ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「モンスター誕生」攻略感想(10)

130の標識

 

リバT『予言者ロシーナ・ドリーさんから、スカル藻の情報を得たモンスターさんは、同行者のグロッグさんといっしょに、北西のカエル沼(ブ・フォン・フェン)に向かいます』

 

ダイアンナ「ところで、ブ・フォン・フェンって何語なんだい? どうも英語っぽく聞こえないんだが」

 

リバT『Bufoというのが、ヒキガエルの学名らしくて、fenが英語で沼地を表すみたいなので、分かりにくいですが、一応、カエル沼と訳すことができます。しかし、新訳ではカエル沼にブ・フォン・フェンというルビが振られていて、その二つが同じ場所を示すことが強調されています。また、130番の標識が、よじれ樫の森の244番標識と同様、プレイヤーフレンドリーに修正されています』

 

ケイP『どういうことだッピ?』

 

リバT『旧訳では、南がドリー、北西がコーヴン、北東がブ・フォン・フェンとなっていて、標識の表示が実際の地形とは時計回りに120度ズレていて、プレイヤーを迷わせるように仕掛けられているんですね。地図では、コーヴンが南で、ドリーが北に表記されているので、それと比べれば標識の向きが正確じゃないことは気づけるはず……と作者のジャクソンは考えたのでしょうが、新訳ではそういう引っ掛けはゲームとしてフェアじゃないと考えたのか、あるいはスカラスティック社の原書がすでに変えられているのか、正しく北東がドリー、南がコーヴン、そして北西が目的地のカエル沼(ブ・フォン・フェン)と変更されています』

 

アスト「つまり、オレたちは当初の予定どおり北西(190)に進めばいいんだな」

 

リバT『ええ。北東(134)に進んでしまえば、ドリーの村に引きずり込まれて脱出不能ですから』

 

カエル沼の探索(さよならグロッグ)

 

リバT『カエル沼に侵入すると、パラグラフは307番です』

 

アスト「末尾が7だと、52を引いてグロッグ先生にお伺いを立てられるんだよな。255番を見るぜ」

 

グロッグ『待て! 水かきの足跡が見えるだろう? どの足跡もまん中を避けて通っているぞ。何か危険があるようだ。足跡のあるあたりを歩いた方が身のためだぜ』

 

リバT『なお、307番からは北(132)と北東(163)に進めますが、255番からは北(267)と北東(114)に進めます』

 

ダイアンナ「なるほど。進めるパラグラフの数字が変わったんだね」

 

アスト「それだけじゃない。末尾7の数字は、グロッグ先生が導いてくれるから、北へ進めと示唆してくれてもいるんだ」

 

リバT『その通りです。目的のスカル藻を手に入れるには、北へ進まないといけません。グロッグ先生は危険を回避するだけでなく、さりげなく正解の道筋まで暗示してくれているのです』

 

ケイP『やるなあ、グロッグ先生。よし、こうなったらグロッグ先生の導きのままに生きるッピよ』

 

リバT『なお、グロッグ先生がいなければ、鈍感なモンスターさんは沼地の泥にズボッと沈み込んで、ロープがなければバッドエンドを迎えます』

 

ダイアンナ「ロープがあれば?」

 

リバT『バッドエンドは免れますが、ロープは突然現れたカエル人に盗まれてしまいます。ともあれ、北へ行くと(267)、周囲からゲロゲロという声が聞こえますが、川べりに咲く花畑にも気づきます。また、一体のカエル人が姿を現したかと思うと、慌てて逃げて行きますが?』

 

ケイP『後を追いかけるッピ』

 

アスト「ちょっと待て。グロッグ先生にお伺いを立てるんだ」

 

ケイP『そうだッピね。グロッグ先生、迷えるモンスターを導いてください。パラグラフ215番へ進むッピよ』

 

グロッグ『あんたがあのカエル野郎を追って行くのは自由だが、おれはごめんだな。こんな危険なところからは、すぐに離れる方がいい』

 

ケイP『分かったッピ。すぐに立ち去るッピ』

 

ダイアンナ「ちょっと待った。立ち去る前に、花畑を調べておかないのか?」

 

ケイP『ケピッ?』

 

ダイアンナ「ここには、スカル藻を探しに来たんじゃないのか?」

 

ケイP『しかし、グロッグ先生はスカル藻のことなんて何もおっしゃっていなくて……』

 

リバT『そもそも、グロッグさんはモンスターさんからスカル藻の話を何も聞かされていません。何かを探しているという話は道中で聞き取ったのですが、それが何なのかまでは分かっていないので、グロッグさんの導きも絶対ではないのです。思考停止すると、永遠にカエル沼から出られませんよ』

 

ケイP『では、クイーンのお言葉に従い、花畑を調べるッピ』

 

リバT『目に付いたのは、紫の花と、青い茎の草と、赤い葉の草の3種ですね。どれを選びますか?』

 

ケイP『全部ッピ』

 

リバT『いいでしょう』

 

アスト「って、いいのかよ? 正解は青い茎だって、予言者のロシーナ婆さんが教えてくれたろう?」

 

リバT『まあ、正解は正解として、攻略記事だから他の草花も気になるので、一通りのチェックはしておきましょう。なお、これらの草花には番号が付いています。青のスカル藻は49紫の花は27赤い葉は81という数字を記録したうえで、ついに運命のバトルの時がやって来ました。カエル人の聖地に侵入した者を、カエル人は許しません。三叉鉾を持ったモンスターさん並みに巨大なカエルが威嚇の声を上げ、鉾の先端をある一点に示しますね。どうやら、そこに進めという合図みたいです』

 

ケイP『グロッグ先生はどうしてるッピか?』

 

リバT『今のパラグラフは315番。7が末尾じゃないので、グロッグさんの姿は見当たりません』

 

ケイP『そんなあ。姿をくらましたグロッグ先生に絶望し、不意に忘れかけていた野生が目覚めるッピ。相手の合図なんて無視して、やみくもに突進するッピ』

 

リバT『相手の誘導に乗せられると、罠にハマって底なし沼エンドだったのですが、突進して来たならやむを得ません。バトルです。カエル人の技術と体力はともに9。では、勝負しましょう』

 

 3ラウンドめにゾロ目が出て、モンスターの拳がカエル人のドテッ腹を貫いた。しかし……

 

リバT『パラグラフは287番。一族屈強の戦士を倒したモンスターさんですが、周囲に集まってきたカエル人は怯むことなく、集団でモンスターさんに襲いかかります。数の猛威には抗い難く、バッドエンドとなりました』

 

ケイP『敵を倒したのに、バッドエンドだッピか?』

 

リバT『はい。パラグラフ287番はバッドエンドです。あなた一人ではどうしようもありません』

 

ケイP『理不尽だッピ』

 

アスト「ケイP、あきらめるな。お前は一人じゃない」

 

ケイP『一人じゃないって言ったって、グロッグ先生は姿を消して……って、そうか、今の末尾は7。グロッグ先生を呼べるッピ。セブン、セブン、セブンとリズムを鳴らしながら、ミラクルマンのナンバーを高らかに呼び上げるッピ。287ー52は235番!』

 

リバT『正解です。モンスターさんが戦っている間に、グロッグさんは忍び足でカエル人たちの背後に回っていました。そして、リーダーに当たりをつけて、奇襲攻撃を仕掛けようとしたその時、1体のカエル人がグロッグめがけて鉾を投げつけました』

 

ケイP『グロッグ先生!』

 

リバT『鉾はハーフオークの首筋に命中し、即死させました。しかし、その勢いはそれだけに止まらず、グロッグさんを貫いて、カエル人のリーダーまでも串刺しにしたのです。リーダーの突然の死に、カエル人たちも大混乱。相棒の死に激怒したモンスターさんは鬼神のような勢いで、グロッグさんの遺体と荷物を回収し、辛くも沼地を脱出することに成功したのでした』

 

グロッグの遺産(三姉妹ふたたび)

 

ケイP『分かっていたとは言え、グロッグ先生の犠牲にさめざめ涙を流すッピ』

 

リバT『その日、モンスターさんは初めて親しい友の死というものを体験しました。記憶の奥底に封じられた仲間、戦友たちとの出会いと別れの感覚がフラッシュバックとして断片的に蘇ります。そして、地上に出て最初に見た景色の一つ、死者を埋葬する墓標というものを思い起こし、亡きグロッグさんのために不器用ながらも穴を掘り、亡骸をそっと横たえて土をかぶせ、辺りの石を積み上げて簡素な墓標らしきものをこしらえると、拾ってきたわずかばかりの花を手向けに捧げることで哀悼の意を捧げることを……人間的な儀礼を失われた記憶の底から思いつきました』

 

アスト「そんな記述がゲームにはあるのか?」

 

リバT『いいえ。原作の文章はグロッグの死について淡々としたものです。こういう情緒的な部分は、ゲームをするプレイヤーさんが脳内補完するべきところだと考えます。何しろ、主人公はきみなのですから、きみの感情的な描写はきみが、そしてゲームの参加者が後から二次創作的に付け加えても、それこそが物語を深く味わうということではないでしょうか』

 

ダイアンナ「ゲームでは、主人公が犠牲になるバッドエンドを、代わりにグロッグというNPCが犠牲になって、主人公の物語を後につないでくれた。そのイベントをどう受け止めるかはプレイヤー次第ってことか」

 

リバT『サイ男29番兵さんの犠牲もそうですが、FFゲームブックNPCの死について、割とあっさりした筆致になりがちですね。これは演出過多な近年のコンピューターゲームに比べて、まだ淡々としたウィザードリィなどが全盛だった時期の作品というのもありますが、分岐小説だから確定イベント以外の出来事は後にあまり引きずらないとか、プレイヤーキャラの内面の感情までは書き手が決めつけすぎないとか、作品スタイルの問題もあります。あるいは、生死については日常茶飯事だから、デッドリーな冒険での悲劇を感傷を控えめにハードボイルドに淡々と語る世界観がタイタン、もしくはアランシアらしさと受け止めることもできます』

 

ケイP『だけど、本記事は攻略感想だッピ。グロッグ先生の死について、プレイヤーがどう感じたかを書かずして、事実のみを淡々と記録してもつまらないッピ。プレイヤーとしては、自分の代わりに犠牲になってくれた彼の死に感謝しつつ、わずかな登場シーンにもかかわらず、強烈な印象を残したキャラ描写について、ジャクソンさんの演出の見事さを称えたいと思うッピ』

 

リバT『お見事なのは、グロッグさんが主人公モンスターさんをゲーム的に有能に導いてくれるとともに(これが無能だったり、迷惑をかけられてばかりだったら、死んで当然と思うプレイヤーがいるかもしれません。ミニマイトのジャンについては、またいずれ考えたく)、プレイヤーキャラの分身として、人間から差別される半分モンスターの異種族ながら、強かに生きて、適度に義理堅く、適度に好奇心旺盛で、適度に出しゃばらず、プレイヤーの能動的なアクション(パラグラフジャンプの操作)に対してのみ反応して、仕事する名NPCの鑑というキャラ造形、ゲーム上の仕掛けなんですね』

 

アスト「褒めすぎじゃないか?」

 

リバT『お世話になったキャラを褒めるのは当然です。そして、グロッグさんの登場から、このゲームはするすると運命の糸を手繰り寄せるかのように、キレイに解けていくのですから、正解ルートの導き手の一人として機能している。大男戦士の仕事を補佐する小男従者、狡猾な盗賊風の介添役としてのヒロイック・ファンタジーの人気脇役の属性も備えている。戦うことしかできない主人公を補う忍びキャラとしては、「危難の港」に登場する名ヒロインのハカサン嬢に匹敵する立ち位置です』

 

アスト「そう言えばそうか。まあ、生き残れなかったという意味では、『火吹山ふたたび』のズート・ジンマーの立ち位置だと思ったが」

 

リバT『ともあれ、物語を面白くする重要要素の一つは、キャラの絡みですからね。2人称スタイルのゲームブックで主人公に対するキャラの絡みをどう描くかは、昔から大きな課題でしたが、本作は主人公が無口でコミュニケーションが不得手のモンスターである分、周囲のキャラの反応も普段とは異なる独自性を持っていて、その中で冒険仲間として一つの探索を共にした同行者の存在は、その死も含めて主人公の人間性回帰の一つの起因にもなったと考えますよ』

 

ケイP『そうだッピな。人間とは、社会的な生き物。社会との付き合い、交流関係で自我を育んでいくもの。モンスターさんも独りっきりだと、アイデンティティーが確立できないまま終わっていたかもしれないッピ』

 

リバT『そして、グロッグさんが遺したもの。それは彼の背負い袋に入っていた幸運の薬と、謎の木箱。この木箱の正体は、ザラダン・マーとの対面時に判明するのですが、その活用については宙ぶらりんに終わったのが、本作の未完成っぽさ(後の想像はプレイヤーに任せる)で残念にも感じつつ、でもゲームだから未完成キットを自分で好きに補完完成させるような想像力の誘発作品としての完成度の高さもあるわけで』

 

アスト「グロッグは散ったけど、遺したものは非常に重要だってことだな」

 

 

リバT『その夜、グロッグさんの埋葬と、遺品の確認を終えて、処理しきれない感情に困惑と言葉にならない懐旧の念を覚えながら、疲れ果てて眠るモンスターさんに、三姉妹の幻影が悪夢のようにエモ感情を引き起こすのです』

 

アスト「悪夢のようなエモ感情……って何だよ? エモいと言えば、グロッグさんだろう?」

 

リバT『それは否定しませんが、ホラー映画のゾクゾクする感覚をエモいと称するケースもあるようです。エモいは、若者言葉のヤバいに通じる意味合いがあると考えますね。ヤバいは悪い意味がほめ言葉にも転化したケースですが、エモいは逆に良い感情で使われるのが普通だったのに、何でもかんでもエモくするという流行り言葉特有の拡大解釈、派生が嵩じて、従来ならキモいに分類されるものまで、「だけど刺激的で面白いよね」という意味合いで「エモい」と言われたりします。「キモかわいい」と同じような意味合いで、「グロエモい」という言葉も存在するそうで』

 

ダイアンナ「グロッグさん、エモい……の略じゃないんだね」

 

リバT『たぶん、そんな意味で使うFFファンの若者は、限りなく少ないと思いますよ。グロッグさんがエモいのは同意しますが、グロエモの後継者はドリーの三姉妹でしょう。何とかカエル沼を脱出できたら、「スカル藻よこせ」と迫ってきます。グロエモ三姉妹に対して、スカル藻を渡せなければ、もう一度カエル沼に飛ばされてしまいます』

 

ケイP『ケピッ!? グロッグ先生亡き後、もう一度カエル沼に送り出されたら……死ねと申すッピか!?』

 

リバT『事実上の処刑宣告ですね。さあ、スカル藻ナンバーに92を加えてください』

 

ケイP『49+92は141だッピ』

 

リバT『「シュカル藻じゃ! 任務を達しぇいすおった!」とグロエモ老婆たちは大喜び。モンスターさんを神に選ばれし者、試練に合格した運命の戦士として称え、今こそ真実を語ってくれます。その内容は以下のとおり』

 

●主人公はザラダン・マーが創造した怪物で、息子のようなもの。三姉妹にとってザラダン・マーが息子であるのと同様に。

●ザラダン・マーが宇宙の摂理を脅かすように、邪悪さを肥大させている今、何としても倒さねばならない。しかし、ザラダンは三姉妹の意図を見抜いており、警戒を怠らないために、三姉妹は手が出せない。

●ザラダンを倒すには、神に選ばれた戦士の、運命をくつがえす力が必要。そのために選ばれた神の代行戦士が主人公である。

●ザラダンは今、飛空艇ガレーキープを拠点としている。ガレーキープに侵入する方法は、よじれ樫の森に住む白髪の森エルフ、ダーガ・ウィーズルタングが知っている。しかし、彼の言葉はまやかしのウソが散りばめられていて、素直に信用してはならない。

●ダーガに真実を喋らせるために〈真実の指輪〉を託す。指輪の力を使うには、パラグラフ番号から50を引けばいい。ダーガの隠した真実が判明するだろう。

●ダーガに会うには、オフィディオタウルスに導いてもらうといい。オフィディオタウルスのいるところまでは、送ってやろう。

●さらに、体力点と運点を原点まで回復してやろう。三姉妹の直接の助力はここまでだが、使命を果たすことを願っておる。

 

ダイアンナ「なるほど。真実の指輪がなければ、森で会ったエルフから正しい情報が手に入らない、と。これもまた巧妙な仕掛けだな」

 

リバT『いろいろな仕掛けがリンクしていて、話が上手くつながって解きほどけていくドミノ倒しのような爽快感を覚えた、とはグランドマスター談。そして正解ルートを見つけてゲームクリアした後で、外れルートを回ってみても、改めて濃密なストーリー体験ができて、噛めば噛むほど美味しい作品が本作です。それだけに、完全な攻略記事を作るのは大変だろうなあ、と思っていたそうですが』

 

アスト「で、完全版と銘打つからには、スカル藻以外の選択肢もチェックする、と」

 

リバT『今だと、こういうサプリメントもありますからね』

リバT『外れルートで名前の上がった植物も含めて、多彩な草木の説明が設定されている丁寧さが、作品世界の豊かさにも通じる、と。それこそ、どうせ外れルートだから雑に処理してもいいだろうと、書き割りのような薄っぺらさじゃなくて(それはそれで省力化という実用テクニックの一環でもありますが)、細部に神が宿るとでも言うべき創作のこだわり様が見受けられるのが、ジャクソンやリビングストンのマイスターっぽさと言えましょう』

 

アスト「職人芸というのは、腕の確かさだけでなく、隅々まで行き届いた丁寧な仕事ぶりも含むからな。もちろん、ゲームなんだから、実際にプレイしての楽しさを自分でも思い描いた上で、試しプレイぐらいはしてバランスをとるのが王道か、と」

 

リバT『で、外れ植物の内容です』

 

紫の花(27+92=119番):魚マネキ(フィッシュベイト・フラワー)

赤い葉(81+92=173番):清め草(ピュリティ・プラント)。清浄油の材料。

 

リバT『タイタン植物図鑑をチェックすれば、もっと詳しい効用なんかも分かるかもしれませんが、割愛します。とにかく、スカル藻以外の草花を差し出すと、植物知識のない素人なモンスターさんを「そんなことも知らんのか、使えない奴。運命に見放された奴にもう用はない」とばかりに非情にも見捨てて去る辺り、やはりザラダン・マーの親だなあ、と思ったりもしますね』

 

アスト「ザラダン・マーも、無能と判断した者に対しては、冷たく切り捨てる面があるからなあ」

 

ケイP『当たりと外れの対応の差が露骨な分は、思いきり飴と鞭だッピ』

 

リバT『実際のところ、神に選ばれた戦士(プレイヤーキャラ)は、運命をくつがえす力を持っていますからね(リセットとか、セーブ&ロードとか、選択ミスを見なかったことにとか、パラグラフ解析による運命の可能性の網羅とかetc.)。失敗からのリカバリー能力こそが、主人公の特権というわけで』

 

ケイP『そんなわけで、もう一度、オフィディオタウルスから白髪森エルフの嘘つき野郎に会いに行くッピ』

 

ガレーキープへの道(嘘つきエルフの秘密)

 

リバT『オフィディオタウルスから、森エルフのホワイトリーフ救出までの経緯は、この記事の「オフィディオタウルスと森エルフ」の項目を参照ですね』

ケイP『パラグラフ423番でオフィディオタウルスに上手く乗って(出目7で成功)、山賊を倒して、自称イーセル・アメイン村のホワイトリーフを助けた後がパラグラフ448だッピな。ここで〈真実の指輪〉を突きつけて、398番へ行くと正体を明かしてくれるッピか?』

 

リバT『いいえ。50を引くのは「スティトル・ウォード(58)」「ガレーキープ(269)」「彼自身(167)」の各質問パラグラフの数字です。ここでは、質問が一つしかできないので、攻略のためには「ガレーキープについて質問して、269から219に進む」しか当たりがないのですが、彼から得られる情報は全てチェックしたいのがプレイヤー心情というもの。物語を深く楽しむのと、ゲームを最後までクリアするのは、選択肢の面で時に矛盾することもあるわけですが、プレイヤーキャラは神に選ばれた戦士として、時に運命をくつがえす力を持つものですからね。提示される真実を全て突き詰めるのもあり。その中で、正解ルートを選択することがプレイヤーの王道と考えます』

 

アスト「好奇心や探究心は、冒険者やゲーマーたるものの天与の才だからな。そこを否定するつもりは、作り手にもないだろう」

 

ダイアンナ「むしろ、自分の作品の隅から隅まで探し尽くして、目いっぱい楽しんで欲しいものじゃないか? 作者としては」

 

リバT『そのために、読者さんの好奇心を刺激する選択肢を用意するものですね。「この場面で、こういう選択肢を選んだら、どうなるんだろう?」とワクワクドキドキしながらページをめくるのが、プレイヤーのピュアな感情。そこに水を差すような結果か、期待に応えて面白い展開を描いて見せるか、不幸な結果でもさもあろうと納得できる説得力を示せるか、理不尽だけど面白いからいいかと思わせることができるか、そりゃ有り得んだろうと呆れさせるか、まあ、それこそが作品評価にもつながる、と』

 

ケイP『選択の楽しさこそが、ゲームブックの醍醐味だッピね』

 

リバT『それと、情報収集パラグラフの場合は、情報の価値が重要です。ホワイトリーフ、本名ダーガ・ウィーズルタングが語る真実の情報は、以下の通り』

 

●スティトル・ウォード(58→8)

 森エルフの集落スティトル・ウォードが地下にあると言ったな。それはウソだ。

 考えてみろよ。森エルフが地下に住むと思うかい? 闇エルフじゃないんだからさ。真実は、樹の上に作られているのさ。探しても無駄だよ。魔法の煙で安全に守られているし、おかしな奴はすぐに見破られるようになっている。部外者には絶対に見つかるはずがない。

 

●ガレーキープ(269→219)

 空の要塞ガレーキープが西の地点に着地すると言ったな。それもウソだ。

 どういう仕組みか知らないけど、絶対に着陸せずに空中に滞在し続けているんだ。

 そんな船に乗り込む方法はたった2つ。

 1つは食料調達の罠が森の各所に仕掛けられているので、それに引っ掛かって食料として乗り込むことができる。

 もう1つはサグラフの訓練所に行って、乗組員として雇ってもらうことだね。

 

 ところで、きみはザラダン・マーに会いに行きたいようだな。ザラダン・マーの部屋には、あるマークが付いているらしい。そのマークは「火と氷の間にある青いもの」に関係しているらしいが、まずはガレーキープに上手く侵入することから始めないとね。

 

●彼自身(167→117)

 わたしの家族が恵まれた身の上だと話したな。それもウソだ。本当であれば、どれほど良かったことか。真実は残酷で、虚構の方が幸せに思えてくる。

 言いたくない話なんだが、わたしは故郷スティトル・ウォードを追放された身さ。先祖の因縁もあるが、軽々しく人を信じた自分の無垢さが恨めしい。

 ザラダン・マーの部下のサイ男くんを親友だと思いこみ、ザラダンさえ良い奴と思い違いをしていた。その感情を利用されて、わたしは罪を犯してしまったんだ。どんな罪かって? それはペラペラ吹聴するような話じゃない。これぐらいにしてくれよ……。

 

リバT『ゲームブックの地の文は、ウソを見破られたダーガが適当な言い訳をしどろもどろと並べながら、申し訳なさそうにポツリポツリ漏らすような口調ですが、ここではもう少し分かりやすく、軽い口調になるようにアレンジしました。情報の中身は変わっていません』

 

アスト「ダーガの罪については、オープニングの背景情報に記されていたんだったな。エルフの3つの煙入りフラスコを盗み出して、ザラダンに渡してしまったこと」

 

ダイアンナ「ダーガの背景事情は、プレイヤーには分かるが、キャラクターであるモンスターさんには知り得ないもの。だけど、別にそれを知らなくても、ゲームを解くこと自体はできる、と」

 

リバT『これはジャクソンさんの作家としての見事さですが、モンスターさんに見えている光景と、知り得ない情報の区別をしっかり付けたうえで、ゲームブック本編を構築している。しかし、本編で描けない要素を伏線的に切り取って、背景情報に(おそらく後から)紡ぎ上げているわけです。たとえば、スティトル・ウォードはゲームブック本編に登場する舞台ではありませんし、敵キャラの中ではザラダン・マーの副官である大物幹部ヴァラスカ・ルーですら本編では登場しない(ザラダンのセリフの中でのみ登場)。ヴァラスカ・ルーが読者の前に初登場したのは、小説の「トロール牙峠戦争」が初めてだと思われます』

 

アスト「そう言えば、ダラマス、ハニカス、サグラフはどんな奴だったか覚えているけど、ヴァラスカ・ルーってのは名前しか知らないな。戦ったことも、話した記憶もないわ」

 

リバT『背景でしか登場しない人物や要素も交えつつ、それでも背景で出てきた予言者ロシーナとか、ダーガ・ウィーズルタングがプレイ中に登場すると、パズルのピースが上手くハマったような接続感、心地よさを覚えますね。ゲームだから、知っている情報がうまく噛み合うと、プレイヤーは快を感じるわけです。手持ちの知識や推測と、新しい情報がつながって何らかの知見が得られると喜ばしい。逆に、全く手がかりや道標のない情報ばかりだと、何とか既存の知識に置き換えて理解しようとしますが、それでも珍奇な固有名詞だけで中身のない情報の垂れ流しが続くと、脳が疲れて(うんざりして)読む価値がないと判断します』

 

ダイアンナ「中身の面白さを伴わないのに、外枠だけ大風呂敷を広げてしまうと、失敗するケースってことかい?」

 

リバT『本作の場合は、ワールドガイドのタイタンと同時期に出版されたという事情もありますので、世界観とリンクした物語性豊かなゲームブックという命題があって、そこに「ソーサリー」で実績を披露済みのジャクソンさんが、「何も知らないモンスターさんが次第に広がる世界の見え方」というテーマで新たな視点を投入した。

『そして、世界の謎を背景小説と、暗号と、パラグラフジャンプによる隠された真実の公開と、いろいろな形でパズルが次第にハマっていくように構築して見せた。ジグソーパズルは、最初は断片的にしか全体像がつかめない状態ですが、ある程度、絵が見えてくると、次々とピースがハマっていく爽快感があって、本作もそういう作品です。逆に言えば、終盤は技術点とか体力点とか運点とか、そういう従来のFF戦闘ルールが枝葉のおまけのように思えてしまう点が失敗と言えなくもないですが、別にジャクソンは戦闘の面白さをアピールしているわけではないですからね』

 

アスト「情報がつながって、謎が解きほぐされていくことが面白い、と」

 

リバT『あとは、モンスター視点の作品でありがちですが、迫害される者の視点、世界の裏面について、NPCの立場でも主人公に訴えかける面がありますね。禁忌の魔法を学んで追放されたドリー三姉妹に始まり、ハーフオークのグロッグも、森エルフのダーガもみんな社会から爪弾きにされた悲哀の存在で、プレイヤーキャラ視点で共感したり、エモを感じたりする』

 

アスト「そうか? グロッグ先生はともかく、嘘つきエルフにエモは感じないが? ただの攻略上の障害にしか見えんが?」

 

リバT『彼が嘘をつくようになった背景と考え合わせるのです。親友のために良かれと思ってしたことが、部族にとっての裏切りで、そのために部族を追放されて、愛獣のオフィディオタウルスと孤高の放浪生活を続け、森の隠者的な暮らしをする毎日』

 

アスト「自分がザラダンに騙されたから、自分も人を騙すようになったってことか?」

 

ダイアンナ「何が真実で、何が嘘かにも懐疑的なキャラってことかもね」

 

ケイP『ところで、ダーガから真実を聞いたのはいいとして、結局、ガレーキープに侵入するにはどうしたらいいッピか? 食料になるのも、訓練所の兵士になるのもバッドエンド街道なので、他にどんな手があるッピか?』

 

リバT『そうですね。ガレーキープの真実を知ったパラグラフ219番にのみ、新たな番号の189番が開示されます。東の泉も、西のボロ家も先述のバッドエンドルートにつながりますので、189番だけが隠された最後の希望です』

 

ケイP『それは一体!?』

 

リバT『ダーガから話を聞いたモンスターさんは、食料調達用の茂み罠を探してみることにします。運だめしのチャンスが2回あって、どちらかに成功すれば、隠された罠を発見。ちょうど上空からガレーキープが接近してきたタイミングで、わざと罠に引っ掛かって(ただし、うまく抜け出せるようにする)、空に引き上げてもらえるようにするわけですね』

 

アスト「罠にかかったフリをして、相手のアジトに潜入するのか。昔のヒーローが時々使った手だな」

 

ダイアンナ「罠に引っ掛かるという意味では、これまでのバッドエンドと同じだろう。何が違うんだ?」

 

リバT『これまでのバッドエンドでは、モンスターさんは罠の存在に気付いていなかったのです。プレイヤーはもしかすると何度も罠に引っ掛かって、罠が当然そこにあるという意識でプレイを続けていたのかもしれませんが、モンスターさんにとっては罠に掛かってしまえば即バッドエンドなので、学習する機会が与えられません。茂みの中に罠があるというのは、ダーガから聞くまでは「気が付いたら手遅れの初見殺し」なんですね。しかし、ダーガから罠の存在を学んだことで、それを逆に利用する手立てを考えつくことができた。

『次にタイミングの問題があります。ちょうどガレーキープが上空を周回するタイミングに合わせて、うまく罠にわざと引っ掛かる作戦を敢行したのです。バッドエンドのパラグラフだと、罠に引っ掛かってガレーキープがやって来るまでに1日が経過していた。1日も逆さ吊りにされて、飲まず食わずな状態なら、消耗し過ぎて抵抗する力も失うというものでしょう』

 

ダイアンナ「なるほどね。事前に罠があるって聞けたからこそ、それを利用してガレーキープに侵入するという作戦が思いつき、そのためにタイミングを合わせることも判断できるんだ。思ったよりも知恵が回るじゃないか」

 

ケイP『これもグロッグ先生から学んだことだッピ』

 

ダイアンナ「そうなのか?」

 

リバT『ゲームブックにはそんなことは書いていませんが、盗賊風の技能を持っていそうなグロッグさんが道中のお喋りで、罠への対処の仕方を語っていた可能性は否定できません。それこそが、行間を読むということでしょう』

 

アスト「まあ、書いていないことを読みとるのは、勝手な妄想に走る危険もあるから、学問の世界では禁じ手、あるいは仮説段階で検証の余地あり、なんだが、ゲームブックを楽しむのは学問の世界ではなくて、エンタメ受容と享受の世界だからな。ケイPの中のグロッグ先生が、『偉大な忍びの師匠であり、短い付き合いでいろいろなことを教えてくれた恩人』と認識しているなら、そういう個人の主観を否定するのも無粋だと思うな」

 

リバT『とにかく、グロッグさんやドリー三姉妹、そしてダーガとつながって、いよいよガレーキープに潜入することに成功したモンスターさんです。物語は大詰めを迎え、いよいよ次回が最終回です』

 

ケイP『最後の決着を頑張るッピ』

(当記事 完)