★セブンの話
NOVA「さて、今から召喚の儀式を開始する」
ダイアンナ「何と。正月あいさつから1週間も経たないというのに、もう次の記事だと?」
NOVA「うむ。先にヒノキ姐さんのところで、シンカリオンその他の話をしようと思っていたんだが、それだと時間が掛かりすぎると判断して、こちらを優先した次第だ」
ダイアンナ「おお、それほどまでに、ダディーがあたしのことを愛していたとは」
NOVA「いや、お前じゃなくて、D&Dその他のRPGを愛しているんだけどな。そして、今回のネタはこれだ。先日ゲットしてきた」
ダイアンナ「こ、これは……」
触手K「伝説の触手帝国RPG!」
NOVA「いやいや、勝手にタイトルを捏造するなよ。確かに、昔、こういうサプリも出ていたが」
触手K「おお、『クトゥルフの帝国』とは素晴らしい」
NOVA「いや、クトゥルフ『と』帝国な。この場合の帝国とは、1920年代の大日本帝国ということになる。すなわち、大正時代の日本を舞台にしたホラーRPGサプリメントだな。方向性としては、こういう世界観に絡めたりもできる」
リバT『しかし、帝国云々はともかく、クトゥルフの新作がどうして小見出しの「セブン」に関係してくるのですか?』
NOVA「ああ、今度、邦訳が出た新クトゥルフ神話TRPGは、原題『Call of Cthulhu』(略称CoC)の第7版だからな。すなわち、クトゥルフ・セブンということになる。よって、次元の扉を開いて、仮称・川上鉄太郎さんを召喚するのにいい触媒になるんだよ」
アスト「おいおい、そんな物を触媒にして、また変なものを召喚したりはしないだろうな?」
NOVA「変なものとは何だよ、変なものとは。それよりクトゥルフとウルトラって響きが似てないか? アナグラムにしても、ウルトまでがつながる。あとは、クとフを、どうラに置き換えたらいいかだけで」
アスト「無理やりつなげるなよ」
NOVA「とは言え、ウルトラマンティガのラスボスである邪神ガタノゾーアのモデルが、クトゥルフの息子だからなあ。つなげられないこともないんだよ」
アスト「だから、邪神は敵だろう? 邪神召喚の儀式で、どうやって光の戦士を召喚するのかって話なんだ」
NOVA「召喚の儀式そのものに光も闇も関係ない。そもそも、このTRPGのルールブックは、『善良な探索者になって、邪神の崇拝者の計画を止めるプレイを推奨』しているんだよ。だったら、悪霊の襲撃に備えて、光の国の戦士を召喚するのに用いても問題あるまい」
アスト「……お前のやることだからな。オーズの鴻上会長並みに、トラブルを発生させそうで心配だ」
NOVA「大丈夫。欲望は世界を救うからな。俺は終末を望まない。想像と創造を望む男だからな」
★軽いクトゥルフ薀蓄
NOVA「それにしても、このクトゥルフ新作ルールブックは凄いよなあ。某TRPGショップによれば、昨年のTRPG売り上げで、ソード・ワールドのルールブック3に続いて第2位という偉業を成し遂げたらしいんだよ」
ダイアンナ「パグマイアは?」
NOVA「30位にも入っていない。ゴブスレは13位で、D&Dもロードスもランク外だ。少なくとも、年間売り上げを見る限り、2019年のTRPG業界はソード・ワールドとクトゥルフが2強という結果になった」
アスト「しかし、2位だろう? やはり、ソード・ワールド強しってことじゃないか」
NOVA「それは同意するが、ソード・ワールドは基本ルールブックが文庫本で比較的安く手に入る上、ルールブック3が発売されたのは去年の年明けだ。しかし、クトゥルフ新作が出たのは、昨年末。つまり、わずか2週ほどの追い上げで、一気に2位まで昇りつめたことになる。いやあ、日本のTRPG業界でのクトゥルフ人気は話に聞いていたが、これほどまでとは思ってもいなかった。なお、クトゥルフ関連は旧作サプリも含めると、公表された30位までのうち7本までがランクインされている」
ダイアンナ「すると、ダディーはここをパグマイアから、クトゥルフ推しのブログに切り替えるつもりか?」
触手K「おお、これぞ触手帝国の夜明け、いや黄昏と呼ぶべきか」
NOVA「いや、俺はクトゥルフの専門家じゃないし。一応、新作は買ったが、その前の6版は買ってないし」
アスト「何だ、これほどメジャーな作品に手を付けていないとは、お前もTRPG者として大したことないんだな」
NOVA「(ムカッ)ルールブックを持っていないわけじゃないぞ。俺の持ってるルールブックは、その前に出た5版、およびD&D風味のルールでプレイできるD20版だ。6版は版上げしたと言っても、ルールに大きな変動がないと聞いたので、あえて購入を控えただけだ。別に俺はクトゥルフマニアというわけじゃないからな。話を聞いて理解できる程度の基礎教養だけで十分と思ったんだよ」
ダイアンナ「話が全く読めんのだが。そもそも、あたしは『クトゥルフ神話』とか『クトゥルフの呼び声』といったものがよく分からん。順を追って、丁寧に解説して欲しいぞ」
NOVA「さて、そう言われても、どこから解説していいものか。まず原作小説『クトゥルフの呼び声』は1928年にH・P・ラブクラフトによって発表された。内容は、封印された邪神(旧支配者)の復活事件に関わって恐怖にさらされた人間の狂気に至る様を描いたホラーなんだが、その後、ラブクラフトの作品だけでなく、友人作家やファンなどが同一世界を舞台にしたシェアード・ワールド小説の手法で、世界観を拡張したり、編集者のオーガスト・ダーレスが中心となって体系化したりして、人気を高めていった」
触手K「おお、触手愛好家の、触手による、触手のための時代が到来するわけか」
NOVA「別に、クトゥルフ神話は触手だけにこだわっているわけではないんだがな。ただ、ここでクトゥルフマニアは、原典重視のラブクラフト原理主義者と、よりメジャー化したダーレス世界観を信奉する者に分かれたりする」
ダイアンナ「何が違うんだ?」
NOVA「ラブクラフトの原作によれば、旧支配者は、かつて地球を支配した邪神の系譜で、現代の地球人には全く理解不能な宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)の象徴なんだ。だけど、そこにダーレスが善悪二元論を持ち込んで、旧支配者に対抗する旧神という設定を付与した。旧神が地球から旧支配者を追い出した経緯があり、旧支配者の復活を阻止するために、人類は旧神の力を用いて応戦するという話も可能になって、物語を作りやすくなった反面、ラブクラフトの描いた『名状しがたい恐怖感』が矮小化されて薄れたという批判も多い」
リバT『つまり、謎の宇宙人で、神にも匹敵するような描写をされた初代ウルトラマンと、ファミリー化して人間っぽい描写の増えた後の後継者たちのどちらがいいか、論争が起こるようなものですね』
NOVA「うむ、ゴジラにしても、ガンダムにしても、シリーズが長続きすると、初代を崇拝する者が後のメジャー化した作品を『堕落した』と批判することがしばしば見られるが、それはさておき、続いてTRPGの話に移ろう。初代『クトゥルフの呼び声』RPGは1981年にケイオシアム社から出版された。その後、1983年にバージョンアップした第2版が日本語に翻訳され、1986年にホビージャパン社から箱入りボックス版で登場。これが日本のクトゥルフRPG元年ということになるな」
ダイアンナ「その時は買ったのか?」
NOVA「いや。当時D&Dを始めたばかりの高校生だった俺は、クトゥルフに手を出すほどの経済力は持っていなかった。それに『1920年代を舞台に、邪神復活に怯える人々をロールプレイするホラーゲーム』という内容に、ちっとも食指が動かなかったんだよ。俺は基本的にヒーロー志向なので、『邪神? 頑張って退治するぜ。そのためにレベルアップだ!』と考えがちだった。要するに、『まだ、お子様だったので、クトゥルフの面白さがよく分かっていない年頃』だったんだ」
ダイアンナ「しかし、ホラー映画には興味があったのだろう? 悪霊ケイソンを生み出したりするほどには」
NOVA「というか、吸血鬼や狼男などの登場するゴシックホラーは好きだったし、科学の力で幽霊退治といったゴーストバスターズとか、ホラーRPGもいろいろ興味があった結果、手を出したRPGは、こういう作品になる」
NOVA「ナイトメアハンターは初版が1988年に登場。一方、ゴーストハンターの方は、コンピューターゲーム『ラプラスの魔』(1987年)を原点に、1994年にTRPG版が出た。なお、俺自身もこの作品にはちょっとした仕事で関わったことがある」
ダイアンナ「何と。ゲームデザインの仕事をしていたか」
NOVA「いや、デザインまではしていない。ゴーストハンターについては手伝いとして、シナリオ集の1本と、スーパーファミコン版『ラプラスの魔』のデバッグ用テストプレイを少々したぐらいだ。メインで名前が出る仕事ではないが、自分の思い出の中では重要な位置づけだったりする」
アスト「つまり、クトゥルフではなく、その他のRPGに手を出していたわけだな。クトゥルフについてはどうなんだ?」
NOVA「俺は、クトゥルフ神話にあまり興味がなかったんだよ。ただ、クトゥルフRPGが『世界初のホラーRPG』だし、そのルールシステムであるベーシックRPGには関心があったので、その後88年にホビージャパンから邦訳が出た類似システムの『ルーンクエスト』や『ストームブリンガー』の方に飛びついた。要するに、クトゥルフ自体は手を出していないが、その関連作の周りをあちこち飛び回っていたわけだ」
ダイアンナ「しかし、5版は購入した、と」
NOVA「5版は92年に改訂されたものが、93年にホビージャパンから日本語版として登場した。日本では、これが2つめのクトゥルフRPGとなる。箱入りだった前作と違って書籍スタイルで登場し、その時期になると俺もそれなりの経済力はあったから、普通に購入できた」
ダイアンナ「2版と5版はどう違うのだ?」
NOVA「大きな違いはないが、2版は『1920年代』のみを背景設定にしているのに対し、5版は『1920年代』と『現代(1990年代)』の両方に対応している。それまでは追加ルールの『クトゥルフ・ナウ』を導入しないといけなかったのが、基本ルールだけで現代ホラー物もプレイできるようになったわけだ。ともあれ、次の転換期は2003年と2004年。まず2003年に『D&D』(3版)のD20システムでプレイできる『コール・オブ・クトゥルフD20』が登場。翌年に元ルールのクトゥルフ6版が『クトゥルフ神話TRPG』の邦題で登場した」
アスト「近い時期に2つのクトゥルフRPGが両立したわけだな」
NOVA「D20クトゥルフは新紀元社が、6版はエンターブレイン社がサポートする流れだったが、主流は後者の方になったな。なお、俺はクトゥルフ神話そのものには興味薄かったが、サプリメントとしては、こういうものに惹かれたので購入したりしている」
NOVA「『クトゥルフ ダークエイジ』は、紀元1000年ごろの中世ヨーロッパを舞台にしており、『比叡山炎上』は戦国時代を舞台にしている。どちらかと言えば、近現代よりも前の歴史の方が俺の性に合っている感じだしな」
触手K「正に、時空を股にかける触手神といったところか」
NOVA「う~ん、本来クトゥルフって物凄くマニアックでカルトな題材のはずなのに、どういうわけか21世紀に入って、凄く浸透しているんだよな。その一因はニコニコ動画でのクトゥルフRPGリプレイにあるらしく、また、こういうリプレイも人気があったりする」
NOVA「『るるいえ』シリーズは現在8巻まで出ている、萌えクトゥルフとでも言うべきリプレイシリーズだな。現代日本の女子高生がオカルト絡みの怪事件に巻き込まれて、キャーッと悲鳴を上げたりしながら、必死に頑張って解決する。俺はこのシリーズは未読なんだが、7版ルールを買ったこの期に、チェックしてもいいという気になっている」
触手K「おお、これで触手帝国の野望に一歩近づいた」
★召喚の儀式
NOVA「それにしても、この空間って実にホラーな話をしやすい場所になってるな、と今さら気づいた。吸血女王がいるし、触手崇拝者がいるし、殺人鬼の悪霊も出たし、ストーカーもいるし……」
アスト「ちょっと待て。ストーカーはホラーの題材じゃないぞ」
NOVA「いやいや、ストーカーは立派なホラーネタだよ。サイコホラーやスリル・サスペンスに分類される系のな」
アスト「だったら、お前もホラー世界の住人ではないか。怪しげな魔導書の類を読みふけり、時空の扉を開く儀式を敢行しようとする魔術師など、世間一般では不気味なだけではないか」
NOVA「まあ、昔のあだ名が骨ホネロックとか、スケルトン(骸骨)だった時もあったから、ホラー世界に馴染みがあるのも事実だがな。そういう空気を払拭するために、いよいよ、あの人を召喚するんだよ」
アスト「どうやるんだよ?」
NOVA「簡単だ。魔法陣にウルトラサインを描いて、念を込めて、祈りの歌を詠唱する。すでに準備は万端だ」
アスト「何だと? うおっ、いつの間にか魔法陣が描かれている」
NOVA「では、唱えるぞ。ワン・ツー・スリー・フォー、ワン・ツー・スリー・フォー、カーモン・セブン。ワン・ツー・スリー・フォー、ワン・ツー・スリー・フォー、Ultra Seven。フォースゲイトOPEN、フォースゲイトOPEN。オーケイ、レッツゴー!」
リバT『魔法陣が淡い光を放ち始めましたね』
NOVA「さあ、みんなで呼ぶんだ、セブーン」
リバT『セブン』
触手K「セブン」
ダイアンナ「セブン」
アスト「ええい、仕方ない、乗ってやるか。セブン、セブン、セブン。セブン、セブン、セブン。こんなので本当に来るのかよ」
ダイアンナ「おお、床の魔法陣が輝いて」
触手K「人影が浮上してくる」
NOVA「ああ、タイガ劇中で、ゼロさんが空からではなく、地面から現れたのも、俺があそこに召喚用の魔法陣を仕掛けていたからな。あの世界を特定するのに、分かりやすいマーカーが必要だったんだ」
アスト「あの土管の中から出て来るような唐突な登場の仕方も、お前の仕業だというのか!?」
NOVA「ここではそういうことにしておこう。その方が楽しいし」
アスト「楽しんでいるのは、お前だけだ」
NOVA「ええい、お前は黙っておけ」
来訪者「ん? 司令、何やら取り込んでいるのかね?」
NOVA「いや、大したことはありません。モロボ……」
来訪者「おっと、今回の訪問は非公式なので、その名は出さないでもらいたい、と言っておいたはずだが」
NOVA「ああ、そうでした。川上鉄太郎さんでしたよね」
鉄太郎「うむ。私の名前は鉄太郎だ。いやー、薩摩萬にしようか、弾超七にしようか、それとも白鳥右京か、天王路博史がいいか、いろいろ悩んだが、やはり公式に使われていない名前が良かろうと思ってね。今回は、川上鉄太郎ということにしておこう」
ダイアンナ「はばかることなく堂々と偽名だと言っているのは、ツッコミどころなのかしら」
鉄太郎「おお、メガネシルバーの翔花くん、いや、今は改名して晶華くんか。しばらく見ない間に、ずいぶん大きくなったみたいだね。今では立派なレディーか。見違えたよ」
NOVA「ああ、そこにいるのは晶華じゃなくて、晶華から分かれた合わせ鏡のダイアンナです」
鉄太郎「ダイアンヌ?」
ダイアンナ「アンヌじゃなくて、アンナですから」
鉄太郎「おっと、これは失礼。思い出の女性の名前に似ていたものでね。とにかく、今回は非公式の訪問なので、任務のことは忘れて寛がせてもらうよ」
NOVA「ええ。だけど、息子さんとジードの姿の確認もしたいでしょうから、そっちにも監視のアンテナを張らせてもらっていますよ。思う存分、観劇してください」
鉄太郎「分かった。それと、従弟の光太郎のことなんだが」
NOVA「そっちは、春になると真実が判明するはず。ですから、ここで待機していただければ、と。その代わり、いざと言うときの用心棒の件は、よろしくお願いします」
鉄太郎「風来坊に用心棒を頼むとはな。宇宙悪霊と言えば、アクマニア星人を思い出すが、いざと言うときには獅子座の空手家兄弟の応援も呼ぶ手筈になっているし、大船に乗ったつもりでいて欲しい」
NOVA「分かりました。では、しばらくの間、よろしくお願いします。鉄太郎さん」
(当記事 完)