ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

ここまでのD&D・パラディン総括

@パラディン発展史

 

 

アスト「さて、リバTのおかげで、パラディン話も順調に進んでいるんだが、ちょっと整理してみよう。聖戦士とも称されるパラディンは元々、聖職者(僧侶とか神官)の魔法が使える戦士の上級職として、74年のオリジナルD&DからアドバンストD&Dに受け継がれた伝統的な職業だ」

 

ダイアンナ「ドラクエの主人公勇者は、多分にパラディン的な職業として扱われたけど、後に勇者とは別にパラディンが登場するようになっているね」

 

アスト「ドラクエにおけるパラディン像は戦士ではなく武闘家と僧侶の複合職で、いわゆる武闘僧(モンク)みたいなイメージが強かったんだが、パラディンが登場した際のシステム(6と7)では、装備品は職業ではなくてキャラクターに基づくもので、例えば、マッチョな大工のハッサンは元々、戦士のように鎧を装備できるから重装鎧パラディンになることができる。しかし、魔法使いタイプのバーバラは鎧が装備できないので、パラディンに転職してもHPや特技は強化されるが、肝心の装備品が貧弱な軽装パラディンにしかなれない。つまり、パラディンだから頑丈で頼もしいというイメージにはそぐわないわけだな」

 

リバT『その後、9では3のようにキャラを自作するシステムなので、パラディン独自の装備体系が設けられ、さらに11では重騎士キャラのグレイグの役職がパラディンと呼称され、当初は敵の将軍だったのが、やがて主人公勇者を守る盾として仲間になります。パラディンのイメージから、武闘家要素が次第に薄れてきたわけですね』

 

アスト「僧侶戦士から武闘家に転職したキャラだと、今はダイ大のマァムが旬だと思うが、彼女のことをパラディンと言ってしまうと、イメージがずいぶんと違う。と言うのも、ドラクエパラディンが登場したのはダイ大の終了後になるからな。役割的には、クロコダインやヒュンケルの方がパラディンの要素を強く持っている」

 

リバT『勇者の盾となったり、グランドクルスだったりですね』

 

アスト「それと、和製RPGパラディンという言葉をメジャーにしたのはFF4だと考えるが(それ以前は白騎士や君主という名で呼ばれていた)、そこで注目された能力が『かばう』だった。味方の盾になるというのは、それまでのTRPGではキャラの特殊能力とは見なされていなくて(誰でも選択できる行動オプションの範疇)、D&D→FF→D&Dというシステムの逆輸入が起こっているのも興味深い。歴史的にはD&Dが元祖で、後からコンピューターRPGが追従的に発展してきたんだが、90年代から新世紀にかけてコンピューターRPGの発展が著しく、そちらで独自に進化したシステムをTRPGが後追い的に取り入れるケースも増えてきた」

 

ダイアンナ「D&DがFFから学んだと言うのかい?」

 

アスト「もしかすると、直接ではなくて間接かもしれないし、海外でもパラディンのかばう能力を採用したコンピューターRPGがあったのかもしれないが、ここでは日本のゲームファンが分かりやすいように、FFをコンピューターRPG一般と置き換えて読んでも構わない。要は、古典であったD&Dも新世紀ごろにモデルチェンジして、時流の動きを取り込んで行ったって話だ。他のゲームで採用されているシステムに無頓着だったら、時代遅れの化石だろう? 他のゲームでできることは、D&Dでも再現できることを目指して、その上でシステムの整合性をきちんと維持しないといけない。

「まあ、新しいものを目指すために、いろいろな要素を混ぜるという発想は悪くないんだが、それがきちんと機能するかどうかは別問題だからな。混ぜるにも知恵や技術が必要になるんだよ」

 

@混ぜるな危険、の話


アスト「異なる要素を混ぜるのはバカでもできるけど、それでシステムや世界観なんかが破綻しないようにするには、デザイナーセンスが問われることになる。あるシステムは、そのシステムだから上手く行く、他と混ぜようとするなら、数値データとかを比べて破綻しないかをチェックしないといけない。何でも混ぜこぜして、凄いものを作ったと思い込みがちな人間は、果たして、その混ぜたものが調和しているか、噛み合わせが良いかを考えてみるといい。脂ものとかき氷を一緒に食べると、お腹を壊しやすかったり、色の三原色を全部混ぜると汚い色になったり(光の三原色はきれいなんだけど)、組み合わせて上手く行くものと行かないものがあるってことだ」

リバT『光と闇を合わせ持つとか、炎と氷の複合呪文とか、異なる属性の組み合わせは最強を生むかもしれませんが、バランス感覚に注意しないと成功しませんよね』

アスト「混ぜたら凄いというのは、未熟者が陥りがちな罠だが、混ぜるだけで凄いものになるなら、誰だってスーパー錬金術師になれる。混ぜていい物、悪い物、これは作業者の知恵や技術にも関わってくるわけだが、混ぜる素材の知識もろくに持っていない者が、手っ取り早く一石二鳥なんて考えたら、まあ目も当てられないよな」

リバT『でも、ここではD&Dの3版とか4版とか5版とか、T&Tとか、パグマイアとか、ドラクエとか、いろいろ混ぜて話したりしていますよね』

アスト「それらは関連性があるから、話をまとめたり、比較対照しやすいんだよ。ただ、記事ごとに的を絞らないと、どこに進むか見えにくくなるんだけどな。NOVAの野郎が寄り道脱線というのも、視点が踊りすぎているからだろう。もっと集中しろよ、とオレなら言うね」

ダイアンナ「アストは、翔花ちゃん一筋だもんな」

アスト「ああ、翔花ちゃんはD&Dみたいに元祖だからな。だが、今は黒歴史みたいになりそうな4版、花粉症ガールの4号が自分の性に一番合ってると思うぜ」

ダイアンナ「そ、そうか。元祖を称える気持ちとは別に、4番めを愛する気持ちはあるってことだな」

アスト「だから、ここまでの記事タイトルも4色なんだ。オレは4って数字が大好きだからな」

ダイアンナ「それを聞けて何よりだ。あたしも花粉症ガール4号に認定された女だからな。4の魅力を訴えるとしよう」


@3から4への流れ


アスト「D&Dは3版からが新世紀バージョンなんだが、この進化の歴史を追っていくと、いろいろ教訓が得られるんだな。まずは3版。これは既存のD&Dの要素の全てを取り込もうとしつつ、より整合性を高めたシステムと言える。その結果が、ソード・ワールドっぽい兼職システムになったということは、80年代末〜90年代の清松さんの先見性が凄かったということだな」

ダイアンナ「複数の職業クラスの能力を個別に組み合わせて、自分だけのキャラを組み上げていくシステムか」

アスト「ただし、D&Dにあって、ソード・ワールドにないのは、上級クラスの概念だ。それは、ロードスRPGの方が採用して、ソード・ワールドとはシステム面で棲み分ける形になった」

リバT『でも、転職にしても、兼職にしても、元々はAD&D時代からありましたよね』

アスト「AD&Dの転職(デュアルクラス)はドラクエ3と同じで、5レベル魔術師が戦士に転職したら、もう一度、1レベルから始めて、しかも5レベルになるまで覚えた魔法が使えないという面倒なシステムだった。それに兼職(マルチクラス)は人間以外の異種族だけに許されて、しかも限られた選択肢だったからな。どちらかと言えば、特殊ルールの類だったんだが、3版のマルチクラスはそれがキャラ育成の目的とも言えた。例えば、上級クラスの海賊を目指して、技能や能力などの条件を満たすために転職するという形」

ダイアンナ「パラディンから、さらに転職することはできるのか?」

アスト「サプリメントでは、ナイト・オブ・ザ・カリス(聖杯騎士)とかナイト・プロテクター(守りの騎士)などの上級クラスがあるし、ブラックガード(暗黒戦士)という悪堕ちパラディン推奨の上級職もあるが、パラディンは一度他の職業に浮気してしまうと、二度とパラディンのクラスレベルを上げることができないという制約がある。パラディンは他の職業に比べても誓いの道に一筋でないといけないわけだ」

ダイアンナ「つまり、パラディンは不自由騎士というわけか」

アスト「ロードスの騎士として名高いパーンは、自由騎士の称号を得たパラディン(D&Dリプレイ版)だったのにな」

ダイアンナ「とは言え、3版は自由な兼職システムが売りのシステムということだな」

アスト「その通り。パラディンという例外はあっても、3版は自由度が高く、何にでもなれる自由主義万歳システムと言える。自分のキャラの人生設計をいろいろと考えて、キャリアアップを図りたいプレイヤーは3版を評価する。だけど、そこまで先のことを考えられないプレイヤーには、自由度の高さがネックとなって、初心者にはとっつきにくいシステムとも言えた。何でもできるというのは、何を選べばいいのか分からないという声も上がるわけだ」

リバT『自由度の高さは正義だと考えますが、世の中には自由をうまく使いこなせない下々の者もいるのです』

ダイアンナ「下々の者って、ずいぶんな言い方だねえ」

リバT『私めは自由の女神の化身ですから、自由という宝を有効に活用できない者は下々と見下す権利はございます』

アスト「要するに、選択肢の多さが問題になるんだな。3版は兼職が容易だから、最初は基本職のファイターを選んだが、次のレベルアップ時にはファイター以外にも選べる職業はいっぱいある。ファイターの代わりにレンジャーを選ぶのは有利だろうか、あるいは武闘家モンクもいいかもしれないな、とあれこれ悩んでいるうちに、相性の悪い組み合わせを選んでしまって、育成失敗ということになりかねない」

ダイアンナ「何が有利か考えるのが面白いんじゃないか」

アスト「でも、10個から選ぶか、3個から選ぶか、初心者ならどっちが選びやすいと思う?」

ダイアンナ「そりゃ、選択肢は少ない方が選びやすいな。その選択肢の中に選びたいものがなければ別だけど」


アスト「ということで、3版の自由さを制限して、バトルに特化したのが4版ということだが、このシステムは明確にキャラの戦闘中の役割を示すことで、自分のキャラが何をすべきかという振る舞い方まで制約してくる。ダメージ特化型、防衛型、集団対応型、回復兼指揮型というチーム内のポジションが職業ごとに設定され、マルチプレイヤー協力ゲームの要素が大きい。その中で、回復役のクレリックがリーダーであることの意味が分かるか?」

ダイアンナ「回復役がパーティーの命綱だからか。パーティーのHPの把握や、司令塔としてパーティーの中衛ポジションに立つことが求められたり、猪突猛進型の戦士でも自分のHPを回復してくれるクレリックの指示に反抗するような真似はあまりしないし、パーティー全体の行動を上から目線で指示しても、一番角が立たない職とも言える」

アスト「そんなところだな。オレとアニーがケンカしても、リバTが冷静になだめてくれたら、仲直りすることも考えられる」

リバT『そうでしょうか。ケンカしたら、クイーン・ダイアンナの目にも止まらぬ攻撃で、アストさんは一瞬で無力化されていますが。あれって、どうやってるんです?』

ダイアンナ「大したことはない。血の契約(ブラッド・パクト)を利用した幻術の応用だ。吸血鬼の能力で、血を吸った相手を瞬時に眩惑催眠状態に陥れることができる」

アスト「……ということで、今のオレはアニーに逆らうことができないんだよ。まあ、自由意思まで奪われているわけじゃないから、完全に奴隷というわけじゃないんだがな」

リバT『それは自由に反する状態ですね。必要なら、解放して差し上げますが?』

アスト「いや、オレはこれで納得している。結婚した男が、妻に財布の紐を握られているようなもんだ。オレが暴走しても、アニーが止めてくれるだろうしな」

ダイアンナ「あたしが暴走したら、リバTやダディーが止めてくれるはずだしね」

リバT『なるほど。自由を制限することで、得られる安心感もあるのですね。チームの司令塔が誰かを明言するシステムの方が、それぞれの役割や持ち味を発揮しやすくなって、全体のパフォーマンスが良くなる、と』

アスト「とにかく4版のシステムは、パワーの撃ち合いという派手な戦闘感覚と、チームの連携戦術を重視したバトル中心なもの。キャラ育成については、その都度のパワーの選択肢の数を減らしつつ、選択機会を増やしたり、選択をミスしても後から取り直しができるようにして、トレーディングカードゲームでカードデッキを組むような感覚で、試行錯誤も込みで育成できるようになったわけだ」

ダイアンナ「前の成長で選んだパワーが、どうもこのパーティーだと使いにくいので、今回の成長では別のパワーに置き換える……ってことができるんだな」

アスト「とにかく、4版はバトルに特化して、バトルの楽しさを最大限に発揮できるシステムとして製作されたんだが、バトルよりもロールプレイや物語の面白さを重視する層を切り捨てたり、チームの連携よりもキャラ個人として派手に立ち回りたい者を面倒がらせたり、3版の自由度の高さを愛したプレイヤーが、3版のシステム後継者のパスファインダーに流れていった」

ダイアンナ「そのパスファインダーって、どういうゲームなんだ?」


パスファインダーの話




アスト「3版が自由なゲームと言ったな。その前にAD&Dの版権を持っていたTSR社が、D&Dブランドを守るために徹底した規制方針を掲げ、自社のD&D製品を使ってユーザーが自由に2次創作などの題材にすることを厳しく禁じた過去があったんだ。D&Dのシステムを使って日本独自の世界であるロードス島の物語を展開することも禁じ(その結果、独自にロードスRPGソード・ワールドなんかが誕生する原因となった)、一説によるとコミックの『BASTARD』もD&Dらしさを払拭するよう厳重抗議されたらしい。とにかく、版権管理にむやみやたらと厳しかったTSR時代の反動で、現在のD&Dを展開しているWofC社は、極力ユーザーフレンドリーな姿勢を示すようになった。その一つが、D20システムのオープンライセンス化だ」

ダイアンナ「オープンライセンスとは?」

アスト「基本のゲームシステムだけなら自由に無料で使ってもいい、ということだな。コンピューターにおけるOSプログラムやブラウザなんかは無償配布して、専用ソフトやアプリなどを販売して収益にしようというシステム。D&Dの場合、サイコロの振り方や基本の能力値、育成システムなんかはゲーマー共通の財産として、誰でも使っていいと判断したんだな。例えば、ジャンケンのルールや、トランプを使ったババ抜きやポーカー、7並べなどのルール、それに将棋や囲碁のルールそのものに著作権はないようなものだな」

ダイアンナ「ああ、伝統ゲームのルール同様、D&Dも誰でも自由に使っていい、となっているわけか」

アスト「だから、ネットでD&Dの話をしても、どんなルール内容かを説明しても、自作データを発表しても、誰も文句は言わない。さらには、そのルールを使った商品を製作し、売り出しても構わないわけだ」

ダイアンナ「それって、ずいぶん太っ腹だな。そんなことで商売が成り立つのか?」

アスト「ただし、ただで使用できるのはシステムだけで、キャラクター作りの詳細に関する種族データ、職業データ、技能や特技、呪文、装備品、モンスター、宝物、そして世界観に関係するデータなどは無料じゃない。それに公式が認めた商品という証のD&Dロゴ、D20システムのロゴにはお金がかかる。そういうロゴがない商品は、勝手に作ってる同人誌扱いだから、品質保証されない紛い物って印象になるな。それでも、版権料を払わずとも、自由にファンが好きなD&D作品を発表できることは保証されたわけだ」

ダイアンナ「公式はいちいち認定しないけど、ファンの同人活動はご自由にってことか。そうしてファンがネット上の口コミでD&Dは面白いと広げれば、それが宣伝にもなって公式商品が売れるようにもなるとか、メリットがいろいろある、と」

アスト「そして、公式が3版から4版に乗り換えて、3版を愛したファンたちは4版に乗り換えることを受け入れず、3版(正式にはマイナーチェンジの3.5版)のシステムやデータを発展改良した新ゲームを、有志で協力してネット上で作れるんじゃないか、という動きになる。オープンライセンスがあるので、D&Dによく似た改編システムを作って発表する自由はユーザー側にある。名前はD&Dと呼べないけど、世界観は公式のフォーゴトンレルムが使えないけど、自分たちが買った3版のデータをもっとユーザーが好む形にブラッシュアップした作品、それがパスファインダーというわけだ」

リバT『非公式にD&D3.75版と呼ばれていますね。なお、無料で使えるパスファインダーのルールやデータ(日本語版)はこちら

ダイアンナ「パスファインダーにも当然、パラディンはいるんだよな」

アスト「このページだな。3版について、ここでいろいろ話したことの発展版といったところか」

リバT『念のため、D&D3版以降の発売経過を年数順にリストアップしてみますか。( )内は日本語版発売年ということで』


●D&D3版:2000年(2002年末)
●D&D3.5版:2003年(2005年)
●D&D4版:2008年(2008年末)
パスファインダー:2009年(2017年)
●D&D5版:2014年(2017年末)
●パグマイア:2016年(2019年)
パスファインダー2:2019年(未定)


ダイアンナ「パグマイアも、このリストに含まれるのかい?」

リバT『ええ。このゲームも、D&D5版のオープンライセンスに基づいて、出版されたゲームですからね』

ダイアンナ「つまり、オープンライセンスって、堂々とD&Dもどきなゲームを出せる制度ってことかい」

アスト「だから、ここで話せるネタも尽きそうにないってことさ」


@そして5版へ


ダイアンナ「結局、4版はパスファインダーに負けたって話だね」

アスト「多くの3版ユーザーを切り捨てた形になったからな。4版は画期的なシステム改変だったが、結局のところ、ユーザーが望んだゲームじゃなかったってことだな。緻密なバトルが楽しめるフィギュアゲームってことだけど、それだったらTRPGの必要がないってことかな。かつてのD&Dファンはパスファインダーに流れ、新規のD&Dファンはバトルの緻密さを面倒に感じて、その結果、新しい初心者獲得およびオールドファンの呼び戻しを図ったのが、5版ということになる」

ダイアンナ「5版の特徴は?」

アスト「古き良きAD&D時代(80〜90年代)の懐古復活がまず、オールドマニア向きの要素として大きいな。パスファインダーが新世紀の3版の後継者だとするなら、それに対抗するには3版以前の元祖D&Dはこれだという路線を打ち出すべし、という戦略は分かりやすい。新しい改革ゲームの4版で失敗したんだから、保守王道に戻そうというのは大いに納得できる話だ」

ダイアンナ「で、そういう5版の展開があるから、レトロ好きなダディーもD&D記事を積極的にここで展開したくなった、と」

アスト「言っておくが、4版は4版で良いゲームなのは間違いないぞ。一定層の人気は確保したし、きちんと丁寧に構築されて、何をしたらいいかというガイドラインが明示されて初心者向きではあるし、成長したら段階に合わせて選択肢が広がる奥深いゲームで、実のところ日本人の気質に随分あったシステムだったと言える。日本人はアメリカ人に比べて、きちんとルール化されて枠にはめられることを歓迎する人間も多いからな」

ダイアンナ「でも、ダディーは4版にあまり付いて行かなかったじゃないか。ルールブックも完全にはそろえていなかったみたいだし」

リバT『プレイヤーズハンドブックを買っただけでしたね。それとリプレイを買って、これは自分がするべきゲームではないと悟ったようです』

ダイアンナ「なぜ?」

リバT『プレイするにはフィギュアがどうしても必要で、紙と鉛筆、サイコロだけで最低限の環境が整えられるTRPGにおいて、高価な出費になることが明らかだから。ついでに言えば、4版展開時はグランドマスターが自分の塾を立ち上げて、お金を切り詰めないといけない時期に重なっていたのも大きいですね。付いて行きたくとも付いて行けない時期だったのです。まあ、他の創作共同企画活動に時間を費やして、D&Dの追っかけをする間もなかったという事情もありますが』

ダイアンナ「でも、今は4版の話もある程度はできるみたいだな」

アスト「この記事のために、中古でDMガイドやモンスターマニュアル、それにドルイドが収録されているPHB2まではゲットしたらしいからな。絶版ゲームが後から資料として欲しくなって、ふと立ち寄った店で発見して、後先考えて衝動買いしてしまうのがマニアってものか」

ダイアンナ「後先はきちんと考えているんだな」

リバT『さすがに、40代から50代にもなって後先考えないと言ってしまえば、バカですからね。そういうのは若さの特権です。まあ、趣味に対しては熱狂的バカを売りにするのがマニアの自己主張なんでしょうが、世相を語るためには、ただのバカ丸出しではいけません。好きなことにはバカにもなれるけど、基本はよく考える賢明な人間なんだな、と思われないと、話を聞いてもらえません。賢ぶったバカと、バカにもなれる賢者は紙一重ですからね。どちらのキャラとして見てもらえるかは、自己演出と受け手の感じ方にもよります』

ダイアンナ「まあ、TRPGはルールのあるコミュニケーション主体の遊びだから、知的遊戯の一種だな。ルールブックを読み込んで理解しているというだけで、一定量の知識と知恵の証明にはなるわけだ。逆に、ルールを正しく解釈する能力の欠如が露わになると、賢ぶったバカ発見機にもなると」

リバT『普通に賢い人は、自分がさほど詳しくない分野で、賢しらぶったことは口にしないですからね。一家言語るには相応の勉強ができてから、と考えますし、それ相応の勉強や知識の見極めに応じた物言いができることでも、見識を示せますから。もちろん、知識がないけど吸収力が高く、知っている人から少し話を聞いて、いくつかポイントを質問するだけで本質を理解する天才も世の中にはいて、そういう人間は「自分はあまり詳しくないけど、それはこういうことじゃないですかね」と適切なまとめ方ができたりします。知識はなくとも、周囲の人の話から要所を聞きとって、理解して、まとめる力が備わっていれば、それは世渡りの強い武器になります。逆に、同じセリフだけ真似しても、まとめ方がポイントを外していれば、「詳しくないんだったら口を出すな」と軽くあしらわれる羽目になりますが』

ダイアンナ「要点把握能力があるかどうかだな。それには、人の話のポイントをよく聞いて、つかみ取るだけの読解力が必要で、勉強で言えば、国語力ということか」

リバT『ともあれ、話を戻すと、4版のルールは枠にはめられた不自由さの範囲で最大限に楽しむことのできるシステムで、しかも数値データが細かい理系向きのルール。マジック・ザ・ギャザリングのデッキ構築にハマり込んだり、マルチプレイのオンラインRPGにハマり込んだ層には愛着の持てるシステムで、要するに今風にブラッシュアップされた最新のシステムを売りにしたわけですが、そもそも、そういう層がレトロなTRPGに飛びつくだろうか、という計算を間違えたみたいですね』

アスト「ゲームとしては完成度が高い。だけど、ユーザーの嗜好を読み損ねて、これじゃない感を示してしまった」

リバT『とにかく、一度味をしめた自由を縛るようなやり方では、ダメだということに気づいたわけですね。TSR時代は版権で縛ったわけですが、4版時代はルールシステム自体が理詰めの束縛感を与えてしまった。だから、5版は旧AD&Dと4版で培った要素をうまく折衷させて、上級者と初心者の両方を満足させるシステムを目指しています』

ダイアンナ「上級者が望むものと、初心者が望むものか。ええと、上級者は難しくて奥が深いものを望み、初心者はきちんとしたガイドラインを望む?」

リバT『そういう方針で失敗したのが4版なんですね。5版では、戦略の抜本的な見直しを図っています。D&D上級者が求めるのは、自由度の高さと自分たちがクリエイティブにイジることのできるキャラや世界観の資料となるデータ。一方で、初心者にはもちろんガイドラインも必要ですが、スピーディーにゲームの旨味を味わえる手軽さです。例えば、10レベルまで育てれば選択の幅が広がって、なりたい自分を目指せるというのが4版ですが、5版だと、2、3レベルで同様の選択肢が提示されて、なりたい自分になってから、改めて育成を続けるという形』

アスト「上級者には、懐かしさと自由度の高さで釣って、初心者には手軽さで釣る。口で言うのは簡単だが、それをシステムの形で組み上げるのは難しそうだな」

リバT『ヒントは4版の中にもあるのですけどね。4版は理詰めのゲームで戦闘データ偏重でしたけど、その分、戦闘以外の局面はシンプルに、という方針を打ち出していました。だったら、ピーキーになった戦闘システムも昔並みにシンプルにして、ルールは何もかもシンプルにしてしまえば、初心者は困らないだろう、と考えて、5版はAD&D以降のシリーズでは最もシンプルなシステムとなりました。さすがにクラシックD&Dほど簡単とは言いませんが、ゲーム運用は非常に簡素で、グランドマスターNOVA曰く、「え? これでゲームとして成立するの?」と最初は愚かしくも考えたそうです』

アスト「それでも、もっと簡単にしたパグマイアが普通に遊べたんだから成立するんだろうな」

リバT『5版の無償配布されているベーシックルールはこちらですが、書籍化されているものと比べて、ページ数的に3分の1程度でしょうか。概要をつかむのに目次がないというのが多少の難点とは言えるものの、ルールブックの読み方って最初は自分が欲しいデータの流し読みでしょ?
『まあ、書籍版と違って、イラストがなくて文章だらけだから読む気になれないって人もいるのかもしれませんが(少なくとも、小説家志望と言っているゲーマーさんがそういうことでは話にならないと思ったのですが)9ページからのキャラ作成ルール、13ページからの種族紹介(エルフ、ドワーフ、ハーフリング、ヒューマン)、22ページからのクラス紹介(ウィザード、クレリック、ファイター、ローグ)なんかをざっと流し読みすれば、詳細は分からずともRPGゲーマーとしてワクワクできるはず。概要をつかんでワクワクできれば、余計な批評をせずとも、共感できるのが趣味人というもの。言葉の意味はよく分からないが、とにかく凄い楽しそう。最初はこれだけでも通じるんです』

ダイアンナ「DM用ルールもあるじゃないか」

リバT『70ページほどある中で、ほとんどの内容はモンスターマニュアルですね。あと、少しだけ経験点の与え方とかマジックアイテムとかが載っていますが。とりあえず、ざっと流し見て、「うおっ、40ページにティラノサウルス・レックスのデータがあるじゃないか。HP136点。ヒットダイス13で、噛みつきダメージ33点、尻尾攻撃20点のダメージを与えてくるのかよ。両方くらったら、1ラウンド53点にもなるのか。こいつはブレイブな相手だな。こんな奴を相手にしたら、今の俺には勝てん。こんなのに認められるとは、さすがはキング、史上最強のブレイブを名乗るだけはある」と考えちゃうのが、特撮ヒーロー好きTRPGファンの心意気と申しましょうか』

ダイアンナ「……だけど、ヴァンパイアのデータがないじゃないか。こんなメジャーな存在が載っていないなんて、D&Dもまだまだだね」

リバT『それはまあ、ベーシックですから。脅威度17のレッドドラゴンを除けば、脅威度10までのモンスターしか載っていません。ヴァンパイアの脅威度は、手持ちのモンスターマニュアルによれば13。まあ、主人に仕える下僕のヴァンパイア・スポーンは脅威度5なんですが、主人を差しおいて下僕だけ載せるってのもどうかと思いますからね。要は、ヴァンパイアレベルともなると高貴すぎて、無償配布するわけにはいかぬ。ヴァンパイアについて見識を示したければ、金を払ってモンスターマニュアルをきちんと買えって扱いでしょうね』

ダイアンナ「なるほど。ヴァンパイアの安売りはしないってことか。貴重なお宝的存在ってことだな。納得した」

アスト「ともあれ、ルールブックのデータを読んでワクワクできるのが、ゲーマーの嗜み。ワクワクを共有していないのに、いきなり知ったかの批評まがいのことを言っても、相手に感じ入らせることはできないってことだな。話をしてもつまらないというのは、ワクワクを共有するような話が示せていないということ。
「書き手が書いたものを読んで、読者が同じワクワクを共有できて、初めて共感に至る。ブログ記事でも小説でも、それは同じ。書くという作業は孤独な時間も多く、自分の作品への思い入れだけが作者を支える原動力。その思い入れを、読者にも味わってもらいたいという気持ちで書くしかない。
「ただ、作者の世間に対する怒りとか嘲りなんかが執筆動機になると、そんな物を突きつけられる読者のことを考えていない駄作になり兼ねない。そういう作者のネガティブな心情は、読者の肌に突き刺さるからな。読んで不快になるものを好んで読む読者は少数派だから、少なくともエンタメ小説のジャンルでは、作者は2割ぐらいの冷静さで自分の書いたものを客観評価して、楽しめる代物かどうか判断できないといけない。本気で人に読んでもらいたいのなら、ネガティブ感情むき出しの作品を書き捨てることぐらい、読者にも作品にも失礼なことはない。一人日記とかでないのなら、作者は読者を楽しませ、作品を世に生み出す親みたいなものだから、読者や作品に対して冷ややかな態度を慎む方がいいと思うな」

リバT『ただし、作者は「自分の作品の主人公に対してはサディストであれ」という作家言もあるそうですよ。過酷で辛い目に合わされた主人公が頑張って奮闘する姿に、読者は強く感情移入するそうで、GMや作家は主人公に試練を与えてこそ何ぼ、という考え方です。だから、物語で一番過酷な目にあっているのが真の主人公だと考えてもよさそうですね』

ダイアンナ「なるほど。だったら、当ブログの主人公は、アストで確定だな」

アスト「グフッ。いい夢を見せてもらったぜ(ガクッ)」


リバT『え? アストさん? クイーン、もしかして、また眩惑効果でも使ったのですか?』

ダイアンナ「いや、今回はあたしは何もしていない。こいつが勝手に条件反射的に、パブロフの犬みたいに眩惑されただけだ」

リバT『勝手に絶望しただけの不死鳥の剣士みたいに、勝手に眩惑されて意識を失うケースもあるんですね』

ダイアンナ「まあ、バトル中の肝心なときにこうなってしまったら、何とかしないといけないが、今回の話もそろそろ終わりだろう?」

リバT『ええ。最初は「続々・4色のパラディン」で話を進めようかと考えたのですが、5版までの経緯を再確認した上で、5版パラディンの話につなげる方がワクワクできると考えまして』

ダイアンナ「ワクワクは正義だな。まあ、幻惑眩惑で惑々ってネタもありだが」

リバT『あまり、やり過ぎるとアストさんが壊れてしまうかもしれないので、控えめにすることをお勧めします』

(当記事 完)