ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

マジックアイテムのお話

★マジックアイテムの歴史

 

 カテゴリーを新たに「TRPG(D&D)」にすることで、改めてマジックアイテムの話をば。

 

 クラシックD&Dは現在のTRPGの標準と比べても「Do It Yourself(自分で作れ)」の傾向が強く、その分、DMの創作能力や想像力を刺激させられたと記憶しますが、いろいろと不親切だったなあ、とも思います。ルール運用が結構ファジーで、ハウスルールも多かったわけですが、だからこそ雑誌でのサポート記事も重要だったのだろうなあ、と。

 今回、「マジックアイテムのお値段」という観点で、自分の手持ちの歴代D&Dのルールを振り返ってみたわけですが、この点で「第3版」が大きく改革したなあ、と思います。3版以前のクラシックやアドバンストでは、その辺のルールが大雑把な指針程度で、しかも「マジックアイテムは基本的に売買不可」という方針。もちろん、DMの裁量次第で「マジックアイテムを扱っている特別な魔法専門店」を設定することはありでしょうし、その場合、「世間一般で流通しているわけではないけれど、秘密のバザーで掘り出し物の珍品扱いで、高額で取り引きされている」という扱い。

 

 それが3版になると、マジックアイテムに公式ルールとして市価が設定され、冒険のための準備品としてヒーリングポーションとか、マジックミサイルの杖とか普通に購入できるようになっている。

 これは、もちろん販売企業がTSRからWotC社に変わって、ゲームシステムがより洗練されたという事情もあるのですが、D&Dがコンピューターゲーム化された影響も大きいのだと思います。80年代のクラシックD&Dやアドバンスト第2版の販売時期は、コンピューターRPGも急激に発展していった時期になりますが、コンピューター化するに当たって、いろいろと曖昧な要素をきちんとデータ化する必要も出てくる。マジックアイテムを店で売ったり買ったりする時の値段データなんかも、アナログゲームのようにDMの裁量で曖昧にすることはできず、きちんと公式データとして設定されるようになったわけで、その影響もあって、3版以降の21世紀D&Dはシステム的な緻密さ、洗練度が高まったのだろう、と考えます。

 なお、ここでいうコンピューターRPGとは、1988年に出た『プール・オブ・レイディアンス』を皮切りに、SSI社から出たAD&Dシリーズを意図しており、また、10年後の1998年に出た『バルダーズ・ゲート』シリーズなどもあって、90年代から新世紀のゼロ年代が、D&DのコンピューターRPG版がいろいろ出ていたなあ、と記憶。自分もその時期は結構、楽しませてもらったり。

 

 TRPGのシステム進化の話をすると、旧世紀末辺りはトレーディングカードゲームなどの台頭でTRPG業界が下火になった影響もあり、新世紀に入るとTCGの要素を組み込んだ「緻密なシステムによる拡張性、合理性」がアナログゲームにも求められるようになった、と記憶。その流れで改定されたD&Dが第3版であり、そこからミニチュア戦闘システムとして先鋭化していったのが第4版、逆にストーリーゲームとしての曖昧さ、大らかさに揺り戻したのが現行の第5版だと自分は認識しています。

 マジックアイテム的には、「マジックアイテムもキャラを強化する要素として割と自由に売り買いしたり、作成できるシステム」なのが第3版で、それ以降は「魔法技術が世界観的に崩壊したために、再び魔法の品物がレアとなった第4版」と、「魔法復興期に当たる第5版」という感じかな。一応、3版以降は市場価格は設定されているものの、4版や5版でのマジックアイテム購入は制限されているようですね。

 

 マジックアイテムの売買に関する第5版の方針を見ても、「古代遺跡から魔法の品物を発掘するような冒険者稼業が多数存在するような世界なら、魔法大学院のあるような大都市で流通しているかもしれないが、気軽に店で買えるようなものではなく、美術品オークションのような秘密集会に招かれるようなコネが必要」とか、やはりいろいろと限定的にはなっているようです。

 まあ、そうでなければ、魔法に対する神秘性が薄れるのかもしれないのでしょうな。

 その点は、ソード・ワールドのような日本のTRPGの方が、魔法を日常的な技術の一つとして、手軽に扱っているように思えます。

 

★クラシックD&Dのマジックアイテム観(ポーション編)

D&Dにおいて、マジックアイテムは基本的に「冒険の報酬」として与えられるものです。街のお店で普通に買えるようなものではない。
ただ、冒険の必需品となるような「治癒薬」や「毒消し」のような消耗品さえ、マジックアイテムとして容易に手に入る仕様ではないため、その点で苦労するわけですね。まあ、毒消しぐらいなら道具屋や教会で売っているようにDMが設定してもいいのですが、その場合、「薬の値段はいくらが妥当なのか」という指針も当初はなかった。
もちろん、現在なら他のTRPGコンピューターゲームのデータを参考に逆輸入することも容易ですが、70年代から80年代初期においては「D&Dこそが最初のRPGであるため、参考にできる資料が少ない。公式に資料がなければ、DMがプレイヤーの状況に応じて、適切と考えられる代価を考える」のが普通だったわけですな。

なお、ベーシックルールではおなじみの回復薬ヒーリングポーションを含め、8種類の薬が用意されています。ランダムで設定できるように表が用意され、D20のうち13~16で回復薬が出るので出現頻度20%ですな。
これと同じ確率で出現する(1~4)のが、体が15センチまで縮む「縮小薬」。鑑定せずに、この薬を飲むと1時間~2時間、縮んでしまい、ドタバタコメディ展開になったりしますな。この逆作用である「巨大化薬」も15%(10~12)で出現し、これを飲むと体の大きさが2倍になり、与えるダメージも2倍になる。何というアントマン。ええと、身につけた装備品のサイズも変わるのが不思議といえば不思議ですが、それだからこそ魔法なんでしょうな。
他の薬も、出現頻度順に並べると、「体が気化してガス人間になる薬」が15%、「相手の思考を読むESP能力」や「空中浮揚のレビテート能力」を与えてくれるのが10%、そして「透明化薬」が5%だけど、最後の5%が「毒」だったりします。つまり、謎の薬を試しに飲んでみたら毒だった、ということもあるわけですな。しかも、「対毒ST判定に失敗すれば、即死亡」というのがベーシックルールの標準仕様だったりします!

ストーリーゲームという要素が日本では重要視されていましたが、初期のD&Dではもっとコメディーチックで、ダンジョンで起こった波乱万丈のランダムイベントをドタバタ騒ぎで楽しむ要素が強いわけですな。
ストーリーゲームなら、キャラが唐突に死んでしまうと愕然とするわけですが、「ゲッ、毒の罠を食らった。ST判定失敗。死にました。キャラを作り直して、再挑戦します」って、そんなノリですね。大体、ベーシックだと毒も消せないし、死亡からの復活ルールもないうえ、まともにルール運用すれば、キャラがすぐ死ぬ。剣が1、2回当たれば、死んじゃうぐらい貧弱ですからね、1レベルって。
まあ、80年代頭のゲームって、アクションが主流で、敵の攻撃が当たれば即死亡、その代わり残機が3機あって、死んだらやり直しっていうのが標準でしたから。ルールも複雑じゃないので、キャラも慣れたら10分で作り直せますし。スキルとか装備品とかあれこれ設定を考えて、初心者がキャラ作りに1時間かかるようなゲームではなかった。

さすがに「毒をくらえば即死亡」だと、ダンジョン探索が運試しのギャンブルでしかない、キャラはゲームのコマではなくて、もっと人間的に扱って欲しいと考える向きには、「選択ルールとして、毒の効果は即死ではなく、数ポイントのダメージ制にしてもいい」というのがあって、これがD&D初心者が初めて使った選択ルールじゃないかな、と思ったり。
ウィザードリィ以降は「毒は継続ダメージ」というのが割と定番で、宝箱の罠も「毒針」が初期の定番になっていきますね。もちろん、即死しなくても、毎ラウンド1点ダメージ、あるいはダンジョン内で1マス歩いて1ダメージというのでは、低レベルキャラだと大して変わらないので、「毒をくらえば即リセット」というのがコンピューターRPGの対処法となりました。
この毒の扱い一つとっても、初期のRPGのデッドリーさの象徴と言えますな。21世紀になって、毒で死亡なんてことが話題に上がるのは、リアルか「世界樹の迷宮」かって感じで、毒が強すぎるゲームはデッドリーという評判が立つわけで。まあ、プレイヤー側が毒を扱う、というのもあまり推奨されないわけで。
必殺仕事人でも、「毒を使った殺し技」を経師屋の涼次が使うとクレームが来て、レギュラー放送だと技が普通の刺し技レントゲンに変更されたぐらいですし。
とまあ、毒というテーマだけでも、いろいろ語れそうですな。毒舌とか、毒の華とか言い出すと、違う方向に話がそれそうなので、軌道修正。

とにかく、薬だけでも相当なネタにできるのが、マジックアイテム話の奥深いところ。どうして薬の話から始めたかといえば、武具やその他の物品よりもネタにしやすく、値段の相場を語りやすいからですね。
ヒーリングポーション1本を製作するのに、クラシックD&Dでは金貨500枚が必要となります。ええと、魔法の効果を持ったアイテムを作るのに、1レベルにつき金貨500枚という指針があるからですが、これに基づくなら、毒消しは僧侶の4レベル呪文の効果なので金貨2000枚。高すぎるよ。
逆に、「死からの復活薬」は5レベル呪文なので金貨2500枚になります。これは、まあ妥当な値段かと思いますな。クラシックD&Dの世界では、毒というのが死と大差ない、恐ろしい扱いだったわけで。
ウィザードリィだと、解毒呪文ラツモフィスを覚える前は、市販されている毒消しを保険のために持っておくのが中盤辺りの定番戦術ですが、店で毒消しを普通に買えるのはありがたいですね。手持ちの資料だと、毒消しの値段が300gpなので、その辺が妥当という感覚。ちなみに、最初の回復薬ディオスポーション(傷薬)は100gpですが、ほとんど使ったことがないですね。
ドラクエだと、やはり毒消し草は初期の必需品になりますが、毒消し呪文キアリーを覚えるのが割と早いので、すぐにアイテムなくても問題なくなりますな。

初期RPGで、死よりも治療困難なのが「石化」で、魔法使い6レベル呪文じゃないと解除できない(僧侶の6レベル呪文キュアオールでも石化は解除できない)ため、石化解除薬もクラシックD&Dなら金貨3000枚という計算になります。
薬について語ると、各種状態異常についても考える形になってますね。ともあれ、クラシックD&Dの僧侶が石化解除できないことは、今の今まで気づかなかったりも(ウィザードリィの完全回復呪文マディでは、石化の回復も可能なので混同していた)。石化は物品変成魔法なので、治癒呪文で対処できない類と認識。まあ、コンピューターゲーム以外で石化したような経験はないですから、回復方法も誤解していたわけで。

さて、エキスパートルールでは、ポーションの種類も増えて26種類。ランダム表でも20面ダイスだと足りないので、%ダイスを振るようになってます。ヒーリングポーションの出現率は10%に減って、しかも他に回復薬はなく、毒消しすらない。もう、回復は自前の僧侶呪文か、DMのオリジナル薬でも作って何とかしろ、という方針でしょうな。
とにかく、様々な効果を持つ薬が増えていて、「特定生物(動物やドラゴン、巨人、人間、植物、アンデッド)を支配コントロールする薬」とか「10年若返る薬」とか「変身」「加速」「飛行」「耐火」などいろいろ便利なものもあるのですが、一番笑えるのが「妄想薬」。これを飲むと「何か他のポーションを飲んだように思い込む」そうで、「変身したつもり」「飛べるつもり」「支配者になったつもり」になったキャラがどういう振る舞いを見せるかを楽しむものでしょうな。
DMとしては、「妄想薬」を「耐火の薬だよ」と偽ってプレイヤーに伝えておき、いざそれを使った段階で「実は、その薬は何の効果も示さなかった。しかし、君にはそれが分からずにいる」とでも種明かしするのがいいのかな、と。

そして、コンパニオンルールです。
とうとう、マジックアイテムを購入するルールが示唆されるわけですが、各種ポーションの値段は「金貨1000枚から1万枚」という適正価格が示されています。高いよ。
ヒーリングポーションの値段が金貨1000枚って誰が買うんだよ。そりゃあ作るのに500gp掛かるんだから、買うのも倍額という理屈なんだろうけど、他の特殊効果付きのポーションならいざ知らず、高々一桁のHPを回復するだけの薬が金貨1000枚もするのでは、割りに合わないでしょう。それが一番必要な低レベル冒険者には高すぎて買えず、買える頃にはもはや、そんな回復量じゃ役に立たない。
結局、ヒーリングポーションは買うよりも冒険中に入手する方が簡単で、それ以外には街で売るといいのでしょうな。半額で売れば500XPの経験値が稼げるはず。

そう、この獲得資金が経験値になるというルールのために、クラシックD&Dではマジックアイテムを売買するルールを付けにくかったのですな。マジックアイテムは高価なので、それを簡単に換金できるようなルールにすると、経験値方面でゲームバランスが崩れる。
そんなわけで、中古品の売却価格は10%から30%が適正だとされていたり、能力値のカリスマによって修正してもいいとか。この辺の売り手の能力によって、売買価格が変動するというのは、コンピューターゲームのバルダーズゲートシリーズで実装されていて、そちらはカリスマだけでなくパーティーの冒険実績による名声値で店の商品の値段も変動してました。良いことをすれば店の人も好印象になってサービスしてくれて、悪行三昧で評判が悪ければ買い物も高くなるシステムですな。まあ、悪役ならNPCを殺して略奪することもできるゲームなので、バランス取りの必要もあるのでしょうが、面白いシステムだと思います。

ともあれ、ようやくマジックアイテムの売買が可能になったコンパニオンですが、結局、DMの裁量を重視し過ぎていて曖昧なことは否めません。
まあ、凝り性なDMは、自分の世界の街ごとの購入可能物品リストを作ったり、マジックアイテムの値段表を作ったりしていたわけですが(自分も経験あり)。そして、新しい公式ルールを見ながら、適宜修正していくのも日常茶飯事。
遠い目で懐古したくなるのを抑えて、コンパニオン用のポーション表を見ます。今度の表には既存のポーションを合わせて、46種類。単純な毒消しはないですが、耐毒効果を持つアンチドウテポーションがあったり、回復量が3倍のスーパーヒーリングポーションが用意されていますな。
他に面白い効果があるのは、「一度だけ好きなダイス目を宣言できるラッキーポーション」とか、「カメレオンのような保護色効果を持つブレンドポーション」とか、「眠っている相手から情報収集できるドリームスピーチポーション」とか、そんなところですかね。他は、元素界のエレメンタル体になったり、水中活動能力を得たり、エーテル化して多元宇宙の旅を可能にしたり、能力値増強のドーピングをしたり、ゲーム世界での活動範囲を広げる内容や、ボーナス特典を得られるような体質変化が多いかな。
この辺りになると、あまりにも奇天烈な効果ではなく、ゲーム内で普通に有用なアイテムか、異世界探索の必需品的なアイテムになっている感じです。「ある強力なアーティファクトを手に入れるには、炎の元素界に行く必要があって、そのためには炎のエレメントポーションを作らないといけない。それを作るための材料は、3つあって、君たちはその3つを順に手に入れないといけない」という名目で、ダンジョンを順に攻略する展開もありかな、とか。

ともあれ、アイテムリストをあれこれ見ながら冒険のネタを考えるのも、いろいろやったなあ、と懐かしがりつつ、今回の話はここまでにしておきます。
(今話完。次回はアドバンスト以降のマジックアイテムの扱いにつづく)