ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

続・異教平原ミニ観光風土記

「巨人の影」より戻る

 

NOVA『前回は、ストーンブリッジから「巨人の影」に寄り道したんだが……』

 

アスト「これまで、アランシアの地図は時代とともに新しい街が書き込まれたりしながら、更新されて来たんだが、ストーンブリッジが滅びたとなると、地図からストーンブリッジが消えたりもするのかな?」

 

NOVA『あくまで、狩人グースさんの伝聞情報だからな。事実を大げさに誇張したのかもしれない。確かに、一部破壊はされたが、すぐに再興できる程度の被害であることを願ってる。やはり、昔から馴染んできた集落だから、地図から消えるような事態は、たとえ、それが異世界であったとしても、ガーンと来るわけだよ』

 

ダイアンナ「ストーンブリッジの初出は、FF3巻『運命の森』だったよね。あたしも去年、同作をプレイして訪れたわけだが」

NOVA『リビングストン先生にとっても、単独初ゲームブックが「運命の森」だからな。ヤズトロモの塔と、ダークウッドの森と、ストーンブリッジの3ヶ所はそれなりに愛着があるとも思うので、このまま放置されたままとは考えにくい。きっと、ヤズトロモさんがドワーフたちのために何らかの手を打っているはず、と信じたい』

 

アスト「で、我々はふたたび30年前に戻り、90年代のストーンブリッジを再訪するわけだな」

 

NOVA『ああ、復活ザゴールの打倒法を聞くために、ヤズトロモさんの助言を求めて、アンヴィルからストーンブリッジに向かう話の続きだ』

 

ストーンブリッジへの旅

 

NOVA『「火吹山ふたたび」のパラグラフ237番から、南の120へ行くと、途中で山賊に襲われて地面の杭でつながれたまま放置された男を助けるイベントがあって、〈不可視の指輪〉を手に入れたりするんだが、さすがにストーンブリッジまではまだ遠い。泊まれる場所を探すか、徹夜で強行軍をするかの二択だな』

 

ダイアンナ「確か、正解ルートは泊まれる場所を探す方だったね。見つけた廃屋で、鉄の鍵(142)と木の球、積み木を手に入れないと、攻略失敗するはず」

 

NOVA『よく覚えているじゃないか。強行軍で進むと、夜中に吸血コウモリに襲われたりしながら、結局、適当な木陰で野宿することになる。この主人公は、最初の装備品に夜道を照らすランタンを持っているはずなんだが、ゲームブック本編では微妙に描写が反映されていなくて、「まったく見通せない暗闇の中をこれ以上歩くことは無理」と判断するんだな。何のためにランタンを持っているんだよ?』

 

アスト「燃料の油を切らしていたんじゃないか?」

 

NOVA『これからダンジョンを探索するのに、明かりが使えなくてどうするんだよ?』

 

ダイアンナ「月明かりで夜道も普通に歩けるだろうと思っていたら、復活ザゴールの闇のオーラで火吹山周辺が他の地域よりも暗いとか、そんな風に脳内補完するといいのでは?」

 

NOVA『う〜む。ダンジョン内の明かり問題は、ファンタジーRPGの基本だと思うんだが、「火吹山ふたたび」は意外と、その辺の処理が雑に感じたりもする。まあ、徹夜で歩くのは外れルートなので、そこまで気を使わなかったのかもしれないが、ランタンの油を無駄に消耗しないために、素直に廃屋で必要アイテムをゲットしてから眠るのが正解だな。なお、廃屋にはロウソクと火打石が用意されていて、正解ルートの描写はそれなりに細かく丁寧になっているようだ。読んでて文章が雑だと感じたら、そのルートは外れの可能性が高いと思ったらいい』

 

アスト「ジャクソンさんの方が、その辺りはマメみたいだな。外れルートの文章の緻密さは、ジャクソンさんの方がこだわっていて、それだけに正解と非正解を見分けるのが難しいようだ」

 

NOVA『リビングストン先生も、その辺は考えているのだろうが、生来の気質の差なのかもしれない。逆に、近年の作品ではその辺はリビングストン先生も開き直ったりもして、当たりルートは本当に緻密な文章で読み応えがあり、外れルートに入ると途端に文章が雑に、というか手抜き丸出しになって、効率優先になっているみたいだから、攻略自体はしやすくなってるな。もちろん、作品やシーンにもよるので絶対ではないし、外れルートでも力の入った面白イベントはあるから、判断のちょっとした目安程度に考えてくれたらいい。一方で、バッドエンドのパラグラフでの描写はこだわりがあって、そこで手を抜くことはしていない』

 

アスト「ええと、どういうことだ?」

 

NOVA『外れルートに入ると、何となく外れって気配が分かるようになってるんだ、俺。長年の冒険生活で培った勘からか、それとも文章読解経験の賜物かは知らんが、そうするとバッドエンドの匂いみたいなものが嗅ぎ分けられて、そろそろバッドエンドが来そうだな、ワクワクって気分になる。どんな面白いバッドエンドの文章を読まされるかなって構えができたりも』

 

ダイアンナ「さすがは自称・バッドエンド研究家だね」

 

NOVA『イヤな称号だな。しかし、世の中には「面白いバッドエンド」と「つまらないバッドエンド」があるのも事実。何なら、作品ごとの「バッドエンド・ベスト3」を挙げるのも一興だな。なお、俺がこの2年間で一番笑ったバッドエンドは、「危難の港のパラグラフ224番」だ。頭上から有翼爬虫類テロサウルスが飛来して、鉤爪で主人公を捕らえると、大空中旅行が描写されるんだ。文章を抜粋すると、以下の通り』

 

 爬虫類は金切り声を上げ、〈ダークウッドの森〉の端を示す不吉な巨大な木々に沿って月岩山地を飛び越え、猛スピードで西へと向かう。テロサウルスは左手に並ぶ赤水川と異教平原を横切り、高い梢を越えてその先の独立峰である火吹山へと向かって、北に滑空する。

 

NOVA『この後、主人公はテロサウルスの巣(火吹山中腹にある)に運ばれて、雛たちの餌になる末路なんだけど、ここまでダイナミックで、ワクワクできて、絵にすると爽快なんだけど、実際は鉤爪につかまれて痛々しい、しかも唐突感あふれる雄大なバッドエンド描写は見たことがない。「危難の港」は運よく一発クリアできたから、バッドエンドは実体験できていないが、この文章を読んで感動したもん。そして思った。どういうシチュエーションから、こんなバッドエンドに突入するんだ? って』

 

アスト「どんなシチュエーションだ?」

 

NOVA『ハカサンの同行の誘いを断って、一人でダークウッドの森に向かう選択をした時だな。ハカサンの同行を断る→空から翼竜が飛来して、火吹山に拉致されるって展開は爆笑ものだよ。ストーリーの辻褄合わせの必要上のバッドエンドとは言え、この壮大なセンスはリビングストン先生、凄すぎでしょう。バッドエンドの文章で読者を楽しませるバッドエンド芸というものを心得ていらっしゃる。そこに痺れる憧れるってもんだ』

 

アスト「なるほど。バッドエンドの1パラグラフだけで、『大空からの異郷平原ミニ観光』が楽しめるわけだな」

 

ダイアンナ「命がけだけどね」

 

NOVA『ともあれ、違う作品のバッドエンドに寄り道脱線しながらも、ダイナミックに話を戻そう。その夜、廃屋でゴブリンの夜襲に警戒しながら一睡もできなかったり、異常な勘の良さで危険を察知して、もっとゆっくり眠れる場所を探して、眠り草の茂る場所で熟睡したり(体力2点回復)、何がお得で何が損か初見では正解が見えにくいイベントを経て、翌朝、ストーンブリッジに到着するわけだ』

 

ストーンブリッジからの船旅

 

NOVA『ストーンブリッジに到達するパラグラフは238番。滞在期間はわずか1パラグラフで、あれやこれやと言う前に、「アンヴィルから使いの鳥が来て、状況は分かっている。ヤズトロモさんなら西のカアドの街に行った。疫病の街を救いにな。カアド行きの船を用意しているので、すぐに旅立つがいい」とドワーフさんが手配してくれた帆船に乗って、赤水川を下る展開だ』

 

アスト「じっくりストーンブリッジを散策する間もないんだな」

 

NOVA『と言うか、俺、この街をじっくり見て回った記憶があまりない。初登場の「運命の森」ではゴールの地点だし、14巻「恐怖の神殿」では最初の背景でストーンブリッジでのんびり休息している主人公が描かれているけど、そこからすぐにヤズトロモの塔に向かうことになるので、冒険の中心には位置しない。そして、今回もほぼ素通りした形で、意外と風景描写なんかは少ないんだな。あくまでアランシアのドワーフの故郷で、主人公にとっては割と馴染みのある(ハンマー奪還の件で、恩人として敬意を持たれて遇されることもある)休息場って感じか』

 

ダイアンナ「村なのか、街なのか、どっちだい?」

 

NOVA『初期は村として描写されていたな。王はいるけど、国とは呼ばれていなくて、「村の王ジリブラン」という表記も「恐怖の神殿」にはある。なお、俺は昔、恥ずかしながらストーンブリッジ(石橋)をストーンビレッジ(石村)と思い込み誤読していた時期があって、自分でもこんがらがっていたな。

『村は農耕地帯や森のそばなど自然が豊かな小集落って感じで、町もしくは街だと人が多く集まってきて中程度の集落。都市だと中世ヨーロッパでは城壁に囲まれて周囲に多くの村があって、多くの人口を養うだけの食料を提供している。都市には領主がいて、税を徴収したりもしているが、町や村だともっと住人寄りの村長や町長がいて気さくな感じだな。村が発展して町になることはあるが、都市レベルとなると城壁や水道などのインフラ整備も必要なので、相応の計画性と管理体制が必要になる。都市と村・街の区別は外観描写からも割と明確なんだが、村と街の区別が意外と難しい』

 

アスト「文章中で、村と書かれていたら村で、町と書かれていたら町でいいんじゃないか?」

 

NOVA『まあ、そうなんだが、アンヴィルは当初が村で、「巨人の影」で発展して町になったと描写されているし、町長という言葉もあって、ザゴールの脅威が消えた後に大発展したんだろう。主要産業が鉱山と商業で、第1次産業よりも第2、3次産業に主軸が移ったら町って感じにもなるか。しかし、ストーンブリッジは初期設定で村という表記が為されていたが、「火吹山ふたたび」では「ストーンブリッジ郊外」という表記もあって、郊外は市街から外れた場所を意味する。村の周りを郊外とは言わないので、この段階でストーンブリッジは村から町に発展していたと俺は考えるな』

 

アスト「それにしても、村とか町のレベルなのに、王という称号を持つのはどういうことなんだ?」

 

NOVA『お前も人のことは言えないと思うがな。このウルトロピカルは、村と言ってもいいのかどうかも分からない島の管理所みたいなものじゃないか』

 

アスト「うっ、オレの王は言わば、コードネームみたいなものだからな。キョウリュウレッドがキングと呼ばれるようなものだ」

 

NOVA『まあ、ファンタジー世界では部族の長を王と呼ぶことも多いな。FF7巻のトカゲ王もそうだし、ジリブランの場合は、過去に火吹山を支配していたドワーフのレッドウィード部族の王家の子孫という血筋もあって、ストーンブリッジがレッドウィード部族の避難地から発展したという歴史経緯もあるようだ』

 

ダイアンナ「へえ。亡国の王の子孫なんだ。だったら、ザゴール亡き後、火吹山の支配を取り戻すという選択肢もあったんだね」

 

NOVA『ストーンブリッジが壊滅した後で、町を復興する代わりに、火吹山にドワーフたちが移住する可能性もあるが、どうだろうな? アランシアのドワーフは地上暮らしが長いし、洞窟はあくまで仕事場で、家は地上の方がいいと考えるのかもしれないし、人間たちとの交易を重視している者も多い感じだからな。とりわけ、酒好きのドワーフたちは、ずっと地下暮らしだと酒が手に入りにくいのを嘆くと思う』

 

アスト「地上の方が暮らしやすいと考えているドワーフも多いのか」

 

NOVA『それと、やはり火吹山はザゴールの長年に渡る支配で、闇の魔力の影響が強く、ドワーフたちも慎重に調査を進めながら、採掘作業を再開しているとか、少なくとも、ミドルアースの離れ山(エレボール)のドワーフ(ドゥリンの末裔)よりは性急に故郷に戻ろうとはしていないようだな』

 

アスト「ジリブラン王は、トーリンほど山への帰還を渇望していないってことか」

 

NOVA『助言者である魔法使いとの関係が良好なのもあるのかもな。トーリンはガンダルフに対して懐疑的に見ている面もあったが、ジリブランはヤズトロモさんと親友同士らしい。ヤズトロモの塔を築いたのも、ストーンブリッジのドワーフたちが協力したそうだし、アンヴィルの人間たちとの関係も良好。そして、アンヴィルが発展するなら、一緒にストーンブリッジも発展していくわけで、慌てて火吹山に戻る必要はない……というのが、これまでの歴史だとは思う』

 

ダイアンナ「40周年で状況が変わったけどね」

 

NOVA『変わったかどうかは、今後の展開次第だけどな。ともあれ、ストーンブリッジのドワーフの良き友と称される9人の人間の船乗りたちが主人公をカアドに運んでくれる。途中で、オークの奇襲にあって、船が沈んだりしなければな。最初の選択さえ間違えなければ、船旅は順調に進むので、あっさりとカアドに到着する。攻略としては、それが正解なんだが、今回は観光が目的で陸上の旅もチェックしたいので、敢えて船員たちには犠牲になってもらうパラグラフを選んだ。船旅から陸旅に切り替わる展開はこうだ』

 

●ひっくり返った小船にオークがしがみついている。スルーしないで助けようとした場合、船速が落ちて、隠れ潜んでいたオークの戦カヌーの襲撃を受ける。矢の雨で1D人の船員が犠牲になる。

●その後、運だめしに失敗すると、さらに1D人が死んで、これで9人の船員が全滅すればゲームオーバー。

●運だめしに成功するか、船員が生き残れば、船速を上げてオークのカヌーを引き離すことに成功する。主人公は、船員の死の原因となったことを悔やむ。

●その後、生き残りの船員が5人以上ならカアドまで到着する。4人以下なら、強風に煽られた船が転覆し、水中でカミソリ魚に襲われる。船員は全滅し、主人公は赤水川の北岸に何とか泳ぎつく。

 

船旅中断しての地上旅

 

NOVA『主人公のうっかりと運の悪さによって、船員たちを全滅させた場合、生き残った主人公はやむなく残りの道程を陸路で進むことになる(パラグラフ89)。初見だと、親切心が仇となってオークの罠にハマってしまうケースが考えられるが、ここに来る可能性は最初の矢で5か6を出して、運だめしには成功(船員の残りは3、4人)か、運だめしに失敗しても合計2Dの出目が8以下でバッドエンドは免れる。確率にして3分の1程度だろうか。狙って入れる可能性が多少低いルートということになるし、メリットがほぼないので好き好んで入る者は、それこそバッドエンド研究家か、ゲームブックのパラグラフ解析が好きか、リビングストンさんの大ファンで全ての物語ルートをチェックしたいマニアぐらいのものだな』

 

アスト「うっかりオークを助けようとしなければ、そもそも船員が犠牲になることはなかったんだな」

 

NOVA『船員には9人とも名前が付いていて、船長がサック、操舵手がロリー。他はフィル、イーユン、ストゥーイ、クルック、マーク、ニール、エンドルーだ。首に矢が貫通して死ぬシーンが描かれているのがストゥーイで、まあ、さすがに次々と死んで行くので、彼らの名前を全部覚えて忘れないプレイヤーはいないのではないだろうか? 「ストーンブリッジのドワーフの良き友、サック船長と操舵手ロリーと7人の船員たち」の冒険行をオリジナルで考えても、よほどのFFマニアでない限り、ウケないだろうな』

 

ダイアンナ「こういうのを全部チェックしたがる人間が、エンサイクロペディアみたいな事典を編纂するんだろうね」

 

NOVA『多くの船員の犠牲で疲れ果てて、川の北岸で休憩すると毒ヘビに襲われたりして、ますます踏んだり蹴ったりだ。そのまま川沿いにトボトボ西へ歩いて行くと、老人に金貨を請求されるし、持っているザゴール金貨を渡すと、「お前はザゴールの手先か! ならばわしの敵じゃ!」と言われて、萎縮の呪文をかけられる(技術点マイナス2)。それを回避するには、「そのマークはZじゃなくて、Nです」と言えば、快く祝福をかけてくれて運点2点が回復する』

 

アスト「Nって誰だよ?」

 

NOVA『このメンバーの中では、俺しかいないな』

 

アスト「お前は金貨なんて鋳造しないだろう!」

 

NOVA『う〜ん、ザゴール金貨を全部集めて、NOVA金貨と言い張るのも一興と思ったが、誰も喜んでくれそうにないので、妄想の中に留めておこう』

 

ダイアンナ「FF世界で、Nの付く有名人だったらニカデマスさんがいるね」

 

NOVA『まあ、彼が金貨を鋳造するとは思わないけど、金貨鋳造で有名なのは、ブラックサンドで流通していると言われるアズール卿の紋章入り金貨だな。裏面はドラゴンが彫られて、なかなか格好いい』

アスト「ワールドガイドの『タイタン』に載っている資料だな。こういうイラストや記述から、世界を想像するのも楽しめそうだ」


NOVA『今、楽しんでいるじゃないか。ともあれ、金貨イベントの後、数時間歩いて、赤水川に支流が流れ込む川岸の桟橋に到着した(271)。船旅だと312に相当する場所だな。そこでは、カアドの疫病から逃れようとしている人々が群がっていて、支流を遡ってシルバートンの街まで向かう船を待っているそうだ。地図で見ると、シルバートンではなく、ラルゴじゃないかなあとは思うが、きっと過程を省略したのだろう。ラルゴからナマズ川→シルバー川に入ってシルバートンに向かうのを縮めたのだと解釈しておく』

 

アスト「30年前にはラルゴなんて街は設定されていなかったんだよ。確か『危難の港』で登場したんだよな」

 

NOVA『ダークウッドの森の南西にあって、そこからブラックサンドまで川で直行できる。まるで、物語の都合に合わせるかのように後から生えてきた、川沿いの港町だ』

 

アスト「やっぱり、長距離移動には馬か川船は欠かせないからな。そういう長旅のゲームブックが増えると、交通手段をあれこれ考えるのも一興だと思うぞ」

 

NOVA『川を渡って、北に進むとカアドに着くという話を聞いたので、そうした。すると、暗殺者が待ち構えていて、戦うことになったんだな』

 

ダイアンナ「それはゲームが違うんじゃないか? 暗殺者と戦う話は30年後だぞ」

 

NOVA『いや、30年前の「火吹山ふたたび」でも、カアドの街の門前で暗殺者と遭遇したんだよ。そして殺された。ヤズトロモさんに化けたドッペルゲンガーの手にかかってな』

 

カアドの街

 

NOVA『パラグラフ182番。そこで俺は久しぶりにFFゲームブックで死を味わったんだ。言わば、FFコレクション最初のバッドエンドって奴さ。このカアドの街は、暗殺者とつくづく縁があるらしい』

 

アスト「別に街自体が、暗殺者を呼び込んでいるわけじゃないだろう? たまたま、ストーリー上の偶然って奴じゃないか」

 

NOVA『どうだかな。とにかく、俺を殺した暗殺者1号が偽ヤズトロモだ。サソリ会の連中よりも、よほど有能だぜ。技術点9、体力点0という珍しい能力値をしていて、戦闘ラウンドで勝てば、2Dを振ってゾロ目ならトドメを刺せるというデッドリーな対戦相手だ。いきなりゾロ目が出れば、一発で倒せるが、運が悪ければこちらが一発で倒されることも十分あり得る。体力点の量に物を言わせる戦いができないという意味で、正解ルートを通っても死ぬ可能性が消えない危険な強敵だ。ここで死んだYou1号の死は今でもトラウマだ。まあ、その後、放射能犬と、次いでアーロックに上書きされたけどな』

 

ダイアンナ「アーロックを上回るトラウマはもうないかな?」

 

NOVA『アーロック越えは難しいんじゃないか? 他は1回のイベントだが、アーロックは作品丸ごとトラウマの塊みたいなものだからな。あのトラウマを消すには、他の4大宇宙SF作品「宇宙の暗殺者」「宇宙の連邦捜査官」「電脳破壊作戦」「スターストライダー」を楽しんで、SFゲームブックは本来、こういう楽しいもんだという浄化をしなければいけない気がする。うむ、ル・バスティンに代わって、悪魔の科学者サイラスか、宇宙の麻薬組織か、アルカディオン帝国の女王コンピューターか、銀河大統領を誘拐したグロム人を倒さないといけないのだが、それは今じゃない。いつになるかは知らんが、また、そのうちにな』

 

アスト「で、今は偽ヤズトロモ退治だろう?」

 

NOVA『とりあえず、今回は観光メインなので、カアド名物の暗殺者を確認したら、次は街の中心の広場に入って、本物の青い目のヤズトロモさんに会う。ヤズトロモさんは、自分の調合した飲み薬を重病の町人たちに渡した後、エレメンタルを呼び出す〈竜の牙〉の話を教えてくれ、さらにズート・ジンマーや買い物できるディープ・シー・ダウランドの店を紹介してくれ、さらに買い物のための金貨15枚をくれる。これでアイテム5個を買わないと、攻略失敗するって話だ』

 

ダイアンナ「今回は自由な散策ができなくて、行ける場所は2つだけなんだね」

 

NOVA『だから、小さな街だって思ってたんだな。実際の描写では、城門もあるし、〈プディング通り〉とか〈鋲釘通り〉といった街路にしっかり区画された相応の都会と考えるべきだったんだが、この段階ではカアドを田舎の村と思い込んでしまっていた』

 

アスト「疫病でさびれた町という理解だったな」

 

NOVA『俺には、門前で暗殺者に殺された街という最悪の第一印象だよ。それでも、ブラックサンドからファングまでの中継地点という重要な交易都市として、これからの名所に育って行くような気もするなあ』

 

プディング通りのディープ・シー雑貨店

 

NOVA『ここで、本作唯一の買い物が楽しめる。ここに入るには、店の前にいる子供に、積み木の玩具を渡さないといけない。積み木を渡すと、お父さんのディープ・シーを呼んで来てくれるんだ。ディープ・シー曰く、「午後は店を休むつもりだったんだが、息子にプレゼントをくれたんだから、特別開店サービスだ」とのこと。考えてみれば、疫病に見舞われた街だから、商売にはならないと判断して店を休む可能性もあるわけで、たまたま子どもが店の前にいて、たまたま子ども受けしそうな積み木の玩具を冒険の途中で入手していようとは、これこそ運命に選ばれたってことだな』

 

ダイアンナ「でも、上手く買い物をしないと、ダンジョンで攻略に詰むんだよね」

 

NOVA『攻略情報を再録すると、必要アイテムは「ロープ」「鏡」「拡大鏡」「革手袋」の4つだ。「ランタン」は初期装備に入っているので買う必要はない。「ニンニク」はバッドエンドの元だから買うな。買わなくても、ダンジョンで入手できるからな』

 

アスト「『癒しの軟膏』なんて欲しくなるよな」

 

NOVA『ダンジョン内で使う機会があったかなあ? とにかく、ダンジョン内での攻略詳細はこちらを参照』

 

●鋲釘通り36番のズート・ジンマー

 

NOVA『買い物の後で、可哀想なNPCズート・ジンマーを訪問することになる。彼を訪問する目的は、カアドへの回り道で時間を浪費したので、大鷲に乗って空輸してもらうためだ。テロサウルスの鉤爪に引っ掛けられてのバッドエンド空輸より、快適な旅ができるのでお勧めだ』

 

ダイアンナ「でも、この人と大鷲は死んでしまうんだよね」

 

NOVA『本当に、死ぬときはあっさり死ぬからなあ。まあ、無駄死にとは思わないし、むしろ主人公を助けての惜しまれる死だからな。せっかくいい人なのに、世話になったのに、こうも呆気ないものか、と危険なアランシアの雰囲気を彩ってくれる。それだけに生き残ったハカサンやグースは奇跡に近いと思わせる僥倖だ』

 

アスト「で、死んだキャラの思い出……にしては、まだ記憶が新しいが、再会してどんな気分だ?」

 

NOVA『1年前は解くのに夢中だったから、じっくり文章を読めてなかった箇所もある。ハーフエルフのズート・ジンマーの背景だ。母親が〈柳谷〉の出身で、最近、疫病で死んだそうだ。この疫病の原因がザゴールだと彼は確信しているので、主人公の任務は母の仇討ちにつながるから、是非協力させて欲しい、と言って来た。実は俺、そこのところが読めていなくて、というか、流し読みしていたもので、「こっちの使命に、勝手にズートを巻き込んで殺してしまった」と多少とも後ろめたい気持ちもあったんだが、ズートはズートなりの思うところがあって、積極的に協力してくれたんだなあ、と今さらながら納得できた次第』

 

ダイアンナ「それにしても、〈柳谷〉からカアドなんて、ずいぶん遠くから移り住んで来たもんだねえ。そこにどんな背景があるんだろう?」

 

NOVA『さあな。〈柳谷〉と言えば、FF2巻の「バルサスの要塞」関係だから、大方、バルサスの侵攻から避難する先で、こんなところまで来たのだと思うが、当時はカアド周辺の森も悪鬼の森とか物騒な名前が付いていなくて、エルフが普通に生活できる街だったんじゃないかなあ。ズート曰く、「街の暮らしに馴染まない母のために、家の中がまるで森の中であるかのように装飾し、描いた」とのことで、実に人柄の描写が細かいんだよな。癒しの力を秘めたハーブティーも美味しくて、体力2点を回復してくれるありがたさで、その後、大鷲を召喚して、異教平原の空の旅が開始される。徒歩の旅から川の旅、そして空の旅へと広がる展開が物語前半のクライマックスとも言えるな』

 

ダイアンナ「でも、途中で妨害が入るんだよね」

 

NOVA『ハーピーに襲われて、墜落死する危険がある。一度地上に下りて、やり過ごしたら、難なくスルーできるんだけどな。ともあれ、火吹山の近くまで送ってくれたズートと大鷲は、再び西のカアドへ帰って行くんだが、まさか、その後、ダンジョンの中でズートと再会するとは思いもよらなかった』

 

アスト「帰りしなに、ファイア・ドラゴンに襲われて、鷲は殺されて、ズートは失明することになったんだな」

 

NOVA『ああ。その後、地上でオークのパトロール隊に捕まってしまい、ザゴールの左腕のパーツにされるべく監禁されていたのを、主人公が助けた形になる。失明しながらも、手触りで罠や仕掛けを探知できると言って、同行を申し出てくれた。そして、隠された〈竜の牙〉(186)を見つける助けになってくれたんだが、直後に落とし穴の罠にハマって……惜しい男を亡くしたものだ』

 

ダイアンナ「ダディはゲームブック中のキャラの死について、どう思う?」

 

NOVA『厳かに受け止めて、冒険を成功させる原動力にするな。そして、恩人に対しては後から称えるんだ。あいつはいい奴だった。あいつの○○は今でも覚えている。惜しい男を亡くしたよ……って語り継ぐ』

 

アスト「ズート・ジンマーはいい奴だった。あいつのハーブティーの味は今でも忘れない。惜しい男を亡くしたよ……ってことか」

 

NOVA『それと、カアドから火吹山近くまで送ってくれた大鷲くんだな。印象的な空の旅をありがとう。この「異教平原ミニ観光風土記」は、ズート・ジンマーと大鷲くんの思い出に捧げるとしよう』

(当記事 完)