ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

ドルイドの道(その2、アドバンスト編)

 前回のドルイド記事を書いていて、分かったこと。

 クラシックD&Dの少なくとも「ドルイドに関するルール」はまことにもって欠陥品である。

 

 コンパニオンルールで「これより後の情報はマスタールールを参照」と書かれた箇所が、「マスタールールには見当たらない」ということで、二つのルールの間で接続がうまく行っていない部分があるのは明らかで、その原因が、TSR社の当時の社内事情が混迷していて御家騒動が持ち上がっていたことと、急激な事業拡大のために多彩な人材を登用して行った結果、2年前にはゲームの素人だった人間をルールの編集者に採用したこと、そして彼女(アン・C・グレイ・マクレディ)が続くマスタールールの方は担当せずに引き継ぎがうまく行かなかったことなどが分かった。

 

 30年前には、こういう背景なんて予想もしなかったよ。

 

 なお、このアン・C・グレイ・マクレディさん、ええとマクレディは85年に結婚した夫の姓で、今はアン・グレイ・マクレディという名で一部のD&Dマニアには知られているけど、コンパニオンルール発売当時はまだ結婚前なので、アン・C・グレイという元々の名を用いている。

 グレイはもちろん「灰色」という意味なので、もしかして、この人が「灰色の魔女」のモデル? CはカーラのC? などと勝手な妄想に駆られたりもしたけれど、たぶん全く関係ない。

 少なくとも、水野さんの口からは、カーラのモデルが誰か、なんて話は聞いたことも読んだこともないので、ここだけの妄想に留めておくのがいいだろう。

 

 とにかく、欠陥ルールと分かってしまったゲームについて、これ以上の記事書きをどうするか考えて見たのだけど、「完全じゃないからこそ、ネタツッコミが楽しそう」という理由で、当初の予定通りの記事書きは続けてみることにします。「欠点がある→何もかもがダメ」ということではないからね。

 ただ、その前に「欠陥部分を補うためのルール」も持っているので、それとの比較を先に済ませて、精神衛生上のモチベーションは維持しておこうかな、と。

 

★第5版のドルイド

 さて、アドバンストと言ってみたものの、その前に大きく時代を飛び越えて、最新バージョンの5版のドルイドに行ってみよう。いや、最近DMガイドも手に入れたし、機会があれば5版の話もしたいのよ。年季を重ねて、こだわりがあるのは昔のゲームだけどさ。ここは温故知新の精神って奴。

 で、最新バージョンの新世紀ドルイドは、ずいぶんとプレイしやすくなっている。戒律なんて以下の通りですよ。

●戒律1:自然を構成する地水火風の四大元素の平衡を保つべし。

 まあ、自然を守れ、という意味では同じなんだけど、「元素邪霊の教団」など元素のバランスを歪める勢力は積極的に排除することを推奨しているわけで、「法と混沌の戦いなど見て見ぬふり」という引きこもり推奨だった時代とは、考え方がアクティブに切り替わっている。
 30年の時間差が、D&Dのドルイドをここまで変えたか、と感慨深いよ、うんうん。ロウラスさんだって、薬草茶商売に積極的になるはずだ。

●戒律2:自然の生態系を維持すべし。

 これについても、敵対相手の存在を明確に示している。ビホルダー(醜怪な目玉おばけ。たこ焼きレンズモンスターとは似て非なる存在)みたいな異形モンスターとか、亡者のアンデッドなんかが出現した時は、「化け物に対する襲撃の先頭に立つ。特に、自分たちのなわばりに近づいてきた場合は」。
 すげえ、ドルイドはアンデッドを退散する力を持たないので、「町の教会を頼るしかない」なんて言っていた30年前が嘘みたいだ。

ドルイドの長「アンデッドだと。許さん。ものども、覚悟を決めろ。何があっても、この森はわしらの力で守り通すのだ。これが我らの生きる道」

 こんな感じで覚悟完了した新世紀版ドルイドの姿がここにある。まあ、一歩間違えれば、山賊の親分と勘違いされそうなドルイド武闘伝だけど、それもまた一興かな。

●戒律3:基本的には、静かに自然を守って生きることを推奨。

 まあ、暴走して、力を制御できないほど荒れ狂うのはなし、ということですな。
 しかし、その後に書いてあることが、やはり格好いい。
「ひとたび危機や脅威が迫るなら、それに立ち向かうために積極的な役割を自らに課す。冒険者として」


 う~ん、ここまで積極的に戦う理由、冒険推奨だと示されたら、ドルイドをどう遊ぶか、迷うことはないですね。
 クラシックD&Dのドルイド像だと、文明社会のクレリックが転職して、森での引きこもりライフを選んだように記されているものだから、本当に隠居生活丸出しで、自らの意志で冒険なんてまず出ようとしない感じに描かれていたもんなあ。
 まるで、「都会の人間社会に疲れたから、そんなわずらわしくて鬱陶しい文明なんて、こっちから背を向けたるわ。自然の豊かな森の中に引きこもって、自己の心の調和に邁進するでござる。さらば、人の世よ。わしゃ、森で瞑想して修行するけん、関わるな」的な考え方だもんなあ。そこには飽くなき冒険スピリッツは一つも感じられん。まあ、そういう引きこもっての自己修養で経験値入るならいいんだけど、クラシックD&Dのルールがそれを許さないわけで。
 いや、ドルイドの伝統的な社会はそうでも、プレイヤーキャラクターの冒険者ドルイドは外の世界を経験しているのだから違ったメンタリティだ、伝統的なドルイド世界からはみ出た変わり者なんだ(冒険に出る異種族デミヒューマンがそうであるように)と解釈することも可能だけど、今後も頑張って冒険者生活を続けるなら是非ともそうすべきだけど、そういう示唆はルールブックには全く書いてないもんなあ(まあ、サポート雑誌の記事なんかでは書いてたかも知れないけど、こっちではなかなか読めんかったからな、そういうの。インターネット時代の今ならともかく)。

 もちろん、5版の機動新世紀ドルイドXなり、新世紀エヴァドルイドなり、のロールプレイイメージに基づいて、今からでもクラシックD&Dをプレイすることも可能だけど、まあ、だったら最新鋭の5版をプレイする方が面白そうだよな、と考えてみる。
 いやあ、灰色のアンさん編集の欠陥ルールより、今の最新バージョンの方が確実にプレイアビリティーは向上してるわ。ドルイド一つから悟った気分。

★隠者の道

 さて、アドバンスト版のドルイドについて書くつもりだったけど、実は第5版の方がプレイアビリティが良いことに気づいてしまい、まずはそこをもう少し掘り下げようと思います。

 ええと、ぼくがD&D関係で今すぐ調べられる手元のドルイド資料は、アドバンスト(2版)、3版および3.5版、そして5版ですね。あとは、ネットで調べられるパスファインダー版(D&D的には非公式な3.75版の位置付け)も行けるかな。
 アドバンストの1版は昔、英文ルールを持っていたけど、2版があるからいらないだろうと処分してしまった。
 4版がないのは、最初のプレイヤーズハンドブックにはドルイドが基本職として載っていないから。4版の場合、ドルイドは拡張ルールのプレイヤーズハンドブックIIに載っている追加職のため、それを持たないNOVAには目下、手軽に調べる術がない。

 よって、当記事では、最新版の5版およびアドバンスト版の2つを紹介しようと思っていました。だけど、まあ、5版だけでも記事が長くなりそうなので、アドバンスト版はまた記事を改めて、という形になりそう。タイトルがアドバンスト版と付けたにも関わらず、ですが、今のD&Dは昔のアドバンスト版の発展ルールという位置付けなので、一応は、タイトルに偽りあり、というわけでもないかと。
 この辺りのD&Dの歴史は、いささかややこしいので、まずは各版の違いなんかを整理するための版上げ歴史概要記事を書いてから改めて、真アドバンスト版ドルイド記事を書こうかな、と思います。

 で、5版のD&Dに戻りますが、こいつの特徴を一言でまとめるなら「ロールプレイを重視した原点回帰なシステム」と言えますね。
 ロールプレイ重視というのは、これまでのD&Dと比べても、キャラの背景を決めるルールが充実しているから。

 試しにキャラ作りをしてみますか。
 キャラ名は、アレクラストのロウラスさんにちなんで、ハイラスさん。せっかくなので、彼には今後のドルイド記事のアシスタントガイドを務めてもらいましょう。
 で、ドルイドの推奨背景は「隠者」。隠者になると、「医術」「宗教」の2つの技能をもらえ、さらに「薬草師道具」を使った判定にもボーナスが得られます。まあ、推奨されているだけあって、さすがはドルイドっぽい特技だこと。
 さあ、次はダイスを振って、「隠棲の理由」を決めますよ。D8振って、コロコロ、8。幸先がいいのかな。
 ええと、「霊性ある人物、場所、宝物を求めて巡礼の旅を続けていた」……って、隠棲じゃないやん。孤高の旅人って感じじゃん。隠棲しているはずのキャラがすでに旅に出ているとは、さすが5版。アクティブな冒険を推奨するシステムだ。

 とりあえず、ハイラスさんはアレクラストのロウラスさんの弟子だったんだけど、自分の守るべき森を求めて旅に出たという設定にしよう。ところが何の因果か、時空の乱れに巻き込まれて、NOVAのところに来るようになった、と。孤高の次元ドルイドのハイラスさん。

 さあ、次。
 何々、隠者は隠棲、というか旅の間に「何やら凄いものを発見した」とある。何を発見したかは、DMとの要相談。
 結局、NOVAが考えないといけないのか。すぐには思いつかないので、今はパス。後で決めよう。

 次は、人格的特徴。D8だ。コロコロ、1。

「長く独りであったために滅多に言葉を発せず、もっぱら手ぶりや時々発するうなり声で意志を表す」
 さすがに、そんな奴じゃ、アシスタントガイドは務まらない。却下だ、却下。NOVAにも付き合う相手を選ぶ権利はある。もう一度、ダイスを振るぞ。まともなの、来い。2。
「常に物静かで落ち着いており、生死の境にあっても同様である」
 うん、これなら何とか。獣みたいな蛮族ではなく、クールガイなハイラスさんだ、決定。

 次は、尊ぶもの。D6。6が出たぞ。

「己を知ること。ただ己を知れば、他に知るべきことはない」ですか。

 だったら、ドルイドについて、いろいろ一緒に考えていきましょう。何となく、静かに、自分のアイデンティティーを考える哲学者タイプの旅人を連想。

 続いて、関わり深いもの。D6。3だ。

「私は旅の間じゅう悟りを求めて得られなかった。今もまた求めて得られずにいる」

 なるほど、だったら、共に悟りの道を目指すとしましょう。だから、NOVAの空想、妄想に付き合ってね。なあに、一人じゃなくて、二人でブレーンストーミングでもすれば、悟りにつながるアイデアだって得られるさ。経験者は語る。

 最後に、弱み。これもD6。6か。

「秘密を独り占めにして誰にも教えようとしない」

 お前、ダメだろう。そんな自己中な奴だから、悟れないんだぞ、きっと。そんな奴は、一度、考え直すといい。
 もう一度、4。

「交友や和合を台無しにしても言い争いに勝とうとしてしまう」って、実はケンカっ早いってか? いや、秘密主義よりは、議論に熱くなる奴の方が、まだ扱いやすいのだが。論争、大いに結構。ネット議論(リアルもそこそこ)の年季の違いをたっぷり思い知らせてやる。
 ぶつかることで深く結びつく友情、傷ついたことは無駄じゃなかったね♪ と歌いながら、ドルイドファイト、レディーGO!のゴングを熱く鳴らしてやるぜ。俺のマグマがほとばしる。

ハイラス「いや、NOVA殿。我々、ドルイドに対して、あまりにもおかしな主張を繰り返すのは、そろそろ止めにしてもらおうか。私が真のドルイド道、略して、ドルイ道を示してやるしかないようだな」

 ほう、ハイラスとやら。
 だったら、示してもらうとするか、貴様のドルイ道をいうものを。
 果たして、このNOVAが聞くに値するものかな?

ハイラス「ふむ。では、この私の、旅を重ねて得た修行の成果を今、ここに示してやる」

★5版ドルイドの能力

 そもそも、ドルイドの信仰ってどうなってるんだ?
 クラシックD&Dの記述だけじゃ、正直、よく分からん。元ネタがケルト神話の聖職者ということは分かるんだが、彼らは自然崇拝の引きこもりではなかったはず。ケルト神話の神々でも祭っているのなら、歴史的にも納得するんだが、具体的に例示が欲しいぞ。

ハイラス「ほう。ケルトか、そこはすでに踏破済みだ」

 行ったことがあるのかよ。

ハイラス「当然だ。私は次元ドルイドの異名を持つ者だからな。大魔術師マーリン殿にも師事したことがある」

 マーリンにも会ったのか。何てこった、あんたは伝説のドルイドの弟子ってことかよ。こいつは驚きだ。

ハイラス「なあに、たったの数週間だ。教えのほんの触りの部分を聞いたに過ぎん。ケルトの神のうち、ドルイドに直接つながる神格は、大自然と森の神シルヴァヌス。オーク樹の欠片を聖印として持つ」

 おお、確かに5版ルールブックの巻末資料にも、そう書いてある。あんたのドルイ道、決して嘘ではなさそうだ。

ハイラス「ケルトは一例に過ぎん。ドルイド信仰は、各文化、各異世界ごとに土着の神々、自然の諸力を司る神々と結びつき、独自の発展を遂げている。私の行った世界、グレイホークやフォーゴトン・レルムと呼称されるフェイルーン、ドラゴンランスのクリンなどでは、それぞれ異なる形態のドルイド信仰が見られた。私の故郷は、フォーセリアアレクラスト大陸、ラムリアースにあるが、NOVA殿はご存知かな」

 ああ、知っているも何も、この間、ロウラスさんの薬草茶をご馳走になったところだ。そう言えば、弟子の一人が行方不明になって心配だ、とも言っておられたが、もしかして?

ハイラス「ほう、師匠の客人だったとは。すると、NOVA殿も次元間を旅する術を心得ておられるのか?」

 一応な。時空魔術は専門だが、それには媒介する書物やその他の物語の存在が不可欠だ。それに転移するには、うまく時期を見計らわないといけない。アレクラストはこの前、行ってきたばかりだから、次に行けるようになるには、少々時間がかかる。
 ……どうした? 残念そうな顔をして。

ハイラス「うむ。NOVA殿は聞く限り、自分の意思で時空間を飛び回っているようだが、私が次元ドルイドとなったのは、自分の意思ではない。どうやら、私は大いなる力に呪われてしまったらしく、自分の意思とは関わりなく、異なる世界に強制的に転移させられる運命なのだ。次元の旅を長らく、幾度となく繰り返したものの、故郷の森へは今だ戻ることができずにいる。NOVA殿なら、もしや私を故郷へ帰してくれるやも、と期待したんだが」

 だったら、しばらく、ここにいればいいんじゃないか。
 今すぐというわけには行かないが、そのうち、時機が来れば、アレクラストへも行けるようになると思うぜ。今、あの辺りの時空は、フォーセリアとか、ラクシアとかに加え、最近になって発見された新世界「アルフレイム大陸」とかの影響で、次元の波が少々ややこしいことになっていてな。うまくタイミングを計算して向かわないと次元の狭間に遭難しかねん。
 この前、行った時はアルフレイムの影響は小さかったんだが、だんだん近づいて来ているようでな。少し観察してからじゃないと、あの辺に向かうには今はまだ危なっかしくていけねえ。

ハイラス「ラクシア、それにアルフレイムの名は初めて聞くが、まだまだ私の知らない世界はたくさんあるようだな。今の私は次元のさすらい人。できるなれば、自由に次元間移動する術を求め、この身に宿る呪いを解除し、故郷に安心して戻りたいのだが、いまだ果たせずにいる」

 俺にできることなら何でもするが、今はただただ待ってくれ、としか言えねえ。

ハイラス「待てる時間があれば良いのだが。NOVA殿がアレクラストに飛び立てる時間が整うのが早いか、それとも私が勝手に飛ばされるのが早いか、ちょっとした賭けみたいなものやも知れぬ。だが……これまでは何の手がかりも得られず、ただただドルイドゆかりの土地や世界にやみくもに飛ばされただけなのだ。まるで、運命が私にドルイ道を探求するべく命じたかのようにな。ここでNOVA殿に会うことになったのも、もしかすると運命の導きかもしれんな」

 そうかも知れんし、そうでないかも知れん。
 だが、俺にとって、あんたの来訪は渡りに舟という気がするぜ。ドルイドについて、いろいろ調べている最中だったからな。できれば、いろいろ聞きたいんだが、いいか?

ハイラス「時間が許す限りはな。だが、私はいつ、ここからも飛ばされるか分からぬ身だ」

 そうなったら、こっちから、あんたの飛ばされた先を割り出して、呼び戻してやるさ。そして、あんたを必ず故郷に戻してやる。これでWinWinだと思うが、どうだ?

ハイラス「かたじけない。で、何が聞きたい?」

 そうだな。いろいろあるが、ドルイド信仰は世界によって異なる形態がある。これでいいんだな?

ハイラス「ああ、だが共通するのは、似たような自然神を崇拝するプリーストの教団が他にあったとしても、ドルイドの教えはもっと古くから伝承されているということだ」

 そこのところが、実はよく分かっていないんだが、ドルイドと、自然神を司るプリーストまたはクレリックっていうのは、同じなのか、または別々なのか。そして、別なのなら、どうして似たような神を信仰するのに、同じじゃないのか。質問の意味が分かるかな?

ハイラス「分かるとも。私の故郷では、プリーストの信仰する神と、我らの交信する自然界の精霊は別の存在だったが、世界によっては区別されないケースもあるようだ。しかし、文明人の信仰する神に比べると、自然に根差した民の信仰する神は、より古い原始の諸相を帯びると聞く」

 つまり、信仰する人間の生活形態や文化の違いによって、同じ神でも性質が変わってくると言うことか? ギリシャ神話のアテナが、ローマ神話のミネルヴァに置き換わったり、ギリシャ人にとって太陽神は男性だが、俺みたいな日本人にとっては太陽神が女性であったりするような感じか?

ハイラス「それらの例示は、私にはよく分からんのだが、原始の力を重視する民と、文明に基づく信仰を重視する民とでは、同じ神を違った目で見て、違う力を授かることもあるのだろうな。 都会人は森の緑にただ安らぎを感じるか、暗い森の影に恐怖を感じるだけだが、我々森の民には、もっと奥深い木々の息吹や自然界の命そのもの、その強さや儚さ、恐ろしさとは別の畏れを肌で受け取るようなもの、という説明で納得してもらえるか?」

 う~ん、分かったような、分からないような。
 いや、言葉の意味は分かるんだが、実感を伴わないというか。
 要するに、都会人と森の住人では、同じ物を見ても、違った感じ方をするってことだな。感じ方が違うから、信仰のイメージも変わってきて、クレリックドルイドの信仰形態や得られる加護の力も似て非なるものに変換されるということで今のところは納得した。
 じゃあ、次の質問だが、単刀直入に行くぞ。あんたはSW1版ではなく、D&D5版のキャラなんだが、一体、修行してきて、何ができるようになったんだ?

ハイラス「SWとか、5版とかが何を示すのか、私には皆目、見当も付かんが、アレクラストから切り離され様々な世界をさすらう運命に見舞われているという意味では、NOVA殿の言うとおりなんだろうな。私の修行の成果を知りたいということだが、ドルイドが自然にまつわる呪文を使えることはご存知だろうか」

 言われるまでもないな。そいつは後々調べるとして、他には何ができる?

ハイラス「自然の化身に変身することができる」

 おお、仮面ライダーか? それともレインボーマン?「 ダッシュ7、太陽の化身」とか、「ダッシュ4、木の化身」とか、「元素集合の術でロボ召喚」とか、そんなこともできるのか?

ハイラス「何を言いたいのか分からんが、それは無理だ。私のいう自然の化身とは、各種の獣のことを指す。狼や、クロコダイル、ジャイアント・イーグルなどにも姿を変えることができるぞ」

 おお、クロコダイル。もしや、あなたはげんとくん?

ハイラス「誰だそれ? もちろん、私はハイラスだ。げんとくんなる御仁のことは見たことも会ったこともない。その御仁も次元間を旅しているのか?」

 いや、それはないと思うが、そうか、獣に変身できるのか。クラシックD&Dでは、そんな能力はなかったな。

ハイラス「アレクラストでもなかった。南の呪われた島の、さらに南にあるクリス何ちゃらという未開の地では、神々の加護で獣に変身する民がいるという噂も耳にしたこともあるが、いささか眉唾ものだな」

 いや、それは事実だ。
 クリスタニアのことは完璧とまでは言わんが、ルールブックも持っているし、十分調査が可能だ。そこに住む者は神獣の民といってな、そうか、彼らもドルイド信仰の一形態といってもいいのかもな。割と原始の部族社会だし、面白い話が聞けた。クリスタニアと、ドルイドなんて、あんたに言われるまで気付かなかったぜ。サンキューな。

ハイラス「私は噂話を口にしたに過ぎん。ともあれ、私のドルイ道では、呪文の使用と獣への変身の二つが重要な特技と言えるが、成長の途中で、どちらを極めるか選択しなければならない」

 5版はそうなってるのね。ルールブックによると、早くも2レベルでどちらかを選ぶ、とある。
 クラシックD&Dでは、そういう運命の選択ってのは、9レベルになってようやくって感じだが、新世紀のドルイ道では、いや、ドルイドだけに限らないのだが、もっとテンポ良くキャラの方向性を決めることができる。今は昔よりもスピード社会だからな。昔のままにやってたんじゃ、すぐに飽きられてしまう。みんな、昔ほど暇じゃねえ。

ハイラス「新世紀のドルイ道? そもそも、新世紀という言葉自体、いささか古いのではないか? そんな言葉は、旧世紀を経験したことのある人間にしか出てこないフレーズだと考えるぞ。今の若者が、そのような言葉に何かを感じるとは思わないが」

 急にメタなことを言い出したな。
 いいんだよ、新幹線はいつの世も新幹線。新しいという言葉を常に使いながら、進化し続けるんだよ。
 この俺が、White NOVA、白新星という通り名なのも同じことだ。おっさんになっても、爺いになっても、懐古趣味とともに振り返るだけでなく、機を見てリフレッシュし、今の歴史を追い続けてやるぜ。
 心はいつも新世紀、いや新星輝って感じに、俺の想いが光ってうなる、未来をつかめと輝き叫ぶ、必殺シャイニングNOVA、勝利の方程式は見えたってところだな。

ハイラス「何と戦っているのか、さっぱりだが、NOVA殿は隠者の道に語られる『しばしば思索や瞑想にふけって周囲の状況を見失う』タイプの人物であることは分かった。あるいは『壮大な哲学理論に基づいて行動しており、好んで自説を説く』のかも知れんが、私の今だ得られていない悟りのヒントにはなるのかも知れんな」

 ああ、俺なんか、しょっちゅう何かを悟ってるぜ。まあ、悟っても、また迷うこともしばしばなんだけどな。迷いながら悟る、悟りながら迷う。こんな器用なことができる奴は、なかなかいないと思うが、こいつは気のせいか?

ハイラス「たぶん、その悟りとやらが、真の悟りに至っていないのであろう。本当の悟りに達していれば、迷ったりはしないはずだ」

 そうかな。
 明鏡止水の境地に達しても、すぐにまた元に戻るような武闘家は知っているが、だから俺もあいつもアホなのだ、と師匠に論破されるのかもな。
 だが、悟って、迷い、また悟るを繰り返すのが人間なんだと思うんだけどな。太陽になったり、月になったり、そして日はまた昇る、と繰り返す一連の円環こそが人の自然なバイオリズムだと俺は考えるぜ。もちろん、その頻度やアップダウンの激しさには個人差が見られるだろうが、俺なんかは割と両極端な方だ。故に、勢いづいた時は止まらずに、常々バランスを模索しているわけだが。

ハイラス「ムムっ、その話は、我がドルイ道の円環の理に通じるものがあるぞ。NOVA殿のおっしゃる悟りが、必ずしも眉唾でないことは感じられた。そう、両極端に振舞うことの危険性を自覚するが故に、常にバランスを模索することこそが、我が師もおっしゃられた中道の教え。さすがは我が師ロウラスの茶飲み友達だけはあるな。是非、もっと詳しい話を聞かせてもらいたいもの」

 よせよ。話を聞きたいのは、こっちの方だ。
 5版のドルイ道が、二つの円環に分かれているという話は、俺も最近、書物で読んだ。

ハイラス「その通り。呪文の道を極める『大地の円環』と、獣の力を極める『月の円環』。どちらを選ぶかで、同じドルイドでも習得できる能力に差異が出る」

 あんたは、どっちを選んだんだ?

ハイラス「アレクラストに暮らしていれば、必然的に『大地の円環』なんだろうがな。今の私は所属する大地からは切り離された身。しかし、どのような世界であろうと、月は常にそこにあり、我が道を照らすように運行している。私は月の導きに従い、世界を旅してきたとも言えるし、そうせざるを得なかったわけだ」

 なるほどな。安定した大地ではなく、不定形にさまよい続ける月の道を選んだわけか。
 正に、機動新世紀ドルイドX、「月は出ているか? 私の愛馬は凶暴です」の世界だな。
 5版ルールブックによれば、「月の円環のドルイドは、野生を守る苛烈な戦士である。(中略)この円環に属するドルイドは、月が形を変えるように形を変える。(中略)ドルイドの血の中に野生があるのだ」と書かれてある。あんたは一見、物静かなようでいて、ひとたび荒れ狂えば、獣となって暴れ回る。
 その気性が次元間を渡る門、ウルティマ世界でいうところのムーンゲートみたいな通廊と連動して、コントロールできないままに次元間転移を生じさせるのかも知れんな。

ハイラス「全ては、私の激しやすい気性のせいだと?」

 あくまで仮説だ。
 俺は、あんたが飛ばされるところを見たわけでもないし、あんたの感情と次元間転移に相関関係がどの程度あるかは、データを集めないと確かなことは何とも言えん。
 ともあれ、あんたは各世界のドルイドのことに詳しいし、俺は次元間、多元世界の理についてはそれなりに調べてきた経験がある。お互いの知恵を出して、補い合えれば、欠けている何かを補完することだってできるかも知れないぜ。

ハイラス「……どうやら、こここそが、そしてNOVA殿こそが、私が求めてきた場所、御仁なのかも知れないな。私が見てきたドルイ道にまつわる知識なら、喜んで提供するゆえ、今後ともよろしく頼む」

 ああ、こっちこそな。

(完。5版のドルイド紹介は、まあ、こんなところかと)