ウルトロピカルな⭐️GT(ゲーム&トレジャー)島宇宙

南の島と上空の宇宙宮殿を舞台にTRPGや特撮ヒーローなどのおしゃべりブログ。今はFFゲームブックの攻略や懐古および新作情報や私的研鑽メイン。思い出したようにD&Dに触れたりも。

海賊王への道

@ドレッド・パイレート

 

 

アスト「さて、前回はD&D5版およびパグマイアの海賊背景を中心に語ったんだが、それらの作品では『海賊として成長する』というプレイができないわけだ」

 

ダイアンナ「背景情報は、それぞれのキャラクタークラスにフレーバーや特殊能力を付けるだけで、成長ルールはあくまでキャラクラスに付随するものということか」

 

アスト「海賊の背景を持つ戦士は、あくまで戦士としてレベルアップするのであって、海賊として特殊能力が増えたりするわけじゃない。海賊レベル5になったから、海の精霊の声が聞こえるようになったとか、そういう成長の仕方はしないわけだ」

 

ダイアンナ「海の精霊の声を聞くためにはどうすればいいんだ?」

 

アスト「そりゃ、そういうことのできるクラスじゃないとダメだろうな。D&Dならドルイドとか、パグマイアならミスティックに船乗りや海賊の背景を付けるといいんじゃないかな」

 

ダイアンナ「あくまでメインとなるのは、クラスとか天命で、背景職業はキャラのヴァリエーションを広げるおまけでしかない、と」

 

アスト「背景で大切なのは、冒険者としての能力よりも、むしろ社会的な立場とかコネだからな。船乗りの戦士は、社会では戦士として評価されることよりも、腕っぷしの強い船乗りという目で見られる。兵士とか騎士の背景を持つ者は頼れる戦士として見られるだろうし、鍛冶屋のファイターは結局、鍛冶屋扱いだ」

 

ダイアンナ「では、海賊としてレベルアップすることはできないのか?」

 

アスト「かつてのD&Dでは、上級クラスとして海賊(ドレッド・パイレート)が用意されていた。3版はソード・ワールドと同じように、複数クラスを組み合わせてキャラ表現するシステムで、兼職が簡単。そして、特定の条件を満たせば、多彩な上級職にも就けた。その上級職の数が、サプリメントごとに20以上用意されて、全部で100は軽く越えるぐらいの膨大な職業データがある。それらを語っているだけで、記事のネタは尽きないだろうなあ」

 

ダイアンナ「すると、3版にはドラゴンの騎士というものもあるのか?」

 

アスト「ダイ大のことなら、魔法戦士のエルドリッチナイトと、竜との混血ドラゴン・ディサイプルを組み合わせるといいかもな。紋章なら、エベロン世界にドラゴンマーク(竜の印)というルールがあるので、組み合わせるといいかもしれない。ドラゴンマークなら、最近、エベロンサプリが5版でも出たので、ダイっぽいキャラが作れるかもな」

 

ダイアンナ「お気に入りのフィクションのキャラが、そのゲームで再現できるかがゲームの汎用性を示しているというわけか」

 

アスト「で、残念ながらルール的に整理簡略化された5版では海賊にはなれても、海賊王を目指すことはできない。だけど、3版では上級クラスに海賊があるから、それを10レベルまで育てることで、海賊王の地位と特殊能力を得ることができるわけだ。今回は、ドレッド・パイレートという上級クラスを研鑽して、海賊王への道を探ってみようという記事だ」

 

ダイアンナ「基本職の研鑽も十分ではないのに、いきなり上級職か。大丈夫なのか?」

 

アスト「既存の秩序にとらわれねえ。それが海賊ってものだろう?」

 

@ドレッド・パイレートになる条件


アスト「今回、海賊という観点で研鑽することで、今さらながら3版と5版の違いを実感したように思う。5版は3版よりも簡単に『なりたい自分』になれるので、海賊もその気になれば最初からなれる。一方で、3版は細かいデータを積み重ねて『頑張ってなりたいものを目指す』システム。つまり、努力と成長の果てに、ようやく目標に手が届くんだ」

ダイアンナ「5版はお手軽で、3版は苦行のシステムということか」

アスト「そして、その苦行に情念と愛着を注ぎ込んだ者たちは、4版への移行を良しとせず、3版のシステムの延長にあるパスファインダーに移った。4版は斬新なシステムだと思うが、システムに合わせて世界観まで大きく変えてしまったために、それまでのD&Dファンの離反を招いた。ゲーマーというものは新しいものを求めるくせに、既存の伝統の延長を求める点では保守的で、既存の伝統を大きく壊してしまうような作品は受け付けない人種らしい、とアメリカのゲームデザイナーは分析している」

ダイアンナ「だから、5版はシステムを簡略化しつつ、世界観は昔懐かしのフォーゴトンレルムドラゴンランスをプッシュする形を取って、往年のAD&Dファンの懐古を煽った、と」

アスト「そして海賊だが、5版は最初からなれるけど、成長はできない。3版は成長した先に海賊という目標もある。この違いが分かるか?」

ダイアンナ「海賊という職業の値打ちだな。簡単に手に入るものの価値は少ない。5版の海賊は下っ端船員で、3版の海賊は頑張って船長になったところからスタートする大物職業ということか」

アスト「そう。5版の背景海賊は、海賊船長の知り合いの雇われ船員とか船長の弟妹、あるいは息子とか娘が独自の人生、冒険者の道を歩むようになったところからスタート。つまり、海賊ゆかりの新米という立ち位置なのに対し、3版はいくつもの冒険を重ねて、自分の船を入手して、十分な能力を備えて、海賊船長になったところからスタートするわけだ」

ダイアンナ「海賊という稼業の重みがあるのは3版の方なんだな」

アスト「上級職だけあって、簡単にはなれない。まず、性格は秩序(ローフル)であってはならない」

ダイアンナ「そりゃ、いきなりパラディンはアウトだな。5版で可能な海賊パラディンは、3版の時には不可能だった、と」

アスト「そっちが普通のイメージだよな。そして、1万GP以上の価値のある船を所有していること。金を払って買うか、それとも強奪するか、あるいは知り合いに託されるか、手段は問わない。とにかく大海原を自由に航海できる状況を構築することが求められる」

ダイアンナ「俺の船に乗れ、と言える立場だな」

アスト「基本攻撃ボーナス+4以上。これは戦士なら4レベル、盗賊なら6レベルで実現可能。まあ、魔法使いでも8レベルなら行けるだろう」

ダイアンナ「理論上は、魔法使いでも海賊船長になれるということか」

アスト「別に船長自ら前線で戦わないといけないものでもないしな。ただし、技能条件が厳しくて、『鑑定8』『職能:船乗り8』『水泳4』『縄使い4』の合計24ランクのスキルを習得していないといけない。盗賊や吟遊詩人は、それらの技能を漏れなく習得できるが、戦士は水泳しか習得できない。一応、クラス外技能でも習得ポイントを倍使えば、習得可能だが、盗賊が24ポイントで習得できるのを、戦士は44ポイントかかるので、専業戦士なら手が届かないだろうな。おまけにレベルごとにもらえる技能ポイントが盗賊は8なのに対し、戦士は2なので、海賊になるには、途中で盗賊を経由するのが効率いいことになる」

ダイアンナ「一番、手っ取り早く海賊になる方法は?」

アスト「まず、1レベルは盗賊を選ぶ。1レベル時はもらえる技能ポイントが4倍になるので、32ポイントもらえて、これで技能の習得条件を満たせる。あとは戦士で4レベル上げて、基本攻撃ボーナスを+4にしつつ、戦闘特技の〈早抜き〉と〈武器の妙技〉を習得すれば、最短で合計レベル5でドレッド・パイレートの条件を満たせる。もちろん、船の入手は必要だが、もしも海賊になりたい旨を力説すれば、親切なDMがそういうシナリオを作ってくれるかもしれないな」

ダイアンナ「『自分が海賊になれば、面白いゲームにする自信がある。お願いだから、船をくれ』と熱く訴えるのだな」

アスト「こいつなら本当に楽しいプレイにしてくれるだろう、と信用されていたら、喜んでDMは応じてくれるだろう。もちろん、DMが考えているシナリオ展開に海賊PCを登場させる余地がないなら、そういう理由を説明して断るケースもあるわけだし、プレイヤーは自分が何をしたいか明確に主張し、DMはそれが可能かどうかを検討してみせながら、きちんと話し合いで意見をまとめるのが大人なゲーマーってなものだな。相手の都合を考えない要求は嫌われる元だし、そもそも信用されていない人間が執拗に要求を重ねるのは厚顔無恥という」

ダイアンナ「信用は一朝一夕で築けるものではないけど、共通の趣味と価値観を示して、話を噛み合わせるよう努力することは大事。まあ、趣味は同じでも、価値基準が異なれば、こじれることもあるだろうがな」

アスト「同じ野球好きでも、巨人ファンと阪神ファンは昔から犬猿の仲だからな。推しが違う場合は、マウントの取り合いになるので、論争を楽しむとか、負けプレイで悔しがり芸を披露するとか、適度な勝ち負けの処し方を心得ない限り、火遊びは慎んだ方がいいだろうなあ」

ダイアンナ「良い負け方ってあるのか?」

アスト「『なるほど。いい勉強になりました。今回の話題については、知見不足だったので、もう少し考えてきます』とでも言って去れば、さわやかに身を引くこともできるな。スポーツの試合なら、グッドルーザー(良い敗者)の方に観客は拍手を向けたりもするし、勝って驕らず、負けて嫉まずの姿勢で臨むなら、議論からも学べるだろう。と言うか、議論って互いの見識を示して、お互いに学び合えるのが理想だろう? まあ、相手の話が本当に愚かしい内容なら、学ぶに足りないこともあるんだが」

ダイアンナ「ところで、話を戻すが、海賊には〈鑑定〉のスキルが必要なんだな」

アスト「そりゃ、お宝の価値が分からなければ、海賊稼業なんてできないだろう?」

ダイアンナ「キャプテン・マーベラスやグレンファイヤーがそれほど利口だとは思えないんだが?」

アスト「……まあ、グレンの兄貴は海賊ではなくて、海賊の用心棒だったわけだし? たぶん、本人は宇宙船を操縦することもできないだろう。また、マーベラスさんのところはチームだから、船長が鑑定できなくても、一般の金銀財宝はルカさんが、レジェンド戦隊関連の知識は鎧さんに任せたとか?」

ダイアンナ「ヨホホイさんところは?」

アスト「妹のフリントちゃんは確実に、鑑定できそうだな。お兄さんの方もマーベラスさんよりは、頭が良さそうに思える。まあ、戦隊にはD&Dとは違ったルールもあるんだろうさ。一人一人じゃ海賊として不十分でも、仲間がいれば補い合える。それが戦隊ってものだろう?」


@ドレッドパイレートの成長


アスト「で、何とか条件を満たせば、海賊としての成長が始まる。1レベルになった海賊は、『船乗りの親分』『二刀流』の能力を最初に習得するんだ」

ダイアンナ「三刀流じゃないのか?」

アスト「それは特別な個人専用の特技で、全ての海賊が使えるわけじゃねえ」

ダイアンナ「親分ってのは何ができるんだ?」

アスト「〈船乗り〉技能の判定に海賊レベル分をプラスできる他、海賊レベルの半分だけ部下の〈船乗り〉技能に加えることができる。つまり、船を操るために巧みな指示出しができるってことだな」

ダイアンナ「優秀な船長の下だと、部下も実力以上の技量が発揮できるということか」


アスト「2レベルになると『恐ろしい評判』を習得する」

ダイアンナ「やっぱり海賊は恐ろしいのか」

アスト「これには2種類あって、名誉ある海賊と、恥知らずの海賊のどちらかに分かれる」

ダイアンナ「正義の海賊と悪の海賊か。正義はどうなんだ?」

アスト「名誉ある方は、無用な流血を避け、捕虜は寛大に扱う。この道を選ぶと〈交渉〉スキルが+2され、相手を降伏させやすくなる。捕まっても命までは取られないって安心感があるからな。このボーナスは6レベルで+4、10レベルで+6まで増える。名誉ある海賊は信用できるので、相手もきちんと話を聞いてくれるわけだ」

ダイアンナ「やはり、名誉の何たるかが分かっている相手は信用できるってことだな。恥知らずな方は?」

アスト「暴力を好み、ケンカっ早く、捕虜を虐待する連中として知られている。この場合、〈交渉〉ではなく、〈威圧〉のスキルの方にボーナスが入る」

ダイアンナ「相手を脅して、無理やり言うことを聞かせるのか」

アスト「知的で誇り高い相手には〈交渉〉が、あまり頭が良くないけど臆病な相手には〈威圧〉が、バカな上に好戦的な相手には話し合いが無駄なので、バトルで血を見てもらう形だな」


ダイアンナ「レベル3では?」

アスト「名誉ある海賊は『船員鼓舞』で自分と仲間の戦闘能力を高めることができる。恥知らずな方は『急所攻撃』で盗賊や暗殺者のように挟撃ダメージを加算できる。どちらもレベル7でさらに性能アップする」

ダイアンナ「名誉ある方は、仲間や社会との関わり合いを重んじ、恥知らずな方はとにかく殺戮を好む、と」


アスト「レベル4は『曲技突撃』『姿勢安定』の能力が得られる。前者は障害物を乗り越えたり、高いところから飛び降りたりアクロバティックな動きを駆使して、戦場で自在に移動攻撃する技。後者は揺れる船上のような不安定な場所でも行動を阻害されず、〈平衡感覚〉などのスキル判定にボーナスが得られる」

ダイアンナ「そう言えば、海賊戦隊は結構トリッキーなアクションを繰り広げていたな。特に、緑の奴が」

アスト「周囲の地形を利用したクレバーな戦法だったな。他の仲間に比べて、武芸そのものはさほどでなくても、戦場をあちこち動き回り、相手を翻弄する芸はなかなかのものだった。次にレベル5だが……」

ダイアンナ「海の精霊の声が聞けるんだな」

アスト「いや、それは物の例えで、D&Dのことだとは言ってないんだが。名誉ある海賊は『風の幸運』、恥知らずな海賊は『海の疫病神』の特殊能力が得られる」

ダイアンナ「疫病神かよ。さすがは恥知らず、みんなの嫌われ者だな」

アスト「そりゃ、いちいち攻撃的に振る舞い、下劣な品性を隠そうともしない輩は嫌われるだろう。まあ、海賊の場合は、恐ろしさを武器にしているんだがな。個人相手の〈威圧〉判定を集団相手に及ぼせるようになる。こいつに襲われたら、もう終わりだ、と相手集団を絶望に追い落とすことができるわけだ」

ダイアンナ「ある意味、悪役らしいというわけか。名誉の方は?」

アスト「『風の幸運』は、1日1回、失敗した判定を振り直すことができる。3版の時は振り直しスキルがまだ珍しい時期だったからな」

ダイアンナ「やはり、名誉を重んじると幸運も味方するってことか。一口に海賊と言っても、目指すべきロールプレイが善悪2種類あって、それぞれで習得できる能力の質まで変わってくるのは面白いな」

アスト「味方の海賊キャラと、敵役の海賊キャラの違いまでルールが示してくれている感じだな。こんな特徴を持っているから、こういう風にロールプレイするといい、というイメージまで掻き立ててくれる」


ダイアンナ「レベル6は『恐ろしい評判』の性能アップ。レベル7は『船員鼓舞』または『急所攻撃』の性能アップと言っていたな」

アスト「ああ。だから新規の能力はレベル8だ。『技能体得』と言って、〈軽業〉〈跳躍〉〈登攀〉〈平衡感覚〉の技能の安定度が増して、判定時に出目10を選択できる」

ダイアンナ「出目10?」

アスト「D&DはD20で判定を行うから、ダイス目が1~20ですごく散らばりが大きいんだ。出目10のルールは、ダイスの期待値で安定した能力、本来の実力を発揮できたという形になる。例えば、じっくり落ち着いた状態で手慣れた作業を行う場合、失敗することはまずないだろう?」

ダイアンナ「まあ、あたしの場合、宝石の鑑定が得意なんだが、よほどのことがない限り、偽ダイヤに騙されることはない、と断言できる」

アスト「仮にアニーの鑑定スキルのランクに、知力ボーナスを加えた数値を+8としよう。出目10のルールを採用すると、鑑定難易度18までなら素の実力で容易に見破ることができるんだ。まあ、時間が切迫して一瞬で本物と偽物を見抜かなければならないとかだとダイスを振ることになって、そこでダイス目が低くて3とかを出すと、判定失敗となるわけだが」

ダイアンナ「すると判定難易度が15の場合、下手にダイスを振るよりは出目10を選択する方がいいということか」

アスト「まあ、それなりに実力があるなら、運任せにせずに安定して実力を発揮できる状況にする方がいいからな。もちろん判定難易度が20を越えていて、ダイス目12以上じゃないと成功できない場合は、頑張ってダイスを振って、実力以上の幸運に賭けるしかないんだが。その場合は成功率45%になる」

ダイアンナ「出目10ルールだと、55%以上で成功できる行為判定はじっくり落ち着いて対処できる場面では、失敗の恐れなく安定して成功できるということだな」

アスト「オレの実力だと、これぐらい簡単さ、と言って、振ったダイス目が1だとギャグになるが、普通に考えて1+1の計算を間違えることはありえない。だけど、ダイスを振ると20回に1回は自動失敗の可能性がある。5%の可能性で1+1が3だと誤答してしまうのは間抜けだろう?」

ダイアンナ「よほど疲れていたか、集中できなかったか、慌てて問題を読み間違えたか、原因はともかく、普通はあり得ないよな」

アスト「出目10のルールは、簡単な行動で安定して実力を発揮したい時に使うといい。そして、レベル8の海賊は、たとえ戦闘中の切迫した場面でも、ちょっとした軽業やアクロバティックな行動は失敗の恐れなく気軽にこなすことができるわけだ」

ダイアンナ「難易度15の宙返りは、スキルを持たない者には困難だが、能力ボーナスと技能ボーナスで5以上あれば、出目10ルールで安定して成功できるぐらいの難易度だと」

アスト「スーツアクターや体操選手が練習で行える程度のアクションということだな。素人にはおおっと感心できる成功率30%ぐらいの行動を、日常的な習慣でやりこなすのがプロあるいは熟練のエキスパートってものだろう」

ダイアンナ「まあ、自信を持って披露できる技ってのは、そういうことだな。毎日、文章を書き続けている人間は、たまに調子が悪いことがあったとしても、読むに耐えない誤字脱字だらけの劣悪な文章を書いてしまうことはないし、判定しなくてもこれぐらいなら素で書けるというレベルはあるわけか」

アスト「よほど心を乱されてない限りはな。そして、自分の精神状態まで文章を書くと自分で判断できるのが、物書きってものだろう。スランプの場合も、それは自分で納得できるレベルの良い文章が書けないだけであって、一般の人から見れば『普通に書けている』と思える程度は書いていたりする。人に売る商品にはできないってだけで」

ダイアンナ「審評眼のある人間には、『この人のレベルにしては、うまく書けていない』って点まで察することができる。そして、審評眼というのは、その人間が何をどう褒めて、何をどう酷評しているかで確認することができる」

アスト「実のところ、悪口だけでは審評眼は測れないんだな。良いものにどんな褒め方をし、ダメなものにどんな貶し方をして、どうすれば良くなるかまでをアドバイスできるのが審評眼。そして、素人でも『こうすればいいのに』とプロの作品に対して賢しらぶった主観感想は言えるが、その知ったかアドバイスが有効かどうかは、その人間がしっかり作品分析できているかどうかによる。ただの思いつきだと、作品分析の過程をすっ飛ばしているから、『そのアドバイスの通りにすれば、作品がどのような形になるかというIF未来像』まで見えていないので、そこを突いてみれば、相手の主張の是非が判定できる」

ダイアンナ「バカでも悪口は言えるが、説得力ある批評はできないってことだな」

アスト「批評と悪口の違いは、納得できる程度の作品分析を示しているかいないかの差だな。普通は、分析→批評の段階を踏んで自論を構築するのに、分析という一番大事な部分を飛ばして、賢しら顔はできない。批評文は、結論に通じる途中経過、論の組み立て方が肝だからな……って、これは何の話だ?」

ダイアンナ「鑑定スキルの話から、飛躍したみたいだな。途中で、文章スキルに置き換わって、文章批評の方法論にまで流れたようだ」

アスト「まあ、プロというのは、自分の技の特徴や欠点まできちんと分析批評して、どこを改善できるか、どこは直すのが難しいから目立たないようにするか、あるいは欠点さえもネタ的な武器にするかなど、いろいろ考えているからな。自己分析と他者批評の両面でバランスを取れていれば、『お前にそれを言う資格はない』的な暴言はおいそれと言えないはずだ」

ダイアンナ「宝石の鑑定には、まず本物を知っている必要がある。本物が分かれば、それと異なる偽物の違いも見えてくるのかもしれないが、その自分の見え方、感じ方をどう他人にも説明できるかで客観的に考える必要があるな。自分がただそう思ったから、という感受性だけでは、根拠が弱く、自分の思い込みに縛られている可能性すらある。だから本物の鑑定士は、自分のセンスを補強する言語的、あるいは観察的、科学的な理屈を積み上げていくわけだ」

アスト「本物のダイヤなら、こういうヒビの入り方はしないはずだとか、本物ならこれほどの高温にさらされて炭化しないはずがないとか、いろいろ考えられるな」

ダイアンナ「とにかく、きちんと修練して体得した技能は、安定度が高いという形でまとめよう」


アスト「では、海賊王まで目前だ。レベル9。名誉ある海賊は『死ぬまで戦え』。恥知らずの海賊は『海賊の見せしめ』を習得できる」

ダイアンナ「何だか、どっちも物騒なんだが? さすがは海賊と言ったところか」

アスト「『死ぬまで戦え』は『船員鼓舞』の強化版だな。『船員鼓舞』は自分と仲間の勇気を奮い起こし、1日1回、レベル×1分間だけ〈魅了〉と〈恐怖〉への抵抗セーブ、命中とダメージに+1ボーナスを与える(レベル7で1日2回、+2ボーナスに強化)んだが、それに加えて、一時的HPを最低10点、ACボーナスを最低+1、そして《不屈の闘志》の特技を付与する効果だ」

ダイアンナ「最低というのはどういうことだ?」

アスト「海賊船長の魅力(カリスマ)の能力で、ボーナスが加わる」

ダイアンナ「すると、海賊船長になるにはカリスマも必要なんだな」

アスト「そりゃ、魅力のない指揮官の下では働きたくないだろうさ」

ダイアンナ「《不屈の闘志》というのは、殺しても死なないヒュンケルやクロコダインみたいな特技か?」

アスト「う~ん、どうだろう。D&Dの場合、HPがマイナス10で死ぬ。HPがマイナスになると瀕死状態なんだが、その状態では毎ラウンド1点ずつHPを消耗するか、10%の確率で容態安定状態になってHP減少が止まる。《不屈の闘志》は倒れても自動的に容態安定状態になるんだ」

ダイアンナ「要は、死ににくくなる。『死ぬまで戦え』と言っておきながら、実は死なないようにサポートしてくれる技か。さすがは名誉ある海賊船長だな。恥知らずの方は?」

アスト「無防備状態の相手を殺すことで、味方を強制的に発奮させて、ダメージボーナス+2させることができる」

ダイアンナ「『オレサマに逆らった者がどうなるか、たっぷり思い知らせてやれ』って技か」

アスト「しかも、この能力、味方を犠牲にすることで強化することもできる」

ダイアンナ「味方を犠牲にするって、まさか?」

アスト「『フッ、この役立たずの命なんて惜しくはねえ。お前たち、こいつのようになりたくなければ、分かってるな(ニヤリ)』と凄めば、手下は本気でビビって死に物狂いになって、ダメージボーナス+4まで上昇する」

ダイアンナ「味方殺しの船長か。何て恐ろしい男だ」

アスト「さすがにプレイヤーキャラクター向きじゃないよな。敵の悪役船長が、手下のゴブリン辺りの首をはねて、残虐ぶりを見せつける演出には使えるか」

ダイアンナ「ゲームの能力を使えば、そのまま残虐ロールプレイができるとは」

アスト「何かを得るには、何かを捨てないとダメだってキャラが演出できるな。そして、最後の10レベルになると『海賊王』の能力を習得できるんだ」

ダイアンナ「海賊王って、ただの称号じゃなくて、能力名だったのか」

アスト「内容は、船に乗り込みたい手下のNPCがいっぱい集まって来るということだな」

ダイアンナ「いっぱいって何人だ?」

アスト「そうだな。海賊王のレベルは最低15と考えられるから、仮に魅力ボーナスを2ぐらいと置いて、統率力値17と想定する。DMガイドの統率表に基づくなら、レベル1船員が30人、レベル2が3人、レベル3とレベル4が1人ずつと言ったところか」

ダイアンナ「35人のNPC船員が勝手に付いて来るのか。さすがは海賊王」


アスト「なお、海賊ロールプレイをするための『海賊の掟』リストも用意されていて、ワクワクさせられる」

ダイアンナ「どんな掟があるんだ?」

アスト「同じ船の仲間に危害を加えると鞭打ち40回とか、仲間を騙した者は島流しとか、分捕り品の分け前に関する規則とか、一人一票の多数決合議制ルールだけど船長の決定と命令は絶対だとか、まあ、荒くれ者にも自分たちの社会のルールがあるんだなあ、と感じさせてくれる」

ダイアンナ「アウトローだって、社会を築くには自分たちのルールが必要だもんな」

アスト「そりゃ、人と関わる以上、互いの領分をしっかり弁えることが必要で、その所属社会の暗黙の了解を下手に乱すような輩は信用されないだろうさ。相手に認められようと思えば、相手の認めるものに親和的な態度を示す必要があるし、それができないなら、どこまでの付き合いが望ましいかの共有見解を模索する必要がある」

ダイアンナ「何にしても、相手の領分に客として入るからには、相手の求めるルールにコミットする必要はあるだろうさ。他人のルールに合わせられないなら、自分だけの領域を運営することで一目置かれることを目指すという手もあるし、場に求められているものが何で、求められていないものが何かを判断する能力も、社交では必要」

アスト「そして、自分がルール無視の恥知らずなアウトローだと見なされたなら、悪行の汚名を誇りとして自立するか、それとも場に求められている社交マナーを身につけて折り目正しく振る舞えるか、だな。『ですます口調』と『様呼ばわり』で礼儀正しい口振りを装っても、発言内容や態度が自己中丸出しだったり、サービス精神の欠片もなかったり、ろくに分析もせずに作品批評の真似事で悪口をぶちまけたり、問題点を挙げたらキリがないが、何よりも世間知らずなのは確かなので、少しでも自分の物を見る目を広げることを意識しなければ、狭い了見でしか判断できずに共感を得ることは困難だろうな」

ダイアンナ「結局、自分の土台をどうやって構築してきたか、が信用に通じるってことだね。まあ、あたしたちもここに来る前は、アウトロー生活で大変だったが、それでも広い世界を見たいって気持ちは本物だったさ。時を飛び越え、心の翼を広げ、自分の夢を大事にして、燃えるハートと、クールな魂と、キラキラ世界を目指して生きてきたから今がある」

アスト「まあ、自分が何のために生きているのか。何かの悪口を言うことよりも大事なものがあるんじゃないか。自分が認められたければ、先に他をいっぱい認めて、広げて、自分の中に認められ得るものをいっぱい増やしていかないといけないってことだな」

ダイアンナ&アスト『自分の夢のお宝に向かって、しっかり自分の手でつかみ取る。それこそが海賊ってものだろう』

(当記事 完)