ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「天空要塞アーロック」攻略その1(宇宙船戦闘なんかの話)

対決! アスト対NOVA

 

リバT『さて、ガイア・グランプリで同点となったアストさんと、グランドマスターNOVAさんですが、とうとう、その因縁にも決着をつける日が来ました。実況は自由と解放の女神リバTが、解説はマイ・クイーンのダイアンナ様がお送りします』

 

アスト「フフフ、とうとうNOVAを倒せる日が来たようだな」

 

リモートNOVA『ちょっと待て、リバT。単に俺は「天空要塞アーロック」の宇宙船戦闘のルールがいかに理不尽かを示したいだけで、これはガイア・グランプリとは無関係だ』

 

リバT『では、天空要塞にちなんで、天空グランプリ、TGPと呼称しましょう。主催は私め、リバTが務めます。なお、勝っても賞品はありません』

 

アスト「いや、NOVAを倒せば、名誉が手に入る」

 

リモートNOVA『俺なんかに勝っても、名誉かなあ? 俺は別にゲームに強いと自慢したことはないんだが。ゲームにそこそこ詳しいと自認してはいるが、上には上がいっぱいいるしなあ』

 

アスト「お前を倒さないと、オレは先に進めない男になってしまったんだ……と井上和彦声で訴えるぞ」

 

リモートNOVA『だったら、こっちは飛田展男声で、「貴様のような奴がいるから、戦いは終わらないんだ。消えろ!」とキレなければいけないだろうが』

 

リバT『はい、2人とも闘志をギラつかせて盛り上がって参りました。なお、両者の扱うデータは以下の通りです』

 

●スカイロードNOVAin星霧号

 操縦能力:4

    高出力レーザー砲:4

    シールド発生装置:12

 

●アストas赤首ギャング

 操縦能力:4

    高出力レーザー砲:5

    シールド発生装置:8

 

リバT『さて、この戦いの行方はどうなると思いますか、マイ・クイーン?』

 

ダイアンナ「う〜ん、操縦能力は互角なので、レーザー砲の数はアストの方が1つ上で攻撃力が高い。一方でシールド発生装置はダディーの方が4つも上だから、打たれ強い。数値を合計するとダディーの方が上だから、ダディーが勝つのではないか?」

 

リバT『と、クイーンがおっしゃられましたが、果たしてこの対決、どちらが勝つのか? 握るダイスにすべてをかけて、やるぞ力の尽きるまで。天空グランプリの始まりです!』

 

プレイヤーが不利なんだけど

 

NOVA『行くぞ、アスト! 貴様のような宇宙ギャングは、この宇宙貴族が成敗してくれる』

 

アスト「いや、先に行くのはこっちだ。操縦能力が同値なら、相手側が先攻ってルールだからな」

 

NOVA『そこがクソゲーなんだよな、このゲーム。同値だったら、プレイヤー有利の法則でいいじゃないか。翻訳が間違えているとか、いろいろ疑わしく感じるが、とりあえずはルールに書いてある通りに戦おう』

 

アスト「オレの先攻だ。1Dで5以下を出せばいいんだな。(コロコロ)2だ」

 

NOVA『普通は当てて来るよな。シールドが2基破損して、残り10基だ。こっちの反撃。後攻は不利で、レーザーの砲門数未満を出さないといけない。つまり、4じゃなくて3以下だ。(コロコロ)よし、2が出たので、相手にダメージを与えた』

 

アスト「くっ、残りシールドは6か。では、2ラウンドめだ。(コロコロ)5でも命中だ」

 

NOVA『残り8基だな。こっちは半々でしか当たらないってのによ。(コロコロ)よし、2で命中』

 

アスト「残りシールド4か。2回くらうと負けるな。(コロコロ)1で命中」

 

NOVA『残りシールド6で、あと3回で死ぬ。(コロコロ)うおっ、6を出しちまった。外れだ』

 

アスト「フフフ、逆転のチャンスだな。(コロコロ)ゲッ、こっちも6だと?」

 

NOVA『まだだ、まだ終わらんよ。(コロコロ)よし、2で命中』

 

アスト「残りシールド2か。(コロコロ)4で命中だ」

 

NOVA『こっちのシールドは4。これでとどめを刺したいところだ。(コロコロ)3。よし、勝った! ふう、何とか生き延びたぜ』

 

アスト「何だよ、まともに遊べるじゃないか」

 

NOVA『ああ。半々の確率で、主人公は勝てる。しかし、同じような性能の相手に2回、3回と戦えば、どこかで負けてしまうという感じだな。相手がアストだから、こいつには負けられねえ、という気持ちで勝ったが』

 

アスト「畜生、せっかくNOVAを倒せるチャンスだと思ったのに、ぬか喜びさせやがってよ。その勝率半々ってのは、どんな計算をしたんだ?」

 

NOVA『では、高校時代に理科が弱くて文転したが、数学は普通にできて、ゲームに必要な確率は得意だった俺が、どんな計算をしたか示してやる』

 

アスト「あまり、ややこしい話にはするなよ」

 

確率計算の話

 

NOVA『まず、こっちの命中率は後攻の場合、6分の3、すなわち2分の1だな。これに命中時に与えるダメージ2点をかけると、期待値1点のダメージを相手に与えることになる。そして相手のシールド8点を削るには、8÷1で平均8ラウンドかかるのは、小学生でもできる計算だな』

 

ダイアンナ「だけど、さっきは5ラウンドで決着がついたみたいだね」

 

NOVA『こっちは5回振って、6が1回出た以外は、3以下が4回出たからな。32回に5回はこんなこともあるさ。そこは高校生レベルの話になるので計算過程は省くが、5C4×2分の1の4乗×2分の1と言えば、分かる人には分かるだろう』

 

リバT『何にしても放射能犬に噛まれて死ぬよりは、十分あり得る話ですね』

 

NOVA『……そのネタ、いつまで続けるつもりだよ?』

 

リバT『もっと面白いネタが生まれるまでですかね?』

 

アスト「とにかく、運が良くなければ、プレイヤーが相手を倒すのに8ラウンド掛かるってのが期待値計算だな。ギャングがプレイヤーを仕留めるには何ラウンドだ?」

 

NOVA『分かっていると思うが、プレイヤーを仕留めるなよ? 仕留めていいのは、プレイヤーキャラだ。まあ、そう簡単に仕留められると、ストーリーが進まなくて困るんだが』

 

アスト「とにかく、計算の結果を教えろよ」

 

NOVA『7.2ラウンドってところかな。まず、6分の5で命中し、2点ダメージをかけると、1ラウンドのダメージ期待値は3分の5点となる。そしてシールドの12から割ると5分の36、すなわち7.2ラウンドだ。ただし、端数を切り上げると8ラウンドと言っていいだろう』

 

アスト「つまり、同じラウンドで勝負がつくなら、先攻が先に相手を倒して勝つってことだな」

 

NOVA『俺としては、操縦能力が同値なら、プレイヤー先攻でいいと思うんだな。その場合、ギャングと主人公は共に4以下で命中で、ラウンド毎のダメージ期待値は3分の4点。プレイヤーは6ラウンドで相手を倒し、相手は9ラウンドかかるって期待値計算だから、それだけで随分とプレイしやすくなるはず。また、敵1機を倒すごとにシールドの数値が回復するというルールは必須だな。

『後に敵戦艦と戦うイベント戦があって、敵の艦載機の小型戦闘機と、母艦の連続戦闘があったりするんだが、小型戦闘機から受けたダメージを持ち越したまま戦艦と戦うのは、非常に難易度が高い。だけど、戦闘機を倒したらシールドが回復してくれると解釈するなら、無理ゲーではなくなる。パラグラフの選択ミスで死ぬのなら、正解のパラグラフを見つけることがゲーム性と言えるが、戦闘の難易度の高さが問題なら極力、宇宙船での戦闘は避けるのが正解となる。でも、宇宙船での戦闘ルールがあるのに、死にやすいからって宇宙船でバトルをしないことが推奨されているのって、ゲームとしては本末転倒だと思うしな』

 

ダイアンナ「大事なのはゲームを楽しむことだろう? ルール通りにやってゲームを楽しめないのなら、ルールを改造して楽しめるように調整するのは、ゲーマーに与えられた権利ではないか?」

 

NOVA『まあ、黙ってルールに従って、ストイックに攻略ルートを探すのも真っ当なプレイヤー道なら、扱いにくいルールの解釈を微調整して自分が楽しめる形を追求するのも意識高いゲーマー道だからな。少しの調整と解釈で、クソゲーをまだ楽しめるようにするというのは、ただ批判して終わりよりも建設的かと思う』

 

アスト「では、当ブログでは『操縦能力の同値はプレイヤー側の先攻』『敵機を撃墜したら、シールドはフル回復する。連続して戦闘する場合でも、ダメージは持ち越さずに、その都度回復する』という方針でプレイするってことだな」

 

NOVA『ああ。それで宇宙船戦闘の死亡率は随分と軽減されるはずだ』

 

改めてプレイ開始

 

NOVA『では、改めて物語を始めよう。本作の主人公は、何だか肩書きがいっぱいの宇宙貴族ジャン・ミストラルだが、ダイスを振って得た能力値は、技術点12、体力点21、運点9、そして操縦能力は4だ』

 

アスト「なかなか優秀じゃないか」

 

NOVA『まあ、宇宙船がポンコツっぽいことを除けば、本人は至って優秀なんだよ。ただし、エンスリナ王国の給料が安いので、手持ちの資金がたった10クレジットしかないし、体力回復用の食糧錠も10個しかない(いつものように4点回復)。貴族といっても、世襲じゃなくて成り上がり者なので、王様からは使い捨てのコマとして無茶な任務を言い渡されて、こき使われているような気がしてならない』

 

 

ヴァークス王『おおい、ジャンよ。優秀な《大空の男爵》のお前に特別任務を与えよう。この超次元機動戦闘艇《星霧号》を与えるから、憎き裏切り者ル・バスティンの潜む天空要塞アーロックを単機制圧して来るのじゃ。そんなことができるのは、無敵の勇者、殺しても死なない不屈の肉体と意志、神(タイタン)の加護を宿したそなたを置いて他にない。成功の暁には、アーロックの守護者にそなたを任じよう。そこを領土とし、天空要塞の王《スカイロード》の称号を与えるので、銀河のスーパーヒーロー、そしてニュー・アーロック王となれるであろう。こんな名誉はめったに与えないんだからね』

 

ジャン『ヒーローであり、王様ですか。よっしゃ、ラッキー。この俺の力にかかれば、アーロックなんて簡単に攻略できますよ。お任せ下さい、HAHAHA。ご先祖のスーパーヒーロー、タイタン・シティのジャン・ラファイエットの名にかけて、この任務、必ず果たして見せます』

 

ヴァークス王『タイタン・シティのジャン・ラファイエット? 確か伝説のシルバー・クレッセントとかいう子どものおとぎ話の英雄ではなかったか?』

 

ジャン『ええ。我がミストラル家は、ラファイエット家の血筋を受け継いで、生まれた時からスーパーヒーローになれるという伝承が代々語られて来ました。俺の名前がジャンなのも、ご先祖の名にちなんでのことです。何しろ、この俺も軽い未来予知と、意思の力で現実を多少なりとも改変できる思念力を備えているのですから』

 

ヴァークス王『そ、そうなのか? 初耳じゃ。(心の中で)やれやれ、誇大妄想狂のお調子者だとは聞いていたが、ここまでとはな』

 

ジャン『王様、今の心の声はまる聞こえですよ』

 

ヴァークス王『何? 何が聞こえたと言うのじゃ?』

 

ジャン『王様、あなたはこう思っておいでだ。「伝説のスーパーヒーローの子孫が、ここにいるとは何と素晴らしい。新たな伝説の幕開けを楽しみにしていよう」と』

 

ヴァークス王『そ、そうじゃ、うむ、そなたには大いに期待しておるぞ』

 

ジャン『その期待に必ず応えてみせましょう。ヒーローの出番です』

 

ヴァークス王(何だかよく分からんが、この男に任せておけば、本当に伝説が実現するような気がして来た。とにかく、すごい自信の持ち主なのは間違いない。宇宙船1隻で、喜んで死地に飛び込むようなバカ、いや勇者は他にいないのだから、せいぜいこの男には頑張ってもらうとしよう)

 

 

NOVA『……とまあ、こんな話が背景では語られていなかったり』

 

アスト「語られていないのかよ」

 

NOVA『当ブログの状況、および2023年の新番組に合わせた微調整が施されたと思ってくれ。原作のアーロックには、「サイボーグを倒せ」とのリンクは一切ないが、「銀河のスーパーヒーロー」「ニュー・アーロックの初代統治者として、王冠を授けられる」という記述は、最終パラグラフ400番にあったりする。元ネタはあるので、「2023年に蘇ったNOVA版アーロック」として、気楽に受け止めて欲しい』

 

アスト「妄想捏造を気楽に受け止めろって言われてもなあ。実際には、何が書かれているんだ?」

 

NOVA『任務の背景は7ページ分あるんだが、そのうちの5ページは、敵役の反逆科学者ル・バスティンの説明だな。ヴァークス王の重臣として、使用人の雇用監督をして真面目に有能な働きを見せて来たんだが、人工頭脳と遺伝子工学の研究にハマって、私設研究所を建てて趣味の研究活動に没頭するようになったんだな。そして活動資金を増やすために、王様に給料を上げて欲しいと頼んだんだ』

 

アスト「私設研究所の運営に、公費を注げるように要望する方がいいと思うがな」

 

NOVA『いずれにせよ、ケチな王様は「我が国は200年以上の間、全く給料を上げたことはない。今、給料を上げれば、国家経済の安定のために良くない前例を残すことになる。国民生活を守るために、役人の給料を上げることは許さない」と言い張って、ル・バスティンの要求を拒絶した』

 

アスト「要するに、悪しき慣例主義じゃないか」

 

NOVA『もしも、ル・バスティンが科学技術庁の長官だったら、自分の研究が国の発展に役立つと主張できたんだろうが、人事部担当で、科学研究は趣味だからな。そこに公費は注げんって話なんだろう。で、そこからル・バスティンが研究費用を捻出するための涙ぐましい小細工が2ページほど書かれているんだ。要は、自分の作った精巧なアンドロイドを宮廷の使用人と置き換えて、使用人の給料が自分の手元に入るようにしたんだな。で、その後、アンドロイド使用人を通じて、宮廷の宝物を持ち出して売り飛ばしたり(精巧なイミテーションに置き換えてバレないようにしたり)、いろいろと悪事を続けていたら、ある時、ひょんなことから発覚して、追放処分を下された』

 

アスト「それで要塞を作って立てこもった、と?」

 

NOVA『いや、その前に王様に嫌がらせをするために、有名な美容整形外科医に変装して、ブルームヒルダ王妃に取り入って、美容手術の代わりに醜悪な顔に変え、さらに頭にパイナップルを移植した』

 

ダイアンナ「王妃の頭にパイナップル?」

 

NOVA『このジョークのセンスに笑えるかどうかが、本作を楽しめるかどうかの境界線だと思うが、俺は???という反応だな。ル・バスティンという男、それだけの技術の才を持ちながら、やっていることが非常にせせこましいレベルなんだな。まあ、おふざけに近い悪事の後で、要塞に潜伏して研究活動を続け、《プリフェクタス》と呼ばれる犬頭の怪力&超スピードを備えた完璧兵士を生み出し、そのクローン量産に成功して、銀河の支配を目論むようになったらしい』

 

アスト「奇行の多いマッドサイエンティストが、とうとう独自の軍隊を率いて、宇宙の覇権を狙うようになったということか」

 

NOVA『正直、天空要塞アーロックに引き篭もる前のエピソードは必要なのか? と思わなくもないが、作者はル・バスティンのキャラ性をここまで綿密に語りたかったらしい。まあ、FFも30巻以上続く中で(当時)、悪のボスの個性をどう引き立たせるかが課題視されていたんだろうが、そういうのは背景で描くのではなくて、物語の中で描いて欲しいと思う。いや、まだル・バスティン本人には会っていないのだから、背景情報に意味はない、と断定するのは時期尚早なんだが』

 

ダイアンナ「あくまで、そういう評価を聞いたレベルってことだね。自ら確かめるのはこれからだ、と」

 

NOVA『で、背景の残り2ページで、目的地の天空要塞アーロックの説明がされている。銀河周縁部に位置する人工要塞惑星で、数世紀前に大量の放射能漏れを起こして放棄された後、犯罪者やミュータントの巣窟になっていたのを、ル・バスティンが潜伏および生体実験に利用していたようだ。

『アーロックには要塞らしく、無数のミサイル発射装置や、レーザーおよびパルス砲の自動砲台で防衛されていて、艦隊規模の戦力で正面から落とすことは不可能に近い。しかし、1人乗りの高機動な宇宙船であれば、要塞の周りのシールド・スクリーンをすり抜けて、探知されることなく地表に着陸できるかもしれない。地上に降りさえすれば、あとは《驚異の大ドーム》の地下深くにある惑星の防衛中枢を破壊するだけだ……ということで、主人公のジャン・ミストラルに白羽の矢が立ったわけだ。これまで、こういう任務をいくつもこなして来た実績を買われてな』

 

アスト「まあ、プレイヤー経験で言うなら、これまでに火吹山の魔法使いを単独で倒したり、バルサス・ダイアを単独で倒したり、ザンバー・ボーンを単独で倒したりして来たからな」

 

NOVA『きっと、それに近いような活躍をジャン・ミストラルもコツコツ重ねて、宇宙貴族の称号を手に入れたんだろう。なお、ここで攻略したモルドラネス退治や、2回めのザゴール退治や、2回めのザンバー・ボーン退治はFF33巻時点では未来の話になるので、数には含まないことにする』

 

ダイアンナ「すると、運命の森で王のハンマーを見つけたり、セルツィア空間を抜けて飛ばされた別宇宙から何とか帰還したり、地獄の館から脱出したりしたのは含まれるのか」

 

NOVA『ああ、そういう記憶も夢で見たな。まるで永遠の戦士(エターナル・チャンピオン)になったように、君(YOU)の魂は世界を超えて、物語の枠を超えて、ジャン・ミストラルに憑依しているわけだ。だから、夢うつつのままに未来のスカイロード、今はまだ《大空の男爵》のジャン・ミストラルは旅立つ。危険な旅路へとな』

 

旅立ちと墜落

 

NOVA『「さあ、ページをめくりたまえ」の呪文に応じると、そこはいつもの通りパラグラフ1番だ。《星霧号》に乗って、目的地の要塞惑星アーロックへ向けて、次元ジャンプを敢行する。この機体には2つのワープ・システムが装備されていて、戦闘能力には多少の問題があっても、長距離航行と継戦能力には秀でた機体だ。まあ、単独の隠密任務にはうってつけなのだとは思う。経済状態のあまりよろしくない王国の少ない予算の中で、何とかやりくりしたのだろう、たぶん』

 

アスト「要塞に軍隊を差し向けるよりは、命知らずの冒険野郎にそこそこ優秀な小型宇宙船1隻を融通する方が、安く済むってことじゃないか?」

 

ダイアンナ「しかも、報酬が敵要塞の統治権だからね。王様としては、さほど懐が痛まない」

 

NOVA『まあ、RPGの王様とは大体そういうものだ。プレイヤー心情としては、ケチな王様よりも、マッドサイエンティストの犯罪者ル・バスティンのキャラ性の方に共感する面もあるんだが。趣味の科学技術研究をヴァークス王が将来の投資と認めて、多少の予算の融通を認めてやれば良かったのに、きっとル・バスティンのプレゼンが失敗したか何かだろう。有能なはずの科学者が予算不足のために、国家反逆者になってしまうというのは、同情すべきところもないわけではない。しかし、いちいち敵の背景に同情していても、FF世界の冒険者は務まらないと割り切って行動する。「俺の栄光のために、邪魔するお前は死ね」と敵役を切り捨てるぐらいの気迫こそ、過酷な冒険者ライフにはふさわしい』

 

アスト「そうじゃないキャラは、『さまよえる宇宙船』の船長と、『地獄の館』の一般人と、『サイボーグを倒せ』のシルバー・クルセイダーくらいだもんな、今のところ」

 

NOVA『いずれも作者がスティーブ・ジャクソンというのが特徴だな。ただの野心家な冒険野郎とは違ったシチュエーションを用意してくれている。一方で、伝統的なのは「富と名声を求めて、たまに義侠心に駆られたりもして、過酷な冒険も辞さない若き冒険家」だな。ミラーワールドのゲームマスターや、デザイアグランプリに「戦え」と誘われたら、うおーと勇んで参戦するタイプ』

 

ダイアンナ「で、次元ジャンプで目的地にあっさり到着するわけではない……ってことだね」

 

NOVA『ああ。アーロックに到着する前に、大きく4つのイベントが待ち構えている。最低2つ、最大4つの大イベントを突破することで、アーロックに到達できるわけだが、正直4つとも一度に切り抜けるのはハードすぎると思うので、何度か(何度も)死にながら、できるだけ危険の少ない選択肢を見つけ出すまでが前半のポイントだと思う。ただし、このイベントを通らなかったら攻略失敗というケースはなさそうだ。単に目的地の前に立ち塞がる波乱万丈の障害といった意味しかない』

 

アスト「で、ワープの種類によって、どんなイベントに出会うかが決まる、ということか」

 

NOVA『ああ。最初に選べる選択肢は2つ。4次元を通る時空間航法(タイム・ワープ)か、6次元を通る光空間航法(光ワープ)だな』

 

アスト「4次元は、点から直線の1次元、平面の2次元、立体空間の3次元に、時間を加えたものだって分かるが、6次元って何だ?」

 

NOVA『さあ。よく分からないので、検索してみたら、こういうページが見つかった』

NOVA『とりあえず、我々が今の常識で直観的に認識できるのは4次元までで、5次元から先は余剰次元とも呼ばれ、それらを認識できれば、並行宇宙を知覚できるようにもなるらしい。こんな感じになるかな』

 

・5次元:別の可能性の世界を知覚できる。

・6次元:別の可能性の世界に行き来できる。

・7次元:我々の世界とは別の成立をした世界(ビッグバン以外の理論で発生した全く異なる世界)にアクセスできる。

・8次元:あらゆる宇宙の起こり得る可能性を見ることができる。

・9次元:物理法則や初期条件の異なる宇宙の全てを比較検証できる。

・10次元:人知を超えた世界。

 

NOVA『この定義は一般的なのか不明だが、TRPGのシステムに例えると分かりやすいかもな』

 

アスト「どういうことだよ」

 

NOVA『6次元までは、一つのシステムの範囲内なんだ。例えば、D&D。時間と空間を越えても、D&Dというシステムでプレイできるなら、そこは同じ物理法則が働いていると言えよう。しかし、7次元となると、D&Dとは異なるシステム、例えばFFとかソード・ワールドのルールで判定することになる』

 

ダイアンナ「8次元は?」

 

NOVA『あらゆるTRPGのシステムをチェックした人間にのみ到達できる領域だな。多くのTRPGマニアは、7次元と8次元の間をさまよっていることになる』

 

アスト「お前は?」

 

NOVA『う〜ん。7.2次元ってところかな。日本語で商業出版されている範囲だと、7.4ぐらいは目指せるのかもしれないけど、知らないゲームもいっぱいあるからな。ともかく、8次元に達すると、あらゆるTRPGのシステムや世界観を語れるほど博識だ』

 

ダイアンナ「9次元は?」

 

NOVA『TRPGとは関係ないゲーム界および現実の歴史や諸現象をことごとくルール化して、検証できる。「TRPGの世界ではそうかもしれないが、トレーディング・カード・ゲームの世界では違う法則が成り立つ。この2つの長所を混ぜ込むと、こういう新ゲームが誕生するが、上手く機能するかどうかはテストプレイを重ねてみないと何とも言えないな。テストプレイヤーをお願いできるか?」とか言い出すと、TRPG業界の9次元に到達しているのではないだろうか?』

 

アスト「プロのゲームデザイナーっぽいな、それ」

 

ダイアンナ「10次元は?」

 

NOVA『そんなの俺が知るわけないだろう。人知が及ばないんだし、とりあえず、今は6次元まで分かればいい。ええと、時間を超えるか、世界線を超えるかの違いだな。ただし、本当に超えてしまうのではなくて(帰って来れなくなる)、境界線ギリギリを通って、近道に利用している程度。まあ、作者もそれっぽい専門用語をテキトーに使っているだけで、深読みするほどのことは考えていないのではないだろうか? 中身ではなく、虚飾的な言い回しに凝るタイプに見受けられるので』

 

アスト「タイム・ワープと、光ワープ。違いはよく分からんが、とにかくどちらかをテキトーに選べばいいんだな。お前は、どっちを選んだんだ?」

 

NOVA『時空魔術師の称号を持つ俺だから当然、時空間移動に興味がある。ここは迷わず、馴染みのある時空間航法(164)を選んだ。光空間航法(15)は言葉の意味が不明だし、世界線を越えるのは死んでからでも遅くはない、と思った次第だ』

 

アスト「まあ、ゲームの世界だから言える話だな」

 

NOVA『で、光空間航法で飛ぶと、さっきのギャングといきなり戦闘をさせられるんだが、それはまた別の話なので、まずは4次元空間に入ることにする。時間を圧縮した通路を利用するので、現実世界で6分のうちに、アーロックに到着する予定だったんだが、いきなりトラブル発生だ』

 

ダイアンナ「どんなトラブルだ?」

 

NOVA『右舷のエンジンに宇宙雑草がはびこり、タイム・ワープのエネルギーを吸って急成長しているようだ。このまま、時空間航法を続けると雑草がエンジンを覆って、機体が大破してしまうかも、と警告が出た。タイムワープを緊急解除して雑草を駆除するか(62)、それとも放置したままアーロックへの到達を優先するか(346)の選択肢が出たので、物は試しと放置してみた。そして機体が爆発して死んだ。これが俺の本作、最初の死である』

 

アスト「恐るべし、宇宙雑草と言うところか」

 

NOVA『……という未来予知が見えたので、雑草駆除に励むことになる。通常空間に出て、船外でレーザーナイフで駆除しようとしたら、凶暴な雑草が技術点8、体力点6で反撃して来るではないか。とりあえず、1体の、と言っていいのかよく分からん雑草を始末したはいいが、雑草はどんどん増殖していき、手作業じゃ埒があかんということで、近くの惑星に大気圏突入して、その熱で焼き払おうって決断になった』

 

ダイアンナ「雑草ごときに旅を妨害される宇宙貴族さま、と」

 

NOVA『で、近くの惑星に向かおうとすると、別次元の銀河自警団所属の《ペルホン・レンジャー》の銀色宇宙船が突然ワープアウトして、こちらを襲撃して来るではないか』

 

●ペルホン・レンジャー

 操縦能力:5

    レーザー:5

    シールド:8

 

NOVA『レンジャーと言えば、スーパー戦隊。だったら同じヒーロー仲間として、別次元の出身であっても分かり合えるはずだ。ヒーローは助け合いでしょう、と考えてみたが、そう言って相手を説得する選択肢はない。仕方ないので、作者の「戦え」の言葉に従い、戦わなければ生き残れない、と割り切って戦ったんだが、結局、戦っても生き残れなかった。見事に負けたよ。これが俺の本作、2番めの死である』

 

アスト「よく死ぬなあ」

 

NOVA『1度めはパラグラフの選び間違いで、たったの3パラグラフ進んだだけで死んでしまった。2度めはたったの5パラグラフで、宇宙船戦闘に負けて死んだ。俺も数々のFFを解いてきた男だが、たったの5パラグラフで最初の戦闘に負けて死んだのは初めてだ』

 

アスト「放射能犬は?」

 

NOVA『しつこいなあ(苦笑)。いろいろあって、10パラグラフ以上は経過していたよ。この始まった瞬間に即ゲームオーバーというのは、「運命の森」でヤズトロモさんに襲いかかってカエルに変えられる3パラグラフエンドが最短だと思っていたが、本作も同じ。いや、最初に光ワープを選んで、次のパラグラフでギャングと戦って殺される可能性も少なからずあるのだから、最速2パラグラフエンドも夢じゃない。すごいよ、アーロックさん。最速死亡記録を更新だ』

 

アスト「確かに、わずか5パラグラフで2回もNOVAを殺すとは、なかなかやるな、アーロック」

 

NOVA『言っておくが、死んだのは俺じゃなくて、俺のキャラクターのジャン・ミストラルだからな。プレイヤーとキャラクターを混同しないように』

 

ダイアンナ「で、死んだジャンはどうなったんだ?」

 

NOVA『はっ、今のは夢か。おのれ、ペルホン・レンジャー。スーパー戦隊の名を騙る偽物め。きっと暴走戦隊ゾクレンジャーか、邪電戦隊ネジレンジャー、邪命戦隊エヴォレンジャーみたいな悪の組織に作られた連中に違いない。偽戦隊を倒すのもヒーローの使命です、と気合を入れて再挑戦して、今度は運良く勝った。ギリギリの勝ちだったが、敵の操縦能力の方が高かったので、こちらの能力も1上がって5になった。うん、見返りのあるバトルはいいものだと実感しながら、悪レンジャーの爆発した宇宙船の残骸を漁る。すると、三つ顔の小人ロボットと、謎の装置(ガラス棒と鉄パイプの付いたサイコロ状の物体)が目についたので回収することにした』

 

ダイアンナ「敵を倒して、お宝をゲットすると、その戦いに意味があったな、と感じるよね」

 

NOVA『そうだな。アイテムを落とさない敵だと、FFの場合、経験点もくれないから無駄なバトルをしたって感じだが、降りかかる火の粉ははらわないといけないし、雑草も焼き払わないといけない。このまま大気圏突入を敢行するのだった』

 

アスト「そして、燃え尽きて死んだんだな」

 

NOVA『当たらずと言えども、遠からずだな。雑草を焼き払うことには成功したが、そこから機首を立ち上げて上昇しようと思ったら、地上から突然、電撃が放たれたんだ。船尾の燃料タンクに炎が噴き上がり、このままだと地面に激突してしまう!』

 

ダイアンナ「一難去って、また一難か」

 

NOVA『フライパンから火の中へってことだな。とにかく、操縦を手動に切り替えて、うまく滑空できるようにすると、不時着ポイントを急いで探す。近くに湖があって着水するのがベターだが、選択肢には湖のそばの砂利浜も上がっている。しかし、砂利浜を選んでも、近くに生えていた大木が突然、動き出して、《星霧号》を巨大な根っこでつかんだと思うと、湖に向かって投げ飛ばしたんだ』

 

アスト「宇宙雑草といい、動く大木といい、植物系の敵に呪われているみたいだな」

 

NOVA『ああ、俺も花粉症で、植物の呪いに苦しめられているよ(涙目)』

 

ダイアンナ「花粉症の精霊少女が一緒にいるんだから、いい加減、耐性がついても良さそうなものなんだけどね」

 

NOVA『花粉症のせいでふわついた頭で、頑張ってアーロックに挑んでいるんだ。とにかく、我が愛機《星霧号》はこうして湖の底深くに沈んでしまい、かろうじて脱出ハッチから抜け出した未来のスカイロードは、湖面に浮かび上がって、絶望的な表情を見せるのだった。果たして君の冒険は、この思いがけない災難で早くも終わってしまうのだろうか? つづく』

(当記事 完)