ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「雪の魔女の洞窟」攻略感想(その3)

集会場前のIFルート

 

ダイアンナ「前回、リサ・パンツァは、〈雪の魔女〉の信奉者の集会に乗り込んで、彼らの崇める氷の魔神像を叩き切る大勝利を収めたんだ」

 

アスト「まさに運命神のダイスの導きだな。最初はこそこそ安全に、無難に集会場を通り過ぎようとしていたのに」

 

ダイアンナ「そのために変装用の白マントを入手したんだ。大体、リサは盗賊だぞ。盗賊がこそこそして何が悪い?」

 

アスト「しかし、こっそり行動が運だめしでファンブって、信者たちに見つかって、やけくそになってバトルを挑もうだなんて、脳筋思考ここに極まれり、だな」

 

ダイアンナ「お前が煽ったんだ。それに、これ以上、運点を減らしたくない、という打算も働いた。まだストーリーも序盤をちょっと過ぎたところで、運点を4点も減らせるか」

 

リバT『運点と食料というリソースを秤にかけて、何とかやりくりしてるってことですね。では、この辺りでストーリー進行を休憩して、前回、通らなかったルートの確認をしておきますか』

 

ダイアンナ「途中で出会ったエルフと会話して、正しい道の情報を得たら、次のパラグラフが106番の台所になる。だけど、エルフから情報を得られなかった場合、違う展開になるんだね」

 

リバT『情報にもある通り、左右の分岐で右の道に進むのが正解なんですが、そちらからは足音が聞こえてきて、警戒するなら左へ誘導するような仕掛けです』

 

ダイアンナ「右からやって来るのは2体のゴブリン。技術点が5のザコだから、あっさり倒せるけど、連中からアイテムをいくつかゲットできるんだ」

 

アスト「塩漬けの魚、ロウソク1本、金貨2枚、短剣2本だな」

 

リバT『エルフを倒しても何もくれないのは、作者としては倒すことを想定していないからでしょうね。そして、リビングストン作品はアイテムが重要な役割を果たすことが多いです。単独処女作の「運命の森」はヤズトロモさんから買えるマジックアイテムの数々がテーマとも言えたし、近年の傑作「危難の港」キャラクターシートに収まりきれない膨大な数のアイテムに、プレイしていたグランドマスターNOVAが悲鳴を上げていたとか』

 

ダイアンナ「残飯あさりのリーサンは、最初からガラクタをいっぱい持っていて、初期所持品があれだけ多いゲームブックも珍しい。ジャクソンさんのゲームブックが、アイテムも大事だけど、それ以上に情報フラグと、付随するパラグラフ・ジャンプの数字を軸にして凝ったゲーム性なのに対し、リビングストンさんの方はシンプルなシステムと、アイテムがそのまま攻略フラグになる『アイテムおよびバトル志向のゲーム性』が特徴だ」

 

アスト「知恵を駆使したパズル的なジャクソン流に対して、脳筋英雄の華々しい波瀾万丈の冒険譚ってのがリビングストン流だな。ジャクソンみたいなテクニカルな仕掛けが施されていない分、80年代当時の評価は地味な作家と思われつつ、実はコツコツ王道ストーリーを紡ぎ上げて、FFシリーズの土台をしっかり築いた堅実派だということが判明。ゲームブックを一過性のブームでなく、長期間追いかけ続けたマニアほど、リビングストン作品の王道安定ぶりに惚れ直す傾向があるそうな」

 

ダイアンナ「地味と堅実は、矛盾する要素じゃないし、そういう人間がいないとシリーズは安定しないものだしね」

 

リバT『結果を見れば、ジャクソンさんの派手なトリッキーさと、リビングストンさんの王道堅実性(だけど作品ごとのアイデアはしっかり盛り込まれている)の両方があってこそ、FFシリーズは一躍ブームになりながら、それでいて最初の10年を安定して継続した長期シリーズになり得たわけです』

 

アスト「ジャクソンだけだと、5年ぐらいで終わっていたろうしな」

 

リバT『リビングストンさんが続けたからこそ、倍の10年、50作めの「火吹山の魔法使いふたたび」に到達して、そこからさらにゼロ年代、10年代に出版社を変えて復刻を果たし続けながら、新たなファンも獲得しての40年越え。しかも、リビングストンさんは今年、さらなる新作を予定しているという。40年を書き続ける作家さんの偉業は、ファンとして大いに称えたいところ』

 

アスト「継続は力だもんな」

 

ダイアンナ「とにかく、アイテム重視のリビングストンさん。ゴブリンを倒して入手したアイテムもバカにできないってことだね」

 

アスト「リサは入手できなかったじゃないか」

 

ダイアンナ「ううっ。変装用のマントを重視した。そして、マントは結局、役に立たなかった。結果論として、ゴブリンと戦うべきだったと後悔している」

 

リバT『まあ、ゴブリン戦は必須ではないのですけどね。その後は、台所に向かう流れですので、攻略に支障はありません。問題は、左に進んだオークルート。こちらだと台所のアイテムがゲットできないので、攻略失敗になります。次はそのルートを吟味してみましょう』

 

オークルートへの寄り道

 

リバT『ゴブリンの足音を過剰に警戒して、分岐点を左に進むと、氷の床がピシッと割れて、落とし穴にハマってしまいます。1Dダメージで、最悪6点をくらう形に』

 

アスト「いつも通る場所に落とし穴なんて仕掛けないもんな。これだけでも外れルートと分かる」

 

ダイアンナ「落とし穴の次は何だ?」

 

リバT『次に行く前に、落とし穴イベントはまだ終わってませんよ。穴からどうやって抜け出そうか考えていると、ゴブリンが2体、「剣を渡して投降するなら、ロープで引き上げてやろう」と親切に言ってくれます』

 

アスト「剣を渡すなんて、とんでもない。ゴブリンどもの要求など呑めるか!」

 

ダイアンナ「だけど、要求を呑まないと、穴から引き上げてもらえないんだろう? ここは要求を呑んだフリをして、何とか隙を突いて、連中を撃退して剣を取り返すのが正解ではないか」

 

リバT『この落とし穴(321)から始まるゴブリンイベントって、小物相手なのに分岐が結構凝っていて、パラグラフが10個以上から成るんですね。分岐の中には小細工とか、逃げ出すとかいろいろあるのですが、そのたびに運だめしを要求されるので、あれこれ策を考える方がリソース消費が激しくなって、ゲーム攻略上は不利になるという』

 

ダイアンナ「下手な考え、休むに似たり、という感じがあるね。しょせんはザコのゴブリンが相手だから、剣が使えない(技術点マイナス3)という不利があっても、素手で戦った方がよほど手っ取り早いという」

 

アスト「技術点マイナス3ということは、ゴブリンの実質的な技術点は8と考えられるな。それぐらいの相手に小細工なしで戦えないようじゃ、ここまで到達できるはずもないだろう」

 

リバT『技術点10とか11の強敵イエティを倒して、ここまで来たんだから、ゴブリン相手なら正面突破できる実力は持っているはずですからね。攻略としては、あれこれ小細工をする(そして運点を失う)パラグラフ全てが無駄なんです。ただ、実プレイだと無駄なリソース消費は避けるべきですけど、読むだけなら多彩な選択肢とその結果の流れが凝っていて楽しい。解くことを意識せずに、冒険物語のIF展開で、主人公のドタバタぶりを楽しむのも、また一興かと』

 

アスト「とあるファンタジー小説の感想で、『有能なはずの主人公がこんなにドジばかり踏んでいるのはおかしいのではないか? これぐらいのトラップは容易く乗り越えての主人公だろう』と偉そうに語っている人物がいて、そいつの書く物語がまたつまらないんだ。

「どうも主人公に感情移入しすぎて書いているせいか、主人公が傷つかないように、過保護に、ご都合主義的にしか書けないようで、しかも主人公より強い敵を出さないのかと尋ねられたら、そんなの主人公が勝てないじゃないですか、と抜かしやがった。それを勝つ方策を必死にアイデア出して考えるのが創作家の仕事なのに、作家志望でそんな甘ったれた思考をしてたんじゃ、面白い話が書けるはずがない、と思ったね。まあ、自己満足で書いてるだけなら、それでもいいんだが」

 

ダイアンナ「ええと、冒険物語ってのは、主人公が危機また危機の状況をいかに乗り越えるかのアクションや奮戦のドキドキスリルを楽しむものであって、失敗を一切しない主人公のマンセーぶりじゃスリルを楽しめないのではないか?」

 

リバT『完全無欠の主人公の俺ツエーぶりを楽しむ層もいるらしいですが、その場合は攻略困難な状況を設定して、強い主人公の能力にあった高難度の冒険ストーリーを描くものですね。少なくとも、俺ツエー主人公がザコをなぎ払うだけの物語じゃ、ゲームとしても小説としても薄っぺらいです』

 

アスト「その場合は、ピンチに陥る担当のヒロイン、もしくは未熟な少年を用意して、ハラハラドキドキはそういうサブキャラで味わってもらって、ピンチの彼らを救いに現れた無敵主人公って展開なら、昔の時代劇やヒーロー作品の王道だな」

 

ダイアンナ「怪獣退治の防衛チームを助けに入るウルトラマンってのも、そういう王道だね。ただ、ドラマとしては防衛チームが主人公で、ピンチに陥らないヒーローは何というか、感情移入対象としては底が浅い気がする」

 

リバT『それでも、ウルトラマンの場合は、カラータイマーのピンチ演出が素晴らしい発明ですね。強いんだけど時間制限があって、そういう逆境や苦難を乗り越えてこそのヒーローって見せ方でした。このピンチと、それを切り抜けるストーリー作りこそ、面白い創作の重要な秘訣だと考えます』

 

アスト「その意味で、リビングストンの作品は見事だな。どんなにパラグラフをチェックして、完全に安全無欠なルート選択をしたつもりでも、運だめしが失敗するという不慮の事故で、ヒロイックな展開に巻き込まれる(笑)」

 

ダイアンナ「だから、英雄ってのは小細工とか安全牌を選択するだけじゃ生まれないんだって。思わぬピンチを華麗に鮮やかに、または必死にもがいて乗り越えた先に(その辺は作風による)、スリルと窮地の突破を読者や視聴者、もしくはプレイヤーに堪能してもらうからこそ、面白い冒険譚やバトル物ってことになる」

 

リバT『まあ、ゲームはバッドエンドと再プレイもスリルの一環なんですけどね。一本道じゃない筋書きの多彩さこそが、効率のいい正解ルートだけでは見逃す隠された要素の探究こそが、ゲームブックの醍醐味だと主張しながらのIFルート話です』

 

ダイアンナ「どっちにしても、ゴブリン相手にあれこれ多彩な小細工を弄するリビングストンさんの選択肢も、普通は選ばないって感じの選択肢も用意されていて、改めて読んでみると楽しかったり」

 

アスト「ゴブリン相手に逃げ出して、運だめしをさせられて、失敗すると、ますますダメージを負って不利な状況に自分を追い込むとか……」

 

リバT『ひどい場合は、運だめしに失敗して、ますます悪い状況に陥ったから、さらに運点2減らすってパラグラフ(314→86)があって、一気に運が3点減らされるという』

 

ダイアンナ「それは悪循環だね。運が悪い奴は、とことん悪くなるって世界の真理を表しているみたいだ。ますます運命神の加護を願いたくなる」

 

リバT『で、ゴブリンイベントをクリアすると、来た道を引き返して台所(106)を目指すこともできるのですが、毒を食わば皿まで、と左の道を進み続けるのが88番です。そこには凍りついたオークの死体と、二つの池から突き出した剣と槍があって、どちらかの武器を選ぶように選択肢が出ます』

 

アスト「剣はアス・ラルがいるから、ここは槍の一択だろう」

 

リバT『槍は〈恐怖の槍〉で技術点1点を失います』

 

ダイアンナ「IFルートの話で良かったよ。剣だったら?」

 

リバT『技術点+1の【疾風の剣】です。軽くて、丈夫で、鋭利な刃が特徴の名剣ですよ』

 

アスト「そんな物はいらん、とアス・ラルなら言うだろう」

 

ダイアンナ「予備の武器があれば、嬉しいけどね」

 

リバT『そして、オークの死体の持っている背負い袋をあさると、革のサンダル一足、ネズミの剥製、カビの生えたパンが入っています。パンを食べますか?』

 

ダイアンナ「普通は、カビの生えたパンなど食べたいとは思わない。だけど、IFルートだったら、物は試しって奴だ。失敗のリスクがないなら、変なことをして楽しむのも一興。キャラの変人ぶりと、そこから生み出す意外なドタバタを見せるのもエンタメ精神ってもの」

 

リバT『普通はしない愚かな行動も、読者に代わって行うウケ狙いこそが、エンタメ精神かもしれません。まあ、それで世間に迷惑をかけていたら、ただのバカなんですけどね。周囲の迷惑を省みない変わり者の行動がエンタメだと勘違いしていたら、現実社会は意外と真性の大バカにはシビアなものです。賢くバカを演じられるのが、プロのエンターテイナーというもの。ただのバカはその辺の加減を知らないというか』

 

ダイアンナ「まあ、芸風ってものもあるけどね。腹ペコキャラはリサの芸風なので、そこにパンがあれば、カビていても食べる。ああ、IFルートで良かった(笑)」

 

アスト「本音は食べたくなくても、キャラを貫くためには損すると分かっていても実行する。信念あるバカとはそのことだな」

 

リバT『そして、パンを2つに割ると、中から【鉄の鍵】が出て来るんですね。思わぬラッキーに運点+1です。まるで、このルートが正解であるかのように感じる瞬間です』

 

ダイアンナ「初見プレイだと、どのルートが当たりで、どれが外れか後まで判断しにくいものだからね。【鉄の鍵】を入手後は、結局、カビたパンを食べるのはやめるというオチで、無駄に体力を削られなくて済んだ。IFルートだと、ホッとしていただろう」

 

アスト「カビたパンを食べたら、運だめしをさせられて、成功すれば体力+1、失敗すればお腹を壊して体力ー2という状況なら、パンを食べたいか?」

 

ダイアンナ「そんなことで運を浪費したくないよね。体力点よりも、運点の方が貴重だと思う」

 

リバT『運1点の価値は、体力2〜4点程度の価値ではないかと考えます。さておき、オークの死体イベントの次は、吟遊詩人イベントですね。洞穴でリュートを爪弾いている謎の詩人がいます。選択肢は攻撃するか、音楽について尋ねるか、スルーして先を進むかの三択です』

 

アスト「攻撃だ。攻撃あるのみ」

 

ダイアンナ「自分がプレイヤーだったら、そんなことは言わないだろう?」

 

アスト「あくまで剣のロールプレイだからな。そもそも、主人公が剣の精霊ってゲームブックはないはず」

 

リバT『全てのゲームブックを知っているわけではありませんから、絶対にないとは断言できませんが、少なくともFFシリーズではなかったと思います。未訳分も含めて、君は剣だって作品はないか、と。君の相棒は喋る剣だってゲームはブレナンの作品が有名ですけどね』

アスト「ブレナンのセットは、8冊で9万超えか。とてもじゃないが手が出せんな」

 

リバT『21世紀に復刊されたのは5巻までで終わりましたからね。とりわけ「宇宙幻獣の呪い」「幻し城の怪迷路」「ゾンビ塔の秘宝」の3つのレア度が高そうです』

アスト「最終巻で9000円代か。アーロックほどの暴騰はしていないようだ」

 

リバT『ともあれ、吟遊詩人を攻撃すると、バッドエンドですね。ブレナン流に言うなら、「14へ進め」です』

 

ダイアンナ「どうして?」

 

リバT『ああ、ブレナンのゲームブックでは、キャラが死んだり冒険を継続不能になったりすると、パラグラフ14へ進んで、そこから再スタートって話です』

 

ダイアンナ「いや、そういうゲームブック界の昔からの常識じゃなくて、吟遊詩人を攻撃しただけで、どうしてバッドエンドなのさって質問なんだけど?」

 

リバT『それは失敬。ええと、この吟遊詩人さんは魔女の信奉者で、麻痺の曲を奏でることができる。攻撃されようとしたら、素早く曲を鳴らして、相手を麻痺させて【服従の首輪】をはめて来るのです。魔女の奴隷になってしまうので、魔女を倒すという目的が達成不可能になってゲームオーバーということですね』

 

ダイアンナ「やっぱり、芸術家相手だったら、その芸を褒めることが常識的な交渉テクニックなんだよ。『素晴らしい音楽ですね。思わず聞き惚れました』と心にもないIFお世辞を言ってみると?」

 

吟遊詩人『おお、きみは新来者かね。ここにいる無知のクズどもは、芸道を解さぬ野蛮人ばかりで……。もちろん、我が敬愛する魔女さまは別だが。私の音楽の素晴らしさは、魔の魅力を解さぬ者には伝わらないのか。世間にはびこる愚か者のことを、きみはどう思う?』

 

ダイアンナ「誰にでも美しさの分かる宝石はあるけれど、本当の目利きは、その原石の中にある可能性にこそ目をつけるもの。そして、目利きの評価があってこそ、世間の目の見えていない者にも宝石の真の美しさが、表面だけでは分からない価値が学べるというもの。音楽の道もそうだと思うんだけど」

 

リバT『……という美術論、芸術論を語ることで、詩人さんは我が意を得たりといった表情で、心を和ませる曲を奏でてくれました。魔力のこもった音楽で、あなたの傷口がみるみる癒されていき、体力4点が回復します。IFルートですが』

 

ダイアンナ「ちなみに、リサに芸術論を語れるのだろうか? 世間知らずの田舎娘で、芸術のことは知らないと思うんだ」

 

アスト「さっきのは、アニー自身の言葉だからな。リサだったら、食べ物に例えるか、この音楽は良い匂いだね、とか言ってそうだ」

 

ダイアンナ「さすがに音楽と匂いはつながらないだろう」

 

リバT『でも、「この音楽は、良いフレーバーをしている。耳元にスッと染み入るテイスティーな調べだ」と言えば、褒め言葉に聞こえませんか?』

 

アスト「本来、聴覚で聞き取る音楽を、嗅覚や味覚の用語で例えると、的を射ているのかどうかは知らんが、何となく新鮮な褒め言葉に聞こえる不思議だな」

 

リバT『物事を何に例えるかで、そのキャラの個性が演出できますね。ゲーマーだったら、ゲームに例えることが多いし、武闘家だったら武闘の蘊蓄で例えられる。その人物が詳しいジャンル、日頃から考える機会の多い言い回しで説明すると、生きたキャラって感じがしますね』

 

アスト「確かに、時々、変な例え方(他の小説からそのままパクって来たような違和感ある例え)で書いてる素人作家がいるが、奇抜な例えは、そのキャラの人格から必然的に出て来るものでない限り、読者の困惑を招く元だな」

 

ダイアンナ「宝石に例えるのは、あたしの十八番だが、アストなら何に例える?」

 

アスト「オレか? そうだな、疾走する風のスピード感とか、乗り手と調和する絆の強さとか、そんな感じなら、すぐに思いつくが……」

 

リバT『それって、馬ですね』

 

アスト「悪いか。スピード感覚と、持ち手との絆に応用すれば、剣だって表現できるだろう。馬と剣だと、こういうネタにも持って来れる」

 

ダイアンナ「こういうネタは、ダディっぽいよね。何かと、特撮やスパロボにつなげるのは」

 

リバT『とにかく、例え話のジャンルだけで、キャラの個性が表現できるし、逆にキャラの個性に噛み合わない例えで書くというのは、その作者がキャラ性をしっかりつかまないままに書いているってことですね。そのキャラの職業だけでも、職業らしい例えが出るというものだし、そこが上手くハマるか、違和感を覚えさせるかで、作品への没入度が違って来ます』

 

ダイアンナ「ところで、ゲームブックの話をしていて、寄り道創作論に走るのは、読者の没入度として、どうなんだろうね」

 

リバT『きっかけが、吟遊詩人イベントですからね。吟遊詩人との会話から、芸術論や創作論に寄り道するのは自然の流れだと思いますよ』

 

ダイアンナ「でも、そろそろ寄り道も終了するタイミングじゃないかなあ。今回、寄り道だけで物語をちっとも進めていない気がするし」

 

リバT『では、前回のマップの続きを補完してから、先へ進みましょう』

        

  ー吟遊詩人(221)ーーー→悪魔像の集会場(198または111)→137

  l                 l

オークの死体(88)          ↑

  l                 l

落とし穴(321)ーー(ゴブリン)ーー 台所(106)

         l

       エルフ(395)

         l

         ーーーーポーション(215)

           l

         入り口(363)

 

集会場を越えて

 

ダイアンナ→リサ「では、寄り道IFルート話から切り替えて、冒険を再開するよ」

 

アスト→アス・ラル「おお。前回は氷の魔神像を叩き切ったんだが、あいつは血を流さないから、オレの飢えは満たされない。今から引き返して、怯える信者の生き血を啜りまくりパーティーってのはどうだ?」

 

リバT『アストさん、楽しそうですね。読者の皆さんが引いてしまわないか、少々心配なんですけど』

 

アス・ラル「こんなことで引いてしまう柔な神経の持ち主は、FFの冒険者にはいねえよ。アランシアは野蛮と暴力が蔓延する世紀末救世主の世界に近いからな」

 

リバT『まあ、同じ80年代ですけど。リビングストンさんの次回作(フリーウェイの戦士)は、元ネタが「マッドマックス」とも言われていますし』

リサ「最新作のヒロインが、フュリオサって言うのかい? 何となく、親近感が持てそうだね」

 

アスト「『マッドマックス』の影響が、『北斗の拳』や『フリーウェイの戦士』に踏襲されて、世紀末バイオレンス荒野となって、それが世紀を越えて復活したり、『ブンブンジャー』になっているのが今年だ」

リサ「寄り道休憩タイムはもう終わらないと。読者のみなさんも、今回は外れ回か? と思ってる気がする」

 

アス・ラル「チッ、先へ進めってかよ。集会場の信者ども、命拾いしたな」

 

リバT『なお、集会場の信者たちは普通の人間がいなくて、ゴブリンやオーク、そしてネアンデルタールの混成集団でした。前回は言いそびれましたが』

 

アス・ラル「そんなザコどもの血をすするほど飢えちゃいねえ。もっと強い奴はいないか?」

 

リバT『集会場を抜けたパラグラフは137番。そこはT字路になっていて、左右2つに分岐してます。左から悲鳴が聞こえて来ますよ』

 

リサ「悲鳴はキャー? それともギャー? あるいはグワーッ?」

 

リバT『ええと、(左の続きの文を読んで)ドワーッて感じですね』

 

リサ「何だ、ドワーフか。ドワーフはタフだから急ぐ必要を感じない。それに考えてみれば、ドワーフにはちょっとした恨みがあるんだ」

リサ「〈死の罠の地下迷宮〉の競技監督、大切な友スロムの死の原因となったドワーフという種族に対しては、ちょっと平静ではいられないような気もする」

 

リバT『でも、リサさんはダークウッドの森の出身でしょ? ドワーフの村ストーンブリッジに行ったことぐらい……』

 

リサ「ないよ」

 

リバT『ないんですか?』

 

リサ「プレイヤーはある。だけど、リサはそこに行ったことがないってことで。話に聞いて知ってはいるけど」

 

アス・ラル「しかし、ドワーフだったら腕のいい武器職人も多いと聞く。そろそろオレもいろいろ斬って、研いでもらいたい頃合いだ。氷とか氷とか氷ばかり斬らされて、刃が欠けて来たんじゃないか」

 

リサ「狼とか、イエティとか、ネアンデルタールだって斬って来たじゃないか」

 

アス・ラル「だから手入れしろって言ってるんだよ。剣士たるもの、武器の手入れは怠るなよな」

 

リサ「今は待て。とりあえず、ドワーッの悲鳴主の様子を見るのが優先だ」

 

リバT『そういうわけで左の分岐の先に進むと、落とし穴になっています。そして、穴に落ちたドワーフさんが必死に登っているのですが、頭上の縦穴から固められた雪玉が飛んできて、肩に当たってドワーフさんをもう一度落とします』

 

リサ「雪玉を投げてるのはどんな連中?」

 

リバT『ゴブリンです』

 

リサ「スリングでも持っていたら、石つぶてをぶつけてスレイしてやるのに。ええと、ハンマーを投げて、敵にぶつかると、また戻って来たりはしない?」

 

リバT『マイティ・ソーのムジョルニアではないので、そういう機能は付いていません。そもそも、ハンマーを投げるって選択肢はありません』

 

リサ「どんな選択肢があるのさ?」

 

リバT『ドワーフさんを助けるか、助けずにスルーして、ドワーフさんの呪いの声を聞きながら運点を2点減らすかの2択です』

 

リサ「そんなの助けるに決まっている」

 

リバT『幸い、飛んでくる雪玉はリサさんに命中することなく、伸ばした手に引っ張られて、ドワーフさんは無事に救出されました。ドワーフさんは、これを使え、と言って、投石紐(スリング)と弾丸代わりの鉄の玉を渡してくれます』

 

リサ「おお。飛び道具ゲットだ。このドワーフさんは欲しいものを調達してくれる調達屋と呼んであげよう」

 

アス・ラル「お困りのようだったのは本人だけどな」

 

リバT『そして、投石紐を使って、縦穴の上にいたゴブリンの2体ばかりをつぶての餌食にしてやると、雪玉攻撃は止みます』

 

リサ「技術点判定はいらないんだね」

 

リバT『ただの演出ですから。それに判定しても、技術点12だったら、問題なく成功するでしょ? わざわざ判定する意味がありません』

 

アス・ラル「よし、鍛冶屋。オレを研げ」

 

リバT『名もなきドワーフさんはブンブン唸りを上げている剣を気味悪げに見て、つぶやきます。「何やらいわくありげな魔剣の類だが、武器の専門家ではないわしには、よく分からん。故郷の村のバーノン・ブレイドスミスなら興味を持って研いでくれようが、あやつは旅に出たまま帰って来なかったからな」

 

リサ「……って、バーノン・ブレイドスミスって、もしや、あの?」

 

リバT『ええ、「トカゲ王の島」に登場した当ブログのリプレイオリジナルNPCです。詳しくはこちらを』

アス・ラル「まさか、他のゲームブック・リプレイのNPCが名前だけでも登場するとはな」

 

リバT『リビングストンさんが自分のゲームブックでよくやっている芸を、こちらも真似て見ました。キャラは直接関わっていなくても、プレイヤーと読者さんが知っていれば、ネタとして十分機能しますよ。ゲームブックが溜まると世界観をつなげられるように、攻略リプレイが溜まっても、世界観をつなげるのが一興。ましてや、当作「雪の魔女の洞窟」はアランシアの世界観リンクが後半のテーマですからね』

 

リサ「ところで、このドワーフさんは名前を何て言うのかしら?」

 

リバT『名前は……ありません』

 

アス・ラル「なるほど。アリマ・センか。ドワーフにしては珍しい名だ」

 

リバT『それって、ウォーハンマーRPGリプレイのナイさんのネタじゃないですか』

リサ「だったら、アリマさんにスリングを返すわ」

 

リバT『「そいつは持って行ってくれ。あんたが持っていた方が役に立つ」 そして、リサさんはスリングと、残った鉄の玉3つを入手しました。「あんたは……ええと……」

 

リサ「リサ・パンツァよ」

 

アリマ『リサさんか。見たところ、首輪はつけておらんようじゃな。つまり、〈雪の魔女〉の奴隷ではない』

 

リサ「誰かの奴隷となって戦うなんて、真っ平よ。〈迷宮探検競技〉なんかで命をすり潰すなんてのは、もうこりごりだし」

 

アリマ『ファングの町の? まさか、あんたは競技の参加者? いや、そんなはずはないな。あの迷宮を踏破した者はいないはずだから』

 

リサ「あたしが初めて踏破したわ」

 

アリマ『信じられん。もしも、それが事実なら、わしは伝説の英雄の前にいることになる』

 

リサ「伝説になるのはこれからよ。〈雪の魔女〉を倒してね」

 

アリマ『どこまで本気で言ってるのか知らんが、あんたがわしの命の恩人であることは間違いない。大地の母ケリリムこと女神スロッフ様の加護があらんことを。こう見えても、わしは司祭の見習いなものでな』

 

リサ「司祭さま! 回復呪文が使える?」

 

アリマ『無理じゃ。もう消耗した後でな。1日休まなければ、英雄どののお役には立てそうにない。せめて、神の啓示として、これだけは伝えておこう。「白ネズミに気をつけろ」

 

リサ「どういう意味?」

 

アリマ『わしにも分からん。神の言葉は、それを必要とする者が、必要とする時と場所に至るまでは、うまく通じんものと昔から決まっておるでな。とにかく、わしはこの洞窟を脱出するよ』

 

リサ「だったら、地図を書いてあげる。ちょっと待ってて」

 

アリマ『おう、親切にどうも』

 

リサ「その代わり、お願いがあるの」

 

アリマ『何じゃ? わしにできることがあれば何なりと』

 

 

 そこでリサは、洞窟を出て山を下ると猟師の山小屋があることを、ドワーフのアリマに伝えました。

 そして、山小屋に書き残した手紙を、ビッグ・ジムという隊商に届けて欲しいことも。

 また山小屋に置いてあるイエティの首を持ち帰ると、ビッグ・ジムは金貨50枚をくれるはずだから、その半分をアリマさんが受けとっていいこと。

 だけど、残り半分はダークウッドの森に暮らす母親のところに届けて欲しい。母の居場所は、魔術師のヤズトロモさんが知っているはずだから、と。

 

 

アリマ『ヤズトロモさんか。ストーンブリッジにも時々遊びに来るので、顔はよく知っておる。そうか、あんたをここに送り込んだのは、かの魔術師どのか。邪悪な〈雪の魔女〉を退治するためじゃな』

 

リサ「いいえ、今回の冒険には、ヤズトロモさんは関係ないんだけど。あたしがここにいるのは、たまたま偶然。強いて挙げるなら運命神の導きだろうけど、それよりも自分の意思よ。誰かの思惑で動かされているわけじゃない」

 

アリマ『冒険者の中には、そう言う者も多い。しかし、神の視点に立つなら、わしらはみんな、神の大いなる遊戯(ゲーム)のコマと同じじゃ。コマであるならば、神の思惑を感じて、それに自らの振る舞いを合わせることこそ、幸せに生きる術だと信じるがの』

 

リサ「悪いけど、そこまで神さまを絶対視してはいないのよ。あたしは神さまの奴隷になんて、なるつもりはない。神さまが、あたしの運命を邪魔するのならば、あたしはそれに抗ってみせる。だけど、神さまがあたしの運命を助けてくれるなら、信じて祈りを捧げてもいい。あたしとロガーンさまは、Win Winの関係でありたいものね」

 

アリマ『それが、あんたの信念か。ならば、不要な説教は差し控えよう。あんたの山小屋の手紙とイエティの首を隊商のビッグ・ジムという男に届け、報酬をダークウッドの母上のところに持ち帰る仕事、可能な限り果たさせてもらおう。我が命と髭にかけてな』

 

リサ「お願いするわ。これで思い残すことなく、あたしはあたしの仕事に専念できる」

 

アリマ『〈雪の魔女〉は恐るべき相手じゃぞ。我が仲間、スタッブとバッキーは首輪を付けられ、奴隷にされた。もしも、彼らに出会うことがあれば、あんたの剣で一思いに解放してやってくれ。わしらストーンブリッジの者は虜囚の屈辱に甘んじるぐらいなら、死を選ぶ誇り高き一族じゃ。できれば、仲間を助けてやりたいが、英雄ならぬ身には手に余る。正直、わしには魔女が恐ろしゅうてならんのじゃ。……悪いことは言わん。その気があるなら、今からでも一緒に逃げ出さんか?』

 

リサ「ご親切にどうも。だけど、あたしは英雄になりたいの。そして、〈雪の魔女〉をそのままにしておけば、いずれアランシアが氷づけになるそうじゃない? 誰かがそれを止めなければならないなら、あたしがそうしたい。それこそが運命神の意思ならば、あたしの意志と一致する。運命神に選ばれた英雄って、何だか誇らしいでしょ? それこそがあたしの夢よ」

 

アリマ『やはり、意志は固いようじゃな。そなたの運命に祝福を。力にはなれなんだが、そなたの夢と勇気は外の世界に語り伝えるとしよう。できれば、ストーンブリッジで再会しようぞ』

 

リサ「そうね。そのためにも、無事に下山してね。ビッグ・ジムによろしく言っておいて」

 

アリマ『健闘を祈っておるぞ。では、さらば』

 

 

 こうして、ストーンブリッジのドワーフ、アリマ・センは去って行った。

 再び、一人となったリサの洞窟探索行はなおも続く。果たして、彼女の英雄願望は満たされるのだろうか。

 その未来は運命神のダイスのみぞ知る。

(当記事 完)

リサ・パンツァ

・技術点12

・体力点18/20

・運点10/12

 

・食料残り6食

・金貨:なし

・所持品:アストラル・ソード、時間歪曲の指輪、幸運ポーション、背負い袋、戦槌(ウォーハンマー)、白いマント、【勇気のお守り】(技術点+2)、古いバラ、ルーン文字の棒、魔法のフルート、スリングと鉄の玉3つ(青字は今回入手したアイテム)

 

・情報:白ネズミに気をつけろ