ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「天空要塞アーロック」攻略その7(決着のとき)

最終回と、今後の青写真

 

リモートNOVA『3月中に終わらせる予定だったアーロックだが、諸事情でバタバタして、結局、4月半ば過ぎになってしまったな』

 

ダイアンナ「これが終わった後の予定は?」

 

リモートNOVA『ダイアンナとリバTを連れて、コンパーニュに向かう。その間の天空宮殿の管理はアストとケイPに任せて、アルシャード・ガイアのキャラ作りをしてから、改めてガイア様の御前で花粉症ガール4人セッションの開幕だ』

 

アスト「3ブログ交流企画って奴だな。留守番は任せておけ」

 

リモートNOVA『それと、次のゲームブックの予定は、アストの言ってた「真夜中の盗賊」か、あるいはシナリオ「謎かけ盗賊」の紹介をしたいと思う』

 

アスト「『謎かけ盗賊』だと?」

 

リモートNOVA『今度のGMウォーロック誌でスポットが当たるそうだし、FF32巻「奈落の帝王」にもリンクしているわけで、この機会に触れておきたいと思ってな。一応、目下の攻略候補はこうなっている』

 

・ダイアンナ:6巻『死の罠の地下迷宮』(FFC2収録)

・リバT:24巻『モンスター誕生』(FFC1収録)

・アスト:29巻『真夜中の盗賊』

・NOVA:32巻『奈落の帝王』

 

リモートNOVA『GMウォーロックの動向と、夏発売のFFコレクション3への動きを見据えながら、個人的に旬だと感じるものを取り上げたいと思っている次第』

アスト「FFCに収録されている復刻作品と新作を中心に考えつつ、復刻の可能性が少ない社会思想社版の後ろから遡っていくって流れだな」

 

リモートNOVA『まあ、俺個人が未プレイの作品をこの機会に触れておきたいだけだがな。アーロックの次は「奈落の帝王」をプレイしておけば、一応、現在の邦訳作品は全てクリアした形になる。その後は、「アランシアの暗殺者」と「巨人の影」を喜んでプレイしたい』

 

アスト「じゃあ、まずはアーロックをきれいに終わらせないとな」

 

リモートNOVA『ああ。前回はアーロックの地下都市で、第1地下ドームから犯罪者の巣食う酒場とか、ネコの黒幕に牛耳られた宇宙海賊らとの対決を切り抜けて、転送装置の力で第5地下ドームまで一気に突破した。

『攻略手順としては、酒場ルートからパラグラフ2番に入る方が被害は少ない感じで、お勧めだな。もちろん、どちらのルートも即死パラグラフはそれなりにあって、正解の道筋を知らなければ消耗が激しくなるのは同じだが、正解を知っていて技術点がそれなりに高ければ、酒場ルートの方が楽だ。戦闘を除けば、体力点2点のダメージだけで突破できる』

 

アスト「7番を通過する海賊ルートは最低でも運1点は削られるし、即死パラグラフの数も多いし、戦闘回数も多くなるわけか」

 

リモートNOVA『改めて自分がプレイする時は、宇宙ステーション→海賊→砂漠→酒場というルート選択で臨むことにするだろうな。シェイネ、ヴァリオーグ、沼地、ネコ海賊&ウォデウィックのイベントはリスクがより大きいと判断している』

 

アスト「では、パラグラフ2番、第5地下ドームからの攻略を聞くとするか」

 

第5地下ドームにて(パラグラフ2)

 

NOVA『転送を終えて抜けた先は古代アーロックの中心地で、これまでの廃墟然とした下町風味の場所と違い、見るからに壮麗で美しい景観の区画となっている。ただ、「風変わりなデザインの屋敷や博物館や図書館や教会が見える」と説明されているが、これもプレイヤー視点、キャラ視点を無視した下手な描写だと思うな』

 

アスト「まあ、建物のデザインが風変わりだったら、外から見ただけで博物館とか図書館とか教会なんて分かるはずがないもんな。観光ガイド本みたいな説明、あるいは地図が分かっている立場からの説明と言ったところか」

 

NOVA『これはゲームをプレイしていると分かるんだけど、風変わりなデザインの建物があって、プレイヤー視点だと「この建物は何だろう?」って思うんだよ。それで建物に入ると「古代の神殿」と何らかの形で情報が与えられる。神像や祭壇があったり、看板から読み取れたり、ゲーム的に建物名が画面に浮かび上がったり、ナレーション風に「どうやら古代の神殿のようだ」と記されて、プレイヤーに必要な情報を上手く伝えてくれる。しかし、アーロックでは描写に力を入れてはいるんだけど、プレイヤーキャラの知るはずのない説明文の羅列で、第3者視点が目立つんだな。

『ゲーム的に考えると、攻略上、意味のない描写が延々と続くし、では小説として完成度が高いかと言われると、視点キャラが「君」という2人称スタイルという特性を理解していなくて、細かい粗がいくつも散見される。プレイヤー視点で見えていないはずの風景が、映画の第3者視点のように描写されると、興醒めに思えることもある』

 

アスト「だから、ゲームブック語り部は、GM役の作者だろう? GMが知ってる情報をプレイヤーに伝えていると思えば、小説みたいな粗探しは無意味じゃないか?」

 

NOVA『そう、割り切れたらいいんだがな。ともかく、アーロックの色彩を一言で述べると、カラフルでサイケデリックで、どこかドラッグをキメているような狂った描写が目立つ。例文を挙げると、「ダイヤモンドや雪片や立方体の形をした、黄土色や赤紫色やこげ茶色の美しいランタンが、周囲の空中を漂い流れていく」「きらめく金属製の橋がかかった何本もの細長い運河や虹の川が、はるかむこうの壁面にむかって、まっすぐに宙を伸びている」という描写が第5地下ドームだ。作者としては、壮麗なセンス・オブ・ワンダーを描写しているつもりだが、神秘的というよりは猥雑といった感じだな』

 

ダイアンナ「そもそも、こういう表紙絵のゲームなんだから、何を今さらって思うぞ」

 

NOVA『描写へのツッコミはさておき、この第5地下ドームは中心地だったはずなのに、人影は全く見られない。北西へ数マイル離れた辺りに、色彩豊かな《驚異のドーム》が見えるが、どの道をたどれば行き着けるのかが分からない。そこで北東(318)か南西(202)かを選ぶことになるんだが……』

 

アスト「どちらかへ行くと死ぬってか?」

 

NOVA『当たらずと言えども遠からず、だな』

 

アスト「って、本当に死ぬのか?」

 

NOVA『即死するわけではないが、先に202へ進んでおかないと、攻略必須アイテムが入手できずに詰むことになる。そこで、南西へ向かうんだが、何時間も延々と歩いた挙句、《驚異のドーム》は10マイル北にあることが見受けられる』

 

ダイアンナ「さっきは『北西へ数マイル』って言ってたよね。1マイルって、どれぐらい遠いんだ?」

 

NOVA『約1.6キロメートルだな。人間の歩く速さを時速4〜5キロだと考えると、1時間歩いて約3マイルってところか。明らかに何時間も延々と歩く距離ではないんだが、ここまで歩いて来て、ようやく道を間違えたことに気づくわけだ。ため息をついて来た道を引き返そうとすると、何だかナメクジみたいな奇妙な生き物に不意を打たれて、「武器を捨てろ!」と脅される。抵抗しようとしても、仕掛けられていた罠にはまって無駄にダメージを負うだけなので、大人しくしていると、怪生物は意外と温厚な態度でサムバッカ(愛称サム)と名乗り、いろいろと話をしてくれる』

 

サム『ああ、あなたは話の通じる本物の人間なんですね。近ごろはいろいろと物騒になっていまして、警戒するのも当然です。ああ、昔は良かったなあ』

 

NOVA『こんな感じで、サムはいろいろと語りかけて、情報をくれるわけだ。彼は元々、ル・バスティンが作った改造生物の1体だったんだけど、失敗作と見なされて処分されそうになったところを逃げ出したらしい。何だか助けを求めて来たんだけど、断ると逆ギレしてダメージを1点くらって逃げ出す羽目になるので、攻略必須アイテムのためにも助けてやるべきだ』

 

アスト「で、何をどうやって助けてやるんだ?」

 

NOVA『ル・バスティンの差し向けた刺客であるカンベラ大ネズミを倒すために、おんぼろボートに乗って湖上で乗り物戦闘を行う必要がある。敵の船は、多数のレーザー砲を備えた高速艇で、互いのデータはこんなところだ』

 

●おんぼろボート:操縦6か7、レーザー3、シールド7

●ネズミの高速艇:操縦9、レーザー3(2)、シールド10

 

NOVA『敵のレーザーは、上手く不意をつくような選択肢(170)を選ぶことで、2に減らせることができるが、相手の操縦技術の方が高いので、互いに1Dで2以下を出さないと当たらない。そして、相手のシールドの方が高い以上、こちらの勝率は半分以下だ。本作の宇宙船および乗り物戦闘の難易度の高さは先述のとおりだが、この湖上戦闘を切り抜けないと、攻略必須アイテムが手に入らない。実質、この戦いが本作の真のラスボス戦みたいなものとさえ言えるだろう。

『運良く勝利できると、「まさか勝てるとは思わな……いやいや、さすがの勝利です」と喜んだお調子者サムが「伝説のエネルギー石です」と言って、乳白色の宝石を渡してくれる。そそくさと場を立ち去ったサムだが、それもそのはず、彼の言葉は全くの嘘で、ただの『岩塩の結晶』でしかないわけだ。しかし、この塩こそが本作の攻略必須アイテムとは初見ではまず思うまい』

 

アスト「まあ、ナメクジだから塩は脅威的な破壊力を持ったエネルギー石と考えたのかもしれないな」

 

NOVA『とにかく、先攻の敵が1Dで4回2以下を出す前に、こちらが5回2以下を出すと勝てる乗り物戦を制して、何とか塩を入手した後、改めて北東(318)に進む。しかし、また何時間も歩かされて、そのうち夜になってしまうんだ』

 

アスト「実に遠い数マイルなんだな」

 

NOVA『目的地が見えているのに、そこに至る道筋がはっきりしないので、一向に辿り着けないという展開だ。アーロックの要塞には、道案内用のマップが用意されていないのか、と疑問にさえ思う』

 

アスト「別に観光名所じゃなくて、要塞惑星なんだから他所から来る者のために地図なんて用意しない方が普通だろう?」

 

NOVA『せめて通信端末が使えたらなあ、と思いながら、きっとそういう最新機器は《星霧号》に搭載されていたのだろう、と失った愛機を懐かしがりつつ、寝泊まりできる場所を探すジャン・ミストラルだった。すると、前方からランタンを手にした背の高い細身の男が近づいて来る。彼と接触するか(349)、怪しんで近くの建物に身を隠すか(267)の選択肢だが、正解は前者で、後者だと余計な苦労をすることになるので勧めない』

 

アスト「だけど、攻略記事である以上、その余計な苦労もわざわざ解説するんだろう?」

 

NOVA『まあな。近くの神殿っぽい建物に隠れると、そこに彫像と化して封印されていた凶悪な殺人モンスター、フォグ・ファルキンをうっかり解放してしまう。そいつの噂はジャンも聞いたことがあって、「数百年前に銀河を荒らし回り、1000年間の禁固刑の判決を受けたとされる伝説の極悪非道犯罪者」だそうだ。ちなみに外見は「馬の頭をした、腕のない二本脚のルビー色のおぞましい怪物」とのことだ』

 

アスト「馬だと? だったら味方にするといい」

 

NOVA『いや、会話の余地なく襲いかかって来るんだが? 《チョグ》という怪物種族で、腕がない代わりに舌が稲妻のような速度で飛び出して来て、木の葉のように顔にベッタリと広がって窒息死させようとして来るんだ。ここで、そして、ここだけで「酸素点」というルールが使われる。冒険記録紙に酸素点10点という項目が用意されていて、今まで使う機会がなかったんだが、この戦いは酸素点を削られながら行われる。酸素点が0になって窒息死するか、即死パラグラフ95番に進んでしまうかで、ゲームオーバーだ』

 

アスト「95番はどんな死に方だ?」

 

NOVA『するどい鉤爪の生えた足で腹を切り裂かれて死ぬ』

 

アスト「つまり、人の恋路を邪魔したから馬に蹴り飛ばされたんだな」

 

NOVA『誰がいつ恋路を邪魔したって?』

 

アスト「翔花ちゃんへのオレの恋心を、お前は邪魔しただろうが」

 

NOVA『そのネタをまだ続けるのか? ダイアンナに電撃を浴びても知らんぞ』

 

アスト「おっと、すまない、アニー。ほんのささやかなジョークだ」

 

ダイアンナ「笑えないジョークに価値はない。雷帝の怒りを思い知るがいい!」

 

アスト「ウォーー(電撃を浴びて気絶)」

 

NOVA『……だから、言わんこっちゃない。まあ、俺は馬に蹴られて殺される前に、正解ルートを見つけたがな。このイベントで極力被害を受けない最短攻略ルートは以下のとおりだ』

 

・359:バトル開始。

・105:相手の首筋に手刀を叩きこむ。酸素点を2点減点。相手は失神するが、まだ舌ははがれない。

・120:相手にひざ蹴りをくらわせる。酸素点を2点減点。倒れた相手に馬乗りになる。

・268:ヘッドロックをかける。相手の舌から解放されて、プロレスめいた肉弾戦からレーザー剣を使用した通常バトルに持ち込む。技術点9、体力点6の相手と戦う。

・294:相手を倒すと、「鋼鉄製のヤスリ」を入手(だけど、何の役にも立たないゴミアイテム)。

 

NOVA『ということで、ジャンは馬の頭をした怪物犯罪者とプロレス勝負で勝利したわけだが、その戦いを謎のランタン持ちが観戦していたんだ』

 

アスト「なるほどな」

 

NOVA『って、お前、気絶していたんじゃなかったのか?』

 

アスト「気絶したさ。だけど、お前が極悪非道犯罪者とのバトルを解説している間に、意識を取り戻したのさ。考えてみれば、馬の脚に鉤爪はない。そいつは馬の顔をしたクソモンスターに過ぎん。馬の名誉のために悪辣な馬もどきを撃退してくれて、ありがとう、ジャン・ミストラル

 

NOVA『調子のいい奴め。とにかく、謎のランタン持ちは改めて見ると、実は背が低く小太りな体格だと分かる。背が高く細身に見えたのは、ランタンの灯りで見えた影と見間違えたのだと判明し、第一印象よりも温厚そうな老人だと思えて来る。そして、4本腕のエンスリナの同胞の人相風体をしており、「見知らぬ方よ、ようこそ。数多くの戦いをして来た勇者っぽい風体だが、今は疲れておるようにも見える。わしのうちへ来て休みなさらんか? 傷に効く薬も用意してある。勇者を歓待するは、大いなる喜びと言えよう」とにこやかに話しかけて来た』

 

アスト「何だかうさん臭いんだが?」

 

NOVA『しかし、彼の勧めを断ると、いきなりレーザー短剣で切り付けて来て、致命傷を受けてゲームオーバーなんだが?』

 

アスト「はい? その老人は腕利きの暗殺者か何かか?」

 

NOVA『とにかく、エンスリナの商人マルサツと名乗った老人の親切に応じて、彼の屋敷で休ませてもらうことになったわけだ』

 

謎の曲者商人マルサツ(パラグラフ5)

 

NOVA『さて、半ば強引にジャンを屋敷に連れて来たマルサツだが、表面的な文章上では歓待してくれている。しかし、結局、彼の屋敷では体力が回復することなく、むしろ削られたりもする。例えば、緑の液体と青い液体を勧めて来て、どちらかを飲むような選択肢が提示されるんだが、緑の液体は飲むと毒で体力を4点削られる。青い液体は無害だが、腐っているような不味さだ。実はどちらも飲み物ではなくて、足の疲れをとるために足をつける液体というオチだが、ジャンがうっかりドジったというよりも、陰険なマルサツ(=作者)がそう仕向けたような感じだ。ジャンがドジるのを見て、プッとふき出したり、慇懃だが、微妙に性格が悪いように描かれている』

 

アスト「はっきり敵意を示す奴よりも、味方のフリして被害を与えて来るような奴の方が厄介ってことか」

 

NOVA『後で判明するんだが、こいつはル・バスティンの手下のスパイで、主人公を陥れるために差し向けられたんだな。しばらく同行して表面上はあれこれ助けて、誘導してくれる形なんだが、こいつのせいで窮地に陥る羽目になり、肝心なところで助けてくれない冷やかさを示したりするのも伏線って奴だ』

 

アスト「敵のスパイだったら、まあ、ヘイトを集めても仕方ないというキャラだな」

 

NOVA『最悪なのが、こいつが小太りの爺さんってことだな。こういう役どころで美少女だったりすると、途端に見る目が変わる。マルサツが女性キャラのマリサだと想像してみると、あら不思議、とたんに全ての行動が萌え悪女として映るんだ。この作品は魔女シェイネ以外の女性キャラが途中で登場しない色気のない作品だが(おまけに肝心のシェイネのイラストがないし)、もしもマルサツが敵の女スパイとして描かれていたなら、俺はこの作者を万難を排して、良いセンスしていると褒め称えていたかもしれない。今からでも遅くはない。マルサツを女性化させるべきだ』

 

アスト「明らかに遅いだろう? マルサツをマリサと女体化させたアーロック萌えバージョンを作るとしたら、ホビージャパンが萌えゲームブックを出版していたゼロ年代にすべきだったんじゃないか?」

 

NOVA『おお、それだ。「デストラップ・ダンジョン」「ハウス・オブ・ヘル」「サムライ・ソード」のノリで、萌えアーロックの「スカイ・ロード」を出していれば、異形の宇宙人美少女が華やかに活躍する壮麗な作品に。表紙絵の赤首ファーバッド団のギャングが、真っ赤なエアバイクに乗って、赤マフラーを巻いた萌え触手少女ギャングのイラストだったら……あっ、今、思い出した。シェイネ以外に女性キャラがいたことに。パラグラフ327番に登場した大蜘蛛の女王《クイーン・スリン》が美少女キャラになっていたら、実に可愛いクモ娘になっていたんじゃないか?』

 

ダイアンナ「ダディの性癖は時々理解困難だが、正気に戻すために電撃を浴びせたらいいのかな?」

 

アスト「やれ、アニー」

 

NOVA『い、いや、ちょっと待て。大丈夫だ、俺は正気に戻った。萌えアーロックなんて物は、ふと心によぎった幻想に過ぎなかったんだ。そう、女スパイであったら萌えたであろうマリサちゃんはただの幻で、現実のマルサツは小太り爺さんだってことに。あまりのショックで、寝て起きたら体力1点減らされるほどだ』

 

アスト「寝て起きても体力が回復しないなんて厳しいな」

 

NOVA『全くだ。マルサツの屋敷で、どうも睡眠薬入りの酒を飲まされたようで、いつの間にか意識が途切れていて、体力が回復せずに削られるなんて、休んだ意味が全くない。この作者は、プレイヤーに休息をとらせて体力点を回復してやろうという人の情けが欠落しているようだ』

 

アスト「リソース回復が全くできないゲームってことだな」

 

NOVA『で、起きても居間に誰もいないので廊下に出ると、左右のどちらかを選ぶことになる。右(284)に行くのが正解で、左(326)に進むと余計な苦労をすることになる』

 

アスト「どんな苦労だ?」

 

NOVA『迷路のような館で道に迷い、テキトーに入った扉が書斎で、3冊の本が目立つように上下逆さまに置かれている』

 

・104:『相対的非相対性理論』。調べると、技術点9、体力点4の保安ロボットに襲われる。

・355:『57世紀の詩』。罠が仕掛けられて爆発し、2点のダメージ。

・305:『バナのホームメイド・ワインの本』。本棚が回転し、中の隠し倉庫に放り込まれる。数々の武器が保管されているが、もう一度、書斎に戻る仕組みが分からずに閉じ込められたままになる。

 

アスト「本にトラップを仕掛ける奴の気が知れんな」

 

NOVA『……すまんな。俺だって、本にトラップを仕掛けて、娘をピンチにさせた前科持ちだ。このシーンばかりは作者にツッコミ入れると、自爆してしまう。詳しくは、この記事を参照』

 

ダイアンナ「とにかく、隠し倉庫に閉じ込められて、ゲームオーバーなのか?」

 

NOVA『いや、この隠し倉庫には、ニューベリー社製の汎次元性ポリ戦闘服という高度な技術の代物があった。これは、3次元と17次元に同時に存在することを可能にし、壁やその他の障害物を傷つけることなく、すり抜けることができる代物だ。この戦闘服を装備して、書斎に戻ることもできるし、さらに地下に進んで調査活動を続けることもできるが、ろくな目にあわないので、さっさと戻った方がいい』

 

ダイアンナ「じゃあ戻る」

 

NOVA『しかし、書斎に戻った主人公は調子に乗って壁をすり抜けて屋敷探検しているうちに、台所に出て料理の邪魔をしてしまい、怒った料理人とバトルになってしまうのだ』

 

●戦闘服:操縦6から8、レーザー2、シールド10

●料理人:操縦5、レーザー2、シールド8

 

アスト「そんなつまらない理由で戦闘に入るのもツッコミどころだが、料理人相手に乗り物戦闘ルールで戦う方がよほどツッコミどころだな」

 

NOVA『ああ、別に料理人は乗り物に乗っているわけでもなく、単にレーザーナイフを装備して、大きな壺を盾にしているだけなのに、こちらの戦闘服がバトルスーツとかパワードスーツのようなメカ扱いらしくて、とにかく乗り物戦闘のルールで戦うことになる。まあ、こちらが有利な戦いなので、それほど苦労なく勝てるんだが、地下に降りるとよほど酷い目にあう』

 

●17次元の鎧人間:操縦9、レーザー2、シールド6

 

NOVA『地下で遭遇した異次元戦士の方が操縦能力が高いので、こちらは1Dで1の目でしか攻撃が当たらん。期待値計算では、こちらが相手を倒すのに18ラウンドかかるのに対して、相手は15ラウンドでいいので、不利な戦いということになる。おまけに相手を倒しても何もくれないし、さらに調子に乗って地下を調べ続けると、地下の反応炉に迷い込んでしまって大量の放射線を浴びて即死ゲームオーバーだ。書斎探索から次元の壁すり抜け戦闘服イベントは、結果的に百害あって一利なしの不毛なイベントとしか言いようがない。せめて台所で塩でも入手できれば良かったんだが』

 

アスト「塩が攻略必須アイテムだと分かっていれば、ここで入手していたんだろうがな」

 

NOVA『なお、上手く使えば便利そうな戦闘服は、あっさりバッテリー切れしたので、ここで脱ぎ捨てていく。やはり、リスクの大きい乗り物戦闘よりも通常戦闘の方がいいと感じながら、行き着く先は結局、284番だ。そこは屋敷の玄関口に通じていて、マルサツが召使いのボックに何かの指示を与えているのが目に入る。後から判明するんだが、ボックはル・バスティンに主人公のことを報告に向かったようだ。一応は伏線なんだろうが、通信機か何かを使わないのかな、と疑問に思う』

 

アスト「とにかく、マルサツは隠し倉庫に大量の武器を用意しているような危険人物だろう? それを問い質したりはしないのか?」

 

NOVA『いや、武器も商品の一部だと言われたら、それまでだ。とにかく、ジャンに気づいたマルサツは、「夕べ、あなたはご自分の任務のことを話された。ご期待どおり協力して差し上げよう」と申し出てくれる。こちらは任務のことを話した覚えはないのに、おそらくは睡眠薬を飲まされた後で、自白剤でも使われたんじゃないだろうか。怪しみはするものの、協力してくれるというマルサツは「7つのアイテム入り水晶球から2つ」を進呈してくれる。7つの内容は以下のとおり』

 

・ドリル付きヘルメット

・甲冑

・赤外線感知機付きヘルメット

・ヘッドホン・ステレオ

・ジェット・ブーツ

・ロボット犬

・パワーアップ手袋

 

NOVA『便利そうなアイテム群だが、それよりも塩が欲しいと思うわけで』

 

ダイアンナ「そんなに塩が大事なのか」

 

NOVA『とても大事。火星怪獣ナメゴンに遭遇した場面か、ホワイトベースの料理長タムラさんと同じぐらい塩にはこだわるぞ。だけど、ここでは入手できない上、マルサツは水晶球と交換にジャンの愛用のレーザー剣と電撃槍を強引に奪いとって、技術点を1点減らしてくる。「友人とのプレゼントの交換は気分がいいものじゃな!」とニコニコ笑いながら』

 

アスト「どんどん、うさん臭さが増してくるな、このおっさん」

 

NOVA『巧妙に、こちらの戦力を下げて来るんだな。だけど、《驚異のドーム》まで所持金全てと引き換えに乗り物で送ってやろう、という提案に、こちらは有無を言わさず応じることになった。「わしは商人だから、代価をいただかずに人助けはしない方針なのじゃ」と言われれば、まあ従わざるを得ない。彼の親切心の押しつけに応じないと、隠し持った暗殺技術に殺されてしまうのは確かだからな』

 

アスト「そんなにヤバい奴なのか」

 

NOVA『ある意味、ル・バスティンよりもよほどキャラ立ちしているな、こいつ。ル・バスティンはオープニングの背景ではキャラ立ちしていたが、本編では大した出番もなく、あっさり散るだけだ。ここから先は、マルサツのネチネチした主人公への嫌がらせが続くことになる』

 

アスト「嫌がらせだと?」

 

NOVA『マルサツ曰く、《驚異のドーム》に行くには、ジャンプ・ディスクという大型の円形転送装置を使わないといけないらしい。ディスクの管理をしている巨人ジム・エゴに通行料金を払うことで通してくれるのだが、こちらの所持金全てを踏んだくった張本人のマルサツは代わりに通行料金を払ってくれるつもりはないらしい。結局、マルサツは自分の転送料金だけを支払い、こちらはジム・エゴを楽しませるためのミニゲーム、銀河式馬上試合を行う羽目になった』

 

アスト「ミニゲームか」

 

NOVA『回転リングを利用したボードゲーム風なんだが、例によって「凝りすぎて、よく分からない代物」になっている。一応、亡きリオさんの船で自爆コードの情報を教えてくれた「イオン球」を持っていれば、攻略のヒントはくれるんだが……』

 

アスト「イオン球? そんな物は知らんぞ」

 

NOVA『後から「アーロックその5」に書き足した。気になるなら、確認するといい。しかし、問題はイオン球の示すヒント通り(最初に右1、後は左2を繰り返す)にパラグラフを進めると、ゲームに負けてしまうんだな。どうもコンピューターが壊れてしまっているようだ』

NOVA『役に立たないヒントは当てにせず、例によってパラグラフ解析で進めると、正解は以下の手順になる』

 

・345:対戦相手の1体アーロック・ミュータント(技術7、体力8)とバトル。

・250:右1にリングを回すと、対戦相手の1体グリップと乗り物バトル。

 ●主人公のバッタマシン:操縦6以上、レーザー4、シールド10

 ●グリップの騎獣:操縦4、レーザー3、シールド8

・100:右1にリングを回すと、対戦相手の1体グリップ(増殖した)と乗り物バトル。

・299:左2にリングを回すと、対戦相手のボスキャラ海竜と乗り物バトル。

 ●主人公のバッタマシン:操縦6以上、レーザー2、シールド10

 ●海竜:操縦5、レーザー2、シールド12

 

NOVA『ここでの乗り物戦闘は、期待値的に有利な状態で戦えるので負けることはないと思われる。乗機のバッタマシンも《星霧号》よりシールドが2少ないだけで、地上では強力な機体だしな(海竜戦ではレーザーが2に下がっているが、誤植か、もしくは連戦バトルでレーザーが知らないうちに破壊されてしまったのか)。ともあれ、このミニゲームは即死パラグラフの361番(4巡めで3種の敵全てを倒せずにゲームオーバー)を避けるように選べば、楽に攻略できるようになっている。

『そして試合に勝てば、脳筋巨人のジム・エゴは「すげぇ! あんたはプロのゲーム師顔負けのテクニックと、戦士の強さを兼ね備えているんだな。見直したよ。よし、寛大な俺様は、あんたが気に入った。望みどおり《驚異のドーム》へ送ってやろう」と宣言して、ジャンプ・ディスクを操作してくれる。いよいよクライマックスの《驚異のドーム》に突入だ』

 

驚異のドーム(337)

 

NOVA『さて、ジャンはマルサツとともに《驚異のドーム》に到着したんだが、ドームの入り口ではなく、天井に降り立ったんだな。これが事故なのか、ジムの悪意なのかは分からないが、マルサツはジムを罵りつつも自分だけ磁気ブーツを履いて、さっさと降りて行った。こちらもマルサツの提供したアイテムを使うんだが、実のところ、どれを選んでもろくな目にあわない、と来ているので、アイテムに頼らずに普通に滑り降りて、地面に勢いよく激突して3点ダメージを受ける方がマシだという展開になる』

 

・ドリル付きヘルメットで、ドームの壁に穴を開けて侵入しようとすると、壁面が予想よりも固くて、ドリルが止まってしまう。そして、その回転エネルギーがヘルメットに伝わって、主人公の頭と体が回転し始めて、その勢いでヘルメットが脱げる。空中に飛ばされた主人公はそのまま地面に激突して死亡。

・ジェットブーツで飛行しようとすると、制御困難でフラフラ飛び回りつつ、何とか着地しようとした瞬間に爆発して、4点ダメージ。

・パワーアップ手袋で屋根の枠をつかんで、ゆっくり降りて行こうとすると、片方の手袋が壊れていて、拳を握りしめたまま開かなくなってしまう。レーザーノコギリで手袋を切り離すことができるまで技術点マイナス1。

 

NOVA『ここまで不良品ばかりのアイテムを押しつけてきたマルサツおよび作者に悪態をつきつつ、何とかドームの入り口に降り立ったジャン。そこに警備についていたイヌ頭の完璧兵士プリフェクタス(技術8、体力8)が現れてバトルになる。今度は、マルサツ・アイテムのロボット犬か甲冑が使えるんだが、結果は以下のとおり』

 

・ロボット犬(技術9、体力3)はあろうことか、敵ではなく、主人公に襲いかかってくる。プリフェクタスの前に犬を撃退しないといけない。

・甲冑入りの水晶球は不良品だったらしく、中のアイテムが取り出せない。

 

NOVA『結果的に役に立たないアイテムを押しつけやがって、と悪態をつきながらプリフェクタスを倒した主人公。しかし、背後から本性を表したマルサツが裏切って、短い棍棒で殴りつけて来るんだ。いきなり暗殺して来なかったのは親切だとも思うが』

 

マルサツ『ははは! あんたは確かに強い戦士だが、ちっとばかり脳みそが足らなんだようじゃの!』

 

NOVA『そう嘲笑すると、マルサツは呼び子で3人のプリフェクタスを召喚し、「ル・バスティン様の邪魔をするスパイを連れて来た」と告げる。武装解除されて(技術点がさらにマイナス1)縛り上げられると、ル・バスティンのところに連行されて行くことになるんだ』

 

マルサツ『《驚異のドーム》には、最近まで防衛システムを制御するコンピューターが設置されていたが、わしを作って下さった神の如き天才のル・バスティン様は、スパイの襲撃に備えてシステムを別の場所に移されたのじゃ。つまり、あんたの任務は最初から無駄足だったのじゃよ!』

 

アスト「ここまで来て、どんでん返しかよ」

 

NOVA『いや、ここから先がどんでん返しの連続の超展開と言えるな。まさに舞台の《驚異のドーム》の名にふさわしいと言えようか。とりあえず、おとなしく連行されて行く(反抗しようとしてもダメージをくらうだけで無駄に終わる)と、何と! 敵ボスと思われていたル・バスティンまで投獄されていたんだよな』

 

ダイアンナ「確か、部下からの下剋上と言ってたよね」

 

NOVA『そう。下剋上したのは、完璧兵士のプリフェクタスたちだったんだ。生みの親のル・バスティンから「お前たちは完璧な生命体だ。わしの尖兵として銀河を支配するのだ」と教育されていたために、「オレたちが完璧な生命体だったら、オレたちこそが銀河を支配する王になるのが当然じゃないか? それなのに、どうしてル・バスティンの野郎が偉そうに仕切ってるんだ?」と考えて、反旗を翻したんだな。結果として、主人公のジャンは、ル・バスティンおよび手下のマルサツとともに同じ牢に閉じ込められることになる。脱出しようとすれば、レーザーネットでバラバラに切断されるような仕掛けということで』

 

アスト「呉越同舟ってことか」

 

NOVA『いや、俺個人は別にル・バスティンに恨みや怒りを感じていないんだよ。むしろ、ケチ臭いヴァークス王にこそ反抗心を抱いているので、ジャンバス同盟を結んでもいいかって思ったりしている。しかし、マルサツ、お前はダメだ。さんざん嫌がらせをしやがって』

 

マルサツ『ル・バスティン様。だから、わしは忠言申し上げたのですぞ。愚かで不忠なプリフェクタスどもよりも、このわしを重用して、わしのクローンを大量生産すべきだと』

 

ル・バスティン『バカな。欠陥品のお前を大量生産するなど、それこそ有り得んわ。傲慢な自惚れ屋め。身の程を思い知るがいい』

 

マルサツ『おのれ。造物主だと思って忠誠を捧げて来たのに、そのような暴言、聞き捨てならんわ。もう、堪忍袋の緒が切れた。死ねッ!』

 

アスト「何だか内紛を起こしていやがるな」

 

NOVA『ここでル・バスティンが殺されるのを見捨てると、我に返ったマルサツは「わしは何ということをしてしまったのじゃ。ええい、お前は何を見ている? もう、こうなればどうなってもいい。お前も死ね」と叫んで、レーザーネットにジャンを押しつけて、逆恨み的に殺されてゲームオーバーだ』

 

ダイアンナ「さすがに、そういう末路はイヤだねえ」

 

NOVA『だから、ル・バスティンを助けてやるんだ。すると、逆上したマルサツが飛びかかって来るので、ヒョイッと避けてやると、向こうから勝手にレーザーネットに飛び込んでジュッと絶命した。助けられたル・バスティンが不思議そうな目でジャンを見る』

 

 

ル・バスティン『どうして、余を助けたんだ?』

 

ジャン『天才のあんたがこんなところで散って行くのは、見過ごせないからな。あんたが本当に天才なら、この窮地を共に抜け出す方法も思い付くだろう? 一時休戦ってことで、どうだ?』

 

ル・バスティン『ほう、ヴァークスの犬と休戦とはな』

 

ジャン『ケチ臭い王に反抗したいのは、あんただけじゃないってことさ。あんたを倒したら、アーロックの統治権を与えると、ヴァークス王は言った。しかし、この星を統治する力は俺にはない。あんたは1人で、それを成し遂げた。少なくともプリフェクタスたちに反旗を翻されるまではな。だったら、この星を統治するのに、あんたに協力してもらうのが一番手っ取り早い。

『あんたと俺が協力すれば、銀河の支配も夢ではない。何しろ俺は単機でヴァリオーグの戦艦を墜とした男だからな。武力と外交は俺に任せておきな。あんたは内政と好きな科学実験を行うがいい。1人では不可能なことも、有能な軍人にして冒険家の俺と、天才科学者のあんたが手を組めば達成できる。どうだ、悪い話ではないだろう?』

 

ル・バスティン『面白い。ただの脳筋スパイかと思えば、なかなかの野心家ではないか。では聞こう。塩化ナトリウム、すなわち塩の手持ちはないかね?』

 

ジャン『塩だと? そんな物はない!』

 

ル・バスティン『……やはり、そうか』

 

 パラグラフ259番、ゲームオーバー(涙)

 

時空を超えた最終決戦

 

ジャン『ちょっと待て。まだだ、まだ終わらんよ』

 

ル・バスティン『いや、塩がなければ、この事態を改善することは不可能だ』

 

ジャン『だったら、今から塩をゲットして来ればいいんだろう? あきらめたら、そこでゲーム終了だ。俺の今までの冒険人生で不可能を可能にしたことは何度もあった。そう、あれはマンパンの大魔王の砦に閉じ込められた時、窮地を救ってくれた究極魔法があった、と俺の遠いご先祖様の言い伝えに残っている。今から、その究極魔法を使ってみる』

 

ル・バスティン『究極魔法だと? 一体、何の話をしている?』

 

ジャン『究極魔法、その名はZED。それと、俺の名前は伝説のミニマイトとたまたま偶然、同じ名前だが、どうでもいい話だ。とにかく、俺は今こそ究極魔法ZEDを発動し、時空を遡って、塩を手に入れて来る。ちょっと待っていろ』

 

(しばらく経って)

 

ジャン『よし、行って来たぞ』

 

ル・バスティン『どこに?』

 

ジャン『パラグラフ170番だよ。そこでオンボロボートに乗って、ネズミの高速艇と何度もダイスを振って、勝つまで戦って来た。不利な戦いだから苦労したぜ。5回負けた後、6回めでようやく運良く勝つことができた。あそこまでゲームバランスに欠けた不利な勝負は2度とやりたくねえ。とにかく、1405万605分の1の勝率を引き当てた大魔法使いドクター・ストレンジには遠く及ばないが、自分が勝つ可能性の世界を手繰り寄せて来た。別の可能性の世界は6次元だったか。なあに、17次元という訳の分からない用語が飛び出す宇宙の物語なんだから、多少の時空を弄るチート技を使っても文句は言われまい』

 

ル・バスティン『余には、お前が何の話をしているのか、ちっとも分からんのだが?』

 

ジャン『あんたの科学は、時空を超える領域には届いていないみたいだからな。しかし、理解できなくてもいい。欲しいのはこれだろ。塩だ』

 

(パラグラフ306へ進む)

 

ル・バスティン『おお、塩か。どういう手品を使ったか知らんが、これでプリフェクタスどもを撃退できる。これを第7地下ドームのプリフェクタス製造工場に混ぜてやれば、新たに生まれたプリフェクタスが現在稼働中の反乱プリフェクタスどもとぶつかり合い、その機に乗じて、余らが支配権を取り戻すことが可能だ』

 

ジャン『いや、それはいいんだけど、どうやって第7地下ドームへ行くんだよ? 俺たちは牢屋に閉じ込められて、脱出できずにいるんだぜ』

 

ル・バスティン『そなたは時空を超えて過去へ行けると言ってる割に、牢から脱出することはできないのかね?』

 

ジャン『ZEDの魔法で未来に行くことは、甚だしい危険を伴うんだ。既に攻略済みの過去には飛べても、まだ記されていない物語の未来を勝手に作り変えることはできない。そこまでできると神の領域になるので、一介のプレイヤーキャラクターの手には余る。この牢屋に閉じ込められることが運命であるならば、脱出するためには作者神の決めたイベントに従うしかない。まあ、ZEDの魔法は作者神の上位に当たる監修のSJ神の作った魔法ゆえ、年末のソーサリー復活予定の機運に乗じて、特別に利用可能だったということで。言わば、星辰がちょうど交わったが故の奇跡と考えてくれ』

 

ル・バスティン『ならば、我が天才ぶりを示すとするか。あり合わせの材料で、こんな物を作ってみた。ゴム製の絶縁手袋だ。これさえ装着すれば、レーザーネットを比較的安全に破り裂くことが可能……なはず』

 

ジャン『本当に?』

 

ル・バスティン『……あ、ああ、天才の言うことだから間違いない。そのう、多少、ビリッと痺れるぐらいはあるかもしれないが、鍛えられたヒーローの肉体なら大丈夫だろう。ほれ、見てみろ。さっき、欠陥品のマルサツがぶつかったところ。あの辺のネットが破れそうになっておる。レーザーの出力も低下しているようだ。今がチャンス。そなたが真のヒーローなら、必ずや脱出に成功するだろう』

 

ジャン『真のヒーローか。ならば、引き下がるわけにはいかない。やるだけやってやるさ』

 

 

NOVA『……と、こんな感じの経緯があって、ル・バスティンと協力したジャンは、2点のダメージを受けた後、牢屋を脱出して、監視兵(技術8、体力8)を倒したんだが、ル・バスティンは敵の流れ弾に当たって、瀕死の重傷を負ったんだ』

 

 

ル・バスティン『フッ、天才の余がこんなところで朽ち果てようとは。真のヒーローの同行者にはなれなかったようだな』

 

ジャン『死ぬんじゃない、ル・バスティン。共に銀河を支配しようという夢を誓い合った仲じゃないか(涙)』

 

ル・バスティン『余のために泣いてくれるか? 死の間際に、友を得たような気分だ。ならば、友の健闘を祈ろうではないか。そこの通路を左に進み、エア・エレベーターを降りると、第7地下ドームへ行き着く。そこに余の実験室と水槽がある。水槽に塩を入れると、プリフェクタスどもは一掃されよう。余のアーロックは……お前に託した。ぐふっ』

 

 

NOVA『とまあ、細部は結構改変したが、大筋はこんな感じのストーリーで、敵ボスのル・バスティンは派手な見せ場もなく虚しく散って行ったんだ』

 

アスト「凄いな。究極魔法ZEDか。ソーサリーに話がリンクしていたとは思わなかったぜ、アーロック。まさに超絶展開だな」

 

NOVA『いや、ソーサリーとの絡みは俺が勝手に捏造した。さすがに他の有名大作ゲームブックとそういうリンクをしてはいない。まあ、ソーサリーの有名NPC「ミニマイトのジャン」と本作の主人公「ジャン・ミストラル」の名がリンクしているように思えたのは、面白い発見だったがな。

『それはともかく、ここまで来ると、ゴールは目前だ。運だめしに失敗すると、ちょっとしたザコ戦があったり、マルサツ・アイテムで唯一まともに役立つ「ヘッドホン・ステレオ」で戦いを回避できたりしながら、ル・バスティンの目論見どおり、プリフェクタスどもの派手な内輪もめが始まる。とあるパラグラフ(13)では手違いにより、ジャンの遺伝子成分が混ざってしまい、ジャンの姿格好をしたプリフェクタス軍団が大量に複製され、「犬頭VS4本腕のジャンもどき」の壮絶なバトルが繰り広げられたりするのが笑った』

 

ダイアンナ「結果的に敵軍は内乱で自滅したわけか」

 

NOVA『ああ、主人公は安全な場所で激戦が終了するのを待っているだけだ。やがて、両軍がほぼ相討ち壊滅状態になり、ただ1体、生き残ったプリフェクタス(技術6、体力6)が主人公に挑んで来るのを返り討ちにしてやれば、晴れてパラグラフ400番に到達できて、ゲーム終了おめでとうという大団円だ』

 

アスト「最後は何だか呆気ないんだな」

 

NOVA『では、パラグラフ400番と、俺オリジナルの後日譚で最後をまとめるとしよう』

 

新たなアーロックの王

 

 かくして、ジャン・ミストラルの任務は成功裡に完了した。彼はたった1人で銀河を救い、新たな伝説のヒーローとなったのだ!

 地下ドームを大きな妨害に出会うことなく脱出したジャンは、廃船となっていた宇宙船を駆ってエンスリナに帰還する。

 数ヶ月後、悪が追放されてアーロックに秩序が戻ると、ジャンは巨大な植民艦隊の旗艦に乗って、惑星アーロックに帰って来る。銀河のスーパーヒーローの勇名を勝ち得たジャンは、《驚異のドーム》の中でニュー・アーロックの初代統治者として、皇帝から直々に王冠を授けられる。

 まもなく、100万の国民に対するジャン・ミストラル王の長く公正な治世が始まるだろう。

 

 

NOVA『とまあ、ここまでがパラグラフ400番のほぼ正確な文面だが、俺の物語には続きがある』

 

 ル・バスティンは暗い眠りから目覚めた。

 自分は死んだ。確かにそんな気がしていた。

 しかし、だったら今、思考している自分は何者なのか?

 死後の魂なるものをル・バスティンは信じていなかった。信じていれば、命の冒涜とも言える生体実験を繰り返してはいなかっただろう。

 ル・バスティンは体を動かせるかどうか試してみた。

 そして愕然とする。

 これは自分の体じゃない。

 硬質プラスチックでできた四肢と、精巧な電子部品で制御されたボディパーツは温かい血潮が通った生体ではない。

「バイオ脳を搭載したサイボーグだ」聞き覚えのない声が耳、いや集音装置に届いた。ぎこちなく機械音とともに首を巡らすと、セイウチのような顔をしたヒューマノイド種族が認識できた。「余はクリル・ラビット。そなたと同じ科学の徒だ。友たるニュー・アーロック王、ジャン・ミストラルに頼まれて、そなたを機械の体で復活させたのだ、R・バスティン」

 R・バスティン。

 自分の新たな名だ。

 ロボ・バスティンか。

 ニュー・アーロック王、ジャン・ミストラル。その名を聞いたとき、2つの感情が湧き起こった。

 生前、最後に得た友の名。

 もしくは、この金属とプラスチックのボディに登録されたマスターの名。

 友にして、マスター。この2つは今のR・バスティンの中では分かち難く結びついていた。

 生前のル・バスティンなら、友はともかく、誰かをマスターと認めることはしなかったろう。

 しかし、今のR・バスティンは生まれ変わったのだ。

 

 かつて、マスター・ミストラルはこう言った。「この星(アーロック)を統治する力は俺にはない。あんたは1人で、それを成し遂げた。だったら、この星を統治するのに、あんたに協力してもらうのが一番手っ取り早い」と。

 マスターのアーロック統治に協力する。それこそが生まれ変わった自分の大切な使命だ。

 また、マスターはこうも言った。「あんたと俺が協力すれば、銀河の支配も夢ではない」と。

 本気なんだろうか? 

 それとも、ただの口先ばかりの方便か?

 どちらなのか、今のR・バスティンには判断できない。

 銀河の支配。かつてはそういう野心を抱いていたことは記憶に残っている。

 しかし、機械の体で合理的に考えられるようになったせいか、それがいかに無理無茶無謀な計画だったか、理解できた。

 兵士としては完璧に思えたプリフェクタスも、支配者としては完璧たり得ないことは造り主だった自分だからこそ分かること。

 同時に、自分が支配者として完璧でなかったことも明らかだ。もしも完璧であれば、プリフェクタスが反旗を掲げることもなかったろう。

 では、マスター・ミストラルはどうか? 

 彼の統治者としての采配がいかなるものか、見てみたいとR・バスティンは考えた。

 足りないところがあれば、自分が成り代わって……いや、自分がサポートするべきなんだろうな。

 それこそが自分の機械としての役割であり、自分の復活を手配してくれた友への恩義になると生まれ変わった科学者は考えるのだった。

 

 ル・バスティンは死んだ。

 しかし、ジャン・ミストラルのサポートサイボーグとして、R・バスティンの新たな物語が始まったのだ。

(当記事 完)