ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「真夜中の盗賊」攻略感想(4)

情報を集め終わって

 

アスト「『輪なわ』『商人ギルド』『ブラスの自宅』の3ヶ所で、宝石〈バジリスクの瞳〉の隠し場所に関する情報とキーナンバーを入手するのが前半の攻略手順だが、それを果たし終えた今回は、後半のダンジョンに向かう橋渡し回となる」

 

ダイアンナ「ガーゴイルとの空中戦や、年端もいかない少女を襲って悲鳴を上げられるなど、波瀾万丈のストーリーだったな」

 

アスト「襲ってねえよ。それはIFルートだし、冤罪だ。痴漢冤罪は男の社会生命を抹殺する大悪事なんだぞ。無実の罪で訴える虚偽誣告(きょぎぶこく)は、3ヶ月以上10年以内の懲役に当たるそうだが」

 

リバT『無意味に話を大きくしても仕方ありませんね。アストさんが昔、ストーカー行為を働いたことは公然の事実ですし』

 

アスト「当の本人(粉杉翔花ちゃん)からは認知されていなくて、オレが翔花ちゃんと思って追っかけていたのは双子の妹のアッキー様(粉杉晶華)だったというオチだったからな。結果として、アッキー様の分身+αのアニー(ダイアンナ)と結婚することで責任をとる形になったんだ。定期的に血だって吸わせてやってるだろうし、過去の不祥事について、いつまでもしつこく責めるのはやめにしてくれないか?」

 

リバT『アストさんの名前の由来は、ア・ストーカー(1人の付きまとい)から来ているという説もありますが?』

 

アスト「そんなの初耳だ。不名誉な説をばら撒くなよ。とにかく、前回までの流れを整理しよう。IFルートではなく、盗賊見習いピートがたどった物語ルートをな」

 

ピートの情報収集のおさらい

 

  • 輪なわ地区の酒場〈ネズミとイタチ亭〉でギャンブル(ピンフィンガー)に勝って、金貨10枚を入手する。
  • 酒場の主人モリィに情報料を払って、商人ブラスの情報を教えてもらう。〈目利き〉技能によって、ブラスの自宅の金庫の情報も得られる。
  • 物乞いの〈台車のバーゴ〉から、ロープとかぎ爪を譲ってもらう。〈壁登り〉が可能に。
  • 占い師のマダム・スターから、重要な攻略ヒントをもらう(キーナンバー289)。
  • 商人ギルドに向かう途上のマーケット広場でグールと戦う。
  • 商人ギルドの正面口からは入ることができず、周辺を回っている途中で、追いはぎに襲われる。1人を撃退した後、他の連中からは逃走に成功した結果、〈忍び足〉の代用アイテムの、足に巻きつけるボロ布を入手し損ねて、〈忍べない盗賊〉の通称を得る羽目に。
  • 裏口から商人ギルドの建物に侵入。そこで出会った名もなき物乞いから、合い鍵を譲ってもらう。〈錠破り〉が可能に。
  • 2階のブラスの事務所に合い鍵を使って侵入し、デスクからLの鍵と、バロウの丘に関する重要な手がかりを得る(キーナンバー90)。
  • ブラスの自宅に向かう途中、パトロール中の警備兵と遭遇。強引に突破して、逃げることに成功。
  • ブラスの自宅の向かい側のマーリン船長宅に合い鍵を使って侵入し、黒いマントを入手。〈姿隠し〉が可能に。
  • ブラスの自宅に合い鍵を使って侵入し、2階の書斎の金庫をLの鍵合い鍵で開く。重要情報を得る(キーナンバー335)。

 

ダイアンナ「こう見ると、合い鍵が大活躍って分かるね」

 

アスト「ああ。〈錠破り〉技能か、代用アイテムの合い鍵がなければ必要情報が集まらない。だから、最初に〈錠破り〉を覚えていないなら、攻略ルートは輪なわ→商人ギルド→ブラスの自宅に固定されるわけだ」

 

リバT『〈錠破り〉を覚えているなら、輪なわ→ブラス宅→商人ギルドでも攻略可能ですけどね。その場合、ブラス宅でRの鍵を入手しないといけないので、〈すり〉が必須となります。あとは〈忍び足〉か〈姿隠し〉が必要なので、アイテムのマントを入手する方が確実ですね。初期技能を〈錠破り〉〈すり〉と、〈忍び足〉か〈姿隠し〉で固めると、〈感知〉がなくて攻略不能になるようですから』

 

ダイアンナ「〈感知〉は絶対に必要なのか?」

 

アスト「先達の攻略サイトによると、〈感知〉か〈すり〉のどちらか、また〈感知〉か〈目利き〉のどちらかが必須らしい。つまり〈感知〉さえ習得していれば、他の2つは何を選んでも攻略できる道筋はあるはずだし、〈感知〉を選ばないなら、〈すり〉と〈目利き〉が欠かせない」

 

ダイアンナ「すると、〈感知〉〈すり〉〈目利き〉の3つを覚えているピートは攻略不可にはならないってことだね」

 

アスト「パーフェクト盗賊を目指したかったから、アイテムで代用できる技能は選ばずに、代用できない物ばかりで固めた。しかし、〈忍び足〉が習得できなかったのは想定外だ」

 

リバT『一つぐらいは欠点がある方が、キャラ立ちしてよろしいですよ。全ての技能を習得し、何でもそつなくこなす完璧超人だと記事が面白くないですから。完璧を目指しながらも、珠に傷なのが主人公キャラとして楽しいのでは?』

 

アスト「それもそうだな。失敗しつつも、それを頑張って乗り越える姿にこそ、読者は共感するってことか」

 

ダイアンナ「〈忍び足〉が使えなくてピンチな状況をいかに乗り越えるかが、これからの物語の醍醐味ってことだね」

 

ここまでの技能の使い勝手感想

 

アスト「最終総括はまたするが、ここまでの技能の使い方についても、中間総括をしておこう」(青字は初期習得技能。紫字はアイテムによる代用技能。赤字は未修得技能)

 

  • すり:ピック・ポケット。眠ってるブラスから、Rの鍵を入手する際に使用。それを除けば、使う機会がないので、軽視しがちだけど、ダンジョン探索では重要な局面で使うはず。アイテムで代用できないので、習得していなければ使えない。
  • 錠破り:ピック・ロック。街中での建物や部屋に侵入する際には必須技能。正直、前半はこれだけあればクリア可能というぐらい重要。習得していなければ、アイテムの合い鍵を入手するルートに固定される。
  • 壁登り:クライム。前半では何かと壁に登る選択肢が多く出るので、重要な技能と錯覚するけれど、ぶっちゃけ登らなくても問題ない。うっかり壁に登ったために、ガーゴイル相手に窮地に陥ったり、いい思い出がない。しかし、ダンジョン内では落とし穴から登ったり、活用機会はまだまだある。ロープとかぎ爪は手放すな。
  • 忍び足:スニーク。こっそり行動する際に非常に重要。街中でもダンジョンでも、余計な戦いや騒ぎを避けることができる。この技能を持たないと、選択肢でうっかり物音を立ててしまい、「あっ(冷や汗)」というドジっ子キャラが確定する。逆に、忍び足があると、そつなく行動できるので、格好いいクールな盗賊を演じるには欠かせない。まあ、派手なストーリー展開を望む場合には、ない方がいいかも。あと、代用アイテムがボロ布ってのも何だかな。それだったら簡単に自作できそうだけど、そういう小悪党なりの知恵を見せた追いはぎ君たちのアイデアが物よりも重要ってことでしょうな。他の作品だと、エルフのブーツで代用されがち。
  • 姿隠し:ハイド。隠密技能の第2弾。〈忍び足〉が失敗したときのフォロー技能の印象がある。隠れている間は息を潜めて動けないので、アクティブな〈忍び足〉に比べて受け身的。いざと言うときのピンチを、緊迫感とともに切り抜けるシーン演出になるか。「忍べないけど隠れるぜ」ってのがピートのキャッチフレーズになりそう。代用アイテムの黒マントもファッション的に渋くて格好いいです。
  • 感知:スポット・ヒドゥン。クラシックD&Dにおける「聞き耳(ヒア・ノイズ)」と「罠探し(ファインド・トラップ)」の合わせ技で、情報収集において非常に重要。攻略記事を書く際にも、この技能のないキャラを主人公にすると、情報がろくに得られないので非常に困る。探索系の能力がないと、お宝探し系のシナリオや、偵察や推理ミステリー系のシナリオでは使えないキャラになって、TRPGではただの脳筋戦闘員扱い。本作では、最重要技能と言って間違いない。アイテムでの代用もできないしね。
  • 目利き:シークレット・サイン。盗賊の符号や秘密のサインに気づき、理解し、活用する知識系・社交系スキル。〈感知〉のフォロー技能の印象がある。〈感知〉の方が活用範囲が広く、〈目利き〉は盗賊絡みの仕掛けやヒントに限定されるため、必要場面が多くない。ただ、攻略記事を書く際には、〈目利き〉もない主人公で解説すると、ただのズルをしているようにしか見えないので、情報系技能を持っている=何でも分かると拡大解釈できる。「これは盗賊にしか読めないメッセージだな」とか言うと、いかにもプロっぽい。クラシックD&Dではルール化されていないけど、ウォーハンマーなどでは各種職業ごとの符号が豊富で、GMやプレイヤーが使いこなすと、実に世界観の雰囲気を盛り上げてくれる。ゲーム上の有利不利にとらわれず、雰囲気ロールプレイを盛り上げるための通な技能だと思う。

 

アスト「とりあえず、初見だと攻略手順や何の技能がどう役立つか分からないので、好みで技能を選びながら、『〈錠破り〉はめちゃくちゃ大事』『〈感知〉も便利だな』とか思いながら、たまたま代用アイテムをゲットして、『なるほど。ここでロープをゲットできるから、〈壁登り〉はいらないな』とか、『〈壁登り〉を覚えたけど、結局、大して役に立たないじゃん』とか、いろいろ学んで行くんだ」

 

ダイアンナ「〈壁登り〉に恨みでもあるのか?」

 

アスト「〈壁登り〉よりも、商人ギルドで遭遇するガーゴイルだな。本作で、うかつに壁に登ってガーゴイルに殺された初見プレイヤーって結構多いと思うんだ。それまでのFFゲームブック脳筋戦士が普通で、積極的に逃げたがるプレイスタイルは少なかったと思う。しかし、ガーゴイル相手だと武器が通用しないので逃げるしかない。

「倒そうと思えば、ロープかマントか鎖を使って、翼を封じて落下ダメージで倒すという機転を示さないといけないし、その場合のアイテムは使い捨てなので、鎖以外は代用技能が使えなくなる点で悩ましいし、本作のガーゴイル戦は良くも悪くも印象深いイベントだ」

 

リバT『だけど、無事にガーゴイルを処理して、天窓から侵入しても、合い鍵がゲットできないルートなので外れルートということですね』

 

アスト「ぶっちゃけ、ガーゴイル戦も、いや、〈壁登り〉そのものが必要ない作業だと気づくまでに、『とにかく盗賊といえば〈壁登り〉でしょ』派が当時は多かったようだ」

 

ダイアンナ「どうして、そんなに〈壁登り〉にこだわるんだ?」

 

リバT『理由は3点考えられます。まず、1つはクラシックD&Dの影響ですね』

 

ダイアンナ「と言うと?」

 

リバT『本作の盗賊技能は、やはり当時のD&Dの影響が大きいのですが、クラシックD&Dの初期レベルの盗賊は鍵開けや罠外しなど多くの技能の成功率が低く(20%前後からスタート)、その中で壁登りだけが成功率80%代という成功しやすさを誇っていました。つまり、盗賊が一番安定してできる仕事は、城壁の壁に登って侵入して、中から城門を開くとか、壁に登ってできる仕事をあれこれ工夫することだったんです』

 

アスト「応用として、野外で木に登って、そこから弓を撃つこととかな。80年代のゲーマーだったら、和製スパイダーマンも見ていた人間も少なからずいたろうから、壁に登って、そこからロープやネットを扱って、何かの支援をするようなことも考えたりした」

 

ダイアンナ「一部の卓の話じゃないか?」

 

アスト「まあ、今みたいにインターネットがあるわけじゃないから、そういう盗賊ムーブがどれだけ世間で浸透していたかは知らんが、盗賊は打たれ弱いが上級者向きの工夫しがいのあるクラス、というD&D界隈の常識があって、『盗賊ならではの上級アクションをあれこれ考えるのが通の道』というわけだ」

 

リバT『その時代の風潮の後継者が、ゴブリンスレイヤーさんになるわけですね』

リバT『ん? 今、Amazonの商品紹介リストで気づきましたが、ゴブリンスレイヤーの外伝4巻が明後日、発売予定ですね』

ダイアンナ「ダディはゴブスレ新刊を楽しみにしていたのに、気づいていなかったのか?」

 

リバT『夏の仕事がバタバタしていたので、そちらのチェックが盲点になっていたようです。ブレバス4巻をチェックするだけで、ゴブスレ新刊がすぐに来るとは思っていなかったみたいですね』

アスト「ちょうどいい。ゴブスレのとある話でも、空から襲ってくるガーゴイルの飛行能力を封じて、落下ダメージで撃退するネタがあったと思う」

 

リバT『その話のオチは、「人間の男では殺せない呪い(祝福)が掛かってる敵の魔法使いを、人間の男3人パーティが簀巻きにして、塔の最上階から叩き落として、落下ダメージなら問題なく殺せる」というトンチ攻略でしたね』

 

ダイアンナ「その話の元ネタが、本作のガーゴイルだと?」

 

アスト「確定情報ではないが、ゴブスレはFFゲームブックからのパロディネタが多いのは周知の事実だからな」

 

リバT『話を戻して、盗賊が高いところに登りたがるのは、日本の時代劇や忍者アクション映画の影響も当時は多かったと思われます。何かと忍者や密偵役、盗賊キャラは、日本のドラマだと木や屋根に登ってアクションするのが定番でしたからね』

 

アスト「天井裏に忍び込んで、こっそり情報を見聞きするのは忍者や密偵の基本だからな。あと、夜中に屋根の上を駆けるのも、仕事人でよく見た」

 

リバT『ファンタジーの盗賊のイメージを、時代劇から引用してくるのも当時は定番でした。ファンタジーゲームや小説、アニメだけで十分な盗賊イメージが提供されるのは、90年代に入ってからだと思いますし』

 

ダイアンナ「D&Dや、日本の時代劇などの影響で、盗賊は高いところに登りたがる。理由は3つあると言ったが、もう一つは?」

 

リバT『やはり、この表紙絵のイメージが大きいでしょう』

リバT『この絵を見ると、まるでガーゴイルが〈バジリスクの瞳〉を守っているように思える。つまり、ガーゴイルと戦うことが攻略の必要条件であるかのように錯覚したプレイヤーもそこそこいたと思われ』

ダイアンナ「そんなプレイヤーがいるのか」

 

リバT『英文攻略サイトでもツッコミネタになっているようです。おまけに、本文では〈バジリスクの瞳〉って黄色い宝石なのに、イラストでは赤になっている点がミスだとか』

 

ダイアンナ「このイラストで黄色だと、背景の光と混じって映えないからだろうね。宝石がきれいだったら、それでいいじゃないか」

 

アスト「そう言えば、前回のパラグラフ335の『バのひ』の暗号だけど、あの後、意味が分かったわ。『バジリスク・の・瞳(ひとみ)』の単語ごとの頭文字をとった略語だったんだな。英語だと、Eye of  the Basiliskだから、EOBとでも記されていたんじゃないか」

 

リバT『つまり、〈バロウの丘〉にバのひ(バジリスクの瞳)を隠したという意味の暗号なんですね』

 

ダイアンナ「それが確定情報なんだね」

 

バロウの丘に行く前に

 

アスト「さて、中間総括が長引いたが、ここからパラグラフ144番の続きだ。情報が一通り集まったので、宝石の隠し場所が分かっているはずだ。そこへ向かおうって話になる」

 

リバT『選択肢は「バロウの丘」以外に、「時計通り」「歌う橋」「アズール卿宮殿」が用意されています』

 

ダイアンナ「確か、歌う橋の下にはニカデマスさんの小屋があったはず」

 

アスト「ぶっちゃけ、バロウの丘以外はハズレの選択肢だが、『盗賊都市』のファンだと、アズール卿宮殿は覗いておきたくなるだろう」

 

ダイアンナ「どうやって入るのさ?」

 

リバT『正門から堂々と入ることもできますし、〈壁登り〉を使ってもいいですね』

 

ダイアンナ「怖いもの見たさに堂々と」

 

リバT『当然、警護の兵士がいっぱいいますね。いきなり襲いかかって、驚いたところを不意を突くって選択肢もありますが?』

 

ダイアンナ「自殺行為と分かっているが、選択肢があれば選びたくなるのが人情だ」

 

リバT『多勢に無勢なので、1人2人倒すことができても、結局は数の暴力に圧倒されて気絶させられます。気づいたら、牢屋の中に捕まって冒険終了バッドエンドですね』

 

ダイアンナ「続きは『死の罠の地下迷宮』送りの刑だな」

 

リバT『それは、リサさんの物語でしょう』

 

ダイアンナ「〈壁登り〉だと?」

 

リバT『矢が飛んできます。運だめししてください。失敗すると、矢が腕に突き刺さって、壁から落下してバッドエンドです』

 

ダイアンナ「成功すると?」

 

リバT『宮殿の内側に飛び降りることに成功しますが、そこに待ち構えていた兵士に一刀両断で切り捨てられます』

 

ダイアンナ「どうすれば、アズール卿に出会えるんだ?」

 

リバT『本作では無理です。アズール卿と初対面は、FF68巻の「アランシアの暗殺者」と決まっているのですから、29巻の本作で会えるはずがないのですね』

 

ダイアンナ「仕方ない。だったら、歌う橋のニカデマスさんに会いに行こう」

 

アスト「いや、勝手にオレのピートを動かすなよ」

 

ダイアンナ「大丈夫。ニカデマスさんはアズール卿と違って、いい人だから」

 

リバT『橋の下の掘立て小屋には、「立ち入り禁止」の文字が扉に書かれていますね。ノックをしますか? それとも〈錠破り〉や合い鍵を使いますか?』

 

ダイアンナ「ノックをすると?」

 

リバT『不機嫌そうな老魔術師が出て来て「何用か?」と尋ねて来ます』

 

ダイアンナ「積もる昔話をいろいろと」

 

ニカデマス『お前みたいな街のゴロツキなぞ知らん。わしを怒らせんうちに帰れ』

 

ダイアンナ「ニカデマスさん、ぼく、いや、この時代だったら、まだ、あたしか。とにかく、あたしだよ。リサ・パンツァが未来から交信してきた。今だけ、ピート先輩の体はリサが乗っ取った」

 

アスト「こらこら。お前は〈雪の魔女〉かよ。体を返せ」

 

ダイアンナ「(無視して)ここに宝石〈バジリスクの瞳〉がないか調べさせてね、と強引に家探しすると?」

 

リバT『ニカデマスさんの魔法で、イモリに変えられてしまいますね。ノックをせずに〈錠破り〉をしても結果は同じです。イモリになった盗賊ピートの冒険は終わりました』

 

ダイアンナ「ごめんね、ピート先輩。ニカデマスさんなら、あたしのことを分かってくれるかと思ったんだけど、期待外れだったみたい。あたしは未来に戻るから、どうぞ、お達者で」

 

アスト「ちょっと待て。イモリのままで、どうしろって言うんだ?」

 

ダイアンナ「大丈夫、リセットするから」

 

リバT『気付くと、ピートさんは白昼夢を見たかのように、ブラスさんの家の前にいました』

 

アスト「いや、白昼夢って、今はまだ真夜中のはずだろう?」

 

リバT『そうでした。では、真夜中のナイトメア、未来の魔女が見せた幻か何かでしょう』

 

アスト「魔女に体を乗っ取られた挙句、橋の下の魔法使いにイモリに変えられるなんて、奇妙な夢もあったもんだぜ。とにかく、今は〈バロウの丘〉に急がないとな」

 

リバT『なお、もう一つの選択肢の時計通りでは、ドワーフの追いはぎ3人衆(技6〜7、体6〜7のザコ)に襲い掛かられるだけのイベントですね。では、本命のバロウの丘へご案内です』

 

バロウの丘にて

 

リバT『バロウの丘に行くには、パラグラフ284番の指示で、これまでに入手したキーナンバー289、90、335の頭の数字を逆順に並べた3ケタのパラグラフ番号へ進むことになります。キーナンバーが不足していれば、攻略失敗で最初からやり直しになりますね』

 

アスト「つまり、392番に行くことで、物語が次の段階に突入するわけだな」

 

ダイアンナ「ゲームとしては、適当に選択肢を選んでもダメで、きちんと3ヶ所のキーナンバーを集める必要がある、と。いかにも数字パズル的で、面白い仕掛けだね」

 

リバT『警備兵に見つからないよう、フィールド門から街の外へ出て行き、郊外にあるバロウの丘に向かいます。バロウとは塚の意味で、要は墓場。占いで聞いた「死につながる場所」を指しますね』

 

アスト「謎が解けると、うまく話がつながって、なるほどなと感じさせてくれるのが良い謎解きゲームだ。答えを聞いても、つながった感が得られないのが残念な謎。これは物語で言うところの、伏線がうまく機能している上手な構成に相当する」

 

リバT『そして、バロウの丘の近くには荒れ果てた庭園がありますね。100年以上前に、ここには立派な屋敷があったそうですが、墓の呪いか、住人に次々と不幸があって、うち捨てられた挙句、火事のせいで屋敷が消失、今では庭を残すのみ、と。さて、塚を調べるか、屋敷跡の庭を調べるかの2択ですが?』

 

アスト「本命は塚だろうが、庭に手がかりがあるかも、と判断して、先に庭へ向かうぜ」

 

リバT『庭の草は手入れされていないので伸び放題ですね。傍らに石像があり、そちらを調べるか、屋敷跡に向かうかですが?』

 

アスト「石像を調べよう」

 

リバT『石像は、弓矢を放とうとしている射手のブロンズ像で、台座が小さな池の真ん中に据えられています。台座には碑文が刻まれていますが、それを読むには池を渡る必要があります。池に入るか、飛び越えるか?』

 

アスト「池の中を観察してみるが?」

 

リバT『ゲームブックでは、池に入ってみるまで分からないことですが、観察されたら仕方ない。ピラニアが泳いでいます』

 

アスト「だったら飛び越えるしかない」

 

リバT『技術判定してください。失敗すれば、ピラニアの群れ(技6、体6)と戦うことになります。水中戦は不利なので技術点を1減らしての戦いですね』

 

アスト「出目は9。難なく池を飛び越えた」

 

リバT『すると、台座の碑文が読み取れました。ちょっとした4行詩になっていて、要は「射手の矢を石の心に向ければ、死への門が開く」そうです。石像を触ると、何だか回転するようで、3つの選択肢が出ますね。矢を塚に向けるか、屋敷跡に向けるか、塚のところに立っている石に向けるか?』

 

ダイアンナ「塚に石なんて立っているんだ」

 

リバT『これは先に、塚を調べて的になる石を確認してから、ここに来るのが作者の想定した正解なんでしょうが、アストさんは運よく、いきなり正解を引き当てたみたいです』

 

アスト「石像を回す選択肢は、間違えたものを選んでもペナルティがないので、適当に回していれば、そのうち的石を指して、話が先に進む流れだな」

 

リバT『ゴゴゴゴゴと大掛かりな音とともに、塚の一部が内側に沈み込み、ダンジョンの入り口が開きます。石造りの階段が現れますので、松明に火をつけて、ここからダンジョン探索パートがスタートします(パラグラフ343へ)』

 

ダイアンナ「ちょっと待て。あまりにすっきり話が進むと、いろいろ通らなかった選択肢が気になるんだが?」

 

リバT『過程をすっ飛ばして、いきなり結論が出た感じですね。名探偵が「分かったぞ。犯人はお前だな」「ハハハ、バレたら仕方ない。おとなしく認めます」 こうして犯人は名探偵の華麗な推理の前に捕まったのだった、めでたしめでたし……で終わるようなもの、かと』

 

アスト「普通は犯人が否認するとか、『どうして分かったのだ? 証拠は全て消したはず』とか、いろいろ探偵役の推理を誘導して、探偵がきちんと事件や物語の裏の出来事を説明して、関係者の感想コメントや、犯人側の心情描写などを交えて、映像ドラマだと回想シーンを交えたりしながら、作品の4分の1ぐらいは尺を使うもの」

 

ダイアンナ「2時間ドラマだと、最後の30分ぐらいだな。そこにちょっとしたアクションシーンを混ぜるか、会話劇だけでまとめるかは作品次第だが」

 

リバT『アクションメインの作品だと、事件の裏は名探偵ではなくて、悪人側のグループが勝手に宴の場などで話してくれたり、冥土の土産だ、と捕まえた被害者の親族や恋人などにベラベラ喋った後で、「そこまでだ」と主人公に踏み込まれて、活劇シーンに突入する段取りです』

 

アスト「たまに、捕まってた者が犯人の解説を一通り聞いた後で、『それを聞いて納得したよ。だったら、お前たちは許しておけないな』とロープの束縛から逃れて、実は強かったというヒーローや戦闘ヒロインの正体を明かしてバトル突入という展開もあるな。わざと捕まったフリをして、調子に乗った犯人が自分で解説するように仕向ける作劇手法とか」

 

ダイアンナ「捕まった主人公がピンチというドラマ的なハラハラと、犯人の企てを暴くためにわざと捕まってみせる主人公の策士ぶりを披露して、物語を盛り上げるんだね」

 

リバT『いつもそれだと、話がマンネリでつまらないので、様々な作劇パターンをローテーション的に混ぜるのですけどね。たまにパターン崩しの作品があったりすると、驚くわけで』

 

アスト「捕まった主人公が爆死させられるとかか」

 

ダイアンナ「爆死して、どうするんだよ!?」

 

アスト「すると、荒野の向こうから赤い謎の車が走って来るんだ。車は飛行モードになって、驚く悪人をよそに、さすらいのヒーローが名乗りをあげる。『ズバッと参上、ズバッと解決』……」

 

ダイアンナ「それって探偵ドラマじゃないだろう?」

 

アスト「一応、主人公の職業は探偵なんだが、探偵が仮面のヒーローに扮する作品は、変身前の探偵が犯人に悪事を喋らせた後、死んだように見せかけて一度、退場する段取りがある。そして何故か物理法則を無視して、荒野の向こうからマシンで走って来るんだ。元祖ヒーローの月光仮面の時代からあるらしいぞ」

 

ダイアンナ「さすらいの私立探偵とか、月光仮面の話なんて、どうでもいいよ。要は、途中の過程をすっ飛ばして、たまたま選んだ選択肢が運よく正解だって話を聞かされても、物語としては収まりが悪いなって話だ」

 

アスト「では、ここで一度、セーブだけしておいて、作者の用意した攻略プロセスをもう一度見てみよう」

 

ショートカットされた攻略プロセス

 

リバT『では、本命だと思われた塚山ルートから先に。塚はいかにも古代の呪いみたいな雰囲気が覆っていて、ゾクゾクしながら周囲を回ってみるわけですが、〈感知〉技能がないと何も収穫がなく、よく分からない的石だけが印象的だと思いながら、庭園に引き返すだけですね』

 

ダイアンナ「〈感知〉があると?」

 

リバT『的石に何か引っ掻き傷が見えるわけですが、それ以上は〈目利き〉が必要です』

 

アスト「〈感知〉と〈目利き〉の両方があって、その引っ掻き傷が『盗賊の符号の〈的〉に似ている』と分かるわけだな。絶対に必要な情報ってわけでもないが、ここまでチェックして、ようやく、この試練が盗賊ギルド側の仕掛けたヤラセという推測が可能になる」

 

ダイアンナ「もしかして、大商人ブラスも盗賊ギルドの関係者なのか?」

 

アスト「ゲームブック内では、そこまで明確に明かされたわけじゃないけど、あからさまに主人公の盗賊見習いを誘導するような証拠を示しているよな。もちろん、この試練の裏に、ブラスがどこまで絡んでいるのか正確なことは言えない。単にブラスの職場の机や、金庫の中にベテラン盗賊がこっそり書類や手紙を勝手に入れておいた可能性もあるし。とにかく、単に試練を果たすだけじゃなく、試練の裏事情を推測する手がかりのような情報も見つかるかもなって話だ」

 

リバT『少なくとも、この的石の仕掛けは、盗賊ギルドがヒントを残してくれた痕跡があるってことですね』

 

アスト「次に、屋敷跡を調べてみるか」

 

リバT『屋敷跡に向かうと、絡み草(技7、体6)に奇襲されて、3点ダメージを受けてしまうんですね。実はリスクが大きい、と』

 

アスト「おまけに草の襲撃を突破して、次の選択肢は屋敷跡に残った灰の中を調べるか、石像の方に向かうかだから、最終的には石像を調べる方向に誘導される」

 

リバT『灰の中を調べると、100年前に焼けた熱が今だに残っているという怪現象で、火傷を負わされた結果、技術点と体力点を1点ずつ失うという理不尽さ』

 

アスト「結果として、この屋敷跡は調べるだけ損をして、一利なしということだ。最初にここで痛い目にあったら、2度と来るもんか、と思うだろう」

 

ダイアンナ「その痛い目にはあわないルートを上手く選んだわけだ。納得したよ」

 

リバT『では、次回から石像の矢の仕掛けが開放したダンジョンに突入しましょう。ここ(パラグラフ343)から第2部の開始です』

 

★盗賊見習いピート

 

・技術点11

・体力点16/20

・運点10

 

・盗賊技能:〈すり〉〈感知〉〈目利き〉

・アイテムによる追加技能:ロープとかぎ爪による〈壁登り〉、合い鍵による〈錠破り〉、黒マントによる〈姿隠し〉

 

・食料10食

・金貨38枚

・装備:ショートソード、短剣1本、革衣、明かりセット

・背負い袋の中身(6つまで):食料、運の薬、ロープとかぎ爪、ブランディ(体力2点回復×3回)(残り2つ)

(合い鍵、マントは個数制限に含まれない)

(当記事 完)