ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

「奈落の帝王」攻略感想(その8、最終回)

奈落(アビス)という世界

 

リモートNOVA『前回、リーサンは山地の地下を流れる河川を抜けて、ついに奈落もしくは深淵とも呼ばれる場所の入り口に到達した』

 

アスト「先行していた魔術師のエンシメシスが、魔界の刺客デーモンに致命傷を負わされ、魔界の入り口を示しながら、リーサンに後を託したんだったな」

 

NOVA『入り口は流砂みたいになっていて、そこに引きずり込まれた後、砂の底から霧に包まれた虚空に投げ出される。急降下して地面に激突する? と思いながら意識を失い、気がつくと滑らかで冷たい地面にうずくまっていた。辺りにキラキラ光る宝物が落ちているのに気づいたが、その前ににおい玉(ポマンダー)の中の薬草を食べなさい、と言ってたアレセアの言葉を思い出す』

 

ダイアンナ→カデューサス(ヘビ)「どうやら無事に奈落に到達したようです。今こそ、アレセア様の言葉に従うときでしょう」

 

NOVA『リーサンは食べろと言われたら喜んで食べるキャラなので、遠慮なくいただく。味は苦いけど、体が温まって来るので、冷えた空気にはちょうどいい。それからトレジャーハンターらしく、周囲のお宝を物色する』

 

 目ぼしいお宝は、宝石の付いた胸当て(サイズが小さいので装備不可)、羽でできたブーツ、金の拳、真珠の付いた頭蓋骨、しまめのうの笏(しゃく)、水晶球の6種類。何でも好きなだけ持って行っていいそうなので、欲に駆られて全部持って行くリーサンでした。

 

NOVA『で、次に運だめしをさせられるけど、運点12だと何でも成功するわけで、出目4だと問題なく成功。ここで出現するモンスターがエクトヴァルト。表紙絵にある半透明の翼竜だ。こいつはマジックアイテムが大好物なので、運だめしに失敗すると、体当たりを受けて1点ダメージ。あるいは先ほどのお宝を4個以上持っていると、そのまま食べられてしまうんだけど、不思議生物なので食べたものを体の中で元の形に再構成して運び去るという習性を持っている』

 

アスト→ファイン(剣)「運び去るってどこに?」

 

NOVA『そいつは後で語ろうと思うが、運び去られることで、イベントがあれこれ飛ばされて、ショートカットされてしまうんだな。ただ、それでも攻略不可にはならないので、イベントをたくさん経験したい派でなければ、実害はなさそうだ*1。で、運だめしに成功すると、別のお宝(聖杯)に夢中になって、そっちに飛んで行くので、恐れる必要はない。ともあれ、リーサンは霧に包まれた水晶の平原に立っている。視界が霞んで見にくいので、音が頼りだ。うめき声か、きしみ音か、ささやき声の3択だが、どうする?』

 

3つの音声をたよりに

 

カデューサス(ヘビ)「3択を判断する材料がないので、一通り回ってみましょう」

 

NOVA『攻略記事だと、そうなるんだな。ちなみに最適解はきしみ音なので、先に別の選択肢を見ておこう』

 

  • うめき声:鎖があって、それを上手く登って行けば(途中で転落してダメージを受ける可能性あり)、奈落の奴隷の鉄格子に通じていることが分かる。囚われた魂の哀れなうめき声なのだ。彼らを助ける手段は、この時点ではないので、実益のない選択肢と言える。
  • ささやき声:カラメールで沈黙のシージュを断罪していれば(色の変わる傷を受けたなら)、彼女の魂を宿した水晶の像と遭遇する。彼女はバイソスに見捨てられたので、主人公に協力したいと言うが、信じてはいけない(信じて痛い目にあった経験者^^;)。シージュを水晶の中から解放すると、《バイソスの力の秘密》を教えてくれるが、真っ赤な嘘である。ファングセイン鋼の剣が弱点で、魔法の品や呪文が一切通用しないと言って来るが、それも嘘。結局、彼女を助けると、バイソス戦の最中に後ろから刺して来てバッドエンドになるので、最後の最後まで嘘つきな策略家だったシージュさんでした。

 

ファイン(剣)「なるほど。ボスに見捨てられたから改心した、というドラマに見せかけて、実はそれも罠だったというのは、特撮物の敵幹部のムーブでよくあるな」

 

NOVA『ゲームブックでそれをやられるとは思わなかったよ。そして、いざやられると結構だまされてしまうものだな、と感じた。とにかく、本作をプレイすると、NPCに対する疑心暗鬼の念が溢れてしまいそうになる。悪意はなくても、逃げろと言われて逃げたらバッドエンドになってしまうエンシメシスもそうだが、物語やキャラ付けからは納得だけど、ゲームの情報源や指針としては素直に応じてはいけない「間違った方向に誘導するNPCや手がかり」が多くて、実にプレイヤーの心理を弄ぶ系のイヤらしさが溢れたゲームブックと言っていい』

 

カデューサス(ヘビ)「しかし、ゲームブックならともかく、TRPGゲームマスターがプレイヤーを騙し、引っ掛けるようなマスタリングを多用すると、ゲームにおける重要情報を信じてもらえないという弊害があるよね」

 

NOVA『そうなんだよな。パズルとか、本に騙されることはゲームを面白くする(ミステリーというジャンルならなおさら)けど、対面プレイで騙してくる相手に対しては、信用度が削られて行く。騙されても納得とか、動機の面で分かるならとにかく、人を騙し弄ぶのが楽しいなんて振る舞い方をされると、騙された方はちっとも楽しくないので、人間関係に亀裂が入ったりもするので注意だ』

 

ファイン(剣)「とにかく、ゲームとしての最適解、最短ルートはきしみ音の方に向かうことだな」

 

NOVA『最初からきしみ音の方に向かうのが一番早いが、うめき声→きしみ音か、ささやき声→きしみ音につながって、1度のプレイで3つとも通ることはできない。そして、きしみ音の方に進むと、突然、足元の水晶の床にピシッと亀裂が走って、下から黒い影が飛び出した。技術点判定が必要になる。(コロコロ)7なので問題なく成功。失敗すると、触手に絡みつかれることになって、剣をなくしているとバッドエンドになったりもするが、成功したので、アネモラス(技5、体10)と普通に戦うことができる』

 

カデューサス(ヘビ)「例によって、『超・モンスター事典』の記述を見ますと、ブヨブヨした大ナメクジかナマコのような軟体に無数の触手を合わせ持つ、《血界》や《胆汁界》出自の魔界生物のようです」

 

ファイン(剣)「そんな奴がどうして、この《白金界》にいるんだよ?」

 

カデューサス(ヘビ)「悪の魔術師の護衛として召喚されたのが逃げ出した個体らしいです。海洋に出現し、流氷の下に潜んで獲物が通りかかると奇襲して餌にするとか」

 

NOVA『うむ。この魔界にいるモンスターは、リーサンがよく知らない新顔が多くて、ゲームブックでは「主人公が知らないはずの怪物なのに固有名詞が明かされている」という違和感が気になっていたんだが*2、知恵袋のカデューサスが解説してくれたと思えば、納得だな。とにかく、剣さえ持っていれば恐るるに足りない技術点なので、切り刻むぞ』

 

ファイン(剣)「おお。魔界の異形生物だろうが、剣が通じる相手なら、倒せばいいだけの話だ」

 

NOVA『よし、6ゾロ出た。一撃必殺で《超音波触手斬》が発動した』

 

カデューサス(ヘビ)「この魔界に来て、剣技が冴えているようですね」

 

NOVA『におい玉の薬草を食べた効果なのか、それとも触手特効の能力に目覚めたのか。この調子なら、触手ハンターと名乗れるかもしれない』

 

ファイン(剣)「奈落の帝国は、カニコングが目指す触手帝国に近いのかもしれんな」

 

NOVA『本作のプレイヤーがカニコングじゃなかったことが残念かもしれんが、まあいい。男が触手にまとわりつかれても、絵的に萌えないので、こんなところはさっさと抜けるぞ。そう思って、先へ急ごうとすると、空からエクトヴァルト(半透明翼竜)が飛んで来て、アネモラスの肉塊を餌にしやがった。何だか原始的な弱肉強食の有り様を目撃しつつ、水晶の上り坂を進んで行く。周囲の景色を確認したいからな。

『そして、上った結果、そこがクレーターになっていることが分かる。くぼ地の真ん中に金色の砂が暖かい光を放っているんだが、そこに降りてみるか、それとも様子見するかの2択だ』

 

水晶戦士の作業場

 

NOVA『異世界なので勝手がよく分からないから、慎重に振る舞うのが正解だとリーサンは判断した。すると、エクトヴァルトがくぼ地の中に飛び込んで来て、勝手に砕け散る光景が見えた。その場に、餌にしたマジックアイテムの金の盾が残される。砕けたエクトヴァルトはたちまち再生し、また別のマジックアイテムを求めて飛んで行った』

 

カデューサス(ヘビ)「どうやらエクトヴァルトは、この場にマジックアイテムを運んで集める習性を持っているようですね」

 

NOVA『あるいは、何者かにそう命じられているかだ。トレジャーハンターとしては、勝手にお宝を集めてくる飛行怪物に興味を持ちつつ、自分が餌として運ばれなかったことをホッとするわけだ。なお、先ほどのショートカットの行き着く先がこのくぼ地の底ということになる。多くのエクトヴァルトがいろいろな宝をここに運び、それに対して、6体の水晶戦士が巨大なハンマーで叩き潰す作業を展開している』

 

ファイン(剣)「マジックアイテムを叩き潰すとは、ずいぶんと勿体ないことをしているな」

 

NOVA『ああ、トレジャーハンターとしては、この暴挙を止めたい気にも駆られるが、何とか自制した。この水晶戦士に対しては、剣が通用しないっぽいので、まともに戦うなら、先ほど入手した「しまめのうの笏」か「金の拳」を棍棒代わりに使う、もしくは取っ組み合いの格闘戦に持ち込むことになるんだが、能力値が技術点11、体力点13だからなあ』

 

カデューサス(ヘビ)「結構、手強いですね。リサのプレイヤーとしての発言だが、水晶戦士は〈雪の魔女〉の護衛戦士としても登場したことがあって、やはり強かったと記憶する」

 

NOVA『そんなのが6体もいる場にうかつに飛び込むほどリーサンは愚かじゃないので、さあ、どうしようかと思いながら、さらに隠れ潜んで様子を見ていると、フード付きマントの人影が歌を歌いながら現れる。歌の歌詞は「わが王にスープを♪  バイソスにスープを♪  魔法のスープが奈落の帝王を作る♪」という内容。それを聞いたリーサンは、急に自分もスープを飲みたいという衝動が湧き上がるのを感じた』

 

ファイン(剣)「魔法のスープを飲めば、〈奈落の帝王〉の力を得られるのか」

 

NOVA『どうやら、そうらしい。流れを整理すると、エクトヴァルトがマジックアイテムを集める→水晶戦士がアイテムをハンマーで砕き、黄金に輝く粉にする→その粉を材料にフード付きマントがスープを作るというシステムらしい。そこでリーサンが、こっそり忍び寄って、フード付きマント(金粉拾いと称される)を一撃で倒す』

 

カデューサス(ヘビ)「まさに手慣れた暗殺者ムーブですね」

 

NOVA『まあ、まともに戦うと水晶の槍を投げつけて来て、技術点判定で避けないと即死バッドエンドだからな。接近戦攻撃だと技6、体6だから余裕の相手だけど、パラグラフ選択だけで倒せるなら、それが一番無難だ。金粉拾いの正体は骸骨のように痩せ衰えた男なので、そのマントをまとって変装する。マジックアイテムの粉を絹の小袋に集めてから、それらしく演技すると、お供の水晶妖精は変装に気付かずに従ってくれる。そしてエクトヴァルトが曳行する空中戦車に騎乗すると、勝手に帝王の宮殿に連れて行ってくれるんだ』

 

ファイン(剣)「まるで機械のように定められたシステムで動いているんだな」

 

NOVA『そう。そのセキュリティを発動させずに、上手く気付かれることなく忍び込めば、危険は最小限に侵入を果たせるって寸法だ。暗殺者ハンターを名乗る以上は、暗殺者の流儀も心得ているわけさ。事を荒立てるだけなのが暗殺者じゃないってね』

 

〈奈落の帝王〉の宮殿、そして対決

 

NOVA『ところで、一つ気になったんだが、金粉拾いに変装したリーサン・パンザはいいとして、お供のヘビのカデューサスはどうなったんだ? リーサンの首に巻きついている描写が印象的なんだが、変装の邪魔だろう?』

 

カデューサス(ヘビ)「ゲームブックには書かれていないのですね。では、目立たないよう、ヘビ皮のマフラーに変身していましょうか」

 

NOVA『では、マフラーの上からマントをまとっているってことで。ともあれ、到着した先は高さ何百メートルにも及ぶ水晶宮殿だ。かつて見たことがないほどの敵の拠点の威容に驚きながらも、同僚らしいマント付きが出迎えて、戦車から降りる。「遅いぞ! 早くスープを作らないと、帝王のお怒りを招く。急げ!」と急かされて、よく分からないまま、大釜のある調理室に導かれる。別のマント付きが釜の中のスープをかき混ぜており、促されるままに袋の中の魔法の金粉を入れてやると、滞りなくスープは完成した。1メートルサイズの大きなゴブレットにスープを注ぐと、幸いにして2人のマント付きが調理室を出たので、その間に以下の作業ができる』

 

  1. スープを飲む
  2. スープに何かを混ぜる
  3. ゴブレットをひっくり返す

 

ファイン(剣)「正解は……飲むことだよな」

 

NOVA『ああ。ここで飲む際に、アラールの薬を前に飲んでいれば、変な化学作用が発生してショック死する。ザザズの薬を混ぜて飲んでも、不用意に熟睡してしまってバッドエンドだ。何も混ぜずに、魔法のスープを飲むのが最適解というか、それ以外の選択肢だとゲームオーバーなんだな』

 

カデューサス(ヘビ)「もう完全に攻略は一本道に入ってるのですね」

 

NOVA『選択肢はある。しかし、正解以外はゲームオーバーに直行なので、逆に選択はしやすいわけだな。間違えていれば、すぐに正しい方を読み続けることでゴールまで行き着ける。ここまで来て、律儀にゲームオーバーして最初からやり直すのは苦行すぎる』

 

ファイン(剣)「魔法のスープを飲んだ。効果のほどは?」

 

NOVA『効果が出るのに時間がかかるようで、その前にバイソスが宮殿に帰ってくる。その姿は15メートル以上の巨人だ』

 

ファイン(剣)「小型のMSサイズかよ。流派・東方不敗でなければ、勝てないではないか」

NOVA『そう。巨大な敵を倒すには、自らも巨大化する。しかし、それまでは何とか時間稼ぎをしないといけないんだな。とりあえず、ここで今までのフラグが問われてくる。《バイソスの力の秘密》を聞いているか?』

 

カデューサス(ヘビ)「それって確か、嘘だったのでは?」

 

NOVA『そう。背後に忍び寄ったシージュが首筋に水晶の短刀を突きつけて来て、そのまま殺されてしまう。見事な暗殺にしてやられてしまったよ』

 

ファイン(剣)「だけど、今回はその選択はとらなかったんだな」

 

NOVA『その他の選択肢は、「逃げる」「金の拳で攻撃する」「剣で攻撃する」だが、すべてバッドエンドだ。唯一の正解は「ポマンダー(におい玉)の薬草を食べていれば31へ」ということだが、そこで薬草の名前(パアラ、マアスト、テス)を数字変換した275番へ向かう。その後、「バイソスのスープを飲んだなら280へ」という選択肢を選ぶと、必殺技BGMの流れそうな勝ちモードに入れる』

カデューサス(ヘビ)「何が起こったか具体的に説明してください」

 

NOVA『まず、スープの効果が発動して、リーサンの体が膨張して、バイソスと同じ巨人サイズになる。「まさか! よせ! 〈奈落の帝王〉の力はわたし一人のものだ!」と叫んだバイソスが、口から凍りつくような息を発する。これが水晶の息で、あらゆる相手を氷のような水晶に固めて彫像化する魔力を秘めているのだが、それすら薬草の力で無効化された。リーサンは水晶の息をものともせずに、巨体の拳で殴りかかる。バイソスは慌てて避けると、壁を殴って粉々に打ち砕く。それから、完全にビビったままに壁の穴から逃げ出すが、この後の選択肢次第では、文章を読み進んだだけでダイスも振らずにバイソスを撃退できる』

 

ファイン(剣)「なら、勝ったも同然だな」

 

NOVA『しかし、それだとあまりにも呆気ないので、技術点10、体力点10のバイソスと通常戦闘のルールで、しっかり決着をつけることもできるんだ。ここではラスボス戦ぐらい、しっかり戦闘シーンを描いてみよう』

 

★1ラウンドめ:バイソスの攻撃ダイス4+10=14

        リーサンの攻撃ダイス9+12=21

        運だめし9で成功(残り運点10)

        バイソスに4点ダメージ、残り体力6

★2ラウンドめ:バイソスの攻撃ダイス6+10=16

        リーサンの攻撃ダイス3+12=15

        リーサンに2点ダメージ、残り体力14

★3ラウンドめ:バイソスの攻撃ダイス6+10=16

        リーサンの攻撃ダイス6+12=18

        運だめし3で成功(残り運点9)

        バイソスに4点ダメージ、残り体力2

★4ラウンドめ:バイソスの攻撃ダイス6+10=16

        リーサンの攻撃ダイス3+12=15

        リーサンに2点ダメージ、残り体力12

★5ラウンドめ:バイソスの攻撃ダイス7+10=17

        リーサンの攻撃ダイス8+12=20

        バイソスに2点ダメージ、残り体力0

 

NOVA『こうして〈奈落の帝王〉ファイトを必殺の輝く拳で制すると、バイソスは地面に倒れて、その体は無数の細かいかけらとなって砕け散った』

 

カデューサス(ヘビ)「さすがです、リーサンさま。正々堂々と〈奈落の帝王〉ファイトに勝ち上がったあなた様こそ、真の〈奈落ザ奈落〉の称号にふさわしい。今度から〈奈落ガンダム〉と名乗っても許されますよ」

 

NOVA『許されねえよ。奈落ガンダムというか、アビスガンダムは公式にいるし』

 

ファイン(剣)「ともあれ、リーサン、お前が新たな〈奈落の帝王〉になったのは間違いない。バイソスの召使いたちも、誰も異議を唱えないみたいだしな」

 

NOVA『ああ。しかし、こんな巨大サイズになってしまうと、服も全部破れて裸だし、愛刀のお前も装備できない。なあ、お前も持ち主に合わせて巨大化しないか?』

 

ファイン(剣)「そんな機能はついてねえよ」

 

NOVA『1メートルサイズの長剣も、こっちが10倍近く大きくなると、体感10センチ相当か。せいぜいペーパーナイフか、耳かきみたいなサイズだな。あるいは、アクションフィギュアの手持ち武器みたいなもの』

 

カデューサス(ヘビ)「とりあえず、衣装はバイソス用にあつらえたものを使うしかないでしょうね」

 

NOVA『ああ。敵の服を着るのはイヤな感じだが、〈奈落の帝王〉としての威厳を示すにも、その方が有効か。あとで、自分らしくデザインし直して、召使いに仕立て直させよう』

 

 こうして、リーサンはバイソスを倒して、〈奈落の帝王〉としての力と地位を奪いとることに成功したのだったが、彼の使命はまだ終わったわけではない。

 ゲームブックとしては、最後の決断を下さねばならないのだ。

 

カラメールの国を復興するために

 

NOVA『虚空の牢獄に囚われたカラメール国民の魂を解放して、宣言するぞ。「邪悪な先代の帝王バイソスは、この俺、カラメールの救世主リーサン・パンザが倒した。諸君は何とかカラメールの国の肉体に返してあげようと思う。まあ、この奈落の地で、魂として生き続けたいというなら話は別だが。そんな奇特な魂はいるか?」

 

ファイン(剣)「いないだろう。やはり、自分の肉体に帰りたいと思うのが常人ってものだ」

 

NOVA『この中に、自称・伝記作家にして詐欺師のターバーダさんがいれば、リーサン・パンザがいかにして〈奈落の帝王〉に打ち勝ち、カラメールの国と民を救ったかを語り継いでもらいたいものだなあ。いや、リーサンは彼と会ってないけど、プレイヤーの俺は知っているわけだから』

 

カデューサス(ヘビ)「その辺のエピローグは、次回のEX記事で書くって手もあるよね」

 

NOVA『とにかく、体は大きくなったが、中身は人好きのするリーサン・パンザであることをアピールしながら、優しい巨人としてカラメール国民の魂と交流しつつ、彼らを元の世界に返す算段を召使いと整えよう』

 

カデューサス(ヘビ)「あ、アレセア様にはリーサン様が〈奈落の帝王〉を倒したことを交信で伝えておきますね」

 

NOVA『それは助かる。ついでに、アレセアの方から、カラメールの街のダンヤザードたちに連絡してもらうと、魂の戻った人々の社会復帰体制とか整えてもらえそうだが』

 

ファイン(剣)「で、どうやって人々の魂を元に戻すんだ?」

 

NOVA『ゲームブックによれば、稀少な青水晶を粉にして水に溶かした薬で、バイソスは地上に向かっていたらしい。その薬を召使いが作るんだが、〈奈落の帝王〉として強大な魔力を備えるに至ったリーサンと、カラメール国民全員の魂が魔力的に等価で、両方を地上に戻すことはできないそうだ。だから、カラメール国民をここに置き去りにして自分一人が帰るか、それとも自分が後に残り、国民の魂を元に返すかの選択肢が出る』

 

ファイン(剣)「それが最後の決断か。自分一人が帰った場合は、カラメール国民の多くが犠牲になるので国が滅亡してバッドエンド。だから、自分が後に残るしかない、と」

 

NOVA『そして、この時点で色が変わる傷を受けていない場合(シージュを断罪していない場合)、彼女がカラメールの領主の座について、専制政治で民衆を苦しめる未来を予感させてのバッドエンドだ。だけど、今回のリーサンはシージュを断罪済みなので、無事にパラグラフ400番に到達し、宮殿に設置された水晶鏡でマッドヘリオス統治下の平和を取り戻したカラメールの姿を見て、大いに満足するわけだ。奈落から一方的に現世を見ることはできるが、双方向交信のシステムはアレセアみたいな一部の魔法使いとの間でしか確立されていないので、今はまだ地上に干渉することはできない。しかし、時間をかければ、そういう研究も進むだろうし、魔界や霊界、天上界との接触によって、新たな冒険の可能性も示唆されて、ゲームブックの物語は終了するわけだ』

 

カデューサス(ヘビ)「では、後日譚的なエピソードも含めて、次回のEX記事で」

 

NOVA『ああ、ゲームブックの攻略としては、今回で完結ってことで』

(当記事 完)

*1:厳密には、強敵・水晶戦士とのバトルを強制されるという実害はある。逃げればいいんだけど。

*2:まあ、語り手である作者が、聞き手であるプレイヤーの君に状況解説している文章なので、キャラが知らない情報も知らされるんだけど、キャラに感情移入してプレイするタイプの人ほど違和感を覚えるものかも。