ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

フォーゴトン・レルムの話

★魔術師とドルイドOP

 

ハイラス「ようやく、娘御の問題が一つ解決したようでござるな」

 

NOVA「ああ、ハイラスにはいろいろ心配を掛けたな。おかげで晶華から吸血成分が抜けて、これからは健全な魔法少女ライフをエンジョイできそうだ」

 

ハイラス「その物語の顛末は、こちらを参照でござる」

 

NOVA「まさか、アナザーショーカ転生のエピソードにこんなに時間と記事数を費やすとは思わなかったぜ。ハイラスとケイPマーク3にも、ここでの前回の記事を代わってもらえて助かった気分だ。感謝を表明しつつ、前回の記事でジオウのゴースト編とドライブ編がスルーされているというネタがあったが、鎧武編の後がゴースト編になることが今朝の公式サイトで発表された。すると、ドライブ編も年末に来る可能性が考えられる。何せ、泊さんの誕生日がクリスマスイブだしな。年末の劇場版と合わせて、何とか楽しむ時間を作りたいところだ」

 

ハイラス「ところで、NOVA殿が娘御の心の世界にマインドダイブしている間に、当ブログの感想メールっぽいものを受け取ったのだが」

 

NOVA「ああ、腐れ縁な人物からのメールだな。『メールでの付き合いはしない』と明言しているのにしつこいから、先程の参照記事の最後に、おまけの『返信』を付けておいた。『メールでの付き合いはしない、という内容のために、メールで返信する』のは矛盾しているからな。まあ、完全にスルーするのもストレスだし、ブログ記事として公開することは明言しているから、ブログの足しになるならという条件で、来るものは拒まず。ただし、相手のペースに巻き込まれたくはないからな。不毛なメールに時間を割くなら、その時間をブログ記事に当てたいのが本音だ」

 

ハイラス「以上が、そのメールへの返信、と考えてよいのでござるな」

 

NOVA「ああ、夏の忙しい時期に、メールでクレージーな言い寄られ方をして、正直、気持ち悪い思いをしたことなんかも愚痴りたいが、そういう文章を公開するのも読む人に悪いからな。書き残すと記事も汚れるような気もするので、割愛しておいた方がいいだろう。では気を取り直して、ここから本題に移るとしよう」

 

★壮大なフォーゴトン・レルム世界

さて、ここから地の文で記事書きします。

フォーゴトン・レルムの世界観がワールドガイドの形で公式に発表されたのは1987年。その時はAD&Dが第1版で、それ以前からサポート雑誌で少しずつ紹介されていたのが、ボックスセットでまとめられた形。
それ以降、シナリオ集や小説、コンピューターゲームの背景世界として、数多くの作品が発表されてきましたが(小説だけでも300冊以上)、日本で紹介されたのは、本当にごく一部でしかありません(小説でもせいぜい10%程度)。
よって、自分も本当に断片的なことしか知らないと前置きしておいて、記憶と一部の資料に基づいて、話をしようと思います。

まず、フォーゴトン・レルムの特徴を述べると、とにかく広くて多様な世界観という印象です。
グレイホーク市とその周辺のフラネス地域を基軸とした最初の世界グレイホークが、ダンジョンと、拠点となる都市と、その周りの地域と……という順に、いかにも初期D&Dの手法で世界観を広げてきたのに対し、
また、ドラゴンランスの世界クリンが、小説やシナリオの物語の進展に合わせながら、ストーリー主導で次第に世界を広げていったのに対し、
フォーゴトン・レルムの世界は最初から広い大枠が提示されていました。

3版におけるフェイルーン大陸(フォーゴトン・レルムのメイン大陸)の地図は、以下のとおり。


地図だけ見ても大きさは実感できないでしょうが、ここで地図の左上の地域、ソード・コースト地方に注目。

はい、これが今回、第5版のワールドガイドとして注目が集まっている地域です。



それまでのD&D世界が「小→大」と広げる形で世界観を示したのに対し、フォーゴトン・レルムは逆のアプローチ「大きな世界観→詳細な各地域」という順に世界を示し、地域別にそれぞれの冒険物語を同時並列に描いていく、という展開を見せました。
こうした物語中心の展開(ドラゴンランス手法)と、地域別の多様な展開(フォーゴトン・レルム手法)は、日本でもグループSNEが踏襲し、それぞれ「ロードス→クリスタニア」と「ソード・ワールド」の展開のさせ方になりました。
中心作家の小説を中心としたドラゴンランス手法→ロードス島戦記の方向性。
複数作家の分業体制によって多彩な物語を紡いだフォーゴトン・レルム手法→ソード・ワールドシェアード・ワールド展開。

ただし、異なるのは、会社規模と人材リソースの大きな差、そしてD&DメインのTSRに比べてSNEは何を主力にするか方向性をまだ確定せずに、海外RPGの多様な紹介とオリジナル展開の二面作戦をとったことですね。
もちろん、国内と国外のマーケット規模の差がありまして、海外ではRPGというジャンルが10年以上の歴史を誇る伝統文化になりつつあったのに対し、日本では80年代半ばから人気を得た新ジャンルという差で、売れ行きがまだ読みにくい時期でした。
そして、当時のSNEは自社だけで製品が作れない「社長の知己の出版社やゲームソフト開発会社、ホビーゲーム開発会社との契約」で、原稿やゲームデザインなどの文章執筆担当下請け業みたいな立ち位置(まあ、87年に設立されたばかりだから仕方ない)。それでも、90年代半ばまでのバブル期は「RPGと名が付くだけで注目が集まった」からやって行けたのですが、「自社で製品が作れない=出版社が事業撤退したり、ゲームソフト会社が倒産したりすると、企画していたものも続けられなくなる」という憂き目にあいます。
その後、SNEはTRPG冬の時代を何とか生き延びた末に(TRPG以外にも、業務形態を海外アナログゲーム全般の紹介やローカライズ、そして海外輸出に切り替えた上で)「自社と密着した製品制作体勢を構築するに至っている」のが現状で、その辺の好きなものに対する社長のこだわり、踏ん張りは今でも尊敬するわけですがね。
本記事の趣旨からは、脱線した話ですな(苦笑)。

ともあれ、90年代の、そして現在も受け継がれているソード・ワールドの展開のお手本とも言えるフォーゴトン・レルムについて語るのが、本記事の趣旨です。
メインデザイナーは、エド・グリーンウッド。彼とレルム一の賢者と名高い魔法使いエルミンスターの会話記事が、初期のフォーゴトン・レルムの世界設定の中心だったのですが、このエルミンスターが日本語では、ほぼ全くと言っていいほど紹介されていない。彼を主人公にした小説も出版されたのですが、日本語訳が為されていないので「マニアのみに伝わる超重要人物」という位置付けです。
エド・グリーンウッドの書いた小説もあるのですが、日本語で訳されていないので、ええと、この状況を例えるなら、「ガンダムを海外に紹介するのに、宇宙世紀の作品が一切紹介されずにガンダムWしか輸出されなかったので、アムロやシャアやブライトの名前を出しても伝わらないようなもの」「仮面ライダーを海外に紹介するのに、ブラックRXと龍騎しか輸出されなかったので、1号も2号もV3も知らないもの」ということですか。

これがドラゴンランスだったら、小説を読んだファンとしては「タニス、スターム、キャラモン、レイストリン、キティアラ」といった名前を知らないなどあり得ないのでしょうが、外伝小説しか読んでいなければ、さもあらん。
ロードスだったら、スパーク主役の英雄騎士伝しか知らないので、六英雄のベルドや黒騎士アシュラムの名を聞いても、誰それ? と言っちゃうようなにわかファン。
つまり、それだけ、日本でのフォーゴトン・レルムの紹介は、本流を外した部分しか訳されていなかったわけですな。

いや、一応、本流としては、「シャドウデイル・サーガ」と「アイスウィンド・サーガ」がそれに当たるのですがね。
ここから後は、88年から90年代に富士見書房から訳された小説の記憶を辿っていくとしましょう。


★ムーンシェイ・サーガ(原書1巻出版87年、邦訳出版89年)

最初のフォーゴトン・レルム小説で、順当に初翻訳された小説。
ただし、本流と関係ない辺境の島が舞台で、ええとガンダムにおける外伝もの、「0080」や「08小隊」みたいな作品と認識します。

ムーンシェイ諸島は、上の地図の左側にある離れ小島で、ケルト風味な独自の文化を持っています。独自な文化、すなわち典型的なフォーゴトン・レルムとは違う異郷ということですな。
例えば、ファンタジー世界の特徴と言えば、魔法や宗教体系もポイントになるのですが、舞台となるムーンシェイは大地母神ドルイド信仰が盛んで、他の神々はあまり祀られていないために、世界観の参考にはなりにくい。さらに、主要キャラに魔法使いがいないので、AD&Dの魔法イメージの参考にもなりにくい。
たぶん、グレイホークの典型的D&Dイメージや、ドラゴンランスとは違った色物的な多様性を、「フォーゴトン・レルムでは、こういう風変わりな世界観もプレイできますよ」と提示されたんじゃないですかね。

もっとも物語の中身は単純で、強大な魔獣カズゴロスと、その背後にいる邪神バール、それらに率いられた野蛮な海賊の軍勢やモンスター軍団が、自然や平和に満ちた素朴な王国を襲撃に来たので、若き王子(イケメンだけど性格はだらしない酒と女好き)と、潔癖なドルイド娘と、渋い経験豊富な異国出身の盗賊なんかが協力して、迎え撃つ分かりやすい勧善懲悪王道小説なんですな。とにかく、悪の蛮族・魔物軍VS正義の多種族混合軍のバラエティー豊かな戦いは堪能できます。あまり冒険ってイメージじゃないけど。
ドラゴンランスの「世界を股にかけたドラゴン戦争」と比べて、小ぢんまりとしているというか、ガンダムを期待したら、マジンガーZを見せられた気分。まあ、味方がマジンガーみたいな強大な戦力は持たないので、結構、消耗戦になって、スッキリしないんですけどね。
感情移入もないままに敵も味方も消耗品のように死んでいき、登場ユニットのバリエーションは多彩で、ゲーム小説という意味では、間違っていないと思うけど「フォーゴトン・レルムって、こういう世界なの?」と思ったら違っていたという。
逆にメインストリームではない、ドルイドや吟遊詩人、妖精などの存在をイメージするにはいい物語だと思ったけど、89年当時の日本で求められていたのは、色物ではなくて王道だったと考える次第。


★シャドウデイル・サーガ(原書1巻出版89年、邦訳出版91年)

この物語は、AD&Dが1版から2版に切り替わる際に、フォーゴトン・レルムで起こった「DR1358年、災厄の時(エイジ・オブ・トラブル)」の顛末を描いています。
歴史的事件としては本流の話で、舞台もシャドウデイルという中心地域。正にレルムの王道小説と思われたのですが、中身がひどい。

「神界の揉め事で主神エイオーが怒って、フォーゴトン・レルムの神さま連中が全員、地上に追放されてしまった。神さまが地上で好き放題して、世界が大混乱。そこで善悪個性の強い冒険者連中が、世界の混乱を正すために試練に臨んでいるうちに、悪党の盗賊シリックが邪神バールを殺害して死の神の権能を奪い取ったり、仲間の戦士ケレンヴォーを殺害したり、こっちもまた神に負けぬぐらい好き放題。とにかく予定調和を無視した展開で、最後は何とか災厄の時が終結に至るのですが、犠牲になったケレンヴォーは中立の冥界裁きの神に叙せられ、魔法使いのミッドナイトが女神ミストラの後継者に認定され、シリックはエイオーからの罰として永劫の呪いを受けた邪神となって、世界に新たな秩序が生まれました。めでたしめでたし」って話。

正直、読んだ当時は荒唐無稽で訳が分からない話と思い、「フォーゴトン・レルムって、こういう世界なの?」と思ったら、実は世界を改変する物語だったという。
1版で、世界の神々のことを先に知っている本国のファンが読めば、面白かったのかもしれないけど、そうでなければ、「よく知らない神々が地上でいろいろやっても、イメージが湧かなかった」わけですな。
仮に、ロードスやソード・ワールドで、六大神が全員、肉体を持って降臨して、世界を揺るがす大戦争が勃発すれば、凄いなあと思うのだろうし、聖闘士星矢でアテナやポセイドンやハーデス、その他の神々が直接激突するようなバトルロイヤルに展開したり、マイティー・ソーみたいな神々の戦いってのも面白くはなると思う。
だけど、本作に登場する神ってパロディー的というか、威厳があまりなくて、定命の者シリックのペテンにハマって簡単に殺害されてしまうという情けなさ。ええと、これはフォーゴトン・レルムの神話改編をネタにしたパロディー小説と受け止めたらよかったのかな。
印象として一番近いのは、ソード・ワールドフォーセリア小説だと思ったら、実はファイブリアだったというコクーンワールドのノリじゃないかな、と。ウルトラマンだと真面目に見ていたら、実は「怪獣娘」を見せられていたとか、元ネタが分かれば面白いけど、そうじゃなければ何が面白いのか意味不明となるわけで。

今は、ワールドガイドを読んでこういう設定を知っているから「ああ、あの話はこういうことだったのね」と腑に落ちているわけだけど、「世界観を紹介するはずの小説が、世界観を壊し、改変するような内容だった」のは、当時、出版社側も、このフォーゴトン・レルムという世界をどう紹介し展開していくか、青写真を持っていなかったんだろうなあ、と推察します。
ムーンシェイは王道から外れた辺境を舞台にし、シャドウデイルは舞台こそ王道だけど、物語の中身が王道を破壊する話だったわけで、まあ、色物だらけな翻訳小説だったわけですな。
当時の自分の感想としては、ドラゴンランスやロードスが王道で、フォーゴトン・レルムはおかしな小説だらけ、という印象。冒険者たちがまともにチームを組んで、一致団結して使命を果たす長編ストーリーが少ないですもん。


★アイスウィンド・サーガ(原書1巻出版88年、邦訳出版91年)

フォーゴトン・レルムの有名人を挙げよ、と言われたら、エルミンスター以外に、いや、現在はそれ以上に持ち上げられているのが本作の主人公の一人、ドラウ(ダークエルフ)のドリッズト・ドゥアーデンですな。
彼と、仲間のドワーフ・ブルーノーと、蛮人ウルフガー、そしてハーフリングのレギスのチームが、北方からソード・コーストを舞台に活躍する王道冒険物語が本作です。
まあ一見すると、種族構成とか人間が少ないですし、ダークエルフが主役なんて色物小説のはずなのですが、「正義の心を持ったダークエルフが、邪悪な同胞と袂を分かって、孤高の道を歩んでいたら、かけがえのない仲間と知り合って、自分の居場所を得る」という設定だけで、ヒーローとして格好いいわけです。
はみ出し者が固い絆で結束して、王道の冒険を行うダークヒーロー物語という筋書きで今も人気を博している、と。

しかも、現在D&Dである5版の基本ルールで、エルフの説明文のイラストに採用されているのが、正規のエルフを差し置いてドリッズトだったり、本国でもいかに彼が人気のあるヒーローかを示しているというもの。
さらに、キャラ作成ルールの例に挙げられているのが、ドワーフのブルーノーだったり、
背景設定の項目で、悪の盗賊戦士の例としてドリッズトのライバルであるアルテミス・エントレリの名前が挙がっていたり、
もう、現ルールブックはこれでもか、と言うほどアイスウィンドを持ち上げております。

なお、ブルーノーさんについても、現在のワールドガイドを読んでいて、面白い状況を知りました。
小説アイスウィンドの冒険の際にシャドウ・ドラゴンのシマーグリームを倒して、故郷の鉱窟ミスラル・ホールを取り戻した彼は、その地の王に即位して、その後、寿命で亡くなったのですな。
しかし、その後、北方でまたオークとの戦争が始まった際、ブルーノーも神の奇跡で死から蘇り、今度はゴーントルグリムという鉱窟を復興させ、そちらの王に即位している。一回死んで、また復活して、現役の王をやっているなんて、ブルーノーさんって、それほど人気のあるキャラだとは知らなかったです。

ともあれ、5版は「フォーゴトン・レルムの復古を売りにしたゲーム」ですが、中でもアイスウィンドの持ち上げぶりが凄いなあ、と感じます。
ドリッズトが人気キャラだというのは分かっていたけど、サブキャラだと思っていたブルーノーまでも、死んで復活させられるほど創り手に持ち上げられていることを知って、愛されているんだなあ、と。

まあ、それを言うなら、元ミッドナイトの女神ミストラは4版で殺され、5版で復活したし、彼女を殺した邪神シリックは復活したバールの逆襲を受けて、死の権能を奪われたし、
この辺の版上げによるキャラや神々の死や再生の変化は、2版の時には分かっていなかったのが、3版、4版、5版と流れを辿って行くと、架空世界の歴史の変遷を追跡しているようで面白いな、と思います。


次は、コンピューターゲーム視点から見たフォーゴトン・レルムの流れを基軸に見て行きたいな、と。
(本記事完)