ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

ポーションの話の続き

ドルイドさんとポーション

 

リトルNOVA「おおい、ハイラスおじさん。ポーションの研究に付き合ってよ」

 

ハイラス「いくら子供の姿とはいえ、中身は年上の相手におじさん呼ばわりされるのは心外でござる」

 

リトルNOVA「だったら、おい、ハイラス。ポーションの研究に付き合えよ」

 

ハイラス「子供の姿で、そんな生意気な口を聞かれるのも釈然としないでござる」

 

リトルNOVA「仕方ない。フッ、ハイラス。ポーションの研究に付き合うが良い」

 

ハイラス「何で、ますます上から目線になるでござるか」

 

リトルNOVA「ねえ、ハイラスおじさん。ポーションの研究に付き合ってよ」

 

ハイラス「最初に戻ったが、それが一番マシな頼み方でござるな。大体、どうしてポーションの研究にそこまで熱心になっているのかな」

 

リトルNOVA「うん、晶華のためなんだよ。そろそろ27日の誕生日が近づいているんだけど、そうなるとあいつは血に飢えた吸血衝動に見舞われるんだよね。おまけに、そろそろハロウィンだし、きちんと美味しいブラッドドリンクをトリートしてやらないと、どんな悪事のトリックを仕掛けるか分からない。そこで、ポーション研究をすれば、あいつの吸血衝動を和らげるブラッドポーションが作れるかもしれないだろう? ドクターも科学の力で薬を合成してくれているけど、こっちは魔法の力で何かできないかと思うわけだ」

 

ハイラス「なるほど、そういうことでござるか。娘御のためとあらば、このハイラス、協力いたそう」

 

リトルNOVA「晶華曰く『生の血には生命活動を司る霊的成分が含まれている』とか、『人工血液には魂がこもっていないから、物理的な栄養素が同じでも、命が伝わって来ないとか、魂が充足できないとか、心がたぎらないとか、とにかく燃えも萌えも感じない』そうなんだ。ドルイ道おじさんなら、生命活動とか動植物のエキスパートだから、晶華の満足するようなフルーティーな人工ブラッドポーションを作るための知恵が出てくるんじゃないかと思ってね」

 

ハイラス「しかし、マジックアイテムの研究はNOVA殿の方が熟練していると思うのだが」

 

リトルNOVA「それは物にもよるよ。ぼくはどちらかといえば書物研究が中心だからね。すでに記載された作成方法があれば、それを探して応用することはできるだろうけど、飲食物の味や栄養素、それに動植物の生態とか実地観察の経験に欠けている。理屈は分かっても、生の体験とか味わいとかではまだまだなんだよ。特に、多くの魔法的ポーションは魔法使いの領域だけど、治癒系のポーションはプリーストの領域だとAD&Dのルールには明記されていて、やはりドルイ道おじさんと協力すればいいんじゃないかな、と」

 

ハイラス「なるほどな。では、NOVA殿の研究の相談相手を務めるとしよう」

 

★AD&Dのマジックアイテム観

基本的に、アドバンストD&Dでも、マジックアイテムの売買は推奨されていません。
マジックアイテムが普通に社会に出回っている世界では、冒険者ではない一般人もそれを利用して「D&Dの想定する中世ヨーロッパのファンタジー世界とは異なる文明レベルへと発展して、並のDMでは制御不可能になる危険性があるから」というのが89年辺りの常識。

ただし、クラシックD&Dに比べて「マジックアイテムを作成することはより推奨」されております。
クラシックD&Dでの獲得経験値は「入手した宝物のgp分に、倒したモンスターのXPと、長所の能力値ボーナスを加えた分」というのが基本でしたが、それから5年後に登場したアドバンスト第2版では、経験値ルールが大きく変わっています。
モンスターを倒すことによるXPはパーティー経験値として扱われ、そこにDM裁量によるストーリー経験値が加わります。
さらに職業別の個人経験値が加わるのですが、戦うことそのものが役割のウォリアー(戦士系)は倒した敵のレベル総計×10が個人経験値として加算。入手した財宝の額×2が経験値になるのはローグ(盗賊系)の特権で、また彼らは鍵開けなどの特殊能力の成功でも200XPが得られます。
魔法使いや僧侶は、有効に使用した呪文のレベル×100が個人経験値になる他、マジックアイテムの製作でも経験値が得られるようになっております。
つまり、マジックアイテムの値段は設定されていないのに、それを作った時に得られる経験値は設定されている、と。ちなみにヒーリングポーションを1本作ると200XPの経験値がもらえます。+1ソード1本で400XP。

こういうルールであるため、アドバンストD&Dの魔法使いや僧侶はマジックアイテムの研究や製作に励むのがゲーム性としても正しいわけで、そのためのルールも(当時としては)比較的充実していたわけですな。
そして、そういう要素を体現したゲームがこれらということになります。

アトリエシリーズも結構、息の長いRPGシリーズと言えますが、最初に発売されたのは1997年。
この頃になると、単にモンスターを退治して世界の危機を救うコンピューターRPGの方向が、より日常的な「アイテム作り、もの作り」の要素に注目するようになっていたわけですな(オンラインゲームの製造職やスキルからの流れもある)。現在ではそういうアイテム作成の要素のないゲームを探す方が珍しいという感じになっています。
素材を集めて物作りを目指す要素は、単にキャラの戦闘能力を磨くだけでなく、職人として工房を運営する経営ゲーム的な感覚ももたらしてくれたようですね。壊すだけでなく、作る楽しみというか。

なお、この個別経験値ルールはややこしいので、旧来のD&Dにおける「獲得GP=経験値にするルール」も選択ルールとして使用してもいいという示唆もあったり。この辺はDMの裁量次第という旧D&Dの方向性が根強く残っているところ。


ハイラス「なるほど。つまり、NOVA殿と私は、晶華殿のためのブラッドポーションをうまく作れば経験値が得られるわけでござるな」

リトルNOVA「アドバンストD&Dならね」

ハイラス「それでポーションの製造はどうすればいいのでござるか?」

リトルNOVA「まず材料を用意しないといけないんだけど、とりあえず、ぼくの血だよね。その成分を抽出して、ブラッドオレンジと調合すればいいんじゃないかな。🥤+🍊」

ハイラス「そんなに単純なことでよいのであるか?」

リトルNOVA「まあ、ぼくの血を他で代用できればいいんだけどね。ぼくの汗とか、涙とか、唾液とか、髪の毛とか、爪の垢とかならいいのかもしれないけど、いきなりそんなフェティッシュな手段は避けたいところだ。まずは、真っ当に血を混ぜるところから初めて、少しずつアレンジすればいいか、と」

ハイラス「それだと、私はいなくてもあまり問題ないだろうに」

リトルNOVA「いや、それがね。AD&Dだとアイテム作成の研究施設を準備しないといけないんだ。魔術師は錬金術工房みたいな場所が必要だけど、それは今ある施設で何とかなると思う。だけど、僧侶の場合は信じる神を祀る祭壇を設けて、そこに信仰エネルギーを投射することで、ポーションに真の霊的な効果を与える必要があるらしい」

ハイラス「だったら、クリスタルレイクの側に祭壇を設けるといいのではないか? あそこの水なら霊的作用も期待できるし、森と湖の加護がある土地である上、クリスタルという言葉は晶華殿にも通じよう。材料にクリスタルレイクの水を加えると、より良い結果も得られるかも知れぬ」

リトルNOVA「なるほどね。試してみる価値はありそうだ。ちなみに、クラシックD&Dでは、2種類のポーションを混ぜても、その効果は打ち消しあうだけなんだけど、アドバンストでは、ランダム結果表があって調合ミスが起こったりすることもある。爆発したり、毒ガスを発生させたり、失敗するケースもあれば、稀に大成功で奇跡的な効果が発動することもあって、いかにも実験って感じで面白いね」

ハイラス「奇跡的な効果とはどのような?」

リトルNOVA「本来は一時的な効果の永久化、というのが例に挙がっているね。まあ、縮小作用の永久化とかだと大変なんだけどね。ともあれ、AD&Dの詳細なルールと組み合わせることによって、クラシックD&Dの曖昧なルールもある程度明確化されるわけで、今さらながら対比研究するのも楽しいと思っている。それじゃ次に行ってみよう」


★3版のマジックアイテム観

3版になって、マジックアイテムは随分と身近なものになりました。
それはマジックアイテムに市価のデータが設定され、しかも手頃な価格で買えること。
さらに低レベルから、マジックアイテムを作成するための特技が習得できることです。

まず、値段ですが、ヒーリングポーションが金貨50枚で入手できます。クラシックD&Dでは金貨1000枚、AD&Dでも金貨200枚以上は必要とされた回復薬が、初期作成のキャラでも買おうと思えば買える額に。
もっと安いのが魔法の巻物スクロールで、1レベル呪文がたったの金貨25枚。スリープの巻物が金貨25枚で手に入ると知れば、クラシックD&Dの魔法使いなら保険として欲しくなるでしょう。
ファイヤーボールの巻物でも金貨375枚。同じものをクラシックD&Dで作ろうと思えば金貨1500枚、しかも巻物の市販価格は最低でも金貨5000枚だったりします。

これって、別に3版の世界がデフレで困っているというわけでないのは、そうですな、ダガー1本の値段で比べてみれば分かるでしょうか。
クラシックでは金貨3枚で、アドバンストでは金貨2枚、3版でも金貨2枚といったところ。
一般的な長剣でもクラシックが金貨10枚、アドバンストでは金貨15枚、3版でも金貨15枚。
つまり、通常の武器では、せいぜい1.5倍程度の差しかないのに、マジックアイテムの値段が極端に高いのがクラシックD&Dで、お買い得価格なのが3版というわけです。ちなみに4版でも5版でも、ヒーリングポーションの値段は金貨50枚が適正価格になっておりまして、21世紀のD&D世界はマジックアイテムの値段が大変お求めやすくなっているのは変わらない風潮ですな。
というか、初めて3版のプレイを見たときは、マジックミサイルの呪文を連発している魔法使いを見て驚いたものです。金貨1000枚あれば、マジックミサイル40発分の巻物も買えるんですね、3版は。

次にマジックアイテムの作成ですが、クラシックD&DやAD&Dでは9レベル以上が必要です。AD&Dの僧侶は7レベルでポーションを作成できるみたいですが、正直、マジックアイテムの作成なんて、そこそこ熟練したプレイヤーだけが踏み込める道だったんですね。
大体、ルールがきちんと整備されていないものだから、DM側も考えるのが面倒くさいし、プレイヤー側もDMと要相談なわけで、双方が乗り気でないと使えないルールということになります。
だけど、3版は低レベルからアイテム作成が行えます。ウィザードは作成時から〈巻物作成〉の特技を持っていて、ちょっとした金と経験値さえあれば、簡単に自分の使える呪文を巻物に写せます。そう、マジックアイテムの作成には経験値を消費するので、生まれたばかりのキャラには不可能なんですが、それほど代価は高くありません。
1レベル呪文を書き写すのに必要なのは、経験値1点と金貨12枚、銀貨5枚だけ。なお、1レベルから2レベルに上がるには1000点の経験値を貯めないといけないので、それだけ貯めた経験をわずかながら消費しても、1日の魔法の使用回数が増えると思えば、安いものです。もしも、クラシックD&Dをプレイしていて、経験値10点と金貨125枚で1レベル呪文の使用回数が10回増えるよ、と言われたら喜んで、それぐらい払いますよ。

ポーションの作成は3レベル以上で〈ポーション作成〉特技を習得しなければなりません。どの特技を習得するかでキャラの方向性が大きく変わったりしますので、アイテムマスターの道を目指さない限りは、他の戦闘に役立つ特技を選ぶ道のが普通かも。とりわけ、アイテム作成が難しいと感じる向きには。しかし、あえて〈ポーション作成〉特技を選ぶからには、積極的に活用しないと損した気分になります。
巻き物はそれが読めるキャラにしか使えませんが、ポーションなら誰でも飲めます。だから値段も倍になっていますが、それでもヒーリングポーションが経験値2点と金貨25枚で作れるのはすごい。
なお、この特技習得ルールは、ソード・ワールドの2.0版がD&D3版を参考にしたと思しき要素ですが、D&D3版の兼職ルールも無印ソード・ワールドと似た要素が濃厚なので、お互い様だと自分は考えてますな。

とにかく、D&Dは3版になって随分とゲーム的に合理性を勝ち得たシステムとなって再発展したわけですが、そのファンがゲーム性の大きく異なる4版を見限って、パスファインダー派となり、見限られた4版が往年のD&Dの良さを取り戻そうと5版に切り替わったのが現在の状況です。ただ、日本ではその争いが鎮静化しているような感じ。
それでも、3版およびマイナーチェンジの3.5版は手持ちのルールが一番多い上、パスファインダーのこれからの展開を考えるなら、単に懐古だけでなく、これからタイムリーになることも有り得るなあ、と思いつつ。


ハイラス「なるほど。3版はマジックアイテムが一番使いやすいシステムでござったか」

リトルNOVA「うん、自分としては低レベルの魔法使いが一番恩恵を受けたシステムだと思うよ。スリープ一発撃って仕事が終わった、というクラシックD&Dでありがちな状況から解放されたわけだからね。海外RPGの流れを、D&D3版から始まるd20システム一色に塗り替えたという状況がここ数年ほど前まではあって、SNE社長なんかは多様性がなくなってつまらなくなったというスタンスだけど、客観的にRPG史を語る上では傑作システムであることに変わりない。ゲーマー好みする緻密さと自由度、発展性を兼ね備えたゲームだと、自分は思うよ。まあ、10年前にはそこまで分かっていなかったんだけどね。今年になって、総括的にD&Dの各システムを振り返って分かったことだし」

ハイラス「では、3版のルールでポーションを作成したら、さぞ良いものができるのではないか?」

リトルNOVA「う~ん、そうでもないんだな。確かに3版のルールはゲーム的に精密で合理性に飛んだものなんだけど、かつてのD&Dにあった変な物とか、何じゃこりゃ的な物が見当たらないんだよね。少なくともポーションリストを見ている限りは。秩序立っている分、こんなポーションをどう使えばいいんじゃあ的な物がなくて、整っている。ポーションの能力も全部、呪文で再現できるものになっていて、不思議さとか、奇矯さを感じない。もしかすると、そういう変化球は基本ルールではなくて、追加サプリメントにあるのかもしれないけど、まだ十分チェックはできていない感じだね」

ハイラス「すると、どうするでござるか?」

リトルNOVA「とりあえず、第4版と第5版のアイテム話をして、面白いものがないかチェックした上で、他のゲームでも漁ってみるさ。これだ、という記述があれば、それを参考にブラッドポーションの作成に入るとしよう。それから晶華のところにハッピーバースデイをお祝いしに戻るつもりだよ」

ハイラス「では、それまでポーション話に専念するということか」

リトルNOVA「ああ、そうしたいね」

(今話完。次は4版と5版の話につづく)