ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

AD&Dとマスタールールの背景(その1)

今回は、アドバンストD&Dと、クラシックD&Dのマスタールールに話題が移ったので、ルールの中身ではなく、その背景事情を歴史的に振り返ってみたいと思います。

まあ、ゲイリーさん中心の歴史はすでに書きましたが、今回は多元宇宙と絡めた上での背景をば。

 

まず、1974年に出版されたオリジナルD&Dのルールを整理するために出版されたのがアドバンストD&Dの第1版。

1977年にモンスターマニュアルが出ましたが、プレイヤーズハンドブックが出た1978年こそがAD&Dのスタートだと見なす資料もあります。が、ここでは77年説に合わせてみると、この年は映画『スターウォーズ』の第1作が公開された年でもあります。

現在のアメリカ人オタクの古典的バイブルとされているのがD&Dとスターウォーズなんですが、当初はマニアだけのゲームとされていたD&Dが一般層にも知られるようになっていったのもAD&D発売以降と考えると、この77年から78年という年がサブカルチャージャンルの一つの節目と考えることもできそうです。

 

ここでスターウォーズとD&Dの共通点を挙げてみると、「異種族のいる架空の世界(宇宙)で、剣と魔法を駆使した大冒険。悪役の帝国軍から、お姫様を守って戦う辺境の砂漠出身の騎士の末裔と、海賊まがいの密輸船の船長、そして老賢者とか、それに立ち塞がる漆黒鎧のダークロード(暗黒卿)とか、まあ、舞台を宇宙に移しただけの冒険ファンタジー」となるわけで。

ちなみに、スターウォーズと対を為すSF作品として「スタートレック」の方も挙げてみると、こちらは66年から3シーズン続いたTVドラマシリーズ(宇宙大作戦)が元祖になりますね。3シーズンで視聴率不振のために打ち切られたものの再放送などで根強いファン人気を獲得。その後、TVドラマ版の復活が企画されたものの、スターウォーズが火を付けたSFブームの波に乗る形で79年に劇場映画として大々的に復活。

まあ、この後は80年代半ばまで、スターウォーズスタートレックは、競うように映画の続編が作られていくんですけどね。ゲームに絡めるなら、スタートレックは初期のコンピューターゲーム(1971)の題材にもなっていて、そっちの歴史を語る際のネタの一つにもなるのですが、ここではTRPGとの関わりに焦点を当ててみます。

 

スタートレックとトラベラー

スターウォーズが宇宙を舞台にしたファンタジーアドベンチャー風の作品として、D&Dと通じるものがあると主張しましたが、
スタートレックの方は、1977年に出たSFRPG「トラベラー」に影響を与えております。

スタートレックの世界観は、22世紀から24世紀(作品シリーズによる)における超光速航行技術を開発した地球人類が一部の異星人と惑星連邦を結成するに至った未来。惑星連邦を守護する宇宙艦隊の最新鋭艦エンタープライズの深宇宙探検行を描くのが最初の物語。
帝国軍との戦争がメインのスターウォーズに比べて、スタートレックの方は惑星探検や宇宙船内のトラブル、救難活動など多彩なストーリーが展開されますし、シリーズ毎の敵役異星人勢力は登場しますが(クリンゴン帝国やらロミュラン星間帝国やら)、光と闇の二元的対立とは異なり、文化や習慣、生物的特性の違いなど、よりリアルなSF観を持っております。

一方で、トラベラーの世界観は、より遠い未来の57世紀を舞台に、第三銀河帝国に支配された広大な宇宙を探索するゲーム。スターウォーズの世界観に慣れていると、帝国イコール敵役というイメージがありますが、トラベラー宇宙における帝国は宇宙の安全な航行や交易を保証してくれる存在で、スタートレックにおける惑星連邦に相当する立ち位置。
プレイヤーキャラクターがなれる職業にも、元帝国宇宙海軍の士官が普通にあるわけだし、帝国の軍人として宇宙船の操艦技術や戦闘技術を身に付けたエリートが退役後に冒険の旅に出るのがトラベラーの一つのパターンだったりします。まあ、軍人以外にも商船会社とか医者とか、戦闘以外の技術を身につける経歴もありますし、必ずしも戦闘が必須のゲームではないことも特徴の一つ。
まあ、ゲーム性としては、宇宙艦隊による大規模戦闘は、同じ世界観を持つシミュレーションゲームの「インペリウム」なんかが推奨されていたわけだし、戦闘メインではなく、惑星探索と交易がメインのゲーム。
日本では84年に邦訳版が出たのですが、当時の自分はガンダムシミュレーションゲームなどにハマっていて、バトルを楽しむ年齢だったため、トラベラーはそういうゲームじゃないという翻訳者(これも安田社長だ)の紹介文から、あまり関心が持てずにいました。
後に、91年から翻訳された、上級ルールという位置付けの「メガトラベラー」にはしっかりと付いて行って、自分にとってのトラベラーは、そちらの方になりますね。

ただ、トラベラーにしても、スタートレックにしても、関心はあって設定などを調べたりはしたものの、しっかりハマったとは言いきれないでいます。聞き手にはなれるけど、積極的に発信するほどの知識の持ち合わせに欠けるというか。


自分にとってのSFといえば、先にロボット物、ガンダムの方にハマったからだし、そこからファンタジーRPGの方向性に走ったために、海外SFに敷居の高さを感じたというか、アクション要素の少ない作品に関心が薄いのかもしれませんね。
それと、キャラが成長しないというのも、個人的にトラベラーを魅力的に感じない理由の一つだったかも。RPGの特徴はキャラの成長だと思っていたから、「キャラ作りがそのまま成長ルールになっていて、ランダムダイスで多様な惑星世界が生み出されて、そこを探検するのを楽しむゲーム。世界観こそトラベラーの魅力」と宣伝されてはいたものの、派手なアクションの封じられたリアルな宇宙が特徴のトラベラー世界の魅力は、高校時代には分かっていなかった。大学時代に入って、ようやく、そういう楽しみも分かるようになってきたかな、と。


★一方、広がるスターウォーズの世界

そして、ようやく話をD&Dとスターウォーズの方に戻すわけですな。
そっちが今回の本命であり、トラベラーとスタートレックは寄り道だったのですが、ネットで調べてみると少しぐらいは語りたくもなるわけで。
何だかんだ言って、スタートレックも日本産の初期RPGの一つ(83年)なわけで。

ただ、スターウォーズの方はもっと勢いづいて、TRPGと関わっております。自分の知る限り、3つの会社が関わっておりまして、旧世紀のウェストエンドゲームズ版と、ゼロ年代のウィザーズofザ・コースト版(D20システム)と、現在のファンタジーフライトゲームズ版。

ウェストエンドゲームズ版は87年に出た最初のスターウォーズRPGで、エピソード4~6の世界観をプレイできるもの。WEG社は、多元宇宙RPGトーグを作ったことで自分的には重要なゲーム会社だと考えていますが、スターウォーズRPGは未訳ですね。自分も持っていないので、中身を説明することができない。ですが、ジョージ・ルーカス公認で長らく本ゲームのワールドガイドがそのままスターウォーズの公式世界観として通用する時代があったそうです。もう、スターウォーズがいかにTRPGと相性が良いかを如実に表しているとも。

そして、D&Dとスターウォーズの関わりで言うなら、やはり現在D&Dを出版しているWofC社のD20版が大きいです。
ぶっちゃけ、D&Dのシステムでスターウォーズがプレイできるルールブックなわけで。3版の時期に発売されたので、エピソード1から3を反映した内容です。


最後に、現在スターウォーズTRPGを提供しているのが、こちらのファンタジーフライトゲームズ社。
https://www.fantasyflightgames.com/en/products/#/universe/star-wars

ここの会社の製品群を見て凄いな、と思ったのが、「スターウォーズのタイトルだけで、いくつも別々のルールブックを出していること」。
一つのルールで、どの物語にも対応するわけではなくて、エピソード4~6の時代を中心に反乱軍として帝国軍と戦うのがテーマのシステム(Age of Rebellion)と、エピソード4以前の帝国圧制下で帝国の影響の少ない辺境を探検する無法者や開拓者をロールプレイするシステム(Edge of the Empire)と、フォースの使い手として帝国の追っ手の探索を逃れながらサバイバルするシステム(Force and Destiny)と、大きく3つのルールが出ている。
https://www.fantasyflightgames.com/en/products/star-wars-age-of-rebellion/
https://www.fantasyflightgames.com/en/products/star-wars-edge-of-the-empire/
https://www.fantasyflightgames.com/en/products/star-wars-force-and-destiny/
これらのルールは組み合わせて使うことも可能で、それぞれ「反乱軍の軍人」「自由なならず者」「ジェダイの騎士や残党」をプレイするためのルールという形ですな。

さらに、それとは別にWEG版を30周年記念として再販したり(まるで、こちらのロードスみたいな扱いだこと)、
https://www.fantasyflightgames.com/en/products/star-wars-the-roleplaying-game-30th-anniversary-edition/
最新版として、エピソード7以降の世界観をプレイできるシステムを売り出してみたり、スターウォーズという世界観を貪欲に掘り下げる姿勢を表明。

ともあれ、映画の方でスターウォーズが活性化していると、アメリカのTRPG業界も活性化する噛み合わせの良さがあるようで、この辺のつながりも気にしてみたいなあ、とは思っています。
さすがに洋物ルールブックを買い揃えるだけの資力はありませんし、そこまでのスターウォーズファンではないので、ここではあくまで紹介のみですが。

次回のTRPG歴史話は、スピルバーグ映画とD&Dの関連性について、いろいろと薀蓄を予定。(完)