ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

D&Dの盗賊と吟遊詩人の話2

盗賊話のつづき

 

アスト「今回は盗賊話の2回めだ」

 

ダイアンナ「どんな話か期待しよう」

 

カニコング「ほう。帰って来たのか、クイーン」

 

ダイアンナ「ああ。元快盗団の女頭領としては興味あるからな。神前TRPGは来週からなので、少しは話に参加できる」

 

アスト「分かった。前回、盗賊の能力について、あれこれ話したが、何だかんだ言って盗賊の仕事は盗賊にしか行えない特殊作業が多い。ダンジョン探検中に、鍵のかかった扉があったり、罠が仕掛けられてそうな宝箱があれば、頼りになるのは盗賊だけだ」

 

ダイアンナ「まあ、魔法使いの開錠呪文(ノック)やら、僧侶の罠発見呪文(ファインド・トラップ)やらを使うって手もあるけどね」

 

アスト「呪文の使用回数に余裕があるならいいんだけどな。クラシックD&Dでは、それらの呪文はレベル2呪文で、経験レベルが3とか4で初めて使える。エキスパートの後半レベルになって初めて余裕があるぐらいじゃないか?」

 

カニコング「もしも、盗賊が鍵を開けられなくて、その扉を開けることがシナリオ攻略にどうしても必要ならば、どうするのでごわすか?」

 

アスト「そんなシナリオを作るDMが悪い(きっぱり)。とりあえず、DMとしては鍵開けが上手くできれば、ボーナスのお宝を得られる程度にして、シナリオクリアには影響しないように設定するか、あるいはダンジョンのどこかの部屋を探すなり、少し厄介なモンスターを倒すなりで合い鍵が手に入ることにして、盗賊の解錠が上手く行ったときだけショートカットが行えるようにするぐらいがフェアだと思うな」

 

ダイアンナ「鍵開けの再挑戦はできないのか?」

 

アスト「レベルが上がれば、再挑戦できるぞ。だから、巨大なダンジョン攻略に当たっては、開かなかった扉に地図で印を付けておいて、レベルアップしてから再度、鍵開けに挑戦して、その先を探索するなり、隠されたお宝を入手するって遊びも推奨されたのではないだろうか。とにかく、盗賊が扉を開けられなかったから詰むようなシナリオは、DMにとってもゲームを失敗させるリスクが大きいので、別の手で解決策を用意しておくように、というのは昔のシナリオ作成講座的な記事で読んだような覚えがある」

 

カニコング「開かない扉を力尽くでこじ開けるってのは? 体当たりで開けるとか、斧やハンマーで叩き壊すとか?」

 

アスト「盗賊が解錠作業に失敗したら、そういう手段に訴えるのもありだろうが、安易に能力値判定(D20で筋力以下なら成功)には頼らない方がいいだろうな」

 

カニコング「どうしてでごわすか?」

 

アスト「そりゃあ、盗賊の鍵開け成功率(初期レベルで15%)よりも明らかに成功しやすいからな。それじゃ盗賊の立場がない。やるなら%判定で筋力以下とか、一回試みるごとに大きな音を立てるからワンダリングモンスターを引き寄せるリスクがあるとか、うまくゲームバランスを考えないと……って、こんなことを昔のクラシックD&Dのユーザーはいろいろ考えていたもんだ。日本のTRPG黎明期はノウハウもないし、インターネットもないし、ゲーム雑誌にいろいろ載っていたアドバイスと、DMが独自に決めたハウスルールでそれぞれのゲームプレイをカスタマイズしたものだ」

 

ケイP『盗賊が失敗したときに、DMがどうすべきか? なんて考えてたッピか?』

 

アスト「そんなフォローを考えないDMもいたろうさ。『失敗したらしたで、考えるのはプレイヤーの仕事。DMはただ、そのアイデアを聞いて裁定するだけでいい』と考えるDMもいれば、『おそらくダンジョンのどこかに鍵があるはずだ、と君たちは考えた。盗賊が開けられなかったなら、鍵を探せばいい』とヒントを与えたり、そのことに気づけるように知恵(ウィズダム。現在は判断力と訳す)判定をさせるとか、まあ、いろいろなDMスタイルが卓ごとにあって、どれが正解とは言えないだろう」

 

ダイアンナ「とにかく、昔のゲームは、鍵をどうやって開けるかだけでも、あれこれ楽しめるネタになったってことだね」

 

アスト「ゲームブックでもよくあるよな。鍵に限らず、攻略必須アイテムや情報がどこで手に入るか、あれこれ考えるって」

 

ケイP『パラグラフの構造を調べるのは、実はダンジョン探索に似た楽しみがあるッピね』

 

飛び道具の話

 

アスト「さて、前回は盗賊の奇襲攻撃(バックスタブ)の話をしていたが、盗賊の攻撃力自体は戦士と大きく変わらないんだよな。両手用の大剣が使えないだけで、長剣が使える分、武器のダメージは片手剣使いの戦士と同じ。問題なのは、打たれ弱さ(低いHPと防御力)なんだが、HPについては最初のレベル1以外では、盗賊の成長の速さ(レベルアップに必要な経験点が戦士の約6割)もあって、大体、戦士よりも1高いレベルになったりする」

 

カニコング「戦士がレベル3だと、盗賊はレベル4でごわすか」

 

アスト「大体、経験点5000ぐらいでHPの期待値的には、戦士が13.5に対して盗賊10。僧侶10.5、魔法使い7.5。そして、成長の遅いエルフが実はHP期待値が最も低くなって、レベル2でHP7だったりする」

 

ケイP『クラシックD&Dのエルフは剣と魔法の両方使える魔法戦士キャラなんだけど、戦士並みの防御力に反して、HPがタイミング次第で魔法使い以下になってしまうという脆さが割と致命的な弱点だッピね』

 

アスト「ACがいくら良くても、戦士と肩を並べて積極的に戦うには心許ないのが事実だからな。まあ、鎧の制約がない分、AD&Dよりはマシなんだがな」

 

ケイP『クラシックD&Dは、職業や種族によって成長速度が大きく違って来るうえ、成長の遅さはHPの伸びが遅くなるため、実プレイでは最も厳しくなる局面があるッピ』

 

アスト「逆に言えば、成長スピードの速さこそが盗賊最大の長所と言ってもいい。とりわけ能力値のCON(強靭力)にボーナスが付けば、レベル分だけHPの伸びが良くなるので、意外と打たれ強くなったりもする」

 

カニコング「能力値次第では、前線で戦える盗賊も目指せるでごわすな」

 

アスト「戦士は筋力(ストレングス)が長所なので、筋力ボーナスが得られやすい。筋力が高ければ、接近戦の命中判定やダメージにボーナスが加算されるから、前線に出るには筋力ボーナス付きが望ましい。一方、盗賊の長所は敏捷性(デクスタリティ、器用さも兼ねる)だが、そちらは飛び道具の命中判定にボーナスを与える。だから、盗賊は前に出るよりも、後ろから弓矢を撃ってる方が望ましいわけだな」

 

ダイアンナ「だったら、そうすればいいだろう」

 

アスト「ここでもDMのルール採用が問われる。接近戦している相手に矢を打ち込むと間違えて味方に当てる危険はないかって。クラシックD&Dに誤射のルールはないので、そんなことは気にしなくていいのだが、アドバンストの方に誤射のルールがあって、そういう知識を雑誌なんかで仕入れた情報通のDMが『接近戦に入ると、味方に当てる危険があるよ』とか言って、飛び道具封じをして来ると、飛び道具が扱いにくい武器ということになる。まあ、誤射がある方がリアルだし、大抵の卓では誤射ルールが採用されたんじゃないかな。他の卓はよく知らんけど」

 

ケイP『敵が接近戦を仕掛けて来ないで、距離をとって遠隔攻撃を仕掛けて来る場合だけ、飛び道具を使う機会があったとか』

 

アスト「そういうシチュエーションをDMが用意してやれば、弓の出番もあったと思うが、弓の撃ち合いで不利になるのは大抵、魔法使いだからな。射撃戦を多用するDMの元だと、飛んで来た矢で魔法使いが一撃死って結果になりやすい。それを避けようと思えば、いきなり接近戦に持ち込む方が無難って話になるし、そこで誤射ルールを採用すると、盗賊が弓を使う機会が激減する。ゲーム内で一番、弓を使いやすくしようと思えば、誤射ルールはなしにして、敵はあまり弓を使わないようにすれば、接近戦している戦士に後衛から弓で援護攻撃するのが盗賊の仕事。ついでに魔法使いもダガーを5本ぐらい持ち歩いて投げてやれば、魔法を使い果たしたので戦闘中に何もできないという状況を減らせたと思うんだ」

 

ダイアンナ「誤射がなければ、後衛が飛び道具で前衛支援するという局面が普通ということか」

 

アスト「ダガーはD4、弓はD6だから、戦士の剣ほどはダメージが高くないけど、それでもサイコロを振って命中判定するだけで楽しいと思えば、何もせずに見ているだけという退屈からは解放される」

 

カニコング「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる。チリも積もれば山となる、でごわすな」

 

アスト「AC6のゴブリン相手なら、ボーナス抜きの攻撃でも1レベルキャラが出目13で当てられるから40%の命中率だ。敏捷ボーナスが+2あれば、命中率50%に上げられるし、おまけに弓矢は射程距離が長いから、接近戦中の味方を支援できるなら近距離の+1ボーナスが得られる。同じ能力ボーナスがあるなら、戦士の剣よりも盗賊の弓の方が命中率が高くて安定していることもあるわけだ。誤射ルールを採用しなければ」

 

ダイアンナ「盗賊が戦闘で活躍できるか否かは、DMがどういうルールを採用するかで決まって来るってことだな」

 

アスト「そして、盗賊のパーティー内での発言力も、それによって変わってくる。もちろん、演じるプレイヤーの性格にもよるが、D&Dロードスでの盗賊キャラ(ウッドチャックやフォース)は臆病ヘタレキャラの印象が強く(まあ、ウッドはヘタレに見せながら野心家の側面を後から印象づけたけど)、D&Dを使わなくなった第3部のライナとか、同じSNEのD&Dリプレイでも誤射ルールを採用せずに弓が撃ち放題の安田社長版リプレイ(ミスタラ黙示録)のリリックなんかは、勝ち気で強かな姉御キャラの印象が強い」

 

カニコング「と言うか、リプレイに限らず、フィクションの女盗賊は大抵が姉御キャラにならないか? おしとやかで大人しい性格の女盗賊キャラなんて想像できんでごわす」

 

アスト「逆に男盗賊は、ドジさが強調されて、風車の弥七よりも、うっかり八兵衛的なロールプレイをすることが多いかな。まあ、最近は盗賊キャラもルール的に強くなったおかげで、クールで陰のあるキャラも考えやすくなったが、旧世紀のTRPG界における男盗賊キャラはパーティー内での扱いが決してよろしくないイメージだ」

 

ケイP『でも、ロードス第2部のフォースは、小説版では吟遊詩人の顔を持つ美形で、後にライデンの義賊ギルドの頭領に大出世して、格好いいキャラに脚色されたッピ』

 

アスト「元のリプレイでは、女嫌いの美形で臆病。そして魔法使いなのに強靭力18で戦士並みのHPを誇り、キルケイオスの掛け声と共にダガーや杖で接近戦を平気で行う、D&Dではあり得ない無謀キャラのセシルに、『お前ももっとしっかり戦え』と熱血ツッコミを受けて、『あなたみたいに無茶なことはできませんよ〜』と泣き声をあげるのがフォースという印象だ」

 

ケイP『中の人は、戦士パーン→セシル、魔法使いスレイン→フォースということらしいから、第1部のキャラの性格と関係を職業を変えてもそのまま引きずっているらしいッピね』

 

アスト「で、ロードスの新作小説では、パーンもセシルも故人だということが明確に記されたわけだ。アラニア貴族の謀略で、暗殺されて果てたセシルの末路が残念だと思いつつ」

 

ダイアンナ「とは言え、100年後の世界だからエルフのような長命種でない限り、普通は死んでいるだろう?」

 

アスト「まあ、そりゃそうだが。スパークの子孫が主役で、カシュー王の子孫が敵役で、ディードリットが再登場するのが目玉の作品だったが、続きが出るのを願いつつ、盗賊かつ吟遊詩人というキャラでフォースを思い出した次第」

 

ケイP『ロードスの盗賊で、飛び道具使いというキャラはいなかったッピ』

 

アスト「しかし、D&Dの射撃武器には戦術上、大事な役割が想定されているんだよな」

 

カニコング「それは何でごわすか?」

 

アスト「敵の魔法使いにダメージを与えて、集中を乱し、呪文の発動を失敗させることだ。これもクラシックD&Dにはなくて、アドバンストからの引用ルールだが、呪文の詠唱中にダメージを受けると呪文は唱えられない。イニシアティブで先手をとれると、魔法使いに矢を撃ち込むことで呪文を妨害できる。個別イニシアチブのルールを採用しているなら、敏捷の高い盗賊は先手が取りやすいはずだから、敵の呪文使いを封じることが最大の仕事になる。これは接近戦担当の戦士には敵の前衛に阻まれてできない仕事だからな」

 

ダイアンナ「ダメージは少なくても、当てさえすれば、呪文の発動は封じられる。魔法封じこそ、盗賊のお仕事、と。まあ、魔法使いにとっては、盗賊が一番イヤな相手ってことになるね」

 

エキスパートとアドバンスト版バードの話

 

アスト「さて、ダンジョン内での特殊な作業が盗賊の見せ場だが、エキスパートルールになると、盗賊のできることが増える。まずはレベル4になると、リードランゲージ(80%)で魔法文字以外のあらゆる文字情報を解読できる。魔法使いも呪文を使えば、100%完璧にできることだけど、4レベル時点でその呪文を習得している可能性は低いし、パーティー内での言語解読の役割は盗賊の仕事となるのがエキスパートの初期時点だな」

 

カニコング「そういう仕事は、バードも得意としているのではごわさんか?」

 

アスト「そちらはアドバンストの話になるが、シーフの特殊技術の成功率はポイント割り振り制で自由にカスタマイズできるんだ。最初の1レベルで60%のポイントを各種の能力に割り振って(1つの技術には最大30%まで割り振れる)、固定値のクラシックよりも柔軟なキャラ作りが可能。レベルアップごとに30%ずつ割り振りポイントがもらえ(1つの技術には最大15%)、4レベルだと特定能力を最大75%まで向上させられるな。

「そして、リードランゲージは初期状態0%なので、4レベル時点で75%まで上げることは可能だが、一方でバードのリードランゲージは初期状態5%でシーフよりも高い。ただし、もらえるポイントが少なくて、1レベル時点で20%、以降はレベルアップごとに15%なので、結果的にリードランゲージに集中しても4レベルで最大70%にしかならないから、言語読解能力はシーフに劣ることになる。まあ、バードは魔法の呪文が使えるので、言語マスターになりたければ、コンプリヘンド・ランゲージ(AD&Dでは読解だけでなく聞き取りも可能。ただし書いたり話したりはできない)の呪文を習得すればいい」

 

ダイアンナ「純粋な技術ではシーフが上だけど、バードは魔法でフォローできる、と」

 

アスト「アドバンスト2版における盗賊技術の初期成功率は以下のとおりだ。シーフ/バードの順で表記している」

 

  1. オープンロック(鍵開け)10%/ー
  2. ファインド/リムーブドラップ(罠発見/解除)5%/ー
  3. ピックポケット(スリ)15%/10%
  4. ムーブサイレントリー(忍び歩き)10%/ー
  5. クライムウォール(壁登り)60%/50%
  6. ハイドインシャドー(隠れ身)5%/ー
  7. ディテクトノイズ(聞き耳)15%/20%
  8. リードランゲージ(言語読解)0%/5%

 

ダイアンナ「音を聞くのと言語系の初期成功率は、バードの方が上みたいだね」

 

アスト「割り振りポイントの違いで、そこに習熟した盗賊には勝てないんだけどな。もしもパーティーに盗賊とバードの2人がいれば、盗賊はバードにできない鍵開けや罠関連、隠密行動にポイントを回すべきなんだろうな」

 

ダイアンナ「バードには盗賊の代わりが十分務まるわけではないのだな」

 

アスト「バードが盗賊に比べて有利な点は、チェーンメールが装備できるので同じ能力値ならACが2良くなることだな。ただし、バードのもう一つの長所である魔法と鎧は両立できないので、戦士方面で活動するか、魔術師方面で活動するかを選ぶことになる」

 

ケイP『魔法は戦闘以外で使えるものを覚えて、戦闘場面では鎧を着て、他の場面では鎧を脱ぐという使い分けがいいッピ』

 

アスト「確かにな。そしてバード特有の能力として、インフルエンス・アザーズ(他者に影響を与える感情操作)というのがある。巧みな音楽や話術で場をコントロールする芸当で、大きく以下の3通りの使い方ができる」

 

・戦闘状態でないNPCの反応を変化させる。対パラライズST判定に失敗したNPCの反応を一段階ズラす。基本は敵対的→中立→友好的だけど、プレイヤーのロールプレイや状況次第では、敵対的→威圧的→警戒的→無関心→怯えて逃亡という反応もあり。

・戦闘中の味方を鼓舞する。効果時間はバードのレベルごとに1ラウンド。事前に3ラウンドの準備時間を費やすことで、味方全員の命中ボーナス+1か、ST判定ボーナス+1、大規模戦闘でのモラル+2の効果。

・相手の魔法の歌や声による特殊効果への対抗。対呪文ST判定に成功すれば、歌や音楽の力で、同種の魔法効果を無効化できる。

 

ダイアンナ「歌や音楽による支援効果を重視するなら、確かに戦闘中に他の魔法を使っている余裕はないな。戦闘中に何をするかの立ち回り方をしっかり考えた上で、キャラ構築する必要があるのがバードだ、と」

 

アスト「他にバードの特徴的な能力は、技能ポイントを費やさなくても、自国の歴史知識を備えていて、またレベル当たり5%の確率でマジックアイテムの機能を鑑定推測できるようになることだ。まあ、普通はアイデンティファイの呪文を使うんだろうが、そちらも術者のレベル毎に10%の成功率で、使用上のリスクがあるからな(ひどく衰弱するために8時間に1度しか使えない)。昔のD&Dはマジックアイテムの鑑定もルールどおりに厳密にプレイすると手間が掛かるってことだ」

 

ケイP『その辺を省略したいDMは、鑑定屋にお金を払ったり、多少の時間を費やした後で、鑑定結果だけをプレイヤーに伝えたり、よくある定番アイテムはその場ですぐに効果が分かったと裁定することもしばしばだッピね』

 

アスト「鑑定料を店に払うのがイヤなので、鑑定できるキャラを自パーティーで育成するとか、ゲームによって鑑定のやり方は様々だな」

 

ダイアンナ「今だったら、アイテム鑑定用のスキルなんかも普通にあるだろうがね」

 

アスト「ゲーム的に考えるなら、一般的なマジックアイテムは大した労もなく鑑定できて、アーティファクトとかレリックと呼ばれる類のレアな品物は、その機能を調べること自体が冒険の目的になるといった扱い方だな。まずはアイテムを見つけて、その効果も調べはついたが、使うためのコマンドワードが分からないので、それをさらに突き止めるために古代の文献を探し求めて、研究している考古学者の住居を訪れたら、何者かに拉致されていて……と話をつなげることができる」

 

カニコング「マジックアイテムの話はもういいでごわす」

 

アスト「良くねえよ。レベル10になったシーフは、90%の確率で魔法使い用の呪文のスクロール(巻き物)を使うことができる。アドバンストでも、シーフは75%の確率でスクロールの魔法を発動できるし、バードも85%の確率で同じことができる。つまり、高レベルのシーフは魔法を使って来る可能性があるんだ」

 

ダイアンナ「魔法の巻き物をDMがどれだけの頻度で出して来るかにもよるね」

 

アスト「近年、魔法の巻き物を多用する冒険者は、ゴブリンスレイヤーだな。彼はイラストではフルアーマーの戦士に見えるが、小説文章中では薄汚れた革鎧と鉄兜の盗賊(スカウト)技能の持ち主として扱われている。そして、彼のやってること(罠を設置したり、武器の選択や使い方)も戦士よりは盗賊そのものなんだよな。盗賊ギルドで情報収集したりもするし、師匠も圃人(レーア≒ホビット)の盗賊だしな。今、盗賊冒険者のモデルケースを考えるとゴブスレさんが一番参考にできるかもしれない」

 

盗賊ギルドと、クラシックから広がるD&D社会観

 

アスト「ゴブリンスレイヤーと言えば、冒険者ギルドから仕事を受注するシステムが確立している」

ケイP『冒険者ギルドは、ロードスリプレイの第2部が初出で、それは元々、アレクラスト大陸にあった「冒険者の店」というシステムをルーファスことカシュー王が持ち込んだという設定だったけど、ロードスの方には定着しなかったッピ』

 

アスト「小説では、悪の盗賊ギルドに親兄弟を殺されたフォースがカシュー王の裏からの支援を受けながら、復讐を果たしてライデンの街に義賊ギルドを設立したんだったな。だから悪の盗賊時代をシーフ、義賊の方をスカウトと称する、という公式設定があって、時代によって職業名が変わるという、ややこしい職業定義が為されている」

 

ダイアンナ「ソード・ワールドでは旧版がシーフ技能で、2.0以降がスカウト技能になったんだな」

 

アスト「旧版のシーフ技能が、2.0以降は盗賊技術のスカウト技能と軽武装での戦闘能力のフェンサー技能に分割されて、以降はファイター兼スカウトが冒険者の一つの定番になっている。ゴブスレもファイターとスカウトのマルチって設定だしな」

 

ケイP『旧ソード・ワールドで、ファイター兼シーフってのは無駄が多い組み合わせだッピ。だけど、シーフから戦闘技術を切り取ることで、盗賊の探索技術を持った重戦士というキャラも容易に作れるようになったッピね』

 

ダイアンナ「他のゲームへの影響はともかく、D&Dには冒険者ギルドなんて組織は存在しない。冒険者ギルドは旧ソード・ワールドの『冒険者の店』が起源ってことでいいね」

 

アスト「他には、コンピューターRPGウィザードリィ冒険者たちが集まる『ギルガメッシュの酒場』やドラクエ3冒険者を登録する『ルイーダの酒場』などが原型という考え方もできるな。ゲームとしてシステマチックに冒険者を登録し、パーティーに加入したり離脱できる場所として酒場が設定された。TRPGでは酒場兼宿屋に集まっている冒険者チームが、そこで情報を聞いて冒険のネタを仕入れるパターンが定番となる。その元ネタは、多くのヒロイックファンタジー小説にあるわけだけど」

 

ケイP『で、そのうち酒場の客との会話で冒険が始まる段取りをもっとゲーム的に簡略化して、酒場の壁に冒険のクエストやミッションのネタが張り紙されていて、自分の好きな仕事を受注できるシステムが実装されるッピ。90年代の半ばからゼロ年代には「冒険者のたむろする酒場で仲間を結成し、仕事を受注するシステムが定番化して、それを冒険者ギルドと呼称するようになって定着した」ようだッピね』

 

アスト「ゲームによっては、冒険者を総括する大きな組織をギルドと呼ぶこともあれば、プレイヤーが自分の仲間と結成するチームをギルドと呼称することもあるな。オンラインゲームでは後者のチームという意味のギルドが定義されて、同じギルドの仲間だと連絡が取れやすいとか、ギルドに参加していない野良冒険者だとパーティー結成だけでも手間どるとか、ギルドがクラブやサークル、あるいはベンチャー企業みたいな感覚で運営されているケースもあるそうな」

 

ダイアンナ「その意味では、あたしたちもウルトロピカル・ギルドみたいなものかな」

 

アスト「ギルドは元来、同業者組合とか互助組織といった意味合いだからな。歴史上にあるのは、商人ギルドや職工ギルドで、盗賊ギルドや冒険者ギルドはゲーム用語、あるいは現代のファンタジー小説用語。盗賊ギルドはD&D由来で、冒険者ギルドはソード・ワールドを始めとする日本独自のゲーム用語になる、と。前者は犯罪者組織で、後者は王国や都市と提携した半民間の冒険者管理団体のこともあれば、冒険者が独自に作った互助組織の場合もある」

 

ケイP『ベテラン冒険者がギルドマスターとなって、親しい友人とチームを結成し、アクティブに冒険を重ねていけば、ゲーム内でのイベントで活躍したり、ランキングの上位に君臨し、有名ギルドの参加者ってだけで箔が付いたり、ベテランが初心者を育成する環境ができたり、時にはギルドマスターとの仲がこじれてギルドを追放されたり、いろいろなラノベの題材になってるのが今だッピね』

 

アスト「一口に冒険者ギルドと言っても、作品によって意味が多様化しているよなあ。公の組織のギルドだったら、そこから追放されるのは余程のことだろうし(犯罪行為を働いたとか)、単に個人の冒険仲間という意味のギルドだったら、人間関係の不和とかイジメのレベルだろうし、広くは一つの街で冒険者ギルドは一つって世界もあれば、街に複数のギルドが乱立して別々に冒険活動を続けているケースもある」

 

カニコング「派生先の冒険者ギルドではなく、盗賊ギルドの話をするのが本題なのではないか?」

 

アスト「おっと、そうだった。さて、D&Dの盗賊ギルドは元ネタがファンタジー小説に類例が見られるが、盗賊に技術を教えてくれてバックアップしてくれる組織だ。ファンタジーの物語では、主人公たちに敵対する存在として描かれることも多いし、D&Dの公式シナリオでも盗賊ギルドが事件の背景に絡んできて、その尖兵とやり合うことも多い。盗賊キャラが『うわあ、ギルド相手かよ〜。ヤバいな〜』とか、ややこしい展開になったりもする」

 

ダイアンナ「そういう時にはどうするんだい?」

 

アスト「1.上納金もしくは詫び料を支払うことで、お目こぼしをしてもらう。2.ギルド内部の穏健派と仲良くなって、自分たちを敵視する派閥を牽制してもらう。3.悪のギルドに対抗する善もしくは中立のギルドに所属する……ってところかな」

 

ダイアンナ「犯罪組織なのに、善の盗賊ギルドなんてあるのかね?」

 

アスト「よくあるのは、王様の友人の密偵が仕切るギルドだな。日本で言えば、幕府に仕える隠密集団は体制側だし、盗賊を主人公にした時代小説の場合、悪い奴からしか盗まないという義賊ポリシーを持っていて、汚い仕事をする凶悪な盗賊の一味と対立関係になったりする。それが暗殺集団になれば必殺シリーズだし、必殺シリーズ第3弾の『助け人走る』は初期設定が殺し屋の話ではなくて、元盗賊の頭領に率いられた表と裏の人助け集団の話だ」

 

カニコング「日本では、時代劇の忍者や裏稼業が盗賊キャラやギルドのモデルケースになりそうでごわすな」

 

アスト「悪役組織としても、主人公を助ける影の隠密集団としても便利だし、80年代当時では、今ほどよく知られていない西洋ファンタジー世界よりも、よほど分かりやすいイメージソースだったからな。もちろん、『スターウォーズ』のジャバ・ザ・ハット一味とか、『ヤッターマン』のドロンボー一味とか敵役としての盗賊集団もあれば、『ルパン3世』とか『天空の城ラピュタ』の海賊ドーラ一味のような犯罪集団が主人公もしくは主人公をサポートしてくれる気の良い連中もいる。日本の盗賊ギルド像は、そういう物語の元ネタと交わりながら、ゲームで使いやすい冒険者ギルドに発展進化して行ったのだと思うな」

 

ダイアンナ「それにしても、盗賊ギルドだけ説明が丁寧なんだよね。戦士の目指す王侯とか、僧侶の所属する教団とか、魔術師の社会とかはあまり語られていないのに」

 

アスト「クラシックD&Dのエキスパートルールでは、ベーシックのダンジョンを出て、都市や野外での冒険をサポートする追加ルールや世界観の類例(後のミスタラ)が示されているが、戦士の背景は武器や鎧の扱いに長けた職業というだけで、世界観的に深入りはされていない」

 

カニコング「王国の兵士上がりや、傭兵、または騎士の子弟などが考えられるでごわす」

 

アスト「もしくは、たまたま剣術を流れの戦士に教えてもらった村の若者とか、辺境の部族出身で武芸の習得は部族の習わしだとか、いろいろな設定が考えられるからな。そこはDMの用意する世界観にもよる。まあ、ダンジョン探索ゲームでそこまでの背景は必要ないし、世界観が後付けなのがD&Dだからな。戦士の目指す中世ヨーロッパ風騎士道社会が本格的に提示されるのは、コンパニオンルールになってからだ」

 

 

ケイP『僧侶(クレリック)の所属する教団がどのようなものかの説明も、エキスパートまではないッピね』

 

アスト「単に公然と信仰されている善の宗教、邪神を密かに崇拝してある悪の宗教が示唆されている程度だな。一応、クレリックキリスト教をベースに神の奇跡的な呪文が記されているが、クラシックD&Dでは教義に踏み込むことは意識的に避けられている」

 

ケイP『モンスターリストにも、悪魔やデーモンの存在は割愛されているッピ』

 

アスト「精霊関係はあるんだが、宗教的な匂いのするものは当時のAD&Dでいろいろと物議をかもしたので深入りしないようになっている。やがて、クラシックD&Dの神さまは創造神ではなくて、英雄が昇格して成ったイモータルだとコンパニオンルールで再定義されて、改めて各地で信仰されてある土着の神々の名が提示されていくんだが、ルールブックの範囲では、クレリックは善の教団に信仰心を捧げている以外の設定が示されていない」

 

ケイP『そういうのは、後のワールドガイドでサポートするってことッピ』

 

アスト「いざ、サポートされると、最初のカラメイコス大公国では土着のトララダラ教会と、外から持ち込まれたジアティス教会の対立と融和・共存の歴史があって、ややこしいんだけどな。メディアワークス時代に邦訳されたシナリオでも、トララダラの神にまつわる遺跡を調べて、イモータルの祝福を受ける的な終わり方だったそうだし」

 

ダイアンナ「ルールブックは汎用のファンタジー世界に対応するように書かれてあるから、宗教観についての説明は一切なし、と」

 

アスト「神さまはオリジナルで自由に考えて下さいってスタイル。AD&Dの方では、古今東西の神話から、神や悪魔の設定をいっぱい書いたサプリメントを作ったら、いろいろとトラブったから、以降、リアルの神話宗教を持ち込まないようにしよう、という流れになって、その資料は後で日本のコンピューターゲームの『女神転生』の題材の一つにもなったという」

 

ダイアンナ「本国アメリカでやらかした案件が、違う文化の日本では独自に発展して、多神教の日本では問題なく受け入れられたってことか」

 

アスト「ぶっちゃけ、客観的に歴史を考察すると、神も悪魔も精霊も本質的に変わりないって方向性で世界観を作ったのがメガテンだけど、罰当たりなのは創り手たちも自覚していて、新作を作るたびに神社でお祓いをしてもらっていたってのが、日本人の標準的な宗教観にも思える。要するに自分の信じる神さまが許してくれるならOKと」

 

カニコング「メガテンでは、キリスト教っぽいLAW教会をメシア教団と称し、一方で日本神道とか多神教の混沌と自由を重視するCHAOSの方をガイア教団と称するでごわすな」

 

ダイアンナ「ちょっと待って。だったら、うちのガイア様はCHAOSの神さまだってのかい?」

 

アスト「もしかすると、そうかもしれんな。カニコングがドルイド修行をするのを認めるぐらいだし、リバTが自由と解放の女神を自称しているのも、本質においてはLAWよりCHAOS寄りなのかもな」

 

ダイアンナ「うう。宗教について踏み込むとややこしくなりそうなのは分かったような気がする」

 

アスト「そのややこしさの中で、どういう設定を取捨選択し、物語の素材として整理していくかが世界観構築って作業だと思うな。後付けでチグハグ感を覚える過程で、うまく整合性を見出していくとか、噛み合わないものを異端としつつ、その異端に与する者の切り捨てられた怨念や因縁を裏設定として網羅できれば、そこも深みのある物語の素材になる……かもしれない」

 

ケイP『今回の物語では採用できなかったけど、違う物語の設定に使えるかもしれないから、念のために設定ノートに書き留めておこう……ってことを創作家は日常茶飯事で行っているッピな』

 

アスト「そういうのが引き出しになるんだが、さておき、盗賊ギルドに話を戻して……」

 

 

ダイアンナ「ところで魔術師ギルドってものはないのか?」

 

アスト「魔術師は、クラシックD&Dでは師匠と弟子の関係で、盗賊以上に裏の人間というか社会化されていないんだよな。社会の枠からはみ出たというか、超越した存在で、教会とも対立しがちだし、社会の表に出ようと思えば、宮廷魔術師という架空の職に就いて軍師もしくは内政の参謀役になるか、魔法学園という組織を権力者の庇護下で立ち上げるかだが……クラシックD&Dではそこまで組織化されていない」

 

ケイP『80年代当時は、どこかの土地に勝手に塔を建造するなり、地下迷宮に引きこもるなりして、いろいろと研究生活に邁進してる隠者って感じだッピ』

 

アスト「そして、たまに世界征服の野心に駆られたり、研究が暴走して周囲の土地に迷惑をおよぼしたり、権力者との人間関係がこじれたりした場合に、冒険者の討伐の対象になったりするもんな」

 

カニコング「SF世界のマッドサイエンティストの方向性が分かりやすいでごわす」

 

アスト「もちろん、サイエンティストではなく、スカラー(文系の学者)タイプの魔法使いだっている。中世では文系と理系が学問として細分化されていないし、危険な魔法の実験よりも古文書の解読や伝承の調査に力を注ぐタイプの魔法使いなら、周囲にあまり迷惑をかけないと思われ」

 

ダイアンナ「魔法が公然と研究されていて、魔法学園が公式に存在する国は、魔法国家として成り立って行くんだな」

 

アスト「クラシックD&Dのミスタラでは、後にグラントリ公国連合とか、壮大な魔法帝国アルファティアという設定が示されて、魔法国家の類例となっているが、とにかく魔法が支配した社会というのはいろいろぶっ飛んでいて、話を聞くとワクワクする反面、実際にゲームで扱うにはゲームマスターにもプレイヤーにも熟練と想像力を要求する代物だ」

 

カニコング「リアルで実例がないでごわすからな」

 

アスト「魔法が支配する世界では、神々を信仰するクレリックの方が異端となって、見つかり次第、投獄されるというグラントリの設定がなかなか酷くて、D&D一般の冒険の舞台としては扱いにくそうだな」

 

ケイP『ソード・ワールドでは、古代魔法文明って感じで、魔法が支配した世界を提示しているッピ』

アスト「2.0で、いよいよ魔法文明に光が当てられた……と思った直後に、2.5に版上げされたから、その世界観はあまり深堀りされることなく終わった感がある。とりあえず、紹介だけしてみたので、後は興味を持ったGMさんやプレイヤーさんがご自由にって感じで、公式サポートは為されていない」

 

ケイP『代わりというわけではないけど、2.5では魔法学園ものをプレイするための地域サプリが出たッピね』

アスト「公式は素材を与え、それを元にどういうプレイをするかはユーザーに委ねられているのが、TRPG業界ってものだな。そして、公式は飽きられないように、プレイを活性化させるため、およびユーザーの好奇心を満たすための新製品を定期的に提供する」

 

ダイアンナ「そして広がったイメージソースが、次の冒険や記事のアイデアになっていくわけだ」

 

 

アスト「さて、別の職業は後のルールブックやワールドガイドでフォローされていくんだが、盗賊の所属する盗賊ギルドだけは、どのファンタジー世界でも適合するように『どこの大都市でも盗賊ギルドがあって……』と説明されている」

 

ケイP『王さまとか騎士は、王国でない商人の都市では使えない設定だけど、盗賊ギルドに相当する犯罪者の同業組合は、おおむねどこにでもあるッピ』

 

アスト「つまり、盗賊だけは社会との関わり方がエキスパートルール時点で、しっかりルール化されてあるんだな。まあ、ドラゴンランスの世界では盗賊キャラが自由気ままな種族のケンダーであるため、ギルドの存在がいまいち不明瞭だし、レルムを舞台にした映画はハーパーズが盗賊ギルド的な秘密組織として大きな役割を示している」

 

ケイP『ハーパーズは盗賊じゃないッピ』

 

アスト「犯罪者ではないけど、正義を尊ぶ超法規的な秘密結社という意味では、善良・中立サイドの義賊ギルドと言っていいだろう。まあ、ボランティア的な自警団だけど、利益団体ではないので、報酬はくれないらしい」

 

ダイアンナ「そうなのか?」

 

アスト「映画では、そういう理由もあって、エドガンは妻の死を機に正義の志を捨てて、ハーパーズを脱退して、アウトローの道を歩んだそうだが、今のD&Dのフォーゴトン・レルム用背景でハーパーズは『組織の工作員』として定義されている。また、エドガンの仲間のドルイド娘のドリックも『エメラルド団』という別の組織に所属していて、こちらは自然を尊ぶエコ集団なんだけど、中央集権政府のないソード・コースト地方では各種の秘密結社や陰謀組織が協力したり、対立したりで面白いことになっている」

 

ダイアンナ「普通の盗賊ギルドはないのか?」

 

アスト「この地方の大都市ウォーターディープにはあるし、バルダーズ・ゲートや南の商業国家オームー(アムン)帝国にもあったな。先日の映画には登場しなかったけど、ネヴァーウインターにも普通にあるだろう。ただ、普通の盗賊ギルドよりも、レルムではゼンタリム(黒の組織)という国際的な犯罪結社の方が恐るべき敵として描かれがちだな。地元の犯罪組織は、街そのものを破壊することは考えないが(自分たちの生活の場を破壊することは得にならないので)、外国の勢力は平気で街の崩壊などの大規模テロ活動を行うから、厄介極まりない。そういう外部の敵が暗躍していれば、それを阻止するために地元の犯罪結社がプレイヤーキャラの味方をしてくれるケースだって十分、考えられる」

 

ダイアンナ「なるほど。その世界観ごとの対立関係をあれこれ考えるのが、物語を面白くするわけだな」

 

アスト「クラシックD&Dの盗賊ギルド設定は、後の発展していく世界設定の秘密結社、冒険者支援組織もしくは敵対組織の両面に通じる土台みたいなものだな。ただのモンスター退治から、人間社会の冒険ドラマを彩る陰謀劇に物語が発展する可能性を秘めた、社会の暗面を示した設定だと」

(当記事 完)