ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

D&Dの新展開いろいろ

D&DのCMPV

 

リモートNOVA『先日、こんな映像が公開された』

アスト「何だ、これは?」

 

NOVA『来年、公開予定の映画だ』

 

アスト「D&Dの映画か。昔、こんな映画があったなあ」

NOVA『2000年のD&D映画は日本でも公開されたが、あまり面白い内容とは思わなかったな。当時、「ロード・オブ・ザ・リング」や「ハリー・ポッター」などのファンタジー大作映画が流行したのに対し、「伝統的なD&Dの名を冠する割に内容が陳腐」に感じられた。

『舞台は映画オリジナルの魔法王国イズメールで、魔法の力を持った貴族がそうでない平民を支配する国。そこで改革派の女王が階級差別をなくそうとするんだけど、悪の宰相が魔法貴族の特権を維持するために反女王の行動をとる。その両者の対立に巻き込まれた若き盗賊と仲間の冒険者たちの「ドラゴンを操る杖」を巡るマジックアイテム争奪戦が大筋だ』

 

ダイアンナ「話を聞いた限りは、それほど陳腐に思えないんだが?」

 

NOVA『魔法王国の設定が、ちっともそれっぽくないんだよな。例えば、D&Dという世界には魔法が当たり前のように存在する。ただし、その力を使いこなせる者は限られているというのが、おおよその基本設定だ。そういうファンタジー世界で、魔法王国の名を冠するとしたら、生活の至るところに魔法の力が使われ(少なくとも支配階級の中では)、魔法が日常生活の根幹にある描写(ハリー・ポッターホグワーツ学院のように)が普通だろう。

『しかし、昔のD&D映画では、魔法が貴族社会で日常化された世界観を描写できず、王族と、悪役の宰相と、主人公の仲間のエリート主義な見習い魔術師だけが使っているような神秘の力として扱われ、従来の中世風ファンタジー世界と大差ない描写だ。これは、D&Dファンがサプリメントなんかで馴染んだ魔法王国の姿ではない。ロードスで言うなら、せいぜい魔法研鑽が盛んだけど、統治者は魔法とは関わりの薄い王族・貴族のアラニア王国であって、一般的に魔法王国というイメージで連想されるのは古代カストゥール王国の方だろう』

 

ダイアンナ「魔法使いの女王が統治して、周囲の貴族も魔法を使えるのが当たり前の世界観では、魔法を神秘的に描写することが設定と噛み合わないということか?」

 

NOVA『これは要するに、脚本家および監督がD&Dの世界観に詳しくないのかな、と感じたな。この映画でよくネタにされるのは、王城の中庭にフワフワ浮いているビホルダービホルダーはD&Dを代表するモンスターの一つだが、魔法使いの尖兵として番犬のように地上の護衛任務に就いているようなキャラじゃない。むしろ、自身が知的な魔法使いとして知識を蓄え、陰謀を企み、ダンジョンの奥深くに宝を抱えて巣食っているような魔物だ。おまけにビホルダーの能力に魔法消去の光線があって、魔法使いにとっての天敵と言ってもよい。

『仮にビホルダーをも操れるほど高位の魔術師が自身の力を誇示するために、番犬代わりのビホルダーを目立つように配置しているのだ、と理由づけたとしても、ビホルダーを制御できるほどの魔法使いなら、もっと頭の良い使い方があるだろうと思う。何だかD&Dに詳しくない素人DMがテキトーにモンスターマニュアルをめくって、インパクトあるビジュアルだけで説明文を読まずに採用したような印象だ』

 

アスト「でも、D&Dの世界観はDMが自作できるのだから、うちのイズメール王国は、ビホルダーに知性がなくて魔法使いの番犬代わりに使役されるのが普通なんです、と言い張ればいいのでは?」

 

NOVA『非公式のユーザーが私的な遊びでやる分には、問題ないさ。だけど、公式の名を借りて、公式と違うことをされると、これがD&Dだという看板を掲げることに、ファンは納得しないだろう。それと和訳タイトルが「ダンジョン&ドラゴン」で複数形のズが省かれていることにも、当時の国内D&Dファンは苦情を漏らしたな。まあ、ダンジョンは1つだからズがなくてもいいとして、ドラゴンは終盤にいっぱい出ていて、それをビジュアル的な売りにしているんだから、せめて「ダンジョン&ドラゴンズ」にすべきだ、と20年近く前に言っていたツッコミをもう一度言うぞ』

 

ダイアンナ「当時の国内の配給元がD&Dというゲームに詳しくないことは想像できる。しかし、アメリカのゲーム会社が公式と違うような世界観描写を許容するだろうか?」

 

NOVA『2000年当時は、D&Dの版権がTSRからWotC社に移った後の混乱が解消されていなかったので、映画の監修も十分できなかったという事情もあるようだ。そして、最大の売りであるドラゴンの大群だが、映画としては派手なビジュアルで凄いと思えるが、ゲーマー視点だとクソDMの誹りを免れないバランス崩壊描写だな。

『それまで地道にダンジョン探索して、トラップに引っ掛かったりしながら宝探しをしてきた主人公たち(せいぜいエキスパートレベルだろう)が、一つの王国のみならず、大陸規模の大惨事になり兼ねないドラゴン群団を前に何ができるというのか。2時間足らずの映画で描写して納得できる規模の話じゃない。ゲームに基づく映画なら、ゲームの要素を(主人公たちの適正レベルも含めて)納得できるように描写しないとな。ダンジョンの奥深くに潜って、ボスのドラゴン一頭を倒す程度の映画で十分お腹いっぱいなんだよ。例えば、これみたいにな』

NOVA『ドラゴンなんて一頭出現しただけで、十分に話が盛り上がれるレベルのモンスターなんだ。それをバカみたいに大量出現させて、これがD&Dですと言われても、いや、D&Dではそんなに大量のドラゴンが出現することはまずありません。ドラゴンはそんなに安っぽい扱われ方をしませんから、と言わざるを得ない、と』

 

2023年のD&D映画

 

NOVA『まあ、2000年当時はCG技術の進歩で、軍隊とか大量の飛行怪物の群れを描写して、凄いなあと思わせる映画が流行っていたのもあるかもな。そこでD&D映画でも、ドラゴン大量発生というスペクタクル映像をクライマックスに持って来たのだろうが、だったら物語規模も一王国の内紛を背景にした冒険者の遺跡探検という小さな物でなく、強大な魔法帝国VS竜の加護によって成立した、小規模ながら活気に満ちた伝統王国とか、戦争を背景にした方がいいだろうし、魔法使いが一般市民を奴隷にしている国の改革などという、ややこしい背景は正直必要ない。何だか、D&Dで描ける要素を詰め込めるだけ詰め込もうとして、空中分解をしたようなシナリオだから、ファンに受け入れられなかった理由もよく分かる』

 

アスト「だったら、今度の映画はどうなんだ?」

 

NOVA『サブタイトルが「アウトローたちの誇り」で、舞台はフォーゴトン・レルム。つまり、伝統的な世界観で、映画独自の魔法王国じゃない。すなわち、世界の危機という派手な風呂敷を広げすぎた展開ではなく、堅実な冒険物語になると思うぞ』

NOVA『主人公はトレジャーハンティングを生業とするアウトローで、しかも吟遊詩人(バード)だ』

 

アスト「戦士じゃないのか」

 

NOVA『相棒がバーバリアンの女戦士だな。たぶん、アクション映画の主人公だと、鎧をガチガチに着込んだ重戦士タイプよりも、軽快に動ける職業タイプの方が向いているのだろう。実際、バードは万能職に近いところがあって、武器戦闘も、知識面や呪文も、盗賊系の技能も習得できるから、何にでも首を突っ込めて話を回しやすい利点がある。魔法? よく分からねえ、チンプンカンプンだって言いがちなバカ主人公だと、いちいち解説役がフォローしないといけない。D&D初心者よりも、普通に分かってるファン向きの作品にしたいのかもな』

 

ダイアンナ「分からないけど、興味あるファン候補は今の時代、ネットであれこれ調べるだろうしね」

 

NOVA『2000年当時は、作り手もD&D映画で求められているものが何か、分かっていなかったんじゃないか? しかし、それから20年を経て、ファンの求めるマニアックさが見えている。例えば、主人公バードと、アマゾネス風女戦士以外のキャラが、ハーフエルフのソーサラーティーフリングの女ドルイドという、とてもベーシックとは言い難い構成だし』

 

アスト「D&Dのベーシックだと、ファイター、ウィザード、クレリック、ローグ(シーフ)になるか」

 

NOVA『いわゆる戦士、魔法使い、僧侶、盗賊だな。新作映画のパーティーだと、バーバリアンが戦士で、ウィザードの代わりにソーサラーが魔法を使い、クレリックの代わりにドルイドがプリースト系魔法の使い手で、盗賊系はバードの主人公が担当する。変化球気味だがバランスは悪くない。そして、どうしてこういう組み合わせかと言えば、都会よりも荒野を旅する冒険に向いた構成だからだ。重い鎧はあまり着込まないのは戦闘よりも、野外探索に向いたパーティーだし、勝てない相手だったら素早く逃げればいい。ソーサラーだったらインドア系の本の虫のウィザードより、機転が利きやすいだろうし、ドルイドだったらエコな癒し手としてポリコレに引っ掛かる要素も少ない』

 

アスト「確かに、プリーストだと信仰する神の設定やロールプレイが、映画を見る客層に合わないケースも考えられるな」

 

NOVA『ドルイドが「自然を破壊する悪い奴らですね」と発言しても、それに反論するようなアンチエコ思想は今どきいないだろうしな。あと、このパーティーだと主人公が唯一の都会派となる。つまり、街での交渉役は主人公を置いて他にないので、必然的にパーティーの顔役となる。実に練られたパーティー構成だと思うよ。最初は主人公がバードと聞いて、変わってるなと思ったが、実際に物語をイメージしたら、荒野を舞台としたアクション映画として上手く機能しそうだと納得した。

『登場モンスターだと、黒ヒョウっぽいディスプレイサービーストと、白クマっぽいアウルベアがいいなあ。空中から飛来し、火を吐くドラゴンも小型サイズが一頭だけで、ゲームバランス的にも悪くなさそうだ。細かいストーリーはまだ判明していないが、そのままゲームのシナリオとして採用しても、実に楽しい冒険ができそうなPVだったと言える。今風のアクションファンタジー映画として堅実に作っているような感じなので、期待できそうだ』

 

D&D2(2005)とD&D3(2012)

 

NOVA『さて、2000年の旧作D&D映画がゲームファンにとって残念な作品になって興行的に失敗に終わったわけだが、その後、D&D映画は劇場公開されず、DVD作品として制作されている。2005年の2作めはサブタイトルが「竜神の怒り」だが、日本で2006年に劇場公開された際は「精霊の力」という別称が付けられたらしい。一方、2012年の3作めは「太陽の騎士団と暗黒の書」だな。どちらの作品も、俺は今回の新作映画の話を聞くまでは寡聞にして知らなかったわけだが、Wikipediaから分かる範囲で語ってみたい』

 

アスト「実物を見ずに語るということは、正確性に欠けるということだな」

 

NOVA『限られた史料で推測してみることも、歴史学の一環ということだ。ただし、事実と憶測の区別はしっかり付けて、憶測にも相応の根拠を提示するのが研究者としての誠実な態度だがな。さて、D&D2だが、舞台設定は前作と同じイズメール王国だ。1作めが4500万ドルの制作費に関わらず3300万ドルの興行収入しか得られなかったので、制作費は1200万ドルだけだ』

 

ダイアンナ「その額が映画の制作費として多いんだか少ないんだか分からないんだけど」

 

NOVA『比較対象として、ハリー・ポッターの1作めを持ち出すと制作費が1億2500万ドルで約3倍、興行収入アメリカ・カナダだけで3億ドル、世界中では10億ドル越えで大成功の部類だな。ロード・オブ・ザ・リングは3部作まとめての制作費が2億8000万ドルで、興行収入が29億ドルだから、ヒット作は出したお金の10倍が返って来るみたいだな』

 

ダイアンナ「D&D映画第1作は、制作費がハリー・ポッターの3分の1だけど、収入が本国だけでも10分の1か。明らかに失敗だな」

 

NOVA『なお、大作ファンタジー映画というよりもB級ホラー映画としてマニアに知られている「ドラキュリア」が比較対象にはいいかもしれない。それは制作費5400万ドルで、興行収入4700万ドル。劇場映画としては成功と言えない数字だが、レンタルビデオでの回転率はそれなりに良かったというのが、俺の主観観察だ。同じ吸血鬼映画でも2000年代のA級アクション映画として有名な「ヴァン・ヘルシング」は制作費1億6000万ドルで、興行収入は3億ドルだから、作品ジャンルの問題ではないのだろうが、とにかく制作費1億ドル越えがA級映画、5000万ドルぐらいがCGやアクション要素のあるSFファンタジー劇場公開洋画の最低基準かな』

 

アスト「金の話は置いておいて、D&D映画の1作めが失敗して、2作めは劇場公開をしない方向で低予算ムービーとして作られたってことだな」

 

NOVA『2作めのあらすじを見ると、1作めのイズメール王国は、訳表記違いのイシュミール王国と改変されていて、魔法貴族が魔法の使えない平民を奴隷扱いしているという設定はなくなっている。1作めの敵戦士が100年前にアンデッドに変えられたという設定があるので、もしかすると100年後のストーリーとして仕切り直しが図られたのかもしれないが、それ以外の要素は舞台的にも登場人物的にも関連性が薄い。

『そして、2作めの主人公は王国宰相を務める戦士で、王国滅亡を画策する悪のアンデッド戦士が古代の竜神を復活させようとするのを防ぐため、自分を含む5人の冒険者パーティーで探索を行う物語だ』

 

ダイアンナ「前作の主人公は盗賊戦士で、魔法貴族からは軽視されている存在だったね」

 

NOVA『ああ。パーティーの見習い女魔術師も、当初は傲慢な性格で、魔法の使えない主人公たちを探索のための道具、コマ扱いしていたのが、主人公たちに助けられて、惚れたことをきっかけに自分の差別意識を改めるという筋書きなんだが、そもそもD&Dの世界では魔法使いが少数派で、畏れられ差別(敬遠)されているのが一般的なので、魔法貴族が平民を見下すストーリーというのは異質な感じだったんだな。

『そういう世界観のファンタジー小説が、ハリー・ポッターを含めてないわけではないが、魔法使用者が上位階級を為す社会をどのように描くかの掘り下げが1作めには十分に為されていないので、どうも無理やり階級闘争的な物語をスポンサー側に投入されたらしく、作り手も不本意だったのかな。ともあれ、2作めは1作めで不評だった要素を切り捨てて、よりD&Dらしい構図になっている』

 

アスト「と言うと?」

 

NOVA『パーティー構成だな。1作めは盗賊戦士、見習い女魔術師、主人公の相棒盗賊、ドワーフの戦士、エルフの戦士の5人だが、実にバランスの悪い脳筋パーティーとしか言いようがない。プリーストのいないパーティーで大丈夫かよ。どうも、魔法というのは限られた上位階級だけが使える特別な力という認識だろうが、そういうのは魔法王国とは言わない。

『一方で、2作めの主人公は若者ではなく、かつては剣の達人だったおじさんだ。しかも魔法使いの妻がいる。主人公がダンジョン探索をする一方で、妻が王宮に残って、敵の陰謀を知るべく古文書の解読に当たるという筋書きで、「ダンジョン探索と、外の世界で起こっている大掛かりな事件」の両方を描けるようにしている。

『1作めの失敗は、主人公たちが未熟で、世界の大事件に関われる立ち位置でないにも関わらず、無理やり巻き込まれて、ろくに冒険者としての成長も描かれないままに、何だか強引なご都合主義で事件が解決しちゃったよって頭の悪い映画になっていること。D&Dのプレイヤーって、戦術とかストーリー構造とかを分析する知的なオタク連中が多いのに、当時の映画の作り手はそういう世界を知らないから、テキトーに派手な映像を見せればウケるだろうという甘い考えで作品を仕上げたのかな。まあ、物語に無理やりダンジョンとドラゴンを入れようとしたのは分かるけど、D&Dプレイヤーならドラゴンの脅威は身近に知っているから、見習い魔術師とか盗賊の若者とかでは、ドラゴンの出て来る大事件に対処できないことは分かっている。未熟な若者の成長譚を描きたいのは分かるが、だったらそれに応じた事件の規模を考えないといけないわけで』

 

ダイアンナ「なるほど。だから2作めの主人公はベテラン親父だと」

 

NOVA『そう。元王国最強の近衛隊長だったのが弟子に跡目を譲って、自分はデスクワーク中心の宰相職を務めている。最近、体が鈍ってきたのを実感し、弟子にも剣で負けたりして、これじゃいかん、若い時の自分を取り戻したいと思っているところに、王国を揺るがしそうな大事件の予兆があったので、新たに冒険仲間を募って探索行に赴くという設定で、見事にD&Dを長年プレイしてきた、おっさんゲーマーのツボを突く主人公像だ』

 

アスト「ターゲットはおっさんかよ」

 

NOVA『アメリカ映画だからな。D&Dは子どものゲームと見なしていた1作めとは違い、きちんとしたマーケットリサーチで、D&Dを最も愛するファンは、この道何十年という年季を積んだおっさんであるという確信を得た。ならば、若者の成長譚よりも、傷を抱えたベテランの現場復帰ストーリーの方がウケると見たわけだな。

『そして、2作めの冒険者パーティーは、おっさん戦士をリーダーに、荒くれ女バーバリアン、生真面目な神官、エルフの女魔術師、そして小男盗賊。D&Dパーティーとして完璧な構成だ。前作では排除されたプリーストがしっかりいるのがいい。主人公たちが冒険の現場で、邪悪な竜神を封じた宝珠の奪還を目指す一方で、主人公の妻は再封印の方法を古文書で調べている最中に、敵の呪いで肉体がアンデッド化の危機に見舞われて……という展開らしい』

 

アスト「なるほど。妻のピンチを助ける主人公の動機としてもバッチリだな。妻はNPCになるのかな?」

 

NOVA『ゲーム的に考えるとそうなるな。古文書解読で情報を与えてくれる役割と、主人公と同様に自分の立場で王国を守るために懸命になる同志の役割と、そして世界の危機と想い人の危機が直結するメインヒロインの役割と。その主人公の妻は魔術師として優秀な才能と直感的洞察力を持っているものの、直情的で行動的な性格の反面、冷静な判断力や思慮に欠けていると見なされて、魔法使いの評議会では高く評価されていない。若者的な視点で感情移入しやすいキャラ付けが為されているわけだな』

 

アスト「おっさん主人公と、若き妻の2つの視点で物語が描かれている、と。そして、クライマックスでは復活した竜神を再封印すべく頑張る、若き日の情熱と活力を取り戻したおっさんが、みんなの想いを悪にぶつける話だな」

 

NOVA『そこまでは知らんが、願望交じりだとそうなるだろうな。ここでアンデッド化した妻が、悪戦士に寝取られすると、一部のマニアしか喜ばん。IF展開的な違うジャンルの作品となってしまう』

 

ダイアンナ「ハッピーエンドを愛する、まともなファンタジーゲームファンからはブーイングを受けそうなので、そういう妄想は竜神と共に封印した方がいいだろうね。さて、2作めはそういう話として、3作めは?」

 

NOVA『2作めとは世界観を一新した作品で、制作国もアメリカではなくてイギリス。通し番号こそ「D&D3」となっているが、それは日本のDVDタイトルでしかなく、テーマもD&Dサプリメントの「不浄なる暗黒の書」に由来するものだ。邦題には「太陽の騎士団」とあるが、騎士団はあっさり壊滅するので、生き残った新米騎士が主人公。素性を隠して悪への復讐と拉致された騎士団長の父親の救出を果たすべく悪属性の冒険者パーティーに紛れ込んだ彼が、邪悪な宰相と、古代の邪悪な魔術師の呪いを宿した書物の謎を解き、陰謀を阻止する物語らしい』

 

アスト「1作めでは宰相が敵、2作めでは宰相が主人公、3作めではまた宰相が敵なんだな」

 

NOVA『国を中から蝕む悪を倒すストーリーか、外敵から国を守るストーリーの方向性の違いだな。あと、主人公が未熟な若者に戻ったが、イギリス人が作ったからか、刺青とかピアスとかパンクロックのファッションを前面に打ち出し、いかにもなアングラ・ファンタジー色を漂わせている』

NOVA『パーティーメンバーは、宰相と通じた悪のリーダー魔女と、仮面の闇魔術師、暗殺者、そして銀肌の(種族不明)豪腕戦士。主人公が聖騎士っぽいことを考えると、アラインメント(性格属性)的にパーティーが成立するのかと思うが、最初は未熟で小バカにしていた主人公が冒険を通じて、たくましく成長するのに惚れた年上魔女が改心するようなツンデレ展開らしい。まあ、マニアック的な視点では、悪を主軸とした奇妙なパーティー構成にレアアイテムを見つけたような興味を掻き立てられるが、悪をもって悪を倒すドラマチックなアウトロー映画を期待すると、そこまでドラマチックな話ではないらしい』

 

アスト「設定だけ聞くと、善良と邪悪のキャラが冒険を共にするうちに惹かれあって……という価値観の転換が面白そうにも思えるが、1時間半の映画でまとめきれるとは思えないな」

 

NOVA『TVの連続ドラマだと、純朴な主人公が徐々に冷酷になる過程とか、逆に邪悪と思われた女性に意外な一面があって徐々に絆されていくとか、劇的にも思えるが、そういう登場人物の心変わりには一本の映画だと、どれだけの尺が必要かとも思うし、観客に納得させるための演出描写とかいろいろハードルは高いと思う。まあ、作品を見ていない以上、演出の良し悪しは語れないんだが、他人の感想を読んだ限りは成功していないようだな』

 

アスト「で、今回はD&Dの映画の話をしたかったのか?」

 

NOVA『いや、違う。今のはただの前置きにして、寄り道脱線だ。映画の話は本題じゃない』

 

本題はこちら

 

NOVA『5版の日本語再展開のCMだな。D&Dなのに、〈これでもくらえ〉とT&Tの呪文を使う武闘派魔法使いがオールドファンの話題になったり、こんなPV作ってまでアピールしてるWotCジャパンの本気度は伝わってきたりする一方で、本国では2年後の版上げへの動きが発表された。タイトルが6版ではなく「One D&D」というプロジェクト名で動くことが公表されたんだ』

 

アスト「ワンD&Dってどういうことだ?」

 

NOVA『オネDDと略して呼ぶ者もいるが、そのうち何かに定着するだろう。俺個人は6版と呼んでいたのを、ワンDDと呼ぶか、ワンドドと呼ぶか、いろいろ検討中。とりあえず、ワンDDについては、どういう風にルールがバージョンアップされるかの概要が発表されて、それを研究しているサイトもすでにあるようだが、現段階で予定は未定の要素も多く、俺も時間がなくて研究不足だから、今は詳細は語れん。興味があれば、まずはこちらをチェックしてからだな』

ダイアンナ「オンラインでテストプレイなんかもしつつ、2年後の完成版発表に漕ぎ着けるので、英語環境で参加できる熱意あるD&Dファンよ、よろしくね〜って話かな」

 

NOVA『ああ、今すぐ日本語環境で何かができるわけではなさそうだ。一応英語は読めるが、英文ルールを買うほどのコア層ではない日本語ユーザーとしては、5版再展開を祝いつつ、ワンDDの2年後を楽しみにすると言ったところか。それと9月には、こちらも気になる』

アスト「それはD&Dルールでクトゥルフをプレイできるサプリメントか」

 

NOVA『ああ。出版元のホビージャパンはD&Dの版権が切れたので、D&Dの名前が使えず、「世界で最も有名な5版」という言葉でボカしているが、実質的にD&D5版サプリメントだな。これがあれば、クトゥルフ神官とか、クトゥルフと契約したウォーロックとか、D&Dの世界にクトゥルフ関連の要素を呼び込むことができる』

 

アスト「単純に使えるデータが増えるってだけでも、ここでの研究ネタになるってことか」

 

謎の声「その通りでごわす」

 

アスト「うおっ、そのごわす口調はもしや……?」

 

カニコング「当然、吾輩でごわす。クトゥルフといえば触手。触手といえば、かつて触手キングの名で暴れ回った吾輩が復活するのが道理でごわすよ」

 

NOVA『うむ。彼はクトゥルフ担当ということで、D&Dとクトゥルフの程よい調和のための研究員として活動してもらうことになった』

 

ダイアンナ「やれやれ、こういうオチとはね。また騒がしくなりそうだよ」

(当記事 完)