@寄り道を終えて
アスト「さて、この一月余りの間、ドラクエ話に寄り道していたが、ようやく話を戻すぞ。元々は、この記事でD&Dのパラディンの話をしようとしていたんだ」
ダイアンナ「それがFF4からドラクエの勇者とか、神話観の話に流れ込んだんだな」
アスト「今年はドラクエ35周年ということだし、毎週のダイ大が盛り上がっている頃合いだし、もうドラクエ熱が凄いことになってるからな。ダイ大の旧アニメ打ち切りエンドから30年待ったんだ、これを応援しないなんてドラクエファンを名乗る資格はない! とNOVAなら熱く叫ぶだろうぜ」
ダイアンナ「最初は、BGMがドラクエらしくないから不満だ、とか、主題歌が燃えないとか劇中の物語に歌詞が噛み合ってないからダメだ、とか批判していたのに、新アニメの絵の美しさと、物語テンポの良さと、何よりも作り手のダイ大への思い入れがインタビュー記事なんかを読んで本物だと分かったことで、だったら全面的に応援したいとダディーは言っているわけだ」
アスト「やっぱり作り手の熱意が伝わってくる作品はいいよなあ。ドラクエ映画を作っているのに、作り手がドラクエへの思い入れがないような発言をしているのを見るとがっかりだし、『見たいものを見せてもらっているのに、そこに文句をつけるのは受け手の態度としては間違っているし、楽しめないなら損をしている』と思うんだよな。やはり、作品鑑賞には作り手のこだわりが受け手に通じることが望ましいし、そこを味わえることが受け手のセンスなんだろうさ。受け手のセンスが歪んでいては、作品の良さが分からないし、優秀な批評家は作品の良さを引き立たせた上で、一粒ピリリと辛口な言葉を付け加えて引き締めるぐらいの言辞を使いこなせるものだと思う」
ダイアンナ「下手な批評家は、その引き締める程度のピリリ加減が分かっていなくて、いろいろ台無しにするわけで、悪口だけなら批評としては面白くない。そういうのは、昔、匿名掲示板で『便所の落書き』と自嘲気味にアングラで語られていたのが、まとめサイトなどで『便所の落書きが目立つところに出てきた』のが今のインターネットだろうから、匿名をいいことに本音というか生の声がむき出し。ただ、そのまとめ方が基本、煽動的というか過激なネタを中心に切り取って盛り立てているから、情報源がそれだけだと、どうしても発言内容が低俗になる。匿名というのは、そういう低俗さを自覚している東スポとか写真週刊誌的な編集方針だから、そういう声もあるのは事実だけど、ろくに作品に接してもいないのに、それだけ見て判断するのは愚かしいとも言えるな」
アスト「煽動的だから、それを承知で情報源の一つとして見るのはいいとして、自分が何かを語るネタにするためには、そこで公式サイトに当たるなり、一次資料(作品そのもの)に当たるなり、クリエイター側の意見もチェックするなり、ある程度は総合的に、多面的に、かつ継続的に見て自分の意見を固めていく、あるいはその過程で必要に応じて自分の意見に修正を施していくなど、作品との接し方にある程度の誠意が求められるところだな」
ダイアンナ「何かを語る際に、事実認識が歪んでいると、判断も歪んで来る。まあ、その歪みが語り手のセンスとも言えるが、面白い歪み方と、つまらない歪み方に分かれるな」
アスト「事実認識を歪めずに、そのまま伝えても話としては面白くならないので、語るときに多少の味つけをするのがセンスってものだが、個人の主観センスと客観的事実のせめぎ合いでエッセイや批評文は構築されている。で、事実認識に誤りが多いのは書き手のセンス以前の話だし、事実を伝えていても主観センスがつまらないとか、書き手の判断力が欠如していると、ダメダメな文章になる」
ダイアンナ「例えば?」
アスト「悪文の見本が、コメント欄にあったろう? (以下略)」
リバT『ところで、寄り道は終わったんじゃないんですか?』
アスト「ああ、そうだったな。今はつまらない批評をしている場合じゃなかった。本題に移らないと!」
@ここから本題
アスト「オレからの餞別代わりの文章批評は終えて、やっとパラディンの話だ。パラディンという言葉を、RPGの文脈に投入したのもD&Dが最初だが、元々はラテン語のpalatinusから派生した語で、古代ローマの伝統的な地名『パラティヌスの丘』から来ているそうな。その丘には、皇帝の館などの建物群が築かれて、建国神話を始めとする諸伝承の舞台にもなっているようだが、神聖なイメージ元としてはアポロン神殿とかも設けられたり、バレンタインの前身とも言うべき結婚と豊穣の神を祀るルペルカーリア祭が行われたりもしたらしい。その後、palatinusという言葉自体は、イタリア語のpalazzoや英語のpalace、つまり宮殿の意味に派生したようだ」
ダイアンナ「神殿とか宮殿かあ。つまり、パラディンという言葉は起源からして、聖なる高潔なイメージがあったんだな」
アスト「で、語源はともかく、TRPGの元ネタとしては中世叙事詩『ローランの歌』に出てくるシャルルマーニュ配下の十二勇士を指す言葉だ。念のため、イギリスを代表する騎士物語がアーサー王伝説で、フランス代表がローラン、ドイツ代表が『ニーベルンゲンの歌』のジークフリートとなるかな。騎士道以前だと、イギリスのベオウルフなんかも捨て難い……とNOVAから送ってきたカンニングペーパーに書いてある」
ダイアンナ「ダディーはカンニングペーパーなんて送ってきたのか?」
アスト「それなしで、このオレが中世叙事詩なんて語れるわけがないだろう。何でも、NOVAは高校時代に『ニーベルンゲンの歌』を読んで、大学時代に『ベオウルフ』の英文学講義を受講したりして、その辺はいろいろと楽しんでいたらしいが、『ローランの歌』だけは未読だとのことだ」
ダイアンナ「だったら、この期に読もうと思っても不思議ではないな」
アスト「で、ファンタジー文学で言うなら、『ホビット』『指輪』のトールキンがベオウルフの研究者でもあり、現代英語に翻訳したり、ベオウルフの竜退治とかのエピソードがホビットの物語の源流になったり、ファンタジーファンのツボを突くネタは多いみたいだ。一方で『ローランの歌』はムアコックのエルリックサーガなどに引用されていて、エルリックが最後に吹く運命の角笛がローランの遺品だったり、ローラン自身、永遠の戦士(エターナルチャンピオン)の一人として扱われていたり、20世紀の古典的ファンタジー小説の起源が中世の英雄伝説だったりするんだな」
ダイアンナ「流れとしては、中世の騎士伝説→20世紀の古典的ファンタジー小説→D&DなどのテーブルトークRPG→ドラゴンランスやロードスなどのゲームファンタジー小説という形かな」
リバT『D&D→ウィザードリィやウルティマなどのコンピューターRPG→ドラクエやFFなどの和製RPG→ダイ大などのコミックやアニメという流れもありますね』
アスト「で、パラディンの直接の起源はローランたち十二勇士なんだが、この12人という人数が黄金聖闘士的だと思わなくもない」
ダイアンナ「そちらは黄道12星座に基づくものだが、星矢の北欧編なんかは『ニーベルンゲンの歌』に由来するらしいな」
アスト「厳密には、叙事詩の『ニーベルンゲンの歌』→ワーグナーの歌劇『ニーベルンゲンの指環』→星矢北欧編という流れみたいだけどな。こういう文化文学の伝達の仕方がNOVAは昔から興味があるらしい。まあ、これらの系譜とは別に、21世紀ファンタジーの『ハリー・ポッター』なんかは違う系譜になるんだろうけど、児童文学で比較的新しい作品だから、作品系譜の立ち位置がまだ十分研究されていないように見えるな。魔法学園という設定の元ネタは『ゲド戦記』になるんだろうが、系譜を辿るとキリがない」
ダイアンナ「ダディーの頭の中は、こういう系譜をつなぐ線がいっぱい入り組んでいそうだな」
アスト「ええい。NOVAのカンニングペーパーに頼ると、話の筋道まで余談や脱線が多くて、なかなか前に進まん。本題を見失わないうちに、今回の重要資料を出すぞ」
ダイアンナ「そんなに重要な資料があるのなら、最初から出すべきじゃなかったか?」
アスト「ルールブックを開けば、ルールの説明だけで終わって、話が広がらないじゃないか」
ダイアンナ「いや、無駄に話を広げても仕方ないだろうが。ゲームなんだからルールに基づいて進めるのは基本だろう? ルールに則らないで身勝手な話ばかりする者は、書き込み禁止処分されても文句は言えない」
アスト「そうだな。ゲーマーを名乗るなら、自分が参加するゲームのルールは守るのが当然。ルール違反を続けると、レッドカードをもらって、退場処分されるのは常識。では、オレもルールに則って、清く正しく生きよう。それこそが聖騎士パラディンを語るために必要な心構えだからな」
リバT『元快盗に聖騎士パラディンを語らせようとするとは、考えてみればグランドマスターNOVAも厳しい課題を与えたもの、と今さらながら感じ入る次第です』
@AD&Dのパラディンルール
アスト「よし、ルールブックの記述を読むぞ。『パラディンとは正義と真実の象徴であり、高貴で英雄的なウォリアーである。その為、パラディンは常に高い理想を持っていなくてはならない』そうだ。で、パラディンの例として、ローランとかアーサー王の円卓騎士とかの名が挙げられているわけだな」
ダイアンナ「なるほど。それで、パラディンになるための条件は?」
アスト「種族は人間だけだな。近年のD&Dは異種族のパラディンも普通にいるが、AD&D時代は制限が非常にキツかった。さらに筋力12以上、耐久力9以上、判断力13以上、魅力17以上という能力値制限が大変厳しい。最大値18で、魅力17以上というのは、それだけで54分の1の確率だからな。魅力の条件だけで約2%。この能力をダイス目で出せただけで、正に神の祝福を与えられて生まれた感じだな」
ダイアンナ「今の5版のパラディンはどうだ?」
アスト「今のD&Dは能力制限がなくて、なりたければ自由になれるぞ。まあ、筋力と魅力が高いことを推奨されてはいるが」
ダイアンナ「つまり、昔のパラディンは超エリートで、今のパラディンは凡人でもなれるわけだ。昔のパラディンは厳しい選抜試験を勝ち上がったが、最近のパラディンは格が落ちたものよ、と嘆く老パラディンもいそうだな」
アスト「『昭和パラディンVS平成パラディン』という映画が作られそうだな」
ダイアンナ「で、昭和パラディンの実力はいかに?」
アスト「AD&Dの2版が出たのは1989年だから、実は平成なんだけどな。旧世紀パラディンと新世紀パラディンに分類する方がいいのかもしれん。とにかく、パラディンはローフルグッドの性格を順守しないといけないので、もしもルール違反を犯し、善意を蔑ろにするような行いをすれば、同じ神のクレリックに懺悔して、贖罪の仕事をしないといけないらしい。敵に操られたりして、心ならずも悪事に手を染めたとしても、パラディンの能力は一時剥奪され、しかも贖罪の仕事では経験点を得られないとか、とにかくパラディンのロールプレイはいろいろ困難で、厳しいものがあるわけだ」
ダイアンナ「今のパラディンに、そのような制約はあるのか?」
アスト「今は、献身、古き者、復讐の3つの誓いコースがあって、完璧超人でなくても良くなった。教会や信仰に身を捧げる道が献身で、これは組織重視のローフル推奨だな。一方で古き者の誓いは、古の英雄や大地の精霊などとの交信を重視してドラクエの勇者的に見える。組織を信じて尽くすのが献身で、個人的に光の勇者の道を追求するのが古き者、そして悪を倒すことに専念するのが復讐者。2版では割と抽象的な理想論だったパラディンの生き方が、もっと具体的にゲーム性も加味して3種の正義のどれを重視するかで道を選べるようになったわけだ」
ダイアンナ「教会組織に縛られたくはない者でも、パラディンができるようになったんだな。セイバーで言うなら、倫太郎が献身で、飛羽真が古き者で、賢人が復讐者の方向性かも」
アスト「2版のパラディンは、勧善懲悪なシナリオでないと扱いにくいので、DMもそこを配慮しないといけなかったんだが、現在の5版は複数の正義の乱立した状況でも、パラディンのプレイヤーが自分の意思で己の正義を選ぶことができるんだな。そして、悪堕ちパラディンも『単に能力を喪失した元パラディン』ではなくて、誓い破りし者という別オプションが用意されていて、そこから光サイドへ返り咲くというドラマもDMガイドでサポートされている」
ダイアンナ「新世紀のヒーロー物語は、光の使者が簡単にダークサイドに堕ちて、そこからまた光を取り戻すパターンが多いからな。D&Dもそういう物語をフォローできるように進化したわけだ」
アスト「ただし、2回めの裏切りからの光返りはダメらしい。つまりFF4のカインみたいなケースはダメ。まあ、彼は最終的に聖竜騎士になったけど、それが許されたのは、パラディン→悪堕ちではなくて、竜騎士→悪堕ち→反省→正気に戻ったと言いつつ悪堕ち→反省という道を辿った挙句、続編で善悪二つに分裂→そこから結合して覚醒という流れだし、あそこまでころころ裏切りを繰り返すと、ルールがどうこうより、リアルでは付き合うプレイヤーがイヤになるだろうな。こと人間関係の信用って意味で」
ダイアンナ「ところで、D&Dで竜騎士にはなれるのか?」
アスト「竜騎士という職業の定義にもよるな。竜に騎乗するドラゴンライダーということなら、DMが騎竜を用意してくれたらOKだし、ドラゴンランスの世界なら普通に登場している。FFのカインみたいにジャンプによる空中殺法できるスタイルなら、飛行できる魔法やマジックアイテムなどを駆使すれば似たことはできると思う。竜の力で自分自身を強化するって路線なら、戦士ではなくてソーサラーに『竜の血脈』という選択コースがあって、それに戦士系の職をマルチクラスすれば、擬似的にドラゴンの騎士みたいなキャラが作れるかもしれない」
ダイアンナ「ソーサラー兼業の戦士で、ソーサラーとして『竜の血脈』を選べばダイみたいなキャラも作れるってことか」
アスト「パラディンの話からは脱線しているが、AD&D時代ではダイみたいな魔法戦士は再現しにくかった。マルチクラスはエルフみたいな異種族専門だったし、むしろクラシックD&Dのエルフの方がずばりそのままの魔法戦士で、AD&Dのエルフ魔法戦士は『鎧を装着すると魔法が使えない』というルールがあったから、前衛戦士としては扱いにくい残念職だったんだな。どちらかと言えば、AD&Dのエルフ魔法戦士は後衛の弓使いキャラにする方が機能する感じだ」
ダイアンナ「鎧抜きで前に出るのはD&Dのルールでは自殺行為だろうからな。でも、弓使いってのはエルフらしくていいじゃないか」
アスト「魔法使いじゃ弓は使えないからな。後衛のボウファイターとして弓を使い、ここぞというところで魔法を使うのが、エルフ魔法戦士の王道だったのだろう。でも、せっかくの魔法戦士が近接戦闘しにくいのが昔のAD&Dのルールだったんだ。無理やり前に出ようと思えば、ACを良くする魔法のブレーサーとか、自分のACを良くする魔法をかけるという手はあるし、クラシックD&D以上にAD&Dのエルフ魔法戦士は使いこなすのにプレイヤーの熟練が必要になったわけだな」
ダイアンナ「専業戦士が前衛で、エルフ魔法戦士は戦況に応じて前に出る中衛。近年だと、そういうパーティー戦術も確立していると思うがな」
アスト「昔は、クラシックD&Dの『剣も魔法も両方使える勇者っぽい万能エルフ』ってイメージが先にあって、よりルールが緻密だったAD&Dのエルフ魔法戦士は鎧が身に着けられず、前衛には出しにくいという幻滅感も大きかったらしいんだな。今だと、重装甲戦士じゃなくても、回避主体の軽戦士という方向性もあるんだが、旧世紀のD&Dでは軽戦士=盗賊というのが非常に打たれ弱くて、扱いがまだ確立されていなかった感もある。今だと、軽戦士のメリット、重戦士のデメリットで有利不利が相殺されて、同じ戦士でも庇ってくれる壁役と、防御よりもダメージ重視のアタッカーに振り分けられたり、昔よりも戦士のスタイルの幅も広がって、役割分担がいろいろ考えられるようになったわけで」
ダイアンナ「D&D自体、旧世紀から新世紀をまたがって成長しているということだな。昔のルールと、今のルールを比べると、成長の過程が分かって面白い」
@パラディンの特殊能力
アスト「で、竜騎士や魔法戦士から話を戻して、パラディンになると何ができるかなんだけどな。ルールブックをチェックする前のオレが想定していたよりも、特殊能力の数が多すぎて、一つ一つを語るのも面倒だから、一気に箇条書きにリストアップするぞ」
・邪悪感知
・全てのST判定+2
・全ての病気への耐性
・癒しの手:1日1回、レベル当たりHP2点を治せる
・病気治癒:5レベルごとに週1回、病気を癒せる
・防御オーラ:パラディンの周囲10フィート半径の者は、邪悪な生物などの攻撃命中がマイナス1される
アスト「以上が、パラディンが最初から使える特殊能力だな」
ダイアンナ「病気にならないというのが凄いな。コロナ禍がまだ終息していない現在、パラディンの癒し効果があれば、どれだけ世界を救えることか」
アスト「ただ、低レベルのパラディンじゃ週に1回しか患者を治せないからな。毎日、何百人単位で患者が増えている状況で、週に1人癒してもなかなか追いつけない」
ダイアンナ「僧侶魔法は使えないのか?」
アスト「9レベルになると使えるぞ。ただし、キュアディジーズを使えるようになるのは、13レベルだな。最大で1日3回まで使えるようになる」
ダイアンナ「1日3人しか患者を癒せないんじゃ、治療が追いつかんな」
アスト「最高位のクレリックなら、1日9回までキュアディジーズが使えるし、万能治癒呪文のヒールだって5回使えるから、全部で14人を癒せるぞ」
ダイアンナ「そういうクレリックが100人以上いれば、日本だけなら何とかなるかもしれないな」
アスト「世界中ならその60倍と計算して、6000人の最高位クレリックがいれば、コロナ禍にだって負けないだろうが、20レベルのクレリックをそれだけたくさん揃えることができるなら、大抵の状況は何とかなると思うな」
ダイアンナ「それだけいたら、癒しの女神を召喚することもできそうだしな」
アスト「最高位のクレリックは一人いるだけで、ゲートを開いて異世界の存在を召喚できるからな。ただし、パラディンには無理。呪文レベルがそこまで達しないので、神を呼んだりはできない」
ダイアンナ「じゃあ、最高位のパラディンには何ができるんだ?」
アスト「神の啓示として、近未来(一週間以内)の予言ができる。ただし的中率80%ぐらいだな。それで、よくルールを調べると、パラディンは病気治癒の呪文が使えないじゃないか」
ダイアンナ「何だと? 特殊能力に病気治癒があるのに、呪文では使えないとはどういうことだ?」
アスト「パラディンの使える僧侶呪文の種類は、コンバット、ディビネーション、ヒーリング、プロテクションの4系統だけなんだが」
ダイアンナ「戦闘、啓示、癒し、防護の4つか。癒しが使えるなら病気も治せるだろう?」
アスト「いや、病気治癒の呪文は、生死を司る系のネクロマンシーの領域なんだ。つまり、パラディンは自分が病気にならないのと、週1~週4までの病気治癒の特殊能力が使えるだけだ」
ダイアンナ「ああ、特殊能力の使用回数が週4回まで伸びるわけか。それでも、毎日使える呪文の方は覚えないから、クレリックほどには役に立たないということか。普通の冒険なら、それでも助かるのだろうが、コロナ禍という大災害に際しては、たった一人のパラディンにできることは限られている、と」
アスト「それでも、絶対にコロナ感染しないと分かっている存在は貴重だぞ。大切な労働力として、経済を回すのに役立ってもらいたいところだ。パラディンは、必要以上の富を蓄積してはならないという規則があって、自分の質素な生活を維持する以上の余ったお金は、教会とか慈善団体に寄付しないといけないルールだ」
ダイアンナ「だったら、あたしには絶対無理だな。お宝を集めても、寄付しないといけないのだったら、冒険なんてやってられん」
アスト「パラディンが一番こだわる宝って、自分に相応しいホーリーソード(聖剣)だろうな。それを持ったパラディンは、直径30フィートの魔法を中和することができる。自分のレベルと同じレベルまでの魔法が中和できるから、レベル9まで成長したパラディンは自分に敵対的な魔法を受け付けない」
ダイアンナ「すると、敵の魔法使いがファイヤーボールなんかを撃って来たら?」
アスト「ファイヤーボールは3レベル呪文だから、3レベルの聖剣所持パラディンは、剣を一振りするだけでファイヤーボールを吹き消してしまうわけだ。まるで天空の剣を振るった時に放たれる『いてつく波動』みたいだな」
リバT『ええと、その効果ってすでに掛かっている継続効果のみ打ち消すのであって、瞬時に効果発動する攻撃呪文に対しては、打ち消せないのでは? AD&D当時は、魔法に対する即時対応(リアクション)という概念はルール化されていなかったので、ファイヤーボールを聖剣効果で打ち消すのは無理と考えます』
アスト「それができたら格好いいと思ったが、さすがにあらゆる攻撃魔法を無効化する能力じゃ、聖剣持ちのパラディンを傷つけられるのは物理攻撃だけということになるもんな」
ダイアンナ「でも、ダイ大のヒュンケルの鎧の魔剣ってそういう効果じゃないのか?」
アスト「ただし、ライデインへの耐性がなかったんだったな。とにかく、ホーリーソードはパラディンが欲しがるアイテムの一つだ。パラディンが欲しがるのは金銭ではなくて、正義を実行するための強力な武具と限られたマジックアイテムのみ」
ダイアンナ「ホーリーソードかあ。それだけで一記事書けそうなネタっぽいなあ」
アスト「他に、3レベルになったパラディンは、亡者退散のターニングアンデッドが使えるようになるし、4レベルになると戦馬(ウォーホース)が召喚できる」
ダイアンナ「今だと、馬娘ネタと絡めることもできそうだな」
アスト「馬フェチなパラディンってのもありかもな。呼べばやってくる馬ってのは、仮面ライダーのバイクとかと同じで、格好いいと思うなあ。指笛を吹けば、どこからともなく駆けつける馬とか🐎」
ダイアンナ「ええと、ここまで聖剣で魔法を打ち消したり、亡者を退散させたり、馬を呼んだりできると。他にパラディンらしい芸は?」
アスト「芸って言うな。犬じゃないんだから。ええと、AD&Dでは以上みたいだな。3版以降は、また別の能力が与えられたりするが」
ダイアンナ「だったら、次の記事は3版以降のパラディン芸の紹介だな」
アスト「だから、芸って言うなよ。パグマイアじゃなくて、D&Dの話なんだから」
(当記事 完)