ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

T&Tの戦士の話2

★ハイパーT&Tの思い出話の続き

 

 

リバT『前回は、聖戦士の話をするはずだったのに、グランドマスターNOVAの気まぐれで、T&Tの話になってしまいました』

 

NOVA『まあ、戦士の防御点に関する俺のコメントミスの修正をするだけでいいのに、いろいろ調べているうちに、思い出がいろいろ込み上げて来てな。ともあれ、ハイパーT&Tにも聖闘士という職業があるわけだから、つなげて考えることもできるかもしれないぞ』

 

リバT『聖戦士とか聖闘士とか、違うものを連想するファンも多そうですけどね』

 

NOVA『オーラバトラーとかセイントといった類だな。とにかくハイパーT&Tの聖闘士は凄いぞ。ここに聖戦士宣言のルールを引用しよう。ただ、原文ママではなくて、ルール用語なんかは多少、分かりやすく整えてはいるがな』

 

>聖戦士宣言を行えば、その戦闘において自分のヒット(攻撃力)を3倍にできます。耐久度も一時的に3倍になります。また、いかなる魔法や、毒、特殊攻撃、モンスターの特殊能力も聖戦士には効果が及びません(これは味方がかける補助魔法や回復魔法も含まれます)。聖戦士を傷つけられるのは、直接的な接近戦のダメージだけです。ただし、一度、聖戦士宣言を行うとその戦闘の間は止めることができませんし、逃げることもできません。魔法なども使用できず、自分の武器を使うしかありません。

>戦闘が終了すると、聖戦士宣言を行った聖闘士は、それ以降の戦闘ターン数を難易度レベルとして、幸運度での判定を行わなければなりません。失敗したら、力尽きて息絶えます。また、1度の冒険で聖戦士宣言を2回、3回……と行えば、判定の難易度レベルも2倍、3倍……になります。

 

 

NOVA『さらに、聖戦士宣言はバーサーク戦闘と組み合わせることもできて、要するにとんでもなく、攻撃力を高めることができるということだ』

 

リバT『前回、普通なら23点の攻撃力になるところを、バーサーク戦闘なら33点になるという話をしました。もしも、聖戦士宣言を組み合わせたら?』

 

NOVA『ダイス目だけで99点になるな。もちろん、実際にはキャラクターの個人修正も含めての3倍だから、1キャラだけで100点を超えるダメージも出せるわけだ。それも初期レベルから』

 

リバT『何とも豪快な話ですね』

 

NOVA『他には、他のゲームだと武器に魔法をかけると、ダメージが1点、2点増える程度の強化が為されるわけだけど、T&Tの武器の強化魔法は2倍とか3倍といった方式で強くなるんだ。そこに2レベル魔法〈いだてん〉を組み合わせたりすると、攻撃回数も2倍になって、武器強化魔法と合わせて、戦士の攻撃力が4倍とか6倍といった具合に高まることになる。

『そんな大味なゲームだから、防御点2倍なんて戦士の能力も普通にバランスが取れる……というか、バランスが取れなくてキャラが即死しても、すぐに別のキャラを作り直して遊ぶことを推奨されているゲームなんだ。T&T本来のゲームバランスは、公式シナリオでも一人で複数キャラを扱うことを提示されるほど(一人で3キャラ使う9人パーティーとか)、デッドリーなゲームなわけで、元々は「キャラが死んだ? だったら、作り直して再挑戦するよ」と豪快に笑い飛ばす時代の産物だ、と』

 

リバT『でしたら、T&Tの戦士の防御力2倍というルールを他のゲームに採用すると?』

 

NOVA『ゲーマーの常識としては、バランスが取れなくなって、ゲームが崩壊するだろうな。まあ、書いた本人はゲームバランスなんて考えずに、思いつきで触れただけだろうけど』

 

★新たなハイパーT&T(1994)


NOVA『さて、最初のハイパーT&Tは、ウォーロック誌のサポートの下、社会思想社から出版されたんだが、1992年にウォーロック誌が休刊し、同社がゲームブックRPGから撤退することとなった。AFF(アドバンスト・ファイティング・ファンタジー)とか、ウォーハンマーRPGとか、これからの展開が期待されていたんだけどなあ。ともあれ、ハイパーT&Tは角川に版権が持ち込まれて、そこからコンプRPG誌で新展開されるようになった』

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リバT『それが3冊めのルールブックですか』

NOVA『コンプRPG誌は、SNE関連だとGURPS、ハイパーT&T、そしてロードスをサポートした雑誌で、1991年から96年まで継続した。ライバル誌がメディアワークス電撃アドベンチャー誌(1992~98)とか、富士見のドラゴンマガジン(1988~)から派生したRPGドラゴン(1995~97)になるんだろうけど、当時はこれとホビージャパンRPGマガジン(1990~99年)やアスペクトLOGOUT誌(1992~95)を購読していたら、日本のTRPGの動向は大体、把握できた。他にも、新和オフィシャルD&Dマガジンとか、翔企画のRPGコミック→モンスターメーカーマガジンとか、懐かしの雑誌名を挙げるだけで思い出が尽きないわけだが、
『ええと、角川のハイパーT&Tは、社会思想社版を改訂整理した作品で、あくまでT&Tの追加ルールだった前作を、それだけで最初から始められるようにした独立作品ということになる。そして、この作品のみ、戦士の防御力が大雑把な2倍ではなく、もっとゲームバランスを重視した鎧+3、盾+1という内容になった。全体的に、死んで何ぼの豪快なシステムを、キャンペーン物語が展開できる程度のバランスに微調整されている印象だな』

リバT『みなまで言うと長くなりそうなので、2、3点、新版のここがポイントだと言ってくれれば』

NOVA『う~ん、戦士の鎧ルールの変更以外には……おっ、これか。ドワーフの体力度と耐久度を決める修正係数が、2倍ではなく1.5倍になった。どうやら、先だってのミスは、この改変と混同していたようだ。まあ、他にも細かい違いを分析すると時間が掛かるし、もっと大切なことがある』

リバT『何ですか?』

NOVA『戦士系以外の職業について、説明していないじゃないか』

リバT『確かに、そうですね。では、魔術師と呪術師の違いは?』

NOVA『使える魔法の種類が違う。まあ、これは後にソード・ワールドで魔術師がソーサラーとコンジャラーに分かれた原型と言えるな。魔法戦士と魔導士も同じで、魔術師魔法を使う魔法戦士と、呪術師魔法を使う魔導士に分かれたわけだ』

リバT『盗賊と怪盗の違いは?』

NOVA『T&Tの盗賊は、剣と魔法の両方を使えるグレイマウザーみたいなキャラと定義されているが、ハイパーT&Tで魔術師魔法と呪術師魔法の2系統に分かれたために、低レベルながら両方使える何でも屋的な盗賊の立場が上がったと言えよう。一方、怪盗はオリジナルの怪盗魔法を使える新職業だ』

リバT『怪盗魔法ですか』

NOVA『1レベル魔法が〈宝の匂い〉とか、最高の20レベル魔法が〈実は生きていた〉とか、名前が面白い。個人的には14レベルの〈大変身〉がXライダーやエグゼイド的でいいなあ、と思う』

リバT『いかにも、怪盗Xって感じですね』

NOVA『そして、ハイパーT&Tは乱戦に参加しないキャラが、単に参加しないだけでなく、敵の攻撃を乱戦の最中にかい潜って、自分の特殊攻撃をヒットさせる特殊戦闘ルールが正式に実装されて、旧T&TではGMの裁量に任されていた部分を、きちんとシステマチックなルールに落とし込んだのが大きい。これによって、戦士が壁になって戦線を支えている間に、他のキャラが乱戦の隙を突いて、うまく立ち回れる形にしたわけだ。結果、元のT&Tはシンプルなルールという点では初心者から初級者向きだけど、プレイヤーが少し変わったことをしたくても、それをGMがアドリブ対処しにくいという意味では、上級向きとも言えるゲームだ』

リバT『ええと、ルールに決まっていないことをどうするか考えるだけの機転が必要ということですか』

NOVA『その通り。ルールが曖昧ということは、覚えることが少ない代わり、想定外の事態に対応するには熟練が必要ということだな。一方で、ハイパーT&Tの方は、冒険中にプレイヤーが取りたがるオプション行動をきちんと用意して、その処理ルールをも実装したために、全部覚えるのは大変だけど、ガイドラインがしっかり設けられているということは、ルールブックを調べることさえできれば、それに基づいて対処できるという意味で、中級者向きと言える。とりわけ、日本人はルール化されている方が安心して臨める民族だからな』

リバT『ルールが多いと、読みたくなくなるプレイヤーさんは?』

NOVA『TRPGには向かないだろう。まあ、ルールブックを持っていても、まともに解読できず、断片的な知識だけを語って、自分はゲーマーだと思い込んでいる人間もいるからなあ。ルール語りをしたいなら、とりあえずそのルールでキャラを数人作って、ザコと模擬戦でもしてから、ルールの使い勝手を考えるのがゲーマーだろう。自分がプレイしたこともないルールで批評行為を行うのは、ゲーマーとは言えない。
『もちろん、いろいろとプレイしてきたから、読めば大体イメージできる程度のゲーム経験を持ち合わせているなら、一家言に値するのかもしれんが、ことゲームに関する限りは、プレイ経験による感想は未経験者のルール蘊蓄や理屈に優先する一方、ルールを読んでいろいろ想像力を働かせられるのが優れたゲーマーの資質ルールが自分のイメージで違和感を覚えると発言すること自体、自分がそのルールを理解する資質がないということを暴露しているに等しいからな。批評する際の言葉によって、自分のセンスのなさを示していることを自覚した方がいい。もちろん、ゲーム語りする人間は普通、自分のプレイ経験や手持ちの資料に基づいて行うものなので、それがないのに嘘やごまかしで他人を騙せると思っているなら、そういう不誠実な人間と楽しく話せるとは思わないわけだ。嘘つきと分かっている人間と誰が付き合いたいと思う?』

リバT『それは、「俺の言葉の半分は妄言だぜ」って決めゼリフを持つ人の言葉とは思えませんが』

NOVA『うっ、それを言われると一本とられた気分だな。まあ、半分は妄言で、半分が真実ってことはまるでシュレディンガーの猫っぽいので、これを称して「シュレディンガーの嘘つき」と言ってみようか』

リバT『どういう意味ですか?』

NOVA『観察して見るまで、嘘か真実か分からない。半信半疑で観察しろってことだ』

リバT『まあ、100%の正直者も、100%の嘘つきもいないのが現実というものでしょうが』

NOVA『ただ一つ言えるのは「とある男の言うことは、事実誤認や資料もなしに勝手なことを書いて、しかも後から誤りを指摘されても、謝りもせずにスルーして、時が経てば、また何食わぬ顔をして、お久しぶりです、とか言って、また間違いだらけの駄文を書き残して、俺にバカにされる」というパターンになっていることだな。まあ、こいつはバカで嘘つきだから、と俺も暴言吐くのに慣れてしまっている以上、これも吉本みたいな芸なのかもな、と感じたりもするわけで』

リバT『芸なんですか?』

NOVA『まさか。こっちは何の仕込みもしてないし、弄られ放題の彼がそれで喜んでいるのか、憤っているのか、悲しんでいるのかも分からん。何にせよ、彼のコメント書き込みが俺を喜ばせる類のものでないのは確かなので、喜びはしないものの、憤り説教芸として楽しむネタぐらいにはしないとな』


★新世紀のT&T(2005年~06年)


NOVA『さて、4冊めのルールブックは、新紀元社から出た7版だな』



リバT『画像に貼り付けているのは、ルールブックではなく、リプレイのようですが』

NOVA『ルールブックの写真は、後で8版といっしょに貼る。それより、この7版については、ルールを持ってるけど、あまりじっくり研究していないんだ。だから、大雑把にしか語れん』

リバT『最初の邦訳T&Tが5版で、それから7版ってことは、6版もあるのですか?』

NOVA『公式にはないぞ。5版の後、本国でもファンが好き勝手にルールを改造して、同人誌とかでT&T改変ルールがいろいろ出回ったらしい。これがTSR時代のD&Dだったら、きちんと取り締まって訴訟沙汰になっていたかもしれないが、T&T製作元のフライングバッファロー社およびメインデザイナーのケン・セント・アンドレ氏は大らかな気質なので、「T&Tを愛するファンが作った作品は、みんなまとめて6版として認可します」と7版の前書きで宣言しているんだ。つまり、日本ではハイパーT&Tを6版扱いしても問題ないわけで(もちろん、SNEは先方の許可をもらった上で、ハイパーT&Tを展開していたんだが)』

リバT『空飛ぶ雄牛さんは、何ともファンを喜ばせる寛大な会社なんですね』

NOVA『牛年らしくヨイショしてもバチは当たるまい。で、この7版は「T&T誕生30周年記念作」でもあって、それが日本ではRPG冬の時代を乗り越えた2006年に初出版されたT&Tだったりする。当然、ハイパーT&Tとは全然違うゲームで、5版を受け継ぐ大雑把なゲームに戻ったわけだけど、俺はただのコレクターアイテムぐらいの気持ちで購入しただけだ。だから7版でキャラ作りは一度もしたことがない』

リバT『TRPGゲーマーとしては、ルールを語る資格はありませんね』

NOVA『だってT&Tなんだぜ。ハイパーから退化したような簡単なゲームだから、別にダイスを振ってキャラ作りしなくても、ルールを読むだけでイメージが湧くじゃないか。そう思って、ざっと読んで、ああ、やっぱT&Tだと思って、本棚に入れて終わり』

リバT『それでもファンですか』

NOVA『当時の俺は、ホームページでD&Dのコンピューターゲームのリプレイ記事を書いていたり、FEARさんのアリアンロッドRPGのリプレイにハマっていたり、足の骨を折っていたり、自分の塾の立ち上げだったりで忙しかったんだよ。T&Tにハマっている場合じゃない』

リバT『足の骨を折るのに忙しいって何ですか?』

NOVA『だって、今、7版のルールブックの発行日をチェックすると、2006年12月16日初版とある。その年の12月21日に可哀想な俺は事故って入院生活に陥ったから、7版ルールを買ったのは後日、退院して歩けるようになってからだと推測する。そんなこんなでバタバタしていたから、結局、きちんとルールを読んだのは8版ルールを買ってからということになる』

リバT『遅すぎですよ』

NOVA『ということで、8版ルールの話に移る。まあ、リプレイなんかは読んで楽しんでいたんだけどな』


★8版は完全版(2015とか16とか18とか)


NOVA『で、30周年記念のT&T7版ルールは、俺の本棚にしばらく埋もれたまま時代は流れ、40周年記念でDELUXなT&Tルールが2015年に本国で出版された。日本では翌2016年「T&T完全版」と称するBOXルールが出たわけだ』


リバT『グランドマスターはそれを買ったんですね』

NOVA『いや、買ってない』

リバT『買ってないのに、偉そうに語っているんですか?』

NOVA『まあ、聞け。この箱入り完全版セットは、安さが売り物のT&Tなのに6000円以上もする大物だぞ。7版ルールが新書版で2000円弱というのに、さすがにT&Tに6000円は払えない、と当時は思ったんだ。D&Dやパスファインダーには嬉々として払っていたのに』

リバT『グランドマスターのT&T愛はその程度だったのですか?』

NOVA『だって、箱の中に何が入っていると思う? 6面ダイス30個とか、電卓とか、そんなおまけだぜ。ゲーマーとして、6面ダイスなんていっぱい持っているんだよ。電卓なんて、ルールブックを読むのに使わないだろう。ついでに、俺は過去にT&Tは何度もプレイしたことはあるが、電卓なんて使わなくても、紙で計算はできる。ルールブックに金は払いたいが、電卓入りで高くなっているのだったら、電卓抜きで安く売ってくれよ、と俺はゲームの神と、心の仏に祈りを込めたんだ。そうしたら、ラッキーなことに2年後の2018年、花粉症ガールが生まれた年に、書籍版のルールが発売されたんだな。俺は願いが叶った、と喜んで買ったさ。その一冊がこれだ』

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NOVA『これは後から知ったことだが、箱入りのルールは翻訳を急いだからか、いろいろと誤植があったらしい。で、書籍版のルールはその誤植が改善されていて、やはり果報は寝て待てと感じたわけだが、要は自分の買ったものは良い物だと考えるのが人間、幸せに生きるコツなわけで』

リバT『それでグランドマスターは、8版で喜び勇んでキャラ作りした、と』

NOVA『いや、していない』

リバT『ゲーマーの風上にも置けませんね』

NOVA『だったら、今、作るか。まずは、サイコロ3個を8回振る。4、6、7、13、14、6、9、4』

リバT『期待値10と考えると、ずいぶん低いダイス目ですね』

NOVA『まったくだ。合計63で、平均8弱か。このままだと体力4、耐久6、器用7、速度13、幸運14、知性6、魔力9、魅力4という逃げ足と運だけが高いダメダメ君になってしまう。ねえ、GM。振り直していい?』

リバT『私はGMではありませんが、振り直さない方が面白いので、このままキャラを作って下さい』

NOVA『仕方ないなあ。こうなったら、種族はレプラコーンを選んで、おふざけプレイに走ってやる。種族修正を掛け算して、体力1、耐久4、器用10、速度13、幸運21、知性7、魔力13、魅力4。ええと、レプラコーンには魔術師が推奨されているんだけど、魔術師になるには知性と器用度がともに10以上必要なんだな。しかし、こいつはバカすぎるので魔術師になれない。だからと言って、体力もないので、戦士にもなれない。すなわち、こいつは盗賊になるしかないわけだ。それにしても、実際にこのキャラを使って冒険に行けと言われたら、俺はどうしたらいいか心底悩むぜ。今までT&Tで何十人ぐらいもキャラを作ってきたが、これが過去最悪の出目だ。俺がGMなら、あまりにも可哀想なので、振り直しを許可してやるところだな。これで冒険を楽しめる未来が、俺には全く見えん』

リバT『そこを何とかするのが、熟練のプレイヤーでしょ?』

NOVA『一応、個人修正を計算してみよう。ええと、個人修正は体力、器用、幸運、速度の4つで12を越えている分を合計するんだな。速度で1、幸運で8だから+9になる。昔は9より小さい分はマイナスされるから体力が低くて、修正マイナス8で差し引き+1ってところだが、8版になってからはマイナス分の修正は考えなくて良くなったから、個人修正+9は決して悪くない。うん、こういうルールの改変は、実際にキャラを作ってみないと分からなかったなあ』

リバT『しかし、体力1でまともな武器は持てるのでしょうか?』

NOVA『持てねえよ。ええと、折りたたみナイフ(2d6)とか、カルトロップ、つまり、まきびし(1d6)しか使える武器がない。防具も、防御点1の布の服だけだ。それで耐久4だと、ダメージが5点飛んで来たら、あっさり死んじゃうんですけど? それにしても驚いたのは、レプラコーンって8版だと盗賊になれたんだな。それまでの版では、魔術師にしかなれなかったのに。どっちにせよ、このキャラが冒険で長生きできるとは思わないけど。ソロアドベンチャーをプレイしたら、いきなり死んでしまいそうだ……ということで、おそらく苛酷な運命を辿りそうなレプラコーン盗賊の……そうだな、名前は「流離のセイ・テンコー」ってのはどうかな』

リバT『本当に、そういうキャラを使いたいのですか?』

NOVA『使いたくねえよ。ただのブラックなジョークだ。とりあえず、俺が初めて8版T&Tで作ったキャラは絶望的な能力値の低さが特徴でした。知性度1.5倍のエルフを選んでも10にならないので、魔術師は絶対に無理で、盗賊になるしかないんだが、体力のなさを克服するにはドワーフしかなくて、体力8、耐久12、器用7、速度13、幸運14、知性6、魔力9、魅力3なら個人修正+3で、ショートソード(3d6)とリングジョインドプレートアーマー(防御点8)なら、かろうじて戦えるかな。何にせよ、優秀なキャラとは、とても言えないけど』


★7版から8版にかけての考察初め


NOVA『で、今、試しにダイスを振るだけでも、あれこれ楽しく、どうしようかと考える俺がいたんだが、改めて思ったのは、TRPGのルールブックってざっと一読しただけで概要は何となくつかめると思う(これまでの経験の賜物だが)。だけど、それだけじゃ分かったつもりにしかなっていない。ええと、学生さんの教科書とか問題集をざっと見るようなもので、感じだけは分かるものの、中身の記述を吟味したり、実際に問題を解いたりする過程を経ないと、人に語るまでには至らないわけだな。
『英語の教科書のイラスト見て可愛いと感想書いたり、どの単元でどの文法を教えるかチェックしたり、なるほど前の版は海外にドラゴンボールがウケていると書いてあったが、新版はワンピースの時代になったかとか、ジョージ・ルーカススターウォーズ紹介が新しい作品の写真になったなとか、そんなことを考える時期が数ヶ月後には迫っているんだが、それだけ見ても、英語の本文を実際に訳して見ないと、その教科書で人に英語は教えられない。まあ、自分で訳さずに教科書ガイドのお世話になる手もあるが、まずは自分で訳すでしょ。で、訳に自信が持てない、変わった表現を見つけた場合に調べたりする。TRPGのルールブックの研究も、自分にとってはそういう作業と変わりない、と思うわけだ』

リバT『なるほど。教科書とルールブックを似たようなものと考えるのは職業柄という奴ですね』

NOVA『で、版によってはマイナーチェンジなこともあれば、大きく変わることもあるし、場合によっては地域の方針で、採用する教科書会社が変わることもある。私学の子を教えるためには、その子の使う教科書を別に手に入れる必要も出てくるし、まあ、基本的に教える大筋は同じでも、細部の違いは分かっていないと教えるのに支障をきたすんだな。もちろん、十分な準備をしていたと思っても、教えているときに準備不足に気付いて手早く調べたり、アドリブ処理したり、資料が足りないことに気づいて、後日、必要資料を買いに行くとか……うん、TRPGの趣味とやっていることが大きく変わらないな。何にせよ、資料も調べずに、自分の記憶だけで物を語っていては「今の時代にそぐわない話をしている」可能性もあるし、そこはきちんと調べて、自分の頭をアップデートしないと、仕事にならないわけだよ』

リバT『では、T&T語りもアップデートしないといけないわけですね』

NOVA『俺の中では、ハイパーT&Tの記憶が根強くて、7版はあまり根付いていないんだが、実際、7版はそれほど展開が続かずに一時的な復刻として終わったからな。しかし、8版は違う。何せ、復刻に際して、専門雑誌が創刊されたし、それがウォーロックマガジンとして発展を遂げたし、そこからコロナ禍で編集も苦労した挙句、今度の号で終了し、春からGMマガジンと統合一元化する流れだし(これを縮小ととらえるか、発展のための整理ととらえるかは今後の流れ次第で、うかつな断定はできない。応援する側としては、密度の濃い雑誌になって欲しいと期待するばかり)、要するに8版でのT&T復刻が、AFFやソード・ワールド2.5の新展開の呼び水になったということだな。そう考えると、T&T7版が呼び水になってソード・ワールド2.0の立ち上げになったとも言えるし、SNEにとってのT&Tはその後の発展の契機になる、縁起のいい非常に重要な作品だということなんだ』

リバT『T&Tの8版は、ソロアドベンチャーもどんどん復刻バージョンから新作まで登場して、往年の最盛期をとうとう越えたようですね』

NOVA『ソロアドベンチャーは、昔のものを持っているから別にいいかなと思っていたんだが、新作がどんどん出る流れになると、少し目の色が変わってきたのが現状だ。俺としては、いきなり飛び付かずに少し様子見していた面もあるし、他の追っかけ作品を優先していたこともあるが、ここでT&Tにも改めて投資したいなあ、なんて思ったりもしている。何せ歴史あるゲームだし、ある面でD&Dよりも伝統あるゲームと見なすことができるからな』

リバT『D&Dよりも伝統ある、というのは凄いですね。どういう面で?』

NOVA『D&Dは長く続いていると言っても、版元だけでなく、ゲームデザイナーもコロコロ変わっているんだ。例えば、生みの親のゲイリー・ガイギャックスさんは2008年に亡くなったし、版が変わるごとに作り手も別の人になっていて、特定の誰かの作品でなく、一種のブランド商品と化している。ガンダムというブランドが富野さん以外の製作者に引き継がれているようなものだな。あるいは、スターウォーズジョージ・ルーカスの物でなくなっている現状に近い。
『それに対して、マクロスのシリーズは河森正治監督がずっと関わっているし、エヴァ庵野秀明監督抜きには続いていない。そして、T&Tはケン・セント・アンドレ氏とフライングバッファロー社がずっと続けている。だから一人のゲームデザイナーを中心としたチームが継続サポートしているTRPGという意味では、T&Tが最長なんだよ』

リバT『なるほど。D&Dをガンダムスターウォーズに例えるなら、T&Tはマクロスでありエヴァである、と』

NOVA『メインデザイナーの継続性という意味でな。ともあれ、7版と8版はまだまだ語るにはルールの読み込み不足だと思うので、次回で、戦士関連の完結編記事を書いて、一旦、話を締めくくりたい。ルールを持っていても、読み込み不足だと、人を楽しませる記事は書けないと思うからな。俺も語るからにはしっかり精進しないと』

(当記事 完)