ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「巨人の影」読了感想文

またも注意書き(by NOVA)

 

 最初に言っておく。

 この記事は攻略記事ではないが、物語として一通り初めから最後まで読んだうえでの感想文である。

 キャラクターを作ってのプレイはまだだが、分岐小説として読んで、一応の物語内容は把握した。もちろん、まだ読んでいない別分岐や、出会っていないキャラクターや怪物、見過ごしたイベントなどもあるだろうから、全パラグラフ400のうち半分前後しかチェックできていないんじゃないかなあ。

 なお、バッドエンドの数は、今ざっと数えたら27だった。少なくはないが、30を越えていないと多くない、と感じてしまうのが今のNOVAである。まあ、それなりに死ぬイベントはあって、1発クリアは難しいと言ったところか。

 とりわけ、必要アイテムがいろいろあって、買い物できる機会が結構あるけど、何が正解か全部うまく選び当てられる可能性は高くないだろう。そのための試行錯誤とか、お勧め購入リストなどの解析はまだまだこれからである。

 何が必要アイテムか、自分が進んだルートなら、大体把握したけど、記録はしてないので数日経てば、細かいことは忘れていそうである。

 

 その前にストーリー概要ぐらいは書き記しておこうって記事である。

 ネタバレを気にする人は読まないでね。

 

作風概観

 

 まず、作品全体の雰囲気としては暗くない。むしろ明るい。

 NPCが何人か死んだり、巨人の襲来で最低でも一つの街が壊滅したとか言われているのに、あまり悲壮感とか凄惨さは感じずに、カラッとしている。

 リビングストンの過去作で言うなら、初期ののどかな雰囲気の野外冒険譚『運命の森』や、非ファンタジーの疾走感に満ちた『フリーウェイの戦士』に匹敵するほどの明るさ、軽さ、ノリの良さである。

 巨人のせいで、このままだとアランシアが壊滅してしまう、と言われているはずなのに。

 

 理由は、巨人の都市破壊シーン(表紙で描かれているような光景)が文章ではじっくり描かれておらず、一部の人間の伝聞でしか、その破壊活動が語られていないからである。

 主人公は巨人の起動現場に居合わせた張本人で、このままではヤバいと確信して行動を開始したわけだが、実際の破壊そのものを目撃してはいないので、それを目撃した人間グースと物語の中盤過ぎに危機感を共有して、打倒巨人の共闘体勢をとることになる。

 しかし、世界の危機を知る者は少数で、中盤のメイン舞台である新たな街ハーメリンは、折しも半年に一度の祭りで賑やかな催しが行われて、みんなが浮かれ気分になっている。この賑わいの雰囲気は、40周年記念作だからか、とにかく明るい都市散策の雰囲気がそれまでの作者の作品群の重厚さ、手堅い王道ダークファンタジーっぽさと大きく異なって新鮮である。

 何せ、この作者の代表作の都市冒険譚は、悪徳で有名な『盗賊都市』ポート・ブラックサンドであり、暴力と窃盗がまかり通り、海賊が多い危難の港とも呼ばれ、さらに領主が暴走馬車に乗って、うかつな旅人を跳ね飛ばしたりすることもあるドクロに飾られた街のイメージが大きい。

 それ以外にも、ブラックサンドほど治安は悪くないけど、主人公が残飯漁りをしているせいか、何だか陰鬱で薄汚れた街に見えるチャリス(危難の港)、かつては疫病に襲われ、最近は暗殺者たちとの抗争の舞台となったカアド、そして『死の罠の地下迷宮』の舞台であるファング……う〜ん、明るい雰囲気がちっともないですな。死とか野蛮とか陰謀とかそんな雰囲気がリビングストンの描く都市の典型イメージでしたが、

 40周年で初めてと言っていいほど、明るくて賑やかなお祭りムードな都市が登場しましたよ。それだけでも雰囲気めでたい。

 

 そして、オープニング背景も陰鬱さがまったくない。

 これまでのリビングストン作品の多くは、死に行くドワーフ依頼人から故郷の王国を救うためのハンマー探索を頼まれたり、闇の王に狙われた街を救うために犯罪都市に潜入することになったり、死の罠の地下迷宮に潜ることになったり、その後も、基本的には「○○を救うために、□□を倒さないといけない、もしくは△△を入手しないといけない」というミッションが最初に与えられて、冒険の内容の前に、出だしから重かった。相応の責任を抱えて、危険に立ち向かう冒険者、英雄候補の物語群である。もちろん、事件解決を果たしたら、おめでとう祭りになるが、最初は暗く、その暗さを払拭するための試練に挑む流れである。

 

 近年は、また違う雰囲気の作品が登場したが、序盤の暗さは変わらない。

 まず、『危難の港』。前の冒険に失敗して、多くのガラクタだけを抱えて文無しになった主人公は残飯漁りに身を落としながらも、一攫千金のチャンスに飛びつく。境遇からして暗いのを、持ち前のバイタリティで挽回しようとする話である。失敗した冒険者が一か八かの賭けに出るが、結局のところ、命からがらの危険の末に、宝の地図は偽物だったことが判明。代わりに、冒険のパートナーを得たところから後半戦に入って運命が逆転する。

 相棒というか、将来の嫁にもしたい有能女史に誘われて、新たな冒険の可能性にワクワクしていると、そこに飛来する世界の危機の知らせ。宝探しの物語が一転、世界の危機を嫁とともに救う話になって、不遇なトレジャーハンター罠職人(主人公と似た境遇)の改心を経ての協力、有名魔術師の訪問と別の有名魔術師の救出任務、有名悪徳都市での脱獄大活劇など闇から光への逆転劇を目指し、懐古と派手さの入り混じった一大エンタメ物語に展開。

 クライマックスは押し寄せる敵の軍勢に対して、善側の拠点を守るための防衛戦。2大魔術師の派手な呪文が飛び交い、将来の嫁(願望)がザコを牽制するなか、元・残飯漁りだった主人公は闇の王と呼ばれた大物を仕留めるために決定打をドカンと放つ。

 まあ、食いつめ者のお宝探しから始まって(暗い)、復活した闇の王を見事に仕留めて、ハッピーな宴と次の冒険への期待で締めくくられる物語である。ある意味、ハリウッドのエンタメ映画のフォーマットで作られた作品であると言ってもいい。

 

 次に『アランシアの暗殺者』。出だしはギャンブルで、無人島サバイバルという過酷なオープニングだが、これは『死の罠の地下迷宮』のオマージュにもなっている。一攫千金と名誉を求めて、過酷な試練に立ち向かう命がけのギャンブルという意味で。問題は賭けに勝った際の報酬の低さで、「お前はどうして、こんな端金のために、ここまで割に合わないギャンブルに乗ったんだ? バカか?」とツッコミ入れたい、主人公の大胆さというより能天気さに苦笑しながら、本番はそこじゃない。

 過酷な無人サバイバルゲームという何かの企画番組みたいなシチュエーションが一転、迫る暗殺者の影。え? 俺が一体、何をしたっての? え? 闇の王を倒して世界を救ったら、悪徳領主に目をつけられて、気がつけば賞金首になっている? よっしゃあ、こうなったら暗殺者を全滅させて、悪徳領主に直談判しちゃる。待ってろよ、悪徳領主よ。てめえを倒すのは、この俺だ!

 ……と勇んで乗り込んで行ったら、何だか悪徳領主に豪胆さを称えられて、『死の罠の地下迷宮』に行け、と命じられた。命がけのサバイバルギャンブルに始まり、命がけのサバイバルギャンブルに終わるこの作品。全編、派手で豪快な雰囲気だけど、13人の刺客の襲撃を切り抜けながら、ボスに迫る一大活劇エンタメ……と自分はプレイ中に解釈した(作者の想定どおりとは多分違う)のだけど、明るい雰囲気では全くないし、最後まで救いはない。

 まあ、暗殺者に怯えて、どうしたらいいんだ? と小市民的なセンスだと、悪徳領主の試練には打ち勝てないので、賢くも豪胆であれ、そして暗殺者との死闘を笑いながら制する、半ば狂気に冒されたサイレント・サバイバーこそが、このイカれた時代を生き残るタフボーイにだってなれる、80年代世紀末のロックな感覚に満ちた作品です(個人の感想。たぶん作者の意図は違う)。

 ええと、『巨人の影』の感想ついでに前2作の自己流総括も勢いで書いてしまったが、「食いつめ者の起死回生物語」と「過酷なサバイバルにも大胆に乗り越えていく漢の武勇譚」として堪能した作品の次に来るのは……え? 何だか妙に明るい? テーマは40周年記念のお祭り騒ぎ? 

 世界の危機に気付かず、興じ騒ぐ人々の安寧を守るために、危機をもたらす原因となった主人公が「仕方ないよなあ。俺が何とかしないと」って頑張る話なんだけど、多少の危機感はあっても悲壮感はあまりないのは、いつになく陰鬱さを感じにくいムードのせいなんだよね。

 自分的には60年代から70年代の怪獣映画の雰囲気なんだけど、人々が脅威に気付いてパニックを起こす前に、事件が終了したものだから、ストーンブリッジみたいに蹂躙された地域(アンヴィルがどうなったかが気になるけど、それは描かれていない)の伝聞のみで、暗くて陰鬱な部分はあえて描写しない方向で、明るく派手に楽しい作品として構築されている。

 読む前は、巨人の大暴れでもっと激しくパニクって、悲壮な展開になるかと思いきや、カラッと陽性の雰囲気を維持して、読後感もスッキリ後味よく、ある意味で『アランシアの暗殺者』とは対極のムードにある作品だと思った。

 

 相棒のグースの軽口を叩く、剽軽な陽性キャラも功を奏していると思いますし、後半は少しおどけたコンビプレイで危機また危機を乗り越える流れ。ラストの「たった2人の巨人討滅戦」は、運が悪ければ(運だめしに失敗すれば)相棒が討ち死にしてバッドエンドだけど、ラッキーで乗りきれば「ふう、死ぬかと思ったぜ」ってノリで相棒が起き上がってきて、ワハハと笑ってハッピーエンドに。

 途中で、相棒を見捨てて一人だけ生き残ろうとする選択肢が何度かあって、それを選べばバッドエンドを免れないんだけど、逆に言えば、相棒を見捨てるプレイを避ければ、バッドエンドの可能性はその分、減るわけだし、他にも重要NPCをうっかり間違えて殺すことでバッドエンド突入、という展開もあったりして、相棒見殺し、重要NPCの殺害など(一応の仁義とか倫理観があれば)普通は避けて通る選択肢を敢えて選ぶクズムーブさえしなければ、バッドエンドの2割から3割ぐらいは避けられる。

 他はまあ、例によって必要アイテムがないためのバッドエンドとか、運だめしや技術点判定の失敗によるバッドエンドとか、ダンジョン内でのトラップにハマってのバッドエンドが散見されて、他に本書ならではの展開では、重要NPCが見つけられなくてのバッドエンド(盗賊都市でのニカデマスさんと違って、きちんと情報を入手しないと簡単に見つけられないようになってる)が印象的でした。

 

アンヴィルから火吹山へ

 

 ふもとの村アンヴィルから火吹山の地下迷宮へ向かうのが、FFシリーズ第1作『火吹山の魔法使い』の冒険だった(1982年、邦訳は84年)。

 10年後、復活した魔法使いザゴールの高まる悪の脅威を取り除くために、暗い雰囲気のアンヴィル村から周辺地域を回り道して、再度、以前の痕跡をそれなりに残しつつも大きく様変わりした火吹山の地下迷宮に潜り直すのが、FFシリーズ50作にして最終作の意気込みで作られた『火吹山の魔法使いふたたび』である(1992年、邦訳は30年近くを経た2021年)。

 FFシリーズ10周年は、日本の翻訳シリーズ展開が終了したので、いっしょには祝えない状況だったが、そこから一世代を経た40周年は旧作復刻と新訳で、ともに祝えるお祭り気分を味わえたわけである。めでたい。

 その40周年記念作の公式71作品めが『巨人の影』である(2022年、邦訳はタイムラグ1年以内の2023年7月)。なお、ジャクソンの『サラモニスの秘密』と同時発売なので、どっちが70作品めかは迷うところだが、一応、70作品めが『サラモニスの秘密』とスカラスティック社は発表しているので、自分も以降は70作品め『サラモニスの秘密』、71作品め『巨人の影』として受け止めたいと思う。ただし、以前に逆順で書いた記事については、修正せずにそのまま残しておく。

 邦訳順は、リビングストンの『巨人の影』が先になったので、70作と71作の前後順は後々まで混乱しそうだな。

 また、ソーサリー4部作をシリーズに含めた場合、『巨人の影』を75作めと見なす数え方も公式にあるようだ。

 

 もう、ここまで来たら、歴代仮面ライダーとか戦隊シリーズの総数と似たような問題だな。

 仮面ライダーBLACKとRXを同一人物と見なすか、別キャラと見なすかとか、アマゾンズの扱いをどうするか、THE FIRSTやシン1号やBLACKSUNなど歴代ライダーの中に混ぜてもいいのか悪いのか、そしてGやノリダーなどの存在は黒歴史とかトリビアのネタになりそうとか、などなど。

 戦隊では、ルパンレンジャーとパトレンジャーが戦隊総数を勘定するときに問題になるだろうし、アキバレンジャーの扱いが文字どおりの非公認なのか、それとも番外編として公認されるのか、などなど。

 

 閑話休題。70作にせよ、71作にせよ『巨人の影』が『火吹山の魔法使い』および『ふたたび』の流れを受けた後継作品であることは間違いない。

 伝統的に、アンヴィルの村から発展した交易鉱山町より出発して、もはや昔話となった魔法使いザゴールの隠した遺産を見つける宝探し冒険からスタートする。

 陰鬱な『ふたたび』の冒険開始と比べて、アンヴィルは発展著しく、「大した名所も名物もない」と言われた頃から(一番の名所が、命知らずの冒険者しか訪問者がいないであろう火吹山)、ドワーフの鉱夫が帰ってきて、さらに「異教平原の交易路の東方拠点」となるべく常設市場が開かれて、何だかすごく変わったな、と歴史の流れを感じる次第。

 

 闇の魔術師に恐れ慄く暗い時代は去って、明るい平和を享受しているのが40周年記念のアンヴィルである。

 そこにやって来た新たな冒険者が主人公である。「火吹山の隠し部屋の地図」と、金貨50枚を前の冒険で入手したが、代わりに愛用の剣が折れてしまった。そこで、アンヴィルの町で良い剣を買い求めてから、「ザゴールの隠し財産」を入手するために冒険を始めることになる。

 お宝探しは、1作めのオマージュである。同じ宝探しから世界の危機を救う話にシフトする『危難の港』と比べても、別に食いつめて底辺に落ちたわけでもないので、町の発展とともに開始時の雰囲気は明るい。

 新しい武器を買い求めるのも、金はあるのでワクワク買い物を楽しめば、それでいい。

 

 え? いきなり、武器屋の主人を攻撃して、自分から逆境に飛び込む選択肢もあるの? 

 なお、その選択肢を選ぶと、運が良ければ【悪魔の剣】なんてゲットできて、【悪魔の短剣】を折ってしまったリーサン・パンザの物語を受け継ぐこともできそうだが、『死の罠の地下迷宮』送りになった彼のIFストーリーとして、本作をプレイするのもありか。

 

 実は近年のリビングストンは、前作を受けての次作って感じで、物語に分かりやすい伏線を混ぜて来ることが多い。旧作との懐古リンクも目立つが、新作間での橋渡しも多くて、そういうつながった要素を振り返ってみるのも何だか楽しい。

 例えば、『危難の港』では、復活したザンバー・ボーンを倒して、次は『死の罠の地下迷宮』もいいかも、ってエンディングを迎えたと思ったら、

 次の『アランシアの暗殺者』では、ザンバー・ボーンを倒されたことに対する報復と、最後は本当に『死の罠の地下迷宮』送りの刑にされた感じのラストに話がつながる。

 そして、同作ではカアドの街からファングに向かう際、途中まで送ってくれる旅人がいて、「アンヴィルに用事があって」という貴婦人とか、「火吹山に用事がある」という騎手との遭遇イベントがあった。

 ええと、これを初めて読んだときは「アンヴィルみたいな田舎の村とか、火吹山とか、そうそう好き好んで行く場所じゃないだろう?」なんて感じたりもしたけど、それは『ふたたび』のイメージが強かったからで、実は『巨人の影』につながる伏線だったのでは? と後から考えるようになった次第。

 で、「交易街として発展しているアンヴィルとか、火吹山の隠し部屋」とか知ると、話をつなげたくもなる。実は、リーサンを送ってくれた騎手が、続編の主人公で、彼が「隠し部屋の地図を入手したから、そこに向かおうとしている」なんて連想が思い浮かんで、実は新旧主人公の邂逅の場面だったんだと考えると、気分は番組改編期のノリである(シリーズ恒例の最終回バトンタッチの儀)。

 交易路沿いに設けられた宿屋〈オットーの基地〉で選択肢が分かれ、北のファングに向かえば『死の罠の地下迷宮』ルートで、東のアンヴィルに向かえば『巨人の影』ルートに突入するって想像も面白いな。

 そして、アンヴィルが交易拠点なら、その途中にある〈オットーの基地〉も中継地点として商売が十分に成り立つと納得を深めるに至った。

 『アランシアの暗殺者』と『巨人の影』は物語が直接つながっているわけではないが、作者の中の世界観では、ザゴールが滅びた後の異教平原の交易路設定がしっかりつながっていたことになる。都市間の関係を通じた作品世界のバトンタッチが発見できると、読み解くのが面白いということになる。

 

 すると本作から、2年後ぐらいに来るかもしれない新作がどうつながるかな、と考えると、やはり気になるのは壊滅したという噂のストーンブリッジのその後だな。後で相棒グースが伝えることになるストーンブリッジ壊滅の報は、主人公が直接現場を見たわけではないので、どの程度の被害なのかが定かではない。

 次の冒険が「最近の災害で大きな被害を受けたストーンブリッジを訪れた主人公」で始まると、キタコレ感があるだろうし、ライバルのマイアウォーターとストーンブリッジの確執を描いた冒険でもいいな。

 まあ、何にせよ、ストーンブリッジがどうなったか、このまま放置されたままだと、もやもやが晴れないので、ストーンブリッジの再興物語を希望しておく。

 

 順番は前後したが、本作はドワーフ受難の物語である。

 火吹山探索のために、主人公は迷宮の洞窟に詳しいドワーフの同行者を連れに選ぶんだが(雇い賃が安い方のドワーフは詐欺なので注意)、短い探索の末に発見したザゴールの遺産である〈混沌の王冠〉を身につけた際(主人公が身につけるとゲームオーバーなので注意)、ザゴールにも制御できなかった古の魔力が発動してしまう。

 迷宮の外に出て太陽の光を受けることによって活性化した〈混沌の王冠〉の魔力。そこに装着されていたオブジェである4つの戦士像が外れて、その場で5メートル大に巨大化。襲われた主人公は慌てて巨人像の攻撃を逃れるため、洞窟に戻るが、さらに10メートル大に成長した鉄巨人たちは異教平原の西に向けて、遮るものを破壊しながら進撃して行くのを為す術なく見つめるしかできなかった。

 〈王冠〉の呪いを身に受けたドワーフは、苦しい息の下で「鉄の巨人はアランシアを破滅させる。王冠をハーメリンのマリク・オム=ヤシュに届けるんだ。そいつが力になる」と言い残して死亡。そこで主人公は南東の街ハーメリンに向かうことになる。

 なお、ゲームブックの文では、パラグラフ146および352の両方とも、「南西のハーメリン」と記されているんだが、これってミスだよね。翻訳のミスなのか、原書のミスなのかは知らないけど、ハーメリンは火吹山より東方の地ケイ・ポンの南、月岩山地のふもとにあるんだから、南東が正解。

 ともあれ、巨人の後を追って行けば、ストーンブリッジ壊滅の悲劇を目撃できたんだろうけど、今回は西ではなくて東へ向かう物語だったから、NOVAにとって初訪問となるケイ・ポン付近の都市を目指すことになった次第。

 

ハーメリンの街

 

 道中いくつかあるイベントは割愛して、到着したハーメリンの街はお祭りで大変賑わっていた。

 ここから目的のマリク・オム=ヤシュを探す街の散策が始まるわけだけど、雰囲気としては「明るいブラックサンド」と例えても許されるぐらい広くて、いろいろなイベントや道行く人々との遭遇があったりして、都市内探索(シティ・アドベンチャー)が楽しい。

 最近は、チャリス、カアドにブラックサンドっぽい都市臭を感じて、中世ヨーロッパのごちゃごちゃした猥雑な都市の雰囲気を楽しんでいたんだけど(さすがにブラックサンドほど野蛮じゃない)、チャリスはブラックサンドよりも上品な佇まいもあって、上流階級と下層階級の格差が地区によってずいぶん異なる感じ。カアドは前に訪れたときは疫病に見舞われていたけど、都市としては割とのどかな雰囲気だったのが、30年経つと様変わりしていて、結構ごちゃごちゃと建物が増えて、ブラックサンド風になっていた。まあ、アズール卿と友好関係を結んで、都市計画なんかも参考にしたんだろう。

 ブラックサンドより、やや上品な、でも格差社会になってそうなチャリスと、

 ミニ・ブラックサンド的な発展を遂げている途上のカアド、

 それに対して、ハーメリンは祭りの影響からか、とにかく開放的で明るいイメージで、今まで訪れたアランシアの街で一番過ごしやすそうな雰囲気だった。まあ、まだ、街の暗部までじっくり見回ったわけじゃないから、表面的な印象に過ぎないのだろうけど。

 

 そして、こんな賑やかな街で、マリク・オム=ヤシュを探すのは結構、大変である。ニカデマスさんみたいに、適当に通りを歩いていれば労せず確実に橋の下にいるのが分かるような作りじゃない。

 うまく情報を聞いて、それに応じた選択肢を選んでいかないと、結局、見つけることができずに諦めて、巨人に無謀な対決を挑んでゲームオーバーとかになってしまう。

 でも、まあ、マリク・オム=ヤシュ探しを忘れて、賑やかな祭りの雰囲気を満喫するのも一興。正解ルートだけが冒険じゃないさ、と「攻略を終えて世界を守る物語を知った後」では、いろいろ回ってイベントチェックするのも楽しいものだ。たとえ、それがバッドエンドに通じるものだとしても。

 

 とにかく今はまだマリク・オム=ヤシュに至る道は書きません。

 ただ、彼が妻を亡くした後で隠棲した世捨て人のようになっていて、妻の墓参りの際に花を供える習慣があって、花屋の女性が彼の家を知っていることと、妻の名前やら享年(亡くなった年齢)が何歳なのか、とか道中で情報をいろいろ入手していないと詰むって話(情報源はいろいろあるので、頑なな一本道攻略というわけではない)。

 ええと、リビングストンの作品にしては、情報が結構大事で、数字情報からパラグラフジャンプをしなければいけない箇所が数ヶ所あって、読みながら関連パラグラフをもう一度探し直したり、数字を記憶しながら読んでたな。メモぐらいとっておくべきと思ったけど、今回はメモなしで十分覚えていられたので、普通に読み解けた感。

 

 さて、このマリクさんを誤って殺してしまわなければいいのだけど。パラグラフ309番の剣を突きつけて、威圧的なフードをかぶったイラストが露骨に怪しい。思わず、暗殺者と間違えて、応戦したくなる人物像です。何となく、『魂を盗むもの』のモルドラネスの表紙絵にも見えるし。

 なお、戦う際のキャラ表記は「フードの戦士 技術点11、体力点12」という非常に手強い相手でした。

 え? 戦士なの?

 完全に魔法使いだと思い違いをしていましたよ。

 〈混沌の王冠〉とか、ザゴールの伝承について大変に詳しくて、いわゆる賢者とか助言者を名乗れるぐらい博識で、しかも剣の腕が立つなんて、何て有能な御仁なんだ。

 引きこもりの隠者のイメージもあったけど、お会いしてみると毅然とした引退騎士って感じで、若い日は相当に冒険で慣らした風貌が素敵です。

 ちょっと、これまでのリビングストン作品ではお目に掛からなかったようなタイプの、いぶし銀の魅力があるおじさまって感じ。

 それだけに……ダンジョン探索で閉じ込められた主人公とグースを助けるために、呆気なく命を落としてしまうのが残念です。

 ズート・ジンマー、クロウ船長に次いで、リビングストン作品で惜しい人を亡くした、と思わせるキャラです。まあ、巨人をうっかり呼び出してしまったドワーフさんも残念だけど、どうも彼には世話になったって感覚があまりないんですな。

 もっとも、マリクさん、有能すぎて、生きていたら主人公の巨人退治の活躍を奪ってしまいそうに思われたのかな。

 こちらとしては、最終決戦は主人公とグース、それにマリクさんの3人で挑んでもいいな、と思うし、できればニカデマスさん同様の隠居賢者として40周年過ぎた後の、新時代のFFの名物キャラになるのかな、と期待していたんだけどな。

 マリク・オム=ヤシュ、アランシアを救うために、主人公に希望を託して逝った凄腕剣士よ、奥さんとあの世で再会できることを祈ってます。

 

ゴルゴンの墓所

 

 マリクさんから教わった鉄巨人打倒法。

 頑丈な装甲のために剣が通用しない相手を倒すには、「鉄を錆びさせる甲虫ラスト・ビートル」を巨人の関節部に仕込み、錆びた関節を破壊すれば、自重を支えられなくなって倒れる。動きを封じれば、後は勝手に錆が広がって朽ち果てる、といった感じ。

 で、そんなラスト・ビートルがいるのが、「ゴルゴンの墓所」と呼ばれる月岩山地のダンジョンですな。

 ええと、ゴルゴン対策に鏡が欲しい、と思いましたが、マリクと会った後では、買い物のチャンスがありません。欲しいものがあれば、マリクと会う前の散策中に買っておきましょう。ただし、今作では鏡を入手する機会はないので、代用品(磨かれた盾とか)で何とかしないといけませんが。

 

「用事(亡き妻の墓参り)があるので、先に行ってくれ。私も後で追いつくから」と言ったマリクに暇を告げて、「ゴルゴンの墓所」を目指すことにする主人公。

 でも、ハーメリンを出る前にしないといけないことが2つ。

 1つ。助けを求める老婆を助けること。彼女のイベントを解決すると、巨人戦での必須アイテムである指輪を入手できます。ただし、そのイベントを解決するためには、蜘蛛油をどこかで買っていた方がいいですね。

 もう1つ。老婆イベントを終えた後で、相棒キャラのグースと出会います。

 

グース「大変だ! この街に鉄の巨人が迫って来るぞ。俺は見たんだ。あいつらのせいでストーンブリッジは破壊された。手遅れになる前に何とかしないと!」

 

 そんなグースの言葉をハーメリンの人々は嘘だと決めつけ、信じようとしないのですが、主人公までもが信じないなら、バッドエンド確定です。

 「実は、その巨人を起動させたのは俺の連れなんだ」とまでバカ正直に打ち明ける必要はありませんが、「実は、その巨人のことは俺も見たんだ。だから、対策を講じているんだよ。今から『ゴルゴンの墓所』ってダンジョンに向かうところなんだ」と言ってやると、グースは「俺も連れて行ってくれ。こう見えても、俺は敏腕の狩人だ。役に立つぜ」と同行を申し出てくれます。

 じっさい、このグースは3枚目のお調子者の風貌ですが、嫁候補のハカサンとはまた違った魅力的な相棒キャラになってくれます。

 ええと、美少女ゲームの「主人公の親友ポジション」の情報通みたいなキャラ? この後のダンジョン探検は「墓所」と名がつくだけあって、本作では珍しく陰鬱な場所ではあるのですが、陽性キャラのこいつが同行してくれるおかげで、ちっとも雰囲気が暗くならないわけで、サー・リビングストンがいかにこの作品を「過酷な事件を描いているのに、明るい作品として提供したいか」が感じ取られますな。

 リビングストンさんも良い意味で、丸くなったものだ。

 

 そして、このゴルゴンの洞窟の攻略法は、今回は書きません。

 自分で読み進めたときは、十字路に出会って3つの分かれ道の真ん中に進みましたが、たぶん適切なアイテムさえ持っていれば、どちらに進んでも攻略可能だと思います。ダンジョンで道を間違えたから即座にバッドエンドとなるような構造ではないようですね。

 ただし、この道が楽とか、この道の攻略にはこうする必要があって難解とか、遭遇する敵が強いとかはあるでしょうが。

 ともあれ、ダンジョンの奥のボスは2体。即死毒を持った蛇の王コブラクス(技10、体10)と、そしてゴルゴン(技10、体10)。この危険な2連戦が本作での通常戦闘で戦える実質的なラスボスになります。つまり、技術点10に対抗できる程度の技術点が必要になるわけですね。こちらの技術点9以下だと、かなり厳しい戦いになるわけで、最低でも技術点10が欲しいところ。

 あと、こいつらの特殊能力に対抗するためのアイテムを道中に入手していないと、非常に厳しいバトルになるわけで、その辺はアイテムゲーのリビングストンらしいところ。

 

 アイテムと言えば、このゲームでは愛用の剣が複数手に入り、それぞれが特効があり、特定の敵に攻撃力+2のボーナスが付いてきて、どの剣を装備するかが一つの攻略ポイントになったりします。剣を複数本装備することはできないので、新しい剣を入手したら、どちらを選ぶか考えないといけません。

 ラストの巨人戦で一番強いのは【竜の剣】ですが、【悪魔の剣】と【蛇の剣】が次点、最初に普通に買える【吸血鬼の剣】と【炎の剣】は巨人相手だと通用しにくいですが、道中のアンデッド相手に意外と役立つ【吸血鬼の剣】はラスボス戦を除くと結構お勧めだったりもして、あと逆境プレイを志したい人は、呪われた剣【ルーンの剣】がお勧め……していいのかな。

 ええと、この【ルーンの剣】は、使うたびに使用者の体力を1点ずつ吸収して、百害あって1利ありな剣です。この1利というのが、ラスボスの巨人に対して、【竜の剣】と同じ特効があって、呪われた魔剣ながらラスボス戦だけ本領を発揮という非常にドラマチックな代物。

 【ルーンの剣】で、この作品をクリアしたと言えば、一部のマニアからはおおっと賞賛されるんじゃないかなあ。まあ、NOVAだったら、勇者だと笑いながら賞賛しつつも、心の中で「あなたは奇特なマゾ勇者ですね、そこに痺れる憧れない」とネタツッコミ入れてそうですけど、そういうこだわりもまた一興。

 自分なら、「【吸血鬼の剣】から【竜の剣】に持ち替える」のが一番有利なんじゃないかなあ、と思っていますが、リーサン・パンザなら敢えて【悪魔の剣】を入手するのが記事ネタ的に面白いとも考えたり。選ぶ剣によって多少の有利不利はあっても、クリア不能にはならないですので。

 なお、もう一つバッドエンド専用の【嵐の剣】というのがありまして、ネーミングは格好良いんだけどなあ。

 

巨人との決戦

 

 ダンジョンボスのゴルゴンを倒しても、脱出するまでに、もう数回、難局を乗り越えなければいけません。

 しかし、ダンジョン攻略の最終局面で、駆けつけてきたマリクさんが命を落とすという悲しい局面に。

 

 それでも感傷に浸っている場合ではありません。

 ダークウッドの森の北から進路を変えた4体の巨人が、ハーメリンの街に迫っているのです。

 ええと、これはどういう仕組みで進路変更したのだろうか?

 アンヴィルがどうなったかは分からないものの、ストーンブリッジを狙ったのは、起動者のドワーフさんの縁深い場所だからかな? 死に際のドワーフさんが心で故郷のことを強く思ったから、ストーンブリッジにやって来たとか?

 その後、ハーメリンに来たのは……主人公の後を追って来た……というよりかは、主人公がマリクさんに調べてもらうために持って来た〈混沌の王冠〉の後を追って来た、と考えてみます。巨人だって永遠に動き続けるわけではなく、ある程度の時間が経過した後は封じられていた〈王冠〉に戻って来て収納される仕組みかもしれません。もちろん、その進路の途上にあるものは全て蹂躙しながら(爆)。

 

 鉄の巨人を制御する仕組みが判明すれば、いろいろと面白いことができるのかもしれません。

 4体の鉄巨人が合体して、超巨人アイアンキングになって悪い宇蟲人と戦ってくれるのかもしれませんが、そこまで悠長に研究している余裕はありませんし、あのザゴールですら解析に至らなかった代物を、魔法の素人の主人公が解明できるはずもありません。

 そもそも〈混沌の王冠〉に資格者の条件(古代の王家の血筋とか、古代語のコマンドワードとか、熱い正義の心とか、トリックスターの神への信仰心とか)が必要で、主人公にはその条件が満たせないのだとしたら……もう、破壊するしかありませんな。

 

 そう、仮称アイアンキングを倒すことができる切り札はラスト・ビートル。

 ええと、最後の甲虫じゃなくて、クラシックD&Dファンならご存知のrust、すなわち錆です。スパロボファンなら、マジンガーZのルストハリケーンを連想しても結構。ただし、英語の発音を間違えていて、ラストハリケーンが正式名称なのでしょうが、多分誰か(作者かパイロットの兜甲児)がローマ字読みして定着した。

 で、ラスト・ビートルとはすなわち、錆の兜虫、つまりはマジンガーZに通じるアイテムであるという強引すぎる曲解によって、アイアンジャイアントVS蟲に宿ったマジンガーという夢の対決を勝手に思い描いて喜ぶ男がここに一人。

 

 なお、キングオージャーにもつながるんですね、これが。

 王冠で起動する4体の鉄巨人に対して、切り札となる守護者はカブト虫と、あと蜘蛛の力を宿した指輪を駆使して戦う。

 そんな中で、技術点判定やら、運だめしやら、特殊な剣ボーナスを駆使した2Dによる独自判定ルールをいろいろ駆使して、グースと共に激しいバトルを切り抜けることができれば、ハッピーエンドに到達できます。

 ともあれ、巨人4体との戦いは、数多くのパラグラフにまたがる長期戦の様相を呈して、判定に失敗すると、蹂躙されたり、つかみ上げられて天高く投げ飛ばされたり、ちょっと他には類を見ないような対巨大怪物戦独特の死に方ができますので、ワクワクしながら戦ってください。

 きみの体力点が尽きませんように。

 

 まあ、巨人相手だと体力点の大小はあまり関係なくて、敵の攻撃を避けられるか、失敗して即死するかのどちらかです。

 とにかく、10m大の巨大怪物4体と一度に戦う経験は多分、FFでは初だと思いますし、他にもFFで初だと個人的に思うのは、相棒といっしょにダンジョン探索したり、相棒といっしょにラスボス戦をすることですな。前の相棒であるハカサンは、ダンジョンを出てから仲間になったし、クライマックスでは周囲の雑魚の露払い役に専念し、ボス戦には手を貸してくれなかったから。

 

 ともあれ、技術点や運点が低ければ、判定失敗=死の危険が大きいラスボス戦が相当キツくなるので、最低でも10以上は欲しいなって思ってます。

 

 それでは、今回はここまで。

 キャラ作りして、細かい攻略情報を載せた攻略記事はまたいずれ。

(当記事 完)