@パラディン話を終えて
ダイアンナ「前回、パラディン話が終わったんだが、あれから気になることがあってな」
リバT『アストさんのメンタルの弱さをどうやったら改善できるかってことですか?』
ダイアンナ「いや、それもまあ、気になるが、D&Dの話とはあまり関係ないだろう? そんなことよりも、5版パラディンには魔法で召喚される馬はいないのか? 3版は馬にこだわっていたはずだが」
リバT『そう言えば、4版のパラディンにも馬を召喚するパワーは見当たりませんし、5版のパラディンも馬の乗り手ではないようです。ムッ、馬好きなプレイヤーはどうすればいいのでしょうかね』
ダイアンナ「ソード・ワールドでは、ライダー技能で騎獣とか魔動バイクに乗って、ヒャッハーと世紀末ごっこができるらしいが、今のD&Dでは無理なんだろうか?」
リバT『う〜ん、パラディンじゃなくても、動物の扱いが巧みなドルイドやレンジャーなんかであれば……ああ、ドルイドは獣召喚ではなくて自分が獣に変身する系ですね。レンジャーは……選択コースの一つにビーストマスターというのがあって、野獣の相棒を連れることができます。他にはバーバリアンの選択コースにトーテム戦士がいて、動物の精霊を身に宿すことが可能』
ダイアンナ「そういうのもいいんだが、どれも野生の獣関連だろう? パラディンの騎馬って、もっと文明的というか騎士道って感じなので、ダンクーガよりも鋼鉄ジーグのパーンサロイドって感じじゃないか?」
リバT『ずいぶんとマニアックな例を挙げて来るんですね。正直、クイーンがそのようなロボット系の知識をお持ちとは思いませんでした』
ダイアンナ「ダディーの資料から勉強したんだよ。獣系ロボットというのが、今は何やら旬みたいだしな。獣を超え、人を超え、神になる! じゃなかったっけ?」
リバT『ダンクーガもそうですけど、スパロボDDでも鋼鉄神ジーグが追加参戦だそうです。そう言えば、ジュウレンジャーのロボも大獣神だし、獣と神をつなげる物語がこれからの旬かもしれません。噂によると、今度の新しいライダーも獣とか恐竜モチーフだそうで』
ダイアンナ「最近のダディーは怪獣優生思想とか、ゼンカイ脳にハマっているらしいからな。ならば、今回は騎獣について研鑽するのがいいと見たんだが、5版はどうして騎獣が扱われなくなったんだろうか?」
アスト「馬の話ならオレに任せろ」
ダイアンナ「おお、アスト。精神状態はいいのか?」
アスト「そう、いつまでもショックのパー状態になっていられるかよ。それより、5版のパラディンから馬系の特殊能力が消えた理由だが、騎士という要素はクラスではなく、背景設定に加わったからさ。パラディンの推奨背景は貴族であり、貴族のサブ背景に騎士が含まれる。パラディンが馬の乗り手になろうと思えば、それらの背景で得られる技能をうまく選んで〈動物使い〉の技能を取得。その後、陸の乗り物習熟や、騎乗戦闘者の特技を順次習得していくことで、騎乗戦闘能力を高めることができるって寸法だ」
ダイアンナ「つまり、パラディンだからと言って、誰でも馬に乗って普通に戦えるわけじゃないんだな」
アスト「仮面ライダーと呼ばれるからって、全員がバイクに乗って戦うとは限らないってことだな。今の時代は、主役ライダーを除けば、バイクが与えられないことも珍しくないし、むしろ主役であっても、バイクに乗って戦うこと自体が珍しいとさえ思われている。小説家ライダーだって、普段はバイクに乗らないしな」
リバT『街中で改造バイクに乗って走ることが規制されている以上、バイク戦はCGを使わないと描けないという撮影事情があるようですね』
アスト「まあ、パラディンは聖戦士であって、騎乗戦闘する場合に限り、聖騎士とも呼称されるが、ルール上は馬に乗るのが苦手なパラディンだっているのが今のルールってことだな」
@騎乗戦闘のルール
アスト「とにかく、5版の騎乗戦闘ルールをチェックしたんだが、わずか半ページだけだった」
リバT『3版も同じく半ページぐらいですね』
アスト「どれどれ。……字の大きさが違うな。字数にしてみると、3版の騎乗戦闘ルールは、34字×52行で約1700文字。5版の方は31字×43行で約1300文字。つまり3版の方が約1.5倍のルールだ」
ダイアンナ「何で、そんなにどうでもいいことに細かいんだ?」
アスト「う〜ん、夢の中で『誰かさんはアストより細かいな。さすがだ』と褒められたような声を聞いたからな。何だかオレも負けてたまるかって気になった」
ダイアンナ「そんな、つまらないことで張り合わなくていいから。それより、すぐにショックのパー状態になるメンタルの細やかさを何とかした方がいい。お前はもう少し大雑把に生きろ。細かいことは、あたしとリバTが何とかする。それより、強くたくましく生きてくれ」
アスト「そんな風に生暖かい言葉をかけられると、オレが何だか虚弱体質みたいじゃないか」
リバT(虚弱なのは体質ではなくて、メンタル面なんですけどね)
アスト「とにかく、5版は3版よりもルールが大雑把なことが、騎乗戦闘ルールを比べるだけでもよく分かった。5版は最低限、騎獣への乗り降りと制御のルールが書いてあるだけで、例えばランスを構えて突撃すれば2倍ダメージという、クラシックD&Dにもあるルールすら書かれていない。5版だと、騎乗戦闘のメリットがほぼ見当たらないじゃないか」
ダイアンナ「3版だと?」
アスト「高所攻撃で命中ボーナス+1とか、ランスの2倍ダメージとか、移動ルールとの組み合わせで戦術面での有利があれこれ考えられるが、落馬の危険度を考えると、まずはランス突撃を敢行し、その後は下馬して普通に接近戦に突入する方がいいだろうな。または、命中ペナルティーを覚悟の上で騎射して、敵との間合いを保ったまま遠距離戦闘を続ける方が有利なんだろうが、冒険者の戦術としては意外とまどろっこしいな。少なくともパラディンらしくはない」
ダイアンナ「実のところ、騎乗戦闘というオプション行動は、あまり美味しくないのか? 確かに、長距離移動手段としての騎獣は大変便利なものだが、戦闘面ではさほど有効でもないということか」
アスト「少なくとも、ルールを読んでいる限りは、攻撃ペナルティーだったり、あれこれ面倒な処理ばかりが書いていて、それほど強いという印象がないな。騎芸の習得でカスタマイズできるソード・ワールドのライダールールと比べても、D&Dの騎獣戦闘ルールはさほど面白くないという評価だ」
リバT『もしかすると、実践運用の仕方によるのかもしれませんが、例えばダンジョンの中では馬に乗って入るわけにもいきませんし、冒険中の扱いに難儀することが多いから、ルールでの比重が下げられたのかもしれませんね』
アスト「まあ、ペガサスやヒポグリフなどの飛行騎獣だったら、飛べるというだけで十分なメリットが得られるのだろうが、もしかすると我々は騎獣というものに憧れを抱き過ぎたのかもしれない。だから、3版で頂点を極めた騎乗ルールが、以降はあまり大きく取り上げられることもなく、形だけのルールに成り下がったのかもな」
ダイアンナ「だけど、騎乗戦闘のプロって職業はあるんだろう?」
アスト「ああ、キャバリエ(騎兵)だな。基本ルールには乗ってなくて、サプリメントに見られる追加職だが、版ごとに概要を見てみることにするか」
@3版の騎士
アスト「で、3版のサプリメントを紐解いてみたんだが、たくさんある上級職の中には、キャバリエという職業は見当たらず、代わりにPHB(プレイヤーズ・ハンドブック)のⅡに『ナイト』という文字どおり騎士が見つかった」
ダイアンナ「戦士の上級職か何かか?」
アスト「いや、新たに追加された基本クラスだ。3版の場合、上級職はそのクラスに就くための技能などの条件があるのに対し、基本クラスは最初から選択できるという特徴がある。ナイトは、ファイターやパラディンのサブクラスではなく、独立した職業として提示されている。近接戦闘のエキスパートで、仲間を守って戦うための特殊能力を持っていて、《騎乗戦闘》のスキルを自動取得できる。まあ、イメージどおりの騎士なんだが、クラス解説によると、ファイターの戦闘力とバード(吟遊詩人)の敵操作能力を持つ存在だ」
ダイアンナ「敵を操れるのか?」
アスト「まあ、命令して操るのではなく、挑戦を呼びかけることで敵の攻撃を自分に引きつけたり、ザコ敵を恐怖に駆らせて行動を封じたりなどだな。魔法を使うわけではないけど、それに準じた相手の精神や戦術に干渉する技を駆使する職業ということだ。他には、仲間をかばう盾となったりもできるが、弱っている敵の隙を突くような卑怯な攻撃はできないなどの制約もある。3版からは、仲間との連携で敵を挟み撃ちにして攻撃ボーナスを得る挟撃ルールが実装されたんだが、ナイトにはその恩恵が得られないなど、戦術面での欠点があるわけだ」
ダイアンナ「挟み撃ちなどという卑怯なやり方で勝っても名誉が汚れるとかか。パラディンとは違うのか?」
アスト「パラディンは、神の正義を果たすためなら、戦術的に有利な行動を選択するのも厭わないからな。もちろん、パラディンなりの美学はあるんだろうが、ナイトのそれとは似て非なるものらしい。少なくとも、パラディンには無防備の敵を攻撃してはならない、という規範はない」
ダイアンナ「戦術的には、パラディンの方が融通が利くということか? 意外だな」
アスト「性格的には、パラディンがローフルグッド(秩序にして善)なのに対し、ナイトはローフルだけが条件で、善悪は問わない。ただ、主君への忠誠とか、自分の領分を守るとかを重んじて、悪の性格であっても組織の規範やルールは守らないとって考える堅物だな。パラディンが神の正義の重要性を説いたとしても、ナイトは『神よりも現世の法が大切だ。それ以上の無法な言動は、狂信者の戯言と見なされるので控えるが良かろう。貴殿が神の正義を語るのなら、神の名誉を傷つけないためにも無法な振る舞いはすぐに止めることだ。この地にはこの地の法と慣習がある。それに従えぬなら、この剣でもって応じよう』と答えるのが理想のナイトだと思う」
ダイアンナ「ああ、パラディンとナイトの違いが分かった気がする。信仰戦士なのがパラディンで、世俗の法を重んじるのがナイトか」
アスト「魔王を倒すためなら、民家のタンスを漁っても大義のためと言い張るのがドラクエ勇者であり、パラディンにもそういう世俗よりも重要な大義を主張する気質があるが、ナイトの場合はそういう逸脱すら禁じ手となるのかもな。正義と名誉のどちらが大切かと問われて、正義と答えるのがパラディンで、名誉と答えるのがナイトとも言える」
ダイアンナ「その辺の『らしいロールプレイ』をあれこれ想像するのも、ゲーマーのたしなみだな」
リバT『もちろん、戦術的に有利不利をあれこれ吟味するタイプの理系風ゲーマーもいるのでしょうけど、自分のキャラの倫理観やロールプレイ方針を提示するのも、ゲーマーの資質だと考えますね。要は、自分の信念はこれだということを自分の立ち位置と合わせて、きちんと語れるのが一つのロールプレイヤーなんでしょうし、その辺は演技を旨とする役者や、複数のキャラを動かす創作者にとっても重要でしょうね。「このキャラはこういう風に考えて、生きている。だから、こういう言動はさすがにしないだろうと思うんですね。むしろ、この場合は、こう振る舞うんじゃないですかね」ぐらいは語れるのが役者であり、作者だと考えます。その辺の方針や指針が定まらないのが三流とか、自分の信念とは関係なく、他人に難癖をつけるだけしかできないのは、いろいろ浅はかなんだと思いますよ』
@さらなる騎兵
アスト「実は一口に騎兵と言っても、いろいろなスタイルがある。例えばナイトやキャバリエは西洋中世の騎士道文化を背景に持つ職業だが、モンゴルなんかの遊牧民族やイスラム圏の騎馬戦士、それに日本の侍なんかも一種の騎兵なわけで、騎士とは異なるイメージの騎乗戦士をあれこれ考えるのも一興」
ダイアンナ「バットマンなんかは、馬に乗らないけどダークナイトだもんな」
リバT『ナイトは現在、戦士とは関係なく爵位としても用いられますからね。仮面ライダーがバイクに乗らなくなっても、シリーズ物ヒーローの称号として受け伝えられるように、元の意味から派生して違うニュアンスを帯びていくのも言葉の歴史継承というものかと』
アスト「そして、3版の別サプリメントの『戦士大全』を紐解いてみたんだが、済まん、上級職にキャヴァリアーが見つかったわ」
ダイアンナ「おい、アスト。さっきはキャバリエが見当たらないと言ったのは何なんだ?」
アスト「嘘はついていないぞ。キャバリエはないが、キャヴァリアーはある。ただ、それだけのことだ」
リバT『キャバリエはフランス語読みで、キャヴァリアーは英語読み。実質、同じ言葉を意味します。ちなみにフランス語には、シュヴァリエという単語もあって、地球戦隊ファイブマンの敵幹部としても登場しますが、こちらは英語のナイトに相当。つまり、爵位としても用いられ、階級や身分を伴うのがシュヴァリエ、騎乗戦士という戦闘スタイルのイメージを伴う歴史用語がキャバリエと言ったところでしょうか』
アスト「つまり、日本文化で言えば、侍と武士の違いかな。武士は身分を表し、現在では存在しない歴史用語だが、武士道という精神性は残っている。一方で、侍は古風な美学を持つ日本男児の敬称として今も用いられることが多く、外国人も喜んでジャパニーズ・サムライとして、日本人のスポーツマンシップを讃えるのに使ったりしている。語源から考えると、侍は従者階級の戦士で、大名なんかは厳密には侍ではない。殿とか上様と、脇に従う(侍る、はべる)お供の侍に分かれるんだが、戦う武士をまとめて侍と称することもある」
ダイアンナ「D&Dには侍という職もあるんだな」
アスト「そうだな。侍や忍者の和風要素を次の研鑽テーマにするのも面白そうだが、今はキャヴァリアーの話に戻ろう。とは言え、キャヴァリアーは単に騎乗戦闘の特殊能力が豊富なだけで、ナイトに比べると語る内容もあまりないか。
「それでも面白いのは、パラディンとキャヴァリアーの組み合わせだな。普通、パラディンは他の職と兼職するとパラディンの道をそれ以上追求できなくなるわけだが、キャヴァリアーはパラディンとも相性が良く、両立可能なクラスとなっている。とにかく、騎乗戦闘は通常では、やたらとペナルティーの多いメリットが少なめのオプションだが、キャヴァリアーはそのペナルティーを打ち消し、最大でランス突撃のダメージが5倍になるなど、さすがは専門家と思うばかりだ」
リバT『他の上級職では、パープル・ドラゴン・ナイトという騎士職もありますね』
ダイアンナ「それは、いわゆる竜騎士って奴かい?」
アスト「いや、ドラゴンライダーの類ではない。元は、フォーゴトン・レルムを舞台にした有名な騎士団(紫竜騎士団)の名前らしいだが、ドラゴンランスの有名なソラムニア騎士団も5版ルールでは、この上級職のデータが流用可能ということで、D&D世界共有の騎士団所属騎士の典型だと見なされている。能力的には、味方の士気を鼓舞し、集団戦の指揮官として有能な能力を備えている」
ダイアンナ「だったら、ドラゴンライダーみたいな上級職はないのかな」
アスト「あるにはあるが、NOVAの手持ちのサプリメント資料の中にはないようだ。と言うのも、ドラゴンライダーになるには、ドラゴンというモンスターに関しても、掘り下げたルールが必要になる。そこで『竜の書 ドラコノミコン』というサプリメントが存在するんだが、NOVAはそれを買っていない。なお、3版や4版は絶版なのだが、公式サイトの紹介ページは残っているので、ドラゴンライダーに興味ある人はこちらを参照するように」
リバT『ドラコノミコンは、ドゴラの系譜に属する者としても興味深いですね。ドラゴン用の上級職があるってことは、ドラゴンをプレイヤーキャラとして使えるってことですかね』
アスト「いや、悪キャラ用の上級職だってあるんだから、DMがNPCとして個性的なドラゴンを創造するのに使うルールだろう? それよりも竜拳使いとか、竜神崇拝者とか、竜の歌い手とか、ドラゴンスレイヤーとか、ドラゴン関係の上級職がいろいろあって、ドラクエ35周年記念として、このサプリメントも復刻しないかなあ」
ダイアンナ「どうして、ドラクエの記念で、D&Dのサプリメントが復刻するんだ? 会社や作品シリーズが違うだろう?」
アスト「まあ、あれこれ調べると、持っていないサプリメントの情報も気にかかるのがマニアの道らしいが、とりあえず、ある物で賄うのが現実的なんだろうな。5版での興味深いドラゴンネタがあれば、そちらで補うとして、今は騎兵の話に戻ろう。さて、騎兵は重装甲の騎士以外にも、遊牧民風味とか、ビーストライダー的な職もあるんだが、それらはまた違うサプリメントの『冒険者大全』に載っていたりしていた」
リバT『先日、上級職のドレッド・パイレートを紹介したときに用いた本ですね』
アスト「そうだ。いわゆる軽装騎兵は戦士ではなく、盗賊系のサプリにあるわけだな。その名も、ワイルド・プレインズ・アウトライダー、大草原の騎乗偵察員って奴だ。騎馬兵の長所って、チャージによる破壊力もさることながら、そのスピード、機動力こそが最大の武器なわけで、重装甲戦士よりもスピード特化型の騎兵スタイルということになる。そして、この職業の有利な点は、どんな地形であっても騎獣を速やかに、忍びやかに移動させることができ、また馬以外の動物の相棒を選ぶこともできる汎用性の高さだ」
ダイアンナ「例えば、どんな?」
アスト「ドルイドやレンジャーのルールに詳細があるんだが、騎獣じゃない小動物もいろいろ選べるので、その中で騎獣として使えそうなのを並べると、馬以外にラクダ、狼、ワニ、サメなんかが初期レベルから選べる」
ダイアンナ「ワニやサメも騎獣に選べるのか」
アスト「サメは海中での騎獣にできなくもない。ワニを騎獣として認めるかはDM次第だな。大型トカゲという形で、ワニのデータを流用した騎乗用爬虫類と考えてもいい」
リバT『アバレンジャーのライドラプターみたいなものですね』
アスト「レベルが上がると選べる相棒の種類も増えて、チーターとか豹、猪や熊も加わり、さらに極めると、ゾウとかトリケラトプス、ティラノサウルスなどの恐竜も選択肢に入ってくる」
リバT『それは怪獣王子とか、恐竜系戦隊の世界に突入できますね』
アスト「そういうレベルだと、中世の騎士道文化とは違う方向性だと思うな」
ダイアンナ「同じ騎士でも、もっと蛮族的な何かというか、リュウソウ族の方向性っぽいね」
アスト「恐竜ライダーの延長に、ドラゴンライダーなんかもあるんだと思うぜ。つまり、ワイルド・プレインズ・アウトライダーのルールを多少アレンジして、自作のビーストライダー、例えばペガサスライダーやイーグルライダーに作り替えることも可。その辺は、DMとどういう騎獣が選べるかという相談をしてもいいのだろうな」
@5版の騎兵
アスト「さて、現D&Dの5版にもサプリメントの『ザナサーの百科全書』にキャヴァリアーが掲載されているが、ファイターの選択コースなので、パラディンはなれない」
ダイアンナ「するとパラディンは馬の専門家にはなれない?」
アスト「5版でも兼職(マルチクラス)は可能なので、パラディンとファイターを兼職して、それからキャヴァリアーの道を選択することで、騎乗戦闘が得意なパラディンを実現させることは可能だな」
ダイアンナ「馬に乗りたいだけのために、パラディンがファイターを兼職するのって無駄が多くないか? それなら、むしろファイターから始めてクレリックを兼ねてから、キャヴァリアーを目指す方が神官騎士として優秀に育つような気がするが」
アスト「それも一つの選択肢だが、パラディンにはクレリックにないオーラ系の特殊能力もあるし、5版ではクレリック呪文とパラディン呪文は違いも結構ある。また、ファイターとパラディンは似たような近接戦闘キャラと思われがちだが、実は5版のファイターには最大4回までの追加攻撃があるのに対し、パラディンには追加攻撃が2回までしかない。つまり、5版のファイターはAD&D時代の劣化パラディンではなく、武器戦闘の能力は目に見えて高かったりするんだ。パラディンはオーラや呪文での補助効果を組み合わせたりして一撃で大ダメージを与え得る戦闘職であるのに対し、ファイターは特殊能力なしでも素の戦闘力が安定して高いわけで、パラディンがファイターを兼職するのも攻撃回数や能力値を増やせるチャンスを得るため、という理由づけは考えられる」
リバT『3版の時は、育成自由度の高さ、汎用性の高さこそがファイターの強みだと言われていましたが、5版では普通に戦闘職としてファイターが一番強いってことなんですね』
アスト「周りのみんなが呪文とか特殊能力を学んでいる間、ファイターはひたすら筋トレしたり、武器を素振りして攻撃速度を高めたり、地力の向上に努めるようなイメージがあるな。もちろん、ファイターだって魔法戦士(エルドリッチナイト)の道を選択する余地もあるし、いろいろと組み合わせて、自分の好むキャラクター像を考えられるのがD&Dの楽しみの一つだと思うぜ」
ダイアンナ「数字的に有利で強そうだからと選んだり、自分のキャラのイメージを追求するのもありだし、新しいサプリメントに面白そうなルールを見つけたから試しに使いたくなったり、ゲームの楽しみ方も人それぞれということだな」
リバT『達観すれば人生だってそういうものかも知れませんね。少しでも自分の利得になりそうな行動を選択したり、自分なりの理想的な生き方を模索したり、新しい出会いや経験に心惹かれたりなどなど』
アスト「なるほどな。逆に言えば、損害にしかならず、理想的な生き方にも添わず、旧態依然として新鮮味を感じない様に飽き飽きしたり……つまらなくて切り捨てられる要素を並べると、自分はそういう人生にはなりたくないって心から思えてくる。やはり、人の心を惹きつけるというのは、利得か、理想か、新鮮さか、あるいはそれらを組み合わせた感じかな」
リバT『もちろん、利得とは関係なく、心から気が合って絆を感じられるというのもありますし、騎獣とのシンパシーなんかは理屈抜きに心根が通じ合えるという要素もあるでしょうね。感性で生きている人間はそういう部分を大切に考えがちだし、逆にそういう付き合い方を人に求めている人間は、自分の感性が相手に受け入れられて当然、と傲慢にも考えがちみたいです』
アスト「理屈なんかじゃねえ。あいつとは心が通じ合うんだ。この絆は誰にも引き離すことはできない……というのは、少年マンガの友情劇や、少女マンガの愛情劇にもありがちなセリフかな」
ダイアンナ「それでエキセントリックな言動をとりがちな主人公や、ライバル、時にはサブキャラの姿に感情移入したり、滑稽なコメディーとして受け取ったり、悲劇の幕開けと見てハラハラしたり……は物語の作風次第だけど、一番の悲喜劇は理屈や社会常識抜きに、身勝手な言動を繰り返した結果、想い人の迷惑になる行動を連発して、傍目には愚かしい、だけど情念が怖しくもある歪んだキャラの振る舞い方かな」
アスト「思い込み過多で、片想いしがちなキャラにありがちだな。勘違いしたストーカーに発展しやすいというか、想いが通じれば分かってもらえると錯覚しやすいが、世の中には強すぎるからこそ受け入れ難い感情というものもあって、情念の暴走を創作にぶつけるなり、違う方向に昇華したりなどして、冷静に物事を受け止められるようになればいいんだが、他人のそういう人情悲喜劇は、距離を置いた目ではしばしば滑稽に映ることも多い」
リバT『当人からすれば、そんなものに翻弄されたくないのが本音なんでしょうけどね。とにかく、人間ではなく、動物の相棒や騎獣との関係性なら、もっとシンプルみたいですけど』
アスト「動物はもっと単純だったり、達観していたり、行動原理が分かりやすかったりするからな。主従関係あるいは契約関係も傍目にもはっきりしていて、その範囲において忠実。例えば、主人はペットに餌を与えたり散歩に連れて行ったり、いろいろ世話を焼くことで、ペットの方も主人を守って戦ったり、主人の仕事を手伝ったり、極力、主人の役に立とうとするんだ。このペットがドジキャラだったりすると、ドタバタコメディーになったりするんだが、このペットをAIみたいな人工キャラに置き換えても可。要は人間と人間でない者のドラマだから、互いの考えの違いや、それでも通じ合えるハートの部分があって、ドラマの材料にもなる」
ダイアンナ「確かに、人間と人間でない者の心の絆、種族や属性が違うからこそ、それでも人間以上に純粋な想いというのがドラマで浮き彫りにされやすいという効果があるわけか」
アスト「種族や出自、文化背景、考え方の土台なんかが違うからこそ、そのギャップを乗り越えて、時には自分を抑えて相手の気持ちを慮り、そして通じ合えるドラマは感動を呼ぶし、そうした試練を乗り越えて紡いだ絆だから時として強固になったりするわけだ。ただ、そういう想いの成立する過程をすっ飛ばして、結果の美味しい果実だけ味わおうとするのは、創作作品ではつまらないし、リアルの人間関係だとそういう美味しい話はなかなか転がっていない。まあ、通じ合える土台としての共通文化とか趣味とか日常社交の如才なさがあって、その範囲を極端に逸脱しない関わり合いなら受け入れられたりもするわけだが……」
ダイアンナ「そういう土台を自分で崩しておきながら、新しい関係性も構築せずに、今までどおりに何でも受け止めてもらえると考えるのは、わがままというか愚かしいというか」
アスト「人間の場合は、ペットと違って社会性とか、体面とかもあるから単純にいかないのかもしれんな。相手の時間の都合やスケジュール、自分の要求をどこまで受け入れてもらえるかの打診と、叶わない要求の取り下げ、そして相手の優先事項を察して理解した上での自分の売り込み、そして何よりも相手の大切な何かを傷つけないだけの節度の表明、そういうことをあれこれ考えて、適切な付き合いができるのが社交だし、ビジネスと趣味を混同したり、趣味の違いを解さなかったり、トラブルの原因はいろいろあれど、仮にも創作家であれば、自分や相手の発言の要点をところどころメモにしたりしながら、人間関係の教訓とか、創作のネタにするなりして、こうすれば上手く行く、こうすれば失敗するなどの貴重な体験、そして反省材料として、今後の生き方の指針にするのもいいかもしれん。そうすれば、ただの都合のいい空理空論空想よりも、深みのある物語や人格形成の糧にもなるだろうさ」
ダイアンナ「ところで、これは一体、何の話なんだ?」
アスト「主人と騎獣の関係から、人間関係の話に展開したが、実に5版らしいと思わないか?」
ダイアンナ「何でだよ!?」
リバT『いえ、アストさんの言うことにも一理あります。ゲームシステムの話をするなら、3版や4版は理系風味なシステムであるのに対し、5版はキャラクターの背景や人間関係の構築を重視した文系風味なシステム。最近の流行語で言うなら、ナラティブに寄せたルールシステムと言えましょう』
@ナラティブって何?
ダイアンナ「ナラティブ? ガンダムか何かか?」
リバT『いいえ、ナラティブとは物語(ストーリー)に対する新たな表現形式として、物語ゲーム界でもこの5年近くの間、海外ゲーマーの間で話題に挙がっていました。ちょうどD&Dの5版が2014年に登場した辺りからですね。明確な定義は人によって様々みたいですが、数字重視の理系的なシステムに対するロールプレイ重視な文系志向、かつシナリオデザイナーやDMが上から構築するシナリオの大筋ストーリーに対して、プレイヤーキャラ自らが紡ぎ上げる登場人物視点を重視した物語、個々のプレイヤーが感じとった想像の結晶がナラティブと称されるもののようです』
ダイアンナ「よく分からないねえ。ストーリーに対する類義語でもあり、対義語でもあると受け取ったんだが、どうだろう?」
リバT『極端な例を挙げると、ラスボス倒してハッピーエンドが理想的なストーリーだとします。しかし、ゲームである以上は、ダイス目の事故や戦術ミスによって最悪、パーティー全滅に終わることだって有り得ます』
ダイアンナ「ああ、そうなると、それまで紡ぎ上げてきた物語が台無しだねえ」
リバT『コンピューターゲームだと、セーブポイントからやり直したり、王さまや教会の神父さんに悲しい顔で説教されて、所持金を半額にされたりしながらも、続きの物語を紡ぐことも可能。そして、今度は負けないようにレベルを上げたり、敗因を考えて戦術を立て直したりする過程はプレイヤー独自の物語ですし、あっさりラスボス倒してクリアよりも、ラスボスに一度負けて全滅したからこそ、再戦によるクリアがより印象的に輝いて感じるのもプレイヤー独自のゲーム体験です。その体験と感動を、文章に綴りたくなったりするケースもあって、誰もが経験するストーリーとは一風変わった、その人の実体験としてのゲームストーリーが結果的に紡ぎ出される、それこそがナラティブと称されることもあるわけで』
ダイアンナ「公式が提供する大きなストーリーに対して、プレイヤー個々人が体験したり感じたりする私的な物語をナラティブと考えればいいのかな」
リバT『グランドマスター個人は、そのように受け止めています。複数の遊び手が同じゲームをプレイしていて、公式に提供されるストーリーの大枠は同じでも、RPGの場合、どのようなパーティー構成でプレイしたか、どういう攻略手順で挑んだか、途中でどういうレアアイテムをゲットしたかなどなど、個々人が味わったゲーム体験はプレイヤー固有の物語になります。
『また、TRPGで同じシナリオをプレイしても、卓のメンバーが違うと異なる物語体験になる。もちろん、普通は同じシナリオを何度もプレイすることはないのですが、プロだとテストプレイを重ねたり、一つのシナリオを複数回行うことも当たり前だし、名作シナリオなら定例行事として行うサークルもあるとか。手慣れたGMならアドリブも駆使したり、熟練プレイヤーならシナリオとは関係ない別の背景物語をこしらえたりしながら、物語を膨らませることもある。自由度の高いシナリオなら、途中の分岐が様々だったりマルチエンディングを採用したりして、共通のストーリー大筋はあれども、個々のナラティブが生まれるのです』
アスト「ゲームに限らず、例えば、TVのドラマの感想を毎週書くような掲示板があるだろう?」
ダイアンナ「ダディーの特撮掲示板などもそうだな」
アスト「当然、話の参加者は公式ストーリーを鑑賞して、自分が楽しんだり、感じ入ったりした部分を披露したり、話のネタを広げたりして視聴体験を打ち明け合ったりしているわけだ。それもまた、ナラティブと言えるんじゃないか」
ダイアンナ「ああ。公式が提供するストーリーはあって、そこから各自が感じとった個別の感想述懐がナラティブだと。同じ物語を見ても、各人の受け止め方はそれぞれ違っていて、人の受け止め方に接することで、相互のストーリー鑑賞の見方が膨らんだり、相互に影響を及ぼし合っていく。各人はストーリーを創作しているわけではないけど、各自の鑑賞感想を披露することで、ナラティブを紡いでいるということか」
アスト「インターネットで番組感想などの掲示板交流が盛んになるにつれて、ストーリーを基軸に無数のナラティブが生まれていくのが21世紀の現在と言えるかもしれない。特撮ヒーロー番組の感想なんて、子ども時代か、SF同好会などのサークルか、たまたま知り合う機会を得た同好の仲間としか話せないでいたのが昭和時代で、それが平成から新世紀を経て、ネット掲示板やTwitter、SNSなどでハードルも比較的低く、感想仲間を見つけることができるようになって、そこでの感想やり取りが副次的な物語として個々のストーリー体験を豊かにする。それをナラティブ(打ち明け話、体験談という意味もある)と称することもできるだろうさ」
ダイアンナ「すると、定期的に感想のやり取りをしている面々は、ストーリーの創作家ではないにしても、ナラティブの創作仲間ということになるわけか。ナラティブ仲間とか、ナラ友と言ってもいい関係と」
アスト「そりゃ、ほぼ毎週、番組感想を書いて、それを何年も続けている関係というのは、貴重だろうさ。ただの一過性の集いでもないし、大きなトラブルもなく、自分の感想をコンスタントに紡いでくれる大人の社交仲間には敬意も示さないとって、心ある管理人は考えるだろうな」
ダイアンナ「逆に、そういう場所の趣旨を理解せずに、自分本意の書き込みで乱すような輩は?」
アスト「掲示板の趣旨にもよるが、場で推奨されている番組をろくに見るでもなく、突然割り込んで、みんなが楽しんでいる場所にぶしつけな疑念を突きつけて、敬意や好意が得られるとか、場に参加したつもりになったとしたら、それこそ愚かとしか言いようがないな」
リバT『グランドマスターから相手にされないので、構ってくん感情から目立ちたいと言うことであれば、そういうやり方で目立っても場の反感を招いて多くの敵を作るだけですし、全くもって擁護しようがありません。仮に自分が共同創作仲間だったから特別扱いされるべきだし、偉いと錯覚しているのであれば、グランドマスターNOVAはプロのストーリー作家と同じだけの敬意を、社交的なナラティブ仲間の面々に抱いているので、やはりコンスタントに波風を立てることなく、共通の作品鑑賞という形で大人のネット付き合いができている方々を大切に考えているわけですよ。そういう場に参加したいなら、相応の社交作法があるべし、学ぶべきと考えるのですが、問題児さんはどうして場に合わせた振る舞い方ができないのでしょうかね』
アスト「坊やだからさ」
ダイアンナ「そういう年でもなかったと思うが」
アスト「年相応の社交経験知を積んでいればいいんだが、例えば慶事や弔事に際しての振る舞い方すら、ろくに分かっていないような書き込みを見ると、酒飲んで暴れる酔漢とか、鬱屈感情を吐き出したいだけの情緒不安定なメンヘラ気質とか、ヒャッハーな世紀末異世界のモヒカン暴走族とかいろいろな例え方ができるが、まともに付き合って大丈夫と思わせる要素がほとんど見当たらないので、ゴブリンスレイヤーにおけるゴブリンみたいなメンタリティーを想像してしまうのだがどうだろうか?」
ダイアンナ「い、いや、そこまで言ってしまうと、名誉毀損や侮辱に当たらないのか?」
アスト「大丈夫だ。公然と名を挙げているわけじゃないからな。何かを批評する際には、それが問題にならないかどうか最低限の法律は勉強している。基本的にネット上で特定人物のことを悪く言わざるを得ない場合は、直接の名指しを避け、本人の人格ではなく、言動の一部や創作作品の一部と切り取った形で、予防線を引いた上で行うのが望ましいし、プロの文筆業の批評家が著作の上で批評している行為をネット上でうかつに真似するのは、実はリスクが大きい。と言うのも、出版されている書物は名誉毀損の訴訟を受けても、出版社がフォローしてくれるが、ネットでの発言は個人単位なので、誰もフォローしてくれない。管理人が味方なら、問題発言は管理人が削除するが、管理人を怒らせた場合は、また別の対処法を講じるケースもあるわけで、20年も掲示板管理を続けていれば、それなりの事例ぐらいは勉強するだろうさ」
ダイアンナ「なるほどな。だけど、聞いたところによると、当該人物の創作作品に、裁判をテーマにした話があるそうだが」
アスト「普通は、そういう小説を書こうと思えば、法律の勉強ぐらいするだろうけど、どうもネット上で不用意に愚かしい発言をしていることから察するに、法律の勉強もろくにせずに、ワイドショーなんかから仕入れた断片的な知識で、詳しい人間が見れば勉強不足が明らかなトンデモ小説しか書いてないのだろうさ。要は、愚かしい言動を繰り返す人間よりも、定例的に書き込んでいるナラティブ仲間の方が遥かに大切だし、そういう場に参加を許されるほどの社交性が相変わらず身に付いていないことが証明された。ここまで学習能力が低い人間の書く創作小説には、何一つ期待できないじゃないか?」
ダイアンナ「まあ、日頃の言動自体に整合性とか見識をあまり感じない人間の書く小説に、そういう要素を求めても無駄だろうけど、とりあえず、ここでの結論としては、信用できない人間の書くストーリーよりも、信用できる人間の書く日々のナラティブの方が読んで共感できるし、楽しいってことだな」
アスト「創作ということなら、大きなストーリーはプロに任せて、私的なナラティブでの交歓の方に重点を置くのも、日々の営みとしては楽しいってことだな。ストーリーを味わい、その感想から生まれるナラティブを通じ合わせる。今風の趣味人の社交って、そういうものだろうし、他人のナラティブを受け止めて、自分の世界を豊かにすることもできるわけだ。ブログってのは、それができるツールなんだろうさ」
リバT『個人の感想日記って、確かにナラティブそのものですしね』
アスト「それで、オレのナラティブを聞いてくれるか?」
ダイアンナ「何だ、突然?」
アスト「オレはずっと花粉症ガールの翔花ちゃんのファンだったんだ」
ダイアンナ「ああ、知っている」
アスト「だけど、彼女はずっとオレの手に届かない女神さまのような存在だった」
ダイアンナ「ま、まあ、そうだな。一応、女神になるための修行をしていると聞くし」
アスト「それで、オレは夢見ていたんだ。いつか、麗しの翔花ちゃんのストーリーと、オレのストーリーが混じり合って、ハッピーエンドな未来が待っているって」
ダイアンナ「ほう。あたしの前で、そんな夢物語を聞かせるとは、どうやら死にたいらしいな」
アスト「少し待て。二つのストーリーが混じり合うと夢想したのは過去の話。今現在は、こう考えている。オレの物語は、実はストーリーではなくて、そこから二次的に派生したナラティブだったんだって」
ダイアンナ「どういうことだ?」
アスト「つまり、花粉症ガール・粉杉翔花ちゃんの物語は当ブログ時空での公式ストーリーみたいなものだが、オレの想いは個人的なナラティブ、取るに足りない副産物みたいなものだから、所詮はファンの語りでしかない。翔花ちゃんをどれだけオレが応援しようとも、ストーリーとナラティブが混じり合うことはないんじゃないかって」
ダイアンナ「それは……少し寂しい見解だな。ストーリーとナラティブの関係ってどうなんだ、リバT?」
リバT『ストーリーを元に、ナラティブが形成される。ただ、時にはナラティブの結果が、ストーリーに影響を与える可能性も稀にですがあるようです。読者投稿のアイデアが公式に採用されたり、個人語りのナラティブと思われたネタが、難波重工のスパイやらによって、公式ストーリーに影響したり、ファンの想いの結晶が時に公式を動かすようなことも。要は、作品やキャラを愛する気持ちが純粋であればあるほど、どこかでシンクロして夢が現実になる可能性もゼロじゃない、と』
アスト「ああ、そうして叶った想いが、アニー、お前なんだ」
ダイアンナ「ちょ、ちょっと待て。もしかして、これは愛情の告白か? 何、唐突なその展開? 読者の皆さんの見ている前で、一体、何を言うつもりなんだ?」
アスト「アニー、お前の物語はオレと同じナラティブだと思うんだが、それで間違いないよな」
ダイアンナ「い、いや、そんなことを言われても、何が何やら。リバT、どうなんだ?」
リバT『ええと、ウルトラマントリガーの物語が公式ストーリーなら、ウルトラマンアースの物語は公式外の勝手な妄想であり、そういう二次創作もナラティブと言えるのかもしれません』
ダイアンナ「だったら、あたしはナラティブだ。これでいいのか?」
アスト「よし、ナラティブ同士だったら、より密接に通じ合える。そして今回は騎獣の話だったな」
ダイアンナ「あ、ああ、今ごろ話を戻して、どうするんだと思うが、騎獣の話がテーマなのは間違いない。それで?」
アスト「オレはこう見えても、流派・東方不敗の末席を汚す男だ。非公式だけどな」
ダイアンナ「そっちもナラティブなんだな」
アスト「流派・東方不敗で、騎獣と言えば、モビルホースの風雲再起だと思うんだ。そして、世間でウマ娘が流行している以上、オレはこう言わざるを得ない。アニー、オレの風雲再起になってくれ!」
ダイアンナ「はい?」
アスト「ちょうどいいことに、ダイアナヘイローという名の馬がいてな。いずれ、ウマ娘キャラの名前に採択されるかもしれん。騎獣の話なら、やはり今をトキめくウマ娘だろうと思ってな」
ダイアンナ「だが断る。何であたしが馬にならないといけないんだ? そんなに馬が好きなら、あたしこそアストに命ずる。お前こそ馬になれ!」
アスト「ヒ? ヒヒーン!」
リバT『おや、アストさんが本当に馬になったようです。ええと、ウマ娘の世界では、ダイアナヘイローはまだ登場していないようですが、その親のキングヘイローは登場済み。馬の種類は、私めもあまり詳しくはないのですが、さしづめキングアストと名付けてもよろしいのでは?』
ダイアンナ「キングアストか。念のため、その名前で検索してみるかな。(検索中)……何と、本当にキングアストという名前の馬が実在したぞ」
リバT『まさか、嘘から出たマコト兄ちゃんですか?』
ダイアンナ「良かったな、アスト。もしかすると、お前も近い将来、ウマ娘の名前で採用されるかもしれないぞ、よく知らんけど」
アスト「ヒ、ヒヒーン」
まさか、ひょうたんから駒のような勢いで、突然、馬になってしまったアスト。
あまりメジャーな名前じゃないみたいだけど、本当にキングアストって名前の馬が実在したとは、事実は小説よりも奇なり。
とにかく、馬になるというナラティブを体験したアストの運命は!?
作者ですら想定外の展開に、まあ、ストーリーじゃなくて、ナラティブだったらいいか、と。
ところで、ナラティブって、こんな感じの意味とか、使い方でいいんだよね。
まだ完全には意味をつかみきれていなかったり。
(当記事 完)