ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

次のFF攻略作品は?

11作めに攻略するのは?

 

アスト「さて『サイボーグを倒せ』の次は、前々から言っていたように『真夜中の盗賊』がいいな、と思うんだが」

ダイアンナ「あたしとしては、『死の罠の地下迷宮』が順当だと思うけどね」

リモートNOVA『ほう。お前たちが攻略するなら、それも良し。しかし、俺はこの度、まだ攻略していない新作をプレイし始めた』

 

アスト「何だと? FFシリーズにそんな新作があると言うのか?」

 

リモートNOVA『そう。昔、買ったはいいものの、攻略せずに積んだままになった作品があってな。この度、「サイボーグを倒せ」を4種ヒーロー完全攻略を果たした形なので、この機会に積みゲーになっていた物を発掘してきた次第だ』

アスト「そ、それは前世紀最後の邦訳FFと言われた幻の作品じゃないか!?」

 

リモートNOVA『そう。去年、34巻めの「魂を盗むもの」が初邦訳されて、50巻「火吹山の魔法使いふたたび」や66巻「危難の港」に続いて、よっしゃあ、新作を頑張るぜ〜と喜んで解いていた俺なんだが、考えてみれば、まだ解いていない作品を持っていたのを思い出してな』

 

アスト「そういうのを宝の持ち腐れって言うんだぞ」

 

リモートNOVA『全くだ。Amazonで値段を見て驚いたぞ』

アスト「5万9000円だと? 何てプレミア価格が付いてんだよ?」


リモートNOVA『ああ。昔、600円ちょいで買った文庫本が、そんなバカみたいな値段が付いてんだな。何だか急に売りたくなったんだが、誰が買うんだろうな、こういうの?』

 

アスト「そりゃあ、お前みたいな物好きじゃないか?」

 

リモートNOVA『さすがに1冊のゲームブックに5万は出せんだろう。それだけあったら、FFコレクションが6セットぐらい買える』

 

アスト「まあ売りに出すかどうかはともかく、その前にきちんと攻略して思い残しがないようにしたいってことだな」

 

リモートNOVA『なお、俺が旧世紀に最後に攻略したFFは31巻の「最後の戦士」だと記憶する。よって、32巻の「奈落の帝王」と33巻の「天空要塞アーロック」が手付かずのまま積まれていたことになる。それと2人用ゲームブックの「王子の対決」だな』

 

ダイアンナ「念のために聞くが、何でプレイしなかったんだ?」

 

リモートNOVA『「奈落の帝王」はAFFシナリオ「謎かけ盗賊」の後日譚とのことで、そちらをプレイしてから遊ぶのが筋だと思い込んでいたんだな。で、結局、「王子の対決」も「謎かけ盗賊」も自分一人でプレイすることはできない、と思い込んでいたんだよ』

 

アスト「いっしょに遊ぶ友達がいなかったとか?」

 

リモートNOVA『TRPGに付き合う友人はいたが、彼らとはD&DやウィザードリィRPGソード・ワールドやブルーフォレストやゴーストハンターやTORGなんかをプレイしていて、ファイティングファンタジーは90年代半ばまでには時代遅れの代物になっていたんだな。FFの昔話をする連れはいたが、AFFは当時の旬のシステムじゃなくなっていた、と』

 

ダイアンナ「で、今は?」

 

リモートNOVA『その気になれば、妄想リプレイって形で「一人で複数のプレイヤー・キャラを操作して、会話ごっこでシナリオを解くソロプレイ芸」ができることに気付いてしまったからな。もちろん、やればできそうな気は昔からしてはいたんだが、「実際にそれをやると虚しいのではないか」と思うとなあ』

 

アスト「まあ、虚しいだろうなあ」

 

リモートNOVA『いや、それがだな。もっと虚しいのは「せっかく持ってるお宝を貯め込むだけで、何のネタにも使わないこと」だと感じてな。ついでに、「せっかく使えるソロプレイ芸の技を活用せずに、気恥ずかしいからってやりたいことをやらずに人生をだらだら過ごす」ことの方が虚しいと今は思う。一人話芸ということなら、落語ってのもそういうものだし、一人ボケ一人ツッコミという芸も称賛されこそすれ、人からバカにされるものでもないと悟ったわけだ。そう、今ならシステム次第で一人TRPGならできる。ただし、一人マーダーミステリーは無理なので、できることとできないことの区分けは必要なんだがな』

 

アスト「一人TRPGというのは理解に苦しむが、一人ゲームブックは普通だよな」

 

リモートNOVA『そう、元々ゲームブックコンピューターRPGは、ゲームマスターとプレイヤーの最低2人以上の複数人が必要なTRPGを、本やコンピューターがGMを代行することでソロプレイ可能にした作品ジャンルだ。で、コンピューターがシステム処理を代行してくれるおかげで、一人で複数キャラを扱うことも容易にしたり、ゲームブックはソロプレイ用にシステムを簡略化したりしながら、独自の発展を遂げて行ったり、まあ歴史経緯を辿れば、いろいろ語ることはできる』

 

アスト「話せば長くなりそうだから、今はいい」

 

リモートNOVA『そうか……(残念そうな顔)』

 

アスト「とりあえず、今は『天空要塞アーロック』の話をしろよ。それが記事の目的なんだろう?」

 

リモートNOVA『ああ、アーロックの話をしようじゃないか。深遠な大宇宙の闇に通じる話をな』

 

天空要塞アーロックとは?

 

NOVA『まず、20世紀最後の邦訳FFとして一部界隈で名の知れた作品だが、この作品をプレイした人間は少数だと思われ。ましてや、まともな攻略記事を書いた人間はネット検索しても発見できなかった。つまり、この作品の攻略記事を書くと、オンリーワンになれるチャンスなんだ』

 

アスト「オンリーワンか。ニッチとも言うな」

 

NOVA『そう、人がやらない茨道を通って、奇矯人の名を欲しいがままにする。趣味人としてのロマンだとは思わないか?』

 

アスト「そんなことにロマンを感じる辺り、すでに心魂が奇矯なんだと思うが、まあいい。要は変わり者、格好よく言えば傾奇者の精神だな」

 

NOVA『で、この最後のFFのアーロックだが、攻略記事ではないが、感想評価の記された場所はあってだな』

アスト「評価がボロボロじゃないか」

 

NOVA『そう。FFシリーズの全てが名作傑作であるわけではないということだが、このアーロックについては「FFの日本展開を終わらせた戦犯」「FFのSFジャンルを終わらせた戦犯」「日本最後のFFという称号がなければ、塵芥に等しい駄作」という評価が一部であったりしてだな。まず「FFコレクションで復刻することもあり得ない」と思われている作品だ』

 

ダイアンナ「上中下の3段評価をするなら、下ってことかい?」

 

NOVA『まあ、こんな作品をプレイするのは、いつか? 今でしょって気分に駆られたんだよ』

 

アスト「何で今なんだ?」

 

NOVA『まず、このタイトルが某宇宙海賊を思い出さないか?』

 

アスト「宇宙の海は俺の海、宇宙の闇は俺の闇……と歌った御仁だな。明日のない星と知るから、たった一人で戦うのだ、と歌いながら、40人の乗員を『この船に乗れ』とアルカディア号に誘って来た人物」

 

NOVA『いや、無理強いはしてないだろう。「君が気に入ったなら」と相手の意志を尊重しているじゃないか。まあ、宇宙海賊の話はさておき、邦訳タイトルは格好いいと思うし、原題は「Sky Lord」だ。スカイだぞ。ヒーローの出番じゃないか』

 

ダイアンナ「Lordは君主。つまり国王にも通じるね。確かに、新番組につなげられないこともないか」

 

NOVA『そして、この作品が最後のFFで良かったと考える理由が一つある』

 

アスト「何だ?」

 

NOVA『FFコレクション2の収録作品が34巻めの「魂を盗むもの」だったことだよ。もしも、FFが32巻で終了していたら、「レジェンドの復活」にアーロックが含まれていた可能性もゼロじゃない。そして、FFコレクションがアーロックのせいで、初見のファンからも懐古マニアからも思いきりブーイングを受けて、復刻シリーズが終了してしまう可能性があった。そう、アーロックは復刻なんてさせずに、歴史の闇に留めておくべき作品だったんだよ』

 

アスト「復刻はしなくてもいいけど、発掘はするんだな」

 

NOVA『まあ、公式じゃないからこそ、好き勝手書けるという立場はある。しかし、自分でプレイもしていないのに、風評だけに基づいて、悪口を言いまくるのは批評とは言えまい。B級ホラーだろうと、B級SFだろうと、自分がプレイして生の声の感想を書いてこそ、光るものがあるってことだ。そう、闇を照らす星の光になる。それこそがShiny NOVAってものだろう』

 

ダイアンナ「でも、まだクリアはしてないんだろう?」

 

NOVA『難しい。すでに5回ぐらいは軽く死んだ』

 

ダイアンナ「そんなに?」

 

NOVA『このゲーム、オリジナルの宇宙船戦闘のルールがバランス崩壊しているんだな。それについては後述するが、普通の戦いでは死んだことがないのに、宇宙船に乗ってドンパチすると高い確率で死ぬ。単にダイス運が悪かったためか、と思いながら、こう何度も死ぬとなると……と思って試しに確率計算してみたら、まあ、ほぼ確実に負けて死ぬようにできていた。もう少し、バランスよくルールをアレンジしないと、攻略不可能だぞ、と思うようになっている。あるいは極力、宇宙船戦闘をしないで済むようなパラグラフを見つけ出すとか。それでも、初戦でいきなり死んだりするのを繰り返すと、ルールがおかしいと思わざるを得ない』

 

アスト「ストーリーについてはどうなんだ?」

 

NOVA『まあ、読んでて無駄な設定がてんこ盛りで、本編の面白さに寄与していないというのは、ダメな素人の書くSFファンタジー小説あるあるだからな。「濃密なSF設定に凝った作品」と褒めることはできるが、分かりやすさを思いきり犠牲にしているな。まあ、SFっぽい雰囲気を醸し出すことには成功していると評価することもできるけど、背景設定の羅列が中身のストーリーにさほど絡んでいなくて、ただの情報の垂れ流しになっているのは……80年代の「世界設定に凝るのが面白いゲームだ」という幻想にとらわれた時期の作品と考えることにする。たぶん、ジャクソンの「モンスター誕生」以降、濃密な背景を最初に描くという手法が流行ったりしたんだろう』

 

ダイアンナ「凝った背景設定というのはダメなのか?」

 

NOVA『ダメとは言わないが、見せ方の問題だな。本作の主人公は4本腕が特徴の人間型戦士で、特別捜査の権限を持つ《宇宙貴族》として、国王ヴァークスから信頼されている。その王から指令を受けて、裏切り者のマッドサイエンティスト、ル・ヴァスティンを追討するために彼の占拠した天空要塞アーロックへ愛機《星霧号》を駆って旅立つスタートだ』

 

アスト「悪の科学者が支配する鉄壁の要塞を攻略する、単独任務に手慣れた特別捜査官の物語か。4本腕の異星人というところが変わっているが、SFだったらそれもありってところか」

 

NOVA『この4本腕って設定も、TRPGだったら「他の仲間と比べて有利」とか性能差を楽しめるんだろうが、本作では全くと言っていいほど機能していない無駄設定だ。せめて、腕の数が多いので、いつもの技術点1D+6が1D+7になってるとか、戦闘で与えるダメージが通常の2点じゃなくて3点になってるとか(その分、敵の技術や体力も割り増しになっていて、バランスは変わらないように設計されている)なら変化球なんだが、物語の面白さやゲームの面白さに寄与しない部分ばかり無駄に凝っているという印象だ』

 

アスト「無駄に凝るというのは、上手くハマれば、その凝りようが魅力にも通じるんだがな」

 

NOVA『まあ、SFにしても、ファンタジーにしても、ハッタリめいた部分が面白さを増すジャンルでもあるんだが、最初に大風呂敷を広げるよりも、入り口は単純明快で、ストーリーを楽しんでいるうちに濃密な背景が後から浮かび上がるって仕掛けが面白いのだと思うぞ。主人公といっしょに世界の謎や秘密を探求する物語が楽しいのであって、いきなり世界の歴史や主人公の来歴(先祖の種族がこうこうで、この種族とはこんな因縁があって云々)を語られても困るし、しかもゲーム本編にそういう背景が全く関与して来ないとあっては何のための設定だ? と言わざるを得ない』

 

アスト「ジャクソンの『モンスター誕生』が凄いのは、事前の背景情報がゲーム終盤の謎解きにリンクしていることだな。ゲームを攻略しているうちに、ああ、この背景情報がこうつながっていたのか、と気付かされる」

 

NOVA『そう、話が上手くつながった感だ。背景情報が物語の伏線として、しっかり機能している。だから、ゲームをクリアしてから、もう一度、背景を読むと、実に綿密に構築されていることが分かる。つまり、世界をただ細かく作っているだけじゃダメで、ストーリーとの関連づけが緻密に構成されてこそ、印象的な世界観として語り伝えたくなる、と』

 

ダイアンナ「アーロックはそうじゃない?」

 

NOVA『読んでてワクワクしない類の背景だな。固有名詞がいっぱいで、作者が凝り性なのは分かる。枝葉の細かいところに夢中になるタイプなんだろうな、と思うし、それで凄いと思わせたいってのも分かる。まあ、80年代に流行ったワールドデザイン感覚で、神話や歴史、主人公の凄さを最初にドーンと提示して、「これはこんなに凄い世界なんだ。どうだ、楽しそうだろう?」ってマニア心を表明したい。気持ちはよく分かるぞ』

 

ダイアンナ「分かるんだ」

 

NOVA『これは凄いんだ、といきなりバーンと叩きつける。でも、中身はさほどでもない、というのは、34巻の「魂を盗むもの」でも語ったんだが、そちらではタイタン世界という土台があって、読者も普通にイメージしやすい。だけど、FFシリーズのSF物は違う。毎回が別の世界観で、シリーズ読者にとっては新鮮な感覚がある。逆に言えば、世界の継続性がなくて、壮大な世界観を示されても一発芸でしかない。順番としては、壮大な世界だから面白いのではなくて、面白い物語の奥に壮大そうな背景が横たわっていそうだから探究したくなる。その入り口でつまづかせたのがアーロックという作品だ』

 

アスト「最初に壮大な世界を見せて……という手法は、『指輪物語』が嚆矢だと聞くが?」

 

NOVA『だから、ファンタジー作家の多くがマネして、成功した者もいたが、多くは失敗に終わったんだな。表面上のマネしかしていなかったから。別に「指輪」は背景の提示から始まったわけじゃない』

 

アスト「そうじゃなかったのか?」

 

NOVA『「指輪」のスタートは、児童向け童話の「ホビットの冒険」だろう? このホビットという小人の物語が面白くて、しかも奥深いという印象を与えたから、もっと深い物語の続編が読みたいって声があって、その流れで「指輪」のスタートは「ホビットという種族と、ホビット庄の設定」から始まっている。そして、「ホビットの冒険」ではいきなりホビット庄を飛び出して、冒険がスタートしたから、今度はじっくりホビットたちの生活ぶりを見せようって形になって、なかなか冒険が始まらなくて退屈なのが「指輪」の序盤だ』

NOVA『つまり、話の流れとしてはこうだな』

 

1.ホビットの冒険(手軽な入り口。スタートセット)

2.ホビットの設定集(指輪の最初の背景情報)

3.指輪物語の本編(ホビットの日常から始まり、壮大なファンタジー戦争と探索の物語に展開し、最後は日常、および神話の世界に流れて物語が終わる)

4.追補編(指輪の作品設定集。小説の終わりに付与された各種族の歴史や年表、言語資料、後日譚、知られざる逸話など、設定マニアを喜ばせる資料の数々)

5.シルマリルの物語(指輪の後に発表された、追補編で語られた神話伝承を改めて物語形式にした作品)

 

NOVA『この2番と4番を、いきなり冒頭で示されても、世界設定マニア以外は引くぞ、と。こういうのは、一つの物語が終わった後の余韻を楽しむために付与するのであって、そこにはすでに需要があるわけだ。だけど、80年代にはすでにファンタジーのバイブルとして完成された指輪の物語があった。それを鑑として、最初に壮大な背景を付けてから始まる形式が流行したのが当時のファンタジーの文脈だった』

 

ダイアンナ「でも、その手法は21世紀では流行遅れだと?」

 

NOVA『映画「ロード・オブ・ザ・リング」のブームの影響で、指輪物語誕生の背景がファンタジーファンの割と常識になっていったからな。つまり、最初に手軽な入り口があって、それが受け入れられた段階で、世界設定を改めて示すというファンへの受容のされ方を。その段取りを多くの作家が習得して、「最初から壮大さを打ち出す」という手法からは卒業した。あるいは、シリーズ物の続編とか、二次創作とかで「壮大な設定背景を間借りしてくる」という手法もあったりするが、その場合はオタクの解説役の友人を用意して(あるいは主人公がオタク風)元ネタを語らせるという形式が今の定番かな』

 

アスト「多元世界なんかを語るには、複数の世界を研究熟知している解説役なんかが絶対に必要になるもんな」

 

FFシリーズのSF多元世界

 

NOVA『ということで、FFシリーズはタイタンという世界の中に、アランシア、旧世界、クールという3つの大陸を基軸に、壮大なファンタジー世界をコツコツ紡ぎ上げてきた経緯があるんだが、その積み上げを無視して、いきなり壮大な何かを示すというのは暴挙という話をした。80年代ならまだ世の流行であったことが、今やると入り口で失敗するということなんだが、アーロックの失敗を語るなら、他の同ジャンルとの比較論が望ましいので、SF作品を羅列してみた』(本国出版年/邦訳出版年)

 

◎4巻『さまよえる宇宙船』(1983/1985)

◎12巻『宇宙の暗殺者』(1985/1986)

※13巻『フリーウェイの戦士』(1985/1986)

◎15巻『宇宙の連邦捜査官』(1985/1987)

◎18巻『電脳破壊作戦』(1985/1987)

※22巻『ロボット・コマンドゥ』(1986/1987)

◎27巻『スター・ストライダー』(1987/1988)

◎33巻『天空要塞アーロック』(1988/1991)

 

NOVA『※印の2本は、それぞれ近未来カー・バイオレンス物と、ロボット物に分類されていて、宇宙船を駆るSFとは異なる扱いをされているが、一応、広義のSFと考えておこう』

 

アスト「でも、33巻でSFジャンルは終了したんだな」

 

NOVA『アーロックが戦犯という意見もあるにはあるが、34巻以降はタイタン世界を舞台にしたファンタジー作品ばかりが求められたという出版事情もあるんだろうな。紹介者の安田社長の当時の分析では、「SF作品が有力新人のルーツ」という見方もあったが、その時点ではアーロックをまだ見ていなかったのだろう。アーロックについては、本国での公式評価もよく分かっていないが、SF特有の追加ルールの中で「宇宙船の戦闘ルールが一番クソ」という点では、実プレイ経験者の同意を得られるだろう』

 

アスト「そんなに酷いのか?」

 

NOVA『まともにルールどおりにプレイすると、攻略不能になるというほどだ。FFよくある理不尽な死とか、手強い強敵とかとは質が違って、優秀な宇宙飛行士であるはずの主人公がザコ相手でも普通に死ぬ、勝てたらラッキーぐらいなバランス感覚は、テストプレイしたのかよ? とツッコミ入るのも首肯できるってもんだ』

 

ダイアンナ「『さまよえる宇宙船』は、通常の白兵戦と、射撃戦と、宇宙船戦闘の3つあったが、それともまた違うルールなのか?」

 

NOVA『そっちのルールは、技術点と体力点の要領で、武器力と防衛力を決めて(防衛力を決めるのが2Dでなく1Dというのが違うものの)、残りの防衛力の数値によってダメージ計算が多少違うというぐらいだが、少なくともうちのプレイで宇宙船戦闘で死んだことはないと思う。パラグラフ選択で、宇宙船戦闘も避けられるし、ルールの盛り込みすぎという批判はあっても、ゲームバランスがおかしいという批判はない。普通に楽しめるルールだったと思う』

 

アスト「どんなルールかは後で聞くとして、他のSF作品と比べて、どんな感じなんだ?」

 

NOVA『SFアクションの楽しみとして、主人公の鮮やかな活躍ってのがあるだろう? もちろん、パラグラフ選択のミスや、ダイス運の悪さで思いがけない失態をすることもあるだろうが』

 

アスト「放射能犬に噛まれて即死とか?」

 

NOVA『いいんだよ。死んでもネタの花実が咲いたと思えばな。命がけで笑いをとるのも芸人としての誉れよ』

 

ダイアンナ「アーロックの死は笑えない、と?」

 

NOVA『バッドエンドの文も総じてつまらないな。また、攻略後にバッドエンド特集をやりたいが、例えば、37番。「なんてドジなんだろう! 開いたままのハッチから泥水がどっと入ってきて、君はたちまち溺れてしまう」だ。何だか事実を淡々と書いただけで、面白みがないよな。続いて38番。「君は飾り板を調べようとしてそのうえにかがみこむが、つまずいて飾り板のうえに倒れてしまう。すると、君のからだは飾り板をつきぬけ、地の底へとまっさかさまに落ちていく。君の冒険は、ここで終わりとなる」だ。バッドエンドの文章にも、ゾワゾワ感情を刺激してくるジャクソンやリビングストンの文章に比べて、バッドエンド愛がなさすぎると思わんか?』

 

アスト「バッドエンド愛って何だよ?」

 

NOVA『そりゃあ、作者がバッドエンドでも読者を楽しませようとする凝った死亡描写とか、死に際の主人公に向けた皮肉な笑みとかだ。ドジを踏んだ主人公を見下すような機械的な文章じゃなくてな。死にやすいゲームでも、バッドエンドの文章が面白ければ、許してネタにできるんだよ。こんな死に方をしたぜ(笑)って。アーロックの文章には、死んだ主人公への慈しみがなくて、蔑みばかりがある。ムカつくって感じの死だ。化けて出てやる』

 

アスト「いや、『命を捨てて、俺は生きる』の精神で頑張れよ」

 

NOVA『とにかく、これがTRPGなら、作者のマーティン・アレンのGMには絶対に当たりたくはないな。よほど評判が悪かったのか、彼のゲームブックはこれが最後になったので、「有力新人のルーツ」という安田社長の分析は、この作品に関しては外してしまったことになる。あくまで希望的観測だったということだな』

 

 おそらく、今後も有力な新人はSFものを書いてデビューするだろうが、それと同時に、SFものでも背景世界とシリーズ性を基軸にしたFFシリーズが一つくらいあってもよいような気がする。

(『FFゲームブックの楽しみ方』123ページより)

 

NOVA『未来予測そのものは外してしまった形だけど、そこに至る過程の分析評論は好きだし、今でも大いに参考にさせてもらっている。そして、安田社長によるアーロック評も聞いてみたいが、つまらない物にお時間をとられるのも悪いので、こういうネタはこの場で愛をもって批評するのがいい、と考えた次第だ』

 

アスト「愛なんてあるのか?」

 

NOVA『ただの悪口じゃなくて、きちんと解析して、作品の可能性を見定めるのが俺の愛だ。そして、FF史上での俺的な意義づけとかな』

 

バランスの崩れた宇宙船戦闘

 

NOVA『本作の主人公ジャン・ミストラルは、4本腕の宇宙貴族である。そして彼の駆る宇宙船《星霧号》は、小型ながら高起動かつ不死身の再生能力を備えた、《エンスリナの騎士》や《大空の男爵》など数多くの称号を持つ主人公に相応しい万能航宙戦闘艇……ということにしておこう』

 

ダイアンナ「《エンスリナの騎士》って何だ?」

 

NOVA『エンスリナ人というのが主人公の属する星の民族なんだが、元々は土着の文化と知恵を備えたエンズール人と、侵略者の戦闘民族、勇気と4本腕を備えたアイヴァール人の混血だったらしい。現在は第16宇宙紀で、エンズールとアイヴァールの混血が生まれたのは第2宇宙紀。仮に1宇宙紀が100年と考えると、1600年の歴史が設定されているらしい。

『第12宇宙紀に銀河大戦争が勃発して、爬虫類種族のフェスプス族と軟体動物種族のデイク族の二大勢力が覇権を争い、銀河各地を荒らし回って、エンスリナ人もデイク族に奴隷にされたらしいが、13宇宙紀に入ると反乱を起こして、両種族を星系から追放した云々と、過去の経緯がいろいろと語られるんだな。ゲームブック本編のストーリーとは全く関係なく』

 

アスト「関係なく、かよ?」

 

NOVA『作者が本作のために構築したのか、それともプライベートで遊んでいる何かのゲームで自分が構築したオリジナル世界なのか詳細は不明だが、固有名詞を羅列しても、そこに魅力的な登場人物や物語が想像できないとハマれないのが事実だ。

『そして、主人公も無色透明なFF主人公には珍しく、凄い肩書きの人物と設定だけはされていて、原題のスカイロードも主人公の称号になる。邦題では敵要塞の名前だが、スカイロードのジャンは太陽騎士団の精鋭で、愛機の《星霧号》もさぞかし優秀で強いのだろう、と期待していたら、マットアローやマッキー2号のようにポンポン撃墜される。え? ガンダムに乗って活躍するのかと思っていたら、ジム、いやボールに乗らされた感じ? まあ、良くてコアファイターと言ったところか。Gファイターとか、コアブースターといった強者感は全くない』

 

アスト「そんなに弱いのか?」

 

NOVA『この機体の最大の長所は、戦闘後にHP(本作ではシールド発生装置の数で表現される)がフル回復する点だ。そう、戦闘に勝てば、HPはヤマトの第3艦橋並みに復活する。本作への批判の際に「本文中で破損の回復が行われない」という文を何度か見たが、それはルールをきちんと読んでいないと思われる。破損は毎戦闘ごとに回復するので《星霧号》も長期間の継戦能力だけは高いわけだ。1回の戦いに生き残りさえすれば、戦闘の連続でも耐えられる。

『問題は、その1回の戦闘で死ぬ可能性も高いってことだ。破損の回復が問題なのではなくて、1戦でもあっさり撃墜される程の機体の戦闘能力の低さと、理不尽な戦闘ルールにあると言えよう』

 

ダイアンナ「主人公の操縦能力に問題があるのでは?」

 

NOVA『それなら、最初から強キャラをプレイすればいいのだが、本作の場合、操縦能力は3か4の二択なんだよな。そして、操縦能力はイニシアティブには影響するが、機体の攻撃や防御には影響しない。それらは固定値で次のようになっている』

 

●スカイロードin星霧号

 操縦能力:3か4

    高出力レーザー砲:4

    シールド発生装置:12

 

NOVA『戦闘ルールは以下の手順で行われる』

 

1.操縦能力の高い方が先攻である。同値の場合は敵の先攻になる。

2.先攻が1Dを振って、レーザー数以下の目を出せば命中、相手のシールドを2点減らす。

3.後攻が1Dを振って、レーザー数未満の目を出せば命中、相手のシールドを2点減らす。

4.2と3をくり返して、シールドが0になれば機体は大破して負ける。戦闘終了。

5.戦闘に生き残れば、シールドの数値は戦闘前の状態に戻る。

 また、相手の操縦能力が主人公よりも高ければ、主人公の操縦能力を1点上昇できる。

 

アスト「ほう。FFでは珍しい成長ルールまであるのか。強い敵をどんどん落とせば、どんどん強くなれるってことだな。単純明快で結構、面白そうじゃないか」

 

NOVA『そう。先攻と後攻で、命中判定で以下と未満の違いが出て来るのがポイントだな。主人公が先攻なら4以下(3分の2)で命中し、後攻なら4未満の3以下(2分の1)で命中するという、先手有利な形だ』

 

アスト「シンプルながら、ちょっと凝った要素もある。これの何が不満なんだ?」

 

NOVA『では、ここで模擬戦闘をしてみるとするか。《星霧号》の対戦相手は、序盤のザコ敵(2つめのパラグラフで登場する)の《赤首ファーバッド団のギャング》だ。表紙絵の赤マフラー・バイク乗りだな。第33平面からスリルを求めて銀河にやって来た、巨大なロケット・スクーター乗りとある。能力値はこうだ』

 

●赤首ファーバッド団のギャング

 操縦能力:4

    高出力レーザー砲:5

    シールド発生装置:8

 

アスト「よし、オレがギャングになって、NOVAをやっつけてやる」

 

NOVA『いや、今回はここまでだ。この戦いの決着は、次回につけることにする。もしも、興味があれば、読者の人も試しにダイスを振って、ゲームバランスを確かめてみるのも一興だろう』

 

(当記事 完。次回から『天空要塞アーロック』攻略編のスタートです)