ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

マスターシナリオと世界観の話

★ミスタラとレルムの違い

 

NOVA「さて、今回はミスタラとフォーゴトン・レルムの違いを考えてみよう」

 

ハイラス「ミスタラはクラシックD&D、レルムはアドバンストD&D以降の現D&Dの背景世界でござるな」

 

NOVA「ああ。だから、双方のゲームシステムの違いがそのまま世界観の違いになっているところがある。例えば、ミスタラでは神のことをイモータルと称して、割と民族の英雄を神として祭ったりする一方で、世界全体を司る主神なんてものが見られない。さらに、これはマスターレベルのシナリオで明確なんだが、イモータルって人間の英雄たちの所業に結構敏感で、間接的に介入してくることもあるんだな。英雄たちが自分の目的を達成してくれれば、イモータルポイントを獲得できるので、贔屓の英雄を応援してくれるなどのルールが明確。その意味で、ギリシャ神話のような背景がDM視点で見られるシナリオが、これM1『巡らされた糸』だったりする」

 

 

ハイラス「今回はシナリオの話でござるか?」

 

NOVA「あくまで前振りのつもりだけどな。詳細はまた後日に書きたい。概要だけ触れると、このシナリオの背後には三つのイモータルがいる。平和と繁栄を司るローフルなコーリス、戦争と英雄行為の好きなニュートラルなヴァーニャ、死と復讐を目的とするカオティックなアルファクスの三柱が、独自の計略を企てて二大帝国アルファティアとジアティスの間にまた戦争を引き起こそうと(あるいは止めようと)動いているわけだ。プレイヤーキャラはノルウォルド領主の立場で、イモータルの策謀に翻弄されたり、援助を得たりしながら、国家の歴史に関わっていくんだが、基本的にはアルファクスの陰謀を止めるように動く流れになる。

「ここで面白いのが中立のヴァーニャちゃん。バトルマニアな彼女は、格好いいバトルが見たいのであって、凄惨な殺戮や一方的な虐殺は燃えないという点でアルファクスの『殺し尽くせ』という考えとは対立する。だけど平和主義のコーリスと折り合うわけでもない。つまり『平和だと物語が面白くないけど、やり過ぎて鬱展開なのは勘弁ね。だから適度に戦って、キリのいいところで試合終了ってのが理想。続きは、また今度。それまではゆっくり休んで、また元気になって、いいバトルを期待しているわ』という調子のいい女。ただし、軟弱者には興味がなくて、いいバトルを見せてくれた強者を応援する正義ではない戦女神なわけで」

 

ハイラス「戦争の陰に、神々の介入があるわけでござるな。マスターレベルともなると、そういう超越的な存在との交流や対立も絡んでくるのでござるか」

 

NOVA「ああ。途中は割愛して、シナリオラストについて簡単に語っておくとしよう」

 

イモータル次第なマルチエンディング

NOVA「M1シナリオは、どのイモータルの獲得ポイントが一番多かったかで、マルチエンディングになるんだが、アルファクスルートはバッドエンドになるな。国土は荒廃し、冒険者はいろいろなものを失うことになる。決して冒険者が悪に加担して、邪神万歳的な終わり方ではないわけだ。むしろシナリオ後は、邪神への復讐のために旅立つことが示唆されている。
「コーリスルートは国土が平和になって、めでたしめでたしで10年間の繁栄が保証される。領主としては万歳だけど、物語としてはそれで終わってしまう感だな。
「ヴァーニャルートはゲーマーとして、実質的に得るものが一番多いようだ。女神さまが50頭のドラゴンから成る神の軍勢を褒美にくれて、『これでまた凄い戦いを見せて、私を楽しませてね。期待しているから』って感じに終わる。戦女神のヴァーニャちゃんは、人間の立場では非常に迷惑なキャラなんだが、バトル物語を楽しみたいという動機は共感できるので憎めない。まあ、セリフは今風にアレンジしているので、シナリオ文章でこんな口調が記述されているわけでもないが。
「いずれのエンディングでも、プレイヤーキャラクターはイモータルとの遭遇を機に、自らその座を目指して探求の道を志すわけだ」

ハイラス「そういう物語が、マスターレベルのシナリオでござるか」

NOVA「途中の展開もいろいろあって面白いんだが、レベル25以上推奨なので、実際にプレイしたD&Dゲーマーは少ないんじゃないか、と思う。と言うか、俺自身、買うだけ買って、きちんと中身を読んだのは今回が初めてだったりする。プレイする機会があるわけでもなかったしな。マスタールールとセットで買って、それっきりなのを今の機会に発掘して、話のネタにしているわけだ。シナリオのネタバレは禁じ手と思うが、今となっては時効だろうと考えた次第」

ハイラス「とにかく、ミスタラはイモータルの介入が世界観の一つになっているでござるな。レルムの方は?」

NOVA「神々が地上に降臨した〈災厄の時〉を除けば、そこまで露骨じゃないと思う。バアル神の復活を描いた『殺戮のバルダーズ・ゲート』のようなケースが例外的だと見ているんだが、シナリオによるのかもな。少なくともレルムの敵で邪神の信徒とかとはよく戦ったりもしたが、降臨したばかりのマイナーゴッドと戦ったことは……コンピューターゲームならあるか。TRPGでは、そこまでキャラを育てたことはないしな。とにかくレルムでは神の降臨が珍しいが、ミスタラではイモータルが元人間ということで結構、頻繁に降臨しているように思える。まあ、普段は自分の世界に引っ込んでいて忙しいんだろうし、一般人を脅かさないように気を使うことぐらいはしているんだろうけど」


★二つの地誌

NOVA「さて、ミスタラとレルムの違いは細かく挙げるといろいろあるけれど、どちらも87年から本格的に展開されたのは同じ。しかし、展開の仕方が大きく異なる。ミスタラの場合は、最初がカラメイコス大公国から始まって、どんどん拡張していく流れだったのに対し、レルムは最初に大きな世界を示して後から細部を埋めていく形式をとった。日本だと、アレクラスト大陸やロードスが規模の大小こそあれどレルム的で、クリスタニアがミスタラ的な展開を示した。ここでレルム的というのは、最初に大きな地図を示して、後から細部をクローズアップするスタイル。一方、ミスタラ的というのはまず世界の一地域を示して、そこから外に広がっていくスタイルを意味する」

ハイラス「NOVA殿としては、どちらが好ましいでござるか?」

NOVA「俺は先に世界の全景を見ておきたいタイプだな。世界地図をまずは広げて、それから地域別に追っていきたい。だけど、物語の登場人物視点だと、まずは身近な景色を見せてから、少しずつ世界を広げていく方が臨場感があって、感情移入できるのも分かる。アニメなんかでも、先に世界の外にいるナレーションが大きな世界観から語るスタイルと、登場人物が自己紹介するところから始めて身近な事件をあらすじ的に伝えるスタイルの二つがあって、前者は壮大さを、後者は親近感を伝える手法と言えるな」

ハイラス「しかし、壮大な世界が最初から用意されていない場合は、身近なところから少しずつ広げていくしかないでござる」

NOVA「そうだよな。先に世界があって、後から物語が作られていくのが前者で、物語とともに世界が広がっていくのが後者。日本では、それまで後者の手法が当たり前だったんだ。だから、フォーゴトン・レルムがいきなり大きな世界を提示して見せたときは、相当に驚かれたわけだ。ロードス島も最初に大世界を地図で示す手法をとったけれど、規模が全然違う。
「もちろん、レルムの場合は、同時にコンピューターゲームや小説などでマルチ展開を見せる都合で、いきなり大きな世界を公開する必要があったんだけど、日本には『ゲームのための架空世界ワールドガイド』なんてものを商品にする伝統もなかったので、そこからの文化吸収の流れも興味深かったものだ。結果的に、日本にワールドガイドを根付かせたのは、コンピューターゲームの攻略本じゃないかなあ。探索する世界や街、ダンジョンのマップとかの需要ができるのも、ドラクエ以降で、やはり87年辺りからだと記憶する」

ハイラス「その当時から、NOVA殿は異世界に興味を持たれていたでござるか」

NOVA「まあ、中学から高校にかけての多感な時期に、SF世界やファンタジーコンピューターゲームなどのブームが一気に押し寄せてきて、それまで日本になかった文化が根付いていく空気感を感じていたな、80年代には。世の中には探索すべき異世界がいろいろあって、それを構築している世界法則(ルール)がいろいろあって、さらにルールを分かっていれば自分で世界を作ることさえできるってクリエイティブな感覚は、俺の場合はTRPGから吸収したと言ってもいい。ただし、今みたいにインターネットで海外から情報を集めやすい時代ではないし、海外のゲームを売っている店も知らなかったし、知った後でも大学に入ってアルバイトするようになるまでは自由に買うこともできなかったから、どんどん資料が増えていくのは、平成になってからだな。ちょうど俺は平成元年に大学1年になったわけだし、平成を懐古するなら大学受験と高校卒業と大学入学とTRPGがつながってくるんだよ」

ハイラス「それで、ミスタラとレルムはどの辺からつながってくるわけでござるか?」

NOVA「やはり89年からなんだな。本国で87年に開始された両プロジェクトが、日本語に翻訳されて紹介されたのがそれぐらい。レルムの方はコンピューターゲームと小説の舞台として紹介され、ミスタラはガゼッタワールドとして新和のD&D雑誌が主にサポートしていた。ただ、ガゼッタはカラメイコス、イラルアム、アルフヘイムの3地域しか訳されず、レルムも肝心のワールドガイドが翻訳されたのは新世紀に入ってから。だから、英語資料を読まないと全容が分からない時代だったんだ。
「その前に、ロードスとかアレクラストとか、エセルナートとか、タイタンとか、オールドワールドとか、次々と紹介される架空世界の消化だけで十分だったし、俺が一番翻訳しないといけないのは趣味ではなくて本職の西洋中世史研究資料だったから、いくつか買ったAD&D英語版は片手間で読んだり、後で時間ができた時に読めばいいかぐらいに思っていた。それでも、AD&D1版のプレイヤーズハンドブックぐらいは読んで、大学ノートにルールの概要と職業・種族データはまとめたわけだけど。大学在学中に趣味と学業の両方で英語付けになって、現実および架空世界の地理や歴史を文献で読み解くのが習い性になっていたんだ」

ハイラス「その結果がSNEでござるか」

NOVA「そういうことになるな。それで、ミスタラの方はSNEがもう一度、初めから紹介しているうちに、TSRが倒産してそれっきり。レルムの方はバルダーズ・ゲートで再会して、時々追跡していたけど、第4版でしばらく会わなくなった。5版の邦訳が出るとともに、もう一度付き合い始めた感じだ。ここに至るまで20年ぐらいは掛かった感じだな。バルダーズ・ゲートで追っかけていた時期を含めると10年ぶりってところだけど」

ハイラス「つまり、ミスタラちゃんは昔、別れた彼女で、レルムちゃんは最近、また寄りを戻した彼女ということになるか」

NOVA「いや、どちらも昔の資料は書庫に眠ったままだから、別れたつもりはないんだよ。ただ、ガゼッタワールドの方は記事を切り抜いたから、人間で例えるなら、ちょっとした猟奇殺人事件みたいなものだな。まるで手だけ切り取って保管している吉良吉影になった気分だ。キラやばーって感じだよ」



ハイラス「これが本当のマニアだと、高い金を出して中古品を購入すると聞いたでござるが」

NOVA「だけど、俺はちょっとしたルールマニアは自認するけど、ミスタラやレルムという世界観マニアじゃないからな。ルール研究に、世界観の研究も必要だと感じているから記事書きしているのであって。あと、もうすぐ平成最後の誕生日なので、自分の思い出語りについついつながりやすいわけで」

ハイラス「おお、ハッピーバースデイでござるか」


NOVA「それで、今後はミスタラの地誌と題して、カラメイコスから順番にガゼッタをチェックしていこうかと思ったんだが、記事としての需要を計りかねていてな。むしろ、実用性を考えるならレルムの国や都市を紹介する方がタイムリーなんだけど、そっちは、もうすぐレルムで最も有名な街の一つ、ウォーターディープのシナリオ集が出るから、それを見てから書いてもいいと思ってな。3版で邦訳されたウォーターディープ本は未購入だし。一応、公式サイトでの紹介文を貼り付けておくが。
「単純な懐古話ならミスタラの方が書きやすくて、レルムの場合、大陸西岸のソードコーストが今の旬なんだけど、歴史年表からは中央のデイルランド、コアミア周辺の方が世界の中心っぽくて多くの事件があったみたいなんだ。どうも、その辺は未翻訳の小説でいろいろ物語が展開されたらしい。で、日本で紹介されたコンピューターゲームだと、ソードコーストが舞台になることが多く、おそらく3版以前はコアミア中心でゲーム展開が為され、以降はソードコースト中心という説で問題ないと思うんだが、何ぶん、勉強不足だ。目下、公式で展開中の世界を資料もなしに適当な印象だけで書くわけにもいかないので(想像力が豊かだと、ついつい捏造してしまう危険を自戒しないと)、レルムは慎重に行こうと思う。ミスタラの方が手軽な資料があるから、記事のネタにしやすいということで」

ハイラス「まあ、好きにすればよかろう。私としては、ドルイ道にまつわる話をリクエストしたいところだがな」

NOVA「うまく、つなげられないか考えてみよう」

(当記事完)