ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

〈事象の分岐点〉にて

 いきなり解説しよう。

 〈事象の分岐点〉とは、White NOVAのブログ世界に存在する一種の異空間で、多くのパラレルワールド異世界、歴史上の大事件などに通じるターミナル的な場所である。NOVAの部屋自体がすでにそうなっているという意見もあるが、それは誤解である。確かに、NOVAの部屋は住人の特異点的性質からか多数の時空の歪みが観測されるときもあるが、そんなことを言ってしまえば、NOVAは三次元世界で居場所を持てなくなってしまうので、断じて否と主張しておく。

 一応、時空を歪める特異点的性質は、リアルの三次元ではなくて、ブログ世界に留めておくのが吉である。現実世界では慎み深く、温厚な塾講師とか、一人の社会人として真っ当に生きるのがいい。そして、蓄積した想いなんかはブログ世界で書き表したり、時々コミュニケーションとして自分の掲示板や他人さまの掲示板、ブログコメント、ツイッターなど複数で書き散らすといい。

 

 ほら、だって、自分は長文書きで、いろいろなことを書く人間なので、一箇所で集中的に、あるいは誰か特定個人向きに思う存分、発散すると、とんでもないことになってしまうわけで。肥大化した自己顕示欲旺盛の長文を一箇所で書き散らされたら、まあ、周りには迷惑ですな。内面にいろいろ抱えた人間(創作家志望にありがち)ほどTPOをわきまえて自制しないと、自己主張の人間爆弾になりかねない。

 そんなに自分語りがしたければ、自分でそれができる場を構築して、思いきり自分一人で誰にも迷惑をかけずにやればいい。それが例えば、このブログだったりする、と。

 まあ、それでも拙い自己主張の駄文を読んでくれる奇特な客人がいれば、よっしゃラッキーって気分にもなったり、コメント内容がひどければ「最悪だ」と桐生戦兎みたいにため息つきながら改善策を検討して、プラス思考に無理矢理引き上げたり……うん、ビルドで多用されている「最悪だ」は戦兎の皮肉っぽい策士キャラ(最悪のままでは終わらさない)を象徴している名セリフだと思うけど、リアルで活用するのはなかなか難しいですな。

 

 何でもかんでも、いちいち「最悪だ」を口癖にしていれば、自分が鬱になるし、人からも嫌われる。あれは、戦兎の、引いてはビルドの物語の根幹を為す「最悪からも這い上がるポジティブ精神」や「状況を皮肉っぽく分析しながら、視点を変えて対処する知恵、トリッキーな物語展開」を象徴するセリフで、それを言った直後には「ため息→ニヤリとする笑顔」に切り替えて見せるからこそ、印象的に輝けるわけで。

 もちろん、戦兎は基本的に陽気に振る舞えるコミュニケーション能力の高い人間(内面に鬱屈した自暴自棄な闇も抱えてるが)なので、その言葉を口にしても、すぐに雰囲気を改善できる陽性演技のできるキャラとして描かれている。日頃は暗さを感じさせない、しかも頭のいい準備万端整えている男が、想定外の事態(しばしば仲間の予想外の感情的かつ直線的なバカな行動)に直面して、困惑して自身の気持ちを扱いかねている際に、思わず漏らすつぶやきが「最悪だ」である。

 計算高い男が時々ぶつかる想定外。だから「最悪」。

 

 さあ、これをNOVAが使うとしたらどうなるか。

 まず、自分ではそれなりに計算高い人間のつもりだけど、戦兎ほど緻密じゃないし、むしろ穴が多い。だから、しょっちゅう想定外のことが起こって、対応に四苦八苦することもしばしば。

 そういう状況で、いちいち「最悪だ」と呟いていれば、NOVAの人生は最悪だらけになってしまう。

 どちらかと言えば、NOVAの人生は、想定外の事態や、自分の奇想天外になりがちな発想に、穴を埋めることで成り立っているような気がする。

 だって、特異点だもん。そりゃ、ブラックホールだって発生するさ。

 そして、他人に迷惑をかけまいと思えば、自分で開けた穴ぐらい自分で埋めるのは常識でしょう。

 問題は、そのNOVAの鍛えた穴埋め能力に引き寄せられたのか、自分で勝手に穴を量産する才能を持った人物に好かれがちなことだな。

 何で、他人が開けた穴をNOVAが埋めなければならないんだ?

 

 そんな時にNOVAは思わずつぶやくのである。「最悪だ」

 読者の皆さんは、最悪な人にならないように。

 

★〈事象の分岐点〉の管理役

次元ドルイド「おお、NOVAどのか。この〈事象の分岐点〉に顔を出されるとは、何か問題でも?」

 いや、特に問題はないぞ、エリスタン。

エリスタン(?)「ちょ、ちょっと、NOVAどの。いくら私が最近、GTライフに登場しなかったからと言って、名前を間違えるとはあんまりではござらんか? エリスタンはドラゴンランスの物語に登場する、善神パラダインの僧侶で、私はアレクラスト出身の精霊使いドルイドから、D&D第5版のルールでコンバートした男。名前は……」

 ああ、悪い悪い。
 あんたは、一角獣の森のドルイドの長ロウラスさんの弟子の一人、ハイラスさんだ。
 何だかキャラがかぶる感じなので、つい別キャラと間違えてしまった。悪気はなかったんだよ。

ハイラス「うむ、エリスタン殿のことは、ちらっと小耳に挟んだこともあるが、立派な人物と聞く。そんなお方とキャラがかぶると言われては、悪い気がしないな」

 ああ、エリスタンは立派な僧侶だ。
 立派すぎて、クソ真面目すぎて、ドラゴンランスの作者の一人マーガレット・ワイス女史が、相方のトレーシー・ヒックマンに「どうしよう、トレーシー。エリスタンが真面目になり過ぎて、書いていてちっとも面白くならないの。どうしたらいいのかしら?」と相談していたら、いつの間にか作者から存在すら綺麗さっぱり忘れられてしまい、物語からフェードアウトしてしまった挙句、後からそれに気付いた作者から「ゴメンなさい、エリスタン。あなたの存在を忘れてしまうなんて」と謝られてしまい、そのことで一部の読者(NOVA含む)には絶大なインパクトを与えた名物キャラだ。
 「 真面目すぎて存在感を発揮できずに、作者からも忘れられてしまったことを後から謝られるぐらい、いい人」ってキャラは、俺の結構長い読書人生でも彼一人だからな。 

 作者から忘れられたことで読者には忘れられないキャラになったのは、ある意味、ロードス第2部のシャリーさんに匹敵する「いい人なのに可哀想な扱い」で、どうもそういう恵まれないキャラにスポットを当てるのが好きなんだわ、これが。

ハイラス「う~ん、そういう人物とキャラがかぶるのは複雑な気分だが、どうしたら良いのであろうな?」

 基本的に、物語の主役になれるのは、「成長する未熟者」か「すでに成長済みで強いのだが、不幸な出来事で挫折して、そこから再生する古強者」ってのが定番だからな。あるいは「主人公とは名ばかりの語り部キャラという立ち位置で、他のキャラの陥った事件を冷静に観察しながら批評し、いざという時には助言したり手を貸したりする名探偵風味のデウス・エクス・マキナ的主人公」というのも最近は増えていたりする。
 物語を描くには、読者が主人公に感情移入しやすくするためのフックが必要だし、それには「成長」「挫折の克服」という要素は、古くからそれぞれ年少向き、年長向きに機能してきた。
 また、近年はゲームというインタラクティブな物語、つまり受容者が受け身ではなくて能動的に物語に関与できるストーリー媒体が増えたことで、擬似創作めいた感覚も一般的になった。つまり、受け手でありつつも創り手的な気分を味わえるため、いわゆる神の視点、登場人物の動向を高みから見下ろすような距離を置いた鑑賞方法も当たり前になった。そういった背景のために、昔はあまり主人公にはなり得ず、主人公の助言者止まりだった「神視点の達観キャラ」(ホビットガンダルフとか)が主人公として受け入れられるようになったのだ、と俺は分析するがな。

ハイラス「なるほど。以前の私なら、そのような解説を聞いたところで、ちっとも理解できなかったろうな。しかし、NOVAどのに、この〈事象の特異点〉に導かれ、様々な異世界の監視役の任を仰せつかったおかげで、『神視点』という言葉の意味も実感できるようになったわけだ」

 ああ、あんたは異世界の出来事を物語として認識しているリアル三次元世界(TORGという多元世界RPGではコアアースと称する)においては異物だったからな。
 おまけに、望まぬ次元移動に突然巻き込まれ、それまで学んだ経験やスキルが無用と化す危険性を鑑みてな。武芸とか運動能力といった肉体系のスキルは基本、異世界に飛ばされても役に立たなくなることは稀だが(もちろん、どれだけ足が速くても、海だらけの世界では機能しなかったりもするが)、それより世界法則やら魔術といった知識面、精神面のスキルは、次元移動先でも有効に使えるとは限らない。アレクラストの呪文をそのままコアアースに持ち込んでも、元となる世界法則が違うので、違和感を伴わずには使えないわけだ。

 こいつは余談だが、 昔、現代学園ものという設定なのに、何のアレンジも施さずに「スリープクラウド」というアレクラストフォーセリアの呪文名をそのまま使用して、失笑を買った未熟な創作家がいてな。
 魔法や信仰はその世界らしさを構築する根幹要素なのに、どうも異世界構築という経験を持たない、というか、異世界での冒険に創作家としての関心を持たない人物だったらしく、それでいて魔法といえば自分が知ってる(しかも多くのファンタジーファンが知ってる)ゲームの魔法だけを手っ取り早く調理することなく仕入れて、「自分は詳しい」と錯覚しがちな御仁だったわけだ。
 まあ、「スパイダーマンだけを見て、アメコミ全てを分かったつもりになる」ような人間は、中学生とか、一部高校生にも見られるが、社会人になるとまず見られない。大抵はマニアになるほど研究することはせずに卒業するか(たまに気が向いた時に映画を見る程度)、好きが昂じて研究を重ねて行くうちに「その世界の奥深さに気づいて、さらに探求を重ね続けた結果、そうそう世界の全てを分かった気にはなれないと謙虚さを会得するに至った」人間が普通。というか、この飽くなき探究心こそが冒険スピリッツってものだろうし、創作活動って、その探求精神の途中経過報告が形になって実ったものと考える。
 それを形だけ真似して、創作ごっこをしている人間の書く作品は、借り物の知識で、しかも間違いだらけでチグハグが目立つんだろうな。借り物なら借り物でパロディと自覚して、コミカルな方向を目指しつつ、たまにシリアスに書ければいい、というのが某所の『翔花伝』なる作品。こういうのは商業作品には向かないスタイルかと思っていたら、近年のアメリカでは大作SF映画でもパロディネタを入れ込むことがしばしばだ。
 案外、世の中の方が、俺の好きな方向に追いついて来たのかもしれん、と最近は考えたりもしている。まあ、こいつは妄想かもしれんが、半分くらいは真実の可能性だってある感じだ。

ハイラス「NOVAどの、創作論を語るために、ここに来たのでござるか? 世界の歴史物語の紡ぎ手、神に近い視点の持ち主として、傾聴には値すると思うが、いささか方向性を見失っておいでのように思われてな」

 ああ、要するに「井の中の蛙」って話をしたかったわけだ。
 ハイラス、あんたはそれなりに研鑽も重ね、思考力を備えた一角の人物だと考えるが、時空転移の影響で、知識を深化させるのもままならず、ぶつ切りの断片ばかり。だから、俺のアシスタントガイドを務めるには到底、役者不足ということになる。その役に必要なのは、俺の言葉を受け止められる程度の柔軟さと、幅広い見識だからな。あんたはいささか頭が固すぎるようだ。

ハイラス「むっ。ならばお役御免というところか。いささか残念だが、頭の固さを指摘されてはどうしようもない」

 なあに、あんたはいい奴だし、単に向き不向きの問題ってだけだ。
 俺は別にアシスタントガイドに向かないからって、あんたを見捨てるつもりはない。だから、あんたに合った別の仕事を見つけたわけだ。この〈事象の分岐点〉に連れてきたのもそのためだ。
 ここなら、様々な異世界を神の視点で監視することができる。誰と話すことも少なく、ただ監視するだけの単調な仕事だが、場合によっては次元牢獄と称する者もいるかも知れんが、次元ドルイドのあんたが時空魔術を手っ取り早く修得するには、ここで長時間過ごして馴染むのが早道だろうからな。

ハイラス「その話は前に聞いたな。今のは、『読者向けの解説』ってことでござろう」

 ああ、そういうメタ視点で考えられるようになった辺り、格段の成長と言えるな。たいていの物語のキャラは、自分が世界の登場人物の一人でしかなく、自分の言動が読者という「上位の視点に立つ存在」に常々監視されていることを知らずに過ごしている者がほとんどだからな。

★時空魔術とクリエイター論

 さて、ここから今日の話の本番だ。いつもながら長い前置きで済まないな > 読者諸氏

 今回は、俺の得意な時空魔術に関するあれこれの話だ。そんな話に興味のない人は去っていいぞ。魔術理論なんて話に関心があるのは、魔法使いかファンタジー作家、ゲームデザイナーの卵くらいだろうからな。

 さて、時空魔術を修得するには、自分が歴史の一部、世界の一部であるという客観認識を備える一方で、歴史や世界に決して埋没することなく、その中で強い輝きを放つ一人の人間としての自我を強烈に意識する必要がある。「時代や社会に対する強い帰属意識」と「個性ある人間としての強い自我」ってのは矛盾する考えだし、前者が強過ぎれば時流や世相に流されるだけになり、後者が強過ぎれば単なる時代や世間から孤立した異端者になる。
 時空魔術師は時の旅人といえば聞こえがいいが、自分のアイデンティティーを失ってしまえば、元の世界とのリンクを失い、故郷に戻ることすらままならなくなる。自由に旅をして帰って来るためには、心の中にパスポートみたいなIDカード、自分の土台となる時間と空間を強く認識する必要があるわけだ。転移しっ放しで帰って来れない人間は、要するにこの世界に自分を縛る絆が希薄なんだろうさ。もちろん、転移先の新たな人生で、元の世界よりも充実した絆を得たから、あえて帰って来ない選択をする者もいるだろうが、その辺は人それぞれってところか。
 ただ、俺は世界や時代に帰属し、かつ己を見失わない道を求めてきた。そういうバランス感覚を保とうとするなかで身につけたのが俺の時空魔術ってわけだ。ドルイド僧が、世界に対する中立的な視点と自然を尊ぶ生き様を旨とするようにな。魔術や信仰には、その人間の生き様が反映されるというが、正にそうだな。世界観や個人の人生観を抜きにして、魔術や信仰は語れねえ。語る奴がいるとしたら、そいつはただの借り物を自分のオリジナルと勘違いしているに過ぎん。

ハイラス「なるほど。私が帰れないのは、アレクラスト大陸に対する帰属意識の欠如ゆえ、と言われるか」

 さあな。あんたの場合は、そういう心因性のものではなく、もっと大きな運命のいたずらのせいかもしれんが、原因追究にはデータが足らん。それよりは場当たり的だが、今の問題への対症療法的な処置が必要だろう。抜本的な対策はその後からじっくり考えるとしてな。

 昔、スパロボで、ミストさんというキャラが対症療法的な問題解決に汲々としている仲間を批判して、「そんなことをしても根本的な解決にはならないでしょう」と空気を冷やすような言動を重ねて、まあ、ネットでネタにされてきたわけだが、要するに「一生懸命に頑張る仲間(およびゲームをプレイする人たち)」を陰でこそこそ批判するところを主人公が見せたんだな。
 彼の異星人的メンタルを示したんだろうが、主人公はプレイヤーの感情移入を誘うように構築するのが普通だろうに、仲間と相容れずに陰でこそこそボヤくようなキャラは、普通、主人公としては受け入れられないだろうぜ。まあ、これで達観して時流の先を見据えて、何らかの根本的な対応策を練るような知性派キャラなら昨今流の主人公として受け入れられたのかもしれんが、本人は決して頭の良くない「行き当たりばったりの猪突猛進熱血キャラ」でもあるわけだ。
 要するに、物語の創り手が場当たり的な物語しか作れない人なので、そもそもスパロボというゲームがそういう場当たり的な行動をとることで事件の真相に近づいていく物語構成が基本なので、「それを言っちゃならんでしょ、プレイしていて白けるでしょ」的なセリフを自嘲気味にミストさんに喋らせたと考えられる。ところが、その自嘲がまるでプレイヤーを責めているように、あるいはスパロボの物語を根本的に否定しているようにも受け取られるから、プレイヤーの感情を悪い方に刺激した結果、ミストさんは「ネットでネタキャラとして愛され続ける」ようになったのは面白いと思う。
 腹立つものに出くわした際に、いちいち怒ったりせずに、「話のネタとしてお笑いに昇華しよう」って思想は、昔、と学会なんかが90年代に主張してきたのだが、その元会長自身がそれを実践できておらず、「感情的に激しやすい人物だったことを自身の掲示板でさらけ出してしまい、一部のファンから批判されるネタ」になったのがゼロ年代。このことは、「人は自分の日頃の主張どおりの行動を、イザという時に実践することはなかなか困難だ」という自己矛盾の一例、反面教師的に考える材料として受け止めたものだけど、実はと学会の主張していた「ムカつくものは笑いのネタに」という思想そのものは、10年代に観察する限りはネットの匿名掲示板なんかでは割と風潮として定着しているように見える。

ハイラス「そのミストという御仁や、と学会という集団の話は、私には縁もゆかりもないということは分かるが、その例を通じて、NOVA殿は何を伝えようとしているのか、もう少し分かりやすく噛み砕いてくれないだろうか。読者もそう望んでいるようだ」

 うっ、そう冷静に問われると、場当たり的な記事も勢いで書きがちなNOVAとしては悩むことになるんだけどな。
 読者を持ち出されると、勢いを止めて、整理を試みなければならないじゃないか。

 一つ、ミストさんは仲間に対する帰属意識が薄く、周囲への批判的言辞がやたらと鼻についたために嫌われた。まあ、影が薄くて忘れられがちなキャラと、どちらがいいかは疑問だな。目立っている分、個性的でいいという意見もあれば、悪目立ちして嫌われてちゃ何の意味もないという意見もあって、愛憎入り混じったネタキャラという評価に落ち着く。

 二つ、現場の人間は、対症療法的な処置を一生懸命頑張るしかない。その上で、目前の仕事をコツコツ重ねて、場の一定の信頼を得て初めて、もっと根本的な問題解決の方法に頭を回すのが吉だが、場の信頼を得ていない人間が、いきなりポッと出で、大上段に構えた問題提起をバーンと立ち上げても、周囲には受け入れられない。

 現実的には、まず場の信頼を集めて、それからおまけ程度に軽く問題提起を試みて反応を伺う「段取り力」を意識してからだな。周りに嫌われてしまっちゃ、発言力はどんどん低下する一方だ。
 まあ、バカな発言をして場の空気を冷やしてしまった時には、そういう失態を謝ってみせて殊勝に振る舞うことで場のシンパシーを高めるコミュニケーション手法、いわゆる下手(したて)に出るやり方もあって、そういう腰の低さは日本社会では評価される。
 逆に、失態をしても謝りもせず、問題自体をスルーしてしまって良し、という態度は、その場は流れるかもしれないが、失態を繰り返すにつれて、不信度は飛躍的に高まっていく。テストで間違えた解答を解き直して反省することもなく、イヤなことには目を向けない生き方をすると、どんどん成績が下がっていくのと似たような理屈だな。
 ミストさんも、自分の批判的な言動を後から反省して、仲間との目に見える絆を構築するような物語に展開できれば、「成長する、失態から学べる好印象キャラ」として本当の意味で愛されたのだろうが、そういう描写はなかったからな。ゲームのデータとしての成長はもちろんあって、結構優秀なキャラだったのだが(撃墜数に応じて能力がかさ上げされるシステムでもあって、主人公だから出撃機会も多く普通にプレイを重ねるだけで、どんどん強くなる)、ストーリー上の扱いがどんどん嫌な奴化していき、ストーリーゲームなのに「ストーリーを読まなければ面白い」という自己矛盾の評価を受けたりもしたな、スパロボK。
 それを反面教師として、「失敗→反省→修行したり自己強化を頑張る→一歩成長」そういう姿をきちんと描写されたキャラは、主人公としてやって行ける。まあ、ネット上の書き込みに置き換えるなら、演出家は書き手本人だから、自分でそういう姿を見せなければいけないんだけどな。大抵の人は、それが社会のマナーだとリアルで経験しているから自然にこなせるのだが、それができない一部の人間が暴言や失言の繰り返しでコミュニケーション能力の欠如を示しがち。まあ、そこを自覚すれば、傲慢な批判言辞なんかも少なくなるんじゃないかな。

 まあ、話がこうやって飛躍的に展開するのが俺の悪い癖だが、三つめは、「自分の日頃の言動や主張は、時折、自分の垂れ流した文章を読み直したりしながら、客観的に見つめ直すこと」が大切なんじゃないかな。
 例えば、俺が「寄り道や脱線を繰り返すような奴は、ストレートな自己主張もできない最悪な書き手だ」などと主張してしまえば、バカにされるのは明らか。こういう改善しようと思ってもなかなか改善できない特徴(個性ともいう)は、自己ツッコミのネタにするとか、自覚して持ち芸にするとか、推敲を繰り返して話の流れや段落切り分けなんかのフォローを重ねて少しでも読みやすくする努力をするとか、いろいろ磨き上げることを考えている。
 そして、あまり自己客観視のできない人間は、「自分の内面の悪」を他に投影して見がちで(いわゆる鏡って奴)、他者への批判的言辞がことごとく自分に返ってくることが多く、そういう人間が議論の場に立つと、自爆芸を繰り返すお笑い芸人になりがち。そして、そういう人間に限って、いろいろなことを敵視して批判する言動を繰り返し、まあ、結果としてますます己が傷つき怨念を募らせる悪循環を繰り返すことになる。 

 「偏狭で傲慢」と他者をなじる人間が、一番「偏狭で傲慢」な人間であるケースはよくあるわけで。それと、自己客観視しない人間は、「自分が他人から批判された言辞をもって、悔しいものだから、それを何かにぶつけ返そうとする傾向」がある。
 かく言う俺も昔、尊敬する人物から「独り善がり」「センスがない」「周りが見えていない」などと当時の短所を指摘されて、割とショックを感じたりもした。まあ、そこから欠点を克服しようと、いろいろ足掻いたりもしたわけだが(こういう指摘からは逃げずに受け止め、棚上げにしないのが、俺の長所だし)、自分でそういう穴埋めをして克服したかな、と思えば、今度は他人の穴が気になって仕方ない男になってしまった、というオチ。
 よって、今も俺に厳しく批判されている人間は、「ああ、NOVAも昔は同じことを誰かに言われてきたんだな」ぐらいに受け止めてくれたらいい。まあ、俺は10年とか20年という長い時間をかけて改善に努めてきた経緯があるから、「あなたも同じでしょ?」と返されたら、「昔はな。だが、今は違う。常にそのことを考えて、欠点の克服はしてきたんだぜ。お前はそれすらしようとしない。だから、同じ過ちを繰り返すのだ。いい加減に成長しろよ」と3倍以上の言辞で反論できる。

 ここまで書いて、結論するなら、孫子の兵法で言うところの「彼を知り、己を知れば、百戦危うからず」ってことかな。だから、俺は自分を知ることと、関心を持った相手を知ることを徹底的に努めてきたわけで、そういうところから目を背けないことを美徳とも考えてきたわけだが、逆に知り尽くして関心を持てなくなった人間に対しては、極端に冷淡になるという欠点もあって、それでも俺に自分を見て欲しいと言うなら、「成長して一皮剥けた人間になれ」と返さざるを得ない。
 このことをリトマス紙に例えるなら、「NOVAと長い間、付き合ってきて批判されない人間は、成長を重ねているか、安定した穏やかな人物、あるいは引き出しが豊かで、うまく小出しにしながら飽きさせない工夫をしている」ということですな。成長する若者と、円熟した深みを持つ老成した方々を、NOVAは蔑ろにしないということで。

ハイラス「なるほど、つまりNOVA殿が私に言いたいのは、『何かに対する帰属意識を持て』『自分にできることからコツコツと。一気に高望みはしない』『自分をしっかり見つめ直せ。他からも学び成長せよ』ということでござったか」

 そういう風に簡潔にまとめられると、話の長い俺としては助かる。
 ハイラス、あんたは口数こそ少ないが、的確なまとめ役、そして時空の監視人に向いていると思うぜ。娘を見守るので忙しくなりがちな俺に代わって、しばらく〈事象の分岐点〉に常駐して、世界の監視者の任を果たしてくれると助かる。次元ドルイドは、次元を不確定に渡り歩くさすらい人から、次元をじっくり監視する神の代行者に昇格したと思えば、苦にならないんじゃないかな。

ハイラス「何でも、言葉は言いようでござるな。了解した。ここに馴染むことができれば、たとえ次に望まぬ転移に巻き込まれようと、自分の意思でこの場所に戻ることもできるようになろう。ここを拠点として活用できるようになれば、故郷に帰ることも自分の意思で可能になる。NOVA殿の深いご配慮にまことにもって感謝する」

 いや、そんな大層なことじゃない。
 確かにあんたの洞察は間違っちゃいないが、俺はあんたに一から十まで時空魔術を教える時間もないし、娘のことと自分の仕事や研究のことで忙しいからな。あんたが時空を監視し、問題があれば俺に報告する仕事をこなしてくれるなら、俺もその分、楽ができるし、あんたもいろいろ学べる。互いにWinWinな関係になれるってことだ。
これも、あんたが多元世界をさすらってきた経験があるからこそ、託せる任務だと思うぜ。

 時々、書物とか差し入れも持って来るし、思考の整理のために話し相手になってもらうかもしれないが、まあ、留守番はよろしく頼む。じゃあな。

★クリエイター論、差し替え記事

 以下は、ハイラスと語る話には含められなかった、うまくつなげられなかった、いわゆる没原稿というか、アナザーエンディングみたいなものだ。

 まあ、発表しないという手もあるが、興味を持つ人には興味深い内容だとも判断するので、おまけ的に残すことにした。これはこれでNOVAの生の意見ってことで。

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 まあ、今の世の中、借り物の知識はありふれているし、創作のマネごとは誰にでもできる「誰もがクリエイター」になり得る時代だからな。だが、その中で本物の創作家の精神や技量を身に付けられるのは、ほんのわずかだ。何しろ、世の中に物語は腐るほど溢れ返っていて、その中で真に注目を浴びて、時代を動かす作品は一部だからな。作家も、それを支える編集者も、そしてサブクリエイターとして世界観の構築に貢献するイラストレイターも、それぞれ自分の信念や愛するものを形にするために誰もが一生懸命だからな。その中で、他にない自分だけの光を作品の中で示し得るクリエイターに育つのは半端じゃねえ。

 今の時流を読む目じゃなくて、時流の先を読む目が必要だし、何が時流かそもそも分かっていなければ、独り善がりで周囲が見えていなければ話にならんし、周囲の人間の意見をわざわざ質問しなくても普通に感じとれるようでなければ鈍感の謗りを免れん。

 しかも必要なのは目だけじゃなく、実際の腕前、力量って奴も伴わなければならない。周囲の献身的なサポートで一時期、鮮烈にデビューしたとしても、その後、周囲の求める作品を書き続ける根気や、周囲との折衝能力を磨き、自分の書きたいものと周囲の期待するものを上手く両立できるように折り合わせて、どちらも満たせるものが何か適確に焦点を定め、エンタメとして成立する作品に落とし込むには、相当の手練が必要だろうさ。

 昔の俺にはそこまではできなかったし、今の俺にもできるかどうか。
 まあ、それを目指して努力は重ねてきたつもりだが、そうなるともうプロかどうかは大した問題じゃないとまで悟ってしまったわけだ。要は自分が書きたいものを普通に書けて、それを発表できる場所を普通に自分で構築したんだからな。金という報酬は得られないからプロの創作家とは言えんが、今の俺は教育のプロだからな。教育のプロでありつつ、金はもらえなくても心は創作家にして、「激走作家カ~~クンジャー」を名乗ることは可能なわけだ。そんな気持ちで、今も書くんじゃぁ。

 ハイラス、あんたはアレクラスト大陸の故郷に帰りたいと言ったな。だったら、外から見てアレクラストがどういう世界か、きちんと認知して、自分の帰属する世界を心の中で座標設定し、イメージ構築できたときに、この〈事象の分岐点〉から飛んで帰ることができる。
 また、あんたは望まぬ時空転移に巻き込まれるかもしれない。その原因は俺にも目下研究中だが、近年、似たような時空転移が世界の各地で相次いでいるという話もよく聞く。サイバスターという風の魔装機神を操るマサキ・アンドーという男も俺の長年の知人だが、あいつは何度の転移に巻き込まれたか分からねえ。
 まあ、マサキの世界ラ・ギアスは、バンプレストという親世界の消失に影響してか、全ての精霊が消滅するという世界の改変を迎えて、なかなか酷いことになっているが、今後は精霊復活が起こるのか、精霊を求めて新世界開拓を志すのか、それとも物語そのものが消えてなくなるか。俺には先は見えないし、直接手を出すこともできないので、じっくり様子を見守るしかないさ。

ハイラス「NOVAどのは、それほどまでに各種の世界の行く末を案じてらっしゃるのであるな。その時空監視の大任、私のような流れ者の次元ドルイドに任せていただき、感謝するところだ」

(完)