ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

ミスタラ懐古録2

★ミスタラを追っかけて

 

NOVA「フォーゴトン・レルムを探索しようとしたら、なぜかミスタラ世界に迷い込んでしまった俺である」

 

ハイラス「NOVA殿が寄り道好きなのは、今に始まったことではないでござるからな」

 

NOVA「で、現在は公式で展開されていないミスタラを、今でも追っかけ続けてる熱い海外ゲーマーのサイトがあると聞いて、探した結果がここなんだが。英文サイトで、ミスタラの地理や歴史、様々な追加ルールなんかを収録している。これを翻訳紹介しているだけで、俺の人生を棒に振ってしまうだけの分量があって、さすがにそこまでミスタラの追っかけはできないわけだが(翻訳のお仕事で収入が得られるなら喜んでやるけどね)、とりあえず、懐古話のついでの補足資料としては十分だなあ、と思っている」

 

ハイラス「英文でござるか。さすがは言霊魔術師を自認するだけはござるな」

 

NOVA「まあ、90年代は某海外産RPGの翻訳の手伝いをして、実際に出版された経験もあるからな。雑誌でサポート記事も書いたことがあるが、その途端にTRPG冬の時代で雑誌が廃刊。そうして仕事がなくなるという憂き目に遭ったのも今では懐かしい思い出だ。こういう記事を書いているのも、当時やりたくて十分にできなかったことを仕事の合間の戯れにやっているわけで、平成時代の変わり目だからこそ、やる気になれたってことだな。おまけに、このタイミングで、D&Dも、ロードスも、ドラゴンランスも、自分が80年代から追っかけてきたものが次から次へと復活の流れができて、ワクワク興奮してもいるわけだし」

 

ハイラス「その意味では、ミスタラという世界も似たようなものかも知れんでござるな。80年代から90年代までD&Dの公式ワールドとして展開されたものの、TSR社の撤退により展開が終了。しかし、ミスタラを愛するセミプロめいたアマチュアファンの情熱で、ネットという舞台で生き続けているという」

 

NOVA「何だか、そう言われると、我が事のように感じるな。ただ、俺はミスタラという世界そのものを愛していたわけじゃないんだ。本命はD&Dというゲームシステムであり、そこから派生したロードスや、大元のAD&Dに由来するドラゴンランスの世界を愛していたわけで。というか、ミスタラなんて後付けの名前を積極的に使っているのは、去年にここで記事を書いた時が初めてだ。もしも、ミスタラという世界を愛していたら、ワールドガイドの貴重なガゼッタの資料を処分したりなんてするものか。ある意味、クラシックD&Dのことを突き詰めて考えていたら、いつの間にかミスタラに行き着いていて、どうしようって感じている俺がいるわけだ」

 

ハイラス「そう言う割には、当記事では随分とこだわっているようでござるな。少なくとも、愛していなければ、わざわざ英文サイトまで追っかけて、紹介しようとは思わないでござろうに」

 

NOVA「だから、昔は愛していなかったんだけど、今ごろになって懐かしさからミスタラの魅力に気づいて、溺れ始めているんだよ。例えるなら、昔はそれほど可愛いと思っていなかった幼馴染に久々に再会してみたら、それまで気付かなかった魅力を感じて、改めてドキドキ恋心を燃やしている次第。フォーゴトン・レルムちゃんが本命だったのに、横にいた地味めの女の子ミスタラちゃんのことが気になって、え、何、この想い? と戸惑ったり。なお、フォーセリア三姉妹(ロードス、アレクラストクリスタニア)は家族みたいなもので、ラクシアちゃんは従妹に当たるかな」

 

ハイラス「何だか、TRPGの背景世界を擬人化して、ハーレム展開になっているでござるな」

 

NOVA「ああ、多彩なTRPG多元世界を愛する男だからな、俺は」

 

★アルファティア帝国とミスタラの動向(およびNOVA回顧録

NOVA「そもそも、海外サイトを調べるきっかけは、ノルウォルドのエリコール王の母親の名前を調べようと思ったからなんだ」

ハイラス「母親の名前。確か、アルファティア帝国の女帝で、1000人以上の36レベル魔術師を擁する国家の頂点に位置する方でござるな」

NOVA「ああ。クラシックD&Dでは最高レベルが36だから、日本でのコンピューターRPG感覚で言うなら、レベル99で経験値カンストしたキャラを多数擁する最強ギルドのトップと考えていいだろう。そんな超絶異次元母ちゃんの名前が、『大いなる試練』のシナリオではユリアドナと書かれたり、エリアドナと書かれたりしていたんだ。どっちやねん、と。ここでの記事ではユリアドナと書いてみたが、後からエリアドナという記述も見つけて、どちらかがミスだけど、判断基準は……エリコールの母親だからエリアドナが正解かな、と思いつつ、英語原典に当たろうと考えた次第。まあ、この女帝の名前の誤植がなければ、手持ちの資料以上の掘り下げはしなかったろうから、結果的にミスタラをより深く堪能するきっかけになったわけで」

ハイラス「前の記事ではユリアドナと書いたでござるか」

NOVA「間違いと気づいた時点でエリアドナに直した。これも、例えば綴りがJeriadonaとかEuriadnaだったら、ユリアドナと読むのも分かるんだが、Eriadnaだからな。あと、ユリアドナの可能性を考えたのは、ラクシアのルキスラ帝国の皇帝の名前がユリウスというのに馴染んでいたからだが、多元宇宙を飛び回っていると、固有名詞がいろいろごっちゃになりやすいから気を付けないとな」

ハイラス「それで、ミスタラ世界では、アルファティアとジアティスの2大帝国の激突がテーマでござったな」

NOVA「コンパニオンルール以降はな。エキスパートルールまでは、カラメイコス大公国とその周辺の諸国が物語の中心になっていて、世界の運命に関わる高レベルになると、新たにノルウォルドを舞台にして、二大帝国の衝突の未来を予見させる流れだ。カラメイコス周辺とノルウォルドを分けたのは、キャラクターレベルに合わせて、初級~中級レベル用の冒険の舞台と、上級レベル用の冒険の舞台を分ける配慮だな。大きな戦争はノルウォルドでやりますから、まだ、そのレベルに達していないキャラは、比較的平和に冒険を楽しめるカラメイコス周辺で楽しんで下さい、と」

ハイラス「つまり、アルファティアとジアティスの話はコンパニオンレベル以降の題材で、日本ではほぼ紹介されずに終わった、と」

NOVA「何せ、3版より前のD&D紹介って今の目から見ると、かなり歪だったからな。まず元祖RPGとして大々的に持ち上げられたのは良かったが、紹介され始めた時期の80年代半ばぐらいは『ルールブックの背景世界はただの一例です。これを参考に、皆さん自分のファンタジーワールドを自由に作って下さい』というスタンスだったから、みんな好きにやっていたんだ。
「その中の一つがロードス島で、もしもTSR社が頑なな態度を取らなかったら、『ロードスもD&Dの日本版背景世界の一つで、ロードスRPGソード・ワールドも生まれなかった可能性』はある。しかし、現実ではD&Dの方がロードスに対して不寛容な姿勢を取ったから、D&D→ロードス→ソード・ワールドという日本製RPGの道筋を80年代後半に作らざるを得なくなり、一方でD&Dの方は小説やコンピューターゲームでアドバンスト版のドラゴンランスフォーゴトン・レルムが宣揚され、ガゼッタワールドは本流ではなくて支流に退いていった。RPGといえば、ドラクエか、ウィザードリィか、ロードスか、ドラゴンランスかという時期があって、みんなクラシックD&Dよりも、アドバンストD&Dの紹介を楽しみにしていたのが87年以降だったと記憶」

ハイラス「この87年という年が一つの節目のようにも感じるでござる。ドラゴンランスが日本で翻訳スタートしたのも87年。本国ではフォーゴトン・レルムが始まったのも87年」

NOVA「他には、『ドラえもん のび太と竜の騎士』というのも87年だな。数年前には語られることの少なかった剣と魔法のファンタジーが、一気に華開いた年と言える。その中で、85年辺りでは元祖RPGとして持ち上げられていたクラシックD&Dが『古いシステムなのでダンジョン探検以外のストーリー支援要素が薄い』と批判されるようにもなり、そこから次のステップとしてアドバンストD&Dを期待する者と、日本人好みの物語を再現できる独自のRPGを期待する者が現れ、クラシックD&Dは原典だけど、そこからの脱却あるいは飛躍が求められていたんだ」

ハイラス「そして、需要に応じて、アドバンストD&Dも2版が翻訳され、またソード・ワールドを始めとする和製RPGも次々と登場していったのが89年から始まる平成の幕開けでござるな」

NOVA「ああ。そして、日本のクラシックD&Dは背景世界ガゼッタワールドを紹介し始めたところで、AD&Dに舵を切って、クラシックD&Dの展開を終了させた。本国ではミスタラという世界名を付けて、これから発展するかもしれないと思われた矢先に、いきなり展開が終わったのがミスタラちゃんの不幸の第1章なわけだ」

ハイラス「それまで名前も付けられずに、クラシックD&Dの背景世界として地味な下積み活動を続けていたのが、ガゼッタちゃんと名付けられて、さあ、アイドルデビューで頑張るぞ、と張り切ったら、日本でのサポート停止。ガゼッタちゃんは涙目モードでござるな」

NOVA「だけど、そこで一つの可能性が浮かび上がる。それまでAD&D小説の版権を持っていた富士見書房と、裏で密接な関係を持っていた角川書店さん、およびそこから分裂したメディアワークスさんが熾烈なRPG版権競争を行なっていて、それぞれソード・ワールド、ロードス、クリスタニアフォーセリア三姉妹誕生秘話になるんだけど、後進のメディアワークスさんがクリスタニアと並ぶ柱の一つとして、クラシックD&Dの版権もゲットしたわけだな。だから、改めてクラシックD&Dと、ガゼッタ改め正式名称ミスタラとなった下積み地味子ちゃんが復活することになる。時は1994年。俺にとっても記念すべき年になる」

ハイラス「どうしてでござるか?」

NOVA「89年に大学生になった俺は92年に就職活動を頑張ったのだけど、その年にバブルが崩壊した影響で、就職失敗。やむなく単位の操作と卒業論文を提出しないという策で、様子見のために卒業を1年遅らせることにした。だけど、様子見しても景気は回復せずに就職活動もままならず、結局、現役卒業からの就職が有利という浅はかな幻想に見切りを付けて、卒業してフットワークを軽くするようにした。それが94年の春。そして塾講師のフリーター・アルバイト生活の中で、グループSNEが新規社員募集の宣伝をしていたので、ダメ元で夢に掛けてみたら、合格したんだよ。まあ、出来高制の契約社員という形だけど、そこでいろいろ学ばせてもらったから今の俺がいる」

ハイラス「すると、やはりミスタラ殿とNOVA殿が揃って、94年にSNEに拾われたことになるでござるな」

NOVA「本当だ。ミスタラちゃんとはそういう縁があったのか。ロードスとか、フォーゴトン・レルムの方ばかり見ていて、これまで気付いていなかったぜ。だけど、今までいつも隣にいたんだな、ミスタラちゃん。あまり構ってあげなくてゴメンよ」

ハイラス「とにかく、メディアワークス版D&Dと、NOVA殿のゲームデザイナー見習いライフのスタートは同じ年になったわけでござるが、順調には進まなかった、と」

NOVA「ああ、それなんだけど、俺はゲームデザインを志向していたわけじゃなくて、海外ゲームの翻訳をメインウエポンとして雇われたんだ。だから、システムデザインはできないし、独自の世界観と思っていたのも、所詮はロードスやD&Dの劣化コピーに過ぎず、パロディーはできても、自分のオリジナルとなると心許ない。水野さんや友野さんみたいなワールドデザイナーとしてのこだわりはなくて、お二人の手伝いができたらいいなという程度の心意気だったから、ダメだったんだろうなって今でも思っている。だから、自分のこだわりって一体、何だろうと思いながら、自分探しの目的で作ってみたのが自分のサイトのホビー館だったわけだし、まあプロ意識みたいなことをしばしば口にするのも、若い時にそれが欠如していた自分への反省という想いもある」

ハイラス「今は、それがあるでござるのか?」

NOVA「どっちだ? 趣味のブログ書きの方か、それとも仕事の教育業の方か?」

ハイラス「もちろん、本職の方でござる」

NOVA「少なくとも、関係者のニーズをきちんと受け止めて、可能なかぎり自分の持てる力を活かして結果を出すために、そして、その先を見据えるために無理はし過ぎない程度のプロ意識はあるぜ。プロで大切なのは、自分の現状の能力を過信しすぎないことと、それでもできることの一歩先を見据えて精進し続けることだと考えている。アマチュアは全力投球でバタンキューと倒れてもいいし、後先考えずに突き進んで自己満足で終わってもいいんだけど、プロとして長く続ける場合は自分のやっていることの現状と未来を意図する視点は必要だ。そして達成できなかった目標の反省とか総括は必ずする。それが俺のプロとしての矜持だ。やりたいことを自由にできるのがアマチュアで、制約の中で結果を出してみせるのがプロという意識もあるんだが、お前はどうなんだ、ハイラス。お前はプロのドルイドか?」

ハイラス「プロのドルイド! それは、いかなるものでござるか」

NOVA「おいおい。それは俺が聞いているんだ。お前が俺にプロ意識を問うたから、俺もお前に同じ質問をした。人に質問するからには、お前も同じことを自問して考えるのは、大人としての礼儀だろう? 興味本位で質問をするだけして、自分の方では同じ質問に対して一応の見解も示さないのでは、物事に関する真摯さを疑われる。『自分はこの件に対して、こう考えるんですけど、参考までにあなたの見解をお聞きしたい』ぐらい言えないと、対等の話し相手としては認められない。教師と学生の上下関係ならともかくな」

ハイラス「しかし、ドルイド職というものは自然に対する信仰に基づくもので、営利を求める職業とはまた違った生き様に相当する。プロとは食い扶持を稼ぐための生業を意味するゆえ、ピンと来ないのもまた事実」

NOVA「確かにそうだな。俺も時空魔術師を名乗っているが、プロの時空魔術師とは何か、と問われても答えられない。だって、俺にとって時空魔術師って職業というよりも生き方だからな。時空魔術師という肩書きでお金をもらって生活しているわけでもないし、プロもアマも関係ない。古今東西の時空にまつわる不思議を物語の形で研鑽するのが好きだから、そしてファンタジー世界の職業クラスで自分の性格に一番フィットするのが魔術師だから、そこを一つのアイデンティティーにしているわけで。しかし世間一般では時空魔術師なんて肩書きには何の意味もない。まだ、プロの手品師とかマジシャンって名乗る方が、職業として受けがいい方だ」

ハイラス「つまり、プロは世間で認められ、商品や作品を作ってお金が得られる。アマチュアは自分の趣味で、金銭を得る手段として認められていない、ということでござるか」

NOVA「狭い金銭の授受という意味では、それが単純な考え方だろうな。プロ作家は商品価値の高い作品を指向して、コンスタントに一定のレベルに仕上げて、編集さんを楽しませることができれば、後は編集さんが商品として仕上げてくれる。逆に、編集さんすら楽しませることができないとか、編集さんとの人間関係がろくに構築できないようでは、職業人としては通用しない。もちろん、インターネットの発達によって、編集さんを介さずに同人的な自費出版ができるようになったり、今の俺みたいに気まぐれなブログ記事で自分の書きたいことを自由に書いて、それで満足することもできる。プロ作家でさえ、仕事とは別にツイッターやブログで自由に書きたい欲求を発散している人はいっぱいいるわけだし。もちろん、宣伝目的もあるだろうけど」

ハイラス「それで、この話は一体どこへ向かうつもりなのでござるか?」

NOVA「ああ、結局はミスタラちゃんのその後を語る上での前書きだ」

ハイラス「ミスタラちゃんと、プロとアマの話がどうつながって来るのでござるか?」

NOVA「まだ分からないのか。だったら、小見出し変えて仕切り直しだ」


★アマチュアゲーマーによるミスタラ継承


NOVA「SNEとD&Dの関係に話を戻そう。D&Dの版権は結構複雑で、これをゲームとして発売するのか、書籍として発売するのかで話が相当こじれたと聞く。ゲームの版権は新和がとり、書籍の版権は角川系列がとったから80年代は展開が一本化することなく、複数企業がいろいろ参入して、結果的に皆でD&D神輿を担ぐ祭り状態となった。もちろん、コンピューターゲームの分野とも連携して、ドラクエ効果もあって、80年代後半は一気にファンタジーRPGが市民権を獲得していったわけだ。また、いわゆるサブカルチャー、俗な言葉でオタク文化の隆盛とも連動して、アニメや小説、ゲームの世界をクロスさせるメディアミックス手法が根付いたのも、この時期と言っていい」

ハイラス「世間ではドラクエがブームとなり、その源流を求めるマニアはウィザードリィやD&Dに目を向けていた時期でござるな」

NOVA「まあ、そこで入り口がいっぱいできるわけだ。小説やゲームブックから入門する者と、コンピューターゲームから入門する者と、サイコロ振る系のボードゲーム方面から入門する者と。俺の場合はツクダのシミュレーションゲームが背景にあって、興味を持ち始めた矢先にロードス・リプレイの洗礼を受けた。ただ、ここで一つの矛盾が発生する。新和が売っているゲームはクラシックD&Dで、小説などの他ジャンルではアドバンストD&Dを宣揚していて、両者は同じゲームのようで違う発展をしていたんだな」

ハイラス「元々は、初心者用のクラシックD&Dと、上級者用のアドバンストでござったな」

NOVA「エキスパートまではな。コンパニオン以降のクラシックはAD&Dとは違った道を進み始め、ある方面ではアドバンスト以上の進化を遂げたと言ってもいい」

ハイラス「それは?」

NOVA「ルール的整合性という奴だ。追加ルールの山だったアドバンストは、プレイする人間によって選択ルールが異なり、統合が取れにくくなっていたんだよな。とりわけ、80年代半ばのゲイリーさん関連の問題で錯綜したのが、その時期のAD&D。一方、新たに入門者用と位置付けられたクラシックは、AD&Dのカオス状態に一本の筋を通す流れを作って、それが日本でも入門RPGになった。ただ、クラシックD&Dでは流行のドラゴンランスはプレイできない。なら、ロードスを日本版D&Dの入門世界として展開しようとしたら、それは禁止された。つまり、日本でD&Dを盛り上げるために、いろいろ考えたことが、かえってクラシックD&Dへの不満を引き起こすことになったんだ」

ハイラス「するとクラシックD&Dの背景世界であるミスタラも、クラシックD&Dの不人気の割を食った形でござるか」

NOVA「いや、別にクラシックD&Dが不人気というわけじゃなかったんだが。ただ、クラシックD&Dじゃ話題のドラゴンランスがプレイできない上に、ロードスも受け入れられなかっただけで。これで、もしも日本独自展開が許されていたら、『クラシックD&Dでドラゴンランスをプレイするための追加ルール』とか『クラシックD&Dのロードス島サプリメント』とかを商品化する別の時間軸があったかもしれない。まあ、その場合、ソード・ワールドは誕生しなかったかもしれないけど」

ハイラス「だが、結局、アドバンストD&Dはルールが統合整理された第2版が89年に発売されて、91年に日本語訳もされた」

NOVA「そこは期待したんだよな。やった、もうすぐドラゴンランスも日本語で楽しめるって」

ハイラス「NOVA殿は英語が読めるのであろう?」

NOVA「ああ、読めるよ。だけど、TRPGをするのは一人じゃできないだろう? 英語のゲームに付き合う酔狂な連れは周りにはいなかった。当時はウィザードリィRPGとか、ブルーフォレストRPGとか、メガトラベラーに付き合ってくれる連れはいたんだけどな。とにかく、俺が連れとドラゴンランスをプレイするには、英語ルールの和訳が必要だったんだ。今にして思えば、そこまでプレイしたければ、自分で必要なルールのレジュメを作れば良かったのに、と思わなくもないが、91年にもなると日本語でプレイできるゲームもいろいろ出ていて、無理に海外ゲームにこだわらなくてもいい時代になっていたんだな」

ハイラス「だから、NOVA殿は待望のAD&Dをゲットしたものの、プレイする機会がなく、昨年まで書庫に封印されたままだった、と」

NOVA「いいんだよ。ルールブックを読むだけで、空想を膨らませてワクワクできたんだから。ただ、AD&Dが出た途端、クラシックD&Dのサポートが打ち切られ、しかもAD&Dも基本のルールと数点のサプリメントが出ただけで展開終了。ドラゴンランスには手が届かなかったわけで」

ハイラス「さっきから、やたらとドラゴンランスを連呼しているでござるな」

NOVA「だって、嬉しいだろう。ロードス復活で万歳と喜んでいたら、ドラゴンランスも復活するんだぜ。ブログでもアピールしたいと思うのが人情じゃないか」

ハイラス「ところで、これはミスタラの話であったはずが、いつの間にかドラゴンランスの世界に迷い込んでいるようでござるが」

NOVA「おっと、いけねえ。クリンちゃん(ドラゴンランスの世界名)に気が行っていた。ゴメンよ、ミスタラちゃん。とにかく、新和版AD&DはTRPGマニアみんなの期待を集めてスタートしたんだけど、クリンちゃんには手が届かず、しかもミスタラちゃんを切り捨ててしまったので、それまでのD&Dファン(英語ユーザー除く)が路頭に迷う結果になった後、ミスタラちゃん再び、となったのがメディアワークス版だったんだな」

ハイラス「つまり、新和がD&Dから撤退したおかげで、角川系列のD&D版権が一本化して、ゲームと書籍展開がスムーズにつながると思われたのでござるな」

NOVA「これは、ずっとD&Dを紹介して来られた安田社長も大喜びで、自ら率先してサポート記事を書いたり、傍目に見ても分かるほどの喜びようだった……としておく。俺としては、クラシックD&DよりもアドバンストD&Dを展開して欲しかったんだが、まあ、物事には順番というものがあると割り切った。D&Dの展開が順調なら、いずれはドラゴンランスも、と希望の未来を純粋に夢見つつ、クラシックD&Dの文庫版の新ルールを嬉々として買って、手持ちのガゼッタサプリメントを読みながら、カラメイコス大公国を舞台にした連作シナリオ『キングズ・フェスティバル』『クイーンズ・ハーベスト』『ナイツ・ダークテラー』を当時の連れと喜んでプレイしていった。そして、文庫版ルールの続きの上級ルールの出版を目前にして、TSRが突然崩壊して、D&Dの版権が失われたんだな。これがミスタラちゃんの不幸話の第2章である」

ハイラス「第1章から、ここまでが随分と長かったでござるな」

NOVA「ああ。プロじゃない俺の思い出たっぷりの文章が寄り道だらけで錯綜して、整合性に欠けるAD&D1版めいたものだったからな。クラシックD&D並みの一本筋の通った形で簡潔にまとめるなら、『第1章・ガゼッタ名義で華麗にデビューしたら、AD&Dの登場で切り捨てられた』『第2章・SNEに拾われて正式名称ミスタラとして再デビューしたら、本社の倒産で芸能活動が終了した』というのが、TRPGアイドルのミスタラちゃんの物語になる」

ハイラス「そうまとめると、よくあるアイドルの栄枯盛衰の物語に聞こえるでござるな」

NOVA「そう。80年代と90年代にかけて、ミスタラちゃんは俺たちTRPG入門者を導く希望の星として、さわやかな風を巻き起こしながらスッと消えたんだ。一方、同時期にデビューしたフォーゴトン・レルムちゃんは、新世紀に入ってからも手厚いサポートを続けられ、今なお現役アイドルとしてD&D世界の顔となっている。第4版でイメチェンしたけど、ファンには受け入れられなくて、昔のレルムちゃんに戻ってくれよ~と要望したら、5版になって昔ながらのイメージを取り戻したのが今のレルムちゃん。
「また、ドラゴンランスのクリンちゃんは、5版用のワールドガイドこそ出ていないようだけど、ルールブックやサプリメントの所々でサポートされている。例えば、『フォーゴトン・レルムのパープル・ドラゴン・ナイトのルールは、ドラゴンランスのソラムニア騎士を再現するのに最適である』とかガイドラインがあって、最新のルールでドラゴンランスファンの需要を満たすための情報がフォローされている。他にエベロンや、グレイホーク、その他の自作世界へのガイドラインもあるんだけど、現ルールでミスタラちゃんは完全に見捨てられてしまった」

ハイラス「まるで、思い出の中に生きる往年のアイドルでござるな」

NOVA「そうだと思っていたんだけどな。だけど、彼女は今も元気に、アマチュアサポーターに支えられて、地道に活動していたんだな。それが最初に挙げた英文サイト『Vaults of Pandius』なんだよ。つまり、公式にはサポートされていないミスタラちゃんを、愛するファンがネットの世界で彼女にまつわる資料と、D&D3版対応の追加ルールをまとめている。しかも、元々は非公式のファンサイトだったのが、その完成度が高いので、公式のWizards of the Coast社から『私たちはミスタラのサポートをできませんが、あなたたちの熱い活動を認めて公式サイトとして認定します。今後も頑張って下さい』的な許諾をいただいたらしい。ミスタラは生きている、ファンの熱い心の中で。しかも、それを見事な形にして、公式に認められたわけだから、アマチュアの熱い想いがプロレベルに達した姿を目撃した気分なんだ」

ハイラス「なるほど。プロとアマの話にこだわっていたのも、そういう話につなげたかったのでござるな。世界を愛してサポートするのに、プロもアマも関係ない。アマチュアファンだからこそできる世界へのこだわりが集まったとき、プロをも動かす力となる」

NOVA「そう。大切なのは、世界に対する愛と、その愛をどういうやり方で形にするか、なんだ。その想いと現実の形がうまく結びついたところに新たな創作が生まれる。そこにプロとアマは関係ないと今の俺は考えている。ただ、自分の信念や目標としての、高みに昇るためのプロ意識みたいなものは念頭に置くけどな。
「例えば、寄り道だらけの、こういう駄文はプロの書き物じゃない。金を取るなら、記事の文章量も計算しないといけないし、関係のない寄り道文は全面カットしてスッキリさせるとか、時系列順に構成を見直すとか、ここから緻密な推敲作業に入るところだ。今の文章じゃ心のままに書き殴っただけだからな。まあ、アマチュアなので、それでいいと思っている。あくまで大切なのは、記述対象や関連事項に向けての俺の知識や気持ちの吐露だからな。俺の気持ちが整合性のないカオスなら、そういう文章が俺的に面白いんだから、無理に取り繕って一本筋の通った綺麗な話にまとめなくてもいい、と割り切った。文章を書く目的には、きちんとかなった文章なんだ」


★そしてミスタラの未来


NOVA「結局のところ、ミスタラの展開は1992年に本国で出版されたシナリオ付きサプリメント『Wrath of the Immortals』で、TSR公式での商品化はほぼ終了していると思われる。それ以降は雑誌などで発表されたり、メールマガジンなどで続いてきたりして、そういう情報も英文サイトにはいっぱい書いてあるんだが、こうなると、どこまでがTSR公式で、どこからがファンの作ったものか分からない。ミスタラ専門の研究者を目指すなら全文訳にも挑戦するところだが、そこまで暇じゃないので、必要と感じた資料だけ流し読みする程度に留めるのが現実的だろう。
「そして、これが残念なんだが、日本ではカラメイコスと、その周辺の一部しかミスタラは紹介されなかった、ということ。コンパニオン以降のアルファティアとジアティスの戦いについては、ルールブックにはなく、シナリオで断片的に語られ、これからというところで打ち切られたし、一番のクライマックスになるところが、知られざる歴史になってしまっているのを、今さらながら知ったわけで。例えるなら、ドラゴンボールのアニメが、ピッコロ大魔王との戦いで打ち切られて、ベジータフリーザスーパーサイヤ人も知らないようなものになるか」

ハイラス「よく分からないでござる」

NOVA「だったら、ロードス島戦記で、スパーク主人公の英雄騎士伝のアニメを見ていないようなものか。いや、むしろ、カシュー王と剣闘士ルーファスの話がつながっていない新規のファンはいるかもな」

ハイラス「カシュー王? 剣闘士ルーファス? 誰でござるか」

NOVA「おい。アレクラストの元住人。同じ世界のロードスの勉強ぐらいしておけ」

ハイラス「そんなことを言っても、大陸の人間としては、呪われた島のことなど気にしないのが普通であるからして」

NOVA「そういうところが、プロ意識の欠如だってんだ。自分に少しでも関係があるとなれば、興味を持って目を輝かせる。そういう意識を持てずに、狭い価値観で自分の世界を人に伝えられるものか。ロードスの話が気になるなら、後で別ブログを見て来い」

ハイラス「分かったでござるが、今はこの記事を終わらせるのが先決であろう」

NOVA「分かった。ミスタラのクライマックスは、イモータルの怒りの超絶アーティファクトパワーで、アルファティア大陸が海中に沈んで、一方のジアティス帝国も戦争の影響で勢力が衰退する。そして、カラメイコス新王国の誕生で幕を閉じた、と思われた。しかし……」

ハイラス「しかし?」

NOVA「海底に沈んで、それっきりだと思われたアルファティア大陸は、どういう魔力の影響かミスタラの地底世界ホロウワールドに出現。浮遊大陸アルファティアとなって、地底世界の脅威になる。暗殺されたと思われていた女帝エリアドナも、実は生きていたことが分かり、さあ、これからどうなる、ホロウワールド? という話に展開するらしい」

ハイラス「何と。舞台が地下に移ったでござるか。しかも浮遊大陸とは! 何とも驚きでござる」

NOVA「例の海外サイトの情報だから、どこまで公式ストーリーなのかはよく分からんが、その話を読んで、俺は4版レルムの展開を思い出した。滅亡した古代魔法帝国ネザリルの空中都市シェイドが、レルムに舞い戻って、世界の脅威になっていた展開だ。もしかすると、ミスタラの浮遊大陸アルファティアの設定がダウンサイジングされて、レルムのネザリル帰還話のアイデアソースになったんじゃないかなあって」

ハイラス「つまり、格式高い騎士道文化を描いていたクラシックD&Dは、突如としてSF風の世界観を提示するようになったでござるな」

NOVA「まあ、ルールブックを読んでいるだけじゃ、分からなかったことだけどな。とりあえず、ミスタラの世界はフォーゴトン・レルム以上にSF混じりの荒唐無稽なセンス・オブ・ワンダーに満ちた世界だってことさ。どこまで公式かは、よく分からんが」

(当記事完)