ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

D&D各ルールブック紹介4(その3)

★前書き(城塞攻略の話とか)

 

 さて、クラシックD&Dの黒箱マスタールールの話の続き、からマジックアイテム話に展開するのが本記事の趣旨となります。

 

 

 まず、マスタールールの構成をもう一度、確認すると、2冊の本がありまして、プレイヤーズマニュアルが32ページ。

 そのうち、キャラの成長に関するのが14ページ(もっぱら新呪文にページが割かれて、その他は経験レベル表とST判定表、命中判定表といった数値データの更新ぐらい)。次にウェポンマスタリーを中心とする武具関連が8ページあって、最後の10ページは攻城戦における追加ルール「シージマシン」。

 

 シージマシンは、コンパニオンルールにおける大規模戦闘ルール「ウォーマシン」に追加するためのもので、D&Dのキャラが個人単位の冒険者から国家単位の君主キャラに成長する際に、活用されるべきルール。

 もっとも、自分的には君主としての領地経営に、D&Dシステムとしての魅力を感じない(創作資料としての興味はあってもゲームとしての実プレイまでには至らない)ので、当ブログの話題としては、割愛していたわけですが。あえて自分の興味的に語ると、シージマシンの魅力は、攻城兵器の説明とダメージなどの数値データ、それに対する城塞構築物のHPやACなどのデータがきちんと設定されていることですな。

 

 例えば、お城の本丸は製作費用が金貨75000枚で、HP2500。比較対象として周囲120メートルの壁に囲まれた2階建て木造建築物だと、製作費用が金貨1500枚で、HP40とか。

 まあ、城その他の建物を設計したり、建設したりするルールは結構細かいわけですね。エキスパートルールの頃から。元々、D&Dはダンジョン作りのアドバイスもありましたし、キャラだけでなく構造物作りにもそれなりの指針が与えられたわけで。D&Dをプレイすることで、建築技師の夢を持つようになった人も、どこかにいるんじゃないだろうか、と思えたり。

 

 なお、自分のキャラ(魔術師)的には、城作りにはあまり興味がなかったけど、この間、アーティファクトの力で塔ができたからね。そっちに興味を持つようになって、塔のHPは300程度。

 これに対して最強の攻城兵器であるトレブクト(大きなアームで岩とかを発射する機構。現在は、フランス語読みのトレビュシェ、またはトレビュシェットと読むのが一般的)で与えるダメージはD12+13。期待値は約20で、これで2回攻撃されたら、2回建ての木造建築物は崩壊する計算になります。塔なら15回ぐらいの攻撃に耐えられて、城の本丸は125回の攻撃を防げる。

 まあ、本格的な城攻めで攻城兵器一つだけしか使わないってこともないのだろうけど。トレブクトが10台ぐらいあったら一斉攻撃で200ダメージが城に加わって、陥落も時間の問題。

 一応、トレブクトのような大型兵器の射撃速度は遅くて、6ラウンドに1回。つまり、1分ごとに200ダメージが城に与えられると考えて、13分後には陥落。それまでに敵の攻城兵器を破壊しないとゲームオーバーって場面も想像できるわけですな。まあ、本丸を攻める前に城門とか城壁を攻略するなどの段取りもあって、実際はもっと複雑なんですけど。

 

 ともあれ、こういう数値データが明確化されると、抽象的な城塞攻略の脳内イメージが、具体的なシーンとなって思い浮かんで、ゲームだけでなく創作上の資料としても、あるいは蘊蓄ネタにもなる辺り、シージマシンも自分にとっては初めて役に立った感。

 これで、マスタールールのプレイヤーズマニュアルの話は大体、終わった感じかな。

 

★マスタールールの新武装

さあ、大規模戦闘関係の話から引き続いて、個人的な装備品の話に行きます。

マスタールールでは、ウェポンマスタリーの前置き風に、新たな武具も紹介されていますな。
騎士の着る「スーツアーマー」や、馬用の鎧「バーディング」の各種材質ごとの防御力データが紹介されて、要するに騎士のための装備が充実しているわけですな。まあ、スーツアーマーは騎乗戦闘以外の冒険活動には不向きで、普段から身につけているものでもないのだけれど、リアルさを廃したゲームファンタジーだとガチガチの鎧で壁になる重戦士が当然のように登場するわけで。
念のため、普通の戦士が着るプレートメール(胸甲とかの要所のみ板金で補強)は基本ACが3で、騎士用のスーツアーマー(全身装甲)だと基本ACが0というのがクラシックD&D。さらにスーツアーマーは、ドラゴンの炎などの範囲攻撃にも相応のダメージ減少能力があって、魔法のファイヤーボールにも耐えやすい仕様。ただし、電撃への耐性はないとかで、重装騎士相手だと火を吐くレッドドラゴンよりも、電撃を放つブルードラゴンの方が脅威だったり。

他にも、武器だとハルバードなどのポールアーム(長柄の矛槍状武器)に関する記述が充実しています。

こういう大き過ぎて取り回しの悪い武器は、旅を重ねたり、狭いダンジョンに潜ったりすることの多い冒険者には不向きなんですが、マスタールールはもはや冒険者のためのルールよりも、中世騎士道ファンタジーを極めた方向性のルールになっているので、大規模な戦場では猛威を振るう長柄武器とか、城門警護兵の示威の象徴であるポールアームがこれでもか、とヨイショされている次第。
そして、ポールアームの花形であるハルバードは、ウエポンマスタリーでは非常に優位な武器として設定されています。ディザーム(武器落とし)が標準仕様で、エキスパートランクに達するとデフレクト(受け流し)も可能。これだけで剣並みの使い勝手の良さですが、その上、ハルバード特有の標準アクションに「フック(鉤爪)で相手を引っ掛けて転倒させる」というオプションがあって、「転倒した相手への攻撃は+4ボーナス、転倒した相手からの攻撃は-2ぺナルティー」で、合計6、すなわち30%の優位に立てる。つまり、ハルバードで相手を転倒させて、その後、仲間がフルボッコするという連携コンボも可能なわけで、対ハルバード戦では文字どおり足を引っ掛けられないようにする必要が生じるわけですな。

ともあれ、ウェポンマスタリーによって、武器戦闘が単なる殴り合い、ダイスを振るだけの単調なゲームから、互いの武器特性を活かしながらの駆け引きを考える、そこそこ緻密なゲームになったわけですが、ハルバードはそういう象徴となっていると考えます。
さらに、このハルバードに関して、ドワーフにも朗報が。
ドワーフって、サイズが人間よりも小さいので、それまではポールアームが使用不可だったんですね。
しかし、マスタールールによって「-3の命中ペナルティーは付くけど、ドワーフも使用可能」となって、斧派ドワーフにも新たな選択肢が与えられたわけです。

他にも、刃の付いた楯(シールドウエポン)や、補助武器を使った二刀流アクションも加わって、マスタールールの導入によって、クラシックD&Dの武器戦闘も多彩になった印象があるのですが、活用された印象があまりないですな。
ここまで、ルールをややこしくするなら「アドバンストD&Dに進んだ方がいいんじゃないか」とプレイヤーやDMには考えさせたろうし。

★戦士の成長

さて、クラシックD&Dでは戦士が成長しても、新たに呪文を覚える魔法使いや僧侶、忍び系技能の数値が向上する盗賊に比べて恩恵が少ない、冷遇されているという意見がありました。

まあ、ルールブックを見て、成長ルールのところだけを表面的に見ると、確かにそういう誤解をするのも分かるんですけどね。
クレリック1ページ、ドルイド2ページ、ファイター3分の1ページ、マジックユーザー5ページ弱、シーフ1ページ、デミヒューマン3つまとめて1ページとなってます。
本ブログでは、しばしばクラシックD&Dにおけるデミヒューマンの冷遇を嘆いて、「デミヒューマンはつらいよ」とネタにしてきたこともあったのですが、「ファイターはつらいよ」とはならないんですね。と言うのも、クラシックD&Dのルールでは、世界観的にファイターが圧倒的に優遇されているから。
宗教や神話については避けて通られたクレリック、盗賊ギルドという背景がいまいち具体的に提示されていないシーフに比べて、中世騎士道の君主の道という形で手厚いサポートが為されているのがクラシックD&D。個人としての成長よりも、社会における地位向上という意味で、ファイターはいろいろとフォローされているんですね。そして、武器戦闘に関する追加ルールはもっぱらファイターがその恩恵を受けるわけで、ルールの全体をしっかり把握していれば、「ファイター冷遇などという批判は、木を見て森を見ない短絡的な意見」と言わざるを得ません。

その上で、実プレイを経験すると、「魔法の武器や鎧」はファイターを中心に与えられる傾向があります。
TRPGにおけるキャラの成長は大きく二つの方向性があって、「1.レベルアップによるHPや技能の向上」「2.装備品による攻撃力や防御力の向上や、特殊能力の獲得」。システム面では以上の2点が中心です。
他にストーリー面なども加味すると、「社会的コネの獲得(権力者と知り合いになるなど)」やら「名声・立場の獲得(街を魔物の襲撃から救った恩人とか、盗賊ギルドの幹部待遇とか)」といった、ルール以外の成長要素もあって、その点でもファイターは冒険者パーティーの表の顔になりやすい。大人になれば、そういう社会的立場の恩恵の方を大切に考えるようにもなるわけで、個人のスキルもさることながら、どういう人間と関係を結んで、良好に付き合えるかが大切なんだなと感じるようになったりも。

それはともかく、ファイターはHPの成長による打たれ強さと、特殊能力に頼らない武器戦闘の攻撃力・防御力が最大の恩恵で、すると「肉体と装備品」がファイターの成長要素となるわけですな。魔法その他の器用なスキルではなく、武具や治癒薬を中心としたマジックアイテムの獲得こそがファイターの成長要素の一つ、と。
もちろん、他の職業でもマジックアイテムは重要なんですが、呪文使いの人は成長すれば自分でマジックアイテムを作ることも可能。だけど、ファイターの場合はそれができないので、ダンジョンでゲットするか、誰かからもらうか、売っていれば購入するしかない。
ただし、クラシックD&Dってマジックアイテムの販売価格、売却価格が指針程度でしかなく、しばしばDMが自作しなければならないので、マジックアイテムの購入がルールとしては安定して行えないシステムです。必然的に、マジックアイテムは購入ではなく、ダンジョン内で見つけるものということに。まるでウィザードリィですな。初期装備品以外は店に売ったものだけが陳列されて、店は買い物でなく売るための場所で、獲得資金は割と持て余しがちなのが初期RPGの欠点。金の力で強くなる、というのができない世界だったり。

★それでも、金の使い方について考えてみると

一応、クラシックD&Dの場合、「獲得した宝のGP量(金貨による価値)=経験値」というシステムのため、金を手に入れることがそのまま成長に直結するルールですが、その金で強い装備品を買うというモチベーションに欠ける欠点があります。
というのも、冒険者戦士の最強防具のプレートメールが60gpで、標準的な剣が10gp。飛び道具のロングボウなんかが少々高くて40gpで、消耗品の矢が20本で5gp。最初の所持金が3d6×10gpなので期待値100gpほどのため、最初は十分な武具が買えないかもしれませんが、ちょっと冒険をしていけば、すぐに店で買える装備に十分な資金はたまるでしょう。
戦士が 2レベルになるのに2000xpの経験値が必要なので、経験値の4分の3以上は宝のGP分という目安に従うなら、2レベル戦士は1500gpの宝を入手していると見なされますな。さあ、この1500gpで装備品を整えた後は、何を買えばいいでしょうか。

正解は、乗り物。
軍馬が250gpで買えたり、四輪馬車が200gpで買えたり、この辺の移動手段が手頃な買い物に思えますな。ベーシックからエキスパートの前半にかけては馬に乗っての野外の旅は魅力的に映ります。
その次の乗り物になると船が推奨されるわけですな。エキスパートルール最初の冒険シナリオも「恐怖の島」という恐竜の棲息する宝島探検話ですし。
しかし、これが少々高くて、カヌー程度なら50gpで買えるものの、河川用の小型船リバーボートで4000gp、航海用の小型船スモール・セイリングシップで5000gpで、それでも8000xpを貯めた4レベルファイターと仲間たちなら十分購入可能でしょう。

なお、「恐怖の島」シナリオでは、もしもお金がなくてセイリングシップが買えない場合、次のようなお助けアイデアが示されています。

●中古の船を格安の値段で買う。この場合、新品の値段に比べて払った資金に応じて、破損しやすくスピードにも劣るデータとなって、航海時にハンデが与えられることになる。

●船を誰かの遺産として相続する。船の値段の10%を相続税として支払った後で、出航可能となる。

●船を買うために借金する。

とまあ、古代都市の遺跡の眠る南洋の島に、宝を求めて航海の旅に出る冒険者の物語が、クラシックD&D最初の公式野外冒険シナリオだったわけです。

それに、エキスパートルールの装備品リストを見ると、金貯めて馬とか馬車買って、ちょっと遠出の旅をした後で船を買って、遠方の島へ向かうのが、冒険の王道と設定されているようなんですな。そう考えると、ドラクエって正にD&Dの描いた冒険行に忠実な作品だったんだなあ、と改めて気づいたり。
まあ、ドラクエの場合は船の入手方法が「船の持ち主の孫娘をモンスターの襲撃から助けたり、王様から黒コショウの報酬として頂いたり、金持ちの武器商人を仲間にしたり、大富豪の娘の婿養子になったり、婿養子でなくてもお気に入りになったり」などなどコネでもらえることが多いようですな。
一方で、ウルティマファイナルファンタジーでは、「襲ってきた海賊を返り討ちにして奪ったり、海賊と仲間になったり」アウトロー的な展開が印象的。

さすがに、空の旅はクラシックD&Dのミスタラ世界では定着しておらず、金を出したからといって、空が飛べるアイテムを簡単に買えるわけでもなく、ルールブック的には空よりも多元宇宙の旅を推奨されるわけで。
まあ、魔法を使うとか、魔法の絨毯を使うとか、飛行生物への騎乗を前提とするなら空も飛べるのでしょうが、空そのものを冒険の舞台にするようなD&Dシナリオはあまり覚えていないですな。飛空艇的なものが定着するのは、クラシックD&Dの後のAD&D2版以降の世界観かな。3.5版のエベロンなら確実に存在しますが、ドラゴンランスでも、フォーゴトン・レルムでも「飛空艇はないわけじゃないけど不確かな技術で、登場しては墜落する」のが定番で、公的な技術としては確立されていない印象。


★旅を終えて

マジックアイテムの話をしようと思って、どうして乗り物の話を展開したのか分かりませんが、クラシックD&Dエキスパートルールでは、船を買って以降のお金の使い道は3つが提示されています。

1.お城や要塞を築くために貯える。まあ、これが一番の王道ということになるのでしょうな。

2.人を雇う。城を築いた後は、守備兵とか領地維持のための専門家を雇ったりするのに金が必要になります。

3.魔法の品物や呪文の研究をする。魔法使いや僧侶、エルフは拠点に引きこもって研究活動に従事することができるわけですが、これに結構、金がかかるわけですな。何せヒーリングポーションを一本作るのに、500gpも掛かるのですから。プレートメール+1を作るのに1万gpとか、こんなに高いなら、売ればいくらになるんだろうとか気になりますが、エキスパートルールには、マジックアイテムを売買するルールは存在しないので、DMが自作しないといけません。

ともあれ、普通のプレートメールが60gpで買えるのに、それより1ボーナスが上がるだけで150倍以上も掛かるなんて、割に合わないなあ。プレートメール+1を作るお金があれば、小型のガレー船が買えます。なお、小型ガレー船のサイズは長さ18~30メートルで、船員100人ぐらいが乗れるとか。

結局のところ、クラシックD&Dにおけるマジックアイテムって作るとなると非常に高価なので、活用しにくいルールだったりします。それでもファイヤーボールを20回撃てる魔法の杖が3万gpで作ることができるのはいいのかも。マジックアイテムを自作できるレベルって9レベル以降なので、魔法使いなら30万XPを貯めているわけで、3万gpも高い買い物ではないのかもしれないですし。

とにかく冒険者として、迷宮探検とモンスター退治をしながら宝をゲットするゲームがD&Dということですが、そのお金を使って「冒険する範囲を広げる」「定住拠点を築く」「人を雇う、領地のために資金運用するなどして社会的地位を築く」「社会的地位に興味がなければ、自分の趣味的な研究生活に資金を投入する」といったところでしょうかね。
まあ、昔は「金を貯めて、強い武器や防具を買って、ますます強くなって冒険を続ける」のがコンピューターRPGの定番でしたが、最近は「資源を集めて、建物や街を築く」「仲間モンスターなんかを育成するために資金を費やす」「工房なんかを使って、武器やアイテムを製作する」といった要素をメインに打ち出したりして、「冒険や戦いそのものは目的ではなくて手段でしかない」というゲームも当たり前ですからね。
D&Dの提示した要素を、よりブラッシュアップさせたゲームが定着していくのが90年代からゼロ年代の流れだったのかな、と考えつつ。


とりあえず、今回は、黒箱マスタールールからマジックアイテムの道を目指していたら、「資金運用の話から冒険の行き着く先」の話に展開してしまい、うん、行き当たりばったりだったな、という内容。
まあ、装備品や購入関係の話をしていると思えばいいんですけどね。広い意味で、お宝や金銭の話でもあったわけで。

(一度、仕切り直すつもりで今話完)