ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

D&D各ルールブック紹介4(その2)

久々のタイトルですな。

前に、このタイトルで書いたのは、7月22日

その時は「クラシックD&D話を秋には終わらせる予定」と書いていて、うん、まだ秋だ。

そろそろ半分、過ぎようとしているけど、まだ間に合う。

 

景気付けにマスタールールの表紙絵でも貼り付けておいて。

 

 

で、今回は武器の話をいろいろするぞ、と。

仮面ライダーゲイツに合わせてひらがな表記するなら、「うえぽんますたりー」って奴ですな。

 

元々、D&Dって武器の選択があまり面白くないゲームでした。だって、武器ごとの特性が単純化されて、ダメージの差異と装備可能クラス(飛び道具の場合は射程距離)ぐらいしか違いが見出せない。

戦士は長剣(ロングソード)でD8のダメージを出すのが仕事で、「ぼくの戦士は素早い戦闘スタイルだから、ショートソードの二刀流で戦うよ」という選択肢はなかった。「ショートソード? ああ、大きな武器を持てないハーフリングの武器ね」という扱いになる。敏捷性で戦う盗賊ですらロングソードを使えるわけだから、D6ダメージのショートソードを使っても何の得もしない。

戦闘スタイルで個性を追求する場合、不利を承知で両手もちのバトルアックスを使うか、だったらいっそのこと、両手持ちのツーハンデッドソードでD10ダメージを得るか、結局、ソードの方がお得、となるわけです。

 

なお、クラシックD&Dの標準的な武器ダメージはこんな感じ。

 

●D4:ダガー、スリング(投石ひも)、棍棒

●D6:ショートソード、メイス、ウォーハンマー、スピア(槍)、ハンドアックス、クウォータースタッフ、弓、クロスボウ

●D8:ロングソード、バトルアックス

●D10:ツーハンデッドソード、ランス(騎兵槍)

 

ほとんどの武器はD6だけど、D6を強要されるのって、クレリックとハーフリングくらい。それ以外だと、魔法使いがD4で(杖で殴り倒すならD6も可。杖の実装はエキスパートルール)、弓矢使いがD6だけど、武器ごとの特性や個性が比較的薄く、選択の余地があまりなかったわけですな。

 

一応、特殊効果を持った魔法の武器で差異を付けるという考えがあって、「炎の剣」とか「魅了の剣」とか「物品探知の剣」とかでキャラの個性を表すのはありで、冒険が進めば、どんな能力の魔法の剣を持っているかがキャラの個性付けにも有効。もっとも、大抵は「+1」とか数値ボーナスだけの味もそっけもない武器だけど、それでも初めてボーナス付きの剣を入手した時は嬉しかったものだ。基本的に店では買えない非売品だし。

 

……って、「剣しかないのですか? 」と言われたら、「うん、特殊能力を持った武器は、剣しかないよ」と答えるのがクラシックD&Dだったわけですな。エキスパートルールまでは。

この「剣偏重なルールを進化させないと」と考えたのがコンパニオンルールで、ネットとかブラックジャックとか、特殊効果を持った変な武器をプレイヤーズガイドで提供する一方で、DM用のマジックアイテムルールでは「あらゆる武器に魔法の特殊効果を付与できるルール」を実装。これによって「投げても手元に帰ってくるハンマー」とか、「魅了の矢」とか、「一撃必殺の短刀(20面ダイスで19、20が出れば相手は即死する)」など、様々な特殊武器を作れるようになった。

 

まあ、こういうマジックアイテムの話は、「アーティファクト」の話と絡めて、また後日に回すとして。

 

とにかく、今回は、この武器ルールの延長線上にある「武器習熟」の話です。

 

★職業クラスと技能スキルの話

さて、70年代から80年代にかけてのRPGでは、「クラス制かスキル制か」の二者択一でシステム論が展開されておりました。

クラス制は、キャラの役割を職業クラスによって規定し、兼職や転職によるバリエーションはあるにせよ、クラスによって可能な行動が制限されるシステム。
まあ、職業を決めれば、キャラの概要が決まるので、初心者万歳なシステムですな。おまけに職業を語るだけで、そのゲームを語れるわけで、記事書きする方もありがたいシステムです。

一方でスキル制は、キャラの役割を細分化された技能スキルで表し、一応の職業表記はあっても、それだけでキャラの能力を特定できはしないシステム。
例えば、ルーンクエストのプレイヤーキャラクターは「農民出身の神官戦士」という職業は設定されていませんが、ルール通りにキャラを作ると大抵そうなってしまうという。何せ、出自が農民になる可能性が最も高く、戦うためには武器スキルを上げなければいけないし、よくあるキャンペーンでは部族の神から神性呪文を授かるのが普通ですから。もちろん、同じ「農民出身の神官戦士」であっても、習得スキルや呪文によって違う方向のキャラになるので、ヴァリエーション豊かなチームを作るのは難しくありません(簡略化したルーンクエスト’90sでは、選んだ神=職業イメージ的なアーキタイプとして提示されていますが)。
クラス制に比べると、スキル制のゲームはキャラの細かい能力の再現度は高いものの、どのスキルを選ぶかの指針が分かりにくく、ある程度ルールに熟知しないと、うまくキャラ作りができなかったりして、より難易度の高いシステムと言われておりました。

初心者向きのクラス制と、経験者向きのスキル制という分け方ですが、これが90年代に入るとゲームも進化し、一般ゲーマーの知識も深まりますので、ファイナルファンタジー5のジョブ(クラスに相当)とアビリティ(スキルに相当)のようにクラスとスキルの融合したゲームが当たり前に受け入れられるようになってきます。
ゲームの攻略本などでユーザーが積極的に、かつ容易に学習できる環境が整ってくると、それはTRPGにも反映されて、「クラスを選ぶ→そのクラスで習得できるスキルを選ぶことで個性を深める」という二層構造が当たり前になり、現在のTRPGでは「クラスのみ、あるいはスキルのみという方がレア」となってます。

ただし、クラシックD&Dは、それ以前のゲームなので、ガチガチのクラス制。そこに85年のマスタールールになって、ようやく「武器のみのスキルシステム=ウエポンマスタリー」を採用。
その後、ワールドサプリメントガゼッタで「その他の一般技能スキル」のルールを取り入れ、それが89年のAD&D2版にも発展継承された経緯がありまして、しかも、それはまだまだ選択ルールでしかなかった、と。
つまり、80年代のD&Dにおいては「スキルシステムみたいなややこしい物は使いたい人だけ好きに使っていいけど、初心者は使わない方が無難」って扱いなんですね。

D&Dがスキルシステムを標準搭載するのは、21世紀に入った第3版からであって、そうなるとさらに進化して、一般技能のスキルだけでなく、「戦闘用の特別なオプション特技フィート」まで採用されて、「ファイターはパラディンやレンジャーに比べて特殊な能力は持たないけど、フィートの習得数が多いので、カスタマイズの選択肢が多くて個性付けが楽しめるクラス」となります。
それ以前は、D&Dのファイターは考えることが少ない初心者向きのクラスという扱いだったのが、3版のファイターは相当奥深いクラスになったわけで。

……とまあ、ゲームシステムの発展史みたいなことを書きましたが、「ウエポンマスタリー」がD&Dのシステムに大きな改革をもたらすきっかけになったのではないか、と思うわけです。
もちろん、今の目から見ると、あまりこなれたシステムではないのですけどね。日本では先にガゼッタが翻訳され、しかも洗練されたソード・ワールドと同じ年に出たために、あまり革新的なルールと思われなかった感じもありますが、もう一度、振り返ってみたかった、と。


★エキスパートとコンパニオンの戦闘オプション

ウェポンマスタリーの話をするに当たって、一応、それ以前の復習もしたくなるわけですが、まあ、それについては、こちらの記事を参照してくだされ。
ロードスや、キン肉マンの話にだいぶ寄り道した記事ですが、呆れないで読んでいくと「素手戦闘」や「戦士のコンバットオプション」について書いています。それらのルールは、ダンジョンに入ってモンスター退治が旨だったD&Dを、対人間のドラマチックな戦闘を再現できるゲームにしたわけですが、素手戦闘は使える局面が限られているし、コンバットオプションは高レベルキャラじゃないと使えないため、自分では使ったことがないという。
マルチアタック(複数攻撃)は相手のAC次第で使えなかったりするし、面白いのはスマッシュ(強打)とディザーム(武器落とし)かな。これらをうまく活用すれば、単純なファイターの殴り合いにも変化があっていいですな。

しかし自分は、ウェポンマスタリーの面白さは、武器による特殊技をファイター以外にも、また比較的低レベルのキャラクター(早くて3レベルから)にも解禁したことにあると思っているわけです。
もちろん、ファイターも目的に合わせて武器を使い分けるという楽しさが得られますし、単純なD&Dの武器システムを段階順に進化させ得るシステムとして、結構好きだったりします。


★ウエポンマスタリーと武器ごとの特性

では、ウェポンマスタリーの詳細について見ていきましょう。

このルールの採用によって、キャラはまず自分の得意武器を2つ選ばなければいけません。ファイターのみ4つ選ぶことができますが、大体、メイン武器と飛び道具を選べばいいんじゃないかな。
D&Dって、あまり武器の持ち替えをする機会は少ないゲームだし。普段は剣を使っている戦士が「今日は斧を使いたい気分」ってケースはあまりないとも思うし。せいぜい「馬に乗っている時は槍に持ち替えだ」とか、魔法の武器が充実していれば「相手が火に弱いトロールだから、いつものロングソード+2じゃなくて、炎のショートソードを使うぜ」とか、そういう局面になりますか。
得意じゃない武器は、ノンスキル状態でダメージ半減、射撃の命中マイナス1となるわけですが、扱い慣れた武器はその後の鍛錬によって、基本のベーシックからスキルド、エキスパート、マスター、グランドマスターまで昇格できます。それに応じて、武器の与えるダメージが増えたり、特殊技を使えたりするわけで。
武器熟練の昇格は、3、6、9、11、15、23、30、36の各レベルにおいて可能。ファイターのみ19、27、33レベルでも昇格できます。昇格のためには師匠を見つけて、それぞれのランクに応じた訓練費用を支払わなければなりません。自分に究極奥義を教えてくれるグランドマスターを見つけることも冒険の目的として活用できそうですな。

そして、ここからいくつかの武器を例に、どんな性能に昇格するか示していきます。

●長剣(ロングソード、あるいはノーマルソード):基本ダメージD8
スキルドになると、ダメージがD12になって、両手剣の基本ダメージを超えます。ちょっと訓練しただけでこれだよ。さらにラウンド毎に1回、武器を使った攻撃に対してACが2良くなるボーナス付き。優れた剣士は防御にも武器を活用できるわけで。さらにデフレクト(受け流し)によって相手の攻撃をラウンド1回、ST判定で無効化したり、ディザーム(武器落とし)までできるようになる。
エキスパートになると、ダメージが2D8に上昇。ACボーナスやデフレクトの回数もそれぞれ2回になって、攻防ともに性能アップ。
マスターになるとダメージ2D8+4。グランドマスターだと2D6+8。ACボーナスも最大4に増えて、回数も3回。デフレクトも同じく3回。

期待値計算すると、ベーシック4.5→スキルド6.5→エキスパート9→マスター13→グランドマスター15といった感じで、同じ剣を使っているとは思えないほどのダメージ上昇となります。
しかも、これはファイターだけの恩恵じゃなくて、同じ剣を使えるシーフだってグランドマスターになれば同様に与えられるわけですな。グランドマスター剣士のシーフがバックスタブに成功すれば、期待値30、最大40のダメージが与えられるようになって、D&Dではあまり上昇しない武器戦闘ダメージが一気にダイナミックになること受け合い。

ともあれ、長剣はウェポンマスタリーによって、ますます攻防兼ね備えた強い武器になるわけですな。

●戦斧(バトルアックス):基本ダメージD8
基本ダメージが同じことから、剣のライバルとして扱われながらも、両手もちで盾が使えないため、不遇な斧くんです。剣は武器を持った相手に対して有利な一方、斧は武器を持たない獣的な相手に対して有効という差が付きました。つまり、対モンスター戦では斧の方が強いというメリットが生まれたわけですな。
スキルドのダメージは、D8+2。同じ期待値ながら、剣と微妙にダイスの振り方を変えてきます。剣の方が振れ幅が広く、斧の方が安定したダメージを与える感じ。また、武器以外の攻撃に対してラウンド毎に2回、ACに2ボーナス。盾を持てないデメリットを覆すほどではありませんが、少しは斧派にも救いが。

問題は特殊効果。ディレイ(遅延化)って地味だねえ。相手の先制権を奪うだけ。相手を怯ませるってことだろうけど。なお、このディレイ効果を与える武器って、他には弓とか、コンパニオン出自のネットとか、ブラックジャックとか、ボーラとか。

斧の本領発揮はマスター以降。ここで特殊効果スタンが発動できるようになります。スタンは自分と同サイズの敵に対して、一時的な朦朧効果をもたらし、対デスレイSTに失敗すると攻撃も呪文詠唱もできなくなり、ACにもST判定にも2のペナルティーを与えるため、一気に戦況が有利になります。
なお、スタンを与える武器は、両手剣スキルド以上、クロスボウのスキルド以上、スピアのエキスパート以上、そしてスリングのベーシック以上。つまり、石というものは相手を朦朧とさせるのに非常に有効だということが判明したわけですな。必殺仕事人の西順之助の投石器が非常に正しい支援武器であることは、D&Dのウエポンマスタリーのルールが証明したわけですよ。ダメージ的な殺傷能力は低くても、朦朧とした相手は抵抗もできなくなるわけで。一応、D&Dのスタン効果は、意識不明の昏倒状態ではなくて、3分の1の移動力で動けるみたいだけど。

というか、スタン効果狙いなら、斧よりさらに有効な武器があるわけで、やはり斧の扱いが悪いのは変わらないような気がしますな。まあ、メイスやウォーハンマーみたいに特殊効果のない武器よりは遥かにマシだと思うのですが。

●デフレクトできる武器

ウェポンマスタリーの特殊効果のうち、相手の攻撃を受け流せるデフレクトが結構優秀な効果だと思うのですが、それができる武器は防戦に向いた武器と言えるわけですな。
それを挙げてみると、ハルバード、パイク、ポールアックス、剣一般、棍棒、クウォータースタッフとなります。メイスに比べるとスタッフは両手持ちなのが不利ですが、それでもACボーナスが付きますし、デフレクトができるとなれば、メイスよりも優秀かもしれません。

●ダブルダメージ

ダイス目で20あるいは、それに近い目を出せば2倍ダメージという相当に美味しい特殊効果なんですが、該当武器がダガーというのが問題なんですな。元のダメージが低いため、2倍しても高が知れているという。
長年ずっと、そう思って来ましたが、グランドマスターレベルになると、ダメージが4D4、期待値が10になったりします。しかも、そのレベルだとダブルダメージが出るのはダイス目17以上で20パーセントに達する。20パーセントの確率で期待値20のダメージを与えるのは凄いかも。バックスタブでうまくハマれば4倍ダメージになって、最大64ダメージにも達するぞ。おお、D&Dの武器で与えるダメージとしては最大級じゃね?
グランドマスター短剣使いのシーフによるドラゴン一撃必殺というものが見られたら、正に奇跡かも。


……とまあ、ウエポンマスタリーのルールによって、D&Dの武器に新たな特性が与えられ、武器戦闘にも新たな刺激が与えられたわけですね。
いや、昔、このルールを使った時は、「やっぱり剣が有利なのは変わらないんだなあ」と思っていましたが、グランドマスターレベルになると、短剣でも侮れないというか、いろいろな武器の面白い特性が分かった気分。

ただし、このルールを採用すると、ゲームバランスがおかしくなるので、市販のモンスター退治シナリオで使うと、緊張感が一気になくなるので注意、と経験者として語りたし。
まあ、今さら、クラシックD&Dをウエポンマスタリー込みでプレイする人が、どれだけいるかは分かりませんが。

ともあれ、次はマジックアイテムの話から、アーティファクトの話につなげるかな。イモータルについては語ったので、後はあまり面白そうなルールってなさそうなんですよね、マスタールールって。
追加職業案のミスティックについては、AD&Dのモンクについて語るついでに触れることにして。他にモンスターリストで何か話題にできるものがあれば、触れるかも。

(今話完)