ここからダンジョン突入
アスト「忍べないけど、それ以外は万能盗賊となったピートの冒険開始だ」
ダイアンナ「これまでも冒険じゃなかったのか?」
アスト「冒険の定義にもよるが、ここまでは冒険の準備のための情報収集で、ここからがダンジョン探索の冒険行と言えるんじゃないか」
リバT『街中では〈バジリスクの瞳〉がどこに隠されているかを探り当て、〈バロウの丘〉のダンジョンを突き止めるまでが物語の骨子。そして後半はダンジョン探検に展開する、と』
アスト「本作が話題になるのは、盗賊都市ブラックサンドを他所者冒険者ではなく、地元の人間として体験する世界の雰囲気と、従来の戦闘メインではなく隠密行動メインのスパイじみた探索活動の新鮮さがポイントだろう。商人の金庫を漁って、手紙や書類から欲しい情報を読みとる活動ってのは、それまでのFFゲームブックではあまりなかったしな」
ダイアンナ「手紙や書類からの情報収集は、ジャクソンさんが好きそうだけどね。『地獄の館』や『サイボーグを倒せ』だと、そういうシーンがあるんじゃないか? 書斎にある手紙とか、新聞からの情報とか」
アスト「剣と魔法の世界よりも、もっと近代的で識字率の高そうな世界観ってことだな。タイタンみたいなファンタジー世界だと、冒険者の識字率は必ずしも高くなさそうだし」
リバT『中世では、読み書きができて書類仕事ができることが立派なステータスと言えましたからね』
アスト「今作の主人公は、見習い盗賊だけどブラスの職場や自宅金庫の中の書類から情報を読み取れるほどのインテリ層なんだよな。ただのゴロツキではなくて、盗賊の中でもエリートになるんじゃないか。そして、本作の目的はギルドの入団試験だが、ただの新入り採用にしてはやってることが大仰に見える。これは下っ端の一団員ではなく、幹部候補の入団試験ではないだろうか。使い捨てのメンバーではなくて、軍隊で言えば、士官学校出ぐらいのエリート採用が目的かもしれん」
ダイアンナ「確かに、盗賊ギルドには不具の物乞いとか、流れ者の傭兵みたいな連中もいるだろうが、全員が全員、入団試験を受けているとは思えないもんね」
リバT『基本的には縁故採用とか、コネとかでスカウトされたりもするのでしょうが、幹部候補として訓練を施された人間の卒業試験めいた感じも本作にはありますね』
アスト「仲間になりたければ、腕だめしの試練を果たしてみろって話もよくあるが、本作は求められる能力が多すぎるということもあるし、ダンジョンに入ると分かることだが、そこらのザコ盗賊で乗り越えられるレベルの試練じゃない。さすがに〈死の罠の地下迷宮〉などとは比べものにもならないけど、それでも危険なダンジョンだ。
「このレベルの試練を突破しないと入団できないってことだと、ブラックサンドの盗賊ギルドは慢性的に人員不足になりかねないだろう。しかし、まあ、組織の中核の幹部候補のための試験という設定なら納得できる。幹部になれるのは10人に1人とかだと、狭き門であっても問題ない。幹部に求められるのは、盗賊としての腕もそうだが、力技の暴力に頼るのではなく慎重に振る舞う知恵や機転なども必要だし、何よりも大胆さと判断力と運を兼ね備えた人材だろうしな」
ダイアンナ「盗賊に求められる資質と、冒険者に求められる資質はどう違うんだ?」
アスト「そうだな。一口に盗賊と言っても、冒険者集団の中の一職業としての盗賊と、冒険には出ない街の住人としてのNPC的な盗賊とでは意味合いが異なると思うが、冒険者は一般に危険と戦って金を稼ぐのが仕事で、盗賊はいかに危険を冒さずに金を稼ぐのが仕事だと思う。ただし、盗賊の仕事は犯罪や裏社会に関わるから危険は付きものという前提で、その危険をギリギリですり抜けるための手練手管を磨くってことだな」
ダイアンナ「つまり、危険に対する手段の違いで、冒険者にはより大胆さが、盗賊にはより慎重さが求められるってことだね」
アスト「罠があったら、それを踏み越えるのが冒険者で、避けるか解除するのが盗賊というものかもしれん」
リバT『だから、盗賊主人公のゲームブックだと、危険を避ける選択肢が用意されていなければ、盗賊らしくないってことですね』
アスト「少なくとも、本作の街での情報収集だと、上手く選択肢を選べば、一度も戦闘せずに攻略できるもんな。さすがにダンジョンだと、そうもいかんが」
リバT『では、前置きはここまでにして、パラグラフ343番から進めていきましょう』
盗賊ならではのダンジョン攻略
リバT『地下へ降りる階段を松明片手に進むピートさんですが、〈感知〉技能は持っていますよね』
アスト「当然だ」
リバT『なければ、落とし穴に引っ掛かって2点ダメージ。その後、穴から這い上がるのに〈壁登り〉技能が必要になります。技能がなければ技術判定での成功を求められて……それなりに苦労させられるわけですね』
ダイアンナ「他のゲームブックだと、技術判定で落とし穴に気づくか、気づかずに落ちかけるのを避けるかだけど、本作では〈感知〉がなければ、問答無用に落ちるわけか」
アスト「つまり、技能持ちの盗賊じゃないと気づかないほど巧妙に罠が設置されているダンジョンってことだな。盗賊の訓練を受けていない普通の冒険者だと、罠を全く避けることもできないデッドリーなトラップ迷宮なわけだ」
ダイアンナ「〈死の罠の地下迷宮〉のマイナー版か」
リバT『階段を降りると狭い通路が続いていますが、その先から松明の光に刺激された無数のコウモリが飛来します。〈銀の笛〉があれば、追い散らすことができますが?』
アスト「それは、ブラスの仕事場で〈感知〉がない場合だけ、ミミックの部屋で入手できるアイテムだが、本作で〈感知〉がないリスクは大きすぎるからな。コウモリの群れとの戦いは、避けられないと思った方がいい」
リバT『群れは技術点5、体力点12ですが、場所が狭いので、そちらの技術点を2減らしてください』
アスト「実質、相手の技術点が7みたいなものだな。強くはないが、数が多いので、その分、タフな相手だ」
そして、コウモリを追い散らすピート。受けたダメージは4点。
ダイアンナ「技術点で4差もあるのに、2回もダメージを受けるなんて、ダイス運が悪いな」
アスト「仕方ないだろう。とにかく、これで体力点が12になったので、ブランディをがぶ飲みして、6点分回復する。これで背負い袋の持ち物が1つ空きができたのを良し、としよう」
リバT『アルコールの一気飲みは、酔いが一度に回る危険性があるので、体力判定をしてください』
アスト「そんなことはゲームブックには書いてないだろう?」
リバT『ただのフレーバーです。2Dの出目が体力点以下だと、酔って吐いて2点ダメージってことで』
アスト「2Dで18以下だと振るまでもなく成功だ」
リバT『そうですね。だからフレーバーってことで、実害はありません』
アスト「まあ、いい。ピートは〈大酒飲み〉の技能を持っていて、アルコールには強いということにしておこう。あくまでフレーバーだが」
ダイアンナ「フレーバーであっても、ロールプレイの参考にはなるってことだね」
リバT『ゲーム上の有利不利とは関係なく、キャラの役割演技のための設定ってことですね。とにかく、酒を飲んで気合いの入ったピートさんの進む先は行き止まりになっていて、奥の壁には石板が据え付けられています。この石板を押し込むか、〈感知〉で仕掛けを探すか、それとも石板以外の隠し通路を探してみるかの3択です』
アスト「〈感知〉を使うと?」
リバT『石板と壁の間に隙間があるのを見つけます。手を差し込んでみるか、剣を差し込んでみるかの2択ですが?』
アスト「いきなり手を差し込むのは危険と判断して、まずは剣だ」
リバT『ピートさんの剣は短いので、奥の隙間までは柄がつかえて届きません。やはり奥を探るには、手を入れてみるしかなさそうですね』
アスト「だがしかし、ここでの正解は他の隠し通路を探すことなんだよな。この石板に注目させることで、それを調べるとかえって仕掛けられた罠に引っ掛かるという盗賊泣かせの罠らしい。だから、それには騙されずに、別の場所を探すと右手の壁の石が抜けるようになっていた」
ダイアンナ「つまり、〈感知〉技能で石板の仕掛けを見抜いた方が引っ掛かる罠ということか」
アスト「しかも、技術点1点を失うほどの痛い罠だ。初見殺しもいいところだな」
リバT『一応、選択肢を選んだ結果はこのようになっています』
- 石板を押す:力を入れても、びくともしない。あまりに力を入れすぎて、筋を違えて1点ダメージ。
- 穴に手を入れて調べる:毒釘が飛び出してきて、手に突き刺さる。技術点1点を失う。さらに2Dの体力判定をして、成功すれば2点ダメージ、失敗すれば4点ダメージ。
- 石板以外の場所を調べる:正解。通路の右壁の石が外れて、次の部屋に入れる(150番へ)
入り口(343)→落とし穴→コウモリ→→石板の罠
↓
150(埋葬室へ)
埋葬室のガイコツ王
アスト「盗賊泣かせのイヤらしいトラップを、チートな〈盗賊の勘〉技能で無事に回避したピートは隠し通路の埋葬室……の前の部屋に入った」
リバT『奥の埋葬室には、台座に横たわった朽ち果てた遺体と、それを守るかのように待機する2体のガイコツがいます。ガイコツは槍を構えて、侵入者のピートさんに向かって来ますよ』
ダイアンナ「バロウってのは墳墓や塚の意味だから、当然、アンデッドが巣食っているわけだね」
アスト「ここで選択肢があるんだな。奥の埋葬室に突入するか、前の部屋で待機してガイコツ2体を迎え撃つか。正解は待機する方だ。こちらの部屋の方が狭いので、1対1で戦える。運点+1だな」
技術点6および5のガイコツは、ゴブリン並みのザコなので、2点ダメージだけで撃退成功。
ダイアンナ「というか、何でノーダメージで倒せないんだよ?」
アスト「敵がダイス目11を出した回に限って、こっちが4なんて出してしまうんだよ」
リバT『どんなに敵が弱くても、ダイス運が悪いと無傷ってわけにはいかないのですね』
アスト「こういうところが、まだまだ徒弟って感じだな。能力的には決して悪くないのに、実戦では思わぬドジを繰り返してしまうという」
リバT『では、2体のガイコツを倒したピートさんに、続いて目覚めたガイコツ王(技8、体6)が、傍らに置かれた巨大な剣を持って襲いかかります。この剣は優れもので、敵にダメージを与えた次のターンでは攻撃力+1になります』
アスト「単純に攻撃力+1の剣の方が優秀なんだが、魔剣としてはこちらが格上に思える、凝った特殊能力の表記だな。王という割には、大したことのない能力だし」
ダイアンナ「そういうことは無傷で勝ってから言うんだね」
結果として、ピートはガイコツ王を余裕で倒した。
アスト「これがピート本来の実力としておこう。強い奴には強くて、弱い奴には思わぬ油断でダメージを受けるという」
リバT『ある意味、物語の主人公に多いパターンかもしれません。ザコ相手に思わぬダメージを受けてしまい、慢心を諌められつつも、そこから急成長して強敵を倒すというローテーションを繰り返す』
ダイアンナ「で、ツッコミのネタになるんだね。お前、前のシリーズではボスキャラを倒したのに、どうして次のシリーズで、こんな序盤のザコに苦戦してるんだよ? って」
アスト「とにかく、ガイコツ王を倒して魔剣ゲットだぜ」
リバT『本来、盗賊が持てるようなサイズではないのですが、魔法の効果で軽く、フェンシングの剣のように扱うことができます。特殊効果で、ダメージを与えた次のラウンドでは連続攻撃ボーナスとして攻撃力+1になる仕様。さらに技術点+1の兜と、よく磨かれた石斧を発見しました』
アスト「一度、アイテムを整理するか」
★盗賊見習いピート
・技術点11
・体力点16/20
・運点10
・盗賊技能:〈すり〉〈感知〉〈目利き〉
・アイテムによる追加技能:ロープとかぎ爪による〈壁登り〉、合い鍵による〈錠破り〉、黒マントによる〈姿隠し〉
・食料10食
・金貨38枚
・装備:ショートソード、短剣1本、革衣、明かりセット、ガイコツ王の魔剣(ダメージを与えた次の回の攻撃力+1)、兜(技術点+1)、石斧
・背負い袋の中身(6つまで):食料、運の薬、ロープとかぎ爪(残り3つ)
(合い鍵、マントは個数制限に含まれない)
盗賊への数々の試練
リバT『さて、ガイコツ王の埋葬室ですが、この部屋の先に進む出口が見当たりません。〈目利き〉も〈感知〉もなければ、この先に進めなくて任務失敗のバッドエンドです』
アスト「ここで仕掛けに気付く才能が試されるんだな。幸いというか想定どおりというか、ピートは両方持っていた」
リバT『〈目利き〉があれば「盗賊の符号で、台座の下に秘密の通路があると記されている」ことに気づきます。なくても〈感知〉で、台座の下の隙間に気づいて、台座を横すべりさせると、さらに地下へと降りる階段を発見できます』
ダイアンナ「秘密の仕掛けの多いダンジョンなんだね」
リバT『迷宮と言うには、分かれ道の少ない一本道で、あまり悩む必要がないんですね。選択肢も、該当技能を持っているか否かで処理されることが多く、ゲームとしては頭をあまり使わずに単調に処理できると思います。つまり、街の探索で、どれだけ持ってない技能を補うアイテムを入手していたかが重要となりますね』
アスト「ピートは忍べないだけで、他は完璧だからな」
リバT『しかし、次の試練は〈忍び足〉が求められるんですね。罠に警戒しながら階段を降りると、仕掛けもなく無事に階下まで降りられて、ホッと安心したのも束の間、通路の先にオーガーが居眠りをしているのが見えました。〈忍び足〉があれば、そっと素通りができるのですが』
アスト「忍べないから堂々と戦うぜ」
リバT『〈姿隠し〉で隠れるという選択肢もあるのですが、その場合、松明の明かりを消して暗闇の中で行動することになります。そして、オーガーは臭いにも敏感なので、闇がハンデにならないため、ピートさんが一方的に技術点を2点減らして不利な戦いを挑む羽目になるんですね』
アスト「つまり、技能を使ったがために不利になるケースもあるわけだ。そういう仕掛けで、単調なダンジョンに変化をつけるという作者の巧妙さが発揮されている。まあ、ここは逃げも隠れもせず、堂々と戦うべしってことだ」
オーガーの技術点は8で、体力点は10。
闇の中で戦うというミスを冒さない限りは、余裕で勝てるだろう。
これが技術点ペナルティ2点が付いてくると、実質的にオーガーの技術点が10になるようなもので、結構な強敵になる。それでも、リビングストン先生の「最強能力でないと攻略困難」なゲーム性に比べると優しいんだけど。
ともあれ、ここでは事故ることもなく、魔剣による連続攻撃ボーナスも順調に発動して、オーガーを切り刻むことに成功した。
リバT『番人のオーガーを突破すると、通路の先は巨大な鉄の扉があります。扉には鍵穴が付いていて、〈錠破り〉を試みることもできますし、扉の横のくぼみに鉄の鍵があるのも見えます。ただし、鍵の側にはサソリがうずくまっていて、上手く〈すり〉取らないと、攻撃されてしまいそうですね』
ダイアンナ「〈すり〉か〈錠破り〉で対処しろ、と」
アスト「どっちもなければ、サソリの尻尾に刺されて2点ダメージを受けた後、運だめしに失敗すると、毒で死ぬバッドエンドだ。〈すり〉を使えば無事に切り抜けられる。〈錠破り〉だと技術判定が必要になるので、ここは〈すり〉が最適解となる」
リバT『様々な盗賊技能を要する仕掛けが次々と用意されていて、適切な技能を持っていれば難なく切り抜けられる仕掛けですね』
ポルターガイストの脅威
リバT『サソリの守る鉄扉を開けると、次は二股に分かれた通路が続きます。このダンジョンでは珍しい左右の分岐点ですね』
アスト「正解は右だ。左に進んでも、百害あって一利なしなので、右の一択を推奨する」
ダイアンナ「だけど、初見だと、左へ進んでしまうこともあるだろう?」
アスト「まあな。左は本当にハズレなので、ピートにとってはIFルートって形で解説しよう。この項目で受けるダメージはなかったことにしたうえで、恐るべきポルターガイストの世界へようこそ」
リバT『左の通路の先には、物置のようになっている部屋に突入するわけですが、部屋に入った瞬間に、椅子が飛んできてダメージ1点。さらに運だめしを要求されて、失敗するともう1点を受けることになります』
アスト「ここがポルターガイストの部屋だと気づいた主人公は、引き返すか、部屋の反対側の扉に向かって走り込むかを選ぶことになる。前者で右の通路を選び直すと、被害は最低限に食い止められるが、後者だと、ますます被害が広がるばかりだ」
リバT『ポルターガイスト(技6、体0)と3回戦うことになりますが、相手を倒すことはできなくて、攻撃を回避できたかどうかだけを確かめるバトルです。そして、部屋の向こうの扉は結局、罠だと気付くんですね』
ダイアンナ「扉が罠だと?」
アスト「ただの見せかけで開かないんだ。しかも扉を調べていると、落とし格子の罠が仕掛けられていて、部屋に閉じ込められてしまう。そこから技術判定に成功して脱出するまでは、ポルターガイストに攻撃されまくり。下手すると、脱出できないまま、ポルターガイストに一方的に痛ぶられ続け、絶命する可能性もあるな」
リバT『で、結局、ポルターガイスト現象を止めることもできず、無駄にダメージを受けまくった末に、右の通路に引き返すしかなくなるわけです。実にイヤらしい罠でした』
暗闇の中のバジリスク
アスト「左のポルターガイスト罠はスルーして、正解の右ルートを選んだピートだが……」
リバT『通路の先は行き止まりです。暗闇に大きな穴が開いていて、その先は穴に降りるしかなさそうですね』
アスト「で、穴を警戒して、左に引き返すこともできるわけだが、ここは勇気を出して、穴を降りるのが正解なんだ」
リバT『穴に無事に降りるには〈壁登り〉技能が必要です。なければ、途中で手を滑らせて落下ダメージ3点を受けることになりますね』
ダイアンナ「技能がなければ、じわじわと体力を削られるわけだね」
アスト「ピートはロープを使って、難なく10メートルほど下の通路に降り立った。そこから先に進むと、またもドアがあるわけだが、鍵はかかっていなかった。部屋の中は……魔法の暗闇に包まれていて、松明の光でも灯せない。部屋の中からは何かを引きずるような音が聞こえてきたが、正体不明なので、どうしようかと悩みつつ、引き返しても仕方ないので、勇気を出して踏み込むことにするわけだ」
リバT『〈忍び足〉の技能は……ないのでしたね』
アスト「あれば、暗闇の中で攻撃されずに済んだのだがな。忍べないから不利を承知で戦うしかない」
リバT『見えない怪物は、技術点5、体力点8ですが、ピートさんは暗闇ペナルティで技術点を2点減らすことになります』
アスト「相手の技術点が実質7点みたいなものだな。まだ、こちらが有利に戦える」
事故ることなく、順調にダメージを与えて、怪物を撃退したピート。
部屋の奥の扉も〈錠破り〉(合い鍵)で難なく開け(なければ、体当たりで開けることになり、ダメージを受けつつの技術判定が必要)、次の部屋には〈光り輝く液体の瓶〉があるのを発見する。
リバT『その光があれば、暗闇の部屋を照らすことができそうですね』
アスト「しかし、ここは好奇心に駆られずにスルーするのが正解なんだな」
ダイアンナ「それでは、あたしと読者の好奇心が満たされないじゃないか」
アスト「本項の小見出しを見ろよ」
ダイアンナ「バ・ジ・リ・ス・クって、もしかして?」
アスト「さっき、闇の中で倒したモンスターの正体が実はバジリスクだったんだ。バジリスクは石化の視線を持つ恐ろしい怪物なんだが、暗闇の中では視線が効力を発揮しないので、ただのザコトカゲだったというオチ。まあ、ゲームによっては毒の血とか、いろいろとイヤらしい特殊能力も持っているんだがな」
リバT『珍しく、モンスターがその能力を発揮できないまま倒されるというシチュエーションなんですね。しかし、モンスターの正体を確かめようと光を灯したらビックリ。バジリスクの視線にさらされて、運だめしを要求されます。失敗すると、石化してのバッドエンドです』
ダイアンナ「相手の正体を確かめに行ったら、ヤブヘビで悲惨な目にあうってことか」
アスト「本作の目的が〈バジリスクの瞳〉という宝石をゲットすることだが、まさか本物のバジリスクを利用したこういう仕掛けが用意されているとはな。本作のダンジョンで一番印象的なイベントだと思う。好奇心に駆られなければ、謎のザコを倒して難なく終わりなんだが、それだと、このイベントはよく分からないまま終わってしまう。だからゲームブックの物語をより満喫するには、自分が不利になる罠イベントも、しっかりチェックする必要があるわけだ」
リバT『罠というのは引っ掛かったり、発動させたりして、初めて面白さが分かるものですからね』
アスト「全ての罠をスルーできる完璧トレジャーハンターの物語は面白くないからな。もちろん、主人公は罠を発動させてから、命からがら切り抜けることを求められるし、致命的な罠なら主人公の代わりに引っ掛かって死ぬ脇役NPC(臆病か強欲というネガティブ属性が多い)を用意することで、迷宮の脅威を披露できる」
ダイアンナ「もちろん、ゲームブックでは主人公が死んでやり直すこともできるけどね」
アスト「罠で死ぬ体験なんて、セーブ&リセットでやり直せるゲームじゃないと、そうそうできないし、したいとも思わないからな。まあ、罠で死ぬ脇役キャラに、感情移入して作品鑑賞できる想像力豊かな人間もいるのだろうが」
リバT『とにかく、バジリスクの正体を確かめたり、スルーしたりしながら、当記事は終了することにします。続きはパラグラフ252番へ』
252
↑
暗闇の部屋(バジリスク)
↑
ポルターガイストーーーーーーー下への穴
↑
サソリの扉
↑
オーガー
↑
埋葬室からの階段
(当記事 完)