まずは情報集めから
アスト「では、見習い盗賊ピートの冒険を今から始める」
ダイアンナ「ピートって名前はどこから来たんだ?」
アスト「オレの通称がスピードAだからな。スピードからスの字と濁点をとったのと、スパイダーマンのピーターをつなげた。あと、盗賊だから動物っぽい通り名がいいかと思って、キャットとかラットとかも考えたんだが、その流れで末尾がトがいいとか、ペットをアレンジして上手くつながったとかだな。性格は好奇心がネコを殺すタイプで、基本は慎重なんだけど、何かに夢中になったり覚悟完了したりのスイッチが入ると突き進むタイプかな、と」
リバT『いろいろ考えているんですね。では、私めがいつものようにディレクター役として、選択肢を読み上げましょう。パラグラフ1番で、「商人ギルド」「ブラスの自宅」「輪なわ地区」の3つが提示されます』
ダイアンナ「輪なわって?」
アスト「盗賊ギルドの近くにある地元の歓楽街ってところだな。街のいろいろな噂や情報が集まって来るらしい。この最初の選択肢は結果的に3ヶ所全てを回って、目的の宝石の在りかを知るための手がかりを3つ手に入れないといけないんだが、最初に輪なわに行かないと、他の地区からは輪なわに帰って来れない。つまり、最初の選択肢で間違うと、いきなり攻略失敗に終わるんだな」
ダイアンナ「とりあえず項目順に『商人ギルド』……と安易に選んだ瞬間、終わってしまうのか」
アスト「初見だと、いろいろシラミつぶしにあれこれ調べて、少しずつ最適解への情報を探るわけだが、ピートは慎重な情報重視の性格ってことだし、そもそもブラスの店や自宅がどこにあるのかを知らないんだよ。現場でバタバタするよりも、先に事前情報を調べておくのが優秀な盗賊ってもんだ。だから、まずは『輪なわ』で情報収集をする。これが鉄則だ」
リバT『では、次の選択肢ですが、「酒場の〈ネズミとイタチ亭〉」「通りの物乞い」「占い師のマダム・スターの家」の3ヶ所が情報を得られそうですね』
アスト「情報収集の基本は酒場だよな。まずは酒場に顔を出すぞ。ここの主人ハゲ頭モリィは叔父貴の代からの知り合いなんだ。ギルドの徒弟を始めた頃は、オレもガキだったから酒も飲めなかったが、今は大人として認められる年だからな。違和感なく酒場に入る」
リバT『エールを1杯注文してください。それがここのルールです。代金は金貨1枚ですよ』
アスト「『タイタン』でのエール1杯の相場は銀貨3〜4枚だから、金貨1枚(=銀貨10枚)なんて明らかにボッタくりなんだよな。相場の2〜3倍の酒なんて飲めるかよ、とプレイヤー的には文句を言いたいが、世間知らずのピートには酒の値段の相場なんて知るはずもない。とりあえず、金貨を1枚言われるままに払って、それから主人のモリィにブラスのことを質問する」
リバT『モリィは「情報が欲しければ金で買う。それがここの流儀だ」と言いますね。サイコロを1個振って、支払う金貨の枚数以下の出目なら、情報が買えます』
アスト「残り金貨4枚だから、情報が買えないリスクもそこそこあるんだよな」
ダイアンナ「そういう時のための〈すり〉技能だろう?」
アスト「さすがにギルドの経営する酒場でスリを働くほど命知らずじゃない」
リバT『この酒場で金を稼ごうと思えば、ピンフィンガーというギャンブルがお勧めです。勝てば金貨10枚がもらえます』
ダイアンナ「負ければ?」
リバT『金貨5枚を支払わないといけません』
アスト「金貨は4枚しか持っていないが、技術点判定に成功すれば勝てるんだから、勝率97%ぐらいのギャンブルだ。負けることは考えない。(コロコロ)よし、出目7で問題なく勝った。こんなギャンブルなら稼ぎ放題だぜ」
リバT『負けたら、指をナイフで貫いてしまって、痛い目にあったり、金銭トラブルで揉めたりするのですが、勝ったので、つまらないですね』
アスト「トラブルにあって波瀾万丈のゲームよりも、順調にストーリー展開するテンポ良さの方を重視するぞ。とにかく、芸術的なナイフさばきで指の隙間をかすることなく踊る刃を見せつけて、ピートはニヤリと笑う」
リバT『チッ、器用な手品を見せやがって、と文句を言いながらも、ギャンブラーたちは素直に金貨10枚を払ってくれます』
アスト「ありがたく頂いて、モリィのところに戻る。情報料は金貨6枚だ」
リバT『念のため、1Dを振ってください』
アスト「出目4か」
リバT『だったら、差額の2枚はエール2杯の値段になりますね』
アスト「今夜の仕事で酔っ払うわけにも行かないから、エールはギャンブラーのところに運んでくれ。賭けに勝たしてくれたお礼の奢りだ」
リバT『ギャンブラーは、礼儀をわきまえた若造だ、と上機嫌でニヤリと笑みを浮かべますね』
アスト「同じ酒場の仲間だからな。今後の仕事で付き合うことになるかもしれん。酒場でのギャンブルは遊びの一環だから、変に独り勝ちして毛嫌いされても、人間関係の上ではかえって損をする。持ちつ持たれつ、貸し借りや損得の程々加減が、対等にして良好な人間関係の秘訣だ。旅の博徒ならともかく、地元で働き続けようと思えば、つまらない敵意は煽らないのが新参者の生きる道だと思う」
酒場の主人の話
リバT『ギャンブルで金貨10枚稼いで、情報料に金貨6枚を払って、差し引き金貨4枚の収入ですね』
アスト「これで手持ちの金貨は9枚だ。腕さえあれば、ギャンブルで稼ぐのも悪くない」
ダイアンナ「こういうゲームブックが児童書なんだからね。80年代のイギリスはなかなか侮れない」
リバT『盗賊が主人公なら、多少の悪徳描写は付きものってことですね。ともかく、酒場の主人モリィは、ピートが常連のギャンブラーたちと揉め事を起こさずに上手くやって行けそうなのを見て、「何でも聞いてくれ」と態度が和やかになります』
アスト「聞きたいのは、ブラスって商人のことなんだが」
リバT『「奴は大物だ」とモリィは小声で話し始めます。「奴のシンボルはコインで、持ち物には全部その印が付いている。ショート通りとフィールド通りの角に立っている家まで印入りだ。フィールド門のすぐそばだぜ」』
アスト「なるほど。ブラックサンドの地図を見ると、アズール卿の宮殿のすぐ南だな。いかにも警戒が厳重そうだ」
リバT『それからモリィは、ピートのエールに指を入れると、その指でカウンターの上に何かの印を描いて見せました。〈目利き〉の技能を持っていれば、その意味が分かりますよ』
アスト「ギルドの印だな。こちらも秘密のシンボルを描いて応じよう」
リバT『モリィはうなずいてから、ささやき声で追加情報をくれます。「奴の宝に手を出すのは難しいぜ。金庫の鍵は特製で、今まで破られたことがないって話だ。鍵は2つあるらしいが、1つはブラスがいつでも持っていて、寝るときでも手放さないそうだ」』
アスト「そいつは厄介だが、寝ているモリィからこっそりすり取ればいいだけの話だ。もう一つの鍵は、奴の仕事場かね?」
リバT『「さあな。そこまでは聞いてない」とモリィは話を締めくくります』
アスト「ここで得られる情報は、こんなところか。では、酒場を出て、次は物乞いでも探すか」
物乞いの話
リバT『ファンタジー名物、情報を持ってる物乞いですが、「サラモニスの秘密」で結構、解像度が上がりましたね』
アスト「まさか、主人公が物乞いになろうとするなんてな。もちろん、オレは物乞いなんてなるつもりはないが、物乞いもレベルが上がれば、盗賊ギルドの重要なメンバーになるってのは、『混沌の渦』や『ウォーハンマー』といったイギリス製TRPGでも語られている」
リバT『春ごろに別ブログで、そういう話をしていましたね』
ダイアンナ「プレイヤーキャラが物乞いになれるゲームは珍しいが、街での情報源としては結構重要なNPCなので、都市冒険を遊ぶには必須知識っぽいんだね」
リバT『物乞い=下町ストリートの情報屋と考えて差し支えないか、と。そしてブラックサンドの物乞いはすべて盗賊ギルドの会員だとパラグラフ26番に書かれています。まあ、他所の街だと、ギルドに所属してないフリーの物乞いもいるのかもしれませんが、この盗賊都市ではモグリの物乞いは叩きのめされて仕事にならないってことでしょうね』
アスト「街で生きるには、街の流儀ってものを身に付けないとな。流れの冒険者なんてやってると、つい街の流儀を忘れてしまいがちだが」
ダイアンナ「リサ・パンツァも田舎出の素人上がりなんだけど、ブラックサンドの流儀が分かるまでは苦労したものさ」
リバT『なお、リサさんの物語では、ニカデマスさんはすでにブラックサンドから旅立ったという話になっていますので、本作はリサさんがブラックサンドに来る以前の時間軸で考えたいと思います』
アスト「ピートは将来、成長してリサの先輩盗賊になる、ということにしておこう。もちろん、本作で生き残れたらの話だが」
リバT『未来の話はさておき、ピートはすぐに〈台車のバーゴ〉という物乞いと遭遇します。彼は昔、兵士として戦いに参加し、そこで両足を失う重傷を負って、以降は台車に乗って動き回り、物乞い生活を始めたという経緯がありますね』
アスト「なるほど。人生それぞれだな。バーゴさんの話は叔父貴からピートも聞いている。元は凄腕の剣士で、人は見かけで判断するなってことを教わった。情報通の乞食に日頃から小銭を恵んでやると、そのうち役に立つって話もな」
ダイアンナ「不具の物乞いをバカにするなってのは、児童書としてもいいんじゃないかな?」
アスト「まあ、街での流儀を心得た連中はな。他所から入って来て、街の治安を脅かして地元の文化を破壊するタイプの連中は、軋轢の元なので受け入れるべきかどうかが問題なんだが、やはり郷に入らば郷に従えってことなんだろうな」
リバT『郷に従わせるにも相応の力が必要ってことですね。とにかく、バーゴさんは田舎なまりの混じった声で、「若いの、ギルドのテストかねぇ?」とピートに話しかけて来ます』
アスト「隠す理由はないな。バーゴのおやっさん、ブラスのことを知らないか?」
リバT『「大したことは知らないが、大商人ブラスはフィールド門の近くに屋敷を構えていて、事務所は商人ギルドの中さぁ。まあ、この程度じゃ何の役にも立たんだろうがねぇ」とバーゴさんは教えてくれます』
アスト「あいさつ代わりのフリー情報って奴だな。これ以上に役立つものが欲しいなら、見返りが必要だってのが、表も裏も社会の流儀って奴だ。とりあえず、礼を言って金貨1枚を払って、追加情報が出ないか確かめてみるぜ(残り金貨8枚)」
リバT『銀貨じゃなくて、金貨をもらったのでバーゴさんは大喜びです。「こいつは驚きだ、若いの。よほど羽振りがいいか、世間知らずなのか知らんが、あまり金貨をチラつかせると、後ろから刺されかねん。こいつは親切心からの忠告だ。下町では、金貨でなく銀貨を使った方がいい」』
アスト「銀貨で得られる情報じゃ、たかが知れているだろう。今夜はギャンブルで勝った。こういうあぶく銭は溜め込むよりも、世間に回るようにした方が運もめぐって来るってもんさ。それよりブラスの家の金庫のカギのことが知りたいんだが」
リバT『バーゴさんはその情報を知りませんが、「お返しに役立つものをやろう」と言って、台車に積んだ袋から、ロープとかぎ爪を取り出します。「前に拾ったんだが、足のない俺には何の役にも立たねえ。けど、若くて健康なお前さんなら使い道があるだろう」 このアイテムは、〈壁登り〉の技能と同じ効果を発揮します。運点を1点加えて下さい』
アスト「運は減ってないから無意味なんだが、ロープとかぎ爪はありがたく受けとっておくぜ。これで〈壁登り〉ができるようになった」
ダイアンナ「なるほど。持ってない技能は、アイテム入手で補うと言ってたが、そういうことなんだね」
リバT『もちろん、アイテムをなくせば〈壁登り〉もできなくなるので、ご注意を。また、とっさに壁を登らないといけない場合もあって、技能持ちならできるけど、アイテムで補う場合は、背負い袋からロープを取り出す余裕がないという理由で、稀ながら効果を発揮できないこともあります』
アスト「それでも、技能をアイテムで補えるのは、本作の攻略で大切だからな。金貨1枚でロープを買ったと思えば、良い取り引きだったと思うぜ。バーゴのおやっさんに礼を言って、次は占い師のお姉さんのところに向かうとする」
リバT『マダム・スターはお姉さんじゃなくて、老婆ですね』
アスト「おっと、訂正だ。占い師の婆さんのところに行く」
占い師の話
リバT『占い師のマダム・スターは、「盗賊都市」のマーケット広場で、ニカデマスさんの居場所を占ってくれる人でしたが、ここでも重要な役割として登場します』
アスト「本作最初のスペシャルゲストって感じだな。彼女に占ってもらわないと、攻略フラグが立たないほど重要だ。実のところ、この輪なわ地区では、物乞いに金貨1枚払ってロープを入手するのと、マダム・スターに占ってもらうフラグさえ立てれば、酒場をスルーしても攻略可能なんだ。最短攻略ルートをたどるなら、〈目利き〉の代わりに〈壁登り〉を覚えて、酒場と物乞いをスルーするって手もあるが、総じて最短攻略ルートってゲームがつまらなくなるからな。イベントはなるべく楽しみたいところだ」
ダイアンナ「バッドエンドで解き直しをする際には、外れルートや攻略に必須じゃないイベントをスルーして、ショートカットで効率優先を図ったりもするけどね」
アスト「しかし、攻略記事で効率優先だけを考えても、中身が薄いことになりかねん。攻略ヒントのTipsだけを備忘録的に残すならともかく、試行錯誤の攻略過程や背景世界にまつわる余談なんかが醍醐味な記事もあるわけで、極力イベントは網羅したいわけだよ」
リバT『とにかく、マダム・スターの家に向かいましょう。彼女の仕事場は先述のとおりマーケット広場ですが、自宅は盗賊ギルドのお膝元の輪なわ地区なんですね』
アスト「他所者の冒険者ではなく、地元の人間だから分かる情報ってことだな。他所者には危険だと言われている盗賊都市も、地元民には愛されていると言ってもいいかもしれない。とりわけ、輪なわの盗賊たちはピートが試験中の徒弟だと分かっているみたいで、邪魔はして来ないようだ。これが他の地区なら、身内意識のない追いはぎとか警備の人間に出くわして、危険度が増すわけだが」
ダイアンナ「輪なわ地区は庭みたいなものか」
リバT『自分の居場所を心得てさえいれば、大きなトラブルにも発展しないのでしょう。もちろん、トラブルゼロだと冒険物語としてつまらないので、他所者の主人公がトラブルの元になるか、他所者がやって来てトラブルを起こすのを主人公が解決するかの2つの方向性になるわけですが』
アスト「トラブル解決が物語の骨子なら、作者視点だと、いかにトラブルを用意して、それを克服する姿を描くかがポイントなんだが、そういう作劇上のポイントに気付かず、単にトラブルに陥ったという理由だけで、主人公を最初からバカにして溜飲を下げる愚かな批評家もどきもいたからな」
リバT『まあ、主人公の愚かさゆえに発生するトラブルもありますが、作劇の都合上、否応なく発生するトラブルもありますからね。そのトラブルの乗り越え方をどう見せるかが大事な物語で、そもそもトラブルに陥ることを否定されては、冒険物語を楽しむこともできないか、と』
アスト「有能な主人公はトラブルに陥らないのではなく、やむなく陥ったトラブルを巧みに解決することで有能さを示すってことだな。まあ、攻略手順の分かっているゲームだと、トラブルを避けてストーリーを順調に進めることで、ストレスを減らした最適解ルートを目指したくもなるわけだが」
ダイアンナ「寄り道脱線のない最適解だけじゃ味気ないってのが、作者の方針だからね。で、マダム・スターは何を占ってくれるのさ?」
リバT『金貨2枚を払うと、パラグラフ289に進みます。このパラグラフ番号こそが、本作の攻略で必須フラグになりますので、きちんと冒険記録紙に記録するように指示されますね。占いの内容は、「汝が探す貴重な宝は、暗き場所、しかも死につながる場所に隠されている」「そこへの手がかりは、眠りに関係ある場所と、仕事に関係ある場所の2つで見出されるだろう」ということですね』
アスト「よし、これで輪なわ地区での情報収集が終了。次に向かうのは、ブラスの仕事の事務所がある商人ギルドだな。自宅は、事務所でカギを入手してからだ」
リバT『しかし、今回の記事はここまでにしておきます。商人ギルドの探索は、次回に回すことにしましょう』
★盗賊見習いピート
・技術点11
・体力点20
・運点10
・盗賊技能:〈すり〉〈感知〉〈目利き〉
・アイテムによる追加技能:ロープとかぎ爪による〈壁登り〉
・食料10食
・金貨5枚→6枚
・装備:短剣、革衣、明かりセット
・背負い袋の中身(6つまで):食料、運の薬、ロープとかぎ爪(残り3つ)
・情報:マダム・スターのパラグラフ289
(当記事 完)