ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「死の罠の地下迷宮」攻略準備編

キャラ紹介(旅立ち編)

 

 あたしの名前はリサ・パンツァ。

 ブラックサンドの盗賊ギルドに所属していたんだけど、まさか領主のアズール卿の名代として、悪名高いファングの死の罠の地下迷宮に送り込まされるとは思わなかった。

 これもお宝探しに現を抜かして失踪したバカ親父のせいだ。

 あいつが何をしでかしたのかは、噂でしか知らない。何でも、お宝探しの冒険の途中で母と知り合い、意気投合したらしく、その結果として、あたしが生まれた。

 そこで真っ当な暮らしを送っていれば、あたしだって盗賊ギルドに入ろうなんて思いもしなかったろう。だけど、顔も知らない親父は母を捨てて行方をくらましたんだ。

 母は元々、ゼンギスって東の国から来た「忍びの者にして追跡者」という職種らしい。野外生活に長けた隠密冒険者らしくて、あたしが生まれた後はダークウッドの森という場所で隠遁生活をしていた。昔、ヤズトロモさんって魔法使いのおじいさんを助けて仕事をしたことがあって、いろいろと面倒をみたり、助けてもらっているようだった。

 ヤズトロモさんは父のことも知っていたらしいので、母のいない時にこっそり聞いてみた(母は父の話をあまりしたがらない。どうしてだか分からないけど、気丈な母が父の話になると表情を曇らせるので、子供心に聞くに聞けなかったのだ)。

 ヤズトロモさんの話によると、父は「運命に導かれた英雄で、偉大なトレジャーハンターで、世界を闇の手から救った」らしい。

 絶対にウソだ。

 無邪気な子供を喜ばせるための、気のいいおじいちゃんが語って聞かせる昔の英雄物語。その話自体は本当かもしれないけど、主人公の部分をバカ親父に差し替えているだけなんだろう。

 本当に、あたしの親父がそんなに凄い英雄だったのなら、母がこんな田舎の森で隠遁生活を送っているはずもないだろう。

 

 その後、あたしは母から剣技と野外で生活する術を学んで、大きくなった。

 だけど、森で一生を過ごす気にはなれなかった。世間知らずの娘だからこそ、都会に憧れ、ヤズトロモさんが語ってくれたような「親父の冒険の後追い」をしたくなったんだ。

 どうして父がいなくなったのか?

 ヤズトロモさんのところに遊びに来た、もう一人の魔法使い、ニカデマスさんがこっそり話してくれた。

 ブラックサンドの領主で、アズール卿って怖い人を怒らせたらしい。偉い人を怒らせたから、家族に被害が及ばないように姿をくらました。

 ええと、そういうのって、ただの自己満足じゃない?

 父親だったら、母や娘といっしょに暮らして、命懸けで守ろうって考えるものじゃない?

 それなのに、家族のために自分が姿をくらましたらいいって、ただ責任を放ったらかしにして逃げてるだけじゃない? 

 

 ヤズトロモさんは、父が「偉大な英雄だ」と言った。

 ニカデマスさんは、父が「家族想いの優しい男だ」と言った。

 だけど、あたしの中の親父は、そんな立派な人じゃない。

 母とあたしを捨てて、このアランシアのどこかを放っつき歩いている放浪者にしてクズ。

 あたしにそんな男の血が流れているって思っただけで虫唾が走る。

 だから、あたしはダークウッドの森を出て旅に出た。

 旅先で父に会って、幼いときから抱えていた憤懣をぶつけてやりたい。

 または、ヤズトロモさんの話の中で、夢想の父が行ってきたとされる冒険をあたしが現実にかなえたい。

 あるいは、父親が旅先のどこかでのたれ死んでいるのなら、それを確認して、お墓ぐらいは作ってやりたい。

 動機は頭の中で渦巻いて、衝動的と言ってもいいほど、あたしは後先考えず(自分ではいっぱい考えているつもりで)家を飛び出した。

 

 そしてたどり着いた先は、ブラックサンドだったというわけ。

 

ダイアンナの創作ストーリーと、年間総括やら

 

ダイアンナ「とりあえず、『死の罠の地下迷宮』の攻略キャラの背景ストーリーを考えてみた」

 

アスト「何だか本格的な1人称小説っぽくなっていないか?」

 

ダイアンナ「リサ・パンツァは、『危難の港』『アランシアの暗殺者』を攻略したリーサン・パンザの娘という設定で、イメージを膨らませてみたんだ」

 

アスト「母親はハカサンか?」

 

ダイアンナ「その辺は固有名詞を出さずに、匂わせる程度にな」

 

アスト「しかし、『危難の港』をクリアした後で、娘ができて、その娘が冒険者として成長するまでの時間経過が気になるところだな」

 

ダイアンナ「そこは似て非なるパラレルワールドとか、テキトーな時空魔術で処理したってことで」

 

アスト「まあ、ゲームブックのFFシリーズは、各作品同士でも公式につながっている要素と、矛盾している要素があって、後から整合性を構築するのに苦労している面もあるし、ファンにとっては作品同士の時間軸も話のネタの一部だからな」

 

ダイアンナ「ここでは、『盗賊都市』→『危難の港』→『アランシアの暗殺者』→『死の罠の地下迷宮』の順で辿っているけど、公式には『盗賊都市』→『アランシアの暗殺者』→『死の罠の地下迷宮』→『危難の港』が正解らしいね」

 

アスト「『危難の港』では蛮人スロムが死んだ扱いで、だけど『アランシアの暗殺者』ではスロムが生きていて、これから『死の罠の地下迷宮』に潜るって話につながったからな」

 

ダイアンナ「作品発表順と、物語の時間軸が異なることはシリーズ物でよくある話というか、後から前日譚が発表されたり、ある話と別の話の間に挿入されたりするのもよくあって、長期の人気シリーズだと、時系列順に再編集されたバージョンも出版されたりするそうだね」

 

アスト「そういう考察を考えるのも、ファンの楽しみの一つだな。まあ、たまに矛盾が発生して、うまく時系列に取り込むことができなくて、パラレル認定することもあって、ファンの考察論争のネタにもなる」

 

ダイアンナ「とにかく、『アランシアの暗殺者』の次は『死の罠の地下迷宮』につながるエンディングだったんだけど、本攻略記事は『アランシアの暗殺者』の攻略記事の直接的な続編ではなくて、パラレル時空の娘の話として緩やかなリンクを考えるようにした」

アスト「まあ、そこはいいんじゃないか? 『アランシアの暗殺者』では【時間歪曲の指輪】なんてアイテムも登場しているんだし、いろいろとねじ曲がったことも起こるんだろう。そう、年末発売予定のFFコレクション4が時間歪曲の影響で、2月発売になるぐらいのことがな」

 

ダイアンナ「それにFFシリーズの攻略が一旦中断して、FT書房の『ローグライクハーフ』や『盗賊剣士』に寄り道したのも、時間歪曲の影響ってことだね」

 

アスト「何でもかんでも、時間歪曲のせいにするのも芸がないと思うが、今年のゲームブックその他攻略の総括も、今ここでしておくか」

 

●1月〜2月:『サイボーグを倒せ』(前年より引き続き)

●3月〜4月:『天空要塞アーロック』

●5月〜6月:『アルシャード・ガイア』プレイ

●7月:『アランシアの暗殺者』

●8月〜9月:『モンスター誕生』

●9月:『火吹山の魔法使いふたたび』攻略EXおよび『巨人の影』のミニ記事

●9月〜10月:ローグライクハーフ『黄昏の騎士』

●10月〜11月:『盗賊剣士』

●12月〜:『死の罠の地下迷宮』スタート

 

ダイアンナ「去年が『火吹山の魔法使いふたたび』からスタートして、『火吹き山の魔法使い』『バルサスの要塞』『盗賊都市』『危難の港』『運命の森』『魂を盗むもの』『さまよえる宇宙船』『地獄の館』の9作を終わらせたのに、今年は『盗賊剣士』を含めてもゲームブックは5本しか終わらせていないのか。来年はもっと精進したいところだね」

 

リバT『まあ、「サイボーグを倒せ」は完全攻略で4周も回ったし、「アーロック」は妙に疲れる作品だったし、「モンスター誕生」は異色作で記事書きに苦労したし、「盗賊剣士」は新境地の開拓だったし……とグランドマスターNOVAの作者言い訳思念が届いて参りました』

 

アスト「一番、勢いが高まる秋にペースが鈍ったのが、去年に比べて攻略数が少ない理由っぽいな。もちろん、一記事当たりの文章量とか、一作品当たりの攻略密度とか、書き慣れたがために記事書きを凝るようになって手間暇を要するようになったというのもあるだろうが、来年は大作『ソーサリー』をどういう形で再攻略するかとか考えないとな」

 

ダイアンナ「アストは再攻略かもしれないが、あたしは初攻略なんだ。今から楽しみだぞ」

 

アスト「お前はそれより先に『死の罠の地下迷宮』を頑張らないといけないだろうが」

 

ダイアンナ「ああ。では、リサ・パンツァの紹介文の続きだ」

 

キャラ紹介(捕縛編)

 

 ブラックサンドの街に入ったあたしは、知人のニカデマスさんを探そうとしたんだけど、上手く行かなかった。街のことをよく分からないままに適当にうろついていたら、ドジを踏んで衛兵に捕まってしまい、たまたま収監されていたギルドの盗賊の助けを借りて、一緒に脱出することに成功した。

 どうも母親の技量と才覚を受け継いでいたあたしは、優秀な盗賊になると見込まれたようで、ギルドの誘いを受けて、そのままずるずる裏稼業の道に踏み込むこととなった。

 だけど、世間知らずだったあたしは、これぞ夢だった都会の冒険者(シティ・アドベンチャラー)ライフと心得違いをして、有頂天になって行ったんだ。たぶん、世間一般の目からは、「田舎から出て来て、都会の闇に染まった不道徳な放蕩娘」のレッテルを貼られる人生かもしれないけど、なまじ、そういう道で成功してしまったために、自分のやっていることを客観視するのに時間がかかった。

 あたしのやっていること。それは母を捨てて、放浪生活を続けているバカ親父と変わりないじゃないかって、何となく思い始めた、そんな頃合いだった。

 旅から戻ってきたニカデマスさんが、あたしを見つけたのは。

 

 ニカデマスさんは、ポート・ブラックサンドの【歌う橋】の下の小屋に住んでいる。

 確かにあたしはそう聞いていた。

 だけど、それは古い情報だったようだ。以前にアズール卿と一悶着があって、ブラックサンドを脱出した彼は、ほとぼりが冷めるまでアランシア放浪の旅に出ていたらしい。

 そう、アズール卿の恨みを買っていたのは、父や母だけじゃない。ヤズトロモさんや、ニカデマスさんもまたアズール卿の野心を邪魔したということで、暗殺者に命を狙われていたのである。

 盗賊ギルドの仕事をこなすうちに、少しは裏の世界のことを知るようになったあたしも、アズール卿の恐ろしさが分かるようになっていた。そして、バカ親父が卿の目を自分に惹きつけるように動き回っていたことも。

 バカ親父の似顔絵が、街の各所に張り出され、莫大な賞金がかけられていた。

 あたしは父の顔を知らないから、それが父だということには気付かなかった。街に忍び込んだニカデマスさんから聞くまでは。

 一つの街の領主を敵に回して、賞金首にまでなったバカな男。賞金額は魅力的だけど、悪徳領主の懸賞金目当てに手を汚すほど落ちぶれてはいないつもりだった。盗賊とは言え、あたしにも義賊と自認するだけのプライドはあったのだ。

 街の弱者のために、悪い金持ちから盗みを働いて、正邪のバランスをとる。南の方で活躍しているという噂の謎かけ盗賊みたいなヒーローに憧れたりもした。

 世間知らずなロマンを抱きながらも、依頼された仕事はきっちりこなす。その道の先に、英雄の運命が待っているかは半信半疑ながらも、他に生きる道は知らない。

 賞金稼ぎの道を考えてみたことはあるけど、懸賞金の男の暗殺はいつの間にか〈サソリ会〉というプロの暗殺者組織が一手に引き受けることになったらしい、と噂を聞いた。

 〈サソリ会〉を敵に回したら、生き残るのは無理だろうな、と仲間の盗賊が語っていたので、あたしもそうなんだと納得していた。

 賞金首も、暗殺者組織も、同じ裏の仕事とは言え、あたしの人生には交わらない、そう思っていた。

 

 だけど、運命はある日、突然、一介の盗賊娘に襲いかかってきた。

 ニカデマスさんが、ブラックロブスター亭であたしを見つけて、警告した。アズール卿があたしを狙っている、と。

 どうして?

 訳が分からなかった。

 賞金首の男が〈サソリ会〉から派遣された暗殺者を全員皆殺しにして、ファングの街にいるアズール卿に挑みかかったという。

 そんな無鉄砲なバカがいるんだ。

 でも、それとあたしに何の関係が?

 え? その無鉄砲なバカが、あたしの失踪中の親父だって?

 だったら、バカの報いはバカが受けたらいい。

 え? バカ親父は衆人環視の中で逃げ出した? どうやって?

 気球? 謎かけ盗賊? どういうこと?

 詳しい話を聞いている時間はなかった。アズール卿の配下のトロール衛兵たちが、ブラックロブスター亭に踏み込んできて、あたしとニカデマスさんを捕縛しようとした。

 無我夢中だった。

 ニカデマスさんは「逃げろ」と叫び、あたしはそうするしかなかった。一瞬、戦って切り抜けようとも思ったけど、あたしは盗賊、歴戦の英雄ではない。戦うか逃げるかの選択になって、相手が多勢ともなれば、逃げの一手を選ぶのみ。

 だけど、運命はあたしを逃がしてはくれなかった。

 走り慣れた裏道を駆け抜けていたとき、脇道から不意打ちをくらった。

 

 意識を失ったあたしは、気がつくとアズール卿の虜囚となっていた。

 

ダイアンナの創作裏話と、今後の伏線?

 

アスト「なるほど。こうして『きみの冒険は終わった』だな。おつかれさん」

 

ダイアンナ「終わってないぞ。……と言うか、まだ始まってもいない」

 

アスト「いつ始まるんだよ!?」

 

ダイアンナ「そりゃ、ブラックサンドからファングの町に拉致されて、死の罠の地下迷宮に踏み込んだ時だろう? 記事タイトルからして、当然じゃないか」

 

アスト「それにしても、ニカデマスさんがブラックサンドから旅立っていたとは知らなかったぞ」

 

ダイアンナ「『危難の港』の事件の後で、ニカデマスさんが橋の下の小屋に住み続けているとは思えないだろう?」

 

アスト「まあ、普通に考えたら、彼もザンバー・ボーンを倒した一味だし、脱獄犯だからな。アズール卿のブラックリストに載っていてもおかしくはないか。それで、どうして謎かけ盗賊なんてのが出て来るんだ?」

 

ダイアンナ「そりゃあ、今年、久々に注目が当たったFFキャラの一人だからなあ。あたしは彼のことをよく知らないけど、とにかく、リーサン・パンザは『死の罠の地下迷宮』に突入する直前に、謎かけ盗賊の気球に拉致されるんだ。あたしの物語では」

 

アスト「それで拉致されたリーサンのその後はどうなるんだ?」

 

ダイアンナ「さあね。そのうち、ダディが未攻略作品の『奈落の帝王』で語ってくれたりするんじゃないか? 来年にでも」

 

アスト「そんなに上手く話がつながるもんかね」

 

ダイアンナ「ダディなら上手く、あるいは強引に、もしくはテキトーに辻褄合わせをしてくれる。そう信じようじゃないか」

 

アスト「つまり、NOVAに丸投げってことだな。まあ、あいつが困る分には、オレとしては望むところなんだが。リーサン・パンザの物語は、なぜか飛んできた気球のせいでアランシア南部に続く、と」

 

ダイアンナ「そして、親父の尻拭いの迷宮探検競技を娘のリサが引き受けなければいけなくなるって展開なんだ」

 

アズール卿の宣告と、リサの決断

 

「女盗賊リサ・パンツァとか言ったか。お前には我が名代として〈迷宮探検競技〉に挑んでもらうことになった」

 青いフード付きマントの男が冷ややかな声で言った。

 彼こそアズール卿、盗賊都市ポート・ブラックサンドの領主。

 一介の盗賊娘がおいそれと近づける相手ではないはずだ。

 あたしは相手の視線に射すくめられ、ヘビに睨まれたカエルの気分を味わった。

「どうした? 口が聞けないのか? お前の父親はもっと豪胆で、したたかであったぞ。余の仕向けた腕利きの暗殺者13人を全て返り討ちにする程度にはな」

「……あたしには父親なんていない。家族を捨てて逃げた、顔も知らない男なんて父親とは呼べるもんか!」

 あたしの怒りは、目の前の恐るべき領主よりも、ここにいない男に向けられていた。

「ふむ。顔も知らない父親か。だが、指名手配の似顔絵はある。父親はトレジャーハンターにして暗殺者を返り討ちにする剛の者。そして娘は腕利きの盗人。血は争えないと思うが、認めぬと申すか」

「どうして指名手配の男があたしの父親と仰せなのですか? 人違いの可能性はないのでしょうか?」

「人違いか。ならば、たかが一人の女盗賊の命など何の価値もない。すぐに処刑しても構わないのだぞ」

 あたしは呆然とした。

 指名手配の男が父親ならば、代わりに〈死の罠の地下迷宮〉に挑め。

 父親でないならば、命に価値がないゆえに処刑だって?

 どちらを選んでも、あたしの命は風前の灯だ。こんなの理不尽すぎる。

「納得できません」あたしは懸命に食い下がった。涙交じりの目で領主の淡青色の瞳をにらみつける。「どうして、あたしなんです?」

「貴様ごときの納得なぞ、どうでもいい」領主は舌鋒鋭く切り捨てた。「迷宮に潜るか、さもなくば死だ。これは元々、貴様の父親が我に対して仕掛けたゲーム。あやつはその豪胆さと腕前で我を感服せしめ、自由と引き換えの試練に挑むはずであった。しかし、あろうことか謎かけ盗賊という闖入者が、我が名代をかすめ取ったのだ。後には一枚の手紙が残された。その手紙に書かれていたのが、他ならぬリサ・パンツァ、貴様の血筋なのだよ」

「つまり、あたしを選んだのは、謎かけ盗賊だとでも?」

 どうして謎かけ盗賊が? 

 そう呟きかけて、あたしはかぶりを振った。

 謎かけ盗賊は謎をばらまくのが性分と聞く。

 何故だか、彼はあたしの身の上を知り、

 何故だか、彼はあたしの父親と思しき男を連れさらい、

 何故だか、彼はあたしを父親の代わりの生贄として悪徳領主に捧げ、

 何故だか、あたしの運命は極まろうとしている。

 頭の中がグチャグチャだ。

 逃げ出したかった。

 だけど、一か八か逃げ出そうと動く前に、アズール卿はこう言った。

「娘が臆病なら、母親という手もあるな。確かゼンギスの忍びと聞いているが、それなりに腕は立つやも知れんな」

 

 あたしが逃げたら、母さんが巻き込まれる。

 バカ親父が逃げて、あたしまで逃げたら……あたしは父親以上に自分を許せなくなる。

 だから、自分の誇りと尊厳をかけて、こう言うしかなかった。

 

「分かったよ。『死の罠の地下迷宮』、あたしが挑戦してやろうじゃないか」

 こうして、あたしの英雄への試練が始まった。

(当記事 完)