ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

T&Tの戦士の話3

@オレ参上

 

 

NOVA『T&T戦士の話の完結編だ』

 

アスト「よう、NOVA」

 

NOVA『何と、アストだと? どうして、お前がモニターの前にいるんだよ』

 

アスト「そりゃあ、オレがここのキングだからに決まっている。そんなことより、お前こそ、ここで油を売っていていいのか? 翔花ちゃんを助けるために、妖精郷リプレイを頑張って仕切らないといけないんじゃないのか?」

 

NOVA『いや、それはそうなんだが、一つのところに集中力が続かないんだよ。あれこれ考えて、説教モードに突入すると、記事を書きながら誰かさんへの苦言に話が流れて、読むに堪えない駄文になって後から削り、推敲に余分に手間取ってしまう』

 

アスト「その説教で、世界が救われるのか? 怪獣が倒せるのか?」

 

NOVA『う〜ん、説教にそんな力は……いや、昔、翔花がプレ・ラーリオスのカート・オリバー少年に正座させて、説教して、悲劇の物語の時間軸を改変して、世界をハッピーに救って、怪物を生み出さないようにしたことがあったな。うん、花粉症ガールの涙は世界を救うし、花粉症ガールの説教はカートの心を打った』

 

アスト「さすがは翔花ちゃんと言ったところか。そんな翔花ちゃんを、お前は助けないといけないんだろう? こんなところで、油を売っていていいのか?」

 

NOVA『……お前、俺をここから追い出したいのか?』

 

アスト「当然だ。お前がここにいると、オレが聖戦士の話をする予定が狂うからな。オレの邪魔をするな」

 

NOVA『その言い分。俺が誰かにぶつけているセリフとそっくりだな』

 

アスト「そりゃそうだ。お前に人の心の痛みを分からせてやろうと思ってな」

 

NOVA『何で、お前があの男を庇うんだよ?』

 

アスト「同じストーカー呼ばわりされた縁があるからな。他人とは思えねえんだよ」

 

NOVA『……だったら、俺は帰るわ。今度、コメント対応をするのは、お前に任せた』

 

アスト「って、あいつはお前に話があるんだろう? オレはここの主キャラなのにスルーされているし、他のコメント主(花粉症ガールの絵師の人だったか)に声を掛けられても、挨拶一つ返さない。全く社交ってものが分かっていないみたいだな」

 

NOVA『場の管理人しか見えていない、というか、自分を構って欲しいだけなんだろう。だから、こっちは時間を割いて構ってやってるんだがな。スルーはしていないつもりだ。その方が利口だと思っていてもな。で、奴と付き合うのは時間の浪費であり、マイナスでしかないのを、俺にとってプラスに変えるように話を展開して、何かセレンディピティを見つけたいって気持ちは常にある。転禍為福が好きな四字熟語だからな』

 

アスト「まあ、オレをスルーしている男のことはどうでもいいんだ。それよりも大事な話がある」

 

NOVA『何だよ。翔花はお前にはやらんぞ』

 

アスト「その件はもう済んだんだよ! オレにはアニーという嫁がいるんだからな。大事な話ってのは、まあ、あれだ」

 

NOVA『あれ?』

 

アスト「お前がT&Tの話をリバTとしている記事を読んでいたら、このオレもT&T話をしたくなった。だって、人が自分の知ってる何かの話をしていたら、自分も語りたくなったりしないか?」

 

NOVA『だったら、最初からそう言えよ。ただ、嘘で知ったかするのはよくない。お前がどれだけT&Tについて語る知識を持っているんだ?』

 

アスト「社会思想社版のソロアドベンチャーは全部プレイした」

 

NOVA『ほう、それはなかなか。無敵の万太郎のパートナーの岩悪魔の名前は?』

 

アスト「シックスパックだったか? もう一体、クォーツってのもいたよな。『傭兵剣士』をプレイしていたら、常識だろう。パートナーとして世話になったんだからな」

 

NOVA『おお、お前をT&T語りのできる相棒として認めよう。ゲーム世界の空想上のNPCに対して「パートナーとして世話になった」と感情移入している点で、気に入った。キャラ愛、作品愛って、そういうところに現れるんだよ』

 

@5版と7版以降の違い


アスト「それで、オレの知識は5版だけなんだ。旧世紀で止まっている。7版とか8版とか言われても、よく分からない。だから、早速、質問があるんだが?」

NOVA『何だ? つまらない質問じゃないだろうな?』

アスト「つまらない質問かどうかは知らんが、T&Tの能力値の話だ。確か体力度、知性度、幸運度、耐久度、器用度、魅力度の6つだったと記憶するんだが、7版には速度と魔力度が加わって、8つになっているんだな。魔力度って何に使うんだ?」

NOVA『それは、いい質問だ』

アスト「今のがいい質問なのか。だったら、つまらない質問というのは、どんなのだ?」

NOVA『話の流れに沿わない唐突な質問だな。T&Tの話をしている場で、「どうしてソード・ワールドの能力値には幸運度や魅力度がないんでしょうか?」と尋ねてきたりするのならまだマシで、「どうして、T&Tはマイナーなんでしょうか?」とT&Tをディスるとか、まあ、悪い例はいろいろあるが、つまらない質問の実例が欲しければ、コメント欄で俺に叱られてばかりの人間の質問を解禁してやれば、いくらでも見せられそうだ。「俺に質問をするな」というセリフを冗談抜きで俺に使わせた唯一の男だからな。つまらない質問キング、略してTSKの称号を贈ってもいいと思っている』

アスト「で、さっきの質問の答えはどうなんだ」

NOVA『キャラの幸運はプレイヤーのダイス目で決まり、キャラの魅力はプレイヤーのロールプレイで決まるというデザイナーの方針だからな』

アスト「って、その答えは別の質問に対するものじゃないか」

NOVA『えっ? ああ。もう一つの質問か。T&Tはマイナーじゃねえ。D&Dやソード・ワールドがメジャーすぎるだけだ。T&Tだって、安田社長のベスト100ゲームの中に入っている。ちなみに、ソード・ワールドやロードスは入っていない』


アスト「何でだよ?」

NOVA『俺も不思議に思ったんだが、すぐに答えは出た。海外のゲームしか入っていないんだな。日本製のゲームは一切、入っていないんだ』

アスト「いや、オレが何で、と聞いたのは、そういうことじゃなくてな」

NOVA『どういうことだよ?』

アスト「何で、お前はオレの質問に答えず、自分がつまらない質問だと例に挙げた方にばかり答えているんだよ。オレの質問が一体、何か覚えているか?」

NOVA『魔力度って何に使うのか? だったか』

アスト「そうだ。それに答えてくれたらいい」

NOVA『魔法を使うときに消費するMPみたいなものだな』

アスト「T&Tは、体力度を消耗して魔法をかけるルールだったと記憶するが」

NOVA『7版で変わった。それと、速度は5版でも選択ルールで提案されていたが、日本ではメジャー化せずに、ハイパーT&Tでは削除されたが、7版で正式な能力値に昇格して、個人修正を算出する際にも使われるようになった』

アスト「う~ん、いろいろと変わっているんだな」

NOVA『ああ。7版と8版はマイナーチェンジだが、5版と7版はずいぶんと様変わりした。特に変わったのは、職業と成長ルールだな』

アスト「職業って、基本は戦士、魔術師、盗賊だろう?」

NOVA『それとエリート職の魔法戦士だったが、7版以降は呼び名が変わって、「達人(パラゴン)」と呼ばれるようになった。さらにNPC用で個人修正が半分になる「市民(シチズン)」と、特定能力値で非凡な才能を持った者がなれる「専門家」という特殊職業が用意されている』

アスト「専門家について詳しく」

NOVA『長くなるので、後回しだ。先に成長ルールの話をしよう。5版では冒険点を貯えて一定数値に達すれば、冒険レベルが上がって、能力値や魔法の使用レベルが向上するシステムだった』

アスト「D&Dやロードスみたいなものだったな。まあ、昔のD&Dでは能力値そのものの成長はなかったが」

NOVA『7版以降は、貯えた冒険点を消費して、能力値を上昇させるシステムに変わった。そして、能力値の最大値を10で割ったもの(端数切り捨て)がレベルとなって、セービングロールのボーナスになったり、タレントを得られたりする』

アスト「冒険点を貯めるのではなくて、ソード・ワールドみたいに消費するのか」

NOVA『そうだ。能力値を1点上げるには、現在の能力値×10点の冒険点を消費する』

アスト「つまり、10の能力値を11にするには100点を使い、さらに12に上げるには110点を使うんだな。低い能力値を上げるのは簡単で、高い能力値をさらに上げるのは難しい、と」

NOVA『バカが普通になるのは簡単だけど、普通が賢くなるのは難しく、賢い人間がさらに賢くなるのはもっと難しい、と』

アスト「現実では逆の気もするけどな。バカはいつまで経ってもバカで、才能ある人間はさらに努力して才能を伸ばす方がありがちだろう」

NOVA『貧乏人が這い上がるのは大変で、金持ちはもっと資産を増やす形で、格差が広がる方がリアルかな、と思ったりもするが』

アスト「5版のT&Tはレベルが高い方が、能力値を伸ばしやすかったが、今のT&Tは能力値の高さがレベルになって、しかも能力値が上がるほど伸ばしにくくなるってことか。成長ルールが全然違うな。それで、さっきタレントと言っていたが、それは何だ?」

NOVA『うん、いい質問だ』

アスト「何だよ、また突然に」

NOVA『会話をつなげるって、こういうことだよな。相手の言葉の中に、質問の材料を見つけて、話を紡いでいく……ってことは、相手の話を受け止めているということだよ。相手の出してきた話題や言葉を、自分の話の筋に乗せて質問をするというセンスは、独り善がりじゃなくて、相手の話を受け止めている証拠だ。逆に、さっきの俺のケースはダメな例』

アスト「さっきのケース?」

NOVA『お前の質問をスルーして、勝手な話を展開していただろう?』

アスト「今だって、そうしているじゃないか。オレの質問はタレントとは何か? ってものだったはず」

NOVA『要するに、会話を飛ばしがちな人間がいるってことだよ。勢いに乗って冗舌になりがちな人間がよくやるんだが、自分の話に夢中になってしまうんだな。作家にはよくあるパターンだが、書き言葉だと、論理的な筋道をポーンと吹っ飛ばして急展開してしまっているのを、後から読み直して推敲する際に、つながっていない部分を書き足したり、言葉足らずなのを補ったりして、完成稿に近づけたりする。ただ、自分の頭ではつながっているのが、多くの人にはつながっていなくて、他の人の困惑に思い至れないタイプの作家もいて、そこを指摘するのが編集の仕事だったりもするし、話のつなげ方に個々の癖があったり、それを作家性ととらえることもできるわけで』

アスト「話の急展開が面白い作家もいるよなあ」

NOVA『俺も話の飛びがちな書き手だと自覚しているが、俺の場合は勢いで書いて、後から読み返して、辻褄合わせをするテクニックを持っているから、「話の飛び方にも深い意味があったんだ。伏線だったんだ」と見せることが大体はできている。もちろん、それが失敗するケースも何度もあって、その場合は書き直すこともしょっちゅうだけど、そのうち、寄り道脱線芸って開き直るようにもなった』

アスト「で、タレントって結局、何なんだ?」

NOVA『この〈寄り道脱線芸〉は俺のタレントの一つだな』

アスト「何だと。ここまでの寄り道脱線会話は、全てタレントを説明するための流れだったのか」

NOVA『しょせんは、思いきり強引な言い訳に過ぎないけどな。もっと分かりやすく言えば、キャラの特技やスキルと言った方が分かりやすいだろう。寄り道脱線は、面白いエッセイを書くのには向いているし、物語でも無関係な出来事だと思われたのが後でつながる伏線だと分かったりする長編だと非常に面白いんだけど、説明文だと冗長で分かりにくい文章になるので、使いどころが問題だな』

アスト「しかし、〈寄り道脱線芸〉などというタレントがルールブックには載っているのか?」

NOVA『載ってるわけがないだろう。あくまで俺のオリジナルだし、そもそも、そんな芸が冒険の何に役立つんだよ?』

アスト「相手の気を引きつけて、時間稼ぎをする話術とか?」

NOVA『そういうスキルは〈無駄話〉と呼ばれたりするが、T&T7版のタレントは数があまり充実していない。実際にルールに例示されているのを並べると「賭博、剣術、音楽、文学、動物使役、窃盗、軽業、医学、素手戦闘、説得」の10種類で、これらをさらに細かく分けて「カード、武器落とし、歌唱、作詩、馬術、スリ、タンブリング、薬草知識、ボクシング、物乞い」とすることも可能。ただ、ゲーム的に有利さを追求するなら、薬草知識よりも医学の方が幅広く応用できて得だとか、でもキャラの個性付けという意味では特定の専門化された技能名の方がふさわしい場合もあるので、自分のキャラのイメージに合ったタレントを自由に設定してもいい、という曖昧な示唆に留めたルールだな』

アスト「タレントは技能みたいなものだけど、自分で自由に決めていいってことか」

NOVA『ブログのカテゴリー分けに近いものがあるかもしれないな。記事テーマを広く「SF」と取るか、「特撮」と狭めるか、「ウルトラマン」「仮面ライダー」「戦隊」とさらに分けていくか悩んだりもしたし、自分がどんなテーマやジャンルの記事を書きたいのかは、自分のキャラに何をさせたいのか、どんな特徴を持たせたいのかというタレント設定に似ているかもしれない』

アスト「結局、シンプルなT&Tも21世紀に入って、そこそこ複雑に進化したってことだな」

NOVA『で、7版ではタレントの例示が非常に少なかったので、完全版こと8版では詳細なタレントリストが設定された。ざっと数えて130種類以上の職能をメインにしたタレントリストがあって、そこから自由に選べるようになった。これで、作家だろうが、芸人だろうが、なりたい自分に自由になれる』

アスト「タレントのルールを使えば、歌って踊れる戦士にだってなれるんだな」

NOVA『軽業で飛び跳ねる魔法使いにだってなれる』


@で、本題の戦士


NOVA『で、7番以降の戦士だが、防御点2倍のルールは健在だが、それが戦士だけの特徴ではなくなった』

アスト「何だと? T&T戦士の最大というか唯一の特徴なのに?」

NOVA『元魔法戦士こと達人も、戦士同様に防御点2倍になった』

アスト「前は、鎧+1、盾+1だけだったのにな」

NOVA『魔法戦士および達人は、能力値ダイスの目が全て12以上の時だけなれるエリート職だが、能力値の数が6個から8個になったために、ますます誕生しにくくなったわけだ』

アスト「達人になるには、生まれついての非凡な才が必要ってことだな」

NOVA『そして戦士だが、防御点のボーナス以外に、攻撃力にもボーナスが付与されるようになった。こちらのボーナスは、達人には付かない』

アスト「おお。ただの壁役だけでなく、攻撃力まで高まったのか」

NOVA『前は魔法を使うのに体力度を消耗していたけど、今は魔力度に変わったからな。つまり、体力を消耗しないから強い武器や防具を装備できるという間接的な利点に意味がなくなった。体力さえ高ければ、盗賊や魔法戦士(達人)だって軽装にこだわる必要がなくなって、戦士同様の攻撃力が確保できる。結果、戦士には別の強みが求められるようになったわけだ』

アスト「で、どれだけ攻撃力が高まるんだ? 防御力みたいに倍になるのか?」

NOVA『いや、個人修正にレベル分だけ加算されるのが7版だ。3レベル戦士なら+3ってところだ』

アスト「T&Tにしては、意外とおとなしめだな」

NOVA『その意見は正しいと思う。結果、8版ではレベル分のダイスが加算されるようになった。3レベル戦士ならダイスを+3個振れる』

アスト「そいつは一気に豪快になったな。ダイス1個の期待値が3.5だから3レベルで+10.5ってことだろう?」

NOVA『それで強すぎると思うなら、ダイス1個の代わりに+2するという選択ルールもある。その辺は実際に遊んでいるGMとプレイヤーの裁量に任せるって方針だ』

アスト「ずいぶん緩やかなんだな」

NOVA『T&Tのルールブックって、5版の時から、厳密に定めた部分と、曖昧な示唆に留めた部分があって、さらに「昔のルールはこうだったけど、今はこういう風に変えました」的な文言があって、こうでなければいけないという断定が少ない書き方になっている。ゲームのルールは、それを扱うプレイヤーたちが自由に改変して構わないし、それでプレイが面白くなるのなら、その場ではそれが正義だ的な精神に溢れている。その上で、公式がいっぱいテストプレイを重ねているのだから、「私たちはこうするのがベストだと考えます」的にデザイナーのケン・セント・アンドレが1人のゲーマーとして、語りかけている文体が特徴だな』

アスト「オレは初めて、5版のルールを読んだときに、ゲームのルールとしては読みにくいと感じたものだ。曖昧な示唆が多かったり、昔の版ではこうだったが今はこうしたなんて記述が多かったり、他のゲームに比べて寄り道脱線が多くて、すっきりしていない。むしろ、ソロシナリオに付属しているルール抜粋の方がきちんとまとまっていて分かりやすかったな」

NOVA『ルールブックの文体にも、デザイナーの個性が出るからな。訳語のセンスにもよるが、クラシックD&Dは大上段に上から命令するスタイルで、力強い断定口調。一方、T&Tの方は、古い物語を語るような柔らかさと、「テストプレイを重ねた結果」という内輪の表現と、「他のゲーマーからはこういう意見もあったので、吟味の上で採用しました(あるいは今回、正式ルールにはできなかったけど、紹介したルールの方が面白いと感じたら使ってみてもいい)」というユーザーとの交流を示した文章なんかがあって、デザイナーとユーザーがつながっている感じなんだ』

アスト「普通、そういうのは、前書きとか、巻末のデザイナーズノートとかに固めるものだけどな。作者が本編に出張ってくるマンガみたいなものか?」

NOVA『ゲームのルールとしては読みにくく参照性が悪いところがあるけど、読み物としてはデザイナーのポリシーとかルールデザインの背景とか諸々が想像できる文章で、システマチックと言うよりも文系風、物語的なところがある。戦士の元ネタが蛮人コナンで、魔術師の元ネタがガンダルフやマーリンで、盗賊の元ネタがグレイマウザーや切れ者クーゲルで……というファンタジーガイド的な蘊蓄披露とか、ルールブックを読んでいるだけで、当時の初心者ゲーマーにはいい勉強になったものだ』

アスト「デザイナーの顔が見えるルールブックか。それも一人のメインデザイナーがずっとサポートしているゲームならでは、だな」

NOVA『それと、戦士に絡めて戦闘ルールに話を戻すと、7版では5版までの反省を踏まえて、二つのルールが追加された。一つは悪意ダメージで、二つはダメージの割り振りの自由化だ』

アスト「悪意ダメージとは?」

NOVA『T&Tの戦闘は、敵味方双方のダイスを振った攻撃力をそれぞれ合計して(合計ヒット)、勝った方が負けた方にダメージを負わせ、勝った方は無傷というのが5版だったけど、悪意ダメージはダイス目で6が出た分が否応なく相手に飛んでいき、防具でもそれを止めることができないというものだ』

アスト「サイコロ20個振って6が3個出れば、合計ヒットに関わらず、3点ダメージを敵に負わせることができるってことか」

NOVA『わずかながら防御無効ダメージが発生することで、無意味に戦闘が膠着してしまう可能性が減るわけだ。5版T&Tでは、双方の戦士が攻撃力拮抗していて、防御力過多の場合、戦闘が終わらないという問題点を抱えていたからな。乱戦では、魔法を使って膠着状態を覆すことができるけど、戦士同士の一騎討ちというファンタジー物語の華型シーンが再現しにくいという欠点があった』

アスト「お互いの攻撃ヒットの差分が10点以内に収まった場合、防御点が10点を越えていれば、ダメージがどうしても通らないってことか」

NOVA『レザーアーマーでも防御点5前後あるからなあ。戦士だと2倍して防御点10点は軽く届くわけで』

アスト「悪意ダメージの存在で、どんなに防具で身を固めても、運悪くチマチマとしたダメージで削られることがあり得るんだな」

NOVA『防御力の高い戦士にいかにダメージを与えることのできるゲームにするか、がT&Tの課題だったからな。そして、もう一つはダメージ割り振りの自由化、あるいはダメージ均等割り振りの廃止だ』

アスト「ええと、どういうことだ?」

NOVA『今ここに防御点10点の戦士、5点の盗賊、3点の魔術師がいるとして、彼らに30点のダメージが飛んで来たらどうなる?』

アスト「10点ずつ振り分けて、戦士は無傷、盗賊は5点、魔術師は7点のダメージを受けるな」

NOVA『魔術師がダメージを恐れて、乱戦に参加しなければ?』

アスト「15点ずつ振り分けて、戦士は5点、盗賊は10点を受けることになる」

NOVA『この場合、結局、戦士が自分だけを守って、損をするのは仲間たちという構図になるよな。これが均等割り振りの問題点で、戦士が仲間を守る役に立ちにくいということだ。だけど、7版以降は、ダメージの振り分けはプレイヤーが相談して決めていいということになる』

アスト「つまり、戦士が自慢の防御力を活かして、仲間の受けるダメージを減らせるということか?」

NOVA『さっきの例だと、パーティー全員で総計18点の防御力がある。だから防御力をフル活用すれば、受けるダメージは30から引いて12点だけど、3人で4点ずつ受けることにしてもいいし、すでに傷ついている仲間や、耐久度の低い仲間のダメージを減らしてもいい。とにかく、戦士だけ無傷で、他のキャラだけが傷つくという仲間同士の不満が解消されるわけだ』

アスト「戦士の防御力が上がれば、結果的にパーティー全員を守ることになるんだな」

NOVA『戦士の防御力過多の問題は、T&Tでは常に付きまとっているテーマみたいだな。8版では、さらに「その防具本来の防御点を越えて、戦士がダメージを受け止めた際に、防具が破損して防御点が削られる磨耗ルール」が加わった』

アスト「盾が破れたり、鎧が砕けたりするのかよ」

NOVA『戦士が防具を酷使した場合にな。2倍の防御点ということは、それだけ鎧や盾でいっぱいダメージを吸収しているってことだから、壊れる可能性も高いってことだな』

アスト「そのルール、面倒くさくないか?」

NOVA『さあな。ルールとしては面白いと思うが、実際に運用してみないと、楽しいかどうかは分からん。単に面倒くさいだけで、楽しくならないルールなら廃れるだろうし、戦士の過剰防御点に装備破損の可能性というジレンマを突きつけることで、よりゲームとしてのスリルが高まるとか、ロールプレイのきっかけになるなら好評価を得られるだろう。あくまで鎧破損は選択ルールとして扱ってもいいし、GMが積極的に採用して、防具の修理や鍛冶屋との交流などをテーマにすることもできる』

アスト「『チッ。今度の敵は手強かったな。せっかくの鎧がボロボロだ。修繕費が掛かっちまう』と戦士がぶつくさ言ってるところへ、パーティーの仲間が『修繕費はパーティーで補填するから。仲間を庇って鎧を壊したんだから、それぐらいのことはしないとな』とフォローして、『おお、助かる』と友好的なコミュニケーションを図ることも可能だな」

NOVA『本来、TRPGのルールは、数値のバランスを考えたり、ロールプレイを推奨したり、バトルや物語を盛り上げたりするなどの目的で構築されている。だから、それに意見を出すということは、実際にプレイしたり、使う場面をあれこれ想像したり、そういった思考過程を明言したり、共有したりする手間を掛けないと、話が伝わらないんだよな。T&Tの戦士の防御点2倍ルールにしても、ソード・ワールドのエンハンサーのMP消費がイメージに合わないという私見にしても、賛成や反対を論じる前に「あまりにも説明不足、言葉足らず」というツッコミをしておきたい』


@おまけに


アスト「まあ、コメント欄の意見は、『あの男なりに、少しは調べて、考えて、ベストを尽くして書いた内容』なんだろうぜ。それがお前の目からは、あまりにも浅はかに見えるから、『バカにするな。その程度の知識で偉そうに語るな』って言いたい気持ちもよく分かる」

NOVA『前に「俺が興味の薄いハルヒのことを書いて怒られた」から、今度は「俺が興味のありまくるSNEのゲームについて、付け焼き刃的な浅い知見をひけらかして、しかも間違いが多くて、それでいて俺の記事の補足なんてことを口にする」から、より激しい勢いで怒られているわけだな。まあ、俺としてはその憤りのエネルギーでいっぱい考えて、記事書きする起爆剤に使わせてもらっているから、転禍為福になってると思うんだけどよ』

アスト「お前の興味の薄いことを書いてもダメ、お前の興味のあり過ぎることを書いてもダメ……ってんじゃ、コメント主はどうしたらいいんだと思う?」

NOVA『俺が楽しんでいることを、自分も現在進行形で楽しみながら追っかけている振る舞いを見せる。俺のブログのコメント欄で受け入れられるって、そういうことだろう? 俺が楽しんでいないことを話題にされても応じようがないし、何かを紹介するにしても、嘘偽りや勘違い、独り善がりな私見が多すぎて、ちっとも参考にならないし、文章で何かの面白さを人に伝えることが下手なんだよな。
『そして作品に対して、どこか上から目線の批評を付けずにいられないのは、そういう文章ばかりを読んできた弊害なんだろうが、文体だけマネして、見識とか研究姿勢が伴っていないから、中身がない文章なのに偉そうなのが鼻につくんだ。読んでいるジャンルがよほど偏っているんだろうけど、ファン同士の語りって、批評は二の次で、まずは面白さの共有意識の確認から入るだろう? 結局、こいつはコメントで、作品ファンとしての語りがしたいのか、批評がしたいのか、楽しみたいのか、上から目線で作品をディスりたいのか、1000文字の中で、相手に伝えたいものがちっとも分からん』

アスト「ただ、友だちになりたいと思っている相手に見捨てられたくはないんだろう? 自分の書き込みに応じて欲しいだけじゃないか? そして自分のプライドを満足させるために、認めてもらいたいとか?」

NOVA『正直に言って、コンプレックスの塊だと思うよ。エゴを剥き出しで言えば、俺も彼も作家になって自己主張したい男だという前提で、「俺はブログ作家として、俺と趣味を共有する人間を楽しませる文章を書きたいし、それが自己満足になっても構わない。書くことが好きだし、楽しんでいる」わけだ。だから、彼も「ブログ作家として、彼と趣味を共有する人間を楽しませる文章を書けばいいし、それで自己満足して、書くことが好きで、楽しんでいる」というレベルに達してくれたら、それでようやく対等に語れるんじゃないの? と思うわけだな』

アスト「趣味作家として書きたいことがあるから書くってのが、お前の姿勢なんだろうが、彼が書く目的は違うんじゃないか?」

NOVA『みたいだな。彼は書くという手段で、他人に認められる、自分を受け入れてもらえることが目的みたいなんだな。だから、自分が書くブログで(一応は持っていたらしい)自分の記事に、何らかの好意的なリアクションがすぐに付かないと、続けたくない。誰に読まれなくても、ただ自分を見つめ直すために書く、ということができないのかもしれない。とにかく人に相手してもらって、認めてもらいたい。それが書く動機なんだと思うけど、俺が趣味世界で認める相手は「俺が好きなものを同じだけの熱意で追っかけている人間」だからな』

アスト「お前と同じだけの熱意って、よほどだと思うけどな」

NOVA『俺も身近には数少ないが、ネット世界では結構いるんだな。だから、そういう御仁の書く文章は面白いし、俺自身も面白い文章を書ける人間になりたいとは昔から思ってきたし、いろいろな人のスタイルを俺なりに咀嚼してきた経緯はある。「面白い文章の書き方」なんてテーマで語れる人間の話は是非聞きたいし、自分でも一度ならず考えてきたテーマだ。作家志望の人間だったら、誰しもが考えて、そのための努力をするはずだよな』

アスト「じゃあ聞くが、面白い文章というのはどういうのだ?」

NOVA『自分のツボを突く文章ということなら、熱さ、クールさ、コミカルに分けられるし、これはキャラの個性やストーリーパターンにも通じる論評3要素じゃないかなあ、と認識している』

アスト「熱さというのは、書き手の情熱とか勢いってことか?」

NOVA『それもあるし、文章としては子供脳ということになるかな。好きで好きで仕方ないとか、頑張って書きましたって想いがストレートに伝わる文章には、微笑ましく感じる』

アスト「クールというのは、知的な頭の良さか?」

NOVA『しっかりリサーチしましたとか、冷静な大人脳で事実認識を正確に、真摯に、虚飾なく綴って、読んだ後で、なるほどなあ、いい勉強になったなあ、と感じ入らせる文章。ここでリサーチ不足で、間違いや嘘、矛盾が目立つと、クールぶったボケキャラになってしまい、ツッコミ芸のネタになる、かつての「と」推奨本になるけど、クール芸を維持するのは非常に難しい』

アスト「クールな文章というのは、理性、論理的説明能力を問うことになるから、文体や勢いだけで書ける熱血文章よりも難しいな」

NOVA『筋道がしっかり通っているとか、根拠と結論が明確とか、一般論と私見の区別が付いているとか、直観だけでは書けない文章の類だからな(なお、私見という言葉を、悪口を言う際の枕詞にすると文章の専門家から嫌われるので注意。私見と言うのは、一般的な物の見方に対する、より鋭い物の考え方を提示する評論用語で、その私見は個人的に素晴らしいものだという筆者の自己認識を伴う。よって私見がテーマに関する悪口というのは、まじめな評論家ほど見下す材料になるわけで。私見は個人の見解だから反論されないと思っていたら、そんなことはない。一般論に対する反駁表明をしている形なので、当然、おかしな言説には反論が来る。反論を避けたいなら「愚見ながら」と言って自分の愚かさを表明するといい。老婆心までに)そして、頭のいいと思われる文章を書くコツが一つある』

アスト「何だ?」

NOVA『最後の結論を、それまでの話の流れを踏まえたまとめで、上手く終わらせる。つまり、途中でどれほど迷走しても、全てはこれに結実するって収め方をすると、読者は納得できる。作品批評の場合は、「いろいろ愚見を重ねたが、この作品の見るべきポイントはここで、それを前提に置くと傑作と言えよう」と言った形に収まるし、最後にテーマを褒めると読者の納得度は高い。もちろん、愚見の内容にもよるけど、終わりをしっかり締めくくって、そこに収束する文章は完成度が高く見えるわけだ』

アスト「逆に言えば、結論が見えにくい文章はダメってことだな」

NOVA『最後にコミカルだが、何かをディスることで、笑いに持っていくことができれば、そのディスには意味がある。逆に、笑えないディスや、何の納得も生まない愚かに聞こえるディスには価値がなく、リスペクトの裏返しの勢いあるディスとか、ディスの意味を研究するのも面白そうだけど、別に他の物をディスらなくても、笑いはとれるよな』

アスト「どうやって?」

NOVA『自分のバカな失敗をネタにするとか、自分のキャラを過剰にディフォルメして、その可笑しさを芸にするとか、他人に弄られている自分を感情演出たっぷりにリアクション演出するわけだ。あとは定番の繰り返しとか、パロディネタとか、一人ボケ一人ツッコミとか、役割演技芸とか、ギャグ演出の研究をいろいろしていれば、長い文章でも読ませられる……かもしれない』

アスト「ギャグ演出に走って、話がムダに長くなることもありがちだけどな」

NOVA『うん。自分では面白いことを書いているつもりなのに、うまく伝わらなくて悲しい想いをしたことは昔からしょっちゅうだけどな。まあ、最近のお笑いは「ここが笑いどころですよ」とテロップを出したり、ギャグを解説することをギャグにしたり、「解剖の時間だ」とか「年上好みだからウルトラマンを慕う」とか「日本語は難しいでございます」とか「3分の1人前」とか、豊富にネタにできる設定が多くて、思わずマネしたくなるわけだ』

アスト「半分以上、ウルトラマンZじゃないか」

NOVA『好きな作品だったんだよ。熱くて、クールで、コミカルで、三拍子揃っていたんだからな。面白い作品を素直に面白いと感想書くだけで、ファン同士は分かり合える。そこに余計な批判はいらないんだよ。まずは面白さの分かる人間と見なされてこそ、多少の私見が混ざっても、概ね分かり合っている間柄だから認めてもらえる。こいつは面白さを分からない人間だ、と思われてしまえば、何を書いてもつまらない人間の書くことだから、と見なされるわけで、批判=頭がいいという価値基準が許されるのは高校生レベルであって、大人のファンは批判的意見の書きどころを弁えるものだよね』


鉄太郎「ずいぶん熱弁を振るっているようだが、明けましておめでとう、NOVA司令」

NOVA『ええ? 鉄太郎さん、帰って来てたんですか?』

鉄太郎「うむ。仮面ライダー剣の配信がそろそろ終わるから、これでネタ弄りされることもないだろうと思ってね」

NOVA『いやあ、お恥ずかしいところをお見せしました』

鉄太郎「ところで、戦士の話をしていたところが、勢いづいてコメントと文章書きの話に暴走、流れ込んでしまったようだけど、何か大事なことを忘れていないかね?」

NOVA『大事なこと?』

鉄太郎「T&Tというゲームには『専門家』という職種があるそうじゃないか。それはあれかね、『怪獣退治の専門家』とか『超獣退治の専門家』とかその類の話では……」

NOVA『いや、そうではないのですが』

鉄太郎「何にせよ、専門家という話題は気になるので、次は『T&Tの専門家』というタイトルで、語ってくれるといい勉強になりそうだ」

NOVA『……仕方ありませんね。他ならない「ウルトラ特訓の専門家」たる御仁のリクエストであれば、次のテーマにさせてもらいます』

アスト「やれやれ。しばらく、ここでのNOVAの出番は収まりそうにないな」

(当記事 完)