ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「アランシアの暗殺者」攻略記(6)

とうとう最終回

 

NOVA『FFコレクション3発売記念の短期集中連載記事……みたいな攻略記も、ついに最終回だ』

 

アスト「プレイ中に不慮の事故で死ななければな」

 

NOVA『もう大丈夫だと思うんだけどな。まあ、バトルはあと1回あるので、絶対に死なないとは言いきれないんだけど。最悪、相手のダイス目が12ばかりで、こちらのダイス目が2ばかりだと、どんなザコが相手でも勝てないわけで。そこまでの不運は、36分の1の2乗で、1296分の1。1戦闘でずっとそうなって死んでしまう可能性は限りなくゼロに近い』

 

アスト「可能性がゼロじゃなければ、いつか実現することだってあるんじゃないか? 諦めずに挑戦し続けろよ」

 

NOVA『どうして、自分のキャラが不運に死んじゃう可能性に挑戦し続けないといけないんだよ!? 勝ち目のない相手に挑戦し続けるならともかくよ。例えば、アーロックの「おんぼろボートVSネズミの高速艇」のバトルは、明らかに不利な戦いだったが、そこだけ戦闘を繰り返して、5回負けて、6回めでやっと勝てた。勝率6分の1だけでも、繰り返すのはうんざりなんだよ。そんな戦いを避けることができず、クリアに必要なアイテムを入手するのに絶対に行わなければならない(しかも、キャラの能力値の高さとは関係なく)だけで、ゲームバランスの破綻したクソゲーなのは明らかだ』

ダイアンナ「80年代のコンピューターゲームには、そういう攻略不能に近いゲームがたくさんあったと噂に聞くぞ」

 

NOVA『とにかく、パラグラフ選択で正解を選ばないといけないゲームなら、正解を知ることで攻略できる。強敵とのバトルでも、キャラの能力値が高ければ、あるいは戦術をうまく工夫すれば(FFゲームブックの場合、アイテム使用を除けば、戦闘中の運だめしが戦術と言える)、勝てるゲームなら、いろいろ考えることを楽しめる。しかし、ひたすらダイス運だけの僥倖を期待しないと勝てないゲームってのはなあ』

 

アスト「プレイヤーがダイス目操作の技能を習得すれば、いいだけの話だ。自分の攻撃では、いい出目が出るよう祈り、相手の攻撃では悪い出目になるように呪いをかける。プレイヤーが気合いを入れれば、高い目が出て、力を抜けば低い出目になるように、ダイスを自分の意思と馴染ませることができれば、どんなに不利な戦いも覆せる」

 

NOVA『昔は、それができると信じていたんだよ。そして、自分がプレイヤーの時は出目を良くすることが、自分がGMの時はここぞというところで悪い出目が飛び出すように、癖がついたんだな』

 

ダイアンナ「そうなんだ」

 

NOVA『しかし、ゲームブックでは、自分で敵味方の双方のダイスを振らないといけないので、ダイス目のコントロールが非常に難しい。ましてや、アーロックの乗り物戦闘では、普段の2Dではなくて、1Dで低い目を出さないといけないからなあ。FF伝統の感覚とは全く異なるので、歴戦の鍛えたダイス目操作技能が意味を為さないんだ』

 

アスト「まあ、アーロックへの不平不満はこれぐらいにして、傑作ゲームの暗殺者退治を終了させるか」

 

NOVA『ああ。前にプレイしたのが「FFワーストゲーの不名誉称号を冠しても異論は出ないと思うアーロック」だったから、今作の評価は反動で通常よりも高騰していると実感するぞ。傑作ゲームブックの「七匹の大蛇」のエッセンスをより拡張した形で、しかも無人島サバイバルに始まり、広野の旅と都市冒険を見事に取り込み、足りない要素と言えば、ダンジョン探索ぐらいか。前作「危難の港」は、それすら網羅した大傑作で、今作はNPCの同行者がいない分、若干評価は下がるが、多彩なキャラ性と戦術で襲撃してくる13人の暗殺者との丁々発止のやり取りを味わえて、また違ったゲーム的かつ物語的な面白さを備えている。

『物語や展開のバラエティぶりは「危難の港」が上で、一方のゲーム性では「アランシアの暗殺者」が上で、どちらも楽しいゲームブックだ、というのが俺の評価だ。うん、プレイしていて幸せを感じられるゲームは良いゲームだよ。プレイ中に理不尽な展開が昂じてイラっとさせられることもなかったしな』

 

オットーの基地を出て

 

NOVA『前回はパラグラフ339番、宿屋の「オットーの基地」に宿泊して、主人のオットーと会話をしてから出発するシーンからだ。このオットー氏が、悪党が印象的なFFシリーズの宿屋の主人には珍しく、非常に親切で、陽気で、もてなし上手な人物と感じさせる。異教平原のこんな場所で、商売が成り立つのかと思っていたが、この辺を旅する客にはさぞかし好評なんだろうな。ええと、前に宿屋に泊まったのって、いつぶりだっけ?』

 

アスト「そんなのオレが知るか!」

 

NOVA『ちょっと振り返ってみよう。ええと、クロウ船長と最期の晩餐を行なって、翌朝、蛇島を出航した。海賊に襲われて脱出してから、ブラックサンドを経由して、赤水川沿いを暗殺者に襲われながらの殺し旅を続けた。その間、一回でも夜が来て寝たっけ?』

 

ダイアンナ「ガランカ・ヴァッセルの泊まっていた宿に立ち寄らなかった?」

 

NOVA『ああ、〈背たかトムの宿〉か。確かに寄ったんだが、情報を聞いただけで、すぐに出発したから、宿泊はしていない。つまり、蛇島を出発してから、たった1日で暗殺者3号から11号までの9人を退治して来た殺し旅だったんだな。プレイヤーの体感時間は1週間ほどだが、リーサン・パンザは1日でここまで来たわけだ。クロウ船長が亡くなって、島を出たのが昨日の朝だって信じられるか? って気分だよ』

 

アスト「『危難の港』は寝泊まりと食事シーンの多い旅だったけど、本作は食事が蛇島だけで、後は1日でいっぱい保存食を食べて、体力補給をしている物語なんだな」

 

NOVA『1日の移動距離もずいぶん多いような気がするが(速足効果の【エルフのブーツ】のおかげと個人的に解釈)、それももうすぐ終わりだ。オットー氏の宿で1日の疲れを癒し、美味しい朝食をいただいてから、ファングに行く予定だと伝えると、コク川を渡るための渡し守を勧められた。川を泳いで渡るのは危険らしい』

 

コク川を越えて

 

NOVA『道沿いに北へ進むと、昼近くにコク川のほとりにたどり着いた。川幅は広く、流れが速いので、泳いで渡ることはできそうにない。近くの小屋には、「ファングの渡し場」と書かれていて、中を覗きこむと、男が死んでいた』

 

アスト「何だと?」

 

NOVA『のどかな気分が吹き飛び、中に入ると、男の背にダガーが突き刺さっていて、辺りは血の海。男は血文字でダイイング・メッセージを残していた。「ジードルを捕まえろ」という警告に、暗殺者12号の臭いを強く感じたリーサンは、渡し船の呼び鈴を鳴らした』

 

渡し守『おはようございます。ファングの渡し守、ジードルと申します。金貨1枚で向こう岸までお送りしましょう。川のこの辺りは、肉を食うスナッパー魚がうじゃうじゃいるので、泳ぐのはよした方がいいかと』

 

アスト「なるほど。暗殺者のジードルが渡し守に成りすましているってことか」

 

NOVA『このまま船に乗ると、三途の川の渡し人として、パラグラフ77番のバッドエンド送りになってしまう。暑いから、水をどうぞ、と言って水分補給したら、中に寄生虫デビル・バグの幼虫がいっぱい入っていて、腹痛で死んでしまう。だからと言って、泳いだらスナッパー魚の餌食だ。ここで取れる選択肢はただ一つ。問答無用で、ジードルを殴りつける(132)』

 

★サソリ会第12の刺客「ジードル」

 コク川の渡し守を殺して、成り代わっていた貧相な男。

 しわだらけの老人で、羊毛の帽子と黒いセーターを身につけて、いかにも無力そうで卑屈に装う演技をしているが、実際に戦闘力はほぼなく、13人衆の中では最弱。正体を見抜けば、戦闘にすらならずに、川に突き落とされて、スナッパー魚の餌食になる。

 武器を抜かずに、拳で殴りつけるだけで、戦闘終了する呆気なさよ。

 ダガーによる奇襲と、バグ入り水を飲ませるという搦め手のみで相手を仕留める、暗殺者らしいと言えば老獪なベテラン暗殺者とも言える。腕っぷしに頼れない分、演技力には磨きをかけているが、殺した渡し守とリーサンの両方にうっかり自分の名前「ジードル」を明かしてしまったのが運のつき。

 まあ、犯罪者にはどこか承認欲求みたいなものがあって、何らかの形で自己アピールしたくなる習性があるらしいけど。

 なお、演技派らしく、「(川で泳ぐといった主人公に)信じられないと言うような表情」「ダガーを口にくわえて、ニヤリと笑みを浮かべる」「サカムビット公やファングについて陽気におしゃべり」「(水を飲んだ主人公に)忍び笑い」「スナッパー魚に襲われて恐怖の表情」「悲鳴をあげながら、水中でぐるぐると回る」などと短い登場シーンで、多彩な表情と演出をこなす。必殺で言えば、故・津川雅彦さんに演じてもらいたい悪人ぶりが個人的に当たりキャラ。

 

NOVA『そんなわけで、渡し人から橋掛人として、冥府に送って差し上げられたジードルさんだった、とさ』

 

アスト「渡し人とか、橋掛人とか、津川雅彦さんとか、マニアックすぎるネタで説明するなよな」

 

NOVA『大丈夫。興味を持った読者が、検索すればいいだけの話だから。渡し人も橋掛人も仕事人の合間を埋める13回シリーズだから、13人の暗殺者を倒して回る本作の最終回を飾るちょうどいいネタだし。ともあれ、自ら櫂をとって渡し船を漕いで、コク川の向こう岸に渡るリーサンだった。いよいよ、ファングにて最後の決戦だ!』

★リーサン・パンザ

技術点11、体力点16/18、運点12

 

武器と防具:悪魔の短剣(メイン武器)

      守護者の盾(技術点+1)

      アストラルソード(技術点+1)

      力の腕輪(技術点+3)

      チェーンメール(技術点+1)

      マンバの腕輪(技術点+2)

      弓矢+矢6本

      ダックスの斧

消耗品:保存食2食、回復の指輪(体力6点回復)

お金&宝石:金貨27枚、銀貨1枚、ルビー、ダイヤモンド2、オパール6、エメラルドの指輪

サソリマークの首飾り:12

その他所持品:ロープ、エルフのブーツ、万能袋、骨のサイコロ2個、時間歪曲の指輪、致死毒入りの小瓶

 

最後の刺客ウルズル・アイアンフェイス

 

NOVA『渡し船を桟橋につないで、上機嫌でファングに続く荷馬車道を歩いて行くリーサン。しかし、ファングの正門に到着しようというとき、最後の刺客が行く手に立ち塞がった』

 

フルフェイス鉄兜の巨漢『待っていたぞ。きさまが来ることは分かっていた。暗殺者を大勢倒したようだな。だが俺を倒すことはできん。究極の暗殺者だからな。俺は狂戦士(バーサーカー)のウルズル・アイアンフェイス。きさまの首には懸賞金がかかっていて、為されるべきことがあるなら俺がやるしかない。為されぬままにはしておけぬのだ。それがアズール卿との約束なのだから』

 

アスト「うおっ、何だか格好いい言い回しじゃないか。さすがはラスボスと言ったところか」

 

NOVA『うむ。同じ巨漢戦士という意味では、ガランカ・ヴァッセルの上位バージョンと言えるが、奴が下品なハゲなのに対し、こちらは狂戦士を自称しながら、何だか武人っぽい風格を漂わせている。ヴァッセルがカバトンなら、こちらは牛モチーフのミノトンだな』

 

ダイアンナ「今朝のプリキュアネタをいきなり使うとはね」

 

NOVA『ちょうどいい例えだからな。ミノトン、いや、ウルズルのイラストも牛の角を模した兜をかぶっていて、太ったミノタウロスみたいな外見だからな。武器は巨大なバトルアックスと盾だが、上半身は裸で、いかにもバッファローマンって感じだ』

 

●ウルズル:技術点12、体力点12

 

ダイアンナ「だけど、相手の方が技術点が1上なので、不利なんじゃないか?」

 

NOVA『ああ。だけど、奴との戦いでこっちが死ぬことはない。と言うのも、5ラウンド戦えば、イベントが発生して、戦闘が終わるからだ。奴の言ってる「俺を倒すことはできん」は、ほぼ事実。普通に戦闘すれば、どんなにダイス目が良くても、奴に与えられるダメージは2点×5で10点。12点の体力を削るためには、運だめしに成功して、与えるダメージを2点から4点にするしかない。それが3回続けば、運よく奴を撃退できるかもな。一応、最後のバトルとして、リアルに試してみるつもりだ』

 

・1ラウンド目:ウルズルの出目6→攻撃力18

        リーサンの出目4→攻撃力15

                           リーサンの残り体力14点

 

・2ラウンド目:ウルズルの出目6→攻撃力18

        リーサンの出目4→攻撃力15

                           リーサンの残り体力点12点

 

・3ラウンド目:ウルズルの出目9→攻撃力21

        リーサンの出目3→攻撃力14

                           リーサンの残り体力点10点

 

NOVA『ダメだ。3ラウンド全て負けっぱなしじゃないか。これじゃ、5ラウンド以内に3回運だめしに成功して、奴の体力を削りきることは不可能だ(シクシク) せめて一矢は報いておかないと、ダイス運の悪さが恥ずかしい……』

 

・4ラウンド目:ウルズルの出目9→攻撃力21

        リーサンの出目5→攻撃力16

                           リーサンの残り体力点8点

 

・5ラウンド目:ウルズルの出目9→攻撃力21

        リーサンの出目9→攻撃力20

                           リーサンの残り体力点6点

 

NOVA『すみません。やはり究極の暗殺者相手に手も足も出ませんでした。このままだと、完膚なきまでに叩き潰されてしまいます。一応、5ラウンド戦って生きているので、パラグラフ247番へGO!』

 

 バーサーカーの戦斧から繰り出される容赦ない一撃は耐えられないほどだった。超人的な力で斧を振るい、リーサンにできるのはせいぜい巨大な刃を愛刀と盾で受け流すくらいだった。しかし、盾は弾き飛ばされ、そのまま後退を余儀なくされ、木の根に足を取られてしまう。バーサーカーは満足そうな声をあげ、再び攻撃を繰り出した。最後の頼みの綱、これまで旅を共にしてきた〈悪魔の短剣〉で致命的な一撃を受け止めようとしたが……

 

 パリーン!

 

 まるでガラスを叩き割るかのような音とともに、サラモニス鋼が砕け散る。

 短剣を鍛えたサイクロプスのサイの顔を一瞬、思い浮かべて、リーサンはゴメンと呟く。

 愛刀の犠牲で致命傷は免れたが、かろうじて身をかわした太腿に深い傷を受ける(ダメージ2点。残り体力4点)。

 パラグラフ106へ。

 

アスト「〈悪魔の短剣〉が砕け散ったのか!?」

 

NOVA『ああ。「危難の港」以来、リーサンの愛刀として世話になって来たが、度重なる暗殺者との死闘で、限界が来ていたんだな。わずかながら文章をアレンジして、最終回らしいドラマに仕立ててみた』

 

ダイアンナ「でも、愛刀を失って、どうするのさ?」

 

NOVA『大丈夫。本作で入手した新たな武器アストラル・ソードがある。新機体が用意されているからこそ、旧機体の退場劇が描かれる。そして、〈悪魔の短剣〉に封じられていた悪霊のエッセンスはアストラル・ソードに流れ込んで、新たにリーサンを導く相棒になってくれるはず』

 

アスト「それはいいとして、この後の戦いはどうなるんだよ?」

 

NOVA『大丈夫。パラグラフ106番で、サプライズ・ゲストの登場だ』

 

 傷のせいで弱ったリーサンは、バーサーカーの獰猛な一撃の重さに耐えられず膝をついた。

 まだだ、まだ死ぬわけにはいかない。

 不屈の闘志を支えに、腰に差したもう1本の剣に手を伸ばそうとしたとき、突然、長髪の蛮人(バーバリアン)の姿が目に飛び込んできた。

 眼帯を着け、2本の投げ斧を手に持ち、街の門からこちらに走ってくる。そして、斧の1本をウルズルに向かって投げつけた!

 バーサーカーの背中に斧が埋まるドスッという鈍い音がする。

 蛮人はすぐに2本めの斧を投げ、それも命中した。巨漢のバーサーカーの体が束の間、ぐらぐらと揺れたかと思うと、前のめりに覆い被さるように倒れてきた。

 リーサンは何かに導かれるように、アストラルの刃を抜き放つと、巨体にズブズブと埋まる手応えを感じた。

 死体の重さがのしかかり、身動きがとれないまま、リーサンは達成感を覚えていた。誰かは知らないけど、思いがけぬ助っ人のおかげで圧倒的な強敵に一矢を報いることができたのだ。

 相討ちか。

 〈悪魔の短剣〉に導かれるように、13人の暗殺者を倒してきたが、ここらが限界だろう。

 相棒の剣を失ったのだから、自分の冒険もこれまでだな。

 最後にせめて、蛮人に礼の一言でも述べられるかな?

 

 そのとき、急にリーサンは体が軽くなるのを感じた。

 指に付けた装備品が淡い光を発して、全身の傷を癒している(回復の指輪で体力を6点回復)。

 

「おい、生きてるか?」ウルズルの死体を引きずってどかしてくれた蛮人が、リーサンに手を貸して立たせてくれた。

「おかげさまでね」蛮人の首に例のサソリマークの品がないことに安堵する。そして、13番めの首飾りをウルズルから回収した。これは暗殺者を撃退した証で、今の自分が生きている実感を味わわせてくれる。

 そして、安心すると、また腹の虫がグーと鳴ったので、さらに生の実感を味わうために、保存食を食べることにした(体力4点回復。残り体力14点)

 

「おいおい。いきなり飯かよ」蛮人は呆れたように半笑いを見せた。その人懐っこい表情に悪意はない。

「腹が減っては戦はできぬ。俺の戦いはまだ終わっていない」

 そう、アズール卿と最後の決着をつけないといけない。

 

「お前もそうか。迷宮探検競技だもんなあ」

 蛮人はスロム、とどこかで聞いたような名前を名乗った。ええと、どこだっけ?

 遠い記憶……ああ、チャリスだ。確か、〈蛮人スロムの埋蔵金〉という与太を信じて、異教平原を無駄に一ヶ月探し回ったような記憶があるが、ええと、スロムはあの時、すでに「死の罠の地下迷宮」で死んだと伝えられていなかったか? 

 記憶がどこか錯綜しているのを感じ、リーサンは【時間歪曲の指輪】のことを思い出した。

 もしかすると、この指輪が時間に干渉して、過去の世界から死んだはずのスロムを召喚して、自分の窮地を救ってくれたような話は……あり得ないか。

 結局、自分は生きてるし、目の前の蛮人スロムも生きている。

 暗殺者に狙われ続けたせいか、暗い死のことばかり考えた気がするけれど、回復の指輪と保存食で生を実感した以上は、今の現実をまっすぐ受け止めることにした。

 

蛮人スロムと、アズール卿、そしてサカムビット公

 

NOVA『本作は「危難の港」の後日譚として、ここまではプレイして来たが、そちらのオープニングでは、スロムは死んだ扱いなんだよな。また、時間軸では「盗賊都市」→「アランシアの暗殺者」→「死の罠の地下迷宮」→「危難の港」→「トカゲ王の島」と見なす方が、キャラの生死的に矛盾がないと現時点で思っているけど、まあ、作品間の矛盾はテキトーに脳内補完するといいと思う。

『そもそも、ここで登場したスロムについても、「死の罠の地下迷宮」とは矛盾があって、そちらでは2人組の蛮人で迷宮探検競技に挑戦している。もう1人の蛮人については、スロムの兄のクロムという裏設定が後に明かされたらしいけど、本作「アランシアの暗殺者」ではスロムの兄がウルズルに殺されたから、仇を討ったという話になっていて、スロムは単身、迷宮探検競技に挑むことになる。

『また、本作の主人公が、「死の罠の地下迷宮」の主人公として引き続き続投すると、スロムとは迷宮の中で初めて知り合いになった物語と矛盾するので、話をつなげるなら設定をいろいろ改変しないといけなくなる。その辺の辻褄合わせを自己流に試みてもいいし、各作品は別物で作品間の細かい矛盾は気にせず個別に楽しんで、スペシャルゲストはあくまでファンサービス以上の意味を追求しないのもありか、と思う』

 

アスト「とにかく、蛮人スロムが助太刀してくれたおかげで、リーサンはウルズルを撃退できたって話だな」

 

NOVA『その後、スロムはリーサンの暗殺者にまつわる事情を聞いて、〈迷宮探検競技〉に出場申請すれば、サカムビット公、および賓客のアズール卿に近づけるとアドバイスする。顔の知られているリーサンは、ウルズルの牛角フルフェイスの兜をかぶって変装してから、ファングの街に入って、その日の残り時間を休息と回復に当てる。翌朝、〈迷宮探検競技〉の開幕セレモニーでついにアズール卿が、ファング領主のサカムビットと共に、公に姿を見せることになる。FFの長い歴史の中では画期的な瞬間だ(309)』

 

アスト「ブラックサンドでは、宮殿の奥か暴走馬車の中に引きこもっていて、ずっと姿を見せないままだったもんなあ」

 

NOVA『そして、主人公には表彰台に立っているアズール卿に、いきなり武器で襲いかかるか否かの選択肢が与えられる』

 

ダイアンナ「襲いかかったら、どうなるのさ?」

 

NOVA『たちまち、衛兵に取り押さえられてゲームオーバーだ』

 

アスト「状況を考えろ、バカ、と言いたくなる選択肢だな」

 

NOVA『ただし、バカなことをしてしまったのを反省したら、【時間歪曲の指輪】が作用して、いきなり過去に戻って、選択をやり直すことになる。パラグラフ選択をやり直せるこのアイテム、もっと自由に使えたら(運だめし失敗の振り直しとか、運悪く大ダメージを受けたり負けたりした戦闘のやり直しとか)、非常にありがたいアイテムだったろうに、よりによって一番愚かしい選択からのリカバリーにしか使えないので、攻略の実用度としてはお粗末な代物になっている。ZEDの魔法みたいな、物語の本質に通じるような劇的な効果を期待したんだけどなあ』

 

アスト「それで、死んだはずのスロムが登場したのも、時間歪曲の副作用かもしれないというネタに使ったんだな」

 

NOVA『クロスオーバーとか、過去作とのリンクにおける矛盾の辻褄合わせには便利だからな。時間歪曲とか、並行世界とか、記憶喪失とか諸々。でも、そういう大きな設定を使いながらも、見せられる物語そのものがショボいと興醒めなんだがな。大掛かりなギミックは、それに付随する世界観の壮大さとか、ストーリーの広がりとかを実感させてこそ、ワクワクできるんだけどなあ。そもそも、パラグラフの選択ミスによるバッドエンドは、簡単にリカバリーできるんだから、むしろプレイヤーにままならないダイス目による失敗を、アイテムでカバーできるように、「いつでも1回だけパラグラフを1つ前に遡れる」とか、「時間を遡ることで、新たな情報を得て、新しい選択肢が出てゲーム攻略の役に立つ」とか、もっと面白い使い方ができるアイテムだったろう、と思う』

 

アスト「で、アズール卿との対面はどうなったんだ?」

 

NOVA『サカムビット公の面前では兜を外すのが礼儀、という話で、自分の正体を隠したい主人公が拒んだら、「命令を拒むとは不届き者!」と言われて、処刑されるバッドエンド。やむなく、アズール卿の面前で兜を外すと、指名手配の犯人の登場を興に感じたアズール卿の尋問タイムが始まる。暗殺者を倒した証であるサソリマークの首飾りを誇らしく示すと、「なるほど。これをゲームだと思っているのだな。それなら、貴様のゲームに乗ってやろう。いくつ持っている?」と問われる。まずは偶数か奇数かで、奇数と答えて、その後、13と答えると正解だ。多ければいいだろうと考える人向きに、15という答えもあるが、そういうテキトーな嘘もバッドエンド送りだ』

 

ダイアンナ「13と答えた場合だけ、許してもらえると」

 

NOVA『いや、答えるだけじゃなくて、実際に暗殺者13人を見つけて、完全に攻略して初めて、アズール卿なりの称賛の言葉がもらえるんだ。「めでたい。我が暗殺者をすべて倒すのは不可能だと思っておった。きさまこそ真の闘士よの」と要求水準の高い、完璧主義っぽいアズール卿に言ってもらえるのは、キャラの心情はともかく、長年のFFファンにとってはご褒美だよ。もう、アランシアの将来の支配者宣言をした領主(それを聞いたサカムビット公はどう思ったか?)に「殺すには惜しい」と言ってもらえて、だけどアズール卿にも領主としての体面がある。だから恩赦を与えるための理由づけをその場で即興的に考え出すんだ。「我が名代として、〈迷宮探検競技〉に挑んで生き残れば、恩赦を与えて許してやろう」って。これによって、次の「死の罠の地下迷宮」はサカムビット公だけでなく、アズール卿からの挑戦にもなるんだな。もちろん、既に解いた人も、このネタを懐かしく、場合によっては再プレイの動機にすらなる』

 

ダイアンナ「リーサンは、この後、『死の罠の地下迷宮』に挑戦する?」

 

NOVA『いや、しない。俺は昔、解いたゲームだからな。これを解くのはダイアンナ、お前に任せたはずだ』

 

ダイアンナ「それはそうだけど。だったら、リーサン・パンザの物語はどうなるのさ?」

 

NOVA『リーサン・パンザは時間歪曲の作用で、女体化するんだ。その名も、リサ・パンツァ。リーサンとハカサン・ツァのエッセンスを汲んだ新キャラをダイアンナがプレイして、「死の罠の地下迷宮」を攻略する。ダイアンナがプレイする「死の罠の地下迷宮」は、リーサンの物語のパラレル時系列のストーリーとして描かれる。新キャラのリサの設定をどうするかは、ダイアンナが自由に考えるといい』

 

ダイアンナ「『サイボーグを倒せ』の公式主人公ジーン・ラファイエット(シルバー・クルセイダー)が、あたし向きにジーナ・ラファイエット(シルバー・サンドラ)にアレンジされたようなものだね。じゃあ、本作の要素も反映するような感じで、改めてリサ・パンツァの設定を考えるとするよ」

(当記事 完)