ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

D&Dポーションの話・完結編

★4版と5版

 

リトルNOVA「さて、今回でD&Dポーションの話を終わらせる予定なんだけど……」

 

ハイラス「けど?」

 

リトルNOVA「4版と5版を同じ記事で語るのって、ずいぶんと困難だなあと思って」

 

ハイラス「何故に?」

 

リトルNOVA「対極的なシステムだからさ。4版は、3版の合理性、システマチックな方向を突き詰めた戦闘ゲームで、それに対する5版はランダムチャートを用いたストーリー生成要素を多く投入し、TSR時代の要素をいろいろ復活させたファジーなゲームで、同じD&Dでも全然違う。3版を新世紀D&Dのスタンダードとするなら、4版と5版は全然性格の違う兄弟みたいなものだね。真面目で融通の利かないバトルマニアな兄貴の4版と、ほんわかした性格なのに、TSR時代のお爺ちゃん似で気まぐれっぽい性格の弟5版って感じ」

 

ハイラス「すると3版は?」

 

リトルNOVA「破天荒な性格ながら偉業を成し遂げたご先祖さまが1版で、その子供の中世騎士道マニアの冒険家がクラシックD&Dで、1版の豪快さが薄れてマイルドに生真面目になった後継者が2版。だけど、2版の時期は商売の手を広げた割に、いろいろと欲を張って敵を多く作ったために、家の屋台骨が崩れたわけで。3版はより堅実な性格ながら、自分を支えてくれた人たちへのサービスも欠かさない、いい孫だったんだな。真面目なのにサービス精神旺盛で、戦国武将としては天下統一を成し遂げた器量の持ち主。そのクローンがパスファインダーで、4版は父親のクローンとの争いで苦戦し、5版は祖父の遺産で勝負という状況」

 

ハイラス「なるほど。3版がバランス型で完成度が高く、4版は戦術ゲームの緻密さが売りで先鋭的、5版は懐古主義のストーリー志向という認識でよろしいか?」

 

リトルNOVA「そうだね。今、仮にプレイするなら、自分は5版を選ぶだろうな。現役システムということもあるけど、3版や4版はキャラ作りに緻密な指向性が必要で初心者向きとは思わない。5版はランダムで背景を決められるところから、適当にダイスを振っていても楽しい感じ。自分は、DMとしては緻密さよりもランダムに事件が起こって、それにプレイヤーがあれこれ対処することでストーリーが転がる流れが好きだから。緻密にプレイして最適解を模索するゲームもいいけど、融通が利かないガチなのは勘弁って感じ」

 

ハイラス「まあ、NOVA殿が緻密でないことは、書く記事を読んでいてもよく分かる。いろいろ語って、興味本位に闇雲に広げながら、何とかつなげて、最後に着地点を見出して収束させる。そうしているうちに手を広げ過ぎて、まとまらないこともしばしばかな」

 

リトルNOVA「うん。続けるのは得意だけど、まとめるのは苦手だね。一応、ゴールはあらかじめ決めるようにしているけど」

 

ハイラス「では、そのゴールへ向かって進み続けるとしよう、でござる」

 

★4版のマジックアイテム観

4版は、それまで世界に満ちていて十分に研究されていた魔法の力が拡散した世界です。
しかし、それは魔法が失われたという意味ではなく、魔術師ギルドや悪の魔法帝国みたいな大規模な統治機構が崩壊し、冒険者個人の魔術や技術の研鑽が価値を持つ時代。国家間の陰謀劇よりも、もっとストレートな活劇主体の乱世って感じ。
だから、4版ではマジックアイテムを管理するような社会システムは無くなり、その分、冒険者個人の管理下に置かれながら、魔法の力の復興を目指す方向性ですね。

一応、マジックアイテムの購入は可能です。冒険の過程で、それができる古代の魔術文明を残した市場さえ見つければ。3版のように割と簡単に買える世界ではないですが、エベロンのような「魔法遺跡を発掘する冒険稼業が一般的な世界」も用意されていますし、購入価格のデータも設定されているので、世界観が許せば3版のように自由にマジックアイテムを購入できるようにDMが裁量してもいいでしょう。

基本的な世界観としては、3版が自由度の高い(割と何でもあり)グレイホークと、80年代後半以降のスタンダードと言えるフォーゴトン・レルム
4版が、呪文荒廃という大変動後のフォーゴトン・レルムと、古代遺跡発掘というジャパニーズTRPG要素を大いに持ち込んだエベロン(魔法とレトロなメカニック科学文明の融合した雰囲気)。一応、低レベルの魔法なんかは3版の残滓があって、ポーションが買えないような状況ではないですが、残っている魔法は大体、実用的な戦闘関連のものが専らで、奇抜なものは消えている感じですね。

ゲームシステムとして、4版はバトル中心なので、登場するマジックアイテムも総じて実用的な戦闘志向(少なくとも基本ルールの範囲内では)。
ポーションも4つしかないですね。レベルの低い順に並べると「ヒーリング」「ヴァイタリティ」「リカヴァリィ」「ライフ」。その効果は、順に「10HP」「25HP」「50HP」「蘇生」となっています。ポーションは回復ダイスを振ることもない定量回復の辺り、ランダム性を減らした戦術志向の4版らしいですな。
毒消し? そんなもの、気合いで治せばいいです。

いや、冗談ではなくて、毒みたいな継続ダメージを与える状態異常は、毎ターンごとのセーヴィング・スローに成功すれば、そこで消えます。おまけに戦闘が終われば毒も消えますし。
一応、ヴァイタリティ以降の回復薬には「飲んだ瞬間に1回のST判定を可能にする」という効果もあるわけで。

ここで4版のHP回復のルールについて確認しますと、これまでの(そして5版の)D&Dの回復呪文やポーションは「魔法の力で傷を癒す」という分かりやすい効果でした。
4版では、HP回復は「肉体の持つ回復力」を消費することで、自力で行います。つまり、回復魔法なんてなくても、回復力を使えば元気になれる。ただし、この回復力はいつでも使えるわけじゃない。戦闘の合間に小休憩を挟むことで回復できるわけですが、回復力を1回使えば最大HPの4分の1が回復します。ええと、スパロボにおける「根性」でHPの3分の1が回復するようなものですな。他人に回復してもらうんじゃなくて、自分の力で回復するのが4版のHP観。
しかし、戦闘中のHP回復には制限があります。「底力」という能力で1戦闘につき1回だけ自力回復できますが、それ以外の回復にはポーションを飲んだり、治癒技能を使ってもらったり、クレリックの癒しパワーを受けたり、ウォーロードの激励パワーを受けたりすることで、回復力消費の機会を与えられます。
つまり、D&D4版においては、以下の状況もシステム的にあり、なわけですね。


プリキュア「うわー、何て威力の攻撃なの。もう勝てないよ~(HP残りわずか)」

先輩プリキュア「諦めたらダメだ。私たちはプリキュアなんだから。決して諦めない。必ず道は開けるって信じてる。さあ、一緒にあいつをやっつけるよ(鼓舞の言葉インスパイリング・ワード発動)」

プリキュア「うん。何だか勇気が出て来た。よし、一気に行くよ(回復力を使用し、HP4分の1が回復)」


こんな感じで、4版のHPには単純な肉体的耐久力だけではなくて、根性とか勇気とか気合とか精神的なパワーも含まれているわけですな。だから、僧侶以外のHP回復役が成立するわけで。
というか、今、記事を書いて実感したけど、4版って戦術シミュレーションゲームと考えれば、スパロボ的な要素の多いシステムだと今ごろ気付いた。

何にせよ、4版は戦闘特化なのが災いして、ポーションの話があまり面白くならないのが、本記事的には難点ですな。ヒーリングポーションが金貨50枚で買えるけど、その上位ランクのヴァイタリティポーションになると金貨1000枚なので、ちょっと手を出しにくいかな、とか、それぐらいしかネタがない。
なお、キャラ作成時の所持金は金貨100枚だけなので、最初からヒーリングポーションを買うのも難しそう。まずは、しっかり通常装備を整えて、それからってことでしょうね。


ハイラス「マジックアイテムの作成ルールはないのでござるか?」

リトルNOVA「あるよ。基本ルールだとウィザードとクレリックが〈儀式修得者〉の特技を持っている。4版の呪文は、戦闘中に使えるパワーと、もっと発動に時間の掛かる儀式に分かれ、儀式には儀式書または儀式の巻物が必要だ。魔法の品物を作るのに必要なエンチャント・マジックアイテムの儀式書は、レベル4になれば金貨175枚で入手できて、以降はアイテムの代金さえ払えば作り放題だね。ゲームシステム的には、金を出してアイテムを買っているのと変わらないわけだけど、自分で作る場合は、自分のレベルまでのアイテムしか作れない。ヒーリングポーションはレベル5のアイテムなので、自分で作るには最低レベルが5となるわけだ」

ハイラス「3版に比べると、ポーションを作りにくくなったようだが」

リトルNOVA「その代わり、アイテムの種別ごとに別の特技を習得しなくなっても良くなったし、経験値を消費しなくなったので、アイテム製作はより容易になったと言える。4版のマジックアイテムの特徴は、アイテムの種類ごとにレベルが設定されたので、弱いキャラが自分のレベルを超えた強いアイテムを作成できないようにしている。自分のレベルを超えたアイテムは、冒険をしないと入手できないことでバランスをとっている形だね」

ハイラス「儀式でアイテムを自分で作るか、売っている店で買うか、どっちもできる形でござるな」

リトルNOVA「売っている店が普通にあるのなら、買った方が早いんだろうけど、これはDMの裁量次第だからね。売っていなければ自分で作るというDIY志向のプレイヤーもいるだろうし。あと、ルールブックに関する話だけど、4版だけはマジックアイテムのルールがプレイヤーズ・ハンドブックに書いてあるんだ。他の版だとDMガイドの情報なのにね。これはつまり、4版ではプレイヤーがマジックアイテムに積極的に関わることを推奨しているんだと思う。3版は、それを許すとDMに制御できないチートプレイが横行すると見られたけど、4版はアイテムのレベル制を取り入れることで、システムの面から縛りができていると判断して、プレイヤーの権限を高めたんだろうね」

ハイラス「プレイヤーにできることが増えた分、初心者が気軽にプレイするハードルが上がったようにも思えるが」

リトルNOVA「うん。4版は既存のD&Dの概念をも大きく変えたので、それだけでもハードルの高いゲームになったと思う。ぼくは4版については、にわか勉強みたいなものだけど、今はいろいろと革新的なゲームだったんだな、と感じる。革新的すぎて、スタンダードにはならなかったみたいだけど。そして、揺り戻しの5版になってから、再度D&Dの研鑽を始めているわけで」


★5版のマジックアイテム観

リトルNOVA「さて、5版ではヒーリングポーションというアイテムに革命が起きるんだ」

ハイラス「何でござるか?」

リトルNOVA「普通に店で売っている商品になった。値段は金貨50枚と相場通りなんだけどね。つまり、冒険者に限らず、一般人が普通にお店で、ヒーリングポーションを買い求めたりもする世界になったんだよ」

ハイラス「金貨50枚という額を分かりやすく言うと?」

リトルNOVA「庶民の1日の生活費が金貨1枚らしい。つまり、庶民の2ヶ月弱の生活費ってところだね。なお、上質のワインボトル1本が金貨10枚という世界だから、ヒーリングポーションはワイン5本分の贅沢品ということになる……というか、おじさんは5版の世界から来たキャラじゃないか。ぼくより詳しいはずだろ?」

ハイラス「いや、私はドルイドであるゆえ、文明社会の経済感覚にはちと疎いのでござるよ。何せ、自然の中での自給自足を旨としてきたからな」

リトルNOVA「ああ、そうなんだ。そういう電気と書物のない暮らしは、ぼくには耐えられそうにないけど。それはともかく、4版ではマジックアイテムに細かいレベル分けが設定されていたけど、5版はその辺の区分がもっと曖昧というか、トレーディングカードゲーム的になっていて、コモン、アンコモン、レア、ベリーレア、レジェンダリーの5段階。そんな等級によって、世間での流通量や価格が決まってくる。ヒーリングポーションはコモンで、コモンアイテムは金貨50枚から100枚が相場ということだね」

ハイラス「他にコモンのアイテムは?」

リトルNOVA「レベル1呪文の巻物と、クライミング(登攀)ポーションぐらいだね。マジックアイテムの多くはアンコモン以上みたいだ。ルール上は、コモンとアンコモンの差は値段以外にあまりないみたいだけど、レアより上は推奨キャラクターレベルがあって、低レベルのキャラが強すぎるマジックアイテムを安易に手に入れないように、うまく調整されているみたいだね。マジックアイテムの作成についても、呪文使いなら誰でも作成可能になっていて、特別な技能も必要としないみたいだ。コモンとアンコモンのアイテムならレベル3から作成可能で、コモンなら金貨100枚、アンコモンなら金貨500枚が必要になる。ただし、一度しか使えない消費型のアイテムは作成費用が半額になるので、ヒーリングポーションは金貨50枚で作ることができる。買っても作っても同じ金貨50枚なので、どっちでもいいということなんだろうけど、一応、買えないものは自分で作ればいい、という方針は変わらないみたいだね」

ハイラス「4版は緻密なルールが売りであったが、5版は随分と単純化されたようでござるな」

リトルNOVA「うん。それでも、マジックアイテムについてはDMの専権事項だと明記されていて、プレイヤーが望むものを何でも作っていいわけではなくなったけど、その分、DMが許せば、ずいぶんアイテム作成ルールは単純になったと思う。こんなに単純でいいの? ってぐらいに。DMが凝ろうと思えば、凝ることもできるし、どうでもいいと思えば、大して考えずに金だけ出して、はい、完成ってショートカットしてもいい」

ハイラス「ショートカットとは?」

リトルNOVA「+1の武器はアンコモンだから、レベル3になると作成可能になる。よってDMさえ許せば、パーティー全員が金貨500枚を消費して、パーティー内の魔法使いに武器を永続エンチャントしてもらったという扱いで、全員が+1の武器持ちになることだって可能なんだね。鎧の方はレアだから、レベル6以上と金貨5000枚が必要だけど。それが単純すぎると思えば、武器の魔化には特別な鉱石が必要と設定して、それを入手するための冒険シナリオを作ってもいいし、魔法鍛治から技術をレクチャーしてもらわないと武器の魔化はできないようにしてもいいだろうし、金を払う以上のストーリー要素を組み込むこともできる。まあ、そこまでして+1の武器を自分たちで作成したいかは、DMではなくプレイヤーの願望次第だろうけど」

ハイラス「だが、プレイヤーが望めば、そういうことも可能だと」

リトルNOVA「実際は、アイテムの製作時間の問題もあるけどね。作成費用が25gpにつき1日かかるルールなので、ヒーリングポーションなら2日で済むところ、+1武器なら1本20日、+1鎧なら200日掛かるので、さすがに1人のキャラで量産するのは困難と思われ。まあ、冒険の合間にインターバルが何日あるか次第だけど。それこそ、知り合いの魔法鍛治がいるのなら、武器や鎧の製作は彼に追加報酬を払って、仕事として発注した方がいいんだろうね。ぼくがドクターにブラッドポーション作りを依頼したように」

ハイラス「おっと、それが本来の目的でござったな。5版では、晶華殿のためのポーション作りのためのヒントはつかめたのだろうか」

リトルNOVA「いいや、ダメだったよ。5版のポーションリストを見ても、そういうネタはなし。ただ、いろいろ懐かしくはなったね。3版以降は、ポーションの種類が大きく様変わりして、基本ルールの物は実用性一辺倒になっていたんだけど、5版ではTSR時代のポーションがあれこれ復活していてね。世界設定的に5版にはTSR時代の要素を復活させて、D&Dブランドを明示しようという雰囲気を感じていたんだけど、今回はポーションの名前にもそういう昔のD&Dっぽさを採用したんだな、と改めて感じ入った次第。ポーション同士を混ぜたら、爆発したりするような表も再録されていて、ああ、これはAD&Dの名残だとかね」

ハイラス「つまり、AD&D由来のポーションばかりで、それ以外の新規性はなかったということでござるか」

リトルNOVA「まあ、5版は原点回帰という方針がいっそうはっきりしたってことさ。だから、今さら昔のクラシックD&Dの記事とかを書く刺激にもなったわけだしね。とりあえず、ブラッドポーションの件については、他の資料も漁るけど、ぼくの血と、いろいろ素材を組み合わせて、クリスタルレイクの加護とか祈って、試作してみるとしよう。この辺は錬金術士と同じで、実験しながらの試行錯誤の過程を大切にしたいところだね。
「もっとも、血を使ったアイテムだから、基本ルールよりも『不浄なる暗黒の書』とか、他のゲームのネタである鮮血魔法とか、『ヴァンパイア:ザ・マスカレード』などのホラー系、オカルト系のRPGルールをチェックした方がいいのかもしれないけど、それで面白いネタが見つかれば、また話題にするってことで。さもなければ、ポーションの話は今回で終わり。それ以外のアイテム話からアーティファクト話に移るか、あるいはAD&Dの種族・職業話の続きにするか、新発売予定の5版のサプリメント話にするか、日本のTRPG史について語るか、今のところはそういうネタを考えてるってことで、じっくり一つずつ消化していきたいな、と」

(今話完)