ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「雪の魔女の洞窟」攻略準備編

6月も半ばを過ぎたので

 

ダイアンナ「そろそろ雪の魔女に挑もうと思うんだ」

 

アスト「思いきり季節外れだがな」

 

ダイアンナ「暑い夏だからこそ、アイスを食べたい気分で氷指山脈に向かう。これこそ贅沢にして、優雅な冒険ライフというものじゃないか?」

 

アスト「冒険に優雅って言葉もふさわしくないと思うが、まあいい。とりあえず、今作の表紙だな」

雪の魔女の洞窟: イアン・リビングストンの (d20ファイティングファンタジーシリーズ 2)

アスト「個人的に、雪の魔女のイラストは水晶玉に映っているゲームブックの表紙よりも、赤いドレスと白いガウンがゴージャスなD20シナリオ版の表紙の方が美麗で好きなんだが、本編ではパラグラフ297番のイラストが決して美女とは言い難いからなあ。牙をむき出しに、ヨダレを垂らしているのはともかく、鼻輪はないだろう。328番のペガサスは見事な美しさだと思うが、吸血鬼の魔女はアニーみたいに美しくないと興醒めだ」

 

ダイアンナ「それはあたしへの褒め言葉か?」

 

アスト「……ただの言葉の綾だ。雪の魔女イラストへの貶し言葉以上の意味はない。それにしても、『盗賊都市』の女吸血鬼は不気味ながらも、まだ気品があった。しかし、本作の雪の魔女には萌えない。遠慮なく、心臓に杭を打ち込みたくなる」

 

ダイアンナ「それはアストの仕事ではなく、あたしのキャラ、久々のリサ・パンツァの仕事だからね」

 

アスト「考えてみれば、吸血鬼の魔女プレイヤーが、吸血鬼の魔女を倒す話になるんだな、今回は」

 

ダイアンナ「リサは吸血鬼でも魔女でもないんだけどね。ただの人間の盗賊ガールだ」

 

アスト「運命神ロガーンに導かれて、『死の罠の地下迷宮』を突破した経歴の持ち主がただの人間ってこともないだろう」

ダイアンナ「リサ個人が凄いというよりも、父親のリーサン・パンザから受け継いだ〈アストラル・ソード〉と〈時間歪曲の指輪〉が凄いってことだね」

 

アスト「どちらも『アランシアの暗殺者』で手に入れたアイテムだな」

 

ダイアンナ「ああ。今回の話は、リビングストンさんの『危難の港』→『アランシアの暗殺者』→『死の罠の地下迷宮』の攻略リプレイから続く話ということで、もしもまだなら過去記事を先に読むと、面白さが倍増だぞ、と作者に代わって宣伝しておく」

アスト「もちろん、本作単独で読んでも面白い……と言っていいかは微妙だな。元々、『雪の魔女の洞窟』というゲームブック作品自体、リビングストンの過去作『火吹山の魔法使い』『運命の森』『盗賊都市』『死の罠の地下迷宮』とのリンクを描いて、アランシアという冒険世界の姿を確定させた当時の集大成だからな」

 

ダイアンナ「『トカゲ王の島』だけが入ってないんだね」

 

アスト「一応、『盗賊都市』『死の罠の地下迷宮』とのリンクはあったし、FFシリーズの5作め、6作めに続いての7作めだから、作者の方で意図的に世界観をつなげようとしている節がある。その間に、相方のジャクソンの方が『ソーサリー』4部作で連続キャンペーンを展開していた時期だから、リビングストンの方も意識して連続ストーリーの背景世界を構築していたんだろうな」

 

ダイアンナ「主人公の設定は別々だけど、基本が諸国遍歴の無色透明な冒険剣士だから、読者が自由に自キャラを続投させてもいいわけだね」

 

アスト「ジャクソンの方は、ソーサリーを除くと、1作ごとに世界観もキャラ設定も大きく変えて来るから、続投はさせにくいもんな」

 

  • 火吹山の魔法使い:一攫千金を求める冒険剣士
  • バルサスの要塞:悪の魔術師将軍を倒すために国から派遣された魔法戦士
  • さまよえる宇宙船:別宇宙に飛ばされた宇宙船の船長
  • 地獄の館:幽霊屋敷に捕らわれた現代の一般人
  • サイボーグを倒せ:タイタンシティを守るスーパーヒーロー
  • モンスター誕生:魔法の実験で怪物に改造された飛空艇ガレーキープの船長
  • サラモニスの秘密:冒険者志望の田舎出の少年。選択肢によっては、『バルサスの要塞』の主人公になる可能性もあり。

 

アスト「これらが全部同一人物とは言いにくいだろう」

 

ダイアンナ「一応、『火吹山』で魔法使いザゴールの遺産の呪文書を入手して、それを研鑽するためにヨーレの森の大魔術師に弟子入りした主人公が、ザゴールに続いてバルサスを退治して、その後、海を渡ってアナランドで異なる魔法を学んで、マンパンの大魔王を倒したものの、時空魔法ZEDの副作用で、宇宙船の船長とか、一般人(女子学生ってケースもあり)とか、スーパーヒーローとかに異世界転生した挙句、何の因果かモンスターに改造されて、その後、リセットボタンを押して、少年の日々に再転生……って一大キャンペーンもできなくはないが?」

 

アスト「いくら何でも波瀾万丈すぎるだろう、主人公YOU。まあ、魂というか、中の人のプレイヤーは同一人物だったりするんだが」

 

ダイアンナ「ジャクソンに比べると、リビングストン作品の主人公は比較的つなげやすいんだね。舞台もほとんどがアランシアだし」

 

アスト「うちは変化を付けるために、プレイヤー交代制でやってるので、キャラも続投したり、しなかったりで、その都度、設定を考えているが、リビングストンさんの近年の作品が、旧作とも積極的につなげて来るからな。その流れに乗らない手はないと思いながら、まあ、つながらないものを強引につなげているケースもあるわけだ。普通は『地獄の館』から『トカゲ王の島』にはつながらない」

 

ダイアンナ「それに比べると、『死の罠の地下迷宮』→『雪の魔女の洞窟』はつなげやすいよね。ファングの街のすぐ北が氷指山脈だ。地理的には全く問題ない」

 

アスト「後で、アランシア巡りをする際も、いろいろと感じ入るシーンもありそうだ」

 

ダイアンナ「その辺は、リサの設定とも絡めて、いろいろドラマを考えてみるさ」

 

リサ・パンツァふたたび(withポーションの話)

 

ダイアンナ「リサの能力値は、『死の罠の地下迷宮』と同じように、技術点12、体力点20、運点12で行こうと思う。そして、アイテムは〈アストラル・ソード〉と〈時間歪曲の指輪〉を引き続き持っている。他の所持品は、例によって保存食10食とポーション1本だが、ポーションは例によって、幸運ポーションで始めよう」

 

アスト「どのポーションを持って行くかは、プレイヤーごとの差があるみたいだな。初見では、技術点が削られるイベントが多いので技術ポーションを選ぶ人がいて、割と正攻法でフェアなプレイをしている感じだ。オレは基本的に『技術点が減る選択肢は見なかったことにするチートなリセット技』を多用するプレイスタイルだから、技術ポーションは無用の長物とする派だが」

 

ダイアンナ「どうしても避けられない技術点減少があるゲームは稀だからね。『死の罠の地下迷宮』ぐらいじゃないかな」

 

アスト「まあ、技術点の減少は1点、2点でもゲームバランスに大きな影響を与えるんだが、これも幸運ポーションみたいに原点を+1する効果が付いてくれば、ぜひ欲しいって気にはなる。幸運ポーションは、原点+1のお得感があって、単に減ったポイントを回復するだけでなく、成長したって気にさせられるのがいいな」

 

ダイアンナ「技術点減少は割とパラグラフ選択で避けられるけど、運点の減少はどうにも避けられないからね。作中の運だめしの回数にもよるけど、リビングストンは割と運だめしを多用してくる気がしてる」

 

アスト「バッドエンド回数を数えてFF作品分析をするなら、同じく作品ごとの運だめし回数を数えて統計データをとるのもありだな、と思いついた。なお、本作ではざっと数えてみると31回だった。他の作品と比べてみないと何とも言えないが、運だめし率が8%ほどというのは、そこそこ多いんじゃないだろうか」

 

ダイアンナ「運だめしはそれだけで運点が1点減ってしまうからね。成功してもペナルティーだし、失敗したら、さらに技術、体力、運なんかが減少して(場合によってはアイテムを失ったりすることも)、ひどい場合はそれだけで即死する。安定した攻略を目指すには、運だめしは確実に成功させないといけない」

 

アスト「運だめしに失敗したときのペナルティーが体力点の2点減少ぐらいだったら問題ないんだが、技術点1点減少と体力点の3点減少が重なったり、攻略必須アイテムを得られなかったり失ったりすると、その運だめしには失敗できないって気になる」

 

ダイアンナ「運だめし失敗で即死すると、プレイ中に思わず、あっとか、ヒッとか、グェッとか変な声が漏れたりもするな」

 

アスト「戦闘で体力点が削られた場合の死亡は、いかにも頑張って力尽きた感があって、運だめし失敗でも体力点が減って力尽きる場合は、まだ受け入れようって気にはなる。しかし、運だめし失敗で体力は万全なのに、落下事故や沼にハマっての即死とかは、前置き抜きの唐突感だからな。覚悟の決めようがない理不尽な死って感じがする」

 

ダイアンナ「そういう理不尽さを避けるには、運点はできるだけ9点以上はキープしておきたいわけだね。運点が8を切ると、運だめしのドキドキ感が高まってくる」

 

アスト「運点11でも、6ゾロが出ると、失敗して即死って可能性もあるわけだが、とにかく運だめしは確実に成功させたいわけだ。だから減った運点をいつでも回復できるように、幸運ポーションを持っているのが、一番安心できる」

 

ダイアンナ「まあ、リビングストンさんの作品は、運だめしも多いけど、運点が上がるイベントも多いので、比較的バランスが取れていると思うよ。ひどいゲームは、運点を回復するイベントがほぼない作品」

 

アスト「『アーロック』だな。こういうゲームは、運だめしをさせられること自体が回復不能のペナルティーなので、そういうパラグラフを通らないようにするのが最適解なんだが、実は運だめしの効用って、冒険中の危機に遭遇して、それを上手く突破するって物語のスリルや醍醐味を感じさせてくれるわけだから、運だめしを避ける最適解プレイって、実際のプレイでは非常に味気ないつまらなさなんだな」

 

ダイアンナ「体力や運が削られて、うわあって思った後で、回復イベントがあるとホッとするように、スリルと安心感、苦労と安らぎのバランスのとれたゲームってのが、プレイしての楽しさにつながるんじゃないか、と思う」

 

アスト「リソースを削るだけで回復できないゲームは、RPGではなくて、古いシューティングゲームとかアクションゲームって感じだもんな。ちょっとしたミスが許されないというか」

 

ダイアンナ「ちょっとしたミスが許されない環境では、必然的に冒険を避ける思考になるわけで、冒険物語としては平坦さのみを求めて、つまらなくなりがち。痛い目にあったけど、そこから何とか回復して、頑張って来れたって物語と、痛い目にあうのは極力避けないとクリアできない物語では、前者の方が楽しめる感じだね」

 

アスト「リビングストンは、その辺のバランスがしっかり取れている感じだな。まあ、1つのミスさえ許されないシビアな作品が『火吹山の魔法使いふたたび』かな、と思うけど。それはさておき、体力ポーションは戦闘中に使えると、一気に評価が上がるわけだな」

 

ダイアンナ「使えないのか?」

 

アスト「社会思想社版だと、『戦闘中以外ならいつどこで飲んでもかまいません』と書いてあって、戦闘中に体力が減ってピンチだからポーション飲んで体力全快ってプレイができなかったんだ。だけど、コレクション版では『戦闘中以外なら』という記述が消えていて、体力ポーションの使い勝手がはるかに良くなってる。戦闘中に飲めるなら、体力点が残り2点まで追いつめられても、そこから体力フル回復しての逆転が可能、というゲーム性になっている」

 

ダイアンナ「食料があるから、体力ポーションは必要ないという意見もあったけど、じっさい、食料は1食で体力4点が回復して、10食分なら体力40点だから、最大でも体力23点分しか回復しないポーションよりも有効と思ったりするものね」

 

アスト「体力ポーションは使いどころが難しいんだよな。体力点20のキャラだと、19点までダメージを受けた直後にポーションを飲むのが一番効率いい。まあ、戦闘が終わった後の残り体力が3点とか4点ぐらいなら、ポーションを飲んでもいいかな、と思えるが、そこまでギリギリのバトルをすることって滅多にないというか、そこまで追いつめられると、そのままなし崩しに敗北することの方が多い」

 

ダイアンナ「とりあえず、5点以上削られた時点で、ポーションよりも先に食料を食べるよな」

 

アスト「食料は1度に1食のみという制限があるが、その1度という基準が曖昧なんだな。1パラグラフにつき1食とオレは考えているが、人によってはダメージを受けた後、次のダメージを受けそうなイベントごとに1食と処理している人もいるようだ」

 

ダイアンナ「バトルが連戦で続くと、食料での回復が追いつかないような場面があって、そんな時にやむなくポーションを飲むといった感じだな」

 

アスト「戦闘中に体力ポーションで回復できるなら、ラスボス戦とか、強敵戦が一気に難易度が変わってくる。あとはイベントで食料を削られる機会の多い作品や、ルート選択が少なめで一本道が長すぎる『トカゲ王の島』みたいな作品は、体力ポーションの方が攻略しやすいと思えてくる」

 

ダイアンナ「その意味で、本作も体力ポーションの方がいいのかな、とも考えてみたけれど、とりあえずは、いつもの幸運ポーションで始めてみようってことだ」

 

物語の背景

 

リバT『それでは、今回も私めがGM役を担当する形で進めさせてもらいます。リサさんは、ファングの街から逃げ出したあと、一介の冒険者としてビッグ・ジム・サンという商人に、隊商の護衛として雇われています』

 

ダイアンナ→リサ「ビッグ・ジムは、あたしの顔を知らないんだね」

 

リバT『リサさんの顔を知っているのは、ファングの住人だけだと思いますよ。商人にしては、無骨な髭面の巨漢のビッグ・ジムさんは、迷宮探検競技みたいな大イベントよりも、自分の商売の方を大切に考える人物で、お祭り騒ぎはあまり好きでない実務的な性格だということが、この数週間の旅で分かりました』

 

リサ「どうやって、知り合ったんだろう?」

 

リバT『そうですね。ファングの街から、とりあえず北に向かって旅立ったリサさんですが、北の雪原を旅する準備をして来ましたか?』

 

リサ「あたしは用意周到な女……と言いたいが、それほどでもないと言うか、世間知らずなので、たぶん北に行くにつれて、だんだん寒くなって来たなあ、と思って戸惑っている。確か、迷宮探検競技は5月の頭の行事なので、今は大体、夏ぐらいじゃないのか?」

 

リバT『確かに、季節はリアルタイムの今時分でしょうね。つまり、6月から7月ぐらいになりますか』

 

リサ「それなのに、この雪と氷はおかしいのではないか?」

 

リバT『一応、本作の季節は冬設定なんですよ。最初に「アランシア北部の冬はいつも冷たく敵意に満ちている」という一文から始まりますから』

 

リサ「あたしは夏だと思って、北に旅立ったのに、なぜか冬だ。この怪現象の謎をどう説明するかね?」

 

リバT『きっと、〈時間歪曲の指輪〉の副作用でしょう(きっぱり)』

 

リサ「副作用で半年も時間の歪みが発生するのか!」

 

リバT『大丈夫です。リアルタイムで前作から半年近い時間が経っていますから』

 

リサ「しかし、あたしは冬の準備をしていない。このままだと凍死はまちがいない」

 

アスト「おい、リサ。しっかりしろ。眠ると死ぬぞ」

 

リサ「ん? あたしに話しかけるこの声は誰だ?」

 

アスト「忘れたのか? 〈アストラル・ソード〉には悪霊が取り憑いていて、時々アドバイスしていたじゃないか。その悪霊から昇格した守護霊アスト役として、オレもプレイに参加するぜ」

 

リバT『まるで、クロスナイフに宿ったマンゴさんみたいですね』

 

リサ「いわゆるインテリジェンス・ソードだな。しかし、プレイヤーがアストで、守護霊もアストだとややこしくないか?」

 

アスト「〈アストラル・ソード〉だから、ちょうどいいかと思ったが、やはりややこしいか。だったら、アス・ラルとでも名乗ろう。今からオレは剣の精霊アス・ラルだ」

 

リサ「だったら、アス・ラルに頼むとしよう。剣が炎を発して、あたしを暖めてくれたりはしないか?」

 

アス・ラル「『トカゲ王の島』なら、終盤に〈炎の剣〉も登場したが、このオレにそんな機能はねえよ、嬢ちゃん。せいぜい、話し相手になってやるぐらいだ。一人旅じゃ寂しいだろうからな」

 

リサ「話し相手が剣だけってのも寂しいものだけどね。ああ、スロムみたいな仲間が欲しい」

 

アス・ラル「仲間はあとで登場するんだけど、さておき、話を進めるか。とりあえず、この冬の山脈を乗り越えるには、冬用装備をたっぷり持っている隊商の護衛に雇われるというのはどうだ?」

 

リサ「そういうことは、冬の山脈に入る前に言えよ」

 

アス・ラル「オレだって、夏だと思ったら突然、冬になってしまう怪現象なんて予知できねえよ。しかし、あんたは運命神に導かれし娘だ。たまたま偶然、ここに隊商が通りすがることだってあり得るわけで」

 

リサ「そんな偶然……」

 

リバT『では、たまたま偶然なのか、運命神の導きなのか、狼の群れに襲撃されているビッグ・ジムさんの隊商と遭遇。リサさんは戦場に飛び込み、巧みな剣さばきで、たちどころに獣を追い払い、ビッグ・ジムさんを感服させました。それが数週間前ということで、今では無事に冬用装備も支給してもらって、彼の隊商を護衛する腕利きの剣士として旅しているわけです』

 

リサ「なるほど。そういう経緯があったんだな」

 

リバT『リサさんの仕事は、隊商の先頭に立って危険が待ち構えていないか調べる斥候任務ですね。女盗賊としての経歴もあるから、うってつけの仕事だと思いますよ』

 

リサ「確かにそうだね。危険がないか、目をこらし、耳を澄ますとしよう」

 

リバT『襲撃の危険もありますが、氷原を渡る危険のうち大きいのは、足元の氷が急に割れることです。ですから、荷馬車の重みに氷が耐えられるか、剣で叩いてみて安全な道を確認する作業もリサさんに任せられます』

 

リサ「通路に落とし穴のトラップが仕掛けられていないか探るようなものだね。『死の罠の地下迷宮』を突破した盗賊ガールには朝飯前の作業さ。おい、アス・ラル。お前もしっかり探るんだぞ」

 

アス・ラル「やれやれ。オレは敵を斬るのが仕事なのに、どうして10フィート棒みたいなことをさせられてるんだ?」

 

リサ「これが熱帯のジャングルだったら、密生した草生えを刈り取るのに使われていたんだ。氷を突つくぐらいでいいんだから文句を言うな」

 

アス・ラル「オレが〈炎の剣〉なら、こんな氷など溶かしてしまうんだが」

 

リサ「溶かしてどうするんだ? 通れる氷原を見つけるのが仕事なのに、通れなくしたら意味がないだろう?」

 

リバT『そんなわけで、道程は平原を行くよりも遅々として進まないのですが、この地域を旅慣れたビッグ・ジムさんにとっては、いつものことなので慌てず騒がず、落ち着いたものですよ。そのうちに、リサさんも氷原の旅のノウハウをつかんで来たかな、と思い始めた頃合いで、突然、あなたたちの行く手から、狩りの角笛の音が静かな雪と氷の世界に響き渡りました』

 

リサ「これは一体? と、ビッグ・ジムさんの方を振り返る」

 

リバT『雇い主の商人さんは、地平線をじっと見つめてから、太い声を発します。「どうやら、この先にある前哨地の砦から聞こえたようだな。何か面倒ごとかもしれん。あんたに様子を見に行ってもらった方が良さそうだ。頼めるか?」と確認しますが』

 

アス・ラル「面白いことになって来やがった、と嬢ちゃんを促すぜ。氷を突ついて回るよりも、バトルで血を吸う方がオレには向いている」

 

リサ「逸る魔剣の意思に飲み込まれないように気を引き締めて、雇い主に笑みを向けてクールに頷きます。『戦いになったら、ボーナスは弾んでもらうから』」

 

リバT『ビッグ・ジムさんは「そういう契約だったな」と言いつつ、「だけど、無理に戦う必要はない。大事なのは偵察だ。危険を確認したら、急いで戻って来てくれ。何もなければ、このまま進む。大きな危険が待っているようなら、違う道を進む。そういう判断ができる材料が欲しい」と釘を刺します』

 

リサ「排除できる危険だったら、排除して先に進むってことだな」

 

リバT『ビッグ・ジムさんは苦笑しながら、「その辺の判断は、専門家のあんたに任せよう」と一応の信頼を示してくれます』

 

雪原の恐怖

 

リサ「まだパラグラフ1番にならないんだね」

 

リバT『背景がそれなりに長いですね。でも、てきぱきと進めましょう。2時間ぐらい歩いて行くと、前哨地の砦らしき場所に到着します。そこは悲惨な殺戮現場になっていて、雪が血で赤く染まり、木の建物が全て叩き壊されています。6人の男の死体が転がっていて、どの体にも切り刻まれた痕が見えます。残された足跡から、砦を襲った生き物はかなりの大型サイズみたいですね』

 

リサ「具体的には?」

 

リバT『そうですね。体長3メートル弱ぐらいでしょうか』

 

リサ「それぐらいなら、何とかなりそうだね。体長50メートルの怪獣サイズじゃないなら」

 

リバT『ティラノサウルスでも、尻尾まで入れて全長13メートルほどらしいので、体長50メートルもある生き物は、地上ではまず行動できませんよ。現在の地球最大の生き物の一つとされるシロナガスクジラでも全長30メートル強ですし、怪獣映画やスーパーロボットを基準にしてはいけません』

 

アス・ラル「3メートルほどで、人間を切り刻める獣だと、ホッキョクグマ辺りが考えられるが?」

 

リサ「ゴリラでどれくらいの大きさなんだ?」

 

リバT『ゴリラは2メートル弱で、2メートル超えのヒグマより小さいです。ゴリラとクマが戦ったら、クマの方が強いのがリアルです。どうも、キングコングの映画やクマのプーさんのイメージからか、クマは可愛くて、ゴリラに勝てないようなイメージがありますが、体のサイズから考えるとクマの勝ちですね』

 

リサ「ということで、クマみたいなデカい獣に襲われた砦が全滅した、とビッグ・ジムさんに報告に戻ろう」

 

リバT『報告を聞いたジムさんは腕組みをしながら、「う〜ん、クマか。たかだかクマ一頭に6人もの屈強な男が全滅させられるか?」と疑問を投げかけます』

 

リサ「あくまでクマみたいなデカい獣だから、クマよりももっと凶暴な未知の獣かもしれない」

 

リバT『それを聞いて、ジムさんはさらに顔をしかめます。「クマよりも凶暴な未知の獣……その正体が分からんことには判断がつかんな。なあ、嬢ちゃん、その獣の正体を確かめ、できれば仕留めて欲しいと言ったら、頼まれてくれるか?」と問いかけますが』

 

リサ「いいだろう。金貨50枚だ……と応じるのが、背景ストーリーだね」

 

リバT『その額の大きさにビッグ・ジムさんは驚くんですね』

 

リサ「あたしにとっては、金貨1万枚の報酬がもらえる迷宮探検競技を踏破した女だから、自分の価値はそれぐらいだと思っているのさ。それをおおまけして、たかだか金貨50枚にしてやっているんだから、妥当な取り引きだと思っているよ」

 

リバT『だけど、ジムさんはあなたが迷宮探検競技の覇者だなんて知りませんからね。しかし、6人の砦の兵士を全滅させた凶暴な獣狩りだったら、それぐらいが妥当な金額だと納得してくれます。ただし、クマあるいはそれ以上の獣の首を取ってきて、報酬は後払いだ。それと、隊商は3日間ここに待機しているので、それまでに帰って来てくれ。帰って来ない場合は、リサさんが獣に殺されたと判断し、引き返して別の道を進むことにする、とのこと』

 

リサ「その条件でいいよ。今日はもう遅いので、翌朝早く出発するから」

 

リバT『凶暴な獣に備えて、6台の荷馬車でしっかり円陣を組んだキャンプ地で夜が更けて行きます。ジムさんの部下の人たちが見張りを引き受けてくれるので、リサさんは明日の出発に向けて休んでいいですよ』

 

リサ「一応、アス・ラルに異常があれば起こすように告げて、眠りに就くよ。前に一度だけ、夜這いに来たスケベ男がいたので、アス・ラルに警告されたから慌てて飛び起きて、相手の服を剣で切り裂いてやったら、2度とそういう不埒なことをする奴は出なくなった」

 

アス・ラル「うちの嬢ちゃんに手を出す輩は、オレが許さないってことよ」

 

リバT『女剣士の一人旅って、そういう苦労も付き物ってことですね。では、次回からパラグラフ1番で、攻略をスタートして行きましょう』

(当記事 完)