ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「モンスター誕生」攻略感想(最終回)

最後の戦い

 

リバT『11回におよぶ長かった「モンスター誕生」の物語も、ついに最終回を迎えることとなりました』

 

ダイアンナ「敵の仕掛けた罠を利用して、敵の空中拠点ガレーキープに侵入する主人公。ここから派手な大活劇が展開される流れだね」

 

リバT『いいえ。期待に添えず申し訳ないのですが、本作のクライマックスは活劇要素が薄く、ラスボスとの対話による真実の開示と決断で締めくくられて、静かな幕切れを迎えるのです。サイコロを振るゲーム的なアクションよりも、会話劇とパラグラフによる選択だけでドラマチックに終了する……というのも、ボスのザラダン・マーがライバルのバルサス・ダイアと違って、決して武闘派ではなく、言葉巧みに相手を誘い込んだり、騙して言いくるめる姑息な人物像をしているので、仮に戦いを挑まれても逃げたり、部下に相手させたりで自らは危険を冒さないタイプとお考えください』

 

ケイP『戦いにはならないッピか?』

 

リバT『本作の正解ルートで、最後にダイスを振って戦う相手は、何と! ゴブリン2体です。ゲーム的な戦闘という観点では、技術点5とか6、体力点5のゴブリンがラスボスと解釈することもできる』

 

ケイP『ゴブリンスレイヤーッピか?』

 

リバT『本作でよく言われるのは、通常のゲームブックを逆転させた構造です。最初に雑魚のゴブリンを倒し、外の世界から迷宮に入り、そして奥に潜む強敵を倒すのが王道とするならば、本作で最初に戦う敵はホビット含む3人の冒険者か鉤爪獣。鉤爪獣は技術点9、体力点14で、実は本作でバッドエンド確定ルートに登場するものを除いて、最強クラスのタフな強敵です』

 

アスト「何しろ、バルサスの前座ペットだもんな。魔法で弱体化させて一発撃退できなければ、準ラスボスとも言える結構な強敵だ」

 

リバT『とにかく、強敵のいる迷宮奥から、地上に出てきて、そして最後に戦うのがゴブリン。もう、ゴブリンを倒せば、後はサイコロを振らずにクリアできる仕様です』

 

ケイP『つまり、ザラダン・マーはゴブリンより弱い?』

 

リバT『ゴブスレさんなら、確実にそう言うでしょうね』

アスト「そりゃあ、ゴブスレさんなら何を相手どっても、『お前はゴブリンより弱い』って言いそうだよなあ」

 

リバT『とにかく、ガレーキープに侵入して、食料引き上げの作業を行なっていたゴブリン2体を血祭りに上げたモンスターさんは、ザラダン・マーの船上部隊が駆けつけてくる前に、船室に飛び込み、階段を駆け下り、マーの潜む部屋を一路目指すのです』

 

ケイP『一応、ダイスを振って、ゴブリン2体を始末するッピ』

 

五つの扉

 

リバT『さて、モンスターさんの前に、五つの扉があります。左から順番に「水差し」「炎」「王冠」「雪の結晶」「青い剣」のマークが描かれています』

 

ケイP『ザラダン・マーの部屋は「火と氷の間にある青いもの」に関係しているって、嘘つきエルフが言っていたッピ。火と氷の間といえば真ん中の「王冠」だッピか?』

 

アスト「氷を雪と解釈すれば、そう思えんこともないが、ふつうは水だろう? 当たりは『水差し』だったはず」

 

リバT『そうですね。一応、全部チェックはしてみるのですが、外れの扉に入ると、出ることができないバッドエンドだったり、仮に逃げ出せても、時間を無駄に使ったために、ザラダン配下のホブゴブリンの大群に襲われて虐殺バッドエンドになったりします』

 

ダイアンナ「やっぱり、ゴブリンは群れを為すと恐ろしいんだな」

 

リバT『それでも攻略記事だから、当たりの水差しは後に残して、他の部屋をのぞいてみましょう』

 

★炎の部屋

 

 本作最強の魔神、業火の主(マスター・オブ・ヘルファイア)の部屋。

 技術点14、体力点14は、『地獄の館』のラスボス悪魔(技14、体12)よりも強い。クリスナイフで技術点+6の特効のない本作では、ダイス運によほど恵まれないと倒すことは無理。

 運よく勝てたとしても、すぐにゾンビ化して復活して、炎の眼光を浴びて焼き殺される。

 ある意味、裏ボスみたいなもの。

 

★王冠の部屋

 

 吸血オークの部屋。

 技術点7、体力点5はただのザコである。

 しかし、こいつを倒すと、身に付けていた赤いローブを自分も身に付けてしまい、吸血モンスターの呪いを受け継いでしまう。

 なお、この部屋は中から扉が開けられないので、吸血モンスターは隔離され、呪いが外に蔓延することはないようになっている。

 

★雪の結晶の部屋

 

 天候の魔法使いニンビカスの部屋。

 ガレーキープは風がなければ飛行し続けることができないが、彼が風を魔法で制御することで、着地することなく飛び続けていられるわけである。

 基本的に温厚な人物なので、唯一、部屋の選択を間違えても、別の部屋を選び直すことができる箇所。

 しかし、彼を攻撃して怒らせたなら、竜巻の魔法で全身を細かく砕かれて死亡。

 

★青い剣の部屋

 

 船医にして、魔道医師のキンメル・ボーンの部屋。

 ザラダン・マーに協力して、マランハ研究を続け、主人公モンスターを創造するにも一役買っている。

 そして、実はあの『盗賊都市』および『危難の港』のラスボス、ザンバー・ボーンの兄弟であるという設定が『超・モンスター事典』で明かされた。おそらく後付け設定だと思われるが、骸骨兄弟の一族、親族が他にもいないか気に掛かるところ。

 なお、技術8、体力7という能力は弱い感じだが、こいつは倒しても倒しても再生して、絶対に倒せない無限ループに陥れてくる。

 だからと言って、戦わない選択肢を選ぶと、仮病を装うことになり、こいつの手術の犠牲となる。

 心臓を抜き取られて死ぬか、永遠に骨と踊り続けるか、どっちがいいか?

 まあ、どっちもイヤなのが人情なので、イベントだけチェックして、さっさと時間を巻き戻して、正しい扉を選びましょう。

 

 

明かされる真実(ザラダン・マーにかける慈悲)

 

リバT『まちがった扉を選ばず……仮に選んでも、もうここまで来たわけですから、リセットしてパラグラフ312番から選び直して、水差しの部屋(346)に入ります。ここは、キャプテン・モンスターさんが人間だったときに使っていた私室であることがすぐに判明するわけですが、「衣装ダンス」「鏡」「机」「螺旋階段(天井ハッチに出る)」「三本足の機械(望遠鏡)」を調べることができます。だけど、正解以外はすべてバッドエンドにつながるので、ご注意のほどを』

 

アスト「手がかりはダンジョンの中で見たザラダン伝記だよな」

 

ダイアンナ「この記事だったか」

ケイP『「彼を探し求める者は、おのれの姿を見出すであろう」がヒントだッピね。鏡を調べるッピよ』

 

リバT『パラグラフ422ですが、もう一作業必要ですね』

 

ケイP『ザラダン伝記に記されていたように、93を引いて、329番に進むッピ』

 

リバT『すると、鏡の奥の世界から書斎に腰掛けた死霊術師ザラダン・マーの姿が映し出されます。このシーンが表紙絵ですね』

アスト「これは鏡に映った姿なんだな」

 

ザラダン・マー『ふむ。鮭が生まれた川を遡るように、わが創造物が見えない力に操られて故郷に戻ってきたのだな! おまえはよくやった』

 

ケイP『ケピッ? いきなり褒められて、訳が分からないッピよ』

 

ザラダン『おまえがここ、ガレーキープまでたどり着いたのは、決して偶然ではない。おまえはわたしのマランハの最高の作品だ。わが実験は完璧な成功をおさめた。おまえはただ強いだけではなく、それに見合うだけの知性も兼ね備えている。おまえはすべての試練を乗り越え、「煙」とともにわたしのもとに戻ってきたのだ』

 

ケイP『「煙」って何だッピか?』

 

ザラダン『少し待て。後で話す』

 

アスト「って、ザラダン・マーがケイPの質問に答えるのか?」

 

リバT『ゲームブック本編では、モンスターさんは発話できない設定でしたが、ザラダンは創造者らしく、モンスターの言葉が分かるという演出で進めます。以降もザラダンは語り続けます』

 

ザラダン『そのたくましい体をあたえられる前、おまえには慈悲などほどこされるべくもなかったが、わたしは優しくも、ただ殺されるかわりに一つの選択をあたえてやった。おまえはわたしの捕虜だった。わたしの部下として働くか、さもなくばマランハの実験材料になるかと尋ねると、おまえは後者を選んだ。わたしはおまえに敬意を表して、全霊を傾けてマランハを行った』

 

ケイP『そうだッピか。ありがとう……なんて言ってやると思うか、このデコ助野郎!』

 

ザラダン『デコ助野郎? どういう意味だ?』

 

ケイP『深い意味はないただのスラングだが、自分の顔を鏡で見てみるッピ』

 

ザラダン『むむっ、モンスターの言葉は卑俗でいかんが、まあ、わたしは寛大なので、聞かなかったことにしてやる。それより話の続きだが……』

 

ケイP『いい加減、長いセリフに飽きてきたので、かいつまんで要点だけをまとめるッピ』

 

リバT『仕方ありませんね。ザラダンのセリフをすべて引用するのは、当記事の作者もいい加減にうんざりし始めているので、ここらで内容を箇条書きにしましょう』

 

●マランハ実験の苦労話。最初はネズミから始めたが、高等生物ではなかなかうまく行かず、不具のミュータントにしかならなかった。主人公モンスターと、その船員の部下たちが最初の成功例である。

●成功した実験体は能力と生命力を調べるため、コーヴンの地下研究所に送り込んだ。

●主人公は、かつてこの部屋の主であり、ガレーキープの船長だと示唆される。

●主人公の部下たちの顛末。親友のリジーはブラッド・オークに変えられて、盲目のハニカスの部屋にいた。給仕長のバーゴンはホビットに変えられ、最初の魔術師や剣士と共にいた。いずれも主人公に殺されたり、餌にされたりした。

 

ケイP『バカな。このオラがかつての仲間を貪り食ったというのか!?』

 

リバT『ザラダンはそう言ってますが、じっさいのところ、どうでしょうか? ザラダンは狡猾な嘘つきでもあるので、主人公を動揺させるために事実と混ぜて、嘘を並べている可能性も否めないですね。ホビット冒険者の仲間なのか、それともダンジョン内で冒険者が遭遇した住人なのかが問題ですが、パラグラフ205の記述を読み直すと、「あわれなホビットはなんの武器も持っておらず」と書かれてあって、冒険者にしては不自然とも読み取れます』

 

アスト「確かにな。冒険者だったら、武器ぐらい持っているだろう」

 

リバT『ただ、3人を全滅させた後のパラグラフ446で連中の持ち物を改めて調べるのですが、ホビット「おもちゃのように小さな剣を持っていた」と書かれてあって、矛盾を感じたりすることも。前述の「なんの武器も持っておらず」は、単にモンスターの奇襲が急すぎて、腰に差したままの剣をとっさに抜いて構えることができなかった(手に持つことができなかった)と解釈すれば矛盾がありませんし。英単語で言えば、haveはしてたけど、holdはしていなかったと考えればいいでしょうか』

 

ダイアンナ「所有はしてるけど、保持はしていないということか」

 

リバT『他に、ホビットさんは他の仲間同様の保存食をしっかり持っていたようです。もしも、ホビットさんが冒険者ではなくて、戦士と魔術師の2人連れがダンジョン内で出会ったNPCと解釈するなら、保存食を持っているのがおかしいと考えられますね』

 

アスト「ザラダン・マーの言葉が真実なら、ホビットはマランハによって姿を変えられた人間(給仕長バーゴン)で、冒険者の仲間ではない。戦士と魔法使いはダンジョン内で出会ったホビットから情報を聞くために焚き火を囲んで話をしていた。保存食については、『話をしてやるから代わりに食べ物をおくれ』とホビットが言ってきたので、保存食を渡した後、と考えることもできるか」

 

リバT『ただし、ザラダンの言葉が100%の真実とも言えないわけですね。相手に罪の意識を背負わせ、自分なら救いを与えてやれると話を持ちかけるのは、マインドコントロールの一手法ですから』

 

アスト「罪悪感に付け込むやり方か。かつての仲間を殺し、貪り食った主人公はもはやモンスターとして生きていくしかない。そのモンスターに居場所を与えてやれるのは自分だけだ。自分に従えば、幸せになれる。だから、ひれ伏すがいい……というザラダンならではの論理、説得技法ってことだな」

 

ダイアンナ「実に狡猾な男だね、ザラダン・マーってのは」

 

 

ザラダン『そう、それが真相だ。おまえには充分なほうびを用意してある。が、その前にハーフオークの背負い袋をよこすんだ! 中にある箱を差し出すがいい!』

 

リバT『ここでザラダンの言葉にしたがうか否かの選択肢が出るんですね。従うと、ザラダンの副官として無能をさらしたヴァラスカ・ルーに代わって、軍の最高司令官、ガレーキープの指揮官として重用してくれるそうです』

 

ケイP『魔王ハドラーみたいに、魔軍司令に任命されるッピな。ザラダン・マーが魔界の神にして大魔王バーン様みたいな感じで』

 

リバT『細かい差異はあるでしょうが、おおむねそんなところでしょうね。ザラダンは、エルフの煙の使い方が分からないので、「理性」と「言葉」の2つについては、モンスターを使って実験した、と言っています』

 

ケイP『すると、冒険者がダンジョンに侵入して、2つの煙を入手していたのも、実はザラダンの仕込みだッピか?』

 

リバT『作者のジャクソンさんの仕込みであることは確かですが、何もかもザラダンの手のひらの上かどうかは謎ですね。例えば、モンスターさんを誘導するために、最初のダンジョンに冒険者をわざと引き入れ、2つの煙がモンスターさんに理性と言葉を身に付けさせるよう仕向けたのもザラダンなのかと言われたら、かなり怪しいものがあります。ザラダンは煙の使い方、それがどのように作用するのかを知らなかったのですから、モンスターさんが運よく、いや、運命に導かれるように、理性や言葉を習得するのを自らお膳立てを整えたと主張するのはかなり無理があります』

 

アスト「ダンジョン内に監視装置を仕掛け、モンスターの動向をチェックしていたのは事実だろうけどな。そして、放任していたのは間違いないだろう」

 

ダイアンナ「ザラダン伝記をあの書斎に置いていたのはザラダン……という可能性は大きいだろうね。あの書斎は地下研究所内におけるザラダンの私室だと思うし、そこにたまたま偶然、自らの秘密に通じる手がかりを放置しておくのは考えにくい。あれがわざと、と言われたら、まあ、それはそうかって気にはなる」

 

ケイP『だけど、お気に入りの配下のダラマスを殺させたのも、ザラダンの計画のうちなのかッピ? ダンジョン脱出後は? ザラダンはどこまでモンスターさんの動向をストーカーみたいに追跡し、どこまで仕込んだか不明だッピ』

 

アスト「鏡の向こうの書斎を探ると、『ザラダン・マーのモンスター育成観察記録』なんてのもありそうだな」

 

リバT『「今回の実験も失敗だ。モンスターは運悪く右の通路にハマりこみ、闇エルフの矢であっさり死んだ。やはり、理性のない獣じゃダメだ。物理世界の時間を巻き戻して、違う運命を観察することにする」とか、

「今度のモンスターは順調だったが、北へ進むべきところを西に進んで、言葉の煙を入手できなかった。バッドエンド確定なので、時間を巻き戻す」とか、

「おお、ダンジョンを脱出したか。素晴らしい。ダラマスを失ったことは残念だが、ハーフエルフのゾンビだからな。しかるべき儀式を行えば、また再生させることはできるだろう。それより我が創造物の方が大事。愛するモンスターちゃん、今度こそ上手くやってくれよ。ああ、どうして墓石を調べるんだ!? そんなことをすれば、ゾンビが大量発生して……ダメだこりゃ。やり直し」とか、

「ついにモンスターちゃんが我が鏡の前にやって来た。対面するのが楽しみだが、一体どう振る舞うのがいいかな? ええと、やはり息子に対する威厳と慈愛をかもし出すような顔をした方がいいのかな? よく知らんけど。とりあえず、いろいろと秘密を打ち明けて、我の全知全能、偉大さを思い知らせてやれば、感服してくれるかな? よし、その方向性で行くぞ。さあ、息子よ、今こそ鏡の奥をのぞき込め……って、どうして望遠鏡なんてのぞいてるんだ? そうじゃないだろう? ああ、ここまで来てバッドエンドかよ! 一体、何回死んだら気が済むんだ? ずっと観察している、こっちの身にもなってくれよ。ったく!」とか、

『ザラダン・マーの異次元の書斎で、このような記録を見つけたら、笑えますね』

 

ダイアンナ「そんなザラダン・マーは嫌すぎる。いくら何でも、時間を巻き戻して、別の運命や時間軸まで観察できるなんて、超越者すぎるだろう? そこまでできたら神レベルじゃないか?」

 

リバT『実は、本作をザラダン・マー視点のモンスター育成ゲームとして再構成した「シン・モンスター誕生」という作品がありまして』

 

アスト「本当か?」

 

リバT『ウソです。誰か作ってくれませんかね? そうすれば、ウソから出た誠という話にもなる』

 

ケイP『とにかく、モンスターさんがここまでやって来れたのは、全て自分の計画のうち、と言いたいんだな、このおっさんは?』

 

リバT『まあ、そういうことになりますね』

 

ケイP『だったら、グロッグ先生がカエル沼で死んだのも、お前のせいか?』

 

リバT『「グロッグ先生? 誰だ、それは?」とザラダン・マーは首を傾げます』

 

ケイP『グロッグ先生を知らないとは、語るに落ちたな。全知全能と言っても、その程度か』

 

ザラダン『い、いや、知ってるぞ。確かグログナグ・クロートゥース。あの小汚いハーフオークの若造だな。我が下から大事な「エルフの魔術の煙」を盗み出した、許されざる小童。おおかた、ドリーの母者か、あるいは道化神ロガーン辺りの差し金であろうが、あ奴が先生と呼べるような輩か? ハーフオークのグロッグ。しょせんは記憶するにも値せぬ小物よ。

『それよりも、よくぞ奴のところから大事な煙を取り返し、我が手元に届けてくれた。お前がそういう役割を果たしてくれたことで、運命は我らを巡り合わせ、分かち難く結びつけたと言えよう。さあ、今こそ運命のピースを完成させるために、我にハーフオークの遺産を差し出すのだ。それこそがお前を導く大いなる運命!』

 

ケイP『確かに、オラを導く運命ってものはあるのかもしれないッピ。お前が少なからず、他人の運命を支配し、干渉する秘術を持っているのも事実だろう。しかし、それができるのはお前だけじゃないのも明らかになった。ドリー三姉妹に、ロガーン神か。他にも、女神リーブラや、多くの神々がこの広い世界にはあって、それらに比べると、お前もしょせんは小物。オラやグロッグ先生と何ら変わらぬ世界の住人だ。いちいち、他人を見下しているんじゃないぞ、こらァッ!』

 

ザラダン『卑小な創造物の分際で、この我に逆らうと言うのか? ハーフオークごときと、偉大な我を比べて何ら変わらぬとは、何とも愚かしいことを言う。その能力を優秀と評価したが、見識においてはまだまだのようだな。こういう力任せのやり方はバルサス・ダイアみたいで好かんのだが、物事の道理をわきまえぬ未熟者が相手なら、きちんとしつけるのも指導者の務め。造り主に逆らうのならば、地獄を見せてやろう。これでもくらえッ!』

 

リバT『そう言って、ザラダン・マーの唱えた呪文の効果で、全身の関節があらぬ方向にねじ曲がり、耐え難い激痛を受けて涙を流して許しを請うモンスターさん。観念して、偉大な創造主の軍門に屈し、支配を受け入れる……という展開をザラダンさんは想定していたのですが、「ペチャクチャ獣のところでエルフの粉を浴びたか?」の選択肢が出るんですね』

 

ダイアンナ「ここで浴びていなければ、『次のプレイでは、ペチャクチャ獣のところをもっと調べよう』って考えるわけだね。一応、再挑戦のヒントをくれている、と」

 

リバT『で、浴びていれば、呪文が効果を発揮せず、驚いたザラダンは少し考えて、「そうか。ハニカスがエルフの粉をまだ封じていなかったのか! あの役立たずめ」と罵ります。ここでザラダンの全てお見通し、という顔が崩れるわけですね。モンスターの監視をしていたザラダンにも見えていないものがあったということで』

 

 

ザラダン『ところで、おまえは何が不満なんだ? 我に仕えさえすれば、一生遊んで暮らせるだけの富を約束するぞ。どうだ?』

 

ケイP『ここで、ホビットの肉を提供する、と言わなかったのが、ザラダン・マーの失策だッピ。まだ、訓練所のサグラフ隊長の方が、モンスターさんの欲しいものを即座に汲みとって、上手く誘いかけてくれたのに』

 

リバT『ザラダンさんは、別に食通ではないので、食べ物で人を釣るというストレートな発想が思い浮かばないんでしょうね』

 

ケイP『つまり、相手の欲しいもの(ホビットの肉など)や、価値観(グロッグ先生への敬意など)を理解できないと、適切な説得ができないわけだッピな』

 

リバT『モンスターさんのストーカーなのにも関わらず、相手の嗜好や価値観を踏まえることができない独り善がりな態度こそが、誘惑者としてのマーの限界なのでしょう。そもそも、力の信奉者で野心家を惹きつけるカリスマや、利得の提供はできるのでしょうが、恩義とか友情とか信頼関係とは無縁で、有能か無能かで人を峻別し、使えないと判断した人間は即座に切り捨て、自らは表舞台に出て来ずに策謀だけで人を操ろうとするブラック企業の経営者……に人望が集まるでしょうか?』

 

アスト「まだ、バルサスの方が武人としての誇りを感じたな」

 

リバT『ザラダンの関心は、物質世界ではなくて、魔界での自分の立ち位置に注目しすぎて、物質世界の営みというものを過小評価している嫌いがあります。その辺の足りない人材スカウトの才能を持った補佐役が、副官のヴァラスカ・ルーだったのですが、そういう腹心すら「使えないから切り捨てる」と言い出す辺り、人間関係の軽視という点で、組織の構築はできても維持はできない人柄だったのではないでしょうか』

 

アスト「自分にできない仕事を代わりにしてくれる人間を大事にするという姿勢で、他人の心情を思いやることができれば良かったのにな」

 

リバT『まあ、そういう立派な人間なら、倒そうって気にはならないので、悪の首領はいかにもな悪役らしいキャラ付けでいいのだと思いますけどね。ただ、せっかく作り上げた組織の構築があっさり瓦解するようなトップの器の狭さが、物語を現実視点で見たときには残念に映るだけで』

 

ダイアンナ「で、副官のヴァラスカ・ルーは、本作では登場しないんだね」

 

リバT『ザラダンさんのセリフだけで、「ガレーキープを使って空から探索しても、今だにスティトル・ウォードを見つけられず、ましてや主人公の侵入を許した時点で無能だ」と切り捨てられた人物。しかし、じっさいは結構優秀であることが、小説「トロール牙峠戦争」なんかでは描写されています。もっとも、ザラダンは分かりやすい強さのサグラフの方を信頼していたようですが。ヴァラスカ・ルーは有能すぎて、ザラダンにも扱いきれないほど独断専行の癖があり、多少とも煙たがられていたとか、忠誠心を疑われていた可能性すらありますね』

 

アスト「猜疑心の強すぎるトップの下では、扱いにくい副官ということか」

 

リバT『ゲームブックの中では、無能と切り捨てられた副官で、出番すらない人物でしたが、小説だと優秀な人材スカウトであり、スパイ活動が得意で、ガレーキープの船長を任され、結構、大活躍していて、印象が大きく変わりますよ。ただ、その最期は呆気ないものでしたが』

 

ダイアンナ「どんな死に方だ?」

 

リバT『ガレーキープに侵入した勇者チャッダ・ダークメインの投げた魔法の短剣が、心臓に突き刺さってあっさり絶命。まあ、ゲームブックでは割愛されたガレーキープ上の派手な大活劇は小説で補完された感じですね』

 

ダイアンナ「もう一つのザラダン・マーとの決戦か。それも読んでみたいものだね」

 

リバT『本作攻略記事が完結後に、改めて記事ネタにしてみますかね?』

 

 

ケイP『では、そろそろゲームブックでの最後の決着をつけるッピ。いい加減、ザラダン・マーの姑息で人好きのしない人柄が分かったので、オラが説得されるはずがなく、さっさと始末したいと思うッピ。おもむろに隠し持っていた「水晶の棍棒(333)」を取り出すッピよ。ザラダンに見せつけて、これ何だ? とニヤリと問いかける』

 

ザラダン『ま、まさか? そんな物まで持っていたというのか? いつの間に?』

 

ケイP『隠し扉の中までは、監視の目も届いていなかったようだな。水晶の棍棒に刻まれたキーナンバー333番に28を加えたパラグラフに向かうッピよ』

 

ザラダン『ま、まあ、そう性急に事を荒立てなくてもいいじゃないか。落ち着いて、我々の将来について話し合おう。悪いようには決してしないから……』

 

ケイP『もう、お前は許されざる悪いことをいっぱい仕出かして来た。罪状その1、船の乗組員やグロッグ先生など、オラの多くの仲間たちを見下し、嘲り、彼らの誇りや名誉を踏みにじった。その腐った性根は叩き潰すに値する』

 

ザラダン『死んで行った者の名誉だと? そんな物に何の価値がある? それよりも、我らの輝かしい未来だ。君と我が手を組めば、このアランシアに怖いものはなくなる。アランシア全土を征服したあかつきには、西アランシアを君に差し上げようではないか』

 

ケイP『罪状その2、我が愛船ガレーキープに託された空への憧れ、自由な夢とロマン、輝ける希望の翼を、恐怖と破壊の悪夢に塗り替えた。この船は、お前の醜い征服の野心の道具では決してない!』

 

ザラダン『では、何のために、この地に来たのだ?』

 

ケイP『この広がる空の彼方に浮かぶと言われる伝説の王国パンガリア。その名を聞いたことはあるか?』

 

ザラダン『何だ、その名は? 初めて聞く名だ』

 

ケイP『博識を誇ってそうな魔術師だから、もしやと思ったが、パンガリアを知らぬとは期待外れだな。だが、これで分かった。お前の野心は我が夢にとって障害でしかなく、お前は光り輝く空を汚した。お前と共に進む先に、輝かしい未来は見出せない。お前に、冒険者のロマンの何たるかは理解できまい』

 

ザラダン『パンガリアなどという夢想妄想の類にうつつを抜かすとは、ガレーキープの元船長とは、とんだ空想癖の持ち主だったようだな』

 

ケイP『貴様ごときに理解してもらおうとは思わないよ。しかし、その時が来れば、幻のパンガリアがいつか我が前に姿を見せる時も来よう。そのためにも、ガレーキープは我が手に返してもらおう』

ザラダン『貴様、記憶を取り戻したのか?』

 

ケイP『そう、その通り。我が名はハヴォック。空の海賊スカイレイダーとも、紺碧の破壊者とも呼ばれてきたが、自由と誇りを胸に、いつかなくした夢を追い求めて天翔ける漢、キャプテン・ハヴォック!……と自己紹介するのは今回が初めてだな、ザラダン・マーよ』

 

ザラダン『キャプテン・ハヴォック。そうか、それが貴様の名か。東方からの来訪者よ』

 

ケイP『そして、別れの時だ。お前は我の命を奪う代わりに、マランハというおぞましい慈悲を掛けてくれたが、お返しにこちらからもお前にふさわしい慈悲で報いてやろう』

 

ザラダン『や、やめろ! わたしを殺したら、おまえは一生その姿のままだぞ! そんな化け物の姿で暮らして行くつもりか? おまえは、おまえの同族である人間に憎まれ、嫌われ、狩りたてられることになるぞ!』

 

ケイP『罪状その3、その原因を作ったのはお前だ、ザラダン・マー! そして、我は雪辱のあの日より誓ったのだ。お前に必ず復讐してやる、と。今こそ、それを果たすとき。この世界にお前の居場所はない。地獄へ引きこもって、一生出て来るな。お前にかける慈悲ーーそれは無だ!』

 

 モンスターの振り下ろした水晶の棍棒が、次元の門である鏡を粉砕した。

 粉々になったガラスの欠片が、水晶とともに虹色のきらめきを放って足元に降り注ぐ。

 復讐は為された。

 これで、死霊術師は二度とこの世に戻ってこれない。

 一つの物語が終わった。

 

新たな航海の幕開け

 

 

リバT『記憶を取り戻したモンスターさん、改めキャプテン・ハヴォックさんのロールプレイ、お疲れさまでした』

 

ケイP『ふう、話し口調をシリアスムード一色で貫き通すのは大変だったッピよ』

 

アスト「ハヴォックって名前は、『モンスター誕生』の原題から来ているんだよな」

 

ケイP『それと、有名宇宙海賊の名前をリンクさせて、キャライメージを固めたッピよ』

 

ダイアンナ「それで、パンガリアって何?」

 

ケイP『未訳FF69巻「嵐のクリスタル」(2020)にて初登場した、アランシアとクールの間に位置する空中王国だッピ。来年に翻訳されることを期待して、ネタ的につなげてみたッピよ。キャプテン・ハヴォックさんは伝説のパンガリアの噂を聞いて、アルカディア号と名付けたガレーキープを駆って、果てしない空の探索行に赴いた途上で、ザラダン・マーの急襲に見舞われたというオリジナル設定を、急遽、考えたッピ』

 

アスト「それで、この後、どうなるんだ?」

 

リバT『ザラダン・マーの魔力の影響が絶たれたので、ゲームブック本編どおり、キャプテンさんは元の人間の姿を取り戻します』

 

ケイP『ただし、マランハの副作用は残っていて、怒りが頂点に達すると、ハルクのようにモンスターに変身するッピよ』

 

ダイアンナ「それはまあ、完全に元に戻るわけはないだろうけど、上手く変身をコントロールできればいいよね」

 

アスト「それよりも、ザラダン・マー亡き後、ガレーキープをどう奪い返して、パンガリア探索の旅を続けるかが課題だな」

 

ケイP『やはり、「エルフの魔術の煙」の力を発動させるッピよ。ザラダン・マーが入手して解明したがっていた魔術なのだから、さぞかし強力な力が宿るに違いないッピ。それと、キャプテン・ハヴォック本来の空賊パワーと、船長としてのカリスマ、さらには漢のロマンがあれば、たった一人で戦っても、命を捨てて生きられるッピ』

 

アスト「ふわっとした主張だが、少なくとも、天候の魔術師ニンビカスと、キンメル・ボーンは説得できるかもしれないな」

 

ダイアンナ「ニンビカスはともかく、キンメル・ボーンをどうやって説得するんだい?」

 

アスト「海賊と言えば、ドクロのマーク。そして、ドクロを重宝するなら、キンメル・ボーンが賛同することだって考えられる」

 

リバT『そんな単純なことでいいのかどうかは分かりませんが、吸血オークや業火の主よりは、説得しやすそうですね』

 

ケイP『業火の主を倒す方法を考えたッピ』

 

アスト「どうするんだ?」

 

ケイP『水晶の棍棒の一撃必殺効果を、もう一度使えるようにするッピ。例え、本作最強能力の化け物であっても、水晶の棍棒だったら絶対に倒せるッピ』

 

リバT『それでもバッドエンドにさせられるのが業火の主なんですが、もしかすると、この悪魔を現世につなぎ止めているのも、ザラダン・マーの魔力かもしれないので、彼が封じられた後だと、状況が変わる可能性も十分考えられますね』

 

ケイP『あとは、ヴァラスカ・ルーとは上手く交渉で味方に引き込みたいッピよ』

 

アスト「何でだよ?」

 

ケイP『マーの軍隊を実質的に運営していたのは、地獄に引きこもっていたザラダンではなくて、ヴァラスカ・ルーとサグラフ隊長だからッピ。トップが変わって、企業方針が変わっても、新社長のヴィジョンに賛同してくれるなら、マーの軍隊は改編されて自由とロマンの空賊ハヴォック・パイレーツとして、お宝を求める旅に出るッピよ』

 

ダイアンナ「軍の構成員はゴブリンとか、そういう連中だぞ。大丈夫なのか?」

 

リバT『実のところ、パンガリアではゴブリンが悪役じゃなくて、洗練された独特のゴブリン文明があるとの噂を聞きます。もしかすると、ゴブリン族にとっての理想郷が描かれているのかもしれません』

 

ダイアンナ「すると、パンガリアを目指すキャプテン・ハヴォックの新たな旅立ちが始まるって形で、当ブログでの「モンスター誕生」は大団円ってことだね」

 

リバT『あとは年末の「サラモニスの秘密」や、来年の翻訳希望の「嵐のクリスタル」に上手くつながればよろしいですね』

(当記事 完)