が正解だとな」

 

スタッブ「さすがはリサ殿。まるで全てを知っているかのような迷いのなさで、的確に我らを導いてくれる、と英雄にヨイショしまくりのドワーフ。ああ、何も考えなくて、人任せでいいのは楽だなあ(笑)」

 

リサ「そろそろリサも自分の中の異変に気づいていいかな。何で、来たこともない場所なのに、迷うことなく道を選べるんだろうって。まるで前世の自分の記憶が頭に浮かんで来るみたいで、今の自分が誰なのか見失いそうで、ただ為すべきことだけが見えている強迫観念というか、それでも歪んだ笑みだけが自然にこぼれるの。ここには盾があるんだって確信しながら」

 

リバT『はい、短い通路の先の壁に、装飾性豊かな盾が吊り下げられていますね』

 

リサ「ここにはエア・エレメンタルの罠が仕掛けられている。知らずに盾を手に取ると痛いめにあうけど、あたしは知っている。〈グル・サン・アビ・ダアル〉の呪文を唱えると、風はやみ、技術点+1の盾が手に入る。原技術点の12が増えるわけじゃないんだけどね」

 

スタッブ「おお、これは見事な盾じゃ、と褒めておこう。もう、勇者を称えることが自分の仕事であるかのように(笑)」

 

リサ「さて、問題は次だ。パラグラフ135番。赤ツバメさんの運命をどう演出しようか」

 

死を呼ぶ魔女の誘い

 

リサ「今のリサは『死の呪いの文字』を読むことができる。だから、エルフに読んでもらう必要がない。それは大きな矛盾だから、うまく辻褄合わせをしないといけない」

 

リバT『確かにそうですね』

 

リサ「左の通路で盾を入手した後、引き返した右の通路で、行く手の扉に一枚の羊皮紙が留めてある。それはシャリーラが仕掛けた大いなる罠。それに書かれた文字を目にした者は、それが読めようと読めまいと、死の呪いに囚われてしまう。本ゲームブックのクライマックスの大仕掛けで、回避しようがない」

 

スタッブ「わしだけが赤ツバのおかげで、死の呪いを免れるんじゃな。しばらく目を閉じていよう。寒くて風邪をひいたのか、くしゃみだけでなく、涙目で目が開けられん。もしかして、花粉症かもしれんが(笑)」

 

リバT『雪山の洞窟で、花粉症なわけがないでしょう。植物モンスターなんて出て来てませんし』

 

スタッブ「だったら風邪か。これで、わしがバカでないという証明にはなったな」

 

リサ「スタッブは能天気キャラを通すつもりなんだね。だったら、それでいい。シリアスなのは、あたしとエルフの担当だ。先頭を進むあたしは、当然、わたしが仕掛けた死の呪いの羊皮紙がそこにあるのを知っている。だけど、心の声に導かれるように、抵抗なくその呪いの文字を読んでしまうわけだ」

 

リバT『読めてしまうんですね』

 

リサ「うん。そして、リサの魂は理解したために衝撃を受けて、再び心の奥底に封じられてしまう。今から、わたしはもう一度〈雪の魔女〉シャリーラになる」

 

スタッブ「シャリーラ来たあ。わしらの【服従の首輪】は反応するのかな?」

 

リサ→シャリーラ「そんなことをしたら、わたしの復活がお前たちにバレてしまうじゃないか。魔力は抑えて外に漏れないようにして、【服従の首輪】も今はまだ起動させないようにする」

 

リバT『そんな器用なことができるんですか?』

 

シャリーラ「当然できるのさ。何しろ、わたしは〈雪の魔女〉だからな。本作のラスボスなんだから、できないはずがない。それでもディレクターができないと裁定したら、ゲームブックとの間に矛盾が発生して、この世界の天地が崩壊してしまう。いくらディレクターと言えども、そんなことは望むまい」

 

リバT『そんな脅しをかけられたら、私めとしては、こう言わざるを得ません。クイーン、この後はあなたがディレクターをやってください。私めはレッドスウィフトのプレイヤーに専念いたしますので。今から私めはエルフです』

 

シャリーラ「いいだろう。この後のストーリーは、わたしが仕切る。お前たちは下賎なプレイヤーとして、我が裁定に従うといい」

 

リバT→赤燕『下賎なプレイヤーって、ディレクターはそこまで傲慢に振る舞うべきではありません。GM役は何でもできるけど、何をしてもいいわけではない。その裁定権は、プレイヤーとリプレイを読む読者さんを楽しませるためにあるという格言はここでも有効です。もしも、ディレクターの独り善がりが行き過ぎて、みなが楽しめなくなったとき、その卓そのものが成立しなくなるということは肝に銘じてください』

 

シャリーラ「良かろう。ディレクターを任された以上、自分も楽しく、周りのみんなも楽しく、誰もが幸せに暮らせる世界を目指せということだな。このシャリーラにとっても、それこそが理想だ」

 

スタッブ「本当かよ!? それじゃあ、良い人じゃないか」

 

シャリーラ「生まれ変わったシャリーラは、誰もが幸せに、そして死という誰にとっても平等な祝福を与える、愛と平和の美少女魔剣士として振る舞うのだ。みんなハッピーに不死の世界で、我が愛を感じながら達者で暮らせ。我が死の神の寵愛こそが世界を救済する」

 

赤燕『それって、このタイタン世界の神話にある「最初の戦い」の再現じゃないですか。死の神が世界に悪と闇をもたらし、世界を創りし善の神々と激突して、結果として神々の時代が終焉に至ったとされる』

 

シャリーラ「そうなのかい? そこまで大げさなことをするつもりはないが、死の神に仕える信徒として、後でその神話はチェックするとしよう。とにかく、リサの意志を心の奥底に封じ込めたわたしは、我が神の祝福が書かれた羊皮紙を契約の誓文のように読みとって、死の力をこの体にしっかり染み込ませる。これで、リサ・パンツァがじわじわとした死の呪いに冒され、その後、不死の吸血鬼として永遠の生を得る。リサにとっての呪いは、シャリーラにとっては祝福なのさ」

 

赤燕『死の呪いに、吸血鬼化の追加効果があることは今、初めて知りました。本リプレイのオリジナル設定ですね』

 

シャリーラ「そして、ごく自然な仕草で『うわあ、何か重要なことが書かれているみたいだけど、あたしにはちっとも読めないや。エルフならいろいろな言語を読めるって聞いたけど、赤ツバメさん、試しに読んで♪』とリサらしく朗らかに頼むとしよう」

 

赤燕『うわあ、何てイヤらしい。クイーン、あなたのシャリーラは、私めが考えていた以上に狡猾で、悪の魔女王らしくて、素敵です。レッドスウィフトとしては、断る言い訳ができません。リサさんを装ったシャリーラを素直に信じて、死の呪文を読んでしまい、その目が恐怖に見開かれます』

 

スタッブ「何が書いてあるんじゃ、赤ツバよ。わしにも教えてくれんか?」

 

赤燕『ドワーフを巻き込むわけにはいかないので、何も答えず、羊皮紙をドアから剥がして、ビリビリに破り裂いてしまいます』

 

スタッブ「何じゃ、わしだけ仲間外れか、ととぼけたことを言いつつ、プレイヤーは巻き込まれなかったことでホッとしてる。リバTがトチ狂って、『スタッブにも羊皮紙を見てもらいます』とか言ったら、涙目で何も見えん、と断ろうと思っていたが、その必要はなかったようだの」

 

赤燕『トチ狂うのはクイーン一人で十分です。私めは悲劇のヒーロー、レッドスウィフトさんを原作ゲームブックどおりに演じるだけですから』

 

シャリーラ「そんな健気で可愛いイケメン赤ツバメに、わたしは【服従の首輪】をこっそり起動させる。【服従の首輪】を起動した相手とは、必要に応じて思念で会話できるようにしよう。ドワーフには気づかれないよう、わたしたちはこっそり秘密の会話をやり取りするわけで。ゲームブックには描かれていない、本邦初公開のシャリーラとレッドスウィフトのここだけラブラブ会話さ」

 

赤燕『ラブラブ会話って、何ですか、それは? シャリーラって、そんなキャラではなかったはず』

 

シャリーラ「うむ。若いときは修行に明け暮れ、試練を達成するために力のみを求めて来たからな。生前は愛を知ることなく、〈雪の魔女〉として魔神や死の神に縛られながらも、文化芸術に興味を抱き、自分が捨てた人の世に愛なる感情があることを知った。愛とは何か、もしも来世というものがあるのなら、愛を知ってみたい。それこそがシャリーラの果たせぬ願望なのさ。『雪の魔女の渇愛はイケメンエルフのレッドスウィフトに向けられた。ドワーフなんかはいらん」

 

スタッブ「って、それはそれで寂しいものがあるが、ドワーフに偏執的な愛を捧げる魔女というのも少し違う気がするので、アニーの好きにすればいいさ。わしは赤ツバの貞操の危機に気づかないってことで」

 

赤燕『ええと、シャリーラの思わぬ告白に戸惑うレッドスウィフトさん……って、それ以前に、そもそもシャリーラが復活した事実だって、エルフとしては寝耳に水ですよ。ええと、急に【服従の首輪】が起動したことでめちゃくちゃ焦ります。リサさんに何か警告しようとしますが、その瞳が尋常でない輝きを示して、自分を魔性の赤い瞳で熱っぽく、それでいて冷ややかに見ていることで察します。まさか君が……と呟きかけますが……』

 

シャリーラ「艶然と少女らしくない妖しい微笑みで、思念を伝えます。余計なことを口に出す必要はないよ。ドワーフの命が惜しいならね。わたしが興味あるのは、そなただけさ、レッドスウィフト。いや、エルフ名はラーレル・アノーリエンと言ったかね。山エルフの父と、森エルフの母を持つ種族の変わり者だってそうじゃないか」

 

赤燕『どうして、その秘密を? エルフ名なんて人には教えたこともないのに。ましてや、ぼくの血筋なんて。*1

 

シャリーラ「それは、もちろん、あたしが人智を越えた魔術の使い手だからさ。【服従の首輪】を付けた奴隷に意識を集中すると、心の奥の秘密を探ることもできる。まあ、たいていの奴隷は下卑た品性ばかりで探る価値もないんだけどね。そなただけさ、わたしが愛でるに足る一級品だと思えたのは。だから、そなたには新しい体を得たわたしの最初の祝福を授けたくなった。死して後も、不死の吸血鬼として、我が伴侶として寵愛を捧げてやろう。光栄に感じるがいい」

 

赤燕『自然の掟に反する、死の呪いが祝福だって? つくづく歪んでいるんだな。そのような呪われた生にしがみ付くぐらいなら、自ら命を絶つ道を選ぶ!』

 

シャリーラ「高潔だねえ。ますます惚れ惚れするよ。だけど、もう遅い。そなたは、この肉体の主のリサ・パンツァともども死の神の祝福を受けた身さ。そう簡単に死ねない。エルフは長命と聞くが、不死というわけではあるまい。時間をかけて、じっくり馴染ませて行くうちに、リサも、そなた、レッドスウィフトも、我が物となろう。わたしは欲しいものなら、どんな手段を尽くしても手に入れたい性分だからね。抗わぬ方が幸せを満喫できるというもの。聡明なそなたは、抵抗が無意味だと分かっているはず」

 

赤燕『くっ、リサさんは? リサ・パンツァはどうなったんだ?』

 

シャリーラ「そんなに小娘のことが気掛かりかい? リサ・パンツァの肉体はわたしが乗っ取った。彼女の魂は、我が魂の奥底に封じられ、いずれはわたしと一つになろう。そうだね。死の呪いが発動する前に、愛する赤ツバメさんと一夜の契りを交わすのも慈悲ってものかもしれないねえ。シャリーラが果たせなかった性の営みというものを、この娘を通して体感するのも悪くない。愛しているよ、赤ツバメ」

 

赤燕『リサ・パンツァがぼくのことを? 思わぬ告白に動揺します』

 

シャリーラ「フフフ。わたしの言葉を信じるかどうかは、そなた次第だけどね。だが、〈雪の魔女〉シャリーラが、奴隷の中で最も寵愛しているのは、レッドスウィフトだとは覚えておいてくれ。そなたからも愛に応じてくれると、なお嬉しい。返事は聞かないさ。どう答えようと、結果は同じだからね。最後に言っておくよ。この秘密は、わたしとそなただけの秘め事だ。そなたが約束を守るなら、あの単純なドワーフに手を出さないことを約束しよう。チビの髭面は、わたしの美意識に反するからね。それでも、そなたにとっては大事な友なんだろう?」

 

赤燕『……それは頷かざるを得ないな。よくも、こんなひどいことを考えられますね。真性の魔女とはこのことか、さすがはクイーンと称えておきます』

 

シャリーラ「今の会話は、精神世界の高速思考で行われたということで、実時間は10秒ほどとしておこう」

 

スタッブ「ならば、鈍感なわしがリサ殿と赤ツバが見つめあっていることなど気づくよしもないな。必死に涙目をぬぐっていよう。時々、チビの髭面と悪口を言われたような気がして、くしゃみをばらまいたりもしながら。ううっ、マスクが必要かのう」

 

赤燕『何も知らないドワーフに事実を伝えるべきかどうか葛藤しながらも、【服従の首輪】が効果を発揮しているせいで、何も言えない。悩めるレッドスウィフトは諦念の表情で、「もう行こう。時間を無駄にできない」と先を促す』

 

シャリーラ「待って。この次の部屋は、鍾乳石から酸が滴り落ちる仕掛けになっているの。何も知らずに無防備に入れば、体力点を4点失うことになるわ」

 

スタッブ「おお、さすがはリサ殿。それで、この場はどう乗り越える?」

 

シャリーラ「こんなこともあろうかと、持って来たのがこのよ。名前はそうね、酸避けの盾(アシッドガード)どう?」

 

スタッブ「そのままで芸がねえ、と内心思いながらも、さすがはリサ殿、いかにも英雄に相応しい良き名じゃ、と褒め称えておく。何も知らないドワーフは、ただ褒めるしかない」

 

赤燕『そんな天然無邪気なドワーフを後ろから張り倒したくなる闇の誘惑に耐えながら、何とか自分らしい平常心を保とうと必死のエルフさんでした。そっかあ、ゲームブックの文章を読むだけじゃ分からないレッドスウィフトさんの切ない心情が分かったような気がします』

 

シャリーラ「ああ。わたしも自分で試しに演じてみるまで、シャリーラの独り善がりな愛なんて思いもしなかったさ。しかし、言葉に出してみると、あたかもそれが真実であるかのように感じられる。これこそ、言霊魔術ってことかな」

 

赤燕『それでは、いよいよ本ダンジョンの最後の部屋です。ここで、どんな辻褄合わせ芸を見せてくれるか、クイーンのお手並みを拝見させてもらいますから』

 

 

シャリーラの魂の水晶球

 

シャリーラ「さあ、とうとうパラグラフ339番だ。この項目は、本ゲームブックの表紙絵のシーンということになる」

赤燕(リバT)『水晶球に映し出される〈雪の魔女〉の顔と、完全武装のいかにも屈強そうなオーク武人。魔女が何か言葉を発して、足元が凍りついたオークが苦しそうに首元を押さえて悲鳴を上げている場面ですね』

 

スタッブ(アスト)「本文のイラストレーターとはまた違った人なんだな。〈雪の魔女〉の頭の被り物が表紙絵だと白鳥っぽくて、いかにもダイヤモンドダストを使いそうなんだけど、本文の鼻輪吸血女は普通の鷲っぽい猛禽類って感じで、優雅さよりは獰猛さを前面に押し出している感だ」

 

シャリーラ(ダイアンナ)「やはり、アストの一推し〈雪の魔女〉はこれかい?」

雪の魔女の洞窟: イアン・リビングストンの (d20ファイティングファンタジーシリーズ 2)

スタッブ(アスト)「というか、NOVAの一推しだろう。最初の表紙絵も、赤いドレスのシャリーラも描き手は同じLes Edwards。こちらに彼の公式イラストサイトがあって、お勧めだ」

Caverns of the Snow Witch – Les Edwards

 

スタッブ(アスト)「赤ドレス版の〈雪の魔女〉は、FFシリーズが最初に復刊したWizardBooks版の表紙で、2003年バージョン。同じシャリーラでも、最初に棺から登場したシーンだな。一方、元々のパフィンブックス版は、水晶球の中に宿った霊体で再登場したシーン。つまり、シャリーラは肉体を備えた本体とは別に、魂の一部を水晶球に移し替えたバックアップ用の分身を用意していたことになる」

 

シャリーラ「そうなんだ。だから、本リプレイでリサ・パンツァの肉体に憑依したわたしが本家シャリーラで、魂を水晶球に宿したのは予備の分家シャリーラということになる。したがって、今このシーンで2人のシャリーラが登場しても、矛盾は生じないという話さ」

 

赤燕『ああ。元々、肉体持ち魔女と、水晶球の魂魔女の2人がいた、と』

 

シャリーラ「そして、用意周到なわたしは自分の肉体が消滅した際に、魂を宿した水晶球の分身が起動するようにしておいた。だけど、リサ・パンツァの肉体を乗っ取ることができたために、わたしは水晶球の自分と対峙して、一なる全き真のシャリーラとならなければならない」

 

赤燕『なるほど。すると、これからシャリーラ同士の対決が行われる、と』

 

シャリーラ「それも考えてみたんだけどね。だけど、コミックとか、アクションゲームとか、絵がある作品だと、同キャラ分身対決って燃えるものがあるけれど、文章主体の当リプレイでそれをやっても、つまらないと思うんだね。読者のみなさんだって、どっちのシャリーラが勝つかなんて不毛な対決に興味なんて持たないだろうし」

 

スタッブ「だったら、この場をどう処理するつもりじゃ? わしはいつまで、何も知らないドワーフでいなければならん?」

 

シャリーラ「それでは改めて最後の広間に入るところから始めよう。リサの姿のわたし、エルフのレッドスウィフト、ドワーフのスタッブの3人は、氷に覆われた壁に囲まれた洞窟広間に突入した。広間の中央には、玉座のごとき台座が設置され、そこにシャリーラの顔を映した水晶球が置かれてある。そして、水晶球を守るように命じられた下僕オークがいて、わたしたちに襲いかかって来るわけだ」

 

スタッブ「なるほど。わしは〈雪の魔女〉が水晶球に映し出されていることに驚くが、向かって来るオークを相手にハンマーを構える」

 

シャリーラ「必要ない。わたしはオークの【服従の首輪】に指を向け、魔力を伝える。『もはや、お前の役目は終わった。死ぬがいい』 オークは首輪が絞まるのをどうしようもなく、苦しみもがいて死んだ」

 

スタッブ「ちょっ、一体、何が起こった? いきなり死んだオークに動転する。今のは、リサ殿が何かやったのか? 勇者のスペシャル魔法って奴か?」

 

シャリーラ「驚くことはない。ゲームブック原作で描かれたイベントが予定どおりに発生しただけさ。多少のアレンジは施したけどね」

 

スタッブ「なるほど。それなら……って、プレイヤーならともかく、スタッブにそれが伝わるか!」

 

シャリーラ「わめくドワーフをスルーして、つかつかつかと水晶球に歩み寄る。一応、攻撃には警戒しながらも、相手が抵抗せずにこっちが近づくのを待つかのように、笑みを浮かべているのに合わせて、こちらも同様の笑みをこぼす。『さすがは我が分身だね。そこらのザコと違って、わたしが主人だと理解しているようじゃないか。同志討ちするほど愚かでなくて何よりさ』」

 

赤燕(リバT)『水晶球を演じましょう。「どうやら、上手く計画どおりに事が運んだようだね、わたし。どちらが主人とかは関係ない。わたしたちは同じシャリーラじゃないか。それで、あの奴隷2人はどうするつもりなんだい? 速やかに【服従の首輪】で殺してしまえばいいのでは?」

 

シャリーラ「やれやれ。肉体を持たぬ身だと、考えることが単純になるようだね。殺すだけなら、いつでもできる。しかし、わたしにはもっと早急にしないといけないことがある。この体の主、リサ・パンツァはなおも抵抗を続けている。絶えず抑え続けていないと、いつ肉体の主導権を奪い返されてしまうか、知れたものじゃない。だから、あんたの魂と一つになって、圧倒的な意志でねじ伏せないとね。協力してもらうよ」

 

水晶球(リバT)『肉体を奪う前に、血でも吸ってやれば良かったのに。そうすれば従順な血の奴隷として、心身ともに捧げていたものを』

 

シャリーラ「リサ・パンツァが強くて、血を吸う隙を与えてくれなかったのさ。それに、ただの奴隷を器にしてもつまらないだろう。強き心身の持ち主こそ屈服させて、我が新たな力と為すことに意義がある。そう思わないか?」

 

水晶球(リバT)『油断して、足元をすくわれないように気をつけることだね』

 

シャリーラ「そうならないように、わたしたちは一つになる必要があるんだよ。魂の水晶球を取りこんで一体化したならば、いくらリサ・パンツァが強い意志で抵抗しても、勝ち目はないだろうさ」

 

スタッブ「それは何かのフラグか? 今、魂の水晶球を破壊すれば、リサ殿が復活するという仕掛けか?」

 

水晶球(リバT)『そこのうるさいドワーフを黙らせておきたいところだね』

 

スタッブ「赤ツバ、お前も協力しろ。手遅れになる前に、リサ殿をわしらが救出せねば」

 

水晶球(リバT)『レッドスウィフトさんは、魂が抜けたような表情になってます。死の呪いの衝撃もあるので、能動的に何かを行える状態にありません』

 

スタッブ「そのことを知らんわしとしては、エルフが敵の軍門に下ったと考えざるを得ん。そして、水晶球がリサ殿を操っているのだと思い、何とか水晶球を破壊しようとするのだが、水晶球から放たれる光の矢で弾き飛ばされて地面に倒れ伏す。うう、無力だ」

 

シャリーラ「勝手に飛びかかって、勝手に倒される。こういうのを負けロールプレイって言うのかね。愚かしいというか、何がそこまでそなたにさせるのじゃ、ドワーフ君よ?」

 

スタッブ「リサ殿には、いっぱい借りがあるからな。返せるときに返さねば、誇りが立たん。リサ殿から出て行け、魔女め」

 

シャリーラ「何か勘違いしているみたいだね。リサ・パンツァは自ら望んで、我が魂を己が内に引き入れたのだよ。そこのエルフも然り。友であるそなたの解放を条件に、我が愛を受け入れると約束した。2人の身柄はわたしのものだ。しかし、そなたは見逃してやろう。一人でどこへなりと逃げるがいい」

 

スタッブ「友を見捨てて、一人おめおめと逃げられるか! 逃げるときは、リサ殿と赤ツバもいっしょだ。必ず魔女を倒して、2人を解放してな」

 

シャリーラ「できぬことを申すでないわ」

 

スタッブ「やると言ったら、やるんだ。さもなければ殺せ」

 

シャリーラ「命知らずの愚か者。だけど、これが話に聞いた騎士の忠節とやらか。その忠義は誰に向けられたものなんだい?」

 

スタッブ「もちろん、リサ殿だ。借りを返すまでは、リサ殿を守ってみせる」

 

シャリーラ「リサはわたしだぞ」

 

スタッブ「違う。お前は魔女だ」

 

シャリーラ「今はそうでも、いずれリサはわたしになる。そうさせないためには、わたしのこの身を滅ぼすといい。リサがシャリーラの肉体の心臓を貫いたようにな。その気があるなら、チャンスをやろう。お前が研いでくれた刃で、わたしの心臓を貫くといい。そうすれば、リサの魂は解放されて、わたしの野望も儚く潰えよう。お前にそれができるか、忠節の徒よ」

 

スタッブ「そんな、リサ殿を殺すようなマネができるか!(涙目)」

 

シャリーラ「逃げるのもイヤ。殺すのもイヤ。わがままな男よな。一体、お前は何がしたいのだ? 言うてみよ。わたしが聞き届けてやるぞ。こう見えても、わたしは慈悲深い。美しく、気高く、愛するに足るものにはな。お前の見かけは好みでないが、その忠義とやらは興味深い。望むなら、我が武器の手入れと、護衛を務めさせてやるぞ。リサ・パンツァもそれを望むであろう」

 

スタッブ「リサ殿が!?(目玉グルグル)」

 

シャリーラ「そうだね。赤ツバメと、わたしと、スタッブ君の3人寄れば、円満仲良く完璧よ♪」

 

スタッブ「うおっ、それはわしがリサ殿に捧げた言葉。やはり、リサ殿はそこにいるのだな!」

 

シャリーラ「最初から、そう言っておる」

 

スタッブ「ならば、我が忠義はリサ殿に捧ぐ、とリサの姿のシャリーラに対して服従しよう」

 

シャリーラ(なかなか面倒な頑固者だったが、ツボさえ突けば、チョロかったの。こういう単純な男は言葉巧みに御し甲斐があるわ。フフフ)

 

水晶球(リバT)『ご苦労さまだね。これで邪魔者はいなくなって、我々の時代がやって来る……ということでよろしいのですね』

 

シャリーラ「水晶球に封じし、我が魂よ。今こそ一つになりて、真なるシャリーラ、完全なる円に満ち足りるとしよう」

 

 こうして、〈雪の魔女〉シャリーラは敵対するものをすべて乗っ取り、縛り、言葉で懐柔し、完全な復活を遂げた。

 果たして、彼女の目論見を阻むべき主人公リサ・パンツァは目を覚ますのか?

 いかなる奇跡が、シャリーラを止め、ゲームブックの物語を元の軌道に戻すのか?

 これは、運命神のサイコロでも語れない、ロールプレイの紡ぎ出す絆と連環のストーリー。

 

 次回、「復活のリサ・パンツァ」につづく。

 物語は佳境(クライマックス)を超えて、世界(アランシア)の旅へ。

 

(当記事 完)

 

おまけのダンジョンマップとキャラクターシート

                             出口

                              ↑

                          359水晶球の部屋

                              ↑

                             酸の罠

                               l

                    298盾と風精霊ーーー135死の呪い

                            l

                         285食事会

                            l

                        176短剣の扉

                            l  

      20ケイブマンーーーー365ブレインスレイヤーー

           l                   (赤と灰色の壺)

       259毒ヘビ罠の宝箱

 

リサ・パンツァ

・技術点12

・体力点20/20

・運点12/12

 

・食料残り2食

・金貨:250枚

・所持品:アストラル・ソード、時間歪曲の指輪、幸運ポーション、背負い袋、戦槌(ウォーハンマー、スタッブに貸与)、【勇気のお守り】(技術点+2)、スリングと鉄の玉2つ(赤燕に貸与)、金の指輪(冷気抵抗)、ドラゴンの卵4つ、星の金属板、四角い金属板、エア・エレメンタル対策の呪文酸除けの盾(青字は今回入手したアイテム)

*1:〈赤速〉の一人称は僕というのが旧訳だけど、新訳のレッドスウィフトではわたし。ここでは人前でクールに振る舞っているときが、わたし口調で、思念での会話の際は、ぼく口調でロールプレイしてるって演出。また彼のエルフ名はワールドガイドの『タイタン』より引用。山エルフと森エルフの血筋は、本リプレイの辻褄合わせ設定。公式には、月岩山地出身の森エルフ。